JPH11163433A - 積層型圧電セラミックス振動子および製造方法 - Google Patents

積層型圧電セラミックス振動子および製造方法

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JPH11163433A
JPH11163433A JP32621897A JP32621897A JPH11163433A JP H11163433 A JPH11163433 A JP H11163433A JP 32621897 A JP32621897 A JP 32621897A JP 32621897 A JP32621897 A JP 32621897A JP H11163433 A JPH11163433 A JP H11163433A
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JP
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piezoelectric ceramic
vibrator
laminated
piezoelectric
sintering
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Application number
JP32621897A
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English (en)
Inventor
Junichi Watanabe
渡辺  純一
Hideko Fukushima
英子 福島
Hiromi Kikuchi
広実 菊池
Shigeru Sadamura
茂 定村
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Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 焼結温度が1100℃前後以下であり、圧電
特性が優れ、かつ耐湿性に優れた圧電セラミックス振動
子とその製造方法を提供する。 【構成】 PbTiO3−PbZrO3系圧電セラミック
ス組成物からなる積層型圧電セラミックス振動子におい
て、該積層型圧電セラミックス振動子の圧電セラミック
スにAgが10ppm以上50ppm未満含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層型圧電セラミッ
ク振動子およびその製造方法に関するものであり、また
冷陰極管点灯回路用、特には小型液晶ディスプレーのバ
ックライト点灯用のインバータ回路部品である積層型圧
電トランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、液晶デイスプレイにあっては液
晶自体は発光しないことから液晶表示体の背面や側面に
冷陰極管等の放電管を配置するバックライト方式が主流
となっている。この放電管を駆動するためには、使用す
る放電管の長さや直径にもよるが、通常、数百ボルト以
上の交流の高電圧が要求される。この交流の高電圧を発
生させる方法として圧電トランスを用いたインバータが
特開平5−114492号公報に開示されている。
【0003】圧電トランスは、巻線が不要なことから構
造が非常に簡単となり、小型化、薄型化、低コスト化が
可能である。この圧電トランスの構造と特徴は、例えば
学献社発行の専門誌「エレクトロセラミックス」197
1年7月号の「圧電トランスの特性とその応用」に示さ
れている。
【0004】最も一般的な圧電トランスの構成と動作を
図2を用いて以下に説明する。図2に示すものは195
6年に米国のC.A.Rosenが発表したローゼン型
圧電トランスの説明用模式図である。斜線を施した部分
は特に電極部であることを示す。
【0005】図2は単板状の圧電トランスであり、図中
の1は例えばPbTiO3−PbZrO3の圧電セラミッ
クスである。この圧電トランスの図中左半分の上下面に
は例えば銀焼き付けにより設けられた入力電圧3、4の
対を形成し、右側端面にも同様の方法で出力電極5を形
成する。そして圧電トランスの左半分の駆動部は厚み方
向に、右半分の発電部は長さ方向にそれぞれ矢印に示す
ように分極処理を施す。
【0006】上述の圧電トランスの入力電極3、4間
に、圧電セラミックス1の長さ方向の共振周波数と略同
じ周波数の交流電圧を印加するとこの圧電セラミックス
1は長さ方向に強い機械振動を生じ、これにより右半分
の発電部では圧電効果により電荷を生じ、出力電極5と
入力電極の一方、例えば入力電極4との間に出力電圧V
oが生じる。
【0007】上記の構成の圧電トランスで得られる昇圧
比(Vo/Vi)(ここでViは、入力電圧)は、
(1)式のように表される。 (Vo/Vi)=A・k31・k33・QM・L/T (1)式 ここで、k31:横効果の電気機械結合係数、k33:縦効
果の電気機械結合係数、QM:機械的品質係数、L:圧
電トランスの長さ、T:圧電トランスの厚さ、A:定数
である。k31、k33、QMは圧電材料により決定される
材料定数であり、L、Tは素子の寸法形状により決定さ
れる。
【0008】前述のバックライト用に使用される圧電ト
ランスは数100ボルト以上の高い交流高電圧が要求さ
れるため、高い昇圧比が必要とされる。そのためには、
(1)式からわかるように圧電トランス形状の厚さTを
薄くするか、長さLを大きくすることが有効であるが、
実装、素子強度の面から、とりうる値には自ずと限界が
ある。
【0009】このような問題点を解決する一方法として
薄手の圧電セラミックス1を積層し、駆動部側を並列接
続するような積層型の圧電トランスが例えば特公昭52
−45476号公報に開示されている。このような駆動
部側が積層された積層型の圧電トランスの説明用模式図
を図1に示す。なお、斜線を施した部分は特に電極部で
あることを示す。ここで駆動部は、圧電セラミックス1
と内部電極2が交互に積層され、並列に接続された構造
となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前述の薄手の圧電セラ
ミックス1と内部電極2とを交互に積層した積層型圧電
トランスは、一般的には積層セラミックコンデンサと同
様の製造方法により製造される。すなわち、圧電セラミ
ックス組成物のグリーンシートの表面に内部電極2とな
る貴金属ペーストを、例えばスクリーンで印刷した後、
その何枚かを積層、圧着し一体化して、その後焼結され
る。
【0011】このような積層型圧電トランスの内部電極
2に使用される貴金属は、積層型圧電トランスの焼結温
度で酸化されず、かつ溶解しないことが必要である。し
たがって積層セラミックコンデンサと同様に、Ag・P
d合金を内部電極材料として用いる。このAg・Pd合
金は、Pdの融点が1554℃と高いので、Pdの比率
が高い程高温での焼結に耐える一方、Pdは焼結途中で
体積変化し易いので、Pdの比率が高すぎると焼結途中
でセラミック素子との剥離を発生し易いという不具合が
あった。
【0012】一方、Pdの比率を抑えると融点が下がる
ので焼結温度も下げなくてはならない。一般に積層セラ
ミックコンデンサでは、内部電極材料としてAg・Pd
=70・30の合金を使用するが、該Ag・Pd合金を
積層型圧電トランスの内部電極材料とするには、110
0℃前後の温度で焼結を行わなければならない。しかし
ながら、従来の圧電セラミックス組成物は焼結温度が1
250℃前後であり、従来よりも150℃前後も低温で
焼結可能な圧電セラミックス組成物はなく、早急なる発
明が強く求められていた。
【0013】本発明者等は鋭意研究するなかで、圧電セ
ラミックス組成物に焼結助剤としてAgを添加し焼結す
ることで、横効果の電気機械結合係数や縦効果の電気機
械結合係数、機械的品質係数が大きく、かつ焼結温度が
1100℃前後以下である圧電セラミックス組成物を得
ることを見出した。Agの添加量は、焼結後の圧電セラ
ミックスに50〜1000ppm含有するのが好ましい
としている。
【0014】しかしながら、該圧電セラミックス組成物
を実際に圧電トランスに適用した場合、入力電極間に電
圧を印加し駆動すると、圧電セラミックスに含有するA
gを介してマイグレーションが発生し、圧電トランスの
絶縁性の劣化や短絡を招き、特に高温高湿度環境での駆
動(耐湿性)に問題があった。
【0015】本発明は上述の問題点を解決するためにな
されたもので、焼結温度が1100℃前後以下であり、
圧電特性が優れ圧電トランスとして変換効率が高く、か
つ耐湿性に優れた圧電セラミックス振動子とその製造方
法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
め鋭意研究の結果、発明者らは著しく構成を改善した圧
電セラミックス振動子およびその製造方法に想到したも
のである。すなわち第1の発明は、表面に導体層を形成
したPbTiO3−PbZrO3系圧電セラミックス組成
物からなる複数のグリーンシートを積層し一体焼結した
積層型圧電セラミックス振動子において、該積層型圧電
セラミックス振動子の圧電セラミックスにAgが10p
pm以上50ppm未満含有する積層型圧電セラミック
ス振動子である。
【0017】第2の発明は、第1の発明においてPbT
iO3−PbZrO3系圧電セラミックス組成物が、一般
式(Pbx-yy)(ZrzTi1-z)O3(ただしMは、
Sr、Ba、Caの群からなる少なくとも1種、かつ
1.005≦x≦1.030、0.01≦y≦0.1
0、0.955≦(x−y)≦0.980、0.51≦
z≦0.56)で表される主成分組成に、FeをFe2
3に換算して0.05〜1.0重量%含有してなる積
層型圧電セラミックス振動子である。
【0018】第3の発明は、表面に導体層を形成したP
bTiO3−PbZrO3系圧電セラミックス組成物から
なる複数のグリーンシートを積層し一体焼結した積層型
圧電セラミックス振動子において、前記積層型圧電セラ
ミックス振動子の圧電セラミックスが、一般式(Pb
1-yy)(ZrzTi1-z)O3(ただしMは、Sr、B
a、Caの群からなる少なくとも1種、かつ0.01≦
y≦0.10、0.51≦z≦0.56)にFeをFe
23に換算して0.05〜1.0重量%含有するととも
に、Agを10ppm以上50ppm未満含有してなる
積層型圧電セラミックス振動子である。
【0019】第4の発明は第1の発明ないし第3の発明
において、積層型圧電セラミックス振動子の圧電セラミ
ックスに含有するAgが、AgもしくはAg合金ないし
Ag化合物として前記圧電セラミックスの結晶粒界に濃
化し析出する積層型圧電セラミックス振動子である。
【0020】第5の発明は第1の発明から第4の発明に
おいて、積層型圧電セラミックス振動子の圧電セラミッ
クスの空孔率が3%未満である積層型圧電セラミックス
振動子である。
【0021】第6の発明は第1の発明ないし第5の発明
において、積層型圧電セラミックス振動子の導体層がA
gないしAg合金である積層型圧電セラミックス振動子
である。
【0022】第7の発明は、表面にAgないしAg合金
で導体層を形成したPbTiO3−PbZrO3系圧電セ
ラミックス組成物からなる複数のグリーンシートを積層
し一体焼結した積層型圧電セラミックス振動子の製造方
法において、焼結時の炉内酸素濃度により積層型圧電セ
ラミックス振動子の圧電セラミックスに含有するAg量
を制御する積層型圧電セラミックス振動子の製造方法で
ある。
【0023】
【発明の実施の形態】積層型圧電セラミックス振動子の
耐湿性を改善するには、圧電セラミックス中に含有する
導電性物質であるAgを低減しなければならない。本願
発明者等は種々実験を行うなかで、焼結助剤となるAg
を添加しない圧電セラミックス組成物を用い積層型圧電
トランスを作製したところ、その圧電セラミックスには
100ppmを超えるAgが含有していた。さらに検討
を進めるなかで該圧電セラミックス中のAgは、Agな
いしAg・Pd合金からなる内部電極から該圧電セラミ
ックスに拡散していることが判明した。したがって積層
型圧電セラミックス振動子の耐湿性を改善するために
は、内部電極からのAgの拡散を低減することが重要で
ある。
【0024】しかしながら圧電セラミックス中へのAg
の拡散を低減すると、該圧電セラミックスの焼結が不十
分となり圧電トランスとして必要な機械的強度、圧電特
性が得られない。本発明者等は研究において種々試行し
た結果、圧電セラミック中に拡散するAgを低減しても
十分な焼結性を得るには、圧電セラミックス中のPbが
焼結時に飛散・消失するのを抑止、もしくは補填すれば
よいと知見した。
【0025】Pbは融点が低く焼結時に飛散し消失す
る。このため化学量論的にPbが不足し十分な焼結性を
得られず、圧電セラミックスの焼結密度が低下し、空孔
率が増加するため十分な機械的強度や圧電特性が得られ
ない。これを防止するには、セッター等の焼結治具によ
り密閉状態としPbが飛散し難い雰囲気で焼結を行うこ
とでも、ある程度の抑止は出来るが、好ましくは圧電セ
ラミックス組成物の組成中、(Pbx-yy)(Zrz
1-z)O3の(x−y)を0.955≦(x−y)≦
0.980、xを1.005≦x≦1.030、yを
0.01≦y≦0.10とし、Pbを過剰に添加するこ
とによって、Pbの消失分を補填しPbが化学量論的に
不足することなく、圧電セラミックスの密度低下、空孔
率の増加を防止できる。
【0026】また上記組成物中のPb原子の1〜10原
子%をSr、BaおよびCaの少なくとも1種で置換す
ること、とりわけSrで置換することによって横効果の
電気機械結合係数や縦効果の電気機械結合係数および機
械的品質係数をさらに高くでき優れた昇圧比、変換効率
を得る。また、キュリー温度Tcを下げることができる
とともに、分極を容易にすることができる。なお、置換
量が10原子%を超えるとキュリー温度の低下が過剰と
なり積層型圧電トランスとして温度安定性が不足する。
【0027】圧電セラミックス中のAgの含有量は耐湿
性において、極力少なくすることが望ましいが、Agの
含有量が10ppm未満であると、圧電セラミックスと
内部電極との濡れ性が不足しデラミネーションが発生す
るため、Agの含有量は10ppm以上が好ましい。5
0ppm以上であると積層型セラミックス振動子の耐湿
性が劣化し、絶縁性の劣化や短絡を招くので50ppm
未満が好ましい。
【0028】また種々検討を行う中で、内部電極から圧
電セラミックス中へ拡散するAgの拡散量は、焼結時の
炉内酸素濃度とほぼ線形の正の相関があることが判明し
た。従って圧電セラミックス中のAgの含有量を10p
pm以上50ppm未満とするには焼結時の炉内酸素濃
度を1〜10%とするのが好ましい。
【0029】酸素濃度が低下すると、グリーンシートに
含まれる有機バインダーが圧電セラミックスに炭素とし
て残留し諸特性に悪影響を与えるため、750℃までの
温度では焼結を大気中で行うことが好ましい。より好ま
しくは、脱バインダーを別工程として焼結前に行うのが
望ましい。
【0030】また上記組成物は、Fe23に換算して
0.05〜1.0重量%相当のFeを含有させることで
機械的品質係数QMをさらに高くすることができ高い昇
圧比、変換効率を得る。0.05重量%未満ではFe含
有の効果が不十分であり、1.0重量%超では焼結性が
不足する。
【0031】圧電セラミックス組成物の、(Pb
x-yy)(ZrzTi1-z)O3のzのところを0.51
≦z≦0.56の範囲とすることによって、当該圧電セ
ラミックス組成物は横効果の電気機械結合係数や横効果
の電気機械結合係数が改善され、ひいては昇圧比、変換
効率に優れた積層型圧電トランスを得ることができるも
のである。
【0032】なお、上記説明においては各組成成分の効
果と特徴を端的に記述したが、これらの組成成分は単独
でかかる効果や特徴を奏するものではなく、本発明の構
成通りの範囲とすることで、各成分の相乗効果によって
初めて奏せられるものであることは言うまでもない。か
かる知見をもとに発明の実施を行った。
【0033】
【実施例】(実施例1)初めに試料の作成方法について
説明する。まず、各出発原料の粉末である酸化鉛、酸化
チタン、酸化ジルコニウム、炭酸ストロンチウムを所定
量秤量し、湿式ボールミルで混合した後、これを乾燥
し、解砕し、さらに850℃で2時間仮焼して仮焼粉を
作成した。この仮焼粉をライカイ機で解砕した後ボール
ミルに投入し、湿式で粉砕した後この原料を乾燥して仮
焼原料粉を作成した。
【0034】さらにこの仮焼原料粉にバインダーとして
PVBを、可塑剤としてBPBGをそれぞれ4重量%添
加し、エチルアルコールを溶媒として、ボールミルにて
24時間混練した。
【0035】混練後脱泡と粘度調整を行い、ドクターブ
レード法により80ミクロンのグリーンシートを作製し
た。その後、スクリーン印刷法によりAg・Pd=70
・30のペーストを用いてグリーンシート上に内部電極
を印刷し、25層を積層、圧着し、所定形状に切断して
成形体とし、この成形体をアルミナもしくはマグネシア
からなる焼成治具に配列し、これを脱脂後1100℃で
2時間焼成した。焼結は焼結雰囲気を精度よく制御可能
なバッチ炉にて行い、焼結時の炉内酸素濃度はN2で置
換することにより適宜調整している。さらに入出力電極
を印刷し焼付して、140℃、2kV/mmの分極電界
を印加し分極処理を施して25mm×5mm×2mmの
積層型圧電トランスとした。
【0036】なお、本発明に係る積層型圧電トランスの
圧電セラミックス中のAg含有量は焼結体中のAgの含
有量を定量分析して確認することが必要である。本実施
例においては上記定量分析の手法としてICP発光分析
(Inductively Coupled Plasma Emission Spectros
copy)を採用し、発電部の圧電セラミックスを切り出し
て分析した。また焼結後の圧電セラミックスの組成につ
いても、同様にして分析を行った。
【0037】また温度60℃、相対湿度90%の恒温槽
中にて積層型圧電トランスを定格2.5Wで500時間
連続稼働する耐湿試験を実施後、DC100Vで積層型
圧電トランスの入力側絶縁抵抗を測定し、Agのマイグ
レーションを評価した。なお絶縁抵抗は100MΩ以上
が望ましく、これを評価の基準値とした。
【0038】抗折強度は、前記手順で作製し分極処理を
施した25mm×5mm×2mmの積層型圧電トランス
を試験片とし三点曲げ強度試験により、支点間距離12
mm、加重速度0.1mm/minの条件で積層型圧電
トランスの積層方向から荷重を加え破断点から算出し
た。圧電トランスとして高い昇圧比を得るには大きな変
位に耐えうる強度が必要であり、その抗折強度は10k
gf/mm2以上が望ましく、これを評価の基準値とし
た。
【0039】
【表1】
【0040】表1において、試料のNo.2〜4、7〜
9、12、13、16、17、20〜22は、本発明に
係る積層型圧電セラミック振動子すなわち実施例であ
る。試料のNo.1、5、6、10、11、14、1
5、18、19および23は、本発明の範囲外すなわち
比較例であり、実施例と区別するために試料番号に()
を付した。以下、この実施例と比較例とを対比しながら
説明する。
【0041】表1中のNo.1から5の試料は、圧電セ
ラミックス組成物が、(Pbx-0.05Sr0.05)(Zr
0.52Ti0.48)O3にFeをFe23に換算して0.7
重量%含有する組成で炉内酸素濃度を5%とし焼結した
積層型圧電トランスである。x=1.005〜1.03
0(Pb・Srの総原子%が100.5〜103.0)
であるNo.2から4の試料では、空孔率は1.4〜
1.7%と充分な焼結性が得られ、変換効率は92〜9
3%と高い値となり、耐湿試験後の絶縁抵抗が1510
〜1950MΩ、抗折強度が13.0〜14.1kgf
/mm2と、ともに高く良好な特性を示した。一方x=
1.00(Pb・Srの総原子%が100.0)のN
o.1の試料では空孔率が3.2%と十分な焼結性が得
られず、機械的強度が劣化した。またx=1.035
(Pb・Srの総原子%が103.5)のNo.5の試
料では、Agの含有量が80ppmであって耐湿試験後
の絶縁抵抗が著しく劣化した。
【0042】表1中のNo.6から11の試料は、圧電
セラミックス組成物が、(Pb0.97Sr0.05)(Zr
0.52Ti0.48)O3にFeをFe23に換算して0.7
重量%含有する組成で炉内酸素濃度を0〜80%とし焼
結した積層型圧電トランスである。焼結時の炉内酸素濃
度が1〜10%であるNo.7から9の試料は、空孔率
が1.6〜2.4%と十分な焼結性が得られ、その他の
諸特性も高く良好な特性を示した。一方炉内酸素濃度が
0%(N2で全置換)であるNo.6の試料は、デラミ
ネーションが発生し評価することが出来なかった。また
炉内酸素濃度が20、80%であるNo.10、11の
試料は、耐湿試験後の絶縁抵抗が著しく劣化した。ま
た、圧電セラミックス中のAgの含有量は炉内酸素濃度
が0〜80%と増すにつれ3〜330ppmと増加し
た。
【0043】表1中のNo.12から14の試料は、圧
電セラミックス組成物が、(Pb1.020-ySry)(Zr
0.52Ti0.48)O3にFeをFe23に換算して0.7
重量%含有する組成で炉内酸素濃度を5%とし焼結した
積層型圧電トランスである。Pbの一部を置換したSr
の置換量が1.0および9.0原子%、すなわちy=
0.01および0.09のNo.12、13の試料で
は、ともに良好な変換効率が得られ、その他の諸特性も
高く良好な特性を示した。またキュリー温度(Tc)は
それぞれ345、260℃で、置換量の増加とともに低
温度側にシフトしていることがわかる。
【0044】一方y=0.11(Srの置換量が11.
0原子%)であるNo.14の試料では、キュリー温度
(Tc)が235℃まで下がり、積層型圧電トランスと
しての高温での信頼性に問題を生じ実用的でない。一
方、y<0.01(Srの置換量が1.0原子%未満)
の範囲では傾向を見る限り、変換効率が不充分となる。
【0045】表1中のNo.15から18の試料は、圧
電セラミックス組成物が、(Pb0.97Sr0.05)(Zr
zTi1-z)O3にFeをFe23に換算して0.7重量
%含有する組成で炉内酸素濃度を5%とし焼結した積層
型圧電トランスである。z=0.51〜0.56(Zr
が51〜56原子%)であるNo.16、17の試料で
は、変換効率は高く、その他の諸特性も良好な特性を示
した。一方、z=0.50(Zrが50原子%)である
No.15の試料及び、Z=0.57(Zrが57原子
%)であるNo.18の試料では変換効率が89、88
%と劣化し圧電トランスとして特性が不十分である。
【0046】表1中のNo.19から23の試料は、表
1中のNo.15から18の試料は、圧電セラミックス
組成物が、(Pb0.97Sr0.05)(Zr0.52Ti0.48
3にFeをFe23に換算して0〜1.1重量%含有
する組成で炉内酸素濃度を5%とし焼結した積層型圧電
トランスである。Fe23添加量が0.1〜0.9重量
%であるNo.20〜22の試料では良好な変換効率
で、その他の諸特性も高く良好な特性を示した。一方、
Fe23を添加しないNo.19の試料は変換効率が劣
化し、Fe23添加量が1.1wt%のNo.23の試
料は、空孔率が3.1%と大きくなり充分な焼結性が得
られず、抗折強度も劣化した。
【0047】またこれらの試料を分析した結果、圧電セ
ラミックス中のAgは結晶粒界にPb等とともに濃化し
析出していた。その状態は、Ag、AgO、Ag・Pb
合金であった。
【0048】(実施例2)実施例1におけるSrのとこ
ろを、Srの全量を100原子%としたときの比率で、
全量Baに置換した試料、全量Caに置換した試料、S
r40原子%Ba60原子%に置換した試料、Sr40
原子%、Ca60原子%に置換した試料、Ba50原子
%、Ca50原子%に置換した試料、およびSr50原
子%、Ba30原子%、Ca20原子%に置換した試料
をそれぞれ作成した。
【0049】実施例1の場合と同様の方法と手順で評価
確認したところ、いずれの試料においても、実施例1場
合とほぼ同様の結果と効果を得た。
【0050】なお、これら実施例においてローゼン型の
積層型圧電トランスについて記載したが、本願発明は特
にこれに限定されるものではなく、積層技術によってな
る他の積層型圧電セラミック振動子においても本発明の
効果が変わらないことは言うまでもない。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、焼
結温度が1100℃前後以下であり、圧電特性が優れ圧
電トランスとして変換効率が高く、かつ耐湿性に優れた
圧電セラミックス振動子とその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層型圧電トランスの構造を模式的に示した斜
視図である。
【図2】ローゼン型圧電トランスの構造を模式的に示し
た斜視図である。
【符号の説明】 1 圧電セラミックス、2 内部電極、3、4 入力電
極、5 出力電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 定村 茂 鳥取県鳥取市南栄町33番地12号日立金属株 式会社鳥取工場内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に導体層を形成したPbTiO3
    PbZrO3系圧電セラミックス組成物からなる複数の
    グリーンシートを積層し一体焼結した積層型圧電セラミ
    ックス振動子において、該積層型圧電セラミックス振動
    子の圧電セラミックスにAgが10ppm以上50pp
    m未満含有することを特徴とする積層型圧電セラミック
    ス振動子。
  2. 【請求項2】 PbTiO3−PbZrO3系圧電セラミ
    ックス組成物が、一般式(Pbx-yy)(Zrz
    1-z)O3(ただしMは、Sr、Ba、Caの群からな
    る少なくとも1種、かつ1.005≦x≦1.030、
    0.01≦y≦0.10、0.955≦(x−y)≦
    0.980、0.51≦z≦0.56)で表される主成
    分組成に、FeをFe23に換算して0.05〜1.0
    重量%含有してなることを特徴とする請求項1に記載の
    積層型圧電セラミックス振動子。
  3. 【請求項3】 表面に導体層を形成したPbTiO3
    PbZrO3系圧電セラミックス組成物からなる複数の
    グリーンシートを積層し一体焼結した積層型圧電セラミ
    ックス振動子において、前記積層型圧電セラミックス振
    動子の圧電セラミックスが、一般式(Pb1-yy)(Z
    zTi1-z)O3(ただしMは、Sr、Ba、Caの群
    からなる少なくとも1種、かつ0.01≦y≦0.1
    0、0.51≦z≦0.56)に、FeをFe23に換
    算して0.05〜1.0重量%含有するとともに、Ag
    を10ppm以上50ppm未満含有することを特徴と
    する積層型圧電セラミックス振動子。
  4. 【請求項4】 積層型圧電セラミックス振動子の圧電セ
    ラミックスに含有するAgが、AgもしくはAg合金な
    いしAg化合物として前記圧電セラミックスの結晶粒界
    に濃化し析出することを特徴とする請求項1ないし請求
    項3のいずれかに記載の積層型圧電セラミックス素子。
  5. 【請求項5】 積層型圧電セラミックス振動子の圧電セ
    ラミックスの空孔率が3%未満であることを特徴とする
    請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の積層型圧電
    セラミックス振動子。
  6. 【請求項6】 積層型圧電セラミックス振動子の導体層
    がAgないしAg合金であることを特徴とする請求項1
    ないし請求項5のいずれかに記載の積層型圧電セラミッ
    クス振動子。
  7. 【請求項7】 表面にAgないしAg合金で導体層を形
    成した圧電セラミックス組成物からなる複数のグリーン
    シートを積層し一体焼結した積層型圧電セラミックス振
    動子において、焼結時の炉内酸素濃度により積層型圧電
    セラミックス振動子の圧電セラミックスに含有するAg
    量を制御することを特徴とする積層型圧電セラミックス
    振動子の製造方法。
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