JPH1060533A - 磁気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents
磁気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法Info
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- JPH1060533A JPH1060533A JP8213726A JP21372696A JPH1060533A JP H1060533 A JPH1060533 A JP H1060533A JP 8213726 A JP8213726 A JP 8213726A JP 21372696 A JP21372696 A JP 21372696A JP H1060533 A JPH1060533 A JP H1060533A
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Abstract
が良好であり、かつ欠陥のない均一で密着性の優れたフ
ォルステライト質絶縁被膜を有する方向性けい素鋼板を
安定して得る。 【解決手段】 脱炭焼鈍前の鋼板表面に脱珪層を形成さ
せ、この脱珪層につき板厚中心部のSi濃度に対するSi濃
度の比を、最終冷延板の状態で鋼板表面から厚み方向1
μm までの領域では0.90以下に、かつ該Si濃度の比が0.
98以下である領域を表面から厚み方向5μm までに調整
する。かつ、脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程
における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱
過程よりも低い値で行う。
Description
製造方法に関し、特に最終冷延前の焼鈍と一次再結晶焼
鈍工程の両者を工夫することによって、磁気特性及びフ
ォルステライト質絶縁被膜特性を改善しようとするもの
である。
主に変圧器あるいは回転器等の鉄心材料として使用され
るもので、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損及び磁
気歪が小さいことが要求される。近年のエネルギー事情
の悪化に伴い、磁気特性に優れた方向性けい素鋼板のニ
ーズはますます高まっている。磁気特性に優れた方向性
けい素鋼板を得るには、{110}〈001〉方位、い
わゆるゴス方位に高度に集積した二次結晶組織を得るこ
とが必要である。
結晶組織を得べく、方向性けい素鋼板は一般に、インヒ
ビターを含む方向性けい素鋼スラブを加熱して熱間圧延
を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、1回ある
いは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終製
品板厚とし、一次再結晶焼鈍を行った後、鋼板にMgO等
を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、コイル状に巻取
り、高温仕上げ焼鈍を行って製造される。かように複雑
な方向性けい素鋼板の製造工程において、製品品質に大
きな影響を及ぼす重要なポイントはいくつかあるが、そ
の中のひとつに一次再結晶焼鈍工程があげられる。
の調整により雰囲気酸化性を制御された湿水素雰囲気ガ
ス中において、700 〜900 ℃の温度範囲で一定時間の均
熱処理を行うことにより実施される。このとき、鋼板内
部から鋼板表面に拡散してきたCが、鋼板表面において
H2O と反応してCOガスとなり、鋼板からCが除去され
る。このときの反応は式1のとおりである。 C+H2O → CO+H2 (式1)
は脱炭焼鈍とも呼ばれる。上記の反応式に従って脱炭反
応が起こるのと同時に、方向性けい素鋼板に含有される
SiがH2O により酸化されて、主としてSiO2及びFe2SiO4
からなるサブスケールが形成される。このときの反応は
式2,3のとおりである。 Si+2H2O → SiO2+2H2 (式2) Si+2Fe +4H2O → Fe2SiO4 +4H2 (式3) これらの反応のなかでも、式2の反応は極めて低い露点
から進行するため、通常の工業用ガスを使用する場合に
はサブスケールの生成は避けられない。
再結晶焼鈍においてサブスケールの生成は不可避的に起
こる現象である。このサブスケールを巧妙に利用したの
が製品の鋼板表面に被成させたフォルステライト質絶縁
被膜である。このフォルステライト質絶縁被膜は一般に
以下のような過程によって形成される。
けい素鋼板の最終冷延板に、先に述べたとおりの一次再
結晶焼鈍を行う。すなわち湿水素中で700 ℃から900 ℃
の温度で連続焼鈍を行って、冷間圧延後の組織を、最終
仕上げ焼鈍において適正な二次再結晶が起こるように一
次再結晶させると同時に、二次再結晶を完全に行わせる
とともに製品の磁気特性の時効劣化を防止するため、鋼
中に0.01〜0.10%程度含まれる炭素を、0.003 %以下ま
で脱炭する。さらに、これと同時に、鋼中Siの酸化によ
って、SiO2を主成分とするサブスケールを鋼板表層に生
成させる。このサブスケールがフォルステライト質絶縁
被膜の原材料の一つとなる。
鋼板上にに塗布し、コイル状に巻取って、還元あるいは
非酸化性雰囲気中において1000℃から1200℃程度の温度
で、高温仕上げ焼鈍を行うことにより、式4で示される
固相反応によってフォルステライト質絶縁被膜を形成さ
せるのである。 2MgO+SiO2 → Mg2SiO4 (式4)
程度の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜であ
り、上述のごとく、一次再結晶焼鈍において鋼板表層に
生成させた、SiO2を主成分とするサブスケールを一方の
原料物質として、その鋼板上に生成するもであるから、
この酸化物の種類、量、分布等は、フォルステライトの
核生成や粒成長挙動に影響を及ぼし、さらにはフォルス
テライト結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及
ぼし、したがって仕上げ焼鈍後の被膜品質にも多大な影
響を及ぼすのである。
する焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に
塗布されるため、乾燥させた後も物理的に吸着したH2O
を保有する他、一部が水和してMg(OH)2 に変化している
ため、仕上げ焼鈍中の800 ℃付近までは少量ながらH2O
を放出し続ける。このH2O により、仕上げ焼鈍中に鋼板
表面は酸化される。この酸化もフォルステライト質絶縁
被膜の生成挙動に影響を及ぼすとともに、インヒビター
の酸化や分解につながることから、この酸化が多いと磁
気特性の劣化する原因となる。このMgO が放出するH2O
による酸化の受け易さも、一次再結晶焼鈍で形成された
サブスケールの物性に大きく影響される。
次再結晶焼鈍において生成するサブスケール品質を適正
に制御することは、フォルステライト質絶縁被膜の品質
劣化及び磁気特性の劣化を防止するという観点から重要
な技術課題である。
ては、例えば、特公昭57−1575号公報に開示され
ているように、雰囲気の酸化度を脱炭の前半では0.15以
上とし、鋼板では0.75以下でかつ前半よりも低くする方
法、あるいは特開平6−336616号公報に開示され
ているように、均熱過程における水素分圧に対する水蒸
気分圧の比を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値に設
定する方法などが知られている。
方法は一定の効果は認められるものの、必ずしも十分な
ものではなく、ストリップの幅方向あるいは長手方向で
磁気特性やフォルステライト質絶縁被膜の密着性、厚
み、均一性が劣化する場合があり、優れた品質を有する
製品の安定生産、更なる歩留まり向上のためには、いま
だ改善の余地を残すものであった。
ようとするものであり、コイルの全幅及び全長にわたっ
て、磁気特性が良好であり、かつ欠陥のない均一で密着
性の優れたフォルステライト質絶縁被膜を有する方向性
けい素鋼板を安定して得るための製造方法について提案
することを目的とする。
の表面状態が、一次再結晶焼鈍で生成するサブスケール
物性に及ぼす影響を詳細に調査した。その結果、最終冷
延板の板厚方向に形成されている脱珪層のプロファイル
が、コイル内及びコイル間で大きく変動していること、
この脱珪層のプロファイルが適正な範囲であった場合
に、特に特開平6−336616号公報に開示されてい
る方法の効果が十分に得られること、及び中間焼鈍雰囲
気と中間焼鈍に引き続く酸洗条件、あるいは熱延板焼鈍
条件と熱延板焼鈍に引き続く酸洗条件が脱珪層のプロフ
ァイルに大きな影響を及ぼすことを解明し、この発明を
完成するに至った。
スラブを熱間圧延した後、熱延板焼鈍を施し又は省略し
て1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、
次いで脱炭焼鈍を施して鋼板表面にサブスケールを形成
させ、更にMgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布してから
最終仕上焼鈍を施して鋼板表面にフォルステライト質被
膜を形成させる一連の工程からなる方向性けい素鋼板の
製造方法において、脱炭焼鈍前の鋼板表面に脱珪層を形
成させ、この脱珪層につき板厚中心部のSi濃度に対する
Si濃度の比を、最終冷延板の状態で鋼板表面から厚み方
向1μm までの領域では0.90以下に、かつ該Si濃度の比
が0.98以下である領域を表面から厚み方向5μm までに
調整すること、及び上記脱炭焼鈍を、その均熱過程にお
ける水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.70未満で、か
つ昇温過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を
前記の均熱過程よりも低い値で行うことを特徴とする磁
気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方
法である(第1発明)。また、この発明は、第1発明に
おいて、脱珪層を、脱炭焼鈍より前に施す焼鈍時に、水
素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.20以上1.00以下の範
囲に制御することにより形成することを特徴とする、磁
気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方
法である(第2発明)。
向に形成されている脱珪層プロァイルが、一次再結晶焼
鈍で生成するサブスケール物性に及ぼす影響を詳細に調
査した。以下に、この実験結果について述べる。C含有
量が0.04wt%であり、インヒビターとしてMnSe及びSbを
含む方向性けい素鋼素材を熱間圧延した後、900 ℃で熱
延板焼鈍を行い、次いで中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延
によって、板厚0.23mmの最終冷延板とした。このとき、
中間焼鈍の時間と中間焼鈍後の酸洗時間を種々に変更す
ることにより、図1に示される板厚方向の脱珪層プロフ
ァイルを形成した。なお、熱延板焼鈍時の雰囲気はP(H2
O)/P(H2) =0.70であり、中間焼鈍時の雰囲気は、P(H2
O)/P(H2) =0.50である。形成された脱珪層について、
最終冷延前の試料断面のSi分布をEPMAマッピングによっ
て調べ、これを最終冷延板厚でのプロファイルに換算し
て評価した。次いで、これらの冷延板を脱脂して表面を
清浄化した後、湿水素中にて830 ℃に2分間保持する一
次再結晶焼鈍を施した。このとき、昇温過程及び均熱過
程の雰囲気酸化性を表1に示す値に制御した。
析によって求めた。また、60℃の5%HCl 中で60秒の酸
洗による一次再結晶焼鈍後試料の溶解量(以下、酸洗減
量と称する)を求めた。これらの結果を表1に示す。こ
の酸素目付量はサブスケールの量的指標として重要であ
り、これが不足するとフォルステライト質絶縁被膜の密
着性及び外観均一性が劣化し、磁気特性の劣化も併せて
生じる。また、酸洗減量はサブスケールの質的指標とし
て重要であり、この値が大きい場合には、表面の化学的
活性度が高いため仕上げ焼鈍中の追加酸化を受け易く、
フォルステライト質絶縁被膜の品質や磁気特性の劣化を
生じる。
珪層を有する試料をこの発明に従う条件にて一次再結晶
焼鈍したものであり、C含有量は十分に低く、酸素目付
量も確保されており、また酸洗減量も低い値を示してい
る。これに対して、No.3〜No.6は一次再結晶焼鈍条件は
この発明の範囲であるが、脱珪層がこの発明の範囲外の
場合である。このうち、No.4のように脱珪層の大きさが
過大である場合には、酸素目付量が不十分であり、酸洗
減量も高めとなっている。そして、No.3, No.5, No.6の
ように脱珪層の大きさが過小である場合には、酸素目付
量が若干高めであり、また酸洗減量が増大している。次
に、No.7〜No.12 は一次再結晶焼鈍時における昇温過程
雰囲気と均熱過程雰囲気とを同一にした場合であり、C
含有量が増大し、酸素目付量が不十分となり、酸洗減量
が高めとなっている。そして、No.13 〜No.18 は均熱過
程のP(H2O)/P(H2) が0.70を超えた場合であり、酸洗減
量が著しく増大している。
態で、表面から板厚方向に1μm の範囲において、板厚
中心部でのSi濃度に対するSi濃度の比を0.90以下とし、
かつ板厚中心部でのSi濃度に対するSi濃度の比が0.98以
下となる板厚方向距離を表面から5μm 以下の範囲とす
る脱珪層を形成させ、かつ均熱過程のP(H2O)/P(H2)を
0.70未満とし昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそ
れよりも低下することによって、良好な物性を有するサ
ブスケールが得られることがわかる。
昇温過程の雰囲気酸化性を均熱過程のそれよりも低下さ
せることによってサブスケール品質が向上するメカニズ
ムはまだ明らかでないが、昇温過程でのサブスケール形
成を均熱過程よりも緩やかに進行させることにより、酸
化初期に生成する酸化物の形態や物性が変化し、その後
の均熱過程における酸素の鋼中への拡散に影響を及ぼす
ためと考えられる。また、一次再結晶焼鈍時の均熱過程
のP(H2O)/P(H2) が0.70以上になるとサブスケール品質
が劣化するのは、図2に示すけい素鋼板の表面に生成す
る酸化物から考えると、FeO の生成によるものと思われ
る。このFeO は酸素の内部拡散ではなく、Feの外部拡散
によって生成する酸化物であり、このような酸化物が表
面にいったん生成すると被膜の形成過程に重大な悪影響
を及ぼすものと思われる。
ール品質が劣化するのは、表面付近でのSi濃度が高すぎ
るため昇温過程でのサブスケール生成が過剰に進行する
結果、酸化初期に生成する酸化物の形態が均熱過程にお
ける酸化の鋼中への拡散に好影響を及ぼす状態にはなら
ないためと考えられる。逆に、脱珪層が過大である場合
にサブスケール品質が劣化するのは、表面近傍でのSi濃
度が低すぎるためサブスケール形成が遅滞するためと考
えられる。
の最終冷延前の焼鈍の条件についても検討した。C含有
量が0.04wt%であり、インヒビターとしてMnSe及びSbを
含むけい素鋼冷延板(板厚0.6 mm)を脱脂して表面を清
浄化した後、湿水素中にて900 ℃に1分間保持する中間
焼鈍を行った。このとき水素濃度と露点との調節によっ
てP(H2O)/P(H2) を0.10から1.20の範囲で変化させた。
その後、外部スケールの生成した試料についてはHCl 酸
洗を施して外部スケールだけを除去した。このときの板
厚方向Si分布をEPMAマッピングによって調べ、最終冷延
板厚0.23mmに換算した脱珪層プロファイルを図3に示
す。図3によれば、中間焼鈍雰囲気がP(H2O)/P(H2)0.2
0未満になると、脱珪層の形成が抑制されている。ま
た、中間焼鈍雰囲気がP(H2O)/P(H2)1.00 を超えると、
表面近傍でのSi濃度は大きく低下するが脱珪層の深さが
小さくなっている。
で、表面から板厚方向1μm の範囲において、板厚中心
部でのSi濃度に対するSi濃度の比を0.90以下とし、かつ
板厚中心でのSi濃度に対するSi濃度の比が0.98以下にな
る板厚方向の距離を5μm 以下とする脱珪層を形成させ
るためには、中間焼鈍を、水素分圧に対する水蒸気分圧
の比が0.20以上1.00以下の範囲で行えばよいことがわか
る。なお、中間焼鈍後の酸洗は外部スケールの除去にと
どめることが肝要であり、過剰な酸洗を行った場合に
は、適正に形成された脱珪層が除去されてしまうので注
意が必要である。この他に脱珪層プロファイルを制御す
る方法として中間焼鈍後に研削する方法があるが、酸洗
の場合と同様に、過剰な研削を行った場合には、適正に
形成された脱珪層が除去されてしまうので注意が必要で
ある。また、中間焼鈍の時間が長すぎる場合には、雰囲
気をP(H2O)/P(H2) で0.20以上1.00以下の範囲に設定し
ても脱珪層の大きさが過大になり過ぎてサブスケール物
性に悪影響を及ぼすうえに、仕上げ焼鈍におけるインヒ
ビターの一次粒成長抑制力の劣化が生じることがあるた
め、中間焼鈍の均熱時間は30秒〜120 秒程度とするのが
適当である。
ズムはまだ十分に明らかになってはいないが、雰囲気の
P(H2O)/P(H2) が0.2 未満の場合に脱珪層の生成が抑制
されるのは、雰囲気酸化性が低すぎて中間焼鈍での内部
酸化の進行が遅滞するためと推定される。逆に、雰囲気
のP(H2O)/P(H2) が1.00を超える場合に表面のSi濃度が
大きく低下するが脱珪層の深さが小さくなるのは、外部
スケールの生成が増大した結果、表面近傍のFe消費量が
多くなってSi濃度が高くなるためと推定される。
表面に形成させるには、上述した中間焼鈍での雰囲気制
御に限られず、熱延板焼鈍の際に、雰囲気制御すること
によっても可能である。具体的には、冷延1回法におい
て水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.20以上・1.00以
下の範囲で熱延板焼鈍を行うことによって所定の脱珪層
プロファイルを得ることができる。さらに、熱延板焼鈍
及び中間焼鈍の双方で雰囲気制御を行うことも可能であ
るが、この場合は、所定の脱珪層を得るために、熱延板
焼鈍雰囲気をP(H2O)/P(H2) で0.6 〜1.0 、中間焼鈍雰
囲気をP(H2O)/P(H2) で0.2 〜0.7 となるように雰囲気
を調整することが好ましい。
て、MnSeとSbを含有する鋼種で示したが、この発明はこ
れに限らずAlN-MnSe系、AlN-MnS 系、MnS 系等、他のイ
ンヒビターを含有する方向性けい素鋼のいずれに対して
も適用できる。
素材の好適成分組成について説明する。Cは、熱間圧延
時のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行うために
有効であるが、多すぎると脱炭が困難となるため、0.02
〜0.10wt%の範囲が好適である。Siは、少な過ぎると鋼
板の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増大するために
良好な鉄損特性が得られず、多過ぎると冷間圧延が困難
となるので、2.5 〜4.5wt%程度の範囲が好適である。M
nは、インヒビター成分として必要であるが、過剰にな
るとインヒビターの粒子径が粗大化して粒成長抑制力が
低下するため、0.03〜0.30wt%の範囲が好適である。Se
及び/又はSはインヒビター西部として必要であるが、
過剰になると仕上げ焼鈍での純化が困難となるため、合
計で0.01〜0.05wt%の範囲が好適である。Al及びNはAl
N インヒビターを形成するために必要である。Alは少な
過ぎると磁束密度が低下し、多過ぎると二次再結晶が安
定しなくなるため、酸可溶性Alとして0.01〜0.05wt%の
範囲が好適である。一方、Nは少な過ぎるとAlN インヒ
ビターの量が不足して磁束密度が低下し、多過ぎるとス
ラブ加熱中のふくれに起因する表面欠陥が製品に多発す
るため、0.004 〜0.012 wt%の範囲が好適である。
やSn等の添加が有効である。これらは、添加量が少な過
ぎると磁気特性の改善効果が少なく、多過ぎると脆性の
低下やフォルステライト質絶縁被膜への悪影響が生じる
ため、0.01〜0.03wt%の範囲が好適である。また、フォ
ルステライト質絶縁被膜への悪影響を減ずるためには、
0.03〜0.20wt%のCuを添加したうえで、この発明に従っ
て一次再結晶焼鈍を行うことが有効である。また、熱間
圧延時の表面脆化に起因する表面欠陥を防止するため
に、0.10wt%以下のMoを添加することも有効である。
5 wt%, Se:0.024 wt%, sol.Al:0.024 wt%, N:0.
008 wt%及びSb:0.025 wt%を含有する方向性けい素鋼
スラブを板厚2.3 mmに熱間圧延した後、1000℃で熱延板
焼鈍を行い、1100℃での中間焼鈍をはらむ2回の冷間圧
延によって0.23mmの最終冷延板厚とした。このとき中間
焼鈍時間と中間焼鈍後の酸洗時間の制御によって最終冷
延板の状態での脱珪層を図4のように変化させた。これ
らの冷延板をアルカリ脱脂して表面を清浄化した後、湿
水素雰囲気中にて、840 ℃で120 秒の一次再結晶焼鈍を
行った。このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化
性をそれぞれ独立に表2に示す値に制御した。次いで、
5%のTiO2を含有するMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして
塗布、乾燥後、H2雰囲気中での1200℃で10時間の二次再
結晶、純化焼鈍を行った。この後、リン酸マグネシウム
とコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施し
た。
A/m における磁束密度B8 値、1.7T, 50Hz における鉄
損W17/50値、被膜の曲げ密着性、及び被膜外観の均一性
について調査した。被膜の曲げ密着性は、5mm間隔の種
々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜の剥離が
生じない最小径で評価した。また、一次再結晶後の鋼板
のC含有量、酸素目付量、酸洗減量についても分析を行
った。これらの結果を表2に併記する。
は酸素目付量が不十分であり、その結果、磁気特性、被
膜特性が劣っている。脱珪層が過小であるNo.8では、酸
洗減量が高く、磁気特性、被膜特性か劣っている。均熱
過程のP(H2O)/P(H2) が0.70を超えたNo.9、No.10 は、
酸洗減量が著しく高く、磁気特性、被膜特性が劣ってい
る。また、昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれ
よりも低くしなかったNo.11 、No.12 は脱炭と酸素目付
量が不十分であり、かつ磁気特性、被膜特性も劣ってい
る。これらに対して、この発明に従うNo.1〜No.6は、脱
炭、酸素目付量、酸洗減量が良好なレベルであり、製品
の磁気特性、被膜特性ともに優れている。
%, Mn:0.075 wt%, Se:0.024 wt%, sol.Al:0.024
wt%, N:0.008 wt%及びSb:0.025 wt%を含有する方
向性けい素鋼スラブを板厚2.7 mmに熱間圧延した後、10
00℃で熱延板焼鈍を行い、次いで湿水素中で1120℃での
中間焼鈍及びそれに引き続く外部スケール除去の目的で
行う酸洗をはさむ2回の冷間圧延によって0.35mmの最終
冷延板厚とした。このとき中間焼鈍の雰囲気酸化性を表
3に示す値に制御した。これらの冷延板をアルカリ脱脂
して表面を清浄化した後、湿水素雰囲気中にて、840 ℃
で150 秒の一次再結晶焼鈍を行った。このとき、昇温過
程及び均熱過程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表3に
示す値に制御した。次いで、5%のTiO2を含有するMgO
焼鈍分離剤をスラリーとして塗布、乾燥後、H2雰囲気中
での1200℃で10時間の二次再結晶、純化焼鈍を行った。
この後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成
分とするコーティングを施した。このようにして得られ
た製品について、実施例1と同様の調査を行った結果を
表3に示す。
P(H2) が0.20未満であるNo.7、及びP(H2O)/P(H2) が1.
00を超えているNo.8では酸素目付量が不十分であり、そ
の結果、磁気特性、被膜特性が劣っている。均熱過程の
P(H2O)/P(H2) が0.70を超えたNo.9、No.10 は、酸洗減
量が著しく高く、磁気特性、被膜特性が劣っている。ま
た、昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれよりも
低くしなかったNo.11、No.12 は脱炭と酸素目付量が不
十分であり、かつ磁気特性、被膜特性も劣っている。こ
れらに対して、この発明に従うNo.1〜No.6は、脱炭、酸
素目付量、酸洗減量が良好なレベルであり、製品の磁気
特性、被膜特性ともに優れている。
%, Mn:0.073 wt%, Se:0.023 wt%及びSb:0.026 wt
%を含有する方向性けい素鋼スラブを板厚2.0 mmに熱間
圧延した後、950℃で熱延板焼鈍を行い、次いで湿水素
中で970 ℃での中間焼鈍及びそれに引き続く外部スケー
ル除去の目的で行う酸洗をはさむ2回の冷間圧延によっ
て0.23mmの最終冷延板厚とした。このとき中間焼鈍の雰
囲気酸化性を表4に示す値に制御した。これらの冷延板
をアルカリ脱脂して表面を清浄化したあと、湿水素雰囲
気中にて、820 ℃で120 秒の一次再結晶焼鈍を行った。
このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化性をそれ
ぞれ独立に表4に示す値に制御した。次いで、1%のTi
O2及び2%のSrSO4 を含有するMgO 焼鈍分離剤をスラリ
ーとして塗布、乾燥後、H2雰囲気中での1150℃で8時間
の二次再結晶、純化焼鈍を行った。この後、リン酸マグ
ネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティン
グを施した。このようにして得られた製品について、実
施例1と同様の調査を行った結果を表4に示す。
P(H2) が0.20未満であるNo.5、及びP(H2O)/P(H2) が1.
00を超えているNo.6では酸素目付量が不十分であり、そ
の結果、磁気特性、被膜特性が劣っている。均熱過程の
P(H2O)/P(H2) が0.70を超えたNo.7では、酸洗減量が著
しく高く、磁気特性、被膜特性が劣っている。また、昇
温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれよりも低くし
なかったNo.8では、脱炭と酸素目付量が不十分であり、
且つ磁気特性、被膜特性も劣っている。これらに対し
て、この発明例であるNo.1〜No.4は、脱炭、酸素目付
量、酸洗減量が良好なレベルであり、製品の磁気特性、
被膜特性ともに優れている。
磁気特性も良好な方向性けい素鋼板の安定して生産する
ことができる。
すグラフである。
の平衡状態図である。
ときの、最終冷延板の状態での脱珪層プロファイルを示
すグラフである。
脱珪層プロファイルを示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 方向性けい素鋼用スラブを熱間圧延した
後、熱延板焼鈍を施し又は省略して1回又は中間焼鈍を
挟む2回以上の冷間圧延を行い、次いで脱炭焼鈍を施し
て鋼板表面にサブスケールを形成させ、更にMgO を主体
とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施して
鋼板表面にフォルステライト質被膜を形成させる一連の
工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法において、 脱炭焼鈍前の鋼板表面に脱珪層を形成させ、この脱珪層
につき板厚中心部のSi濃度に対するSi濃度の比を、最終
冷延板の状態で鋼板表面から厚み方向1μm までの領域
では0.90以下に、かつ該Si濃度の比が0.98以下である領
域を表面から厚み方向5μm までに調整すること、及び
上記脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分圧に対す
る水蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程における
水素分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱過程より
も低い値で行うことを特徴とする磁気特性及び被膜特性
に優れる方向性けい素鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 脱珪層を、脱炭焼鈍より前に施す焼鈍時
に、水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.20以上1.00以
下の範囲に制御することにより形成することを特徴とす
る、請求項1記載の磁気特性及び被膜特性に優れる方向
性けい素鋼板の製造方法。
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---|---|---|---|
JP21372696A JP4029432B2 (ja) | 1996-08-13 | 1996-08-13 | 方向性けい素鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1060533A true JPH1060533A (ja) | 1998-03-03 |
JP4029432B2 JP4029432B2 (ja) | 2008-01-09 |
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Family Applications (1)
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JP21372696A Expired - Fee Related JP4029432B2 (ja) | 1996-08-13 | 1996-08-13 | 方向性けい素鋼板の製造方法 |
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JP (1) | JP4029432B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001200317A (ja) * | 2000-01-21 | 2001-07-24 | Kawasaki Steel Corp | 良好な被膜を有する低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法 |
JP2011068968A (ja) * | 2009-09-28 | 2011-04-07 | Jfe Steel Corp | 方向性電磁鋼板の製造方法 |
JP2013032583A (ja) * | 2011-06-27 | 2013-02-14 | Jfe Steel Corp | 低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法 |
WO2023068236A1 (ja) * | 2021-10-20 | 2023-04-27 | Jfeスチール株式会社 | 方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
-
1996
- 1996-08-13 JP JP21372696A patent/JP4029432B2/ja not_active Expired - Fee Related
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