JPH1081637A - エチルベンゼンの製造方法 - Google Patents

エチルベンゼンの製造方法

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JPH1081637A
JPH1081637A JP9121513A JP12151397A JPH1081637A JP H1081637 A JPH1081637 A JP H1081637A JP 9121513 A JP9121513 A JP 9121513A JP 12151397 A JP12151397 A JP 12151397A JP H1081637 A JPH1081637 A JP H1081637A
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JP
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ethylene
benzene
catalyst
temperature
reaction
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JP9121513A
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Yoshikazu Takamatsu
義和 高松
Hiroshi Ishida
浩 石田
Yoshihito Itani
圭仁 井谷
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 ポリマー原料用のエチルベンゼンを工業的に
有利な低ベンゼン/エチレン供給モル比で高収率、高選
択的に製造する。 【解決手段】 固定床上昇流方式反応器を用いてゼオラ
イトβを含む触媒の存在下に、 1)エチレン供給時に触媒層下部入り口でエチレン気泡
が存在する条件で反応させ、2)反応器上部より製品液
を回収すると同時に未反応ベンゼンを主とする留分を蒸
気として抜き出し、3)触媒層入り口での温度を触媒層
最高到達温度よりも50℃以上低くし、4)製品液のベ
ンゼン環/エチル基モル比が1〜3であり、5)触媒層
温度プロフィルを入り口温度30〜200℃、最高到達
温度170〜250℃とし、6)反応器上部より蒸気と
して抜き出す留分の分圧が5〜20kg/cm2 Gであ
り、7)2)からの未反応ベンゼンを主とする留分を
1)へ循環供給するエチル化ベンゼンの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種ポリマーの原
料等として有用なエチルベンゼンの製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】PCT/US95/15660号公報等
には、高選択的な触媒として、MCM−22,49,5
6といったゼオライトを用いるベンゼンとエチレンから
エチルベンゼンの製造方法が開示されている。これらの
明細書の開示によれば、アルキル化反応は液相で実施さ
れ、ベンゼン/エチレンモル比は殆どの場合5〜10で
あり、実施例によれば5.5である。米国特許第5,3
34,795号明細書にもMCM−22ゼオライトを用
いるベンゼンとエチレンからのエチルベンゼン合成法が
記載されている。しかし、当該実施例によればベンゼン
/エチレンモル比は最も小さい例であっても4.6であ
る。
【0003】特公平6−43346号公報には蒸留反応
器に固定床酸性触媒蒸留構造体を含む蒸留塔反応器内
で、有機芳香族化合物とC2〜C20オレフィンとを接
触させ、アルキル化生成物を形成し、生じたアルキル化
生成物および未反応有機芳香族化合物およびオレフィン
を分別し、アルキル化生成物を蒸留反応器から固定床の
下の箇所で取り出す方法が記載されているが、実施例に
よれば、底部より回収される反応生成物のベンゼン/エ
チレンモル比は最も低い例であっても3.47であり、
触媒重量基準のエチルベンゼン生成速度も0.12〜
0.3と極めて低いものである。
【0004】米国特許第5,118,896号明細書に
は、ベンゼン、トルエン、キシレンから選ばれる液体芳
香族化合物とオレフィンをアルキル化剤とする連続液相
アルキル化反応に、触媒として結晶性アルミノシリケー
トゼオライトを含み、シリカとアルミナからなる、0.
25〜0.35cc/gの細孔容積を持ち、450Åよ
り大きい細孔半径を持ち、1/64インチより大きくな
い粒子径の触媒を用い、反応蒸留式反応器の固定床で行
う方法が開示されている。当該明細書中の反応蒸留方式
実施例では芳香族化合物とエチレンのモル比が2の例が
あるが、この時のエチレン転化率は55%と極めて低い
ものである。
【0005】特開平4−187647号公報には、アル
キル化及びアルキル転移反応に共にモレキュラシーブ芳
香族アルキル化及びアルキル転移触媒上にて液相で行う
方法が開示されており、ベンゼン/エチレンモル比は4
以下であり2程度も使用し得、又、アルキル化触媒とし
てβゼオライトが挙げられているが、実施例ではベンゼ
ン/エチレンモル比は5.2である。当該明細書中には
理想化された反応器条件でベンゼン/エチレンモル比=
2を達成する方法が開示されているが、これは5段階に
分けてエチレンを供給することにより達成することが可
能とする例である。
【0006】WO96−04225号公報では、βゼオ
ライトを触媒としたトリクルベッド領域で行われる気液
下降並流方式固定床液相アルキル化方法が開示されてお
り、高生産性を示している。しかし、この方法では反応
初期に於ける触媒活性変化が大きく制御が困難である。
特開平3−181424号公報では、βゼオライトを使
用した液相アルキル化及びトランスアルキル化法が開示
されているが、当該実施例によれば、芳香族炭化水素/
オレフィンのモル比は4以上である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】芳香族炭化水素のアル
キル化反応の触媒としてのゼオライト触媒は、フリーデ
ル・クラフツ触媒を代替する非腐食性触媒としての利点
があり、多くの提案がなされている。しかしながら従来
の方法では、殆どの例が比較的高いベンゼン/エチレン
モル比条件下で実施されている。このことは、工業的に
実施する上で甚だ不利である。即ち、未反応ベンゼンの
リサイクル量が増加する為に、ベンゼン回収への負荷が
大きいくなるからである。にも関わらず従来の方法がい
ずれも高いベンゼン/エチレンモル比条件下で行われて
いる理由として以下の3点が挙げられる。
【0008】第一点は、触媒性能上、即ち核エチル化選
択率の制約が挙げられる。例えば、従来の方法でアルキ
ル化触媒として最も広く用いられているものとしてY型
ゼオライトが挙げられる。これは、良好な活性及び所望
生成物に関する良好な選択率によって特徴づけられるも
のである。しかし、この選択率は、低ベンゼン/エチレ
ンモル比条件下では、(ベンゼンの反応率の上昇に伴っ
て)ブチルベンゼン、ジフェニルエタン等の副生が著し
く、核エチル化選択率が著しく低下することが判明し
た。従って、低ベンゼン/エチレンモル比条件下での使
用は不可能である、と言わざるを得ない。
【0009】第二点として、比較的低圧力下で一段供給
で実施される低ベンゼン/エチレンモル比条件下(即
ち、実質的に触媒層入口では、エチレンが気泡として存
在する)にあっては、触媒の活性劣化が著しいことが挙
げられる。例えば、Y型ゼオライトでは、特開平4−1
87647号公報にはアルキル転移触媒としてY型ゼオ
ライトを用いる例が開示されているが、当該明細書中
に、ゼオライトY触媒を実質的にガス相が存在する下向
流滴下(trickle)床反応器を用いてジエチルベ
ンゼンのアルキル転移反応を行った結果、ジエチルベン
ゼン転化率は数時間から24時間の間に著しく低下した
との記載がある。
【0010】さらに、本発明者らの検討の結果によれ
ば、Y型ゼオライトによる固定床上昇流方式でのベンゼ
ンのエチル化反応を比較的低圧力下、低ベンゼン/エチ
レンモル比条件で実施したところ、核エチル化の選択率
は極めて低く、又、活性低下も著しいものであった。そ
もそも、バッチ反応に於いても、ベンゼンの反応率が上
昇するに伴って著しい選択率低下、並びに活性低下が確
認されている。この原因は、Y型ゼオライトの細孔構造
によるものと考えられる。即ち、同じ酸素12員環構造
を有するY型ゼオライト、βゼオライトを比較した場
合、Y型ゼオライトは細孔交差部にスーパーケージと呼
ばれる大きな空洞を有している。従って、この空洞内で
は、ジフェニルエタン等の二核体生成物が副生し易く、
選択率の低下を引き起こすと同時に、高分子量物質によ
る細孔閉塞(即ち、活性劣化)に至ってしまうのであろ
う、と推測される。
【0011】特表平6−508817号公報には、16
0より大きいシリカ/アルミナモル比と少なくとも1の
対称インデックスを有するモルデナイト型ゼオライトを
触媒とする方法が開示されているが、当該明細書中に
は、アルキル化反応は、反応器中にガス帯が実質的に存
在しない(最も好ましくは、完全な液体モード)条件で
実施される。実質的なガス帯の存在はその中でのアルキ
ル化剤の蓄積を招き、アルキル化剤は重合し、選択率の
低下、触媒の不活化を増大させるとの記載があり、即
ち、この触媒を用いるには、実質的にエチレン気泡が存
在する気液混合相での実施は不可能であると述べられて
いるのである。
【0012】PCT/US95/11660号公報等で
開示され、高選択性触媒として特徴付けられるMCM−
22,49,56ゼオライト触媒に於いても、前述の様
に、ベンゼン/エチレンモル比は4.6に過ぎず、しか
も、このモル比は完全溶解分のエチレンを多段供給する
ことにより達成せしめた値である。即ち、活性劣化を抑
制する為に、エチレンがベンゼンに完全に溶解する条件
でしか反応できないのである。以上の様な触媒を用いる
には、エチレンがベンゼンに完全に溶解する必要があ
り、低ベンゼン/エチレンモル比での実施には、エチレ
ンの多段供給、或いは溶解度を高める為に高圧力が必要
となるであろう。従って、原料エチレンの純度が低い、
粗エチレンを利用するには更に高圧力、及び多段供給が
必要となる為、実際には適用できず、エチレンの精製が
必須となる。
【0013】第三点として、反応熱の除熱の問題が挙げ
られる。本反応は発熱反応であり、従って、低ベンゼン
/エチレン条件下での反応完結の達成には甚大な発熱が
生じる。発熱による触媒層温度の上昇は選択率低下、ひ
いては液相維持不可能ともなれば触媒の著しい活性低下
を引き起こす。即ち、反応熱の除熱は重要な問題であ
り、従来の方法では、除熱の面からも大過剰のベンゼン
の存在下(高ベンゼン/エチレンモル比)で行わざるを
得なかったのである。この様な状況下、低ベンゼン/エ
チレンモル比を達成する為に、反応熱の除熱を解決する
方法が提案されている。
【0014】特表平4−502451号公報、また特開
平4−187647号公報の様にエチレンを多段供給す
る方法が多く提案されているが、装置は複雑であり、実
施例によれば多段供給を行っても尚、ベンゼン/エチレ
ンモル比は3以上で行われている。例えば、特表平4−
502451号公報では、少なくとも2つの反応段階を
有するアルキル化反応器に、第一段階にベンゼンを導入
し、段階の各々に新たなオレフィンを導入する方法が開
示されており、当該明細書中に、アルキル化反応器の各
段階の入口でオレフィンを供給することによってアルキ
ル化反応を行うことにより、異常温度となることを回避
し、全ベンゼン対オレフィンの比を低減させると共に、
各段階における当該比を各段階の温度上昇を低減させる
に充分な高い値に維持し、これによって選択率を改善
し、触媒寿命を延ばす。低温であることにより、ゼオラ
イト触媒下に液相を維持でき、ゼオライト触媒を再生す
る必要が生ずるまでの時間を延長できるとの記載があ
る。
【0015】PCT/US95/15660号公報で
は、MCM−22、49、56ゼオライトを触媒とする
方法が開示されているが、当該明細書中にも、反応熱の
除熱について、オレフィンを多段供給し、且つ、冷却段
を設けることにより除熱を行う。より等温度に近い運転
は製品純度、触媒寿命を高める、との記載がある。以上
のような方法では、より低いベンゼン/エチレンモル比
を達成する為にはエチレン供給段、冷却段をさらに増や
す必要があり、装置的には複雑となる。
【0016】一方、反応熱を利用し、反応蒸留を行う
(反応熱を蒸発潜熱で徐熱)方法も提案されているが、
例えば、上記の特公平6−43346号公報では、触媒
にはY型ゼオライトを用いており、反応器内にクロスに
包まれて充填されている。生成物は反応器底部より回収
される。前述の様に、Y型ゼオライトは実質的に気相エ
チレンの存在下では活性劣化が著しい為、クロスを用い
て気泡との接触を避けており、反応部では実質的にはエ
チレンは完全溶解状態であると推察される。しかしなが
らそもそも、Y型ゼオライトを触媒として用いる限りに
於いては、選択率維持の点からもより低いベンゼン/エ
チレンモル比での実施は困難と言わざるを得ない。事
実、この実施例にあっても底部から得られる生成物の最
も低いベンゼン/エチル基モル比は3.47にすぎない
のである。また、この様な反応蒸留方式では、気相エチ
レンが連続相となり、しかも、気泡との接触を避ける触
媒充填方法を採用している為、必然的にエチレンの完全
転化は不可能であると考えられる。
【0017】米国特許第5,118,896号明細書に
も、反応蒸留方式の例が開示されており、触媒としてβ
ゼオライトの記載もある。しかしながら、その実施例
は、全てY型ゼオライトによるトルエンのエチル化の例
のみであり、反応蒸留での実施例では、やはり触媒はク
ロスにくるまれて使用されている。従って、この例も触
媒層での気泡をカット(即ち、反応ゾーンでは均一液
相)しており、気液界面積は必然的にクロスの表面積と
なる為、気液界面積が小さく、即ち、エチレンの転化を
完結せしめる為には相当な段数(触媒量)が必要であ
り、触媒当たりの生産性は低いものとなるであろう。事
実、当該実施例によれば、(トルエン+ベンゼン)/エ
チレンモル比が2、触媒重量272g、供給速度トルエ
ン151g/Hr,ベンゼン27g/Hrの条件下でエ
チレン転化率は55%にすぎない。加えて、以上の様な
反応蒸留方式で実施する際には、触媒層の反応器内への
固定が困難であり、装置上、複雑となるなどの不利を有
しているであろう。
【0018】又、同じ米国特許第5,118,896号
明細書の実施例に、触媒評価を目的とした実験としてメ
タンにより希釈されたエチレンを原料とした、即ち、固
定床上昇流気液混相方式で、Y型ゼオライトによるトル
エンのエチル化を実施した例が報告されている。しか
し、この例では触媒層は分割された電気炉によって一定
温度に保たれて実施されている。かかる反応方式では、
たとえ、βゼオライトを触媒に用いたとしてもエチレン
の完全転化は達成され得ないし、触媒の活性劣化も著し
いものとなってしまう。なぜならば、触媒層入り口か
ら、高温で原料液成分の蒸発も起こり、触媒層入口での
エチレン溶解度も低下するために反応を完結せしめるこ
とができ得ない。又、気相エチレン存在下での触媒の活
性劣化は高温ほど著しい為である。こと実、本実施例で
はあくまでも触媒評価が目的であり、長期間の運転は実
施されていないが、短期間でも活性劣化は認められてお
り、又、エチレンの完全転化も達成されてはいない。
【0019】以上の様に、従来の方法では、触媒の性能
(選択率)、活性劣化、及び、反応熱の除熱の問題か
ら、実質的に少なくとも反応ゾーンではエチレン気泡が
存在しないように完全溶解系で実施されている。即ち、
高いベンゼン/エチレンモル比条件下で行わざるを得な
かったのである。そのような状況下で、工業的に有利で
ある低ベンゼン/エチレンモル比を指向する場合、例え
ば、完全溶解系で一段で低ベンゼン/エチレンモル比を
達成する為には、非常な高圧反応となってしまう。従っ
て、エチレンを多段供給する方式とせざるを得ないので
ある。同時に、発生する反応熱を除熱せねばならない問
題もあって、熱交換器を設ける必要がある(反応熱を徐
熱しないと触媒層温度が上昇し、エチレン溶解度がさら
に低下してしまうであろう。)。又、完全溶解系で実施
する為には原料であるエチレンは高純度であることが要
求される。なぜならば、希釈されたエチレンを原料とす
るには、さらに高圧が必要となるからである。即ち、エ
チレンの精製が必須となる。
【0020】一方、反応熱の徐熱に蒸発潜熱を利用する
いわゆる反応蒸留方式反応器が多く提案されているが、
これも実際の反応ゾーンは、エチレンを完全溶解させる
必要があり、気泡エチレンとの接触を避けることが重要
であって装置、触媒充填方法は複雑である。しかも、エ
チレンを完全に転化せしめることが原理上、不可能であ
り、残存エチレンを完全転化させる為にはフィニッシン
グ反応器が必要となる。これらのことは工業的に実施す
る上で大きな問題である。
【0021】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する為
に、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、固定床上昇流
方式反応器を用いて、ゼオライトβを含む触媒の存在下
にベンゼンとエチレンからエチルベンゼンを製造する方
法に於いて、 a)触媒層下部よりエチレンを供給する際に、触媒層入
り口に於いてエチレンの気泡が存在する条件下で反応を
行い、 b)且つ、反応器上部より反応生成物を液として回収す
ると同時に、未反応ベンゼンを主とする留分を蒸気とし
て抜き出し、 c)且つ、触媒層入り口での温度を触媒層最高到達温度
よりも少なくとも50℃以上低くする、 ことによって、極めて低いベンゼン/エチレンモル比条
件下にあっても、発生する反応熱を容易に除熱し、触媒
層温度の異常上昇を抑制することが可能となり、その結
果、極めて高収率でしかも高選択的にエチル化ベンゼン
の製造が可能であることを見いだした。且つ、エチレン
を完全に転化せしめ、加えて、触媒の活性低下も抑制で
きることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発
明によれば、単純な装置、且つ低圧下で、低ベンゼン/
エチレンモル比条件下での実施が可能である。
【0022】即ち、本発明は、固定床上昇流方式反応器
を用いて、ゼオライトβを含む触媒の存在下にベンゼン
とエチレンからエチルベンゼンを製造する方法に於い
て、 a)触媒層下部よりエチレンを供給する際に、触媒層入
り口に於いてエチレンの気泡が存在する条件下で反応を
行い、 b)且つ、反応器上部より反応生成物を液として回収す
ると同時に、未反応ベンゼンを主とする留分を蒸気とし
て抜き出し、 c)且つ、触媒層入り口での温度を触媒層最高到達温度
よりも少なくとも50℃以上低くする、 ことを特徴とするエチル化ベンゼンの製造方法である。
【0023】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
使用される触媒はゼオライトβである。ゼオライトβは
米国特許3,308,069号明細書に最初に記載され
た既知の合成結晶性アルミノ珪酸塩であり、同特許明細
書中に記載されたその特性X線回折像により同定され
る。ゼオライトβに含まれるX線回折の反射d値を表1
に示す。
【0024】
【表1】
【0025】本発明に用いられるゼオライトβのSiO
2 /Al2 3 比は5〜100の範囲である。好ましく
は10〜80、より好ましくは15〜40の範囲であ
る。本発明に於いて触媒として用いられるゼオライトβ
はいわゆる酸型のゼオライトβである。イオン交換法に
よりナトリウムイオンを水素イオン、及び又は多価カチ
オンによって置き換えたものである。もし、ゼオライト
βが充分な有機陽イオン/ナトリウムイオン比を有する
際には、か焼されるだけでも良い。より高い活性を得る
為には、イオン交換法により水素イオン型とすることが
好ましい。水素イオン型へのイオン交換方法は好ましく
は以下の方法により行われる。
【0026】合成されたゼオライトβをか焼し、有機物
を除く。しかる後、希硝酸水溶液中でゼオライトβを撹
拌し、水素イオン型へイオン交換を行う。乾燥させ、含
水分量を少なくとも10重量部とするまで除き、反応に
供される。反応器に触媒を充填するに際しては、触媒は
成型体の形状であることが好ましい。成型体とするには
純粋なゼオライトのみでも良いし、アルミナ、シリカ、
シリカ/アルミナ、又は天然産粘土の様な無機酸化物を
バインダーとして添加しても構わない。成型方法につい
ては、当分野でよく知られた打錠成型、押し出し成型法
等により成型することが可能であり、成型触媒の形状は
一般的には円筒状である。又、球状、板状、中空円筒状
成型体等も用いられる。
【0027】本発明に於ける反応形式は固定床上昇流反
応方式である。触媒成型体は反応器内に充填される。反
応原料であるベンゼン等は反応器下部より触媒層最高到
達温度よりも50℃以上低い所定温度に予熱されて導入
される。一方、エチレンもまた反応器下部、または、触
媒層内へ導入される。反応器は断熱式であり、本反応が
発熱反応である為に反応の進行に伴って発熱が生じ、液
温(触媒層温度)が上昇してくる。ところが、本発明で
は操作圧力が低圧である為に、必然的に、その条件下
(温度、圧力)での気液平衡組成で蒸発が起こる。蒸発
ガス組成は当然、ベンゼンを主とする留分となる。又、
蒸発ガス量は、反応条件(反応圧力、原料供給量、反応
熱、原料予熱温度)、即ち、発生する反応熱量と液顕熱
による除熱量のバランスから決まる。従って、蒸発潜熱
によって、アルキル化反応の進行に伴う甚大な反応熱を
一部除熱せしめ、反応温度の上昇を抑制し、触媒層最高
到達温度を任意の一定温度に制御できるのである。この
ことは、触媒の劣化抑制、選択率の維持に有効である。
【0028】本発明における反応原料は、ベンゼン、及
びアルキル化剤としてのエチレンである。反応熱除熱の
為に蒸気として回収される未反応ベンゼンを主とする留
分をリサイクルさせて、反応原料として再び反応器へと
供給することも可能である。本発明に原料として用いら
れるベンゼンは、低温度領域での触媒への水の吸着によ
る活性低下を抑制させる為、ベンゼン中の水分を少なく
とも200ppm以下に除去させることが好ましい。本
発明に原料として用いられるエチレンは、精製された純
エチレンガスは勿論、一般的なナフサ分解炉から生成す
る粗エチレンガス(例えば、メタン、エタン等のパラフ
ィン系炭化水素ガス、プロピレン、水素、等を含む)を
用いることもできる。該粗エチレンガスに含まれる他の
ガスは、反応には悪影響を与えないものである。原料混
合ガス中のエチレン濃度は多くの場合30%以上であろ
う。
【0029】本発明の方法の特長は、気液混合相で実施
することが可能であることである。従って、粗エチレン
ガスを原料とする場合も比較的低圧下で実施でき得る。
一方、従来方法にみられるエチレンをベンゼンに完全溶
解させることが必要な方法にあっては、原料エチレンガ
スの純度が低い場合には、エチレンを溶解させるには非
常な高圧力下で行うことが必要となってしまい現実的な
方法ではない。従って、本発明の方法を工業的に実施す
ることを考えたとき、原料エチレンの精製工程を省略す
ることが可能である。
【0030】本発明におけるベンゼン/エチレン供給モ
ル比は、1〜6の範囲である。好ましくは1.5〜4の
範囲であり、より好ましくは2〜3の範囲である。本発
明においては未反応ベンゼンの一部を蒸気として回収す
る為、得られる製品液は供給モル比より低いベンゼン環
/エチル基モル比として得られる。又、上記の様に、蒸
発ガス留分をリサイクルさせ、反応器へ供給する形式に
あっては、当然、供給モル比と同じベンゼン環/エチル
基モル比の製品を得ることができる。得られる製品液の
好ましいベンゼン環/エチル基モル比は高選択率を維持
する点から1〜3の範囲である。
【0031】本発明における反応圧力は、所望の製品液
組成、ベンゼン/エチレン供給モル比、触媒層最高到達
温度などから気液平衡により決定されるベンゼンを主と
する蒸発ガスの分圧により定める。通常は、核エチル化
選択率を維持する為に、触媒層最高到達温度(即ち、気
液平衡温度)を250℃以下にすることが好ましく、こ
の温度以下で沸騰が生じ、製品液が濃縮される様に圧力
が定められる。又、反応圧力が低い時には、反応速度の
低下、蒸発量、即ちリサイクル量の増大が懸念される。
従って、好ましい反応圧力は、充分な反応速度を得るこ
と、回収される製品液の組成、流量とリサイクルさせる
蒸気分の組成、流量を現実的な範囲とすることを考慮
し、発生するベンゼンを主とする蒸気留分の分圧が5〜
20kg/cm2 G、より好ましくは10〜15kg/
cm2 Gの範囲である。
【0032】又、粗エチレンを原料とする様な場合に
は、気相にはアルキル化反応で消費されるエチレン或い
はプロピレンといったオレフィン成分以外のガス成分が
ベンゼンを主とする蒸気留分とともに排出される。従っ
て、純エチレンを用いる場合と同様な蒸発・気液平衡と
するには、分圧補正した操作圧力で実施される。操作圧
力の決定はエチレンの純度も考慮せねばならない。本発
明の反応温度(触媒層最高到達温度)は、反応圧力、液
組成により決定されるが、充分な反応速度、選択率を維
持する点から170〜250℃の範囲とすることが好ま
しい。この温度範囲となる様に、上述のように適宜、反
応圧力が選ばれる。即ち、目的温度まで上昇させれば、
それ以上の反応熱は全てベンゼンを主とする留分を蒸発
させる為に用いられ、触媒層温度を一定に保つことがで
きる。
【0033】本発明に於ける触媒層入口での温度(ベン
ゼン予熱温度)は、少なくとも上記触媒層最高到達温度
よりも50℃以上低く設定される。なぜならば、触媒層
入り口での温度を低く保つことは、触媒層入り口でのエ
チレンの溶解度を高め、エチレンの完全転化に寄与する
処が大きく、又、触媒層入り口の温度を低く設定するこ
とは、入り口から設定条件に於ける沸点である最高到達
温度に至るまでの温度プロファイルを持ち、触媒層平均
温度としてはより低く運転されることになり、このこと
は高い選択性を維持する効果がある。又、実質的にエチ
レン気泡が存在する触媒層入り口近傍での触媒の活性劣
化は、温度に依存する。従って、活性劣化の抑制の観点
からも、触媒層入り口温度はより低い方が好ましい。本
発明に於ける実際の予熱温度(触媒層入り口温度)は、
目的とする製品液組成(蒸発ガス量)との兼ね合いであ
るが、反応が開始される温度として、少なくとも30℃
以上で、触媒層最高到達温度よりも50℃以上低い温度
の範囲である。好ましくは、30〜200℃の範囲、よ
り好ましくは、80〜160℃の範囲である。
【0034】従って、本発明に於いては触媒層入り口が
最も温度が低く、上層に向かって反応進行による発熱の
為に温度が上昇し、任意の温度に到達すれば、蒸発が生
じる為に、蒸発潜熱による反応熱の除熱が行われ、その
温度以上の上昇は無い。触媒層は温度プロファイルを持
つ。触媒層入り口での温度を低く保つことは、触媒層入
り口でのエチレン溶解度を向上せしめ、即ち、反応速度
の上昇、エチレンの完全転化に寄与する。又、本発明に
よれば触媒層入り口ではエチレン気泡が存在するが、当
該層での温度を低くすることにより、触媒の活性劣化を
抑制する効果がある。又、かかる温度プロファイルを持
つことは触媒層全域の平均温度が下がることを意味し、
このことは核エチル化選択率を極めて高い値に維持せし
める効果がある。
【0035】本発明の様な、低ベンゼン/エチレン供給
モル比、且つ、低圧条件下にあっては、必然的に触媒層
入口では、供給エチレンはベンゼン中に全て溶解するこ
とができず、気泡として存在している。従来の方法で
は、かかる状況下にあっては、触媒劣化が著しい、選択
率の低下が顕著である、等の問題、又、甚大な反応熱に
よる温度上昇の問題もあった。これを回避する為にエチ
レンがベンゼンに完全に溶解する条件(高ベンゼン/エ
チレンモル比)で実施され、低ベンゼン/エチル基モル
比の製品を得る為には、非常に煩雑な反応方式とせざる
を得なかったのである。しかしながら驚くべきことに、
本発明によれば、極めて単純な装置かつ低圧で、低ベン
ゼン/エチレン条件下でのアルキル化反応を実施するこ
とができ得るのである。従って、原料エチレン純度が低
い場合でも実施可能であり、エチレンの精製工程を省略
することができる。
【0036】即ち、本発明に於いては、触媒として気相
エチレンとの接触に対して耐劣化性に優れ、且つ、低ベ
ンゼン/エチレンモル比条件下でも高活性、高選択性を
維持するβゼオライトを触媒とすること、又、発生する
反応熱を未反応ベンゼンを主とする留分として蒸発させ
ることで一部除熱し、触媒層温度を任意の温度に保つこ
とが可能である為に、低ベンゼン/エチレンモル比条件
下でも高選択的にアルキル化反応を完結(エチレンの完
全転化)することが可能となった。しかも、触媒の活性
劣化も極めて小さいものである。
【0037】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
尚、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例
に限定されるものではない。 (実施例1) 〈βゼオライトの合成〉10%水酸化テトラエチルアン
モニウム水溶液160g、水140g、水酸化ナトリウ
ム4.2g、アルミン酸ナトリウムNaAlO2 9.5
gを混合、溶解し、融合シリカ「ニップシール」(日本
シリカ工業社製NV−3:商品名)70.5g、種結晶
としてβゼオライト7gを添加し、混合物をホモジナイ
ザーにより5000回転で30分間撹拌した。次に、5
00ミリリットルのオートクレーブに入れ、撹拌せずに
155℃で8日間入れて置くと、大量の結晶性物質が生
成した。この物質を濾過、水洗し、120℃で一昼夜乾
燥させ、66gの結晶性粉末を得た。次に、350〜5
50℃迄徐々に昇温し、最終的には550℃で6時間か
焼した。か焼した後の粉末はX線回折によりβゼオライ
トであることが同定された。
【0038】〈βゼオライトの水素イオン交換〉か焼し
たβゼオライト50gを0.15Nの硝酸水溶液450
g中に添加し、室温下で3時間撹拌し、イオン交換を行
った。交換後、濾過、水洗し、しかる後120℃で乾燥
させた。得られた水素イオン型βゼオライトの組成分析
をX線マイクロアナライザー(EPMA)で行った。シ
リカ/アルミナ比は25であった。同様な操作にてゼオ
ライトの合成、交換を数回行い得られた水素イオン型β
ゼオライトを錠剤成型器により成型し、3mmφ×3〜
5mmLの成型触媒とした。同様の操作を繰り返すこと
により、成型触媒400gを得た。
【0039】〈アルキル化反応実験〉内径42.8mm
長さ1500mmで、下部に予熱層として反応器下部6
00mmに熱媒ジャケットを備え、反応器出口に圧力制
御弁を備え、圧力制御弁より下の位置には製品液抜液オ
ーバーフローノズルを設けたステンレス製反応管に上記
ゼオライトβ触媒の成型体400gを充填した。触媒充
填位置は下部より600mmから1320mmの位置で
あり、触媒層上下部には3mmφのステンレス製ディク
ソンパッキングを充填した。製品液抜液ノズルは反応器
圧力と均圧となる様に窒素加圧された液回収ドラムに接
続されている。反応器出口では蒸発ガス留分は圧力制御
弁から冷却器を介して回収され、液は製品液抜液ノズル
から液回収ドラムに製品液として回収される。
【0040】反応器最下部(予熱層入口)よりベンゼン
を2280g/Hrの供給速度にて供給した。反応器出
口圧力制御弁により反応器内を13.8kg/cm2
とし、系内を完全に液封状態とした。予熱層熱媒ジャケ
ットに150℃の熱媒を循環し、触媒層入口温度を12
2℃とした。しかる後、エチレンを3.8ノルマルリッ
トル/分(10.18mol/Hr)の供給速度にてベ
ンゼンと同様に反応器最下部より供給し反応を開始し
た。反応が開始されるに伴い、触媒層温度は次第に上
昇、触媒層最高到達温度は触媒層中間域で230℃に達
したが、本反応条件下では一部蒸発が生じる為、それ以
上の温度上昇は抑制され触媒層上層においてもその温度
を維持した。オーバーフローノズル位置(液面位置)で
の温度は222℃であった。供給ベンゼン/エチレンモ
ル比は2.87である。この条件では供給されたエチレ
ンが全てベンゼンに溶解することは出来ず、触媒層入口
ではエチレン気泡が存在することは明らかである。
【0041】得られた製品液は1572g/Hrで、そ
のベンゼン環/エチル基モル比は2.14に濃縮されて
おり、又、核エチル化生成物の選択率は99.7%であ
った。蒸発ガス成分としては992g/Hrで得られ、
そのベンゼン環/エチル基モル比は6.06であった。
エチレン転化率は99.97%であり、ほぼ完全転化さ
れていた。反応は500Hr継続した。触媒層温度プロ
ファイル、特に触媒層入り口近傍の温度変化から、緩や
かに活性劣化が進行してはいるものの、エチレン転化率
としては全く低下傾向は観られず、ほぼ完全転化を達成
した。結果を表2に示す。
【0042】本実施例から本発明の方法によれば、低ベ
ンゼン/エチレンモル比条件下でのアルキル化反応に於
いて、触媒層入り口では明らかにエチレン気泡が存在し
ている条件下で、高い選択率を維持し、反応を完結せし
めること、未反応ベンゼンの一部を蒸気として回収する
為、反応熱の除熱が可能であること、約2といった極め
て低いベンゼン/エチル基モル比の製品を得ること、触
媒の活性低下が非常に小さいことが判る。又、本実施例
に於ける触媒重量基準のエチルベンゼン換算生成速度
は、2.7g−エチルベンゼン/g−触媒/時に相当す
る。
【0043】
【表2】
【0044】(実施例2)PQコーポレーション社製β
ゼオライト(ナトリウム型)を実施例1と同様の条件で
水素イオン型に交換し、水素イオン型βゼオライトを得
た。得られた水素イオン型βゼオライトのシリカ/アル
ミナ比は35であった。得られた水素イオン型βゼオラ
イトを錠剤成型器により打錠成型し、3mmφ×3〜5
mmLの成型触媒とした。同様の操作を繰り返すことに
より、成型触媒400gを得た。
【0045】実施例1と同様の反応器に、触媒400g
を充填した。充填層高は725mmであった。反応器最
下部(予熱層入口)よりベンゼンを2400g/Hrの
供給速度にて供給した。反応器出口圧力制御弁により反
応器内を13.8kg/cm2 Gとし、系内を完全に液
封状態とした。予熱層熱媒ジャケットに160℃の熱媒
を循環し、触媒層入口温度を133℃とした。しかる
後、エチレンを10.71mol/Hrの供給速度にて
ベンゼンと同様に反応器最下部より供給し反応を開始し
た。反応開始に伴い、触媒層温度は次第に上昇し始め、
触媒層中間域で232℃に達した。この温度、圧力下で
は、反応器内で一部反応液の蒸発が起こることは明らか
である。蒸発ガス留分は予めベンゼンを入れてある回収
ドラムへと導かれ、そのドラムレベルが一定となる様に
制御され、流入液はポンプにて原料ライン(供給原料混
合タンク)へリサイクルされる。一方、ベンゼンは反応
器への全供給液量が一定となる様に、即ち、供給原料混
合タンク内の液面を一定に保つ様に当該タンクへ供給さ
れる。
【0046】数時間後に系は安定し、リサイクル流量は
1042g/Hr、ベンゼン供給流量は1362g/H
r、製品液回収流量は1662g/Hrでほぼ一定流量
となった。その際の触媒層最高温度は232℃、製品回
収ノズル位置の温度は230℃であり、反応圧力は1
3.8kg/cm2 Gである。反応は500時間継続し
て行った。結果を表3に示す。
【0047】本実施例から、定常時の供給ベンゼン/エ
チレンモル比は1.63であり、リサイクル液を併せて
もベンゼン環/エチレンモル比は2.78であって触媒
層入口に於いては明らかにエチレン気泡が存在してい
る。500時間に亘って、ベンゼン環/エチル基モル比
1.62の製品液を得、即ちエチレンは、ほぼ完全に転
化されおり、触媒重量基準のエチルベンゼン換算生成速
度は2.84g−エチルベンゼン/g−触媒/時に相当
する。しかも、その間製品液の核エチル化選択率は9
9.6%と極めて高い値を維持することが判る。
【0048】
【表3】
【0049】(実施例3)原料エチレンとして、以下に
示す混合ガスを用いて反応を実施した。 エチレン 44.19% メタン 35.32% エタン 4.44% プロピレン 0.04% 水素 15.94% 一酸化炭素 0.07% このガス組成は、一般的なナフサ分解炉で得られる粗エ
チレンガスの組成を模したものである。
【0050】用いたゼオライトβ触媒成型体、及び、反
応装置は実施例2と同様である。但し、本実施例にあっ
ては、メタン、水素などのイナートガスが原料中に含ま
れる為、気相回収受器と製品液回収受器には気相均圧ラ
インを設け、イナートガスにより両受器を均圧とした。
反応器最下部(予熱層入口)よりベンゼンを2400g
/Hrの供給速度にて供給した。反応器出口圧力制御弁
により反応器内を30.2kg/cm2 Gとし、系内を
完全に液封状態とした。本実施例に於ける操作圧力は、
イナートガス(水素、メタン、エタン、微量の一酸化炭
素ガス)が気相回収側に排出される。従って、実施例2
と同様な蒸発(組成、量)を起こさせるには、これらイ
ナートガス分を分圧補正する必要があり、操作圧力を3
0.2kg/cm2 Gとした。
【0051】予熱層熱媒ジャケットに160℃の熱媒を
循環し、触媒層入口温度を132℃とした。しかるの
ち、エチレンを含む原料混合ガスを24.25mol/
Hr、エチレンとしては10.71mol/Hrの供給
速度にてベンゼンと同様に反応器最下部より供給し、反
応を開始した。反応開始後は、実施例2と同様に、原料
供給速度の制御を行い、数時間後には定常に至った。リ
サイクル流量は1043g/Hr、ベンゼン供給流量は
1362g/Hr、製品液回収量は1662g/Hrで
ほぼ一定値を示すようになった。反応は500時間継続
して行った。結果を表4に示す。
【0052】本実施例から、500時間に亘って、エチ
レンはほぼ完全に転化し、製品液としてベンゼン環/エ
チル基=1.62、核エチル化選択率99.5%を維持
することが判る。尚、この際の触媒重量基準のエチルベ
ンゼン換算生成速度は2.84g−エチルベンゼン/g
−触媒/時に相当する。又、従来の方法の様にエチレン
完全溶解条件にこだわらない為、低純度エチレン原料で
の実施が可能であることが判る。
【0053】
【表4】
【0054】(比較例1)本比較例は、Y型ゼオライト
とゼオライトβ触媒の反応成績を比較するために行った
予備実験結果を示すものである。内径22.1mm長さ
800mmで下部に予熱層として300mmに熱媒ジャ
ケットを、反応器出口に圧力制御弁を備えたステンレス
製反応管に実施例1と同様にして得られた水素イオン型
ゼオライトβ触媒成型体を粉砕分級し8〜14mesh
に整粒したものを30g充填した。触媒充填位置は下部
より320mmから510mmの位置であり、触媒層上
下には3mmφのステンレス製ディクソンパッキングを
充填した。反応器最下部(予熱層入口)よりベンゼンを
319g/Hrの供給速度にて供給した。反応器出口圧
力制御弁により反応器内を13.5kg/cm2 Gと
し、系内を完全に液封状態とした。予熱層熱媒ジャケッ
トに140℃の熱媒を循環し、触媒層入口温度を135
℃とした。しかるのち、エチレンを1.4mol/Hr
の供給速度にてベンゼンと同様に反応器最下部より供給
し反応を開始した。触媒層最高到達温度は触媒層中間域
で232℃に達したが、本反応条件下では一部蒸発が生
じる為、それ以上の温度上昇は抑制され触媒層上層もそ
の温度を維持した。反応器出口に冷却器を設け、全て液
として回収し、ガスクロマトグラフにより分析した。
【0055】次に、触媒としてLZY−82(リンデゼ
オライト社製:商品名)を8〜14meshに成型した
ものを用いて同様の実験を行った。触媒充填量は33.
3g、触媒層位置は下部より320〜470mmであっ
た。触媒層入口温度を145℃として反応を開始した。
Y型、β型両者の触媒での反応成績の比較結果を表5に
示す。本比較例によれば、ベンゼン/エチレン供給モル
比は2.9であり、触媒層入口ではエチレンはベンゼン
に完全には溶解せず、即ち、エチレンの気泡が存在す
る。
【0056】βゼオライトを触媒として用いる際には、
エチレン転化率は99.3%とほぼ完全に転化され、し
かも、核エチル化生成物の選択率は99.7%と極めて
高い。しかも、30Hrの間その成績を維持し、活性劣
化は全く観られなかった。一方、Y型ゼオライトを触媒
として用いる際には、核エチル化生成物の選択率は9
5.5%と極めて低く、又、初期でもエチレン転化率は
73%に過ぎず、しかも、わずか4時間の反応の間に6
0%にまで低下した。本比較例から、本発明の様な極め
て低いベンゼン/エチレンモル比条件下には従来の方法
で幅広く用いられてきたY型ゼオライトを用いることは
不可能であることが判る。
【0057】
【表5】
【0058】(比較例2)本比較例は、触媒層温度プロ
ファイルによる反応成績の比較を行う為に実施した予備
実験結果を示すものである。比較例1に用いたものと同
様の反応装置に、実施例1と同様にして得られた水素イ
オン型ゼオライトβ触媒成型体を粉砕分級し8〜14m
eshに整粒したものを30g充填した。触媒充填位置
は下部より320mmから510mmの位置であり、触
媒層上下には3mmφのステンレス製ディクソンパッキ
ングを充填した。反応器最下部(予熱層入口)よりベン
ゼンを319g/Hrの供給速度にて供給した。反応器
出口圧力制御弁により反応器内を13.8kg/cm2
Gとし、系内を完全に液封状態とした。予熱層熱媒ジャ
ケットに230℃の熱媒を循環し、触媒層入口温度を1
95℃とした。しかるのち、エチレンを1.4mol/
Hrの供給速度にてベンゼンと同様に反応器最下部より
供給し反応を開始した。触媒層最高到達温度は触媒層中
間域で232℃に達したが、本反応条件下では蒸発が生
じる為、それ以上の温度上昇は抑制され触媒層上層もそ
の温度を維持した。比較例1と同様に反応器出口には冷
却器を設け、全て液として回収し、ガスクロマトグラフ
により分析した。反応評価結果を表6に示す。
【0059】比較例1に示した様に、触媒層入り口温度
を135℃とする場合には、エチレン転化率は99.3
%とほぼ完全に転化され、しかも、核エチル化生成物の
選択率は99.7%と極めて高い。しかも、30Hrの
間、その成績を維持し、活性劣化は全く観られなかっ
た。これに対して、本比較例の様に、触媒層入り口温度
が195℃と、本発明のいう触媒層入り口での温度が触
媒層最高到達温度より50℃以上低いとされる範囲を大
きく逸脱する様な場合には、初期でもエチレン転化率は
98%と完全転化せしめるに至らず、しかも、核エチル
化選択率は99.3%と低く、しかも、触媒の活性劣化
も比較的速いことが明らかである。加えて、工業的に実
施する場合を考えると、かかる反応条件では蒸発ガス流
量(リサイクル量)が極端に増加し、製品液の収量が減
少するため好ましくない。
【0060】
【表6】
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、極めて低いベンゼン/
エチレン供給モル比条件下で、触媒の活性劣化なく、極
めて高い核エチル化選択率、及び、エチレンの完全転化
を維持しつつ実施することが可能であり、しかも、単純
な装置かつ低圧条件下で行うことができる。又、従来の
方法の様なエチレン完全溶解条件にこだわらない為、低
純度エチレン原料での実施も可能となる。これらのこと
は工業的に実施する上で極めて有利である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定床上昇流方式反応器を用いて、ゼオ
    ライトβを含む触媒の存在下にベンゼンとエチレンから
    エチルベンゼンを製造する方法に於いて、 a)触媒層下部よりエチレンを供給する際に、触媒層入
    り口に於いてエチレンの気泡が存在する条件下で反応を
    行い、 b)且つ、反応器上部より反応生成物を液として回収す
    ると同時に、未反応ベンゼンを主とする留分を蒸気とし
    て抜き出し、 c)且つ、触媒層入り口での温度を触媒層最高到達温度
    よりも少なくとも50℃以上低くする、 ことを特徴とするエチル化ベンゼンの製造方法。
  2. 【請求項2】 得られる製品液のベンゼン環/エチル基
    モル比が1〜3であることを特徴とする請求項1記載の
    エチル化ベンゼンの製造方法。
  3. 【請求項3】 触媒層入り口の温度が30〜200℃、
    触媒層最高到達温度が170〜250℃となる触媒層温
    度プロファイルを持つことを特徴とする請求項1記載の
    エチル化ベンゼンの製造方法。
  4. 【請求項4】 反応器上部より、蒸気として抜き出され
    る留分の分圧が5〜20kg/cm2 Gであることを特
    徴とする請求項1記載のエチル化ベンゼンの製造方法。
  5. 【請求項5】 反応器より蒸気として回収される未反応
    ベンゼンを主とする留分をアルキル化反応器へ循環供給
    することを特徴とする請求項1記載のエチル化ベンゼン
    の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006519857A (ja) * 2003-02-28 2006-08-31 エービービー ルマス グローバル インコーポレイテッド アルキル芳香族化合物の製造プロセス
JP2014015466A (ja) * 2005-03-31 2014-01-30 Exxonmobile Chemical Patents Inc 多相アルキル芳香族の製造

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