JPH11100714A - 塩化ビニル系繊維およびその製造方法 - Google Patents

塩化ビニル系繊維およびその製造方法

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JPH11100714A
JPH11100714A JP7761798A JP7761798A JPH11100714A JP H11100714 A JPH11100714 A JP H11100714A JP 7761798 A JP7761798 A JP 7761798A JP 7761798 A JP7761798 A JP 7761798A JP H11100714 A JPH11100714 A JP H11100714A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】人毛に極めて類似した七部艶〜半艶表面、手触
り触感を兼ね備えた細繊度の塩化ビニル系繊維およびそ
の製造方法を提供する 【解決手段】塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
ル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢
酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)熱安定剤0.
2〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配
合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなる塩化ビニル
系繊維、および、前記樹脂組成物を溶融紡糸することを
特徴とする塩化ビニル系繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、かつら、ヘア・ピ
ース、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサリ
ーヘアーなどの頭髪装飾用に用いられる人工毛髪、或い
はドールヘアー等の人形用頭髪繊維などとして使用され
る塩化ビニル系繊維、およびその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル系樹脂を紡糸して繊維状にし
てなる塩化ビニル系繊維は、その優れた強度、伸度、カー
ル保持性、スタイル性などの故に、頭髪装飾用などの人工
毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用
頭髪繊維として多量に使用されている。
【0003】従来、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維と
して、細繊度(断面積が小さく、細い繊維)の繊維を工業
的に製造するには、一般的に塩化ビニル系樹脂に対する
溶媒を使用する湿式紡糸法、または乾式紡糸法によっ
て、細い繊度の塩化ビニル系繊維を製造する方法が工業
的に実施されている。しかしながら、該方法は、溶媒を
使用するが故に脱溶媒工程を必要とし、過大な設備投資
が必要であり、その設備の維持管理にも多数の人手を必
要とするという問題点がある。また、溶媒に対する溶解
性を向上するべく、アクリロニトリルなどのコモノマー
を共重合する為、繊維の初期着色性に弱点があり、乾燥
工程での熱によって黄色味の強い毛髪になり易いという
問題点、あるいは繊維のカール保持性が充分でないなど
の問題点がある。
【0004】一方、溶媒を使用しない紡糸方法としては
溶融紡糸法が知られているが、この方法によって、人毛
に極めて類似した半艶表面(艶の評価については、実施
例に評価基準を示した。)、触感の頭髪装飾用などの細
繊度の人工毛髪用繊維を得る為には、1ケの断面積が極
めて小さいノズル孔(0.5mm2以下)から溶融・流出
させ、紡糸ドラフト比を小さくする(Dr比:25以
下)のが好ましい。すなわち、逆に大きな断面積のノズ
ル孔から溶融・流出させて、細繊度の塩化ビニル系繊維
とすると、必然的に紡糸ドラフト比を大きくする必要が
あり、溶融紡糸時に未延伸糸が極端に引き伸ばされるこ
とになるため、この未延伸糸に延伸・熱処理を施してな
る繊維(延伸糸)表面が、平滑になり、光沢が出て、サラ
サラ触感がなくなるなど頭髪装飾用などの人工毛髪用繊
維としては不十分な繊維となる傾向があった。故に、頭
髪装飾用などの人工毛髪用繊維として品質的に優れた繊
維を得る為には、できる限り1ケの断面積が小さいノズ
ル孔から溶融・流出させ、紡糸ドラフト比を小さくする
のが好ましい。
【0005】しかしながら、従来は1ケの断面積が極め
て小さいノズル孔から流出させる場合には、ノズルにか
かる圧力が高くなり、押出機の設計圧力をオーバーして
しまうという問題や、その圧力を定格以下とするべく、
押出量を低くすると、溶融紡糸生産性が低下するという
問題、あるいは溶融粘度を低くする為に、溶融紡糸温度
を高く設定すると、熱分解を発生したり、ロングラン性
が劣るような傾向があった。
【0006】故に、これらの問題を解決するべく、従来
から様々な提案がなされているが、十分な解決には至っ
ていない。例えば、特公昭51-2109号公報では、
塩素化塩化ビニル樹脂とメチルメタクリレート系樹脂を
使用することにより、曳糸性を向上するという提案があ
るが、比較的大きな断面から小さな断面へと引き伸ばし
て、細繊度とする為、繊維表面が平滑になり光沢が発生
しやすく、人毛に類似した半艶表面からかけ離れるたも
のになるばかりでなく、サラサラとした触感がなくなり、
毛髪用繊維として不十分であった。また、組成物の溶融
粘度を低下するべく、カドミウムや鉛を使用したCd-P
b系の熱安定剤、滑剤を使用する方法が工業的に実施さ
れている。しかしこれらの配合剤を使用すると、ノズル
圧力の問題や溶融紡糸生産性の問題などは解決できるも
のの、初期着色が大きく、黄色味の強い毛髪になりやす
い。また、これらの配合剤は毒性が高く、製造上問題が
あるばかりでなく、頭髪装飾用として皮膚に触れる為に
安全衛生上の問題がある。また、これらの頭髪装飾用品
などが廃棄される場合、一般ゴミに混入して環境を汚染
するという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、従来公知のCd-Pb系の熱安定剤、滑剤を使用し
なくても、初期着色性を大幅に改善しつつ、人毛に極め
て類似した半艶表面、触感、柔軟性を保持し、また優れ
た強度、伸度、収縮性を保持した細繊度の塩化ビニル系繊
維を提供することにあり、第2の目的は、従来公知の錫
系安定剤を使用した塩化ビニル系繊維の品質課題である
プラチック的触感、キラキラ感のある表面性、ゴワゴワ
とした指巻き触感、熱収縮性などを改善し、安全に、か
つ安定的に生産できる細繊度の塩化ビニル系繊維および
その製造方法を提供することにある。さらに第3の目的
は、1ヶのノズル断面積が極めて小さいノズル孔から溶
融紡糸する際の諸問題点を解決し、ノズル圧力と溶融紡
糸生産性を高度にバランスし、さらに、溶融紡糸温度と
熱分解・ロングラン性のバランスをレベルアップした細
繊度の塩化ビニル系繊維の製造方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、上記課題を
解決するべく、組成物の配合系、ノズル孔断面積、溶融紡
糸条件などについて、鋭意研究を重ねた結果、塩化ビニ
ル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル
系混合物にエチレン−酢酸ビニル系樹脂、熱安定剤、お
よび滑剤を特定範囲で配合した場合には、Cd−Pb系
の熱安定剤、滑剤等を使用しなくても人毛に極めて類似
した半艶表面、触感等を保持し、前記品質問題を解決し
た細繊度の繊維を溶融紡糸生産性を低下させることなく
安定的に得られることを見出し、本発明を完成するに至
った。
【0009】すなわち本発明は、塩化ビニル系樹脂10
0〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量
%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、
(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部
と、(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と、(c)滑剤
0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂
組成物からなる塩化ビニル系繊維であり、前記熱安定剤
(b)は錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロ
タルサイト系熱安定剤、およびゼオライト系熱安定剤か
らなる群の内から選択される少なくとも1種を用いるこ
とができ、また前記滑剤(c)はカドミウムや鉛を含有し
ない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸
系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール
系滑剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の
内から選択される少なくとも1種を用いることができ
る。
【0010】また塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と
塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン
−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカ
プト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウ
レート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少な
くとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)
カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチ
レン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からな
る群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2
〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成
物を用いることができ、さらに、塩化ビニル系樹脂10
0重量部に対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂
を1〜35重量部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、
マレエート錫系熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定
剤からなる群の内から選択される少なくとも1種の熱安
定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を
含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、および
ペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内から選択さ
れる少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配
合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることもでき
る。本発明にかかる塩化ビニル系樹脂は塩化ビニル単独
樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、および酢酸ビ
ニル−塩化ビニル共重合樹脂からなる群の内から選択さ
れる少なくとも1種の樹脂であり、かつ塩素化塩化ビニ
ル系樹脂は、重合度350〜1100の原料塩化ビニル
樹脂を用いて、塩素含有量60〜70重量%にしたもの
を用いることが好ましい。
【0011】一方、本発明の製造方法は、塩化ビニル系
樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜
40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に
対して、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35
重量部と、(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と、
(c)滑剤0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビ
ニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とす
るものである。
【0012】前記熱安定剤(b)は錫系熱安定剤、Ca-
Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およ
びゼオライト系熱安定剤からなる群の内から選択される
少なくとも1種を用いることができ、また、前記滑剤
(c)はカドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポ
リエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリ
トール系滑剤、高級アルコール系滑剤、およびモンタン
酸ワックス系滑剤からなる群の内から選択される少なく
とも1種を用いることができる。
【0013】また塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と
塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン
−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプ
ト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウ
レート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少な
くとも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)
カドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチ
レン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からな
る群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2
〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成
物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とすることができ、
さらに、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、
(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部
と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱
安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内
から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.
0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石
鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリ
トール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも
1種の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビ
ニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とす
ることもできる。
【0014】本発明の製造方法は、本発明の塩化ビニル
系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の
断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せ
しめることができる。また、前記溶融紡糸するに際し、
1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔か
ら溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延伸糸を
製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処理を施し
て、100デニール以下の繊維とすることもできる。
【0015】さらに、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物
をノズル圧力500Kg/cm2以下、樹脂温度195℃
以下で、ノズル孔から溶融・流出せしめると同時に、紡糸
ドラフト比を25以下の条件下で、未延伸糸を引取る方
法も用いることができ、溶融紡糸のダイ先端部に使用す
るノズルに存在するノズル孔が、50〜300ケであり、
該ノズル孔が、円状、楕円状、長方形状、または正方形状に
配列され、隣接するノズル孔の中心間(異形断面形状に
あっては、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8
mm以上となる様に配列されているノズルを用いること
もできる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明に使用する塩化ビニル系樹
脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモ
ポリマー樹脂、または従来公知の各種の共重合樹脂であ
り、特に限定されるものではない。該共重合樹脂として
は、従来公知の共重合樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル
共重合樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類との共
重合樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチル共重合樹脂、
塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシル共重合樹脂な
どの塩化ビニルとアクリル酸エステル類との共重合樹
脂、塩化ビニル−エチレン共重合樹脂、塩化ビニル−プ
ロピレン共重合樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類と
の共重合樹脂、塩化ビニル−アクリロニトル共重合樹脂
などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニ
ル単独樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビ
ニル−塩化ビニル共重合樹脂などを使用するのが良い。
該共重合樹脂に於いて、コモノマーの含有量は特に限定
されず、成形加工性、糸特性などの要求品質に応じて決
めることができる。特に好ましくは、コモノマーの含有
量は、2〜30%である。
【0017】本発明に使用する塩化ビニル系樹脂の粘度
平均重合度は、450〜1800であることが望まし
い。450未満であると、繊維の特性、特に熱収縮率、
カール保持性、艶状態などが劣る傾向があり好ましくな
い。逆に、1800を越えると、溶融粘度が高くなる
為、ノズル圧力が高くなり、安全な製造が困難になる。
これら成形加工性と繊維特性とのバランスから、塩化ビ
ニル単独樹脂を使用する場合は、粘度平均重合度が65
0〜1450の領域が特に好ましく、共重合樹脂を使用
する場合は、コモノマーの含有量にも依存するが、粘度
平均重合度は、1000〜1700の領域が特に好まし
い。
【0018】また本発明に使用する塩化ビニル系樹脂
は、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などによって製
造したものを使用できるが、繊維の初期着色性などを勘
案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが
好ましい。本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂と
は、塩化ビニル系樹脂を原料とし、これに塩素を付加反
応せしめ、塩素含有量を58〜72重量%、好ましくは
60〜70重量%に高めたものを使用するのが好ましい
が、主たる目的として、繊維の熱収縮率を低下せしめる
為に使用することができる。また該塩素化塩化ビニル系
樹脂は、粘度平均重合度(原料塩化ビニル系樹脂の粘度
平均重合度)が300〜1100であることが好まし
い。該粘度平均重合度が300未満であると、繊維の熱
収縮率を低下せしめる効果が小さくなるので収縮率のや
や高い繊維となる。逆に、該粘度平均重合度が1100
を越えると、溶融粘度が高くなり、紡糸時のノズル圧力
が高くなるため、安全操業が困難になるばかりでなく、
溶融紡糸時の糸の破断(糸切れ)の頻度が著しくなり、
安定操業が困難になる傾向がある。より好ましくは、粘
度平均重合度は、350〜1100のものが良く、特に
は500〜900のものが良い。また、前記塩素含有量
については、58重量%未満であると繊維の熱収縮率を
低下せしめる効果が小さくなり、逆に72重量%を越え
ると、溶融粘度が高くなって安定操業が困難となる傾向
があり好ましくない。
【0019】該塩素化塩化ビニル系樹脂の原料となる塩
化ビニル系樹脂は、前述の塩化ビニル系樹脂と同様であ
るが、塩化ビニル単独樹脂またはエチレン−塩化ビニル
共重合樹脂を原料として使用している場合が、特に好ま
しい。本発明に於いては、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩
化ビニル系樹脂の使用比率は、(塩化ビニル/塩素化塩
化ビニル)=(100〜60重量%/0〜40重量%)
の塩化ビニル系混合物とすることが好ましい。前記塩化
ビニルが60重量%未満であると塩素化塩化ビニル系樹
脂が過剰となるため、溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時
のノズル圧力が高くなって、安全操業が困難になる傾向
があり好ましくない。尚、塩化ビニル系樹脂の比率が高
い場合には、熱収縮率の高い繊維になる傾向があり、目
的に応じて、使用比率は適宜調整して用いることができ
る。
【0020】本発明に於いては、主たる目的として、繊維
の柔軟性を高め、柔らかで、しなやかで、かつ、サラサ
ラとした触感の繊維とする為に、塩化ビニル系混合物1
00重量部に対して、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(以
下、EVA系樹脂と略記する。)を1〜35重量部添加
配合して使用するのが好ましく、触感などの点において
は3〜35重量部がさらに好ましい。また該樹脂は、副
次的には、該組成物のゲル化・溶融性を調節し、均一で
適度な溶融状態を醸し出し、適度なノズル圧力を可能と
する効果がある。
【0021】前記EVA系樹脂の使用量が1重量部未満
となると、繊維柔軟性改良効果が希薄になるばかりでな
く、ゲル化・溶融性調節機能が低下し、ノズル圧力が上
昇したりする傾向がある。逆に35重量部を越えると、
組成物のゲル化・溶融性調節機能が低下し、不均一なゲ
ル化・溶融状態になるため、未延伸糸内に「ブツ」状物
(未溶融粒子、または、剪断応力によって崩壊しなかっ
た粒子)が多くなって溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理
時の糸切れ頻度が多くなる傾向があり好ましくない。
【0022】本発明でいうEVA系樹脂とは、従来公知
の酢酸ビニル含有量が20〜65重量%のエチレン−酢
酸ビニル共重合樹脂、さらに極性基としてカルボニル基
を導入してなるエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂から
なるEVA樹脂またはこれらのEVA樹脂に塩化ビニル
をグラフト重合してなるEVA−塩化ビニルグラフトポ
リマー樹脂を意味する。EVA−塩化ビニルグラフトポ
リマー樹脂は、水性媒体中で塩化ビニルを懸濁重合また
は乳化重合する際、EVA樹脂を重合系に添加して重合
を進めることによって容易に得られる。該樹脂は、溶媒
による分別により、EVA樹脂成分、ポリ塩化ビニル樹
脂成分、およびEVA樹脂成分に塩化ビニルが化学的に
結合してなるEVA−塩化ビニルグラフトポリマー成分
の混合物である。
【0023】本発明に使用するEVA樹脂の酢酸ビニル
含有量は、20〜65重量%のものを使用するのが好ま
しい。酢酸ビニル含有量が20重量%未満あるいは65
重量%を越えると組成物系との相溶性が低下し、組成物
のゲル化・溶融性調節機能が低下し、不均一なゲル化・
溶融状態になり、未延伸糸内に「ブツ」状物が多くなっ
て、溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が
多くなる傾向があり好ましくない。また、酢酸ビニル含
有量が20重量%未満であると、繊維柔軟性改良効果が
不十分となり、逆に、酢酸ビニル含有量が65重量%を
越えると、均一混合しなかった組成物中のEVA樹脂成
分が溶融紡糸時に溶解し、 加熱筒あるいはノズル先端部
からメルトダウンして、未延伸糸を得ることが困難とな
るなどの問題がある。
【0024】また、該樹脂の分子量の目安となるメルト
インデックス(MI:gr/10分)は、1〜260程
度の範囲が望ましい。該メルトインデックスが1未満で
あるとEVA樹脂成分の溶融粘度が高くなり、溶融紡糸
時のノズル圧力が高くなる傾向がある。また逆にメルト
インデックスが260を越えると、該樹脂の粘度が低下
し、塩化ビニル系混合物成分の溶融が不十分となり、均
一溶融が不十分となって未延伸糸内に「ブツ」状として
残存し易くなるため、紡糸時の糸切れ頻度が多くなりや
すく好ましくない。
【0025】本発明に使用できるEVA−塩化ビニルグ
ラフトポリマー樹脂は、EVA成分含有量が3〜45重
量%の範囲のものが特に好ましい。該含有量が3重量%
未満であると、繊維柔軟性改良効果が不十分となり、逆
に45重量%を越えると、組成物のゲル化・溶融性調節
機能が低下し、不均一なゲル化・溶融状態になるため、
未延伸糸内に「ブツ」状物が多くなって、溶融紡糸時あ
るいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が多くなる傾向があ
る。
【0026】本発明に使用する熱安定剤は従来公知のも
のが使用できるが、中でも錫系熱安定剤、Ca-Zn系
熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト
系熱安定剤から選択される1種または2種以上の熱安定
剤を0.2〜5.0重量部使用するのが好ましい。該熱安
定剤は、成形時の熱分解、ロングラン性、繊維の色調を
改良する為に使用するもので、特に好ましくは、紡糸時
のノズル周囲に発生するスケール(以下、ノズル目脂と
略記する。)発生量の比較的少ない錫系熱安定剤が良
く、中でもメルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱
安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から1種または2種以
上を使用するのが良い。例えば、ジメチルスズメルカプ
ト、ジブチルスズメルカプト、ジオクチルスズメルカプ
トなどのメルカプト錫系熱安定剤、ジメチルスズマレエ
ート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエ
ート、ジオクチルスズマレエートポリマーなどのマレエ
ート錫系熱安定剤、ジメチルスズラウレート、ジブチル
スズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどのラウ
レート錫系熱安定剤が例示される。
【0027】繊維の初期着色を抑制し、顔料を含まない
ナチュラル組成物の白色度を高める為には、メルカプト
錫系熱安定剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対し
て、少なくとも0.1〜1.4重量部使用し、他の熱安定
剤と併用して合計が、塩化ビニル系混合物100重量部
に対して、0.2〜5.0重量部の範囲とするのが特に好
ましい。該熱安定剤の使用量は、0.2〜5.0重量部で
あるが、0.2重量部未満となると、成形時の熱分解防止
効果が低下する傾向がある。逆に、5.0重量部を越え
ると、紡糸時のノズル目脂発生が多くなり、紡糸時の流
出変動発生が大となりやすく、好ましくない。
【0028】本発明に使用する滑剤は、カドミウムや鉛
を含有しない従来公知のものを用いることができるが、
特に金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸
系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール
系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤から選択される1種
または2種以上を塩化ビニル系混合物100重量部に対
して、0.2〜5.0重量部使用するのが好ましい。該滑
剤は、組成物の溶融状態、ならびに組成物と金属面との
接着状態を制御する為に使用するもので、繊維の表面状
態、触感、糸切れ頻度、ノズル目脂発生頻度、ノズル圧
力などに大きく影響する。
【0029】比較的サラサラとした触感を得る為には、
金属石鹸系滑剤を使用するのが好ましい。また特に、衛
生上の観点から、カドミウム、鉛以外の金属石鹸が良
い。例えば、Na,Mg,Al,Ca,Baなどのステ
アレート、ラウレート、パルミテート、オレエートなど
の金属石鹸が例示される。また、ノズル目脂発生頻度を
低減し、ノズル圧力を低く抑える為には、ポリエチレン
系滑剤を使用するのが好ましく、従来公知のポリエチレ
ン系滑剤を使用できるが、特に好ましくは、平均分子量
が1500〜4000であり、密度が0.91〜0.97
の非酸化タイプまたはごくわずかに極性を附加したタイ
プのポリエチレン系滑剤が特に好ましい。該ポリエチレ
ン系滑剤は0.2〜1.3重量部の範囲で使用するのが特
に好ましい。
【0030】本発明に於いては、高級脂肪酸系滑剤、ペ
ンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モ
ンタン酸ワックス系滑剤は、主として組成物の溶融状態
を制御する為に使用するのが好ましい。高級脂肪酸系滑
剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミ
リスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸などの飽和脂肪
酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、またはこれらの混
合物などが例示される。ペンタエリスリトール系滑剤と
しては、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリ
トールと高級脂肪酸とのモノエステル、ジエステル、ト
リエステル、テトラエステル、またはこれらの混合物な
どが例示される。高級アルコール系滑剤としては、ステ
アリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチル
アルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール
などが例示される。さらに、モンタン酸ワックス系滑剤
としては、モンタン酸とステアリルアルコール、パルミ
チルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアル
コール、オレイルアルコールなどの高級アルコールとの
エステル類が例示される。
【0031】該滑剤系の特に好ましい使用量の領域は、
塩化ビニル系混合物100重量部に対して、カドミウム
や鉛を含有しない金属石鹸系滑剤であれば0.5〜3.0
重量部、ポリエチレン系滑剤であれば0.2〜1.8重量
部、ペンタエリスリトール系滑剤であれば0.2〜1.0
重量部併用するのが特に好ましい。本発明に於ける塩化
ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100〜60
重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からな
る塩化ビニル系混合物100重量部に対して、(a)E
VA系樹脂を1〜35重量部と(b)熱安定剤0.2〜
5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配合し
てなるものの他、塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と
塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、(a)EVA系
樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプト錫系熱安定
剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤か
ら選択される1種または2種以上の熱安定剤を0.2〜
5.0重量部、と(c)カドミウム、鉛を含有しない金属
石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトール
系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を0.
2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成
物を用いることができる。
【0032】前記樹脂組成物は、糸切れの発生が少な
く、安定した製造ができ、品質とのバランスがとれる点
で好ましい。また、塩化ビニル系樹脂100重量部に対
して、(a)EVA系樹脂を1〜35重量部と(b)メ
ルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレ
ート錫系熱安定剤から選択 される1種または2種以上
の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と(c)カドミウム、
鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペ
ンタエリスリトール系滑剤から選択される1種または2
種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化
ビニル系樹脂組成物も用いることができる。
【0033】前記樹脂組成物は、繊維の熱収縮率がやや
高くなる傾向にあるが、製造は、より安定する利点があ
り、収縮率が高いものを好む用途には好ましい。本発明
に於いては、目的に応じて、塩化ビニル系組成物に使用
される公知の配合剤、例えば、加工助剤、強化剤、紫外
線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤、
難燃剤、顔料などを使用することができる。また、場合
によっては、発泡剤、架橋剤、粘着性付与剤、親水性付
与剤、導電性付与剤、香料など特殊な配合剤を適宜使用
することも可能である。
【0034】前記加工助剤としては、例えば、メチルメタ
クリレートを主成分とするアクリル系加工助剤、または
熱可塑性ポリエステルを主成分とするポリエステル系加
工助剤などが挙げられる。該加工助剤の使用量として
は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2
〜12重量部程度が好ましい。また、これらの加工助剤
は単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0035】本発明に使用する充填剤としては、例えば
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウ
ム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ア
ルミニウム、タルク、マイカ、クレーなどが挙げられ
る。該充填剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物1
00重量部に対して、0.2〜5.0重量部程度が好まし
い。また、これらの充填剤は単独でも使用できるし、2
種以上を併用しても良い。
【0036】本発明に使用する可塑剤としては、例え
ば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレ
ート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑
剤、オクチルトリメリテートなどのトリメリット酸系可
塑剤、オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系
可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤など
を使用できる。該可塑剤の使用量としては、塩化ビニル
系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部程
度が好ましい。また、これらの可塑剤は単独でも使用で
きるし、2種以上を併用しても良い。
【0037】本発明に使用する塩化ビニル系樹脂組成物
は、従来公知の混合機、例えばヘンシェルミキサー、ス
ーパーミキサー、リボンブレンダーなどを使用して混合
してなるパウダーコンパウンド、またはこれを溶融混合
してなるペレットコンパウンドとして使用することがで
きる。該パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通
常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレ
ンドでも良い。特に好ましくは、組成物中の揮発分を減
少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155
℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが良い。該
ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレット
コンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、
単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、
同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押
出機、ロール混練り機などの混練り機を使用してペレッ
トコンパウンドとすることができる。該ペレットコンパ
ウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが、
樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが好ま
しい。また、該ペレットコンパウンド中に混入し得る掃
除用具の金属片などの異物を取り除く為に、目開きの細
かいステンレスメッシュなどを混練り機内に設置した
り、コールドカットの際に混入し得る「切り粉」などを除
去する手段を採用したり、ホットカットを行なうなどの
方法は自在に可能であるが、特に好ましくは、「切り粉」
混入の少ないホットカット法を使用するのが良い。
【0038】前記塩化ビニル系樹脂組成物を繊維状の未
延伸糸にする際には、従来公知の押出機を使用できる。
例えば単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押
出機などを使用できるが、特に好ましくは、口径が35
〜85mmφ程度の単軸押出機または口径が35〜50
mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが良い。口径
が過大になると、押出量が多くなり、ノズル圧力が過大
になったり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、巻取りが
困難になる傾向があり好ましくない。
【0039】本発明に於いては、1ケのノズル孔の断面
積が、0.5mm2以下のノズルをダイ先端部に取り付け
て溶融紡糸を行なうのが好ましい。該断面積が、0.5
mm2を越えるノズルを使用すると、未延伸糸の繊度が
太くなり、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際に
延伸倍率を大きくをする必要がある。その為、延伸処理
を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶
〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、繊維
の触感がザラザラとしたり、キラキラ感が出たり、ある
いはプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好まく
ない。
【0040】該ノズルに存在するノズル孔の配列、位置
関係は、巻取りの容易さに大きく関係する。特に好まし
い配列数は、1〜5列であり、これ以上になるとダイ内
の溶融物の流動速度差が大きくなり、流出速度分布が拡
がり、未延伸糸の「泳ぎ」が大きくなる傾向があり好まし
くない。また、該ノズル孔の配列形状は、円状、楕円
状、または4角以上の多角形状であることが望ましい。
三角形状であると、ダイ内の溶融物の流動速度差が大き
くなり、流出速度分布が拡がり、未延伸糸の「泳ぎ」が大
きくなる傾向となり好ましくない。さらに、1ケのノズ
ルに存在するノズル孔の数は、50〜300であること
が好ましい。ノズル孔の数が少な過ぎると生産性が低下
し、逆に多過ぎると、「糸切れ」などのトラブル発生確率
が高くなり好ましくない。本発明に於いては、隣接する
ノズル孔の中心間(異形断面にあっては、該断面の重心
間)の距離が、少なくとも、0.8mm以上となる様に配
置するのが好ましい。該距離が、0.8mm未満である
と溶融紡糸する際、未延伸糸同志の接触頻度が多くなり、
糸切れの原因になり好ましくない。また、該距離が長過
ぎるとノズルそのものが大きなものとなって重くなった
り、ノズルに配置する孔数が少なくなり加工生産性が低
下したりして好ましくない。特に好ましい範囲は、0.8
〜3.8mmの範囲である。
【0041】本発明に於いては、未延伸糸の繊度を30
0デニール以下にしておくことが好ましい。該未延伸糸
の繊度が300デニールを越えると、細繊度の繊維を得
る為には、延伸処理の際に延伸倍率を大きくをする必要
があるので、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸
糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが
困難となる。また、プラスチック的な滑り触感になる傾
向がある。また、溶融紡糸の際、ノズル圧力は500K
g/cm2以下で紡糸するのが好ましい。ノズル圧力が5
00Kg/cm2を越えると、押出機のスラスト部にかか
る負荷が過大になり、押出機に不具合を発生し易くなり
好ましくない。ノズル圧力は、スクリュー回転数あるい
はフィード量を変更して、押出量を制御することでコン
トロールするのが品質に影響が少なく好ましい。しかし
ながら、押出量を減少すると生産性が低下する為、この
バランスから、480〜300Kg/cm2の範囲が特に
好ましい。 ノズル圧力を低下するには、金属面との
滑り効果の高い滑剤を使用したり、多量の溶融粘度低下
剤、例えば、可塑剤、高分子可塑剤などを使用すること
が可能であるが、この様な手段によって、ノズル圧力を
200Kg/cm2以下にすると組成物のゲル化・溶融状
態が極めて不均一になり、糸切れ頻度が多くなり、製造
が困難になると共に、艶状態、触感などの品質が不十分
な繊維となる傾向がある。故に前記した様な押し出し量
の制御による圧力コントロールが好ましい。
【0042】溶融紡糸の際、ノズル孔から溶融・流出し
たストランドは、300デニール以下の未延伸糸に引き
伸ばされるが、その際のドラフト比は、25以下である
ことが特に好ましい。該ドラフト比が25を越えると、
未延伸糸の時点で表面が過剰に引き伸ばされている為、
延伸処理を施した後の細繊度の繊維に光沢が出て、半艶
〜七部艶状態を維持することが困難となる傾向がある。
また、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。ま
た、樹脂温度は195℃以下で紡糸することが好まし
い。195℃を越えた温度で紡糸すると繊維の着色傾向
が顕著となり、黄色味の強い繊維となりやすく好ましく
ない。その為、シリンダー温度を150〜185℃程度
とし、ダイ温度を160〜190℃程度とすることが特
に好ましい。
【0043】以上の様に、本発明に於いては、溶融紡糸
の際、1ケのノズル孔の断面積が、0.5mm2以下のノズ
ルを使用して、かつ、300デニール以下の未延伸糸を
製造するのが好ましい。特に、樹脂温度は195℃以
下、ドラフト比を25以下、ノズル圧力を500Kg/
cm2以下、ノズル孔数は、50〜300とし、ノズル配
列形状は、円状、楕円状、または4角以上の多角形状とし、
ノズル配列数は1〜5として行なうのが特に優れた方法
である。
【0044】前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の
方法で延伸処理・熱処理を施して、100デニール以下
の細繊度の繊維(延伸糸)とすることができる。頭髪装
飾用の繊維としては、25〜100デニールの範囲が特
に好ましく、また、人形用頭髪の繊維としては、10〜6
5デニールの範囲が特に好ましい。延伸処理条件として
は、延伸処理温度70〜150℃の雰囲気下で、延伸倍
率は、200〜450%程度延伸することが特に好まし
い。延伸処理温度が70℃未満であると繊維の強度が低
くなると共に、糸切れを発生し易く、逆に150℃を越
えると繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になり好
ましくない。また、延伸倍率が200%未満であると繊
維の強度発現が不十分となり、450%を越えると延伸
処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0045】さらに、延伸処理を施した繊維に熱処理を
施して、2〜75%の緩和率で繊維を緩和処理すること
により、熱収縮率を低下させることができる。また、繊
維表面の凹凸を整えて、人毛に類似した触感、半艶〜七
部艶表面とする為にも該緩和処理が好ましい。該緩和率
の範囲を外れると人工毛髪用繊維として、あるいは人形
用頭髪繊維として、品質が低下する傾向があり好ましく
ない。該熱処理は、延伸処理と連動して実施することも
できるし、切り離して実施することもできるが、条件と
しては、雰囲気温度80〜150℃で実施することが特
に好ましい。また本発明に於いては、従来公知の溶融紡
糸に関わる技術、例えば、各種ノズル断面形状に関わる
技術、加熱筒に関わる技術、延伸処理に関わる技術、熱
処理に関わる技術などは、自在に組み合わせて使用する
ことが可能である。
【0046】
【実施例】次に、実施例をあげて、本発明の詳細な態様を
明らかにするが、本発明はこれらの実施例のみに限定さ
れるものではない。尚、表中の組成物表示等は、次のよ
うに略記する。 塩化ビニル樹脂:「PVC」、塩素化塩化ビニル系樹
脂:「CPVC」、酢酸ビニル:「VAc」、粘度平均
重合度:「M」、メルトインデックス:「MI」。 また表2、4〜6、8〜9における、組成物での配合剤
の数値は、PVCとCPVCの合計=100重量部に対
する各配合剤の重量部を表すものである。
【0047】[実験1〜5(PVC/CPVCの配合比
率)]塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様
に計量し、次いで、表2に示す配合剤をそれぞれ計量し
て、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しなが
ら、内容物の温度が115℃になる迄、撹拌・混合した。
その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流
しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃にな
る迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得
た。該パウダーコンパウンドを表1(紡糸条件1)に示
す条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。
【0048】
【表1】
【0049】溶融紡糸実験は、定常状態になってから、ス
クリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.0
Kg/Hrsになる様にスクリュー回転数を決定した。
ノズル圧力、樹脂温度は、 ダイ圧計、樹脂温度センサーを
それぞれノズル部に設置して測定した。鉛直方向に、ノズ
ルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、
ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下
約3mの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速
度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約165
〜185デニールになる様に引取速度を調節した。この
未延伸糸を製造する段階で、糸切れの発生状況を目視観
察し、次の様に評価した。
【0050】[溶融紡糸時の糸切れ発生状況] ◎:全く糸切れが発生しない。 ○:1時間に3回以内発生する。 △:1時間に4〜15回発生する。 また、この未延伸糸の着色状態を目視観察にて、次の様に
評価した。
【0051】[未延伸糸の着色状態] ◎:乳白色で黄色味がない。 ○:乳白色であるが、わずかに黄色味がある。 △:かなり強い黄色味がある。 該未延伸糸を延伸・熱処理機に導入し、延伸処理、次いで、
熱緩和処理を行い、延伸糸を製造した。この際、熱緩和処
理は、25%緩和に固定し、延伸処理は、最終の延伸糸の
繊度が、65〜68デニールになる様に延伸倍率を若干
調整した。この延伸・熱処理時に発生する糸切れの発生
状況を目視観察し、次の様に評価した。
【0052】[延伸・熱処理時の糸切れ発生状況] ◎:全く糸切れが発生しない。 ○:1時間に3回以内発生する。 △:1時間に4〜15回発生する。 また、この延伸糸の表面艶・光沢を目視観察し、次の様に
評価した。
【0053】[延伸糸の艶状態] ◎(半艶状態):表面が平滑で、わずかに鈍い光沢があ
る。 ○(七部艶状態):表面が平滑で、鈍い光沢がある。 ●(完全艶消状態):表面がザラザラで、光沢がない。 △(八分艶状態):表面がザラザラで、局部的に光沢があ
り、キラキラ感がある。 ×(艶有状態):表面が平滑で、全面的に光沢があり、輝き
感がある。 さらに、この延伸糸を手で触り、その手触り触感を、次の
様に評価した。
【0054】[延伸糸の触感] ◎:表面が平滑で、サラサラとした触感がある。 ○:表面が平滑で、かすかに湿った触感があるが、サラサ
ラ感がある。 △(サ゛ラサ゛ラ感):表面がザラザラで、ザラザラとした触感
がある。 ●(フ゜ラスチック感):表面が平滑で、プラスチック的触感があ
り、滑り触感がある。 またさらに、この延伸糸を指に数回巻き付け、その際の
反発力、触感、柔軟性を、次の様に評価した。
【0055】[延伸糸のしなやかさ] ◎:指にやわらかく、しなやかに巻き取ることができ
る。 ○:かすかに反発触感があるが、しなやかに巻き取るこ
とができる。 △:全体的に硬い感触で、かなり強い反発触感がある。 該延伸糸を引張試験、熱収縮試験に供し、強度および熱収
縮率を求めた。尚、延伸糸の熱収縮率の測定は、100℃
の雰囲気温度で、25分熱収縮させ、計算は、次の様に行
なった。 (熱処理前の延伸糸長−熱処理後の延伸糸長)/熱処理
前の延伸糸長さ×100=熱収縮率(%) これらの評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】実験1〜5の比較から判る様に、塩素化塩
化ビニル樹脂の配合比率が、40重量%を越えるとノズ
ル圧力が500Kg/cm2以上になり、押出機の設計圧
力を超える状態になり、安全な生産が困難となる。ま
た、スクリュー回転数を低下すると、押出量が低下し、生
産性が低下する傾向にある。また、塩素化塩化ビニル樹
脂の配合比率が、40重量%を越えると、溶融紡糸時の糸
切れが頻繁に発生したり、未延伸糸の着色状態がやや黄
色味を呈してくる傾向があり、さらに、延伸糸の艶も消え
過ぎになり、触感もザラザラとした触感になり、かつ、繊
維のしなやかさが劣る傾向となる。これらの実験から、
塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の配合比率
は、前者が100〜60重量%で、後者が0〜40重量%
の範囲が最適であることが判る。
【0058】[実験6〜11(EVA系樹脂の添加効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が
4Kgになる様に計量し、次いで、EVA系樹脂の添加
量を変更して、表4に示す配合剤をそれぞれ計量して、2
0Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内
容物の温度が135℃になる迄、撹拌・混合した。その
後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しな
がら撹拌・混合を続け、内容物の温度が70℃になる迄、
冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。
該パウダーコンパウンドを表3(紡糸条件2)に示した
紡糸条件,延伸条件,熱緩和処理条件にて、溶融紡糸・延伸
・熱処理実験に供した。
【0059】
【表3】
【0060】溶融紡糸実験は、定常状態になってから、
フィード量、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、
押出量が7.0Kg/Hrsになる様に、フィード量、ス
クリュー回転数を決定した。ノズル圧力、樹脂温度は、ダ
イ圧計、樹脂温度センサーをノズル部に設置して測定し
た。鉛直方向に、ノズルから溶融・流出したストランドを
加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加
熱溶解し、ノズル直下、約3mの位置に設置した引取機
にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延
伸糸の繊度が約154〜176デニールになる様に引取
速度を調節した。また、その他の紡糸条件などは、実験1
〜5に示した方法と同様に行い、評価方法なども実験1
〜5に示した方法と全く同様に行なった。これらの評価
結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】実験6〜11の比較から判る様に、EVA
系樹脂の添加量が1重量部未満になると、延伸糸のしな
やかさが不足し、ゴワゴワとした触感の繊維となる。ま
た、熱収縮率もやや高くなる傾向がある。また、 EVA
系樹脂の添加量が35重量部を越えると、組成の不均一
化(CPVC成分の溶融が不均一となる)が起こり、溶融
紡糸時あるいは延伸処理時の糸切れが頻繁になる。さら
に、ノズル圧力も高くなる傾向があり、繊維の触感もザラ
ザラとした触感になる。これらの実験から、EVA系樹
脂の添加量は、塩化ビニル系混合物100重量部に対し
て、1〜35重量部の範囲が最適であり、触感などの点
では3〜35重量部の範囲がさらに好ましいことが判
る。
【0063】[実験12〜16(熱安定剤の添加・併用効
果)]実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量
部が4Kgになる様に計量し、次いで、熱安定剤の種類・
添加量を変更して、表5に示す配合剤をそれぞれ計量し
て、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しなが
ら、内容物の温度が135℃になる迄、撹拌・混合した。
その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流
しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる
迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得
た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量25重量%、
メルトインデックス5のEVA樹脂に塩化ビニルをグラ
フト重合し、EVA含量を40%に調節したEVA-塩化
ビニルグラフト樹脂を使用した。該パウダーコンパウン
ドを実験6〜11に示した紡糸条件、延伸条件,熱緩和
処理条件と同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験
に供した。また、実験6〜11に示した試験方法、評価方
法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。
これらの評価結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】実験12〜16の比較から判る様に、熱安
定剤の添加量が適量であれば、未延伸糸の初期着色も良
好であるが、ブチル錫マレエートを過剰に使用すると、繊
維の熱収縮率が極端に高くなり、品質の不十分な繊維と
なる。また、ゼオライトの様な無機粉末状の熱安定剤を
過剰に使用すると、ゴワゴワとした触感の繊維となるば
かりでなく、糸切れが著しくなり、繊維の強度も低下す
る。これらの実験から、熱安定剤の添加量は、塩化ビニル
系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部の
範囲が最適であることが判る。
【0066】[実験17〜21(ノズル断面積の効果)]実
験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4
Kgになる様に計量し、次いで、表6に示す配合剤をそれ
ぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹
拌しながら、内容物の温度が125℃になる迄、撹拌・混
合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケッ
トに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が75℃
になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウンド
を得た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量65重量
%、メルトインデックス15のEVA樹脂に塩化ビニル
をグラフト重合し、EVA含量を25%に調節したEV
A-塩化ビニルグラフト樹脂を使用した。該パウダーコ
ンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件、延伸条件,
熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処
理実験に供した。この際、表6に示したノズル孔断面積
および孔数のノズルに変更して紡糸実験を行なった。ま
た、押出量は、7.8Kg/Hrsとし、これに合わせて、引
取速度、延伸倍率を調節した。さらに、実験1〜5に示し
た試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全
く同様に行なった。評価結果を表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】実験17〜21の比較から判る様に、1ケ
のノズル孔の断面積が0.5mm2以下であれば、紡糸す
る際の各種性能、延伸処理・加熱処理時の性能、繊維の性
能が高度にバランスされた状態になる。一方、1ケのノ
ズル孔の断面積が0.5mm2を越えると、延伸糸の艶が
出てきて、キラキラした目視感になり、触感もプラスチッ
ク的な滑り触感になり、品質的に不十分な繊維となる。
また、1ケのノズル孔の断面積が大きくなると、溶融紡糸
時のドラフト比が高くなり、延伸時の糸切れ頻度が増加
するし、繊維の熱収縮率が高くなる傾向がある。
【0069】[実験22〜26(未延伸糸の繊度の効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が
4Kgになる様に計量し、次いで、表8に示す配合剤をそ
れぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、
撹拌しながら、内容物の温度が135℃になる迄、撹拌・
混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャ
ケットに流しながら撹拌・混合を続け、内容物の温度が7
5℃になる迄、冷却して、塩化ビニル系パウダーコンパウ
ンドを得た。尚、EVA系樹脂は、酢酸ビニル含有量35
重量%、メルトインデックス10のEVA樹脂に塩化ビ
ニルをグラフト重合し、EVA含量を35%に調節した
EVA-VCLグラフト樹脂を使用した。該パウダーコ
ンパウンドを表7に示す(ペレット化条件)にて、ペレ
ットコンパウンドとした後、溶融紡糸実験に供した。
【0070】
【表7】
【0071】該ペレットコンパウンドを実験1〜5に示
した紡糸条件,延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件に
て、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、引取速
度を変更して、未延伸糸の繊度が表8になる様に設定し
た。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、
未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果
を表8に示す。
【0072】
【表8】
【0073】実験22〜26の比較から判る様に、未延
伸糸の繊度が300デニールを越えると、65〜70デ
ニールの延伸糸を得る為には、延伸処理に於いて、過剰に
延伸する必要がある。その為、延伸処理を施す際、糸切れ
頻度が多くなるばかりでなく、延伸糸の触感が、プラスチ
ック的な滑り触感になり、艶がでてきて品質的に不十分
な繊維となる。一方、未延伸糸の繊度が300デニール
以下であれば、これらの品質が高度にバランスされ、人毛
に極めて類似した人工毛髪用繊維として優れたものを得
ることができる。
【0074】[実験27〜31(延伸糸の繊度の効果)]塩
化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量
し、次いで、表9に示す配合剤をそれぞれ計量して、20
Lのヘンシェルミキサーに投入し、撹拌しながら、内容物
の温度が115℃になる迄、撹拌・混合した。その後、冷却
水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら撹拌
・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、
塩化ビニル系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA
系樹脂は、酢酸ビニル含有量35重量%、メルトインデ
ックス10のEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合
し、EVA含量を35%に調節したEVA-VCLグラ
フト樹脂を使用した。該パウダーコンパウンドを実験1
〜5に示した紡糸条件,延伸条件,熱緩和処理条件と同様
の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この
際、延伸倍率を変更して、延伸糸の繊度が表9になる様に
設定した。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法
にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評
価結果を表9に示す。
【0075】
【表9】
【0076】実験27〜31の比較から判る様に、延伸
糸の繊度が100デニールを越えると、延伸糸の触感が
ゴワゴワとした、硬い触感となり、また、しなやかさが劣
る為、人工毛髪用繊維として品質的に不十分な繊維とな
る。一方、延伸糸の繊度を100デニール以下とすれば、
これらの品質が高度にバランスされて、人毛に極めて類
似した人工毛髪用繊維として優れたものを得ることがで
きる。
【0077】
【発明の効果】以上のように、本発明の塩化ビニル系樹
脂組成物を用いれば、品質に優れ、人毛に極めて類似し
た七部〜半艶表面でサラサラとした手触り触感を兼ね備
えた塩化ビニル繊維を得られ、また、本発明の製造方法
を用いれば、目的の塩化ビニル系繊維を、高い紡糸生産
性を維持しながら、安全に製造することができる。本発
明の塩化ビニル系繊維は、頭髪装飾用などの人工毛髪用
繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用頭髪繊
維として有用である。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
    素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
    ル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢
    酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)熱安定剤0.
    2〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配
    合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴
    とする塩化ビニル系繊維。
  2. 【請求項2】熱安定剤(b)が錫系熱安定剤、Ca-Zn
    系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およびゼ
    オライト系熱安定剤からなる群の内から選択される少な
    くとも1種である請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  3. 【請求項3】滑剤(c)がカドミウムや鉛を含有しない金
    属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑
    剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑
    剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の内か
    ら選択される少なくとも1種である請求項1記載の塩化
    ビニル系繊維。
  4. 【請求項4】塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素
    化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニ
    ル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢
    酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)メルカプト
    錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレー
    ト錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なくと
    も1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カド
    ミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン
    系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤からなる群の内か
    ら選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜5.0重量
    部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を使用する
    請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  5. 【請求項5】塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、
    (a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部
    と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱
    安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の内
    から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜5.
    0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金属石
    鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリスリト
    ール系滑剤からなる群の内から選択される少なくとも1
    種の滑剤を0.2〜5.0重量部とを配合してなる塩化ビ
    ニル系樹脂組成物を使用する請求項1記載の塩化ビニル
    系繊維。
  6. 【請求項6】塩化ビニル系樹脂が塩化ビニル単独樹脂、
    エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、および酢酸ビニル−
    塩化ビニル共重合樹脂からなる群の内から選択される少
    なくとも1種の樹脂であり、かつ塩素化塩化ビニル系樹
    脂が、重合度350〜1100の原料塩化ビニル樹脂を
    用いて、塩素含有量60〜70重量%にしたものを使用
    する請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  7. 【請求項7】塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
    素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
    ル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−酢
    酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と、(b)熱安定剤
    0.2〜5.0重量部と、(c)滑剤0.2〜5.0重量部
    とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸す
    る塩化ビニル系繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】熱安定剤(b)が錫系熱安定剤、Ca-Zn
    系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、およびゼ
    オライト系熱安定剤からなる群の内から選択される少な
    くとも1種である請求項7記載の塩化ビニル系繊維の製
    造方法。
  9. 【請求項9】滑剤(c)がカドミウムや鉛を含有しない金
    属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑
    剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑
    剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤からなる群の内か
    ら選択される少なくとも1種である請求項7記載の塩化
    ビニル系繊維の製造方法。
  10. 【請求項10】塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩
    素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビ
    ニル系混合物100重量部に対して、(a)エチレン−
    酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量部と(b)メルカプト
    錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、およびラウレ
    ート錫系熱安定剤からなる群の内から選択される少なく
    とも1種の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と、(c)カ
    ドミウムや鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレ
    ン系滑剤、およびペンタエリスリトール系滑剤からなる
    群の内から選択される少なくとも1種の滑剤を0.2〜
    5.0重量部とを配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物
    を溶融紡糸する請求項7記載の塩化ビニル系繊維の製造
    方法。
  11. 【請求項11】塩化ビニル系樹脂100重量部に対し
    て、(a)エチレン−酢酸ビニル系樹脂を1〜35重量
    部と、(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系
    熱安定剤、およびラウレート錫系熱安定剤からなる群の
    内から選択される少なくとも1種の熱安定剤を0.2〜
    5.0重量部と、(c)カドミウムや鉛を含有しない金
    属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、およびペンタエリ
    スリトール系滑剤からなる群の内から選択される少なく
    とも1種の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合してなる塩
    化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する請求項7記載の塩
    化ビニル系繊維の製造方法。
  12. 【請求項12】塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する
    に際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノ
    ズル孔から溶融・流出せしめる請求項7記載の塩化ビニ
    ル系繊維の製造方法。
  13. 【請求項13】塩化ビニル系樹脂系組成物を溶融紡糸す
    るに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下の
    ノズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の
    未延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱
    処理を施して、100デニール以下の繊維とする請求項
    7記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
  14. 【請求項14】塩化ビニル系樹脂組成物をノズル圧力5
    00Kg/cm2以下、樹脂温度195℃以下で、ノズル孔
    から溶融・流出せしめると同時に、紡糸ドラフト比を25
    以下の条件下で、未延伸糸を引取る請求項7記載の塩化
    ビニル系繊維の製造方法。
  15. 【請求項15】溶融紡糸のダイ先端部に使用するノズル
    に存在するノズル孔が、50〜300ケであり、該ノズル
    孔が、円状、楕円状、長方形状、または正方形状に配列さ
    れ、隣接するノズル孔の中心間(異形断面形状にあって
    は、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8mm以
    上となる様に配列されているノズルを使用する請求項7
    記載の塩化ビニル系繊維の製造方法
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WO2006035863A1 (ja) * 2004-09-30 2006-04-06 Kaneka Corporation ポリ塩化ビニル系繊維及びその製造方法
KR101228471B1 (ko) * 2010-03-16 2013-02-08 (주)우노 앤 컴퍼니 인공모발용 폴리비닐 클로라이드 섬유 및 이의 제조방법

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