JPH1063123A - 熱定着資材用フィルム - Google Patents

熱定着資材用フィルム

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JPH1063123A
JPH1063123A JP21383696A JP21383696A JPH1063123A JP H1063123 A JPH1063123 A JP H1063123A JP 21383696 A JP21383696 A JP 21383696A JP 21383696 A JP21383696 A JP 21383696A JP H1063123 A JPH1063123 A JP H1063123A
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JP
Japan
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film
formula
fixing material
heat
group
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JP21383696A
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English (en)
Inventor
Hitoshi Katsuyama
仁之 勝山
Yasuhiko Ota
靖彦 太田
Tatsuya Kiyomiya
達也 清宮
Yukihiro Kumamoto
行宏 熊本
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 弾性率が高く、線膨張係数が小さく、引裂伝
播抵抗が大きい、耐熱性に優れた熱定着資材用フィルム
を提供する。 【解決手段】 ポリアリルエーテルケトン95〜5重量
%、熱可塑性ポリイミド5〜95重量%を含み、ポリア
リルエーテルケトンと熱可塑性ポリイミドの混合物90
〜50重量%に対し、無機フィラー10〜50重量%を
含み、且つ、厚みが10〜100μmであることを特徴
とする熱定着資材用フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱定着資材用フィ
ルムに関する。詳しくは、ポリアリルエーテルケトン、
熱可塑性ポリイミド及び無機フィラーを含む熱定着資材
用フィルムであって、優れた耐熱性を有し、高温下での
弾性率が高く、寸法変化率が小さく、且つ、チューブ状
等への成形性が良好な熱定着資材用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プリンター、複写機等が具備する
熱定着手段としては、内部の中心軸部に加熱体を有する
熱定着ロールと、これと圧接する加圧ロールとの間に被
加熱体である未定着トナーが転写された紙やプラスチッ
クフィルム等を通紙し、熱と圧力により未定着トナーを
融解、定着せしめる方法がとられてきた。しかしなが
ら、熱定着ロールの熱容量が大きいため、加熱体に通電
を開始してから熱定着ロール表面の温度が所定温度に到
達するのに数分程度の時間を要し、印刷待機時間が長い
欠点があった。また、待機時間を短くするためには常に
熱定着ロールを加熱しておく必要がある等、省エネルギ
ーの点でも問題点があった。
【0003】最近、熱エネルギーを効率的に伝え、待機
時間が短く、省エネルギータイプの耐熱性樹脂を用いた
定着手段が実用化されている。この定着手段は、加熱体
とこれに接触して被加熱体である未定着トナーが転写さ
れた紙やプラスチックフィルムと随伴して回転するチュ
ーブまたはベルト状の耐熱フィルムを有する構造である
ことから、加熱体に通電してから定着フィルム表面が所
定温度に達するまでの時間が大幅に短縮でき、常に加熱
しておく必要がないため電力消費量が少ない。このよう
に耐熱フィルムを介して加熱体から被加熱体である紙や
プラスチックフィルム上のトナーを加熱、溶融させる熱
定着装置に用いられる耐熱性フィルムには、現在熱硬化
型ポリイミド樹脂をチューブ状に賦形したものが用いら
れている。
【0004】更に、熱伝導率向上を目的として熱伝導性
フィラーを含有する薄肉チューブが採用されている。例
えば、特開平7−110632号公報には、耐熱樹脂と
平均粒径0.5〜15μmで絶縁性の無機フィラーを含
有する樹脂組成物で形成された内層、フッ素樹脂と導電
性フィラーを含有する樹脂組成物で形成された外層、及
び内層と外層の両樹脂に接着性を有する樹脂と導電性フ
ィラーを含有する樹脂組成物で形成された中間層の3層
構造を有する定着ベルトが開示されている。この公報に
は、内層を形成する耐熱樹脂として、ポリイミド、ポリ
アミドイミドが好ましく、好ましい態様として、熱溶融
成形が不可能なポリイミドを採用し、溶液流延法によっ
てポリイミドワニスからポリイミドフィルムを成形した
ことが開示されている。しかし、該定着ベルトは、基材
のポリイミド層に微量の有機溶媒を含む欠点があるだけ
でなく、製法において、溶媒除去工程が必要となるため
工程が長くなり、またバッチ処理の為、生産性が悪い等
の問題点がある。
【0005】これらの問題点を改善する手段としては、
熱可塑性樹脂の押出成形によりチューブ状に賦形する方
法が提案されている。例えば、特開平7−199691
号公報には、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド
(PEI)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリ
エーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレン
スルフィド(PPS)等をチューブ状に押出した定着ベ
ルト等が開示されている。しかし、これらの定着ベルト
等は充分な耐熱性がなく、実機テストにおいてチューブ
にしわが発生する欠点があり実用化には問題がある。
【0006】すなわち、非晶性のPES、PEI等は、
ガラス転移温度が最高でも220℃程度であり、例えば
プリンターの熱定着ロールとして使用した場合、最高2
50℃程度の高温になることがあるため、熱定着ロー
ル、定着ベルト等を形成するフィルムにしわが発生し、
画像を乱すことになる。結晶性のPPS、PEEK等は
ガラス転移温度がPPSで約90℃、PEEKで約15
0℃と低いため押出チューブをそのまま使用した場合、
ガラス転移温度以上で弾性率が低下し変形してしまう。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、溶
融接着によりチューブ状に成形し得る熱定着資材用フィ
ルムであり、且つ、高温における弾性率が高く、線膨張
係数が小さく、引裂伝播抵抗が大きい、耐熱性に優れた
熱定着資材用フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため、鋭意検討した結果、特定量のポリアリ
ルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド及び無機フィラ
ーを含むフィルムが、高温における弾性率が高く耐熱性
に優れており、熱定着資材に適していることを見出し、
本発明に到った。
【0009】すなわち、本発明は、ポリアリルエーテル
ケトン95〜5重量%に対し、式(1)〔化8〕
【0010】
【化8】 (式中、Rは炭素数2以上の脂肪族基、環式脂肪族基、
単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接
または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香
族基からなる群より選ばれた4価の基を示し、Xは単結
合、硫黄原子、スルホン基、カルボニル基、イソプロピ
リデン基またはヘキサフルオロイソプロピリデン基の2
価の基を示す)で表される熱可塑性ポリイミド5〜95
重量%を含み、ポリアリルエーテルケトンと熱可塑性ポ
リイミドの混合物90〜50重量%に対し、無機フィラ
ー10〜50重量%を含み、且つ、厚みが10〜100
μmであることを特徴とする熱定着資材用フィルムであ
る。
【0011】本発明の熱定着資材用フィルムは、その機
械方向または機械方向と直角をなす方向における各特性
が、(1)25〜250℃における線膨張係数が1×1
-5〜4×10-5/℃、(2)200℃における弾性率
が0.1〜10GPaであり、且つ、(3)引裂伝播抵
抗が200〜2000g/mmである。そのため、耐熱
性に優れるだけでなく、高温における寸法安定性と強度
にも優れている。その上、熱可塑性フィルムであるた
め、熱融着等により容易にチューブ状に成形できる。従
って、本発明の熱定着資材用フィルムは、印刷機、複写
機等に設置される熱定着ロール等の熱定着用資材として
極めて有用である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の熱定着資材用フィルムは、ポリアリルエ
ーテルケトンと上記式(1)で表される繰り返し構造単
位を有する熱可塑性ポリイミドとを特定の配合割合で混
合し、それに特定量の無機フィラーを添加、混合して樹
脂組成物となし、それを押出機等の熱成形機を用いてフ
ィルム状に成形することにより製造される。フィルム
は、チューブ状等に加工され熱定着ロール等として使用
される。フィルムまたはチューブを熱処理することが好
ましい。
【0013】本発明に使用するポリアリルエーテルケト
ンとして、ポリエーテルケトン(以下、PEKとい
う)、ポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKと
いう)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(以
下、PEKEKKという)、ポリエーテルケトンケトン
等が挙げられる。好ましく使用できるものとしては、式
(2)〔化9〕
【0014】
【化9】 で表される繰り返し構造単位を有するPEEK、式
(3)〔化10〕
【0015】
【化10】 で表される繰り返し構造単位を有するPEK、式(4)
〔化11〕
【0016】
【化11】 で表される繰り返し構造単位を有するPEKEKK等が
挙げられる。これらの市販品として、例えば、英国IC
I社製、商品名;ビクトレックス−PEEK、同ビクト
レックス−PEK、独国BASF社製、商品名:Ult
rapek等が挙げられる。
【0017】本発明に使用する熱可塑性ポリイミドは上
記式(1)で表される繰り返し構造単位を有する熱可塑
性ポリイミドである。これらの熱可塑性ポリイミドは、
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの
脱水縮合反応によって得ることができる。これらの熱可
塑性ポリイミドを得るために用いる芳香族テトラカルボ
ン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン
酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水
物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼ
ンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタ
レンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフ
タレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナ
フタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10
−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7
−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,
7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテト
ラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフ
ェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,
4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2
−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無
水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル
二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エー
テル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)
スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニ
ル)スルホン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカル
ボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフ
ルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカ
ルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサ
クロロプロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカ
ルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジ
カルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−
ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−
(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,
4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水
物、4,4’−ジフェニルスルフィドジオキシビス(4
−フタル酸)二無水物、4,4’−ジフェニルスルホン
ジオキシビス(4−フタル酸)二無水物、メチレンビス
−(4−フエニレンオキシ−4−フタル酸)二酸無水
物、エチリデンビス−(4−フエニレンオキシ−4−フ
タル酸)二酸無水物、イソプロピリデンビス−(4−フ
エニレンオキシ−4−フタル酸)二酸無水物、ヘキサフ
ルオロイソプロピリデンビス−(4−フエニレンオキシ
−4−フタル酸)二酸無水物等が挙げられる。
【0018】また、芳香族ジアミンとしては、例えば、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフ
ィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]
スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニ
ル]ケトン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)
ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキ
シ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ア
ミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3
−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェ
ニルスルフイド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテ
ル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’
−ジアミノジフェニルメタン、1,1−ジ(p−アミノ
フェニル)エタン、2,2−ジ(p−アミノフェニル)
プロパン、2,2−ジ(p−アミノフェニル)−1,
1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げ
られる。
【0019】芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族
ジアミンとを反応させる方法には特に制限はない。例え
ば、モノマー同志またはモノマーを有機溶媒中に懸濁ま
たは溶解させて加熱した後、混合、化学的に脱水し、生
成物を分離、精製する方法が挙げられる。
【0020】上記のようにして得られる熱可塑性ポリイ
ミドの内、好ましく用いられるポリイミドとして、式
(5)〔化12〕
【0021】
【化12】 で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドが挙げ
られる。このポリイミドは、ピロメリット酸二無水物
と、芳香族ジアミンである4,4’−ビス(3−アミノ
フェノキシ)ビフェニルとを略等モル用いて重縮合し、
得られたポリアミック酸を脱水することにより製造され
る。
【0022】好ましく用いられる他の熱可塑性ポリイミ
ドとして、上記式(4)で表される繰り返し構造単位1
〜80モル%、及び、式(6)〔化13〕
【0023】
【化13】 で表される繰り返し構造単位99〜20モル%を含むポ
リイミドが挙げられる。このポリイミドは、ピロメリッ
ト酸二無水物1〜80モル%及びビフェニルテトラカル
ボン酸二無水物99〜20モル%を含むテトラカルボン
酸二無水物と4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)
ビフェニルを略等モルづつ用いて重縮合し、得られたポ
リアミック酸を脱水することにより製造される。
【0024】また、好ましく用いられるその他の熱可塑
性ポリイミドとして、上記式(5)で表される繰り返し
構造単位90モル%、及び、式(7)〔化14〕
【0025】
【化14】 で表される繰り返し構造単位10モル%を含むポリイミ
ドが挙げられる。このポリイミドは、ピロメリット酸二
無水物と、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビ
フェニル約90モル%と4,4’−ジアミノジフェニル
エーテル約10モル%を含む芳香族ジアミンとを略等モ
ルづつ用いて重縮合し、得られたポリアミック酸を脱水
することにより製造される。
【0026】フィルムへの成形性、得られるフィルムの
機械的強度等を考慮すると、上記方法により得られたポ
リイミドの内、下記方法により測定した溶液の対数粘度
(η)が0.45〜0.7dl/gであるポリイミドが
好ましく使用される。更に好ましくは0.5〜0.6d
l/gのものである。
【0027】〔溶液の対数粘度の測定方法〕試料をフェ
ノール9容量部とp−クロロフェノール1容量部との混
合溶媒に溶解した溶液(濃度0.5g/dl)、及び該
混合溶媒の粘度をそれぞれウベローデ式粘度計を用いて
30℃においてそれぞれ測定し、数式(1)〔数1〕
【0028】
【数1】 〔式中、tは溶液の落下時間(sec)、t0は混合溶
媒の落下時間(sec)、cは溶液濃度(g/dl)を
示す〕により算出する。
【0029】本発明で用いる無機フィラーは、例えば、
窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、
マグネシア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ベリ
リウム等の球状フィラー、また、ガラスファイバー、ホ
ウ酸アルミニウムウイスカー等の針状フィラー、さらに
は、ガラスフレークやマイカ等の板状フィラー等が使用
できる。針状フィラーを使用した場合、例えば押出フィ
ルムではフィルム流れ方向にフィラーが配向し得られた
フィルムの機械的物性に異方性が生じ易いが、使用時の
温度分布、荷重等の方向を考慮しフィルムの方向を合わ
せることにより球状フィラーと同等またはそれ以上の性
能を得ることができる。
【0030】無機フィラーの形状としては、球状の場
合、平均粒径は、ポリマーへの分散性、得られるフィル
ム組成の均一性等に影響を及ぼす。平均粒径が細か過ぎ
ても粗すぎてもポリマーへの分散性が低下する。かかる
観点から、平均粒径が0.1〜10μmであることが好
ましい。更に好ましくは0.5〜5μmである。針状の
場合、アスペクト比(針の長さと径の比)が10〜10
0であることが好ましい。あまり大きいと押出等のフィ
ルム成形時に剪断により破損し、逆に小さすぎると線膨
張係数の低下等の効果が低減する。また、板状フィラー
の場合はポリマーへの分散性を考慮し板の最長片の長さ
が0.1〜10μmであることが好ましい。
【0031】無機フィラーの含有量は10〜50重量
%、好ましくは20〜40重量%である。10重量%未
満では、高温下での弾性率を向上させる効果が足りず、
熱定着用ローラー等の基材とした場合、高温で使用した
際にチューブ等にしわが発生することがあり好ましくな
い。また、50重量%を超えると、10〜100μm厚
みのフィルムを製造するに際し、通常リップ開度0.5
〜1mm程度にした場合ドラフト比が大きいため、引取
時にピンホール発生等の問題がある。例えフィルムが得
られても引裂強度の低下が著しく、チューブ等に成形し
て熱定着装置に装着した際に、チューブが蛇行したりし
た場合、端面が割れる等の問題が発生し好ましくない。
【0032】次に、本発明のポリアリルエーテルケトン
と熱可塑性ポリイミドの混合物を得るための方法につい
て説明する。上記のようにして得られた熱可塑性ポリイ
ミドパウダーとポリアリルエーテルケトンのパウダーあ
るいは粉砕状パウダーと無機フィラーとをヘンシェルミ
キサー、ユニバーサルミキサー、リボンブレンダー等の
混合機を用いて混合し、得られた混合物を二軸混練機押
出機でペレット化し、更にそのペレットを溶融押出機等
を用いて混練、溶融してTダイ等から押出して製膜する
方法、ポリアリルエーテルケトンペレットと高濃度無機
フィラーを含有するポリイミドペレットのマスターバッ
チとを、あるいはポリイミドペレットと高濃度無機フィ
ラーを含有するポリアリルエーテルケトンペレットのマ
スターバッチとを上記熱伝導性無機フィラーの含有量に
なる割合で、リボンブレンダー等の混合機で混合し、溶
融押出機等を用いて混練、溶融してTダイ等から押出し
て製膜する方法等が例示される。
【0033】無機フィラーの分散性を考慮した場合、無
機フィラーはパウダーで混合するのが好ましい。また、
コンタミした異物や押出機内で長時間滞留し高分子量化
した、いわゆるゲル状物の除去、さらにフィラーの分散
性向上、あるいはフィラー凝集によるフィルム外観不良
等が発生する場合は、溶融押出機のシリンダー先端とT
ダイの間に、ろ過径5〜80μmの円筒状あるいはディ
スク状のフィルターを設置することが好ましい。フィル
ターによるろ過操作はフィラーの分散性を良好とし、ま
た、フィルム表面に異物、ゲル状物あるいはフィラーの
凝集物が突起状に現れることがなくなるので、得られる
フィルムをチューブ等に成形して熱定着装置に装着して
使用する際に、突起部によって被加熱体と接触不良を起
こして定着不良となり、画像が乱れることがない。
【0034】本発明の熱定着資材用フィルムは、例え
ば、チューブ等に成形して熱定着用基材とされる。本発
明の熱定着資材用ポリアリルエーテルケトンとポリイミ
ドの混合物を含むフィルムをチューブ状に成形する方法
としては特に制限はないが、フィルムを円筒状に丸めた
後、加熱、圧着できる円筒金型内にセット後、全面ある
いは繋ぎ部のみを例えば350〜430℃に加熱して圧
着する方法、円筒型内にセットした後、繋ぎ部を超音波
を利用して融着する方法等の容易な方法が適用できる。
熱定着資材用フィルム、またはそれを加工したチューブ
等は、280〜330℃において、緊張下で10〜12
0分間熱処理を施すことが好ましい。通常フィルムの厚
みは10〜100μmである。
【0035】上記のようにして得られた熱定着資材用フ
ィルム(機械方向、または機械方向と直角をなす方向)
のTMA法による25〜250℃の温度範囲における線
膨張係数は1×10-5〜4×10-5/℃である。また、
200℃における弾性率が0.1〜10GPa、且つ、
引裂伝播抵抗が200〜2000g/mmを示す。
【0036】従って、例えば、プリンターの熱定着用ロ
ール等の加熱ヒーターの温度が最高250℃付近まで達
することを考慮しても、本発明の熱定着資材用フィルム
は、充分にそれに耐え得る耐熱性を有する。また、25
〜250℃の温度範囲における線膨張係数が4×10-5
/℃を超えると、例えばプリンターの熱定着フィルムの
場合、ヒーター全面に被加熱体である紙等が搬入された
場合はほぼ均一温度であるが、サイズの異なる紙等が搬
入された場合(部分通紙)、被加熱体が存在しない部分
の温度が、被加熱体が存在する部分の温度より高温とな
り、最高約80℃もの温度差を生ずることとなり、線膨
張差によるしわが発生して定着不良を起こし、画像を乱
す原因となる。この場合、フィルムの弾性率が低いと変
形しやすく、しわに成りやすいので、これを防ぐには2
00℃における弾性率は0.1GPa以上が必要とな
る。さらに、チューブ状フィルムが回転中に左右に動い
た場合、端部が金属等と衝突する現象が起こる。この
時、フィルムの引裂伝播抵抗が200g/mm以上ない
と、端部から割れが発生し、割れが内部側まで成長し、
やはり画像を乱す原因となる。
【0037】上記のように、本発明の熱定着資材用フィ
ルムは、高速、省エネルギータイプのプリンター、複写
機の熱定着ロールとして使用することができ、さらに低
コスト化が可能となるものである。
【0038】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
する。なお、実施例および比較例において記述した熱定
着資材用フィルムの特性値の測定方法を以下に示す。下
記(1)〜(3)の特性は、いずれも試料の長さ方向
(機械方向、以下、MDという)、及び試料の幅方向
(機械方向と直角をなす方向、以下、TDという)につ
いて測定した。
【0039】(1)線膨張係数(℃-1) セイコー電子社製、型式TMA/SS−120型装置を
用い、伸長法にて昇温速度5℃/min、荷重3g、窒
素雰囲気下で25〜250℃の温度範囲のフィルムの伸
びから線膨張係数を算出する。サンプルサイズは、長さ
20mm、幅3mmとする。
【0040】(2)弾性率(GPa) 東洋ボールドウィン社製、テンシロン/UTM−4−1
00型引張試験機と引張試験機用恒温槽(東洋ボールド
ウィン社製/TLF−4−40−B)を使用し、サンプ
ルサイズ10mm×200mm、掴み間距離100m
m、試験速度5mm/minで200℃において測定す
る。
【0041】(3)引裂伝播抵抗(g/mm) JIS−K7128に規定されるA法(トラウザー試
験)にて測定する。試験速度は200mm/minとす
る。
【0042】重合例1 かき混ぜ機、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応
容器に、常温でm−クレゾール28.67kg、4,
4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル736
9g(20モル)、ピロメリット酸二無水物(以下PM
DAという)2083g(9.55モル)、ビフェニル
テトラカルボン酸(以下BPDAという)2808g
(9.55モル)および無水フタル酸533g(3.6
モル)を装入し、かきまぜ機で撹拌しながら200℃ま
で昇温し、200℃にて6時間保持した後、冷却し、そ
れにトルエンを装入することによりポリイミドを析出さ
せた。ろ別により得られたポリイミドパウダーをさらに
トルエンで洗浄し、続いて窒素雰囲気下で220℃にて
4時間乾燥して、熱可塑性ポリイミドパウダー1200
0gを得た。得られたポリイミドの対数粘度は0.57
dl/gであった。これをポリイミドAという。
【0043】重合例2 かき混ぜ機、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応
容器に、常温でm−クレゾール41.3kg、4,4’
−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル8843g
(24モル)、ピロメリット酸二無水物(以下PMDA
という)4936g(22.6モル)および無水フタル
酸608g(4.1モル)を装入し、かきまぜ機で撹拌
しながら200℃まで昇温し、200℃にて6時間保持
した後、冷却し、それにトルエンを装入することにより
ポリイミドを析出させた。ろ別により得られたポリイミ
ドパウダーをさらにトルエンで洗浄し、続いて窒素雰囲
気下で220℃にて4時間乾燥して、熱可塑性ポリイミ
ドパウダー13000gを得た。得られたポリイミドの
対数粘度は0.46dl/gであった。これをポリイミ
ドBという。
【0044】重合例3 かき混ぜ機、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応
容器に、常温でm−クレゾール34kg、ピロメリット
酸二無水物(以下PMDAという)4122g(18.
9モル)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビ
フェニル6623g(18モル)、4,4’−ジアミノ
ジフェニルエーテル(以下DADEという)340g
(2モル)および無水フタル酸880g(4.4モル)
を装入し、かきまぜ機で撹拌しながら200℃まで昇温
し、200℃にて6時間保持した後、冷却し、それにト
ルエンを装入することによりポリイミドを析出させた。
ろ別により得られたポリイミドパウダーをさらにトルエ
ンで洗浄し、続いて窒素雰囲気下で220℃にて4時間
乾燥して、熱可塑性ポリイミドパウダー10200gを
得た。得られたポリイミドの溶液の対数粘度を前記方法
により測定した結果、0.51dl/gであった。これ
をポリイミドCという。
【0045】実施例1 重合例1で得られたポリイミドA30重量%と、ポリア
リルエーテルケトンとしてPEEK(ICI社製、商品
名:ビクトレックスPEEK−380P)70重量%と
を混合し、さらにこれらの総重量に対し25重量%の窒
化アルミニウム〔三井東圧化学(株)製、商品名:MA
N−2〕とをヘンシェルミキサーにて混合して樹脂組成
物とした。二軸押出機を用いて、得られた樹脂組成物を
380〜410℃において混練、溶融して押出して造粒
しペレットとした。得られたペレットを径50mmの単
軸押出機(成形温度420℃)に供給し、Tダイ前部に
装着した10μm(ろ過径:目開)のリーフディスクタ
イプのフィルターを通過させ、1100mm幅Tダイよ
り押出し、厚さ50μmの熱定着資材用フィルムを得
た。次いで、得られたフィルムを300℃において60
分間、緊張下で加熱処理した。使用したポリイミド、ポ
リアリルエーテルケトン及び無機フィラーの種類、それ
らの配合比(重量%)、並びに、フィルターのろ過径
(目開)を〔表1〕に示す。また、得られた熱定着資材
用フィルムの各種物性を上記方法により測定し、その結
果を〔表1〕に示す。
【0046】実施例2〜8、比較例1〜4 ポリイミド、ポリアリルエーテルケトン及び無機フィラ
ーの種類、それらの配合比(重量%)、並びに、フィル
ターのろ過径(目開)を〔表1〕に記載した如く替えた
以外、実施例1と同様の操作を行って熱定着資材用フィ
ルムを製造した。得られたフィルムの各種物性を実施例
1と同様にして測定し、その結果を〔表1〕に示す。因
に、無機フィラーとして、実施例4ではホウ酸アルミニ
ウムウィスカー〔四国化成工業(株)製:商品名:アル
ボレックスY〕、実施例5ではガラスフレークを使用し
た。また、ポリアリルエーテルケトンとして、実施例7
ではPEKEKK(BASF社製、商品名:Ultra
pek−A1000)、実施例8ではPEK(ICI社
製、商品名:ビクトレックスPEK−220P)を使用
した。
【0047】
【表1】
【0048】<実施例の考察>実施例1〜8で得られた
熱定着資材用フィルムは、いずれも25〜250℃の温
度範囲における線膨張係数は1×10-5〜4×10-5
℃、200℃における弾性率が0.1〜10GPaであ
り、且つ、引裂伝播抵抗が200〜2000g/mmを
示している。そのため、これらは熱定着資材として極め
て有用である。
【0049】一方、比較例1で得られたフィルムはPE
EKの配合量が少なすぎるため、PEEKの結晶による
250℃付近の高温下での寸法安定性が悪く、線膨張係
数が増大し、引裂伝播抵抗も低下した。比較例2で得ら
れたフィルムは、逆にポリイミドの配合量が少なすぎる
ため、PEEKのガラス転移温度である150℃以上の
高温下での弾性率の低下が大きく、200℃での弾性率
が0.1GPa未満となった。そのため、比較例1及び
2で得られたフィルムは、熱定着資材として実用する際
にフィルムにしわが発生する恐れがあり、熱定着資材用
フィルムとして使用することは不可能である。
【0050】比較例3で得られたフィルムは、無機フィ
ラーの含有量が少ないため、無機フィラー混合の効果が
不足し、各物性値は熱定着資材用フィルムとしては不十
分なものとなった。比較例4で得られたフィルムは、無
機フィラーの含有量が多過ぎるため、引裂伝播抵抗は2
00g/mmに満たず、熱定着資材用フィルムとして実
用する際に割れが発生する恐れがあり、熱定着資材用フ
ィルムとして使用することは不可能である。
【0051】
【発明の効果】本発明の熱定着資材用フィルムは、優れ
た耐熱性、機械的特性、寸法安定性を有しており、高
速、省エネルギータイプのプリンター、複写機等の熱定
着ロール等の熱定着用資材として好適に使用し得る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊本 行宏 愛知県名古屋市南区丹後通2丁目1番地 三井東圧化学株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアリルエーテルケトン95〜5重量
    %に対し、式(1)〔化1〕 【化1】 (式中、Rは炭素数2以上の脂肪族基、環式脂肪族基、
    単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接
    または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香
    族基からなる群より選ばれた4価の基を示し、Xは単結
    合、硫黄原子、スルホン基、カルボニル基、イソプロピ
    リデン基またはヘキサフルオロイソプロピリデン基の2
    価の基を示す)で表される熱可塑性ポリイミド5〜95
    重量%を含み、ポリアリルエーテルケトンと熱可塑性ポ
    リイミドの混合物90〜50重量%に対し、無機フィラ
    ー10〜50重量%を含み、且つ、厚みが10〜100
    μmであることを特徴とする熱定着資材用フィルム。
  2. 【請求項2】 ポリアリルエーテルケトンが、式(2)
    〔化2〕、 【化2】 式(3)〔化3〕 【化3】 及び式(4)〔化4〕 【化4】 で表される繰り返し構造単位から選ばれた1種の繰り返
    し構造単位を有することを特徴とする請求項1記載の熱
    定着資材用フィルム。
  3. 【請求項3】 熱可塑性ポリイミドが式(5)〔化5〕 【化5】 で表される繰り返し構造単位を有することを特徴とする
    請求項1記載の熱定着資材用フィルム。
  4. 【請求項4】 熱可塑性ポリイミドが、前記式(5)で
    表される繰り返し構造単位1〜80モル%、及び、式
    (6)〔化6〕 【化6】 で表される繰り返し構造単位99〜20モル%を含むこ
    とを特徴とする請求項1記載の熱定着資材用フィルム。
  5. 【請求項5】 熱可塑性ポリイミドが、前記式(5)で
    表される繰り返し構造単位90モル%、及び、式(7)
    〔化7〕 【化7】 で表される繰り返し構造単位10モル%を含むことを特
    徴とする請求項1記載の熱定着資材用フィルム。
  6. 【請求項6】 無機フィラーが、平均粒径が0.1〜1
    0μmの球状無機フィラー、アスペクト比が5〜100
    の針状無機フィラー及び最長辺の長さが0.1〜10μ
    mの板状無機フィラーから選ばれた少なくとも1種の無
    機フィラーであることを特徴とする請求項1記載の熱定
    着資材用フィルム。
  7. 【請求項7】 機械方向または機械方向と直角をなす方
    向における熱定着資材用フィルムの、(1)25〜25
    0℃における線膨張係数が1×10-5〜4×10-5
    ℃、(2)200℃における弾性率が0.1〜10GP
    a、(3)引裂伝播抵抗が200〜2000g/mmで
    あることを特徴とする請求項1〜6記載の熱定着資材用
    フィルム。
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