JPH1116715A - 積層永久磁石の製造方法 - Google Patents

積層永久磁石の製造方法

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JPH1116715A
JPH1116715A JP9187823A JP18782397A JPH1116715A JP H1116715 A JPH1116715 A JP H1116715A JP 9187823 A JP9187823 A JP 9187823A JP 18782397 A JP18782397 A JP 18782397A JP H1116715 A JPH1116715 A JP H1116715A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粉砕、ボンド磁石化の方法を用いることな
く、また成形後、切削加工を施す必要のない、任意の肉
厚、所望形状を有する高性能な永久磁石の提供。 【解決手段】 6at%以下の希土類元素と15at%
〜30at%のホウ素を含む特定組成の合金溶湯を特定
の溶湯急冷条件により、高靭性を有し、加工が容易な平
均厚み10μm〜100μmのアモルファス組織からな
る急冷合金薄帯を作製した後、この急冷合金薄帯の表面
に550℃以下の融点をもつ金属層を鍍金もしくは蒸着
により形成し、その後、所望形状になるよう切断もしく
は打ち抜き加工した後、任意の厚みになるよう急冷合金
薄帯を二枚以上積層し、iHc≧2kOe、Br≧8k
Gの硬磁気特性を得られる平均結晶粒径10nm〜50
nmになる温度550℃〜750℃にて結晶化熱処理を
施こすことで、同時に急冷合金薄帯表面に設けた金属層
が溶融させてこの薄帯同士を強固に結合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、各種小型モータ
ー、アクチュエーター、磁気センサー用磁気回路に最適
な永久磁石の製造方法に係り、6at%以下の希土類元
素と15at%〜30at%のホウ素を含む特定組成の
溶湯を、特定の溶湯急冷条件により、高靭性を有し、加
工が容易な平均厚み10μm〜100μmのアモルファ
ス薄帯を作製し、この薄帯の表面にはんだなどの金属層
を設けた後、このアモルファス薄帯をそのままあるいは
所望形状になるよう切断もしくは打ち抜き加工した後、
任意の肉厚となるように積層して、平均結晶粒径が10
nm〜50nmになる結晶化熱処理を施こすことによっ
て、金属層を溶融させて一体化し、iHc≧2kOe,
Br≧8kGの硬磁気特性を有し、20μm以上の任意
の肉厚を有する所望形状の永久磁石を製造する積層永久
磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、家電用機器、OA機器、電装品等
において、一層の高性能化と小型化が要求される用途に
おいては、従来のハードフェライト磁石に代わり、磁気
特性に優れる希土類焼結磁石を所望の形状に切断、研削
加工するか、あるいは希土類ボンド磁石を所望形状に成
形するなどして対応している。
【0003】切削・加工法にて作製された真密度の永久
磁石は高性能であるものの、材料の種類を問わず、既存
のハードフェライト磁石に対して著しく高価となる欠点
がある。さらに、加工肉厚は0.2mm程度が限度であ
り、それ以下のものは製造困難である。
【0004】一方、ボンド磁石においては、直径3m
m、肉厚0.3mm程度の扁平磁石が成形され、時計用
小型ステッピングモータ用永久磁石として用いられてい
るが、粉末粒径が50μm〜300μm程度の磁粉を樹
脂と共に加圧成形するため、極薄い、例えば0.1mm
以下の肉厚を有す成形品を得ることは困難である。特に
リング磁石では肉厚と直角方向にパンチで圧縮する方法
では肉厚0.8mm程度が限界である。
【0005】また、圧縮方向に長い寸法の磁石を成形す
る場合は、磁粉とダイス表面との摩擦抵抗のために圧力
が均一に伝わらなくなり、薄肉の長尺品の成形は困難で
ある。最近、ボンド磁石を押し出し成形法により、肉厚
0.5nm厚の長尺リング磁石の製造が可能となったと
の報告があるが、樹脂比率の分だけ磁気特性は低下し、
最高でも残留磁束密度Brは7kG、最大エネルギー積
(BH)maxは9.9MGOe程度である。
【0006】ボンド磁石用磁粉としては、従来から2:
17系Sm−Co合金粉末が用いられているが、最近で
はHDDR法により製造されるNd‐Fe‐B系の合金
粉末もボンド磁石用磁粉として用いられつつある。これ
らは、いずれもボンド磁石用として開発された磁粉であ
り、これら自体に加工を施し、永久磁石とすることはで
きない。
【0007】また、現在、ボンド磁石粉としては溶湯急
冷法にて製造されるNd‐Fe‐B系の等方性磁粉が多
く使用されているが、この材料は溶湯急冷により結晶質
からなる薄片(フレーク)として得られるため、極めて
脆く、弾性的に曲げる、打ち抜き加工を施すなどして任
意の形状とすることは不可能であり、ボンド磁石磁粉と
しての用途に限られる。
【0008】また、ボンド磁石は焼結磁石に必要な切削
加工なしに任意形状を得られるため低コスト化を計れる
が、樹脂を介して平均粒径150μm程度のNd−Fe
‐B磁粉が結合しているため、磁粉が脱粉しやすく、例
えば、HDD用モーターに使用した場合は、脱粉により
記録媒体を損傷する危険性が高く、表面塗装など脱粉防
止のための対策をとる必要がある。
【0009】さらに、Nd‐Fe‐B磁粉の急冷合金薄
帯を粉砕した粉砕粉であるため、粉砕粉の破断面は急冷
薄帯面に比べ活性で酸化しやすく、酸化防止のための表
面塗装を施さなければ、80℃、相対湿度90%の環境
下では1000時間放置すると、酸化の影響により、パ
ーミアンス係数Peが1の磁石の場合、磁束密度が2%
程度低下するだけでなく、表面に赤錆が発生し脱粉の原
因となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】一方、Nd‐Fe‐B
系磁石において、近年、Nd4Fe7719(at%)近
傍組成でFe3B型化合物を主相とする磁石材料が提案
(R.Coehoorn等、J.de Phys,C
8,1988,669〜670頁)され、その技術内容
は米国特許4,935,074号等に開示されている。
また、Koonはそれよりも以前に、Laを必須元素と
して含むLa‐R‐B‐Feアモルファス合金に結晶化
熱処理を施すことによる、微細結晶からなる永久磁石の
製造方法を米国特許4,402,770号にて提案して
いる。
【00011】最近ではRichtenらによってEP
Patent 558691B1に開示されているよ
うに、Ndを3.8at%〜3.9at%含有するNd
‐Fe‐B‐V‐Si合金溶湯を回転するCuロール上
に噴射して得られたアモルファスフレークを700℃で
熱処理することにより、硬磁気特性を有す薄片が得られ
ることを報告している。これらの永久磁石材料は、厚み
20μm〜60μmのアモルファスフレークに結晶化熱
処理を施すことによって得られる、軟磁性であるFe3
B相と硬磁性であるR2Fe14B相が混在する結晶集合
組織を有する準安定構造の永久磁石材料である。
【0012】かかる永久磁石材料は、10kG程度のB
rと2kOe〜3kOeのiHcを有し、高価なNdの
合有濃度が4at%程度と低いため、配合原料価格はN
2Fe14Bを主相とするNd‐Fe‐B磁石より安価
であり、価格対性能比の点で従来の希土類磁石より優
れ、ハードフェライト磁石の代替材料として提案された
が、従来のNd2Fe14Bを主相とするNd−Fe‐B
ボンド磁石同様、ボンド磁石としての用途に限られてき
た。
【0013】しかしながら、ボンド磁石は磁気特性の高
い磁粉を用いても、磁粉の充填率を80%以上にするこ
とは困難なため、ボンド磁石として高い磁気特性は期待
できず、特に小型のボンド磁石の場合は等方性で10M
GOe程度が最高である。
【0014】この発明は特定組成の合金溶湯を特定の溶
湯急冷条件により得られたアモルファス薄帯に、平均結
晶粒径が10nm〜50nmになる結晶化熱処理を施こ
すことによって、iHc≧2kOe、Br≧8kGの硬
磁気特性を有する微細結晶型永久磁石を製造できること
に着目し、ボンド磁石より高い磁気特性を有効に利用で
きるよう、これを任意の肉厚を有する所望形状、例え
ば、加速度センサー用磁気回路に最適な小型、薄肉形状
の永久磁石を容易に製造できる永久磁石の製造方法の提
供を目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ボンド磁石
より高い磁気特性を有し、任意の肉厚を有する所望形状
に加工できる永久磁石を目的に種々検討した結果、6a
t%以下の希土類元素と15at%〜30at%のホウ
素を含む特定組成の合金溶湯より、特定の溶湯急冷条件
ににて得られた平均厚み10μm〜100μmのアモル
ファス組織からなる急冷合金薄帯が優れた靭性および弾
性変形能を有することに注目して、この薄帯の表面には
んだなどの金属層を設けた後、急冷合金薄帯をそのまま
あるいは所定の長さに切断または任意形状に打ち抜き加
工した後、これを二枚以上積層して所要厚みとなし、結
晶化熱処理による磁気的硬化処理を行い、iHc≧2k
Oe,Br≧8kGの硬磁気特性を有する永久磁石とな
すと同時に溶融させたはんだで永久磁石薄帯同士を密
着、一体化することで、粉砕、ボンド磁石化の方法を用
いることなく、任意の肉厚、所望形状を有する積層永久
磁石を得られることを知見し、この発明を完成した。
【0016】すなわち、この発明は、組成式を Fe100-x-yxy (Fe1-mCom100-x-yxy Fe100-x-y-zxyz (Fe1-mCom100-x-y-zxyz (但しRはPr、Nd、Dy、Tbの1種または2種以
上、AはC、Bの1種または2種、MはAl、Si、T
i、V、Cr、Nn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、
Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pbの1種
または2種以上)のいずれかで表し、組成範囲を限定す
る記号x、y、z、mが下記値を満足する合金溶湯を、
30kPa以下の不活性ガス雰囲気中において、回転ロ
ールを用いた溶湯急冷法により得られる、90%以上ア
モルファス組織からなる、優れた靭性および弾性変形能
を有す、平均厚みが10μm〜100μmの急冷合金薄
帯を作製した後、急冷合金薄帯の表面に200℃〜55
0℃の融点を有する金属を鍍金もしくは蒸着し、そのま
まあるいは切断または打ち抜き加工により所定形状とし
た後、これを任意の厚みになるよう二枚以上積層し、そ
の後、平均結晶粒径が10nm〜50nmになる結晶化
熱処温度550℃〜750℃にて結晶化熱処理を施こす
際、同時に薄帯表面に鍍金もしくは蒸着した金属が溶融
し、薄帯同士が密着することにより、20μm以上の任
意の肉厚を有する積層永久磁石の製造方法を提案するも
のである。 1≦x<6at% 15≦y≦30at% 0.01≦z≦7at% 0.001≦m≦0.5
【0017】
【発明の実施の形態】
組成の限定理由 希土類元素Rは、Pr、NdまたはDy、Tbの1種ま
たは2種を特定量含有のときのみ、高い磁気特性が得ら
れ、他の希土類、例えばCe、LaではiHcが2kO
e以上の特性が得られず、また、TbおよびDyを除く
Sm以降の中希土類元素、重希土類元素は磁気特性の劣
化を招来するため好ましくない。Rは、1at%未満で
は2kOe以上のiHcが得られず、また6at%を越
えると8kG以上のBrが得られないため、1at%以
上、6at%未満の範囲とする。好ましくは、2at%
〜5.5at%が良い。
【0018】Aは、CまたはBの1種または2種の合計
が15at%未満では液体急冷後の金属組織において、
α‐Feの析出が著しく、保磁力の発現に必須であるN
2Fe14B型結晶構造を有する化合物の析出が阻害さ
れるため、1kOe未満のiHcしか得られず、また、
30at%を越えると減磁曲線の角形性が著しく低下す
るため、15at%〜30at%の範囲とする。好まし
くは、15at%〜20at%が良い。
【0019】Feは、上述の元素の含有残余を占め、F
eの一部をCoで置換することにより金属組織が微細化
され、滅磁曲線の角形性が改善され、最大エネルギー積
(BH)maxの向上、並びに耐熱性の向上が得られる
が、Feに対する置換量が0.1%未満ではかかる効果
が得られず、また、50%を越えると8kG以上のBr
が得られないため、CoのFeに対する置換量は0.1
%〜50%の範囲とする。好ましくは、0.5%〜10
%の置換量が良い。
【0020】添加元素MのAl、Si、Ti、V、C
r、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、A
g、Pt、Au、Pbは、微細結晶永久磁石の微細組織
化に寄与し、保磁力を改善すると共に、減磁曲線の角形
性を改善し、Brおよび(BH)maxを増大する効果
が得られるが、0.01at%未満ではかかる効果が得
られず、7at%以上では、Br≧8kGの磁気特性を
得られないため、0.01at%〜7at%の範囲とす
る。好ましくは、0.05at%〜5at%である。
【0021】製造条件の限定理由 この発明において、上述の特定組成の合金溶湯を30k
Pa以下の不活性ガス雰囲気中、回転ロールを用いた溶
湯急冷法にて、優れた靭性および弾性変形能を有す、平
均厚みが10μm〜100μmであるアモルファス薄帯
を作製し、このアモルファス薄帯を任意の形状に加工し
た後、平均結晶粒径が10nm〜50nmになる結晶化
熱処理を施こすことによって、iHc≧2kOe,Br
≧8kGの硬磁気特性を有し、平均厚み10μm〜10
0μmの肉厚である任意形状の薄肉の永久磁石を得るこ
とが最も重要である。
【0022】すなわち、合金溶湯の急冷雰囲気が30k
Pa以上の場合は、回転ロールと合金溶湯の間に巻き込
まれる雰囲気ガスの影響が顕著になるため、実質90%
以上アモルファスからなる均一組織とならないため、優
れた靭性および弾性変形能が得られず、任意の形状に急
冷合金薄帯の加工できないため、好ましくない。雰囲気
ガスは、合金溶湯の酸化防止のため、不活性ガス雰囲気
とする。好ましくは、Ar雰囲気中が良い。
【0023】合金溶湯の溶湯急冷に用いる回転ロールの
材質は、熱伝導度の点からアルミニウム合金、純銅およ
び銅合金、鉄、真鍮、タングステン、青銅を採用できる
が、機械的強度および経済性の点から、CuもしくはF
e(但しCu、Feを含む合金でもよい)が好ましく、
上記以外の材質では熱伝導が悪いため、充分合金溶湯を
冷却できず、実質90%以上アモルファスからなる均一
組織を得られないため好ましくない。
【0024】回転ロールを用いた溶湯急冷法としては、
単ロール急冷法、および双ロール急冷法が挙げられる
が、優れた靭性および弾性変形能を有す、平均厚みが1
0μm〜100μmのアモルファス薄帯を作製できれ
ば、いずれの急冷方法を採用しても良い。
【0025】例えば、回転ロールに中心線粗さRa≦
0.8μm、最大高さRmax≦8.2μm、10点の
平均粗さRz≦3.2μmの表面粗度を有するCu製ロ
ールを用いた単ロール急冷法を採用した場合、ロール周
速度が10m/s以下の場合、破損せずに曲げることの
できる臨界半径が10mm以下である優れた靭性および
弾性変形能を有す平均厚み10μm〜100μmのアモ
ルファス薄帯が得られないため、ロール周速度は10m
/s以上が好ましい。好ましいロール周速度は15m/
s〜50m/sである。
【0026】この発明において、20μm以上の任意の
肉厚を有する永久磁石は以下の製造工程による。上述の
溶湯急冷条件により得られた優れた靭性および弾性変形
能を有する平均厚みが10μm〜100μmのアモルフ
ァス組織からなる急冷合金薄帯に、この薄帯の結晶化温
度である550℃〜600℃以下にて溶融する金属を鍍
金もしくは蒸着した後、この急冷合金薄帯を任意の厚み
になるよう二枚以上積層し、その後、平均結晶粒径が1
0nm〜50nmになる結晶化熱処温度550℃〜75
0℃にて結晶化熱処理を施こす際、同時に薄帯表面に鍍
金もしくは蒸着した金属層が溶融することによって、こ
の薄帯同士を密着、一体化させることによって得られ
る。
【0027】急冷合金薄帯に鍍金もしくは蒸着する金属
は、このアモルファス薄帯の結晶化温度である550℃
〜600℃以下の融点を有す金属であればよいが、人体
および環境に対する影響、取り扱いの容易さを鑑み、Z
n、はんだが好ましい。また、鍍金もしくは蒸着する金
属量は、永久磁石に占める割合が10wt%以上の場
合、8kG以上のBrが得られないため好ましくなく、
また、0.01wt%以下では積層した永久磁石薄帯を
密着できないため、金属量は0.01vt%〜10wt
%に限定する。好ましくは0.5wt%〜5wt%が良
い。
【0028】所望形状の積層永久磁石は、上述の鍍金も
しくは蒸着した急冷合金薄帯を切断あるいは打ち抜き加
工した後、任意の厚みになるよう二枚以上積層し、その
後、平均結晶粒径が10nm〜50nmになる結晶化熱
処理を施こす際、同時に鍍金もしくは蒸着した金属層が
溶融し、加工済みの急冷合金薄帯を同士を密着、一体化
させることによって得られる。
【0029】アモルファス薄帯を切断あるいは打ち抜き
加工により任意形状とする際は、結晶化熱処理後の薄帯
では靭性および弾性変形能が失われるため、パンチ等を
用いた機械的打ち抜き加工は、薄帯が破断し任意形状に
打ち抜けないため、優れた靭性および弾性変形能を有し
ているアモルファス薄帯を任意形状に打ち抜き加工した
後、結晶化熱処理を行う方法が好ましい。なお、超音波
加工などの機械的打ち抜き、加工以外の方法であれば、
結晶化後熱処理を加えた後でも破断等の問題なく加工を
行える。
【0030】前述の90%以上がアモルファス組織から
なる急冷合金薄帯は、iHc≧2kOe、Br≧8kG
の硬磁気特性を発現し得る平均結晶粒径10nm〜50
nmの微細結晶金属組織となるよう、結晶化熱処理を行
なう必要があるが、熱処理温度が550℃未満では保磁
力の発現に必須なNd2Fe14Bが析出しないため1k
Oe未満のiHcしか得られない、また750℃を越え
ると粒成長が著しく、平均結晶粒径が50nm以上とな
るためiHc、Brおよび減磁曲線の角形性が劣化し、
上述の磁気特性が得られないため、熱処理温度は550
℃〜750℃が好ましい。ただし、550℃〜750℃
の熱処理にて得られる微細結晶組織において、平均結晶
粒径は細かいほど好ましいが、10nm未満ではiHc
の低下を引き起こすため、下限を10nmとする。
【0031】熱処理において、雰囲気は酸化を防ぐため
Arガス、N2ガスなどの不活性ガス雰囲気中もしくは
1.33Pa以下の真空中が好ましい。磁気特性は熱処
理時間には依存しないが、6時間を越えるような場合、
若干時間の経過とともにBrが低下する傾向があるた
め、好ましくは6時間未満が良い。
【0032】
【実施例】表1のNo.1〜20の組成となるように、
純度99.5%以上のFe、Co、C、Al、Si、T
i、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、
Mo、Ag、Pt、Au、Pb、B、Nd、Pr、D
y、Tbの金属を用い、総量が30gとなるように秤量
し、底部に0.3mm×8mmのスリットを有する石英
るつぼ内に投入し、表1の急冷雰囲気圧に保持したAr
雰囲気中で高周波加熱により溶解した。
【0033】合金の溶解温度を1300℃にした後、合
金湯面をArガスにより加圧して室温にて、表1に示す
急冷雰囲気およびロール周速度にて回転するCu製ロー
ルの外周面に0.7mmの高さから溶湯を連続して鋳込
み、幅8mm、平均厚み10μm〜100μmの連続し
た急冷合金薄帯を作製した。得られた急冷合金薄帯は、
粉末XRD回折の結果、いずれもアモルファスであるこ
とを確認した。表2に得られた急冷合金薄帯の平均厚み
を示す。
【0034】この連続した急冷合金薄帯を切断し、幅8
mm、長さ50mmの急冷薄帯にした後、純度99.9
%のZnを0.15μm/minの成膜速度にて、厚み
4μmになるよう急冷薄帯に蒸着した。その後、このZ
nを蒸着した急冷薄帯を5mm×5mmのパンチによる
打ち抜き加工により、5mm×5mmの面を有す急冷合
金薄片とした後、平均厚み0.2mmとなるように積層
し、その後、Ar流気中、表1に示す熱処理温度で10
分間保持した後、室温まで冷却し、薄帯同士が溶融した
Znにより密着した5mm×5mm×0.2mmの永久
磁石を作製した。
【0035】磁石の磁気特性は永久磁石の高さ方向(5
mm×5mm面に対して垂直)に60kOeのパルス着
磁磁界で着磁した後、BHトレーサーにて閉磁路で評価
した。表3に磁石特性を示す。なお、No.3〜No.
20において、Co、Al、Si、Ti、V、Cr、M
n、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、P
t、Au、Pbは各構成相のFeの一部を置換している
ことを確認した。図1にNo.2の結晶化熱処理前後の
粉末X線回折パターンを示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】この発明は、6at%以下の希土類元素
と15at%〜30at%のホウ素を含む特定組成の合
金溶湯を特定の溶湯急冷条件により、高靭性を有し、加
工が容易な平均厚み10μm〜100μmのアモルファ
ス組織からなる急冷合金薄帯を作製した後、この急冷合
金薄帯の表面に550℃以下の融点をもつ金属層を鍍金
もしくは蒸着により形成し、その後、所望形状になるよ
う切断もしくは打ち抜き加工した後、任意の厚みになる
よう急冷合金薄帯を二枚以上積層し、iHc≧2kO
e、Br≧8kGの硬磁気特性を得られる平均結晶粒径
10nm〜50nmになる温度550℃〜750℃にて
結晶化熱処理を施こすことで、同時に急冷合金薄帯表面
に設けた金属層が溶融させてこの薄帯同士を強固に結合
することで、粉砕、ボンド磁石化の方法を用いることな
く、また成形後、切削加工を施す必要のない、任意の肉
厚、所望形状を有する高性能な積層永久磁石を容易に提
供できる。
【0040】また、この発明によって得られた積層磁石
は、急冷合金薄帯を粉砕せずに用いるため、既存のNd
‐Fe‐B系ボンド磁石の問題点であった酸化、および
脱粉の問題を改善できるだけでなく、ボンド磁石以上の
密度が得られることから高い磁気特性を有し、家電用機
器、OA機器、電装品等の小型高性能化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】急冷合金薄帯の結晶化熱処理前後の粉末X線回
折パターンを示すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年7月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】最近ではRichterらによってEP
Patent 558691B1に開示されているよう
に、Ndを3.8at%〜3.9at%含有するNd‐
Fe‐B‐V‐Si合金溶湯を回転するCuロール上に
噴射して得られたアモルファスフレークを700℃で熱
処理することにより、硬磁気特性を有す薄片が得られる
ことを報告している。これらの永久磁石材料は、厚み2
0μm〜60μmのアモルファスフレークに結晶化熱処
理を施すことによって得られる、軟磁性であるFe3
相と硬磁性であるR2Fe14B相が混在する結晶集合組
織を有する準安定構造の永久磁石材料である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】すなわち、この発明は、組成式を Fe100-x-yxy (Fe1-mCom100-x-yxy Fe100-x-y-zxyz (Fe1-mCom100-x-y-zxyz (但しRはPr、Nd、Dy、Tbの1種または2種以
上、AはC、Bの1種または2種、MはAl、Si、T
i、V、Cr、Nn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、
Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pbの1種
または2種以上)のいずれかで表し、組成範囲を限定す
る記号x、y、z、mが下記値を満足する合金溶湯を、
30kPa以下の不活性ガス雰囲気中において、回転ロ
ールを用いた溶湯急冷法により得られる、90%以上ア
モルファス組織からなる、優れた靭性および弾性変形能
を有す、平均厚みが10μm〜100μmの急冷合金薄
帯を作製した後、急冷合金薄帯の表面に200℃〜55
0℃の融点を有する金属を鍍金もしくは蒸着し、そのま
まあるいは切断または打ち抜き加工により所定形状とし
た後、これを任意の厚みになるよう二枚以上積層し、そ
の後、平均結晶粒径が10nm〜50nmになる結晶化
熱処温度550℃〜750℃にて結晶化熱処理を施こす
際、同時に薄帯表面に鍍金もしくは蒸着した金属が溶融
し、薄帯同士が密着することにより、20μm以上の任
意の肉厚を有する積層永久磁石の製造方法を提案するも
のである。 1≦x<6at% 15≦y≦30at% 0.01≦z≦7at%0.01 ≦m≦0.5
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】Feは、上述の元素の含有残余を占め、F
eの一部をCoで置換することにより金属組織が微細化
され、磁曲線の角形性が改善され、最大エネルギー積
(BH)maxの向上、並びに耐熱性の向上が得られる
が、Feに対する置換量が0.1%未満ではかかる効果
が得られず、また、50%を越えると8kG以上のBr
が得られないため、CoのFeに対する置換量は0.1
%〜50%の範囲とする。好ましくは、0.5%〜10
%の置換量が良い。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】添加元素MのAl、Si、Ti、V、C
r、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、A
g、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pbは、微細結晶永
久磁石の微細組織化に寄与し、保磁力を改善すると共
に、減磁曲線の角形性を改善し、Brおよび(BH)m
axを増大する効果が得られるが、0.01at%未満
ではかかる効果が得られず、7at%以上では、Br≧
8kGの磁気特性を得られないため、0.01at%〜
7at%の範囲とする。好ましくは、0.05at%〜
5at%である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正内容】
【0026】この発明において、20μm以上の任意の
肉厚を有する永久磁石は以下の製造工程による。上述の
溶湯急冷条件により得られた優れた靭性および弾性変形
能を有する平均厚みが10μm〜100μmのアモルフ
ァス組織からなる急冷合金薄帯に、550℃以下にて溶
融する金属を鍍金もしくは蒸着した後、この急冷合金薄
帯を任意の厚みになるよう二枚以上積層し、その後、平
均結晶粒径が10nm〜50nmになる結晶化熱処温度
550℃〜750℃にて結晶化熱処理を施こす際、同時
に薄帯表面に鍍金もしくは蒸着した金属層が溶融するこ
とによって、この薄帯同士を密着、一体化させることに
よって得られる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】急冷合金薄帯に鍍金もしくは蒸着する金属
は、このアモルファス薄帯の結晶化温度である550℃
〜600℃以下の融点を有す金属であればよいが、人
体および環境に対する影響、取り扱いの容易さを鑑み、
Zn、はんだが好ましい。また、鍍金もしくは蒸着する
金属量は、永久磁石に占める割合が10wt%以上の場
合、8kG以上のBrが得られないため好ましくなく、
また、0.01wt%以下では積層した永久磁石薄帯を
密着できないため、金属量は0.01wt%〜10wt
%に限定する。好ましくは0.5wt%〜5wt%が良
い。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式をFe100-x-yxy (但しR
    はPr,Nd,Dy,Tbの1種又は2種以上、Aは
    C,Bの1種または2種)と表し、組成範囲を限定する
    記号x,yが下記値を満足する合金溶湯を、30kPa
    以下の不活性ガス雰囲気中で回転ロールを用いた溶湯急
    冷法で処理し、90%以上がアモルファス組織からなる
    急冷合金薄帯を作製し、得られた平均厚みが10μm〜
    100μmの急冷合金薄帯の表面に200℃〜550℃
    の融点を有する金属を鍍金または蒸着し、この急冷薄帯
    をそのままあるいは所定形状に加工した後に所定肉厚み
    となるように積層し、さらにアモルファス組織から平均
    結晶粒径が10nm〜50nmの微細結晶組織に結晶化
    する550℃〜750℃の熱処理を施し、同時に表面の
    金属層を溶融させて一体化した永久磁石となす積層永久
    磁石の製造方法。 1≦x<6at% 15≦y≦30at%
  2. 【請求項2】 組成式を(Fe1-mCom100-x-yx
    y (但しRはPr,Nd,Dy,Tbの1種又は2種
    以上、AはC,Bの1種又は2種)と表し、組成範囲を
    限定する記号x,y,mが下記値を満足する合金溶湯を
    永久磁石化する請求項1に記載の積層永久磁石の製造方
    法。 1≦x<6at% 15≦y≦30at% 0.001≦m≦0.5
  3. 【請求項3】 組成式をFe100-x-y-zxyz (但
    しRはPr,Nd,Dy,Tbの1種又は2種以上、A
    はC,Bの1種又は2種、MはAl,Si,Ti,V,
    Cr,Mn,Ni,Cu,Ga,Zr,Nb,Mo,A
    g,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pbの1種又は2種
    以上)と表し、組成範囲を限定する記号x,y,zが下
    記値を満足する合金溶湯を永久磁石化する請求項1に記
    載の積層永久磁石の製造方法。 1≦x<6at% 15≦y≦30at% 0.01≦z≦7at%
  4. 【請求項4】 組成式を(Fe1-mCom100-x-y-zx
    yz (但しRはPr,Nd,Dy,Tbの1種又は
    2種以上、AはC,Bの1種又は2種、MはAl,S
    i,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Cu,Ga,Zr,
    Nb,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pb
    の1種又は2種以上)と表し、組成範囲を限定する記号
    x,y,z,mが下記値を満足する合金溶湯を永久磁石
    化する請求項1に記載の積層永久磁石の製造方法。 1≦x<6at% 15≦y≦30at% 0.01≦z≦7at% 0.01≦m≦0.5
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