JPH11138809A - アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッド - Google Patents

アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッド

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JPH11138809A
JPH11138809A JP9312124A JP31212497A JPH11138809A JP H11138809 A JPH11138809 A JP H11138809A JP 9312124 A JP9312124 A JP 9312124A JP 31212497 A JP31212497 A JP 31212497A JP H11138809 A JPH11138809 A JP H11138809A
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JP
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piezoelectric
pressure generating
film
generating chamber
electrode
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JP9312124A
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English (en)
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Tsutomu Hashizume
勉 橋爪
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Seiko Epson Corp
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Seiko Epson Corp
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電体能動部のリード電極との接続部近傍の
異常な応力の発生を防止し、特性劣化を防止することが
できるアクチュエータおよびインクジェット式記録ヘッ
ドを提供する。 【解決手段】 少なくとも上面に下電極60を有する振
動板と、該振動板の表面に形成された圧電体層70及び
該圧電体層60の表面に形成された上電極80からなる
圧電体能動部320とからなる圧電振動子を備え、前記
下電極60及び前記上電極80の少なくとも一方に接続
されるリード電極100を具備するアクチュエータにお
いて、前記リード電極100を有機導電体の材質で形成
することにより、圧電振動子の駆動時に圧電体層70に
異常な応力がかからないようにし、初期の圧電特性を長
期に亘って維持する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振動板の上に圧電
体能動部を有するアクチュエータに関し、特に、インク
滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を
振動板で構成し、この振動板の表面に圧電体層を形成し
て、圧電体層の変位によりインク滴を吐出させるインク
ジェット式記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】インク滴を吐出するノズル開口と連通す
る圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧
電振動子により変形させて圧力発生室のインクを加圧し
てノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット
式記録ヘッドには、圧電振動子が軸方向に伸長、収縮す
る縦振動モードの圧電振動子を使用したものと、たわみ
振動モードの圧電振動子を使用したものの2種類が実用
化されている。
【0003】前者は圧電振動子の端面を弾性板に当接さ
せることにより圧力発生室の容積を変化させることがで
きて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反
面、圧電振動子をノズル開口の配列ピッチに一致させて
櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられ
た圧電振動子を圧力発生室に位置決めして固定する作業
が必要となり、製造工程が複雑であるという問題があ
る。
【0004】これに対して後者は、圧電材料のグリーン
シートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼
成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電振動子を
作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する
関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困
難であるという問題がある。
【0005】一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消す
べく、特開平5−286131号公報に見られるよう
に、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧
電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法に
より圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生
室毎に独立するように圧電振動子を形成したものが提案
されている。
【0006】これによれば圧電振動子を弾性板に貼付け
る作業が不要となって、リソグラフィ法という精密で、
かつ簡便な手法で圧電振動子を作り付けることができる
ばかりでなく、圧電振動子の厚みを薄くできて高速駆動
が可能になるという利点がある。
【0007】また、この場合、圧電材料層は弾性板の表
面全体に設けたままで少なくとも上電極のみを各圧力発
生室毎に設けることにより、各圧力発生室に対応する圧
電振動子を駆動することができるが、単位駆動電圧当た
りの変位量および圧力発生室に対向する部分とその外部
とを跨ぐ部分で圧電体層へかかる応力の問題から、圧電
体層および上電極からなる圧電体能動部を、少なくとも
一端部以外は圧力発生室外に出ないように形成するのが
望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、圧電体
層上に上電極パターンを形成した圧電体能動部を駆動す
る際に当該圧電体能動部に電圧を印加するリード電極を
設ける必要があるが、このリード電極との接続を図る部
分では、圧電体能動部に異常な応力がかかり、特性劣化
が生じるという問題がある。
【0009】これらの問題は、特に、圧電材料層を成膜
技術で形成した場合に生じ易い。これは、成膜技術で形
成した圧電材料層は非常に薄く、影響を受けやすいから
である。
【0010】また、このような問題はインクジェット式
記録ヘッドだけではなく、基板の一方側に振動板及び圧
電体能動部を有するアクチュエータにおいても同様に存
在する。
【0011】本発明はこのような事情に鑑み、圧電体能
動部のリード電極との接続部近傍の異常な応力の発生を
防止し、特性劣化を防止することができるアクチュエー
タおよびインクジェット式記録ヘッドを提供することを
課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明の第1の態様は、少なくとも上面に下電極を有する振
動板と、該振動板の表面に形成された圧電体層及び該圧
電体層の表面に形成された上電極からなる圧電体能動部
とからなる圧電振動子を備え、前記下電極及び前記上電
極の少なくとも一方に接続されるリード電極を具備する
アクチュエータにおいて、前記リード電極が、有機導電
体の材質から形成されていることを特徴とするアクチュ
エータにある。
【0013】かかる第1の態様では、有機導電体の材質
からなるリード電極を有するので、圧電振動子の駆動時
に圧電体層に異常な応力がかかることがなく、初期の圧
電特性を長期に亘って維持することができる。
【0014】本発明の第2の態様は、第1の態様におい
て、前記下電極及び前記上電極の少なくとも一方と前記
リード電極との間には、両者の接続を形成するための窓
であるコンタクトホール部を有する絶縁体層を有し、該
絶縁体層が有機物からなることを特徴とするアクチュエ
ータにある。
【0015】かかる第2の態様では、各圧電体能動部と
リード電極とはコンタクトホール部を介して接続され
る。
【0016】本発明の第3の態様は、第1又は2の態様
において、前記リード電極と接続されている電極が前記
上電極であることを特徴とするアクチュエータにある。
【0017】かかる第3の態様では、上電極への配線は
リード電極を介して行われる。
【0018】本発明の第4の態様は、第1又は2の態様
において、前記リード電極と接続されている電極が前記
下電極であることを特徴とするアクチュエータにある。
【0019】かかる第4の態様では、下電極への配線は
リード電極を介して行われる。
【0020】本発明の第5の態様は、第1〜4の何れか
の態様において、前記有機導電体が、ポリアセチレン、
ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリフェニレ
ンスルフィド、ポリチオフェン等の共役系導電性高分
子、及びグラファイトからなる群から選択されることを
特徴とするアクチュエータにある。
【0021】かかる第5の態様では、リード電極が、共
役系導電性高分子又はグラファイトから形成される。
【0022】本発明の第6の態様は、第1〜5の何れか
の態様において、前記振動板が、ノズル開口に連通する
圧力発生室の一部を構成し、前記圧電体能動部が前記圧
力発生室に対向した領域に形成されていることを特徴と
するインクジェット式記録ヘッドにある。
【0023】かかる第6の態様では、圧力発生室に対向
して圧電体能動部を形成することにより、圧電体能動部
の駆動によりインクを吐出するインクジェット式記録ヘ
ッドが構成され、圧電体能動部の端部での疲労破壊が有
効に防止される。
【0024】本発明の第7の態様は、第6の態様におい
て、前記圧電体能動部の前記圧力発生室に対向する領域
内に帯状に形成され、前記有機導電体からなるリード電
極が、少なくとも前記圧力発生室に対向する領域から当
該領域外まで延設されていることを特徴とするインクジ
ェット式記録ヘッドにある。
【0025】かかる第7の態様では、少なくとも駆動時
に変形が生じる部分に有機導電体の材料を用いることに
より、変形が容易になり、圧電体層に生じる応力が低減
される。
【0026】本発明の第8の態様は、第7の態様におい
て、前記リード電極が、前記圧力発生室に対向する領域
外で、金属製の導電体膜に接続されていることを特徴と
するインクジェット式記録ヘッドにある。
【0027】かかる第8の態様では、駆動時に変形が生
じない部分に金属製の導電体膜を用いることにより、配
線全体の抵抗を低下することができる。
【0028】本発明の第9の態様は、第6〜8の何れか
の態様において、前記圧力発生室がシリコン単結晶基板
に異方性エッチングにより形成され、前記圧電振動子の
各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されたもので
あることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにあ
る。
【0029】かかる第9の態様では、高密度のノズル開
口を有するインクジェット式記録ヘッドを大量に且つ比
較的容易に製造することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に本発明を実施形態に基づい
て詳細に説明する。
【0031】(実施形態1)図1は、本発明の実施形態
1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す組立斜視図
であり、図2は、平面図及びその1つの圧力発生室の長
手方向における断面構造を示す図である。
【0032】図示するように、流路形成基板10は、本
実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板か
らなる。流路形成基板10としては、通常、150〜3
00μm程度の厚さのものが用いられ、望ましくは18
0〜280μm程度、より望ましくは220μm程度の
厚さのものが好適である。これは、隣接する圧力発生室
間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるから
である。
【0033】流路形成基板10の一方の面は開口面とな
り、他方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリ
コンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成され
ている。
【0034】一方、流路形成基板10の開口面には、シ
リコン単結晶基板を異方性エッチングすることにより、
ノズル開口11、圧力発生室12が形成されている。
【0035】ここで、異方性エッチングは、シリコン単
結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々
に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面
と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且
つ上記(110)と約35度の角度をなす第2の(11
1)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと
比較して(111)面のエッチングレートが約1/18
0であるという性質を利用して行われるものである。か
かる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)
面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平
行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うこと
ができ、圧力発生室12を高密度に配列することができ
る。
【0036】本実施形態では、各圧力発生室12の長辺
を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で
形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板1
0をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングす
ることにより形成されている。なお、弾性膜50は、シ
リコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵さ
れる量がきわめて小さい。
【0037】一方、各圧力発生室12の一端に連通する
各ノズル開口11は、圧力発生室12より幅狭で且つ浅
く形成されている。すなわち、ノズル開口11は、シリ
コン単結晶基板を厚さ方向に途中までエッチング(ハー
フエッチング)することにより形成されている。なお、
ハーフエッチングは、エッチング時間の調整により行わ
れる。
【0038】ここで、インク滴吐出圧力をインクに与え
る圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズ
ル開口11の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出
スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、
1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノ
ズル開口11は数十μmの溝幅で精度よく形成する必要
がある。
【0039】また、各圧力発生室12と後述する共通イ
ンク室31とは、後述する封止板20の各圧力発生室1
2の一端部に対応する位置にそれぞれ形成されたインク
供給連通口21を介して連通されており、インクはこの
インク供給連通口21を介して共通インク室31から供
給され、各圧力発生室12に分配される。
【0040】封止板20は、前述の各圧力発生室12に
対応したインク供給連通口21が穿設された、厚さが例
えば、0.1〜1mmで、線膨張係数が300℃以下
で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラ
スセラミックスからなる。なお、インク供給連通口21
は、図3(a),(b)に示すように、各圧力発生室1
2のインク供給側端部の近傍を横断する一つのスリット
孔21Aでも、あるいは複数のスリット孔21Bであっ
てもよい。封止板20は、一方の面で流路形成基板10
の一面を全面的に覆い、シリコン単結晶基板を衝撃や外
力から保護する補強板の役目も果たす。また、封止板2
0は、他面で共通インク室31の一壁面を構成する。
【0041】共通インク室形成基板30は、共通インク
室31の周壁を形成するものであり、ノズル開口数、イ
ンク滴吐出周波数に応じた適正な厚みのステンレス板を
打ち抜いて作製されたものである。本実施形態では、共
通インク室形成基板30の厚さは、0.2mmとしてい
る。
【0042】インク室側板40は、ステンレス基板から
なり、一方の面で共通インク室31の一壁面を構成する
ものである。また、インク室側板40には、他方の面の
一部にハーフエッチングにより凹部40aを形成するこ
とにより薄肉壁41が形成され、さらに、外部からのイ
ンク供給を受けるインク導入口42が打抜き形成されて
いる。なお、薄肉壁41は、インク滴吐出の際に発生す
るノズル開口11と反対側へ向かう圧力を吸収するため
のもので、他の圧力発生室12に、共通インク室31を
経由して不要な正又は負の圧力が加わるのを防止する。
本実施形態では、インク導入口42と外部のインク供給
手段との接続時等に必要な剛性を考慮して、インク室側
板40を0.2mmとし、その一部を厚さ0.02mm
の薄肉壁41としているが、ハーフエッチングによる薄
肉壁41の形成を省略するために、インク室側板40の
厚さを初めから0.02mmとしてもよい。
【0043】一方、流路形成基板10の開口面とは反対
側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.5μm
の下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体膜
70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜80と
が、後述するプロセスで積層形成されて、圧電振動子
(圧電素子)を構成している。このように、弾性膜50
の各圧力発生室12に対向する領域には、各圧力発生室
12毎に独立して圧電振動子が設けられており、本実施
形態では、下電極膜60は圧電振動子の共通電極とし、
上電極膜80を圧電振動子の個別電極としているが、駆
動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。ま
た、本実施形態では、圧電体膜70を各圧力発生室12
に対応して個別に設けたが、圧電体膜を全体に設け、上
電極膜80を各圧力発生室12に対応するように個別に
設けてもよい。何れの場合においても、下電極膜60と
上電極膜80とに電圧を印加することにより圧電歪みが
生じる圧電体能動部が、各圧力発生室12毎に形成され
ていることになる。
【0044】そして、かかる各上電極膜80の上面の少
なくとも周縁、及び圧電体膜70の側面を覆うように電
気絶縁性を備えた絶縁体層90が形成されている。絶縁
体層90は、成膜法による形成やエッチングによる整形
が可能な材料、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、有
機材料、好ましくは剛性が低く、且つ電気絶縁性に優れ
た感光性ポリイミドで形成するのが好ましい。
【0045】絶縁体層90の各上電極膜80の一端部に
対応する部分の上面を覆う部分の一部には後述するリー
ド電極100と接続するために上電極膜80の一部を露
出させるコンタクトホール90aが形成されている。そ
して、このコンタクトホール90aを介して各上電極膜
80に一端が接続し、また他端が接続端子部に延びるリ
ード電極100が形成されている。
【0046】ここで、リード電極100は、有機導電体
の材質で形成された有機導電性膜からなる。有機導電体
の材料としては、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニ
レン、ポリピロール、ポリフェニレンスルフィド、ポリ
チオフェン等の共役系導電性高分子、又はグラファイト
などを挙げることができる。
【0047】かかるリード電極100は、金属層などと
比較してヤング率が極めて小さいので、圧電振動子の駆
動の際に異常な応力が発生する虞がないので、初期の圧
電特性を長期に亘って維持することができる。
【0048】ここで、シリコン単結晶基板からなる流路
形成基板10上に、圧電体膜70等を形成するプロセス
を図4を参照しながら説明する。
【0049】図4(a)に示すように、まず、流路形成
基板10となるシリコン単結晶基板のウェハを約110
0℃の拡散炉で熱酸化して二酸化シリコンからなる弾性
膜50を形成する。
【0050】次に、図4(b)に示すように、スパッタ
リングで下電極膜60を形成する。下電極膜60の材料
としては、Pt等が好適である。これは、スパッタリン
グやゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体膜70は、成
膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜100
0℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるから
である。すなわち、下電極膜70の材料は、このような
高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければなら
ず、殊に、圧電体膜70としてPZTを用いた場合に
は、PbOの拡散による導電性の変化が少ないことが望
ましく、これらの理由からPtが好適である。
【0051】次に、図4(c)に示すように、圧電体膜
70を成膜する。この圧電体膜70の成膜にはスパッタ
リングを用いることもできるが、本実施形態では、金属
有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥
してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物
からなる圧電体膜70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を
用いている。圧電体膜70の材料としては、チタン酸ジ
ルコン酸鉛(PZT)系の材料がインクジェット式記録
ヘッドに使用する場合には好適である。
【0052】次に、図4(d)に示すように、上電極膜
80を成膜する。上電極膜80は、導電性の高い材料で
あればよく、Al、Au、Ni、Pt等の多くの金属
や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、P
tをスパッタリングにより成膜している。
【0053】次に、図5に示すように、下電極膜60、
圧電体膜70及び上電極膜80をパターニングする。
【0054】まず、図5(a)に示すように、下電極膜
60、圧電体膜70及び上電極膜80を一緒にエッチン
グして下電極膜60の全体パターンをパターニングす
る。次いで、図5(b)に示すように、圧電体膜70及
び上電極膜80のみをエッチングして圧電体能動部32
0のパターニングを行う。次に、図5(c)に示すよう
に、各圧力発生室12(図5では圧力発生室12は形成
前であるが、破線で示す)の幅方向両側に対向した領域
である圧電体能動部320の両側の振動板の腕に相当す
る部分の下電極膜60を除去することにより、下電極膜
除去部350を形成する。このように下電極膜除去部3
50を設けることにより、圧電体能動部320への電圧
印加による変位量の向上を図るものである。
【0055】なお、下電極膜除去部350は、下電極膜
60を完全に除去せずに、厚さを薄くしたものでもよ
い。また、圧電体能動部320の腕部に相当する部分に
下電極膜除去部350を形成しているが、これに限定さ
れず、例えば、圧電体能動部320の両端部よりも長手
方向外側まで形成するようにしてもよいし、圧力発生室
12の周縁部ほぼ全体に亘って形成してもよい。勿論、
この下電極膜除去部350は、必ずしも設ける必要はな
い。
【0056】以上のように、下電極膜60等をパターニ
ングした後には、好ましくは、各上電極膜80の上面の
少なくとも周縁、及び圧電体膜70および下電極膜60
の側面を覆うように電気絶縁性を備えた絶縁体層90を
形成する(図1参照)。
【0057】そして、絶縁体層90の各圧電体能動部3
20の一端部に対応する部分の上面を覆う部分の一部に
は後述するリード電極100と接続するために上電極膜
80の一部を露出させるコンタクトホール90aが形成
されている。そして、このコンタクトホール90aを介
して各上電極膜80に一端が接続し、また他端が接続端
子部に延びるリード電極100が形成されている。な
お、コンタクトホール90aの位置は特に限定されな
い。
【0058】このような絶縁体層の形成プロセスを図6
に示す。
【0059】まず、図6(a)に示すように、上電極膜
80の周縁部、圧電体膜70の側面および下電極膜60
の上面を覆うように絶縁体層90を形成する。この絶縁
体層90の好適な材料は上述した通りであるが、本実施
形態ではネガ型の感光性ポリイミドを用いている。
【0060】次に、図6(b)に示すように、絶縁体層
90をパターニングすることにより、各圧力発生室12
のインク供給側の端部近傍に対応する部分にコンタクト
ホール90aを形成する。このコンタクトホール90a
は、後述するリード電極100と上電極膜80との接続
をするためのものである。なお、コンタクトホール90
aは、圧力発生室12の圧電体能動部320に対応する
部分に設ければよく、例えば、中央部やノズル側端部に
設けてもよい。また、本実施形態では、絶縁体層90
は、圧電体能動部320の全体を覆うように形成してい
るが、不必要な部分は除去してもよいことはいうまでも
ない。
【0061】次に、例えば、ポリアセチレンなどの有機
導電体を、例えば、スピンコーティングなどで全面に有
機導電性膜を成膜した後、パターニングすることによ
り、リード電極100を形成する。なお、リード電極1
00の形成方法は特に限定されず、材料に応じて、CV
Dなど他の方法を採用してもよい。また、絶縁体層90
として、感光性ポリアミドなどの有機材料を用いた場合
には、特に、リード電極100との密着性が良好にな
る。
【0062】以上が膜形成プロセスである。このように
して膜形成を行った後、図6(c)に示すように、前述
したアルカリ溶液によるシリコン単結晶基板の異方性エ
ッチングを行い、圧力発生室12等を形成する。なお、
以上説明した一連の膜形成及び異方性エッチングは、一
枚のウェハ上に多数のチップを同時に形成し、プロセス
終了後、図1に示すような一つのチップサイズの各流路
形成基板10に分割する。また、分割した流路形成基板
10を、封止板20、共通インク室形成基板30、及び
インク室側板40と順次接着して一体化し、インクジェ
ット式記録ヘッドとする。
【0063】このように構成したインクジェットヘッド
は、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導
入口42からインクを取り込み、共通インク室31から
ノズル開口11に至るまで内部をインクで満たした後、
図示しない外部の駆動回路からの記録信号に従い、リー
ド電極100を介して下電極膜60と上電極膜80との
間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電
体膜70をたわみ変形させることにより、圧力発生室1
2内の圧力が高まりノズル開口11からインク滴が吐出
する。
【0064】(実施形態2)図7には、本発明の実施形
態2に係るインクジェット式記録ヘッドの圧力発生室近
傍の断面形状を示す。
【0065】本実施形態は、圧力発生室12に対向する
領域外に、例えば、Cr−Auなどの導電体からなる第
2のリード電極101を形成し、有機導電体からなるリ
ード電極100は、コンタクトホール90aから圧力発
生室12に対向する領域外の第2のリード電極101と
の接続部までの部分のみに設けたものである。
【0066】このように、有機導電体からなるリード電
極100は、駆動時に変位する部分のみに設け、他の部
分は、導電性が極めて高い導電体膜を用いることによ
り、圧電振動子の駆動時に異常な応力を発生させること
なく、リード電極の全体としての抵抗値を低下させるこ
とができ、圧電振動子の駆動時の電圧の印加を比較的容
易に行うことができる。
【0067】(実施形態3)図8には、本発明の実施形
態3に係るインクジェット式記録ヘッドの圧力発生室近
傍の断面形状を示す。
【0068】本実施形態は、圧力発生室12のコンタク
トホール90a近傍の端部側の下電極膜60を除去して
下電極膜除去部351を形成した以外は、実施形態1と
同様である。なお、この場合、下電極膜60への配線
は、圧力発生室12のコンタクトホール90a近傍とは
反対側の端部側から引き出されるようにパターニングさ
れている。
【0069】上述したように、圧電体能動部320の幅
方向両側の下電極膜除去部350の他、コンタクトホー
ル90a近傍の長手方向端部に下電極膜除去部351を
設けることにより、リード電極100を形成した端部の
変位がさらに容易になるので、圧電体膜70に配線形成
領域が及ぼす応力がさらに抑制される。
【0070】(実施形態4)図9には、本発明の実施形
態4に係るインクジェット式記録ヘッドの圧力発生室近
傍の断面形状を示す。
【0071】本実施形態は、実施形態2及び3を組み合
わせたもので、圧力発生室12に対向する領域に第2の
リード電極101を設けて有機導電体からなるリード電
極100に接続し、一方、圧力発生室12のコンタクト
ホール90a近傍の端部側の下電極膜60を除去して下
電極膜除去部351を形成したものである。したがっ
て、本実施形態は、実施形態2及び3の両方の効果を奏
する。
【0072】(実施形態5)図10には、本発明の実施
形態5に係るインクジェット式記録ヘッドの圧力発生室
近傍の断面形状を示す。
【0073】本実施形態は、圧力発生室12のコンタク
トホール90a近傍とは反対側の端部側の下電極膜60
を除去して下電極膜除去部352を形成し、さらに、こ
の近傍に下電極膜60と外部配線との接続を図るための
第3のリード電極102を設けた以外は、実施形態3と
同様である。すなわち、本実施形態では、コンタクトホ
ール90aとは反対の圧力発生室12の端部近傍の下電
極膜60を覆う絶縁体層90に第2のコンタクトホール
90bを形成し、この第2のコンタクトホール90b内
で下電極膜60と第3のリード電極102との接続を図
るものである。また、第3のリード電極102を、第1
のリード電極100と同様な有機導電体で形成したもの
である。
【0074】上述したように、圧電体能動部320の幅
方向両側の下電極膜除去部350及び351の他、コン
タクトホール90a近傍とは反対側の長手方向端部に下
電極膜除去部352を設けることにより、リード電極1
00を形成した端部の変位がさらに容易になるので、圧
電体膜70に配線形成領域が及ぼす応力がさらに抑制さ
れる。
【0075】(実施形態6)図11には、本発明の実施
形態6に係るインクジェット式記録ヘッドの圧力発生室
近傍の断面形状を示す。
【0076】本実施形態は、圧力発生室12に対向する
領域外に、例えば、Cr−Auなどの導電体からなる第
4のリード電極103を形成し、有機導電体からなる第
3のリード電極102は、コンタクトホール90bから
圧力発生室12に対向する領域外の第4のリード電極1
03との接続部までの部分のみに設けたものである。
【0077】このように、有機導電体からなる第3のリ
ード電極102は、駆動時に変位する部分のみに設け、
他の部分は、導電性が極めて高い導電体膜を用いること
により、圧電振動子の駆動時に異常な応力を発生させる
ことなく、リード電極の全体としての抵抗値を低下させ
ることができ、圧電振動子の駆動時の電圧の印加を比較
的容易に行うことができる。
【0078】(他の実施形態)以上、本発明の各実施形
態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的
構成は上述したものに限定されるものではない。
【0079】例えば、上述した封止板20の他、共通イ
ンク室形成板30をガラスセラミックス製としてもよ
く、さらには、薄肉膜41を別部材としてガラスセラミ
ックス製としてもよく、材料、構造等の変更は自由であ
る。
【0080】また、上述した実施形態では、ノズル開口
を流路形成基板10の端面に形成しているが、面に垂直
な方向に突出するノズル開口を形成してもよい。
【0081】このように構成した実施形態の分解斜視図
を図12、その流路の断面を図13にぞれぞれ示す。こ
の実施形態では、ノズル開口11が圧電振動子とは反対
側のノズル基板120に穿設され、これらノズル開口1
1と圧力発生室12とを連通するノズル連通口22が、
封止板20,共通インク室形成板30及び薄肉板41A
及びインク室側板40Aを貫通するように配されてい
る。
【0082】なお、本実施形態は、その他、薄肉板41
Aとインク室側板40Aとを別部材とし、インク室側板
40に開口40bを形成した以外は、基本的に上述した
実施形態と同様であり、同一部材には同一符号を付して
重複する説明は省略する。
【0083】ここで、この実施形態においても、上述し
た各実施形態と同様に、リード電極100を有機導電体
からなる材料で形成することにより、駆動時に圧電体膜
に異常な応力がかかることがないので、特性劣化が生じ
ることがない。
【0084】勿論、以上説明した各実施形態は、適宜組
み合わせて実施することにより、より一層の効果を奏す
るものであることは言うまでもない。
【0085】また、以上説明した各実施形態は、成膜及
びリソグラフィプロセスを応用することにより製造でき
る薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、
勿論これに限定されるものではなく、例えば、基板を積
層して圧力発生室を形成するもの、あるいはグリーンシ
ートを貼付もしくはスクリーン印刷等により圧電体膜を
形成するもの、又は結晶成長により圧電体膜を形成する
もの等、各種の構造のインクジェット式記録ヘッドに本
発明を採用することができる。
【0086】さらに、上述した各実施形態では、振動板
として下電極膜とは別に弾性膜を設けたが、下電極膜が
弾性膜を兼ねるようにしてもよい。
【0087】また、圧電振動子とリード電極との間に絶
縁体層を設けた例を説明したが、これに限定されず、例
えば、絶縁体層を設けないで、各上電極に異方性導電膜
を熱溶着し、この異方性導電膜をリード電極と接続した
り、その他、ワイヤボンディング等の各種ボンディング
技術を用いて接続したりする構成としてもよい。
【0088】このように、本発明は、その趣旨に反しな
い限り、種々の構造のインクジェット式記録ヘッドに応
用することができる。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては、
外部信号を圧電素子の上電極に供給する配線の圧力発生
室の端部の壁と圧電素子との間の部分を、ヤング率の小
さい有機導電性膜材料で構成しているので、圧力発生室
領域内に形成されている圧電素子の全面にわたって、十
分に変形させることができる。その結果、信号印加時に
圧力発生室の体積変化が大きくなるので、従来より十分
な量のインク滴を吐出することができる。また、圧力発
生室境界からコンタクトホールまでの領域で圧電素子に
不要な応力がかからないので圧電素子の機械的劣化がな
くなる。よって、従来より信頼性の高いインクジェット
式記録ヘッドを提供することができる。また、従来と同
じ体積変化の圧力発生室であれば、コンタクトホール領
域の圧電素子部分も変位して体積変化に寄与するから、
圧力発生室がコンパクトになる。その結果、ヘッドの面
積が小さくなるので、従来より多くのヘッドを基板につ
くりこめるので、製造コストを大幅に削減することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記
録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記
録ヘッドを示す図であり、図1の平面図及び断面図であ
る。
【図3】図1の封止板の変形例を示す図である。
【図4】本発明の薄膜製造工程を示す図である。
【図5】本発明の薄膜製造工程を示す図である。
【図6】本発明の薄膜製造工程を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2を説明する要部断面図であ
る。
【図8】本発明の実施形態3を説明する要部断面図であ
る。
【図9】本発明の実施形態4を説明する要部断面図であ
る。
【図10】本発明の実施形態5を説明する要部断面図で
ある。
【図11】本発明の実施形態6を説明する要部断面図で
ある。
【図12】本発明の他の実施形態に係るインクジェット
式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るインクジェット
式記録ヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板 11 ノズル開口 12 圧力発生室 50 弾性膜 60 下電極膜 70 圧電体膜 80 上電極膜 90 絶縁体層 100 リード電極(有機導電体) 101 第2のリード電極 102 第3のリード電極(有機導電体) 103 第4のリード電極 320 圧電体能動部 350,351,352 下電極膜除去部

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも上面に下電極を有する振動板
    と、該振動板の表面に形成された圧電体層及び該圧電体
    層の表面に形成された上電極からなる圧電体能動部とか
    らなる圧電振動子を備え、前記下電極及び前記上電極の
    少なくとも一方に接続されるリード電極を具備するアク
    チュエータにおいて、 前記リード電極が、有機導電体の材質から形成されてい
    ることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記下電極及び前記
    上電極の少なくとも一方と前記リード電極との間には、
    両者の接続を形成するための窓であるコンタクトホール
    部を有する絶縁体層を有し、該絶縁体層が有機物からな
    ることを特徴とするアクチュエータ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、前記リード電
    極と接続されている電極が前記上電極であることを特徴
    とするアクチュエータ。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2において、前記リード電
    極と接続されている電極が前記下電極であることを特徴
    とするアクチュエータ。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れかにおいて、前記有
    機導電体が、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレ
    ン、ポリピロール、ポリフェニレンスルフィド、ポリチ
    オフェン等の共役系導電性高分子、及びグラファイトか
    らなる群から選択されることを特徴とするアクチュエー
    タ。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れかにおいて、前記振
    動板が、ノズル開口に連通する圧力発生室の一部を構成
    し、前記圧電体能動部が前記圧力発生室に対向した領域
    に形成されていることを特徴とするインクジェット式記
    録ヘッド。
  7. 【請求項7】 請求項6において、前記圧電体能動部の
    前記圧力発生室に対向する領域内に帯状に形成され、前
    記有機導電体からなるリード電極が、少なくとも前記圧
    力発生室に対向する領域から当該領域外まで延設されて
    いることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 請求項7において、前記リード電極が、
    前記圧力発生室に対向する領域外で、金属製の導電体膜
    に接続されていることを特徴とするインクジェット式記
    録ヘッド。
  9. 【請求項9】 請求項6〜8の何れかにおいて、前記圧
    力発生室がシリコン単結晶基板に異方性エッチングによ
    り形成され、前記圧電振動子の各層が成膜及びリソグラ
    フィ法により形成されたものであることを特徴とするイ
    ンクジェット式記録ヘッド。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001075985A1 (fr) * 2000-03-30 2001-10-11 Fujitsu Limited Actionneur piezoelectrique, son procede de fabrication et tete a jet d'encre dotee de cet actionneur
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