JP5692496B2 - 積層型樹脂複合磁石膜の製造方法及び径方向空隙型回転電気機械 - Google Patents

積層型樹脂複合磁石膜の製造方法及び径方向空隙型回転電気機械 Download PDF

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Description

本発明は、主に微小な回転電気機械の可動子などに利用される積層型樹脂複合磁石膜の製造方法と、この製造方法により作製した積層型樹脂複合磁石膜を利用した径方向空隙型回転電気機械とに関する。
回転電気機械の小型軽量化に関し、例えば、情報通信機器などに利用される回転電気機械では、体積約40mm3、重さ300mgまで小型軽量化したものが市場を形成している。これらの回転電気機械のトルクは当該回転電気機械の体積との関係においてスケーリング則に基づく累乗近似が成立つ。このため著しいトルク低下がある。したがって車載、情報家電、通信、精密計測、医療福祉機器分野などの先端電気電子機器やロボットなどの駆動源として利用されるような、回転電気機械ではトルクの向上が強く求められている。
例えば、特許文献1には、スロットを設けた導電円筒状壁を有する円筒状本体を励磁巻線とし、外径1mm以下、長さ2mm以下の径方向空隙型DCブラシレスモータの血管内超音波走査システムが開示されている。
上記のような微小な回転電気機械は、例えば所定形状に放電加工したNd2Fe14B焼結磁石を外径0.76mmの径方向に極対数1で磁化することで異方性バルク磁石可動子とし、これを固定子鉄心と組合せて外径1.6mm、長さ2mmの回転電気機械(DCブラシレスモータ)とする[非特許文献1参照]。あるいは、前記のような構成の異方性バルク磁石可動子を用いて、H.Raisigel、M.Nakano、伊東らは、それぞれ、外径6mm、長さ2.2mm[非特許文献2参照]、外径5mm、長さ1mm [非特許文献3参照]、並びに、外径0.8mm、長さ1.2mm[非特許文献4参照]などの微小な回転電気機械とするものが知られている。
上記のような異方性バルク磁石可動子に関しては、例えば、異方性Nd2Fe14B系焼結磁石を外径0.9mmに研削加工したのち、当該表面にDy,Tbなどのスパッタ膜を形成し、内部拡散を促す熱処理を施す表面改質で残留磁化Mrは1.35Tに達し、保磁力HcJは1.34MA/mまで回復し、(BH)maxは341kJ/m3に到る異方性バルク磁石可動子[特許文献2参照]が知られている。
また、上記のような異方性バルク磁石ではなく、異方性磁石膜としては、D.Hinzらの750℃でのダイアップセット[die upset]法によって作製した厚さ300μmの磁石膜が知られる。この異方性磁石膜は面垂直方向の残留磁化Mrが1.25T、保磁力HcJが1.06MA/m、(BH)maxが290kJ/m3が得られるとしている[非特許文献5参照]。このような高Mr型磁石膜は回転電気機械の異方性磁石膜可動子としての利用が知られている[非特許文献6参照]。
さらに、Topfer、およびT.Speliotisらは、直径10mmのFe-Si基板にスクリーン印刷した残留磁化Mrが0.42T、(BH)maxが15.8kJ/m3、厚さ500μmのNd2Fe14B系ボンド磁石膜を等方性磁石膜可動子とし、トルク55μNmの回転電気機械(ステッピングモータ)としている[非特許文献7参照]。
他方では、保磁力HcJが600kA/m以上、残留磁化Mrが0.94T以上、60nm以下のαFe相とR2Fe14B(RはNd、またはPr)相を有するナノコンポジットが含まれる磁気的な等方性の結晶化急冷凝固薄帯の粗粉砕粉末と結合剤とのコンパウンドを圧縮成形し、加熱硬化した密度6.0Mg/m3のボンド磁石を直径3mm、極対数6の可動子とする。すると密度6.0Mg/m3のNd2Fe14B単相ボンド磁石可動子を比較対象とした回転電気機械(ステッピングモータ)のトルクを概ね15%改善するとしている[特許文献3参照]。
以上のように、微小な回転電気機械の可動子に利用される磁石に関しては残留磁化Mrが0.42T〜1.35Tに至る広範な磁気特性、あるいは粉末や、膜からバルクに至るまで多様な材料形態が試行されているのが現状である。
ところで、組成式Fe100-x-yRxAy(但しRはPr,Nd,Dy,Tbの1種または2種以上、AはC、またはBの1種または2種、1at.%≦x<6at.%、15at.%≦y≦30at.%)のような特定の溶湯合金を、特定の急冷凝固条件にて厚さ10μm〜100μm、90%以上が非晶質の薄帯が優れた靭性および弾性変形能を有するものとし、当該薄帯をそのまま直接、あるいは所定の長さに切断、または任意形状に打抜加工した後、さらに非晶質組織から、Fe3B相とNd2Fe14B相が混在した平均結晶粒径が10nm〜50nmの微細結晶組織にする550℃〜750℃の熱処理を施し、保磁力HcJが160kA/m以上、残留磁化Mrが0.8T以上の結晶化薄帯を作製し、これを2枚以上積層し、エポキシ樹脂にて積層した結晶化薄帯同士を密着し一体化することで、薄帯あるいは薄片の粉砕、ボンド磁石化の方法を用いることなく、任意の肉厚、所望形状を有する高性能な積層型磁石薄帯が得られる[特許文献4参照]。
あるいはまた、上記のような90%以上が非晶質組織からなる厚み10μm〜100μmの急冷凝固薄帯の表面に200℃〜550℃の融点を有する金属を鍍金または蒸着し、この急冷凝固薄帯を、そのまま直接的にあるいは所定形状に加工した後に積層し、さらに非晶質組織から、Fe3B相、αFe相、Nd2Fe14B相が混在した平均結晶粒径が10nm〜50nmの微細結晶組織とする550℃〜750℃の熱処理を施し、同時に表面の金属層を溶融させて一体化した積層磁石の製造方法が知られている[特許文献5参照]。
さらに、特許文献6では、Fe100-y-zCo10RyBz、またはFe100-y-zCo9.5TM2RyBz(ただし、TMは、V、Ti、Cr、Mn、Cu、Nb、Mo、W、Ta、HfまたはZrのうちから選択される1種または2種以上の元素、Rは、希土類元素のうちから選択される1種または2種以上の元素、Bはホウ素、組成比を示すy、zはat.%で、2.5<y<4.0、19<z<25)であり、かつ(デルタ)Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgは、ガラス遷移温度)の式で表される過冷却液体領域の温度間隔(デルタ)Txが35℃以上、Tg/Tm(ただし、Tmは、合金の融解温度)の式で表される換算ガラス化温度が0.55以上であり、単ロール液体急冷凝固法により得られた厚さ200μm〜300μm、非晶質相の体積比率90%以上の金属ガラス合金を熱処理した合金であって、R2Fe14B、Fe3B、αFe相および残存非晶質相からなる平均粒径50nm以下の組織を有し、残留磁化Mrが1T以上、保磁力HcJが150kA/m以上、厚さ200μm〜300μmの鉄基磁石を開示している。
特表平09−501820号公報 特開2005−210876号公報 特許第4089220号公報 特許第3643214号公報 特許第3643215号公報 特許第3886317号公報
太田 斎,小原隆雄,唐田行庸,武田宗久,三菱電機技報 Vol.75, pp.703-708 (2001). H.Raisigel, O.Wiss, N.Achotte, O.Cugat, J.Delamare, Proc. of 18th Int. workshop on high performance magnets and their applications, Annecy,France,pp.942-944,(2004). M.Nakano, S.Sato, R.Kato, H.Fukunaga, F.Yamashita, S.Hoefinger and J.Fidler, Proc. 18th Int. Workshop on High Performance Magnets and Their Applications,Annecy,France,pp.723-726,(2004). 伊東哲也,日本応用磁気学会誌,Vol.18,pp.922-927,(1994). D. Hinz,O.Gutfleisch and K.H.Muller,Proc.18th Int.Workshop on High Performance Magnets and Their Applications, Annecy,France,pp.76-83 (2004). F.Yamashita, M.Nakano, H.Fukunaga, Proc.17th Int. Workshop on Rare-Earth Magnets and Their Applications, Newark,DE,US.pp.668-674,(2002). Topfer, B.Pawlowski, D.Schabbel,Proc. of 18th Int. workshop on high performance magnets and their applications, pp.942-944,(2004). H. Fukunaga, H. Nakayama, M. Nakano, M. Ishimaru, M. Itakura, and F.Yamashita, Intermag 2008,FG-06. 金清裕和、広沢哲,日本応用磁気学会誌,vol.22,pp.385-387(1998) F.Yamashita, K.Takasugi, H.Yamamoto, H.Fukunaga, Transaction on Magn. Soc. Japan, Vol.2,No.2,pp.32-35,(2002). F.Yamashita, M.Nakano, H.Fukunaga, Proc.17th Int. Workshop on Rare-Earth Magnets and Their Applications, Newark,DE,US,pp.457-460,(2002).
ところで、本発明が対象とする直径2mm以下のような微小な可動子を搭載する回転電気機械のトルクTは、極対数をPn、電流をI(Id,Iq)、インダクタンスをL(Ld,Lq)、及び鎖交磁束をΦaとすれば次の(式1)で示される。
(式1)
T=[Pn×Φa×Iq]+[Pn×(Ld-Lq)×Id]
ここで、右辺第1項は磁石トルク、第2項はリラクタンストルクである。なお、本発明が対象とする回転電気機械は、可動子の外径は概ね2mm以下である。このような実寸法の制約から、本発明が対象とする積層磁石膜可動子は、主に積層磁石膜で構成され、回転子鉄心をもたない。したがって、積層磁石膜可動子の発生トルクTは、右辺第1項の磁石トルク(Pn×Φa×Iq)のみとなり、第2項のリラクタンストルクはない。
なお、(式1)から、磁石トルクは、極対数Pn、鎖交磁束密度Φa、すなわち空隙磁束密度Φg、固定子励磁巻線の通電電流Iに比例する。また、モータのトルク定数Kt(Nm/A)は、固定子励磁巻線の通電電流Iに対するトルク勾配であり、Ktが大きいほど回転駆動力が増し、電流制御が容易となる。このことから、回転電気機械の微小化に伴うトルク減少を抑制し、さらにKtを増して回転駆動力や制御性を高める手段として、1)極対数Pnを増加する。2)空隙磁束密度Φgを増加する。3)空隙パーミアンスPgを高めて磁気抵抗を低減する。4)励磁電流Iq、または励磁巻線の巻数nを増すことで、固定子側の励磁力を強めることなどがある。
外径が概ね2.0mm以下の可動子において、例えば特許文献3は、残留磁化Mr=1.35Tの異方性Nd2Fe14B系焼結磁石、すなわち、高い残留磁化Mrをもつ異方性バルク磁石可動子を開示している。しかし、このような微小な可動子に異方性バルク磁石を適用すると極対数Pnが1に限定されるという欠点がある。
したがって、上記のような異方性バルク磁石可動子を用いる回転電気機械の高トルク化手段としては、当該可動子の磁石の残留磁化Mrを高めることが有効である。しかしながら、特許文献3が開示する可動子は、異方性Nd2Fe14B系バルク磁石を所定形状に機械加工したのち、当該表面にDy、Tbなどをスパッタなど物理的成膜手段で成膜し、熱処理により機械加工劣化による磁気特性を回復するもので、その残留磁化Mrは1.35Tである。つまり、(式1)における右辺第1項の磁石トルク(Pn×Φa×Iq)において磁石にかかる極対数Pnを1とした状態で、Nd2Fe14B金属間化合物の理論限界1.6Tまで残留磁化Mrを高めたと仮定してもトルクの向上は1.2倍未満にとどまる。
一方、D.Hinzらの厚さ300μmの磁石膜は面垂直方向の残留磁化Mrが1.25T、保磁力HcJが1.06MA/m、(BH)maxが290kJ/m3と高い磁気特性を得ている[非特許文献5参照]。しかしながら、このような面垂直異方性磁石膜の可動子としては軸方向空隙型回転電気機械への適用に限られる。
ところで、回転電気機械として、100mm3以下のDCブラシレスモータの体積Vmm3とトルクTmNmの関係は径方向空隙型でT=3x10-4x V1.0922(相関係数0.9924)、軸方向空隙型でT=3x10-6xV1.9022(相関係数0.9864)となる。このように、動作、構造が同じ場合には回転電気機械の体積とトルクには累乗近似が成り立つ。
径方向空隙型と軸方向空隙型回転電気機械の体積100mm3でのトルクを比較すると、それぞれ45μNm、19μNmとなり、径方向空隙型構造が2倍以上強いトルクを発生できる。つまり、面垂直方向に異方性をもつ磁石膜を構成要素とした異方性磁石膜可動子は軸方向に空隙をもつ回転電気機械の構造上、径方向空隙型に比べて、そのパーミアンス低下のために回転電気機械の高トルク化が困難である。
他方、Topferら、およびT.Speliotisらのスピニングカップガスアトマイゼーションによる球状Nd2Fe14Bをスラリーとし、スクリーン印刷した厚さが100μm〜800μm、残留磁化Mrが0.42T、保磁力HcJが760kA/mの等方性磁石膜を可動子として適用すると、残留磁化Mrが1.35Tのような高Mrをもつ異方性バルク磁石可動子から得られる径方向空隙型回転電気機械の空隙磁束密度Φaの40%未満にとどまる。このため、等方性磁石膜可動子を用いたTopferらの径方向空隙型回転電気機械は極対数Pnを10とするなど、極対数Pnを大幅に増やさなければ相応のトルクが得られない。このため、当該回転電気機械としてはPM型ステッピングモータなどに限定される[非特許文献7参照]。
さらにまた、特許文献4、特許文献5で示される非晶質相が90%以上の急冷凝固薄帯を積層し、バルクとする場合、得られる薄帯の保磁力HcJ範囲は160kA/m〜568kA/mであり、同様な特許文献6では171kA/m〜284kA/mである。保磁力HcJが低い原因は、特許文献4、特許文献5および特許文献6の何れもが非晶質相を結晶化したとき、少なくともFe3B相、αFe相、Nd2Fe14B相の3相が混在した微細な結晶組織となる。このため、ハード相を形成する希土類元素Rの上限が6at.%([特許文献4]、[特許文献5]参照)、あるいは希土類元素Rの上限が4at.%[特許文献6参照]に限定される。その結果、ハード相であるNd2Fe14B金属間化合物の化学量論組成の1/2あるいは1/3というように、Nd2Fe14B相の割合が大きく減らされるからである。
ところで、上記のような特許文献4、特許文献5および特許文献6に開示されている非晶質相が90%以上の急冷凝固薄帯の積層などによるバルク化に関する技術は、本発明が対象とする回転電気機械の可動子としての保磁力HcJが不足する場合がある。例えば、運転時の温度上昇による可動子の磁束損失、あるいは、回転軸が拘束された際の励磁巻線からの逆磁界に対する可動子の磁束損失などで、このような回転電気機械の可動子としての減磁耐力が不十分な場合には、回転電気機械の信頼性に重大な影響を及ぼす。
例えば、一般的な電気絶縁階級がE種(120℃)のPM型ステッピングモータのような径方向空隙型回転電気機械可動子の減磁耐力の維持確保に必要な保磁力HcJ水準は600kA/m以上であり、これより低い保磁力HcJでは高い残留磁化Mrをもった可動子であっても磁束損失が原因となって回転電気機械のトルク改善の効果が磁束損失によって失われる[非特許文献10参照]。故に、非特許文献7でも同様なことから、保磁力HcJの水準を600kA/m以上としていると考えられる。
回転電気機械の可動子として必要な保磁力HcJ水準は、当該回転電気機械の構造や駆動条件によって異なるものの、特許文献4、特許文献5および特許文献6のような保磁力HcJ水準が600kA/m未満という事実は、回転電気機械への適応力が脆弱であると結論づけられる。
以上のように、従来技術、例えば、特許文献3の残留磁化Mrが1.35Tの異方性バルク磁石を可動子としたとき、径方向磁化では極対数1という制約がある。また、残留磁化Mrを改善しても120%を超えるトルク改善は見込めない。
また、非特許文献5の厚さ300μm、残留磁化Mrが1.25Tの面垂直異方性磁石膜を可動子としたとき、径方向空隙型に比べてトルクが低下する軸方向空隙型回転電気機械への適用に限られる。
また、非特許文献7のスクリーン印刷による残留磁化Mr0.42Tの等方性磁石膜を可動子としたとき、残留磁化Mrの不足を補うために、例えば、極対数Pnを10とすることなどの理由から回転電気機械としてはPM型ステッピングモータなどに限定される。
さらに、非晶質相が90%以上の急冷凝固薄帯を加工したのち、積層してバルクとし、結晶化して可動子とする場合には、非晶質の薄帯が優れた靭性および弾性変形能を確保する必要があるため、ハード相の割合が低下し、磁束損失に基づくトルク低下など回転電気機械の信頼性に極めて重大な影響を及ぼす場合がある。
本発明の目的は、特許文献4、特許文献5および特許文献6のような非晶質相が90%以上の急冷凝固薄帯を、必要に応じて適宜切断したような磁石膜を所定形状になるように機械的な加工を施し、積層し、バルク化するのではなく、磁気的に等方性のナノスケール結晶組織をもち、保磁力HcJが600kA/m以上のものを包含する所定の磁石膜を中実または中空状とし、これを積層してバルク化することによって回転電気機械の高トルク化にかかる適応範囲を拡げるようとするものである。そして、上記特性を備えた積層型樹脂複合磁石膜の製造方法及びそのような積層型樹脂複合磁石膜を備えた回転電気機械の可動子またはモータを提供するものである。
(発明の態様)以下、本発明の態様を示す。(1)から(16)項が請求項1から16に対応する。
(1)溶湯合金の急冷凝固または合金を物理的堆積法で成膜した後、結晶化し、磁気的に等方性のナノスケール結晶組織を有する磁石膜を作製する第1工程と、前記磁石膜に被膜形成能を有する樹脂組成物を付与して前記磁石膜と樹脂膜からなる樹脂複合磁石膜を作製する第2工程と、該樹脂複合磁石膜を機械的に加工して中実または中空状の樹脂複合磁石膜を作製する第3工程と、複数の前記中実または中空状樹脂複合磁石膜を積層して積層樹脂複合磁石膜を作製する第4工程と、前記積層樹脂複合磁石膜の前記樹脂膜を溶融・冷却固化することにより、前記積層樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する第5工程と、及び、該剛体化したものを磁化する第6工程とを含むことを特徴とする積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
本項にかかる発明は、90%以上が非晶質の急冷凝固薄帯が優れた靭性および弾性変形能を有するとし、当該薄帯をそのまま直接あるいは所定の長さに切断、または任意形状に打抜加工した後、結晶化するものではなく、必要に応じて適宜所定の片に切断したナノスケール結晶組織の磁石膜に被膜形成能を有する樹脂組成物を付与した構成の樹脂複合磁石膜とし、これを中実または中空状に機械的に加工し、積層し、さらに一体的に剛体化するバルク化技術にかかる。
本項は、本発明にかかる磁石膜はR-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系溶湯合金の急冷凝固薄帯に限定されるものではなく、前記合金を物理的堆積法で成膜したのち、それらを必要に応じて適宜、熱処理で結晶化し、R2TM14B相でハード磁性を付与したソフト相が混在するナノスケール結晶組織であっても差支えないことを例示する。
なお、磁石膜がFe3B相、αFe相またはR2TM14B相(Rは、NdまたはPrであり、TMは、FeまたはFeの一部をCo置換したもの)ナノスケール結晶組織で、着磁界4MA/mのパルス着磁後の室温の保磁力HcJが300kA/m以上、残留磁化Mrが1.1T以上のものであっても、可動子として回転電気機械の構造または信頼性が確保できる範囲であれば本発明に適用できる。なお、このような磁気特性を発現する合金組成として、Nd 4.5 Fe70Co5B18.5Cr2を例示できる。
一方、被膜形成能を有する樹脂組成物とはイソシアナート基と反応し得る官能基をもつ重合体の1種または2種以上、ならびに必要に応じて適宜加えるイソシアナート再生体を主成分とするものである。また、樹脂複合磁石膜は機械的な加工が対向ダイス法による打抜加工であリ、かつ、当該積層型樹脂複合磁石膜の相対密度を当該磁石膜の真密度の85%以上とすることが好ましい。
さらに、積層型樹脂複合磁石膜の磁化が面内方向で、かつ極対数を2以上としたのち、回転軸を装着し、ブラシレスモータとしての回転動作を行う径方向空隙型回転電気機械とする工程を付加する。あるいはまた、極対数4以上として、ステッピングモータとしての回転動作を行う径方向空隙型回転電気機械とする工程を付加するものであっても差支えない。
さらには、本発明にかかる磁石膜はR-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系溶湯合金の急冷凝固薄帯を必要に応じて適宜熱処理することにより、αFe相とR2TM14B相(RはNdまたはPr、TMはFeまたはFeの一部をCo置換したもの)ナノスケール結晶組織からなるもので、着磁界4MA/mパルス着磁後の保磁力HcJが600kA/m以上、残留磁化Mrが0.9T以上とすると、可動子として回転電気機械の構造あるいは信頼性への対応力を確保するのに有利である。なお、このような磁気特性を発現する合金組成として、Pr9Fe74-xCo9V1NbxB7(x=1〜3)を例示できる。
さらに、適宜項分けして以下に示す。
(1)溶湯合金の急冷凝固または合金を物理的堆積法で成膜した後、結晶化し、磁気的に等方性のナノスケール結晶組織を有する磁石膜を作製する第1工程と、前記磁石膜に被膜形成能を有する樹脂組成物を付与して前記磁石膜と樹脂膜からなる樹脂複合磁石膜を作製する第2工程と、該樹脂複合磁石膜を機械的に加工して中実または中空状の樹脂複合磁石膜を作製する第3工程と、複数の前記中実または中空状樹脂複合磁石膜を積層して積層樹脂複合磁石膜を作製する第4工程と、前記積層樹脂複合磁石膜の前記樹脂膜を溶融・冷却固化することにより、前記積層樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する第5工程と、及び、該剛体化したものを磁化する第6工程とを含むことを特徴とする積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(2)前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、R-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系溶湯合金の急冷凝固またはR-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系合金を物理的堆積法で成膜した後、結晶化し、前記磁石膜がR2TM14B相でハード磁性を付与したナノスケール結晶組織にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(3)前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、R-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系溶湯合金の急冷凝固薄帯を熱処理することにより、前記磁石膜を、αFe相とR2TM14B相(RはNdまたはPr、TMはFeまたはFeの一部をCo置換したもの)のナノスケール結晶組織にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(4)前記第6工程において、前記磁石膜の磁気特性を、着磁界が4MA/mパルス着磁後において、保磁力HcJ600kA/m以上かつ残留磁化Mr0.9T以上にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(5)前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織をPr9Fe74-xCo9V1NbxB7(x=1〜3)溶湯合金の急冷凝固薄帯を熱処理することによって、前記ナノスケール結晶組織にする特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(6)前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、Fe3B相、αFe相またはR2TM14B相(RはNdまたはPr、TMはまたはFeの一部をCo置換したもの)からなるナノスケール結晶組織に形成することを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(7)前記第6工程において、前記磁石膜の磁気特性を、着磁界4MA/mのパルス着磁後において、保磁力HcJ300kA/m以上かつ残留磁化Mr1.1T以上にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(8)前記第工程において、前記磁石膜の金属組織を、Nd 4.5 Fe70Co5B18.5Cr2溶湯合金の急冷凝固薄帯を熱処理して、ナノスケール結晶組織にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(9)前記第2工程において、前記樹脂組成物に、イソシアナート基と反応し得る官能基をもつ重合体の1種または2種以上を主成分とするものを用いることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(10)前記樹脂組成物に、イソシアナート再生体を加えることを特徴とする、請求項9に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(11)前記第5工程において、前記樹脂膜を架橋することにより、前記積層樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する、請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(12)前記第3工程において、機械的な加工は、対向ダイス法による打抜加工によって行われることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(13)前記第2工程において、前記積層型樹脂複合磁石膜の相対密度が当該磁石膜の真密度の85%以上である前記積層型樹脂複合磁石膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(14)前記第6工程において、前記磁化を、前記積層型樹脂複合磁石膜の面内方向に沿って施し、かつ、極対数を2以上とするように行うようにすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
(15)請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法による該積層型樹脂複合磁石膜を極対数2以上に磁化し、かつ、該積層型樹脂複合磁石膜に回転軸を装着し、ブラシレスモータとして回転動作が可能なことを特徴とする径方向空隙型回転電気機械。
(16)請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法による該積層型樹脂複合磁石膜を極対数4以上に磁化し、かつ、前記積層型樹脂複合磁石膜に回転軸を装着し、ステッピングモータとして回転動作が可能なことを特徴とする径方向空隙型回転電気機械。
本発明によれば、磁気的に等方性のナノスケール結晶組織をもち、保磁力HcJが600kA/m以上のものを包含する所定の磁石膜を中実または中空状とし、これを積層してバルク化することによって回転電気機械の高トルク化にかかる適応範囲を拡げることができる。
また、本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜は、特許文献4、特許文献5、および特許文献6のような加工上の制約から希土類元素R(NdまたはPr)の量の制限、すなわち、ハード相の割合が制限されない。このため、回転電気機械の可動子として、回転動作機能や磁束損失によるトルク低下など、当該回転電気機械の構造、あるいは信頼性への対応力を向上することができる。
よって、本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜を可動子とする回転電気機械は、微小な回転電気機械のトルクを向上するため、径方向空隙型DCブラシレスモータ、PM型ステッピングモータ、或いは発電機などに適用して情報機器、医療機器、産業機器分野における各種電気電子機器の性能を向上への貢献が期待できる。
(a)、(b)は、ソフト相とハード相とのナノスケール結晶組織形態を示す概念図である。 対向ダイス打抜加工法の概念図である。 実施例で得られた磁石膜のパルス着磁後の磁気特性をまとめた表である。 結晶化した急冷凝固Pr9Fe74-xCo9V1Nb1B7磁石膜の結晶組織を示すTEMと電子線回折を示す特性図である。 SEMにより観察した本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜の破断面の積層状態を示す構造図である。 非晶質急冷凝固薄帯を粉末にし、減圧下で直流パルス電圧を印加し、非平衡プラズマ処理で粉末表面を浄化し、圧縮圧力下、昇温し、塑性変形と同時に非晶質相の結晶化により、Nd2Fe14B相を析出させた相対密度100%のフルデンス磁石の積層断面図である。 実施例にかかる磁石膜、積層型樹脂複合磁石膜、ならびに比較例としての相対密度RDが異なるボンド磁石の、4.8MA/mのパルス着磁後の保磁力HcJおよび残留磁化Mrを、それぞれ相対密度RDに対してプロットした特性図である。
先ず、本発明でいうナノスケール結晶組織からなる磁石膜について説明する。本発明にかかる磁石膜を構成するハード相としてR2TM14B(Rは希土類元素のうちNd、またはPr、TMは遷移金属元素のうちFe、Co)を例示できる。このような、ハード相と交換結合する高い飽和磁化MsのαFeなどのソフト相が存在すると、逆磁界の下でソフト相から先に磁化反転し、高い保磁力HcJが得られない。しかし、ソフト相のサイズを磁壁幅以下に抑えると、逆磁界における不均一磁化反転が抑制される。その結果、保磁力HcJがハード相の磁気異方性Haに支配されるようになり、保磁力HcJの低下が抑えられる。さらに、ソフト相から、より高い磁束を得るには、磁石中のソフト相の体積比を増す必要がある。そのためにはハード相のサイズをできる限り小さくすることが必要である。ハード相の大きさは、やはり磁壁幅以下であればよいが、あまり狭いと保磁力HcJの維持が困難になる。このため、磁壁幅程度に抑える。なお、磁壁幅は、π(A/Ku)1/2(A:交換スティッフネス定数、Ku:磁気異方性エネルギー)で見積もられる。
本発明にかかるナノスケール結晶組織の具体的構成としては、図1(a)のようにソフト相をαFe、ハード相をNd2Fe14Bとしたとき、それぞれ60nm以下、及び数nm程度とし、前記αFeよりも小さなハード相11を、ソフト相12と交互に103以上堆積した多層構造の磁石膜、あるいは図1(b)のように10nm〜50nmの範囲のソフト相12とハード相11とがランダムに分布する構成を例示できる。なお、このような磁石膜は何れも磁気的には等方性である。
さらに、本発明にかかる図1(a)の多層構造の磁石膜として、PLD(パルスレーザディポジション)によるαFeとNd2Fe14Bとが、Taなどの非磁性基板上にある磁石膜が例示できる[非特許文献8参照]。また、図1(b)のようなソフト相12とハード相11とがランダムに分布する構成の磁石膜としては溶湯合金の急冷凝固によるFeB、αFe、Nd2Fe14Bの3相から成る磁石膜[非特許文献9参照]、あるいは、αFeとPr2Fe14Bとの磁石膜が例示できる[非特許文献10参照]。
ところで、図1の(a)、(b)のソフト相とハード相の大きさを、20nm程度に調整したナノスケール結晶組織から成る磁気的に等方性の磁石膜は、レマネンスエンハンスメントによって残留磁化Mrを高めることができる。特に、αFeとR2TM14Bとの接触界面で充分な磁気的結合を付与し、それぞれの厚さを磁壁幅程度までナノスケール組織制御した場合の詳細な計算機解析によれば、結晶粒径10nm程度の均一なナノスケール結晶組織とすることで、等方性磁石膜の(BH)maxは200kJ/m3程度まで期待できるのである。
以上のように、本発明にかかる磁石膜はR-TM-B(RはNd、Pr、TMはFe、Co)系溶湯合金の急冷凝固、あるいは前記合金を物理的堆積法でαFeなどのソフト相、R-TM-B(RはNd、Pr、TMはFe、Co)系合金を交互に物理的に成膜したのち、それらを結晶化し、ハード磁性を発現させたナノスケール結晶組織から成る。なお、結晶化は必要に応じて省略することができる。
次に、本発明でいう被膜形成能を有する樹脂組成物について説明する。本発明でいう被膜形成能を有する樹脂組成物とは分子中にイソシアナート基(-N=C=O)と反応し得る官能基を有し、かつ被膜形成能をもつ重合体の1種または2種以上であり、必要に応じて適宜イソシアナート再生体の1種、または2種以上を加えた樹脂組成物である。また、当該重合体は本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する際に熱により、再溶融することが必須の要件である。
本発明でいう、分子中にイソシアナート基と反応し得る官能基として、例えば-OH、-COOH、-NHCO-、-NHCOO-、-NHCONH-、-NH2、-NHNH2、-SH、-CHS、-CSOH、活性メチレンなどが挙げられる。また、これらの官能基を有し、かつ被膜形成能を兼ね備えた重合体であれ如何なるものであってもよい。これらの中で好ましい官能基としては-OH、-NHCO-、-NHCOO-、-NHCONH-を有するものであり、その被膜形成能と加熱により再溶融する性質を兼ね備えた重合体である。
上記のような重合体としては分子中にアルコール性水酸基を有するポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリエステルイミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂があり、あるいはフェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、キシレン樹脂などがあり、さらにはポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリユリアなどがある。
分子中にイソシアナート基と反応する官能基を有する重合体のうち、ポリエーテルとしては、例えばビスフェノール類(-A、-Fなど)とエピクロルヒドリン、あるいは置換エピクロルヒドリンから得られるものがあり、下記[化1]で示される。
ただし、上式中、R1は-O-、-S-、-SO-、-SO2-、あるいは-CH2-、-CH2CH2-、-C(CH3)2-など、-CpH2p(pは整数)で示されるもの、また、R2は-H、あるいは-CH3、-C2H5などCqH2q+1(qは整数)で示される。なお、これらのうちで、とくに好ましいのはR1が-C(CH3)2-、R2が-Hのものである。またこれらは共重合物であっても差し支えない。
分子中にイソシアナート基と反応し得る官能基を有する重合体のうちポリエーテルエステルとしては、例えば[化2]で示されるものを挙げることができる。
ここで、上式中R1、R2は前記ポリエーテルエステルの場合と同じであり、R3は[化3]で示される。
分子中にイソシアート基と反応し得る官能基を有する重合体のうちポリアセタールとして、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール,ポリビニルブチラールなどがある。 分子中にイソシアナート基と反応し得る官能基を有する重合体のうちエポキシ樹脂としてはビスフェノール類とエピクロルヒドリン、あるいは置換エピクロルヒドリンとの縮合により得られるもの、あるいはその他、各種の方法によって得られる。例えば[化4]のような一般式で表されるものがある。なお、R1、R2は前述の通りである。
分子中にイソシアナート基と反応し得る官能基を有する重合体のうちフェノール樹脂としてはフェノール、クレゾール、キシレノール,p-t-ブチルフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン,ビスフェノールA等のフェノール性水酸基を有する化合物とホルムアルデヒド、あるいはフルフラールなどのアルデヒド基を有する化合物との反応生成物、あるいはこれ等を一部変成したものなどがある。またキシレン樹脂としてはホルムアルデヒドなどのアルデヒド基を有する化合物との反応生成物、あるいはこれらにフェノール、アルキルフェノール変成、アミン変成を行ったものなどがある。
分子中にイソシアナート基と反応し得る官能基を有するポリアミドとしてはホモポリアミドとしてラクタム、あるいはアミノカルボン酸より合成されるものと、ジアミンとジカルボン酸、あるいはそのエステルやハロゲン化物から合成されるものがあり[化5]および[化6]の一般式で示される。
なお、上記の[化5]および[化6]において、R1、R2、R3は一般にポリメチレン基であり、R1が(-CH2-)mであるものはナイロン(m+1)、R2が(-CH2-)p、R3が(-CH2-)q−2であるものはナイロン-p・qである。さらに、それらに第3の単量体を加えた共重合物であっても差し支えない。
分子中にイソシアナート基と反応し得る官能基を有する重合体のうちポリエステルとしては、例えば分子鎖末端、あるいは分子鎖内に水酸基を有するポリエステルがあり、芳香族2塩基酸、あるいはそのエステル、あるいはそのハロゲン化物と脂肪酸2価アルコールとにより得られるポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどがある。さらに、2価アルコール中に脂環構造を導入したものとしてポリ-1・4-シクロヘキシレンテレフタレートなどがあり、それらは何れも共重合体であっても差し支えない。
次に、本発明でいうイソシアナート再生体とは、イソシアナート基を分子中にアルコール性水酸基を有する化合物で安定化させた安定化ポリイソシアナート、あるいはこれとイソシアナート基をアルコール性水酸基以外のイソシアナート基を安定させ得る化合物で安定化させた安定化ポリイソシアナートである。ここで、イソシアナート基を分子中にアルコール性水酸基を有する化合物により安定化させた安定化ポリイソシアナートとはポリイソシアナートとアルコール性水酸基の反応により得られるものである。なお、ここでいうポリイソシアナートとしては、例えばポリイソシアナートのうちでジイソシアナート、例えば2・4-トリレンジイソシアナート、2・6-トリレンジイソシアナート、シクロペンチレンジイソシアナート、m-フェニレンジイソシアナート,p-フェニレンジイソシアナート、エチレンジイソシアナート、ブチリデンジイソシアナート、1・5-ナフタリンジイソシアナート、1・6-ヘキサメチレンジイソシアナート,4・4`-ジフェニルメタンジイソシアナート、4・4`-ジフェニルエーテルジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどがあり、3価以上のイソシアナートとしては、例えば2・4-トリレンジイソシアナートの環状3量体、2・6-トリレジンイソシアナートの環状3量体、4・4`-ジフェニルメタンジイソシアナートの3量体などがある。例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等である3官能基イソシアナート3量体、1・3・5-トリイソシアナートベンゼン、2・4・6-トリイソシアナートトルエン、あるいは一般的にはジイソシアナートと、このイソシアナート基の1/2、またはそれ以上と反応するのに充分な量の多価アルコールとの反応生成物、さらに3モルのヘキサメチレンジイソシアナートと1モルの水から得られる生成物などのビュレットを挙げることができる。
また、アルコール性水酸基を有する化合物としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコールなどの脂肪族アルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキシルアルコールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコール、フェニルセロソルブ、フルフリルアルコールなどの1価アルコールを例示できる。またエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコール誘導体を例示できる。また、イソシアナート基をアルコール性水酸基以外の化合物で安定化したイソシアナート再生体とは、前述したアルコール性水酸基以外のイソシアナート基を安定化させ得る化合物で安定化させたイソシアナート基を安定化させる化合物との反応により得られるものであり、例えばフェノール類、活性メチレン化合物等がある。フェノール類としてはフェノール、クレゾール、キシレノール、p-エチルフェノール、o-イソプロピルフェノール、p-t-ブチルフェノール、p-t-オクチルフェノール、p-カテコール、レゾシノール等があり、活性メチレン化合物としてはマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどがある。
以上のような、本発明でいうイソシアナート基と反応し得る官能基をもつ重合体の1種または2種以上、および必要に応じて適宜加えるイソシアナート再生体を主成分とする被膜形成能を有する樹脂組成物はナノスケール結晶組織からなる磁石膜の表面に被覆する。被膜形成手段としては、ドクターブレードなどを介しての重合体融液の直接塗布、あるいは重合体の有機溶媒溶液の塗布焼付などの常法でよい。また、被膜の好ましい膜厚は、当該磁石膜の膜厚の1/10以下である。1/10を超えると磁石膜の真密度に対する積層型樹脂複合磁石膜の相対密度を85%以上とすることが困難になるからである。
次に、本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜の機械的な加工について説明する。本発明にかかる樹脂複合磁石膜の機械的な加工としては、超音波加工、マイクロブラスト加工などが適用可能である。なお、好ましくはファインブランキング法、シェービング法などの精密打抜型を用いた打抜加工であり、さらに好ましくは、図2のような構成の対向ダイス法による精密打抜加工である。ただし、図2中、1は樹脂複合磁石膜、1aはナノスケール結晶組織からなる磁石膜、1b、および1b’は被膜形成能を有する樹脂組成物、2はパンチ、3はエジェクタ、3mはエジェクタの可動方向、4は突起付ダイ、4mは突起付ダイの可動方向、5はダイである。
本発明にかかる樹脂複合磁石膜1の対向ダイス打抜加工は、先ず、突起付ダイ4の可動方向4mへの移動により、ダイ5とともに樹脂複合磁石膜1を固定する。続いて、エジェクタ3の可動方向3mへの移動により、パンチ2とともに挟まれた部分を打抜くものである。このとき、パンチ2とダイス5とのクリアランスを磁石膜1aの厚さの1/10以下とし、磁石膜1aのマイクロクラック発生を抑制することが望ましい。なお、ナノスール結晶組織をもつ磁石膜1aの打抜加工でのクラック発生を皆無とすることは困難である。しかしながら、本発明にかかる被膜形成能を有する樹脂組成物1b、1b’は磁石膜1aに対し、平板ガラス二枚を重ね合わせた「合わせガラス」のような作用効果をもたらす。本願明細書でいう「合わせガラスをさらに詳述すると、本発明にかかるイソシアナート基と反応し得る官能基をもつ重合体の1種であるポリビニルアルコールなどでガラス同士を接着固化したものである。これにより、対向ダイス打抜加工においては耐衝撃性、耐貫通性が増し、またクラックによる破片が生じにくいという作用効果である。とくに、樹脂組成物1bのようなイソシアナート基と反応し得る官能基は、一般に極性が強いので磁石膜1aを強固に接着することができる。このために、樹脂複合磁石膜1の不必要な破砕、あるいは破断を防ぎ、本発明にかかる所定寸法の中実または中空状樹脂複合磁石膜が得られる。なお、ここでは樹脂複合磁石膜1は磁石膜1aが1枚の場合を示しているが、磁石膜1aの厚さに応じて複数の磁石膜1aで樹脂複合磁石膜1を構成したものであっても差支えない。
以上のような、本発明にかかる中実または中空状樹脂複合磁石膜は所定数積層したのち、被膜形成能を有する樹脂組成物1b、1b’を、例えば50MPaのような低圧力での加圧下で溶融固化することで、一体的に剛体化した積層型樹脂複合磁石膜が得られる。
なお、被膜形成能を有する樹脂組成物1b、1b’に、適宜イソシアナート再生体を添加し、イソシアナート基に付加した活性水素化合物の熱解離温度以上とすれば、熱解離により遊離したイソシアナート基が被膜形成能を有する重合体の1種または2種以上の官能基と架橋反応し、本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜の機械的強度、熱安定性、耐薬品性などを改善することができる。ここで、イソシアナート再生体の添加量としてはイソシアナート基(-N=C=O)当量と重合体の官能基当量との比が1以下、好ましくは0.8以下とする。この理由は、イソシアナート再生体を熱解離温度以上に加熱したとき、熱解離した活性水素化合物の量が増し、残存溶媒として接着力を低下させる場合があるからである。
なお、イソシアナート再生体は、熱解離温度以下では化学的に不活性であるから、樹脂複合磁石膜、または、中実もしくは中空状樹脂複合磁石膜の長期間保存において、架橋反応に基づく変質がない。このため、厚さが40μm〜300μmであり、かつ、磁気的に等方性のナノスケール結晶組織を有する磁石膜から成る積層型樹脂複合磁石膜を工業的規模でも安定して製造することができるという利点がある。
以上のような、本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜は磁気的に等方性であるが、積層構造のために磁気抵抗の少ない面内方向磁化で、かつ極対数を2以上としたのち、回転軸を装着し、DCブラシレスモータの回転動作を行う径方向空隙型回転電気機械とする工程を付加することができる。あるいはまた、極対数4以上として、PM型ステッピングモータとしての回転動作を行う径方向空隙型回転電気機械とする工程を付加することができる。
本発明を実施例により更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
先ず、石英坩堝に装填した10gの溶湯合金(合金組成Pr9Fe74-xCo9V1NbxB7、ただしx=1〜3)を10MPaのアルゴンガス雰囲気中、直径0.8mmのオリフィスを介し、周速15m/secで回転するCr鍍金Cu製ロール表面で急冷凝固して、幅2.5mm、厚さ40μm〜50μmの非晶質膜とした。
次に、上記非晶質膜を10-4 Torrの真空中、昇温速度200℃/min、650℃に昇温後、保持時間なしで100℃以下まで冷却する熱処理を施した。表1は熱処理後のPr9Fe74-xCo9V1NbxB7(x=1〜3)磁石膜の面内方向の4.8MA/mパルス着磁後の磁気特性を示す。x=1のとき、残留磁化Mr 0.96T、保磁力HcJ656kA/m、最大エネルギー積(BH)max 144kJ/m3であった。
図4は、上記結晶化した急冷凝固Pr9Fe74-xCo9V1Nb1B7磁石膜の結晶組織を示すTEM(透過電子顕微鏡)と電子線回折を示す特性図である。図4に示された平均結晶粒径は23nmであり、その微細結晶は電子線回折のリング状スポットがランダム分布していることから磁気的には等方性であった。
別に、ポリエーテル[化1]を100重量部、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンの縮合体[化4]を10重量部、2モルのメチルエチルケトンオキシムを付加した4・4‘-ジフェニルメタンジイソシアナート再生体のイソシアナート当量(-N=C=O equiv.)、重合体のアルコール性水酸基当量(-OH equiv.)としたとき、当量比(-N=C=O/-OH)が0.4となるように配合した本発明にかかる樹脂組成物のMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液(固形分30%)を用意した。
つぎに、上記本発明にかかる樹脂組成物の有機溶媒溶液に本発明にかかる急冷凝固Pr9Fe74-xCo9V1Nb1B7磁石膜を直接塗布し、風乾後130℃で焼付け、膜厚3μm〜5μmの樹脂複合磁石膜とした。
上記の、本発明にかかる樹脂複合磁石膜を、図2に示すパンチ2とダイス5とのクリアランスを、磁石膜1aの厚さの1/10以下の4μmとした対向ダイス打抜型を用いて中実形状に打抜加工した。ここで、打抜動作としては、先ず、突起付ダイ4とダイ5により樹脂複合磁石膜を固定する。次いで、エジェクタ3とパンチ2に挟まれた直径1.6mmを打抜くもので、これらを連続動作で行った。なお、1辺が約2mmの樹脂複合磁石膜の面内方向に4.8MA/mパルス着磁後の磁気特性は、残留磁化Mrが0.95T、保磁力HcJが652kA/m、最大エネルギー積(BH)maxが140 kJ/m3で、熱処理後の磁石膜の面内方向磁気特性とほぼ同水準であり、保磁力HcJの劣化はなかった。
さらに、樹脂複合磁石膜を積層し、160℃、10MPaの圧力で、本発明にかかる相対密度RDが85%から90%を超える積層型樹脂複合磁石膜とした。このとき、160℃でメチルエチルケトンオキシムが熱解離し、これにより遊離したイソシアナート基が重合体のアルコール性水酸基と架橋し、一体的に剛体化した積層型樹脂複合磁石膜である。
図5は、SEM(走査電子顕微鏡)により観察した本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜の破断面の積層状態を示す構造図である。図5から明らかなように、本発明によれば、粉末を樹脂とともに通常1000MPa以上で圧縮するボンド磁石では80%以上の相対密度RDを得るのは不可能と考えられるが、本発明によれば極めて高い水準の相対密度RDが、10MPaという極めて低い圧力で容易に実現できる。
さらに、図6は、厚さ30〜40μm のNd13.5Fe64.5Co16B6非晶質急冷凝固薄帯を粉砕して150μm以下のフレーク状粉末に調整し、サイアロン(Si3N4・Al2O3)製ダイとBNを塗布した黒鉛電極により形成した直径5mmのキャビティに45mg充填し、10-2Torrの減圧下で当該黒鉛電極を介してフレーク状粉末に直流パルス電圧(10V以下)を印加し、当該粉末間のグロー放電による非平衡プラズマ処理で粉末表面を浄化したのち、30MPaの圧縮圧力の下、ジュール加熱で700℃まで昇温させることによって、塑性変形と同時に非晶質相の結晶化により、Nd2Fe14B相を析出させた相対密度100%の所謂フルデンス磁石の積層断面図である。図6に示すように、フレーク状粉末端部が塑性変形を起こしてフル密度となるが、このとき、Nd2Fe14B相の磁化容易軸(C軸)は圧力軸方向に回転し、圧力軸方向に異方性が発現するようになる。したがって、このような方法で相対密度RDを高めても、径方向の残留磁化Mrは減少し、その値はNd2Fe14B相の飽和磁化Ms 1.6の1/2以下、すなわち0.8T未満となる。加えて、この方法でバルク化するには、希土類元素RはR2Fe14B化学量論組成以上が必要で、残留磁化Mrの高いソフト相とハード相によるナノスケール結晶組織を付与することもできない。
上記に対して、図4に示す積層構造から明らかなように、本発明にかかる積層型樹脂複合磁石膜はバルク化する際にC軸回転を伴わないため、これによる径方向残留磁化Mrの減少が起こらない。つまり、磁石膜の残留磁化Mr(flake)が本実施例のように0.96 Tのとき、積層型樹脂複合磁石膜の径方向残留磁化Mr(laminated)は、その相対密度RDが85%では0.81T(0.96×0.85)となり、Nd13.5Fe64.5Co16B6非晶質急冷凝固薄帯をプラズマ活性化焼結した相対密度100%の磁石の残留磁化Mr 0.8未満を超えるという利点がある。
他方、結晶化した急冷凝固Pr9Fe74-xCo9V1Nb1B7磁石膜を150μm以下の粉末に調整したのち、2wt.%の液体エポキシ樹脂と混合し、700MPa〜1200MPaで圧縮し、直径約1.6mmのボンド磁石とした。
図7は、本発明にかかる磁石膜、積層型樹脂複合磁石膜、ならびに、比較例としての相対密度RDが異なるボンド磁石の4.8MA/mパルス着磁後の保磁力HcJ、ならびに残留磁化Mrを、それぞれ相対密度RDに対してプロットした特性図である。図7から明らかなように、結晶化した磁石膜を150μm以下のフレーク状粉末に調整すると、その保磁力HcJが低下する。さらに、前記フレーク状粉末を樹脂で固めるボンド磁石の残留磁化Mrを改善するために1200MPaで圧縮し、相対密度RDを、この系のほぼ限界まで高めると、緻密化に伴うフレーク状粉末の破砕のため、当該保磁力HcJの低下が顕著となる。これに対して、本発明では磁石膜を粉末化せず、そのまま直接樹脂複合磁石膜とし、所定の中実または中空状とし、これを積層してバルクとするため保磁力HcJの低下が殆どないという効果を奏する。また、積層型樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する際の圧力は、わずか50MPaという超低圧であるという利点もある。
1a:磁石膜、1、12:樹脂複合磁石膜、1b、1b´:樹脂組成物

Claims (16)

  1. 溶湯合金の急冷凝固または合金を物理的堆積法で成膜した後、結晶化し、磁気的に等方性のナノスケール結晶組織を有する磁石膜を作製する第1工程と、
    前記磁石膜に被膜形成能を有する樹脂組成物を付与して前記磁石膜と樹脂膜からなる樹脂複合磁石膜を作製する第2工程と、
    該樹脂複合磁石膜を機械的に加工して中実または中空状の樹脂複合磁石膜を作製する第3工程と、
    複数の前記中実または中空状樹脂複合磁石膜を積層して積層樹脂複合磁石膜を作製する第4工程と、
    前記積層樹脂複合磁石膜の前記樹脂膜を溶融・冷却固化することにより、前記積層樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する第5工程と、及び、
    該剛体化したものを磁化する第6工程と、
    を含むことを特徴とする積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  2. 前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、R-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系溶湯合金の急冷凝固またはR-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系合金を物理的堆積法で成膜した後、結晶化し、前記磁石膜がR2TM14B相でハード磁性を付与したナノスケール結晶組織にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  3. 前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、R-TM-B(RはNdまたはPr、TMはFeまたはCo)系溶湯合金の急冷凝固薄帯を熱処理することにより、前記磁石膜を、αFe相とR2TM14B相(RはNdまたはPr、TMはFeまたはFeの一部をCo置換したもの)のナノスケール結晶組織にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  4. 前記第6工程において、前記磁石膜の磁気特性を、着磁界が4MA/mパルス着磁後において、保磁力HcJ600kA/m以上かつ残留磁化Mr0.9T以上にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  5. 前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織をPr9Fe74-xCo9V1NbxB7(x=1〜3)溶湯合金の急冷凝固薄帯を熱処理することによって、前記ナノスケール結晶組織にする特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  6. 前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、Fe3B相、αFe相またはR2TM14B相(RはNdまたはPr、TMはまたはFeの一部をCo置換したもの)からなるナノスケール結晶組織に形成することを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  7. 前記第6工程において、前記磁石膜の磁気特性を、着磁界4MA/mのパルス着磁後において、保磁力HcJ300kA/m以上かつ残留磁化Mr1.1T以上にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  8. 前記第1工程において、前記磁石膜の金属組織を、Nd 4.5 Fe70Co5B18.5Cr2溶湯合金の急冷凝固薄帯を熱処理して、ナノスケール結晶組織にすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  9. 前記第2工程において、前記樹脂組成物に、イソシアナート基と反応し得る官能基をもつ重合体の1種または2種以上を主成分とするものを用いることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  10. 前記樹脂組成物に、イソシアナート再生体を加えることを特徴とする、請求項9に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  11. 前記第工程において、前記樹脂膜を架橋することにより、前記積層樹脂複合磁石膜を一体的に剛体化する、請求項1に記載の積層型樹脂複合膜の製造方法。
  12. 前記第3工程において、機械的な加工は、対向ダイス法による打抜加工によって行われることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  13. 前記第2工程において、前記積層型樹脂複合磁石膜100%中の前記磁石膜の相対密度が85%以上となるように、前記積層型樹脂複合磁石膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  14. 前記第6工程において、前記磁化を、前記積層型樹脂複合磁石膜の面内方向に沿って施し、かつ、極対数を2以上とするように行うようにすることを特徴とする請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法。
  15. 請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法による該積層型樹脂複合磁石膜を極対数2以上に磁化し、かつ、該積層型樹脂複合磁石膜に回転軸を装着し、ブラシレスモータとして回転動作が可能なことを特徴とする径方向空隙型回転電気機械。
  16. 請求項1に記載の積層型樹脂複合磁石膜の製造方法による該積層型樹脂複合磁石膜を極対数4以上に磁化し、かつ、前記積層型樹脂複合磁石膜に回転軸を装着し、ステッピングモータとして回転動作が可能なことを特徴とする径方向空隙型回転電気機械。
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