JPH11235823A - インクジェット式記録ヘッド - Google Patents

インクジェット式記録ヘッド

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JPH11235823A
JPH11235823A JP4005498A JP4005498A JPH11235823A JP H11235823 A JPH11235823 A JP H11235823A JP 4005498 A JP4005498 A JP 4005498A JP 4005498 A JP4005498 A JP 4005498A JP H11235823 A JPH11235823 A JP H11235823A
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Koji Sumi
浩二 角
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 膜形成技術により形成された圧電振動子の外
部環境の変化に起因する動作不良を密封雰囲気を形成す
ることにより解消し、且つ当該密封雰囲気内の環境変化
による不具合を解消するインクジェット式記録ヘッドを
提供する。 【解決手段】 ノズル開口に連通する圧力発生室12の
一部を構成して少なくとも上面が下電極60として作用
する振動板と、振動板の表面に形成された圧電体層70
及び圧電体層70の表面に形成された上電極80からな
り且つ圧力発生室12に対向する領域に形成された圧電
体能動部とからなる圧電振動子を備える流路形成基板1
0を具備し、流路形成基板10の圧電体層70側に接合
され、その運動を阻害しない程度の空間を確保した状態
で当該空間を密封するキャップ部材110を具備し、こ
のキャップ部材内の空間の環境変化を検出する環境検出
手段を有し、内部環境変化による不具合を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノズル開口に連通
する圧力発生室の一部をたわみ振動するアクチュエータ
により膨張、収縮させて、ノズル開口からインク滴を吐
出させるインクジェット式記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット式記録ヘッドには、圧力
発生室を機械的に変形させてインクを加圧する圧電振動
型と、圧力発生室の中に発熱素子を設け、発熱素子の熱
で発生した気泡の圧力によりインクを加圧するバブルジ
ェット型との2種類のものが存在する。そして圧電振動
型の記録ヘッドは、さらに軸方向に変位する圧電振動子
を使用した第1の記録ヘッドと、たわみ変位する圧電振
動子を使用した第2の記録ヘッドとの2種類に分類され
る。第1の記録ヘッドは、高速駆動が可能でかつ高い密
度での記録が可能である反面、圧電振動子の加工に切削
作業が伴ったり、また圧電振動子を圧力発生室に固定す
る際に3次元的組立作業を必要として、製造の工程数が
多くなるという問題がある。
【0003】これに対して、第2の記録ヘッドは、圧力
発生室を備えこのインクを圧電振動子により加圧するア
クチュエータユニット等をセラミックスの焼成技術によ
り構成できるため、製造工程の簡素化を図ることができ
るものの、アクチュエータユニットにより加圧されたイ
ンクをインク滴として吐出させるノズルプレートが金属
板で構成され、両者を接着剤層を介して一体に固定して
記録ヘッドに構成されているため、セラミックスと金属
との熱膨張率の相違により記録ヘッド全体に反りが生
じ、インク滴の吐出不良や、印字品質の低下を招く等の
問題がある。
【0004】このような問題を解消するため、特開平6-
122197号公報に見られるようにアクチュエータユニット
の圧電振動子固定面に、圧電振動子の振動を阻害しない
断面「コ」の字状の熱膨張特性調整部材を固定し、熱膨
張差に起因する記録ヘッド全体の歪みを防止することが
提案されている。
【0005】ところで、このようなたわみ振動の圧電振
動子を用いた記録ヘッドは、たわみ領域を確保する関係
上、縦振動モードの圧電振動子を使用した記録ヘッドに
比較して圧力発生室の開口面積が大きくなり、第1の記
録ヘッドに比較して記録密度が低下するという問題があ
る。
【0006】このような問題を解消するため、シリコン
単結晶基板を基材に使用して、圧力発生室やリザーバ等
の流路を異方性エッチングにより形成し、また圧電振動
子を圧電材料のスパッタリング等の膜形成技術で形成す
る手法が採られている。これによれば、弾性膜を極めて
薄く、また圧力発生室や圧電振動子を高い精度で形成で
きるため、圧力発生室の開口面積を可及的に小さくして
記録密度の向上を図ることが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ノズル
開口の加工精度を維持するためにノズルプレートには依
然として金属板が使用されているため、圧電振動子を焼
成により作り付ける前述の第2の記録ヘッドと同様に熱
膨張差に起因して記録ヘッド全体に歪みが生じるという
問題がある。このような問題は特開平6-122197号公報に
見られるような熱膨張特性調整部材を用いることにより
解消できるものの、圧電振動子を圧電材料のスパッタリ
ングにより構成した場合には、グリーンシートを焼成し
て構成されたものに比較して同一電圧で駆動する場合、
圧電振動子が薄い分だけ高い電界が印加され、大気中の
湿気を吸収した場合には駆動電極間のリーク電流が増加
しやすく、ついには絶縁破壊に至るという問題を抱えて
いる。
【0008】本発明はこのような問題に鑑みてなされた
ものであって、その目的とするところは膜形成技術によ
り形成された圧電振動子の外部環境の変化に起因する動
作不良を密封雰囲気を形成することにより解消し、且つ
当該密封雰囲気内の環境変化による不具合を解消するイ
ンクジェット式記録ヘッドを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の第1の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室の
一部を構成して少なくとも上面が下電極として作用する
振動板と、該振動板の表面に形成された圧電体層及び該
圧電体層の表面に形成された上電極からなり且つ前記圧
力発生室に対向する領域に形成された圧電体能動部とか
らなる圧電振動子を備える流路形成基板を具備するイン
クジェット式記録ヘッドにおいて、前記流路形成基板の
前記圧電体層側に接合され、その運動を阻害しない程度
の空間を確保した状態で当該空間を密封するキャップ部
材を具備し、このキャップ部材内の空間の環境変化を検
出する環境検出手段を有することを特徴とするインクジ
ェット式記録ヘッドにある。
【0010】かかる第1の態様では、環境検出手段によ
ってキャップ部材内の空間の環境変化を監視することに
より、この環境変化による圧電体能動部の動作不良を未
然に防止できる。
【0011】本発明の第2の態様は、第1の態様におい
て、前記環境変化は、前記キャップ部材内の空間の圧力
変化であり、前記環境検出手段は、前記キャップ部材内
の空間に所定以上の圧力変化があった場合を検出するセ
ンサであることを特徴とするインクジェット式記録ヘッ
ドにある。
【0012】かかる第2の態様では、キャップ部材内の
空間への水や空気の侵入による圧力変化を検出し、圧電
体能動部の動作不良を未然に防止できる。
【0013】本発明の第3の態様は、第2の態様におい
て、前記キャップ部材は、前記キャップ部材内の空間の
圧力変化によって変形する可撓部を有し、前記センサ
は、当該可撓部の変形を検出して前記キャップ部材内の
空間の所定以上の圧力変化を検出することを特徴とする
インクジェット式記録ヘッドにある。
【0014】かかる第3の態様では、センサにより可撓
部の変形を検出することにより、キャップ部材内の空間
の圧力変化による圧電体能動部の動作不良を未然に防止
できる。
【0015】本発明の第4の態様は、第1の態様におい
て、前記環境変化は、前記キャップ部材内の湿度変化で
あり、前記環境検出手段は、前記キャップ部材内の空間
に所定以上の湿度変化があった場合を検出するセンサで
あることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにあ
る。
【0016】かかる第4の態様では、キャップ内部の湿
度変化を検出し、圧電体能動部の動作不良を未然に防止
できる。
【0017】本発明の第5の態様は、第4の態様におい
て、前記圧力発生室に隣接してインクが吐出されないダ
ミーの圧力発生室を有し、前記センサは、前記ダミーの
圧力発生室に対向する領域に設けられた圧電体層の抵抗
変化を検出して、前記キャップ部材内の空間の湿度変化
を検出することを特徴とするインクジェット式記録ヘッ
ドにある。
【0018】かかる第5の態様では、湿度センサにより
圧電体層の抵抗変化を検出することにより、キャップ部
材内の空間の湿度変化による圧電体能動部の動作不良を
未然に防止できる。
【0019】本発明の第6の態様は、第4の態様におい
て、前記センサは、前記キャップ部材内に設けられた配
線の少なくとも一部に設けられて、水分と反応して変質
する材質からなる湿度センサであり、当該湿度センサの
変質を検出して、前記キャップ部材内の空間の湿度変化
を検出することを特徴とするインクジェット式記録ヘッ
ドにある。
【0020】かかる第6の態様では、湿度センサの変質
を検出することにより、キャップ部材内の空間の湿度変
化による圧電体能動部の動作不良を未然に防止できる。
【0021】本発明の第7の態様は、第6の態様におい
て、前記湿度センサは、水分と反応することにより抵抗
が変化する材質であることを特徴とするインクジェット
式記録ヘッドにある。
【0022】かかる第7の態様では、湿度センサの抵抗
値を検出することにより、キャップ部材内の空間の湿度
変化による圧電体能動部の動作不良を未然に防止でき
る。
【0023】本発明の第8の態様は、第1〜7の何れか
の態様において、前記圧力発生室がシリコン単結晶基板
に異方性エッチングにより形成され、前記圧電振動子の
各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されたもので
あることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにあ
る。
【0024】かかる第8の態様では、高密度のノズル開
口を有するインクジェット式記録ヘッドを大量に且つ比
較的容易に製造することができる。
【0025】本発明の第9の態様は、第1〜8の何れか
の態様において、前記流路形成基板には前記圧力発生室
に連通されるリザーバが画成され、前記ノズル開口を有
するノズルプレートが接合されることを特徴とするイン
クジェット式記録ヘッドにある。
【0026】かかる第9の態様では、ノズル開口からイ
ンクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを容易に実
現できる。
【0027】本発明の第10の態様は、第1〜8の何れ
かの態様において、前記流路形成基板には、前記圧力発
生室にインクを供給する共通インク室と、前記圧力発生
室と前記ノズル開口とを連通する流路とを形成する流路
ユニットが接合されていることを特徴とするインクジェ
ット式記録ヘッドにある。
【0028】かかる第10の態様では、流路ユニットを
介してノズル開口からインクが吐出される。
【0029】
【発明の実施の形態】以下に本発明を実施形態に基づい
て詳細に説明する。
【0030】(実施形態1)図1は、本発明の実施形態
1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す組立斜視図
であり、図2は、その1つの圧力発生室の長手方向及び
幅方向における断面構造を示す図である。
【0031】図示するように、流路形成基板10は、本
実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板か
らなる。流路形成基板10としては、通常、150〜3
00μm程度の厚さのものが用いられ、望ましくは18
0〜280μm程度、より望ましくは220μm程度の
厚さのものが好適である。これは、隣接する圧力発生室
間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるから
である。
【0032】流路形成基板10の一方の面は開口面とな
り、他方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリ
コンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成され
ている。
【0033】一方、流路形成基板10の開口面には、シ
リコン単結晶基板を異方性エッチングすることにより、
複数の隔壁11により区画された圧力発生室12の列1
3が2列と、2列の圧力発生室12の列13の三方を囲
むように略コ字状に配置されたリザーバ14と、各圧力
発生室12とリザーバ14とを一定の流体抵抗で連通す
るインク供給口15がそれぞれ形成されている。なお、
リザーバ14の略中央部には、外部から当該リザーバ1
4にインクを供給するためのインク導入孔16が形成さ
れている。
【0034】ここで、異方性エッチングは、シリコン単
結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々
に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面
と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且
つ上記(110)と約35度の角度をなす第2の(11
1)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと
比較して(111)面のエッチングレートが約1/18
0であるという性質を利用して行われるものである。か
かる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)
面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平
行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うこと
ができ、圧力発生室12を高密度に配列することができ
る。
【0035】本実施形態では、各圧力発生室12の長辺
を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で
形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板1
0をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングす
ることにより形成されている。ここで、弾性膜50は、
シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵
される量がきわめて小さい。また各圧力発生室12の一
端に連通する各インク供給口15は、圧力発生室12よ
り浅く形成されている。すなわち、インク供給口15
は、シリコン単結晶基板を厚さ方向に途中までエッチン
グ(ハーフエッチング)することにより形成されてい
る。なお、ハーフエッチングは、エッチング時間の調整
により行われる。
【0036】また、流路形成基板10の開口面側には、
各圧力発生室12のインク供給口15とは反対側で連通
するノズル開口17が穿設されたノズルプレート18が
接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。な
お、ノズルプレート18は、厚さが例えば、0.1〜1
mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜
4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、又
は不錆鋼などからなる。ノズルプレート18は、一方の
面で流路形成基板10の一面を全面的に覆い、シリコン
単結晶基板を衝撃や外力から保護する補強板の役目も果
たす。
【0037】ここで、インク滴吐出圧力をインクに与え
る圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズ
ル開口17の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出
スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、
1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノ
ズル開口17は数十μmの直径で精度よく形成する必要
がある。
【0038】一方、流路形成基板10の開口面とは反対
側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.5μm
の下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体膜
70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜80と
が、後述するプロセスで積層形成されて、圧電振動子
(圧電素子)を構成している。このように、弾性膜50
の各圧力発生室12に対向する領域には、各圧力発生室
12毎に独立して圧電振動子が設けられているが、本実
施形態では、下電極膜60は圧電振動子の共通電極と
し、上電極膜80を圧電振動子の個別電極としている
が、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はな
い。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電
体能動部が形成されていることになる。
【0039】ここで、シリコン単結晶基板からなる流路
形成基板10上に、圧電体膜70等を形成するプロセス
を図3及び図4を参照しながら説明する。
【0040】図3(a)に示すように、まず、流路形成
基板10となるシリコン単結晶基板のウェハを約110
0℃の拡散炉で熱酸化して二酸化シリコンからなる弾性
膜50を形成する。
【0041】次に、図3(b)に示すように、スパッタ
リングで下電極膜60を形成する。下電極膜60の材料
としては、Pt等が好適である。これは、スパッタリン
グやゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体膜70は、成
膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜100
0℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるから
である。すなわち、下電極膜60の材料は、このような
高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければなら
ず、殊に、圧電体膜70としてPZTを用いた場合に
は、PbOの拡散による導電性の変化が少ないことが望
ましく、これらの理由からPtが好適である。
【0042】次に、図3(c)に示すように、圧電体膜
70を成膜する。この圧電体膜70の成膜にはスパッタ
リングを用いることもできるが、本実施形態では、金属
有機物を溶媒に溶解・分散した、いわゆるゾルを塗布乾
燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化
物からなる圧電体膜70を得る、いわゆるゾル−ゲル法
を用いている。圧電体膜70の材料としては、チタン酸
ジルコン酸鉛(PZT)系の材料がインクジェット式記
録ヘッドに使用する場合には好適である。
【0043】次に、図3(d)に示すように、上電極膜
80を成膜する。上電極膜80は、導電性の高い材料で
あればよく、Al、Au、Ni、Pt等の多くの金属
や、導可電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、
Ptをスパッタリングにより成膜している。
【0044】次に、図3(e)に示すように、各圧力発
生室12それぞれに対して圧電振動子を配設するよう
に、上電極膜80および圧電体膜70のパターニングを
行う。図3(e)では圧電体膜70を上電極膜80と同
一のパターンでパターニングを行った場合を示している
が、上述したように、圧電体膜70は必ずしもパターニ
ングを行う必要はない。これは、上電極膜80のパター
ンを個別電極として電圧を印加した場合、電界はそれぞ
れの上電極膜80と、共通電極である下電極膜60との
間にかかるのみで、その他の部位には何ら影響を与えな
いためである。しかしながら、この場合には、同一の排
除体積を得るためには大きな電圧印加が必要となるた
め、圧電体膜70もパターニングするのが好ましい。ま
た、この後、下電極膜60をパターニングして不要な部
分、例えば、圧力発生室12の幅方向両側の縁部内側近
傍を除去してもよい。なお、下電極膜60の除去は必ず
しも行う必要はなく、また、除去する場合には、全てを
除去せず、厚さを薄くするようにしてもよい。
【0045】ここで、パターニングは、レジストパター
ンを形成した後、エッチング等を行うことにより実施す
る。
【0046】レジストパターンは、ネガレジストをスピ
ンコートなどにより塗布し、所定形状のマスクを用いて
露光・現像・ベークを行うことにより形成する。なお、
勿論、ネガレジストの代わりにポジレジストを用いても
よい。
【0047】また、エッチングは、ドライエッチング装
置、例えば、イオンミリング装置を用いて行う。なお、
エッチング後には、レジストパターンをアッシング装置
等を用いて除去する。
【0048】また、ドライエッチング法としては、イオ
ンミリング法以外に、反応性エッチング法等を用いても
よい。また、ドライエッチングの代わりにウェットエッ
チングを用いることも可能であるが、ドライエッチング
法と比較してパターニング精度が多少劣り、上電極膜8
0の材料も制限されるので、ドライエッチングを用いる
のが好ましい。
【0049】次いで、図4(a)に示すように、上電極
膜80の周縁部および圧電体膜70の側面を覆うように
絶縁体層90を形成する。この絶縁体層90の好適な材
料は上述した通りであるが、本実施形態ではネガ型の感
光性ポリイミドを用いている。
【0050】次に、図4(b)に示すように、絶縁体層
90をパターニングすることにより、各連通部14に対
向する部分にコンタクトホール90aを形成する。この
コンタクトホール90aは、後述するリード電極100
と上電極膜80との接続をするためのものである。
【0051】次に、例えば、Cr−Auなどの導電体を
全面に成膜した後、パターニングすることにより、リー
ド電極100を形成する。
【0052】以上が膜形成プロセスである。このように
して膜形成を行った後、図4(c)に示すように、前述
したアルカリ溶液によるシリコン単結晶基板の異方性エ
ッチングを行い、圧力発生室12等を形成する。
【0053】また、本実施形態では、圧電体能動部側の
弾性膜50上には、圧電体能動部の駆動を妨げない程度
の空間を有し、圧電体能動部を密封するキャップ部材1
10が設けられている。
【0054】このキャップ部材110は、弾性膜50と
の接合側の圧力発生室12の各列13の間に対向する領
域に、圧電体能動部に接触しない空間からなる凹部11
2を区画する区画壁111を有する。
【0055】このキャップ部材110は、接着剤などに
より弾性膜50の表面に固定され、各凹部112内に圧
電体能動部を密封している。本実施形態では、キャップ
部材110を弾性膜50上に接着するようにしたが、こ
れに限定されず、例えば、圧電体膜70まで除去して、
下電極膜60に接着するようにしてもよい。いずれにし
ても、キャップ部材110を確実に接着することができ
る。
【0056】また、本発明では、以下に説明するよう
に、このキャップ部材110の凹部112内の環境変
化、例えば、本実施形態では、圧力変化を検出するため
のセンサが設けられている。
【0057】すなわち、キャップ部材110の各凹部1
12の長手方向端部近傍には、各凹部112と外部とを
繋ぐ貫通孔113が形成され、この貫通孔の113の内
側の開口は、凹部112内の圧力変化によって変形する
可撓部114により塞がれている。この可撓部114
は、弾性変形可能な材質、例えば、樹脂、ゴム、金属等
の薄膜で形成されている。また、この貫通孔113の内
側の開口近傍には、図5の模式図に示すように、凹部1
12内の圧力変化に伴う可撓部114の変形を検出、す
なわち、凹部112内の所定以上の圧力変化を検出する
感圧センサ115が可撓部114と所定の間隔で設けら
れている。
【0058】なお、貫通孔113及び可撓部114の大
きさは、特に限定されず、各可撓部114は、凹部11
2内の圧力変化によって変形可能であればよく、貫通孔
113は、感圧センサ115を配置可能な大きさであれ
ばよい。また、形成する位置も、圧電体能動部の駆動を
妨げない位置であれば、特に限定されない。
【0059】ここで、可撓部及び感圧センサの動作例を
説明する。
【0060】図5(a)に示すように、可撓部114及
び感圧センサ115は、通常、所定の距離をおいて保持
されている。例えば、本実施形態では、凹部112内を
減圧状態にして、可撓部114を内側に撓ませることに
より、両者を所定の距離で保持している。そして、圧電
体能動部の駆動等により、凹部112内の圧力が上昇す
ると可撓部114が外部方向に変形し、所定以上の圧力
変化、例えば、本実施形態では、外部と同等の圧力にな
ると、図5(b)に示すように、可撓部114が感圧セ
ンサ115と接触し、可撓部114の変形が検出され
る。すなわち、感圧センサ115が凹部112内の所定
以上の圧力変化を検出する。
【0061】このような構成により、圧電体能動部は、
キャップ部材110により密封され、外部環境に起因す
る動作不良が防止される。また、圧電体能動部を密封し
ている凹部112内の圧力変化を監視することができ、
所定以上の圧力変化があった場合には、例えば、操作者
に警告したり、プリンタの動作を停止させたりすること
等により、圧力変化に起因する圧電体能動部の動作不良
を未然に防止することができる。
【0062】なお、以上説明した一連の膜形成および異
方性エッチングは、一枚のウェハ上に多数のチップを同
時に形成し、プロセス終了後、図1に示すような一つの
チップサイズの流路形成基板10毎に分割する。また、
分割した流路形成基板10を、ノズルプレート18、キ
ャップ部材110と順次接着してインクジェット式記録
ヘッドとする。その後、ホルダー105に固定し、キャ
リッジに搭載され、インクジェット式記録装置に組み込
まれる。
【0063】このように構成したインクジェットヘッド
は、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導
入口16からインクを取り込み、リザーバ14からノズ
ル開口17に至るまで内部をインクで満たした後、図示
しない外部の駆動回路からの記録信号に従い、リード電
極100を介して下電極膜60と上電極膜80との間に
電圧を印加し、弾性膜50と圧電体膜70とをたわみ変
形させることにより、圧力発生室12内の圧力が高まり
ノズル開口17からインク滴が吐出する。
【0064】なお、本実施形態では、接触型のセンサを
用いて、可撓部の変形を検出するようにしたが、特に限
定されず、可撓部の変形を検出可能なセンサであれば、
例えば、非接触型等、何れのタイプのセンサであっても
よい。
【0065】(実施形態2)図6は、実施形態2にかか
るインクジェット式記録ヘッドの断面図である。
【0066】本実施形態は、キャップ部材の凹部内の環
境変化として、圧力の代わりに湿度を検出する一例であ
る。
【0067】本実施形態では、図6に示すように、圧力
発生室12の列13の一方の端部に位置する圧力発生室
12をダミーの圧力発生室12Aとし、このダミーの圧
力発生室12Aに対向する領域にも、他の圧力発生室1
2に対向する領域と同様に、圧電体能動部が設けられて
いる。また、この圧電体能動部の圧電体膜70Aには、
図示しないが、外部と連通され、圧電体膜70Aの抵抗
値を検出する配線が設けられている。
【0068】このような構成では、圧電体膜の湿度が上
昇すると抵抗値が低下するという特性を利用し、圧電体
膜70Aの抵抗値を検出することにより、キャップ部材
110の凹部112内の湿度変化を検出することができ
る。
【0069】これにより、凹部112内の湿度を監視す
ることができ、凹部112内の湿度が所定以上に上昇し
た場合には、実施形態1と同様に、操作者に警告する等
により、湿度に起因する圧電体能動部の動作不良等を未
然に防止することができる。
【0070】なお、本実施形態では、圧電体膜の抵抗値
を検出することにより、湿度変化を検出するようにした
が、これに限定されず、電流値を検出することにより、
湿度を検出するようにしてもよい。また、本実施形態で
は、ダミーの圧力発生室を設けるようにしたが、圧力発
生室を設けずに流路形成基板上に湿度を検出するための
圧電体能動部を設けるようにしてもよい。
【0071】(実施形態3)図7は、実施形態3にかか
るインクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。
【0072】本実施形態は、図7に示すように、キャッ
プ部材110の凹部112内に、複数の配線121を並
べて設け、各配線121の長手方向の少なくとも一部に
ITO(酸化インジウムスズ)層122を設け、湿度セ
ンサ120として用いる例である。
【0073】すなわち、キャップ部材110の凹部11
2には、複数の、例えば、本実施形態では、2本の配線
121が、圧力発生室12の列方向の端部近傍の流路形
成基10上に、所定の間隔、例えば、1mm以内の間隔
で形成されている。また、この配線121の少なくとも
一部を覆うITO層122が、例えば、ゾルゲル法、あ
るいは蒸着法により形成され、このITO層122を形
成した部分が湿度センサ120として利用される。
【0074】この配線121の材質は特に限定されず、
例えば、Cu、Au等が挙げられる。
【0075】このような湿度センサ120は、以下に述
べるITO(酸化インジウムスズ)の特性を利用したも
のである。すなわち、このITO電極材は、電極間距離
(隣接する配線間の距)が1mm以内であり、電極間の
電位差が少なくとも5Vあり、湿度が80%(相対湿
度)を越えるかあるいは結露すると電解腐食が発生し、
時間経過で断線に至るという特性を有する。
【0076】したがって、この特性を利用することによ
り、抵抗値を検出することで、凹部112の湿度を検出
することができ、湿度が所定以上に変化した場合には、
上述の実施形態と同様に、例えば、操作者に警告する等
により、湿度変化に起因する圧電体能動部の動作不良を
未然に防止することができる。
【0077】なお、湿度センサ120を設ける位置は、
特に限定されず、圧電体能動部の駆動を阻害しなけれ
ば、凹部112内の何れの場所であってもよい。
【0078】(他の実施形態)以上、本発明の実施形態
を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構
成は上述したものに限定されるものではない。
【0079】例えば、上述した実施形態では、流路形成
基板10に圧力発生室12と共にリザーバ14を形成し
ているが、共通インク室を形成する部材を流路形成基板
10に重ねて設けてもよい。
【0080】このように構成したインクジェット式記録
ヘッドの部分断面を図8に示す。この実施形態では、ノ
ズル開口17Aが穿設されたノズル基板18Aと流路形
成基板10Aとの間に、封止板160、共通インク室形
成板170、薄肉板180及びインク室側板170が挟
持され、これらを貫通するように、圧力発生室12Aと
ノズル開口17Aとを連通するノズル連通口31が配さ
れている。すなわち、封止板160、共通インク室形成
板190および薄肉板180とで共通インク室32が画
成され、各圧力発生室3Aと共通インク室32とは、封
止板160に穿設されたインク連通孔33を介して連通
されている。
【0081】また、封止板160には供給インク室32
に外部からインクを導入するためのインク導入孔34も
穿設されている。
【0082】また、薄肉板180とノズル基板18Aと
の間に位置するインク室側板190には各供給インク室
32に対向する位置に貫通部35が形成されており、イ
ンク滴吐出の際に発生するノズル開口17Aと反対側へ
向かう圧力を、薄肉壁180が吸収するのを許容するよ
うになっており、これにより、他の圧力発生室に、共通
インク室32を経由して不要な正又は負の圧力が加わる
のを防止することができる。なお、薄肉板180とイン
ク室側板190とは一体に形成されてもよい。
【0083】このような実施形態においても、流路形成
基板10Aの開口面とは反対側の面に、上述のようなキ
ャップ部材を固着することにより、外部環境の変化に起
因する圧電体能動部の動作不良を防止することができ
る。また、キャップ部材に内部の環境変化を検出するセ
ンサを設けることにより、内部環境を監視することがで
き、この内部環境の変化に起因する圧電体能動部の動作
不良を防止することができる。
【0084】また、以上説明した各実施形態は、成膜及
びリソグラフィプロセスを応用することにより製造でき
る薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、
勿論これに限定されるものではなく、例えば、基板を積
層して圧力発生室を形成するもの、あるいはグリーンシ
ートを貼付もしくはスクリーン印刷等により圧電体膜を
形成するもの、又は結晶成長により圧電体膜を形成する
もの等、各種の構造のインクジェット式記録ヘッドに本
発明を採用することができる。
【0085】このように、本発明は、その趣旨に反しな
い限り、種々の構造のインクジェット式記録ヘッドに応
用することができる。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、圧
電体能動部の駆動を阻害しない程度の空間からなる凹部
を有するキャップ部材を設け、このキャップ部材に、凹
部内の環境変化を検出する環境検出手を設けるようにし
たので、外部環境に起因する圧電体能動部の動作不良を
防止することができ、且つ凹部内の環境変化に伴う動作
不良も未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるインクジェット式
記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるインクジェット式
記録ヘッドの、圧力発生室の長手方向、及び圧力発生室
の配列方向での断面構造として示す図である。
【図3】本発明の実施形態1の薄膜製造工程を示す図で
ある。
【図4】本発明の実施形態1の薄膜製造工程を示す図で
ある。
【図5】可撓部及びセンサを模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施形態2にかかるインクジェット式
記録ヘッドの、圧力発生室の配列方向での断面構造とし
て示す図である。
【図7】本発明の実施形態3にかかるインクジェット式
記録ヘッドの、圧力発生室の配列方向での断面構造とし
て示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかるインクジェット
式記録ヘッドの、圧力発生室の長手方向での断面構造と
して示す図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板 12 圧力発生室 14 リザーバ 18 ノズルプレート 50 弾性膜 60 下電極膜 70 圧電体膜 80 上電極 90 絶縁体層 90a コンタクトホール 105 ホルダー 100 リード電極 110 キャップ部材 112 凹部 113 貫通溝 114 可撓部 115 センサ

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ノズル開口に連通する圧力発生室の一部
    を構成して少なくとも上面が下電極として作用する振動
    板と、該振動板の表面に形成された圧電体層及び該圧電
    体層の表面に形成された上電極からなり且つ前記圧力発
    生室に対向する領域に形成された圧電体能動部とからな
    る圧電振動子を備える流路形成基板を具備するインクジ
    ェット式記録ヘッドにおいて、 前記流路形成基板の前記圧電体層側に接合され、その運
    動を阻害しない程度の空間を確保した状態で当該空間を
    密封するキャップ部材を具備し、このキャップ部材内の
    空間の環境変化を検出する環境検出手段を有することを
    特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記環境変化は、前
    記キャップ部材内の空間の圧力変化であり、前記環境検
    出手段は、前記キャップ部材内の空間に所定以上の圧力
    変化があった場合を検出するセンサであることを特徴と
    するインクジェット式記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記キャップ部材
    は、前記キャップ部材内の空間の圧力変化によって変形
    する可撓部を有し、前記センサは、当該可撓部の変形を
    検出して前記キャップ部材内の空間の所定以上の圧力変
    化を検出することを特徴とするインクジェット式記録ヘ
    ッド。
  4. 【請求項4】 請求項1において、前記環境変化は、前
    記キャップ部材内の湿度変化であり、前記環境検出手段
    は、前記キャップ部材内の空間に所定以上の湿度変化が
    あった場合を検出するセンサであることを特徴とするイ
    ンクジェット式記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 請求項4において、前記圧力発生室に隣
    接してインクが吐出されないダミーの圧力発生室を有
    し、前記センサは、前記ダミーの圧力発生室に対向する
    領域に設けられた圧電体層の抵抗の変化を検出して、前
    記キャップ部材内の空間の湿度変化を検出することを特
    徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  6. 【請求項6】 請求項4において、前記センサは、前記
    キャップ部材内に設けられた配線の少なくとも一部に設
    けられて、水分と反応して変質する材質からなる湿度セ
    ンサであり、当該湿度センサの変質を検出して、前記キ
    ャップ部材内の空間の湿度変化を検出することを特徴と
    するインクジェット式記録ヘッド。
  7. 【請求項7】 請求項6において、前記湿度センサは、
    水分と反応することにより抵抗が変質する材質であるこ
    とを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7の何れかにおいて、前記圧
    力発生室がシリコン単結晶基板に異方性エッチングによ
    り形成され、前記圧電振動子の各層が成膜及びリソグラ
    フィ法により形成されたものであることを特徴とするイ
    ンクジェット式記録ヘッド。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8の何れかにおいて、前記流
    路形成基板には前記圧力発生室に連通されるリザーバが
    画成され、前記ノズル開口を有するノズルプレートが接
    合されることを特徴とするインクジェット式記録ヘッ
    ド。
  10. 【請求項10】 請求項1〜8の何れかにおいて、前記
    流路形成基板には、前記圧力発生室にインクを供給する
    共通インク室と、前記圧力発生室と前記ノズル開口とを
    連通する流路とを形成する流路ユニットが接合されてい
    ることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
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