JPH08143964A - 方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH08143964A
JPH08143964A JP29267694A JP29267694A JPH08143964A JP H08143964 A JPH08143964 A JP H08143964A JP 29267694 A JP29267694 A JP 29267694A JP 29267694 A JP29267694 A JP 29267694A JP H08143964 A JPH08143964 A JP H08143964A
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annealing
steel sheet
rolling
silicon steel
grain
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JP29267694A
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Osamu Kondo
修 近藤
Takashi Suzuki
隆史 鈴木
Hirotake Ishitobi
宏威 石飛
Atsuto Honda
厚人 本田
Takashi Obara
隆史 小原
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 方向性けい素鋼板を製造するに際し、 i) 冷間圧延を、ロール径が 300〜400 mmの圧延ロール
を用いたタンデム圧延で行う。 ii) 脱炭焼鈍の昇温過程および均熱過程における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比P(H2O)/P(H2)を調整し、均
熱過程におけるP(H2O)/P(H2)を 0.7未満とする一方、
昇温過程におけるP(H2O)/P(H2)を均熱過程のそれより
も低く設定する。 【効果】 従来、優れた磁気特性を得ることが難しいと
された、ロール径が300mm以上のタンデム圧延による1
回冷延法の適用が可能となり、その結果、優れた磁気特
性を有する方向性けい素鋼板の効率良い製造が可能とな
った。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、方向性けい素鋼板の
製造方法に関し、とくに冷間圧延を、圧延スタンドを2
〜5基備えるタンデム圧延機の活用下に行うと共に、脱
炭焼鈍に工夫を加えることによって、歩留りおよび品質
の向上のみならず、生産性の向上も併せて実現しようと
するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は軟磁性材料として、
主に変圧器または回転機等の鉄心材料として使用される
もので、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損および磁
気歪が小さいことが要求される。かかる電磁特性の優れ
た鋼板を得るべく、従来から製造工程の要所要所で様々
な工夫が加えられているが、電磁特性の改善には、冷延
工程とそれに続く脱炭焼鈍工程がとりわけ重要とされて
いる。というのは、かような工程において磁気特性に最
も好ましい結晶方位である{011}<100>方位の
結晶粒を、優先的に生成、成長させ得るからである。
【0003】また、方向性けい素鋼板の表面には、特殊
な場合を除いて、フォルステライト(Mg2SiO4)質絶縁被
膜が形成されているのが普通である。この被膜は表面の
電気的絶縁だけでなく、その低熱膨張性を利用して引張
り応力を鋼板に付与することにより、鉄損さらには磁気
歪の改善にも寄与する。かかるフォルステライト質絶縁
被膜は仕上げ焼鈍において形成されるが、その形成挙動
は鋼中のMnS,MnSe,AlN等のインヒビターの挙動に影
響するため、優れた磁性を得るための必須の過程である
2次再結晶そのものにも影響を及ぼす。さらに形成した
被膜は、2次再結晶が完了して不要となったインヒビタ
ー成分を被膜中に吸い上げ、鋼を純化することによって
も、鋼板の磁気特性の十分な発現を助けている。従っ
て、この被膜形成過程を制御して被膜を均一に形成する
ことは、方向性けい素鋼板の製品品質を左右する重要な
ポイントの一つである。
【0004】すなわち、形成した被膜は、当然のことな
がら均一で欠陥がなく、しかも剪断、打抜きおよび曲げ
加工等に耐え得る密着性の優れたものでなければならな
い。また、平滑で鉄心として積層したときに、高い占積
率を示すものでなければならない。
【0005】方向性けい素鋼板にフォルステライト質絶
縁被膜を形成させるには、所望の最終厚みに冷間圧延し
たのち、湿水素中にて 700〜900 ℃の温度で連続焼鈍を
行って、冷間圧延後の組織を、適正な2次再結晶が起こ
るような1次再結晶集合組織にすると同時に、2次再結
晶を完全に行わせて磁気特性を向上させるため、鋼板に
0.01〜0.10wt%程度含まれる炭素を 0.003wt%程度以下
まで脱炭する。
【0006】さらに、これと同時に酸化によって、SiO2
を主成分とするサブスケールを鋼板表層に生成させる。
その後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を鋼板上に塗布
し、コイル状に巻取って還元または非酸化性雰囲気中に
て1000℃から1200℃程度の温度で、高温仕上げ焼鈍を施
すことにより、以下の式で示される固相反応によってフ
ォルステライト質絶縁被膜を形成させる。 2MgO + SiO2 → Mg2SiO4
【0007】このフォルステライト質絶縁被膜は1μm
前後の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜であ
り、上述の如く、脱炭焼鈍において、鋼板表層に生成し
た酸化物を一方の原料物質として、その鋼板上に生成す
るものであるから、この酸化物の種類、量、分布等は、
フォルステライトの核生成や粒成長挙動に関与するとと
もに被膜結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及
ぼし、従って仕上げ焼鈍後の被膜品質にも大きな影響を
及ぼす。
【0008】また、他方の原料物質である MgOを主体と
する焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に
塗布されるため、乾燥された後も物理的に吸着した H2O
を保有する他、一部が水和してMg(OH)2 に変化している
ため、仕上げ焼鈍中に 800℃あたりまで、少量ながらH2
O を放出し続ける。このため鋼板表面はこの H2Oによ
り、いわゆる追加酸化を受ける。この酸化もフォルステ
ライトの生成挙動に影響を及ぼすと共にインヒビターの
酸化や分解につながることから、これが多いと磁気特性
が劣化する要因となる。この追加酸化の受け易さも、脱
炭焼鈍で生じた鋼板表層の酸化物層の物性に大きく左右
される。
【0009】とくに、AlNをインヒビターとする方向性
けい素鋼板においては、この酸化物層の物性が、仕上げ
焼鈍中の脱N挙動あるいは焼鈍雰囲気からのNの侵入挙
動に影響を及ぼして、磁気特性にも影響を与える。以
上、述べたように、脱炭焼鈍における鋼板表層の状態を
制御することは、方向性けい素鋼板の製造における重要
なポイントの一つである。
【0010】従来、方向性けい素鋼板の脱炭焼鈍に関し
ては、たとえば特開昭59−185725号公報に開示されてい
るような、焼鈍雰囲気の露点を50〜75℃に制御する方
法、特開昭54−160514号公報に示されているような、雰
囲気の酸化度を、脱炭の前半では0.15以上とし、後半で
は0.75以下でかつ前半より低くする方法等が知られてい
る。
【0011】しかしながら、このような脱炭焼鈍を採用
したとしても、ロール径が 300mm以上の通常のタンデム
圧延による1回冷延法によっては、十分に満足のいく磁
気特性を有する方向性けい素鋼を製造することはできな
かった。そのため、特開昭49-34417号公報に提案されて
いるようにロール径が 300mm以下の小径ロールを使用す
るか、または特開平4−120216号公報に提案されている
ように通常のタンデム圧延の後に時効処理を施すなどの
処置が必要であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たように、圧延ロールが小径ロールに限定されたり、圧
延後に別途、時効処理を必要とするなどは、生産性の面
での不利が著しい。この発明は、上記の問題を有利に解
決するもので、ロール径が 300mm以上の比較的大径の圧
延ロールを用いたタンデム圧延による1回冷延法であっ
ても、磁気特性の劣化を招くことがなく、むしろ効果的
に向上させることができ、従って磁気特性および生産性
の両面で有用な方向性けい素鋼板の有利な製造方法を提
案することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】以下、この発明の解明経
緯について説明する。さて発明者らは、先に、特願平5
−127039号明細書において、脱炭焼鈍の昇温過程および
均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比P(H
2O)/P(H2)を調整することによる磁気特性の改善技術に
ついて提案した。この技術は、均熱過程におけるP(H
2O)/P(H2)を 0.7未満とする一方、昇温過程におけるP
(H2O)/P(H2)を均熱過程のそれよりも低く設定すること
によって、フォルステライト質絶縁被膜の被膜特性を改
善し、もって磁気特性の向上を図ったものである。
【0014】そこで発明者らは、かようなP(H2O)/P(H
2)比の調整技術すなわち雰囲気酸化性の調整技術の、タ
ンデム圧延による1回冷延法に対する適用の可否につき
検討し、焼鈍処理としてかような雰囲気酸化性の調整技
術を採用してみたところ、所期した目的の達成に関し、
望外の成果が得られたのである。この発明は、上記の知
見に立脚するものである。
【0015】すなわち、この発明は、AlおよびNを主イ
ンヒビター成分として含有する方向性けい素鋼用スラブ
を、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍後、1回の冷間圧延
により最終板厚としたのち、脱炭焼鈍を施し、ついで焼
鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の
工程によって方向性けい素鋼板を製造するに際し、 i) 冷間圧延を、ロール径が 300〜400 mmの圧延ロール
を用いたタンデム圧延で行うこと、 ii) 脱炭焼鈍の昇温過程および均熱過程における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比P(H2O)/P(H2)を調整し、均
熱過程におけるP(H2O)/P(H2)を 0.7未満とする一方、
昇温過程におけるP(H2O)/P(H2)を均熱過程のそれより
も低く設定すること を特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法である。
【0016】以下、この発明を具体的に説明する。ま
ず、P(H2O)/P(H2)比の調整による磁気特性改善技術に
ついて説明する。さて発明者らは、ストリップにおける
フォルステライト被膜の品質ばらつきの原因を詳細に調
査した結果、脱炭焼鈍において鋼板表層に生成するサブ
スケールの量と質のばらつきが大きく影響していること
を見出した。このことは、ストリップの幅方向あるいは
長手方向において、サブスケール形成反応が、必ずしも
均一には起こっていないことを意味する。さらに、この
原因としては、特に脱炭焼鈍の昇温過程における雰囲気
酸化性の変動が関係していることも判明した。
【0017】そこで、脱炭焼鈍における雰囲気酸化性す
なわち水素分圧に対する水蒸気分圧の比P(H2O)/P(H2)
が、フォルステライト被膜に及ぼす影響について調査す
るために、以下の実験を行った。インヒビターとしてMn
SeおよびSbを含む 3.3wt%けい素鋼板(板厚0.23mm)
を、湿水素雰囲気中で 840℃, 2分間脱炭焼鈍した。こ
のとき昇温過程および均熱過程の雰囲気酸化性を、露点
とH2ガス濃度の調整によってP(H2O)/P(H2):0.2〜0.8
の範囲に、それぞれ別々に制御した。ついで、鋼板に
MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、 850℃,
50時間の2次再結晶焼鈍と、引続くH2雰囲気中での120
0℃, 5時間の純化焼鈍を行った。かくして得られたフ
ォルステライト被膜の均一性について調べたところ、図
1に示す結果が得られた。
【0018】同図に示したように、均熱過程のP(H2O)/
P(H2)が 0.7未満でかつ昇温過程のP(H2O)/P(H2)が均
熱過程のそれよりも低いときに、光沢のある美麗な灰色
の均一な被膜が得られた。これに対し、均熱過程のP(H
2O)/P(H2)が 0.7以上では、昇温過程のP(H2O)/ P
(H2)を均熱過程のそれよりも低くしても、優れた特性の
被膜は得られなかった。
【0019】ここで、図2に示す、けい素鋼板の表面に
生成する酸化物の平衡状態図によると、P(H2O)/P
(H2):0.7 は明らかにFeO 生成域であり、このような条
件で形成するサブスケールは、保護性が悪くて仕上げ焼
鈍中の追加酸化が激しくなり、フォルステライト被膜の
劣化が生じるものと考えられる。なお、昇温過程の雰囲
気酸化性を低くすることによってフォルステライト被膜
の膜質が向上する理由は明らかではないが、昇温過程で
生成するサブスケールが均熱過程で生成するサブスケー
ルの保護性を高めるためと考えられる。
【0020】また、昇温過程における雰囲気酸化性の低
下は、脱炭および酸化を促進する効果をも有すること
が、次の実験によって明らかになった。すなわち、C:
0.045 wt%を含む0.23mm厚のけい素鋼板に、湿水素雰囲
気中で840 ℃, 2分間の脱炭焼鈍を施すに当たり、その
均熱過程の雰囲気のP(H2O)/P(H2)は0.55の一定とし、
昇温過程の雰囲気のP(H2O)/P(H2)を0.25〜0.7 の範囲
に調節し、得られた鋼板のC含有量および表面の酸素目
付量を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1から、昇温過程の雰囲気P(H2O)/P(H
2)を低下することによって、C含有量がより低くかつ酸
素目付量がより多くなる処理を実現できる。従って、操
業ラインにおける速度を高めることが可能であり、生産
性向上にも寄与するところが大きい。これは、昇温過程
のP(H2O)/P(H2)を低下することによって、均熱過程に
おける表面反応が促進されるためと考えられる。
【0023】そこで、発明者らは次に、上記したような
雰囲気酸化性の調整技術の、タンデム圧延による1回冷
延法への適用を試みた。すなわち、常法に従い得られた
けい素鋼用熱延板を、中間焼鈍や時効処理等を全く施さ
ず、タンデム圧延による1回の冷間圧延で処理し、つい
で雰囲気酸化性を調整した脱炭焼鈍を施した後、最終仕
上げ焼鈍を施して得た製品板の磁気特性について、種々
の視点から検討を加えた。その結果、上記した雰囲気酸
化性の調整技術に従い、脱炭焼鈍時のP(H2O)/P(H2)を
適正な範囲に制御すると、タンデム圧延におけるロール
径は、特開昭49−34417 号公報に示されている範囲より
も大径側で、磁気特性の改善に有利に寄与することが判
明した。そこで、さらに冷間圧延時のロール径および脱
炭焼鈍の雰囲気が磁気特性に及ぼす影響について詳細に
検討した。
【0024】C:0.065 wt%、Si:3.30wt%、Mn:0.07
5 wt%、Al:0.026 wt%、Se:0.025 wt%、Sb:0.026
wt%およびN:0.0085wt%を含有するけい素鋼用素材
を、電磁誘導加熱によりスラブ中心が1400℃となるスラ
ブ加熱処理を施したのち、熱間圧延により板厚:2.2 mm
の熱延板とし、1100℃, 1分の熱延板焼鈍後、急冷し、
ついで種々のロール径になるタンデム圧延機(4スタン
ド)を用いた1回冷延法によって0.35mmの最終板厚に仕
上げたのち、脱炭焼鈍を施した。この焼鈍は、従来法に
従い昇温過程および均熱過程ともP(H2O)/P(H2)=0.55
(一定)とした場合と、この発明に従い、昇温過程と均
熱過程で雰囲気酸化性を変化させ、昇温過程のP(H2O)/
P(H2)=0.36、均熱過程のP(H2O)/P(H2)=0.55とした
場合の2つの条件で実施した。その後、鋼板に MgOを主
成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、 850℃, 50時間
の2次再結晶焼鈍を施し、引き続き乾H2雰囲気中で1200
℃, 5時間の純化焼鈍を施した。得られた結果を図3に
比較して示す。
【0025】同図に示したように、この発明に従う脱炭
焼鈍を施した場合には、ロール径が300mm 以上であって
も 400mmまでであれば、B8 (磁界:800 A/m における
磁束密度)の値が1.92T以上という優れた磁気特性が得
られた。一方、従来法に従う脱炭焼鈍を施した場合は、
ロール径が 300mm以上になると磁気特性は著しく劣化
し、また 300mm未満の範囲においてもこの発明で達成で
きる磁気特性に比べるとかなり劣っていた。この理由
は、この発明に従う脱炭焼鈍を施すことにより、脱炭焼
鈍板の集合組織が改善され,ゴス強度が強くなったこと
によるものと考えられる。
【0026】かくして、従来、優れた磁気特性を得るこ
とができないとされた、ロール径が300 mm以上のタンデ
ム圧延による1回冷延法の適用が可能となり、かくし
て、優れた磁気特性を有する方向性けい素鋼板の効率良
い製造が現実のものとなったのである。
【0027】
【作用】以下、この発明における方向性けい素鋼用素材
の好適成分組成範囲について説明する。 C:0.02〜0.15wt% Cは、熱間圧延時のα−γ変態を利用して結晶組織の改
善を行うために必要な成分であるが、0.02wt%に満たな
いとその添加効果に乏しく、一方0.15wt%を超えて多量
に添加されるとその後の脱炭が難しくなるので、0.02〜
0.15wt%程度が好ましい。なお、C量が0.10〜0.15wt%
のhighC領域は、従来はCが多すぎてその後の脱炭が難
しいとされた領域であるが、後述するこの発明に従う脱
炭焼鈍法は従来よりも脱炭能がはるかに高いので、十分
に脱炭できる領域である。
【0028】Si:2.0 〜4.5 wt% Siは、鋼板の電気抵抗を高めることにより、鉄損特性を
向上する有用成分であるが、 2.0wt%に満たないと鋼板
の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増大するために良
好な鉄損特性が得られず、一方 4.5wt%を超えると冷間
圧延が困難となるので、 2.5〜4.5 wt%程度とするのが
好ましい。
【0029】このC,Siの他、方向性けい素鋼板用素材
には、1次再結晶組織の中からゴス方位以外の粒成長を
抑制することにより、ゴス方位の粒のみを選択的に成長
させるという2次再結晶に不可欠の機能を有するインヒ
ビターの形成成分を含有させることが必須である。この
インヒビターには、AlN,MnSe,MnS等のように微細析
出物として機能するものと、Sb, Sn等のように粒界に偏
析して機能するものの2つのタイプが知られている。こ
の発明では、これらのうち、AlNインヒビターを不可欠
とする。というのは冷延1回法では圧下率が必然的に高
くなるが、かような高圧下圧延の下ではAlNインヒビタ
ーがとりわけ有利だからである。ここに、好適量のAlN
インヒビターを得るには、sol.Al:0.01〜0.05wt%、
N:0.004 〜0.012 wt%を必要とする。というのは、Al
量が0.01wt%に満たないと磁束密度が低下し、一方0.05
wt%を超えると2次再結晶が不安定になるからであり、
またN量が 0.004wt%に満たないとAlNインヒビターの
量が不足して磁束密度が低下し、一方 0.012wt%を超え
るとブリスターと呼ばれる表面欠陥が製品に多発するか
らである。
【0030】なお、この発明では、主インヒビターとし
てAlNさえ含有していれば、MnSeやMnS等のいわゆるMn
Se系インヒビターを併用することに何の支障はない。こ
こに、MnSe系インヒビターの各形成成分の好適範囲はそ
れぞれ次のとおりである。 Mn:0.03〜0.30wt% Mn量が0.03wt%未満ではインヒビター成分として絶対量
が不足し、一方0.30wt%を超えるとインヒビターの粒子
径が粗大化して粒成長抑制力が低下するため、0.03〜0.
30wt%の範囲が好適である。
【0031】Seおよび/またはS:0.01〜0.05wt% SeおよびS量が0.01wt%に満たないとインヒビター成分
として絶対量が不足し、一方0.05wt%を超えると仕上げ
焼鈍での純化が困難となるため、単独または併用いずれ
の場合においても0.01〜0.05wt%の範囲が好適である。
【0032】さらに、この発明では、上記した粒界偏析
型インヒビターであるSb、Sn等を併用することもでき
る。特に、磁束密度B8 値が1.92T以上という極めて優
れた磁気特性を有する高級方向性けい素鋼板を製造する
に当たっては、析出物タイプだけでなく、粒界偏析タイ
プのインヒビターも併用して、これらのインヒビター効
果を最大限に発揮させることが有利である。ここにSb、
Sn等の粒界偏析型インヒビター成分は、その添加量が少
なすぎると磁気特性の改善効果が少なく、一方多すぎる
と脆化やフォルステライト被膜への悪影響が生じるた
め、 0.005〜0.30wt%の範囲が好適である。
【0033】さらに、熱間圧延時の表面脆化に起因する
表面欠陥を防止するために、0.10wt%以下のMoを添加す
ることも有効である。
【0034】次に、この発明の好適製造条件について説
明する。上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、連続鋳
造または造塊−分塊法により、所定厚みのスラブとした
のち、インヒビター成分であるAlやSe,Sを完全に固溶
させるために1350〜1450℃に加熱する。上記のスラブ加
熱後、熱間圧延を行い、ついで組織を均一化し、かつ2
次再結晶を安定化させるために熱延板焼鈍を施す。
【0035】ついで、ロール径が 300〜400 mmの圧延ロ
ールを備えるタンデム圧延機を用いて、1回冷延法によ
り、0.23〜0.35mm程度の最終製品板厚に仕上げる。前述
したとおり、従来、ロール径が 300mm以上の圧延ロール
を用いたタンデム圧延による1回冷延法では、十分満足
のいく優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を得るこ
とはできなかったのであるが、後述するこの発明に従う
脱炭焼鈍を活用することによって初めて、上記したタン
デム圧延による1回冷延法によっても優れた磁気特性を
有する方向性電磁鋼板の製造が可能になったのである。
【0036】ついで、脱炭焼鈍を施すわけであるが、こ
の発明では、この脱炭焼鈍がとりわけ重要である。すな
わち、この発明では、かかる脱炭焼鈍に際し、昇温過程
および均熱過程におけるP(H2O)/P(H2)を調整し、均熱
過程におけるP(H2O)/P(H2)を 0.7未満とする一方、昇
温過程におけるP(H2O)/P(H2)を均熱過程のそれよりも
低く設定することが重要である。というのは、均熱過程
におけるP(H2O)/P(H2)が 0.7以上では、前掲図1に示
したとおり、光沢のある美麗で灰色の均一なフォルステ
ライト被膜が得られず、ひいては良好な磁気特性が得ら
れないからである。また、均熱過程におけるP(H2O)/P
(H2)は 0.7未満であっても、昇温過程におけるP(H2O)/
P(H2)が均熱過程のそれと同等またはそれよりも大きい
と、やはり前掲図1に示したとおり、光沢のある美麗で
灰色の均一なフォルステライト被膜ひいては良好な磁気
特性が得られないからである。従って、脱炭焼鈍時の均
熱過程におけるP(H2O)/P(H2)を 0.7未満(好ましくは
0.3以上)とし、かつ昇温過程におけるP(H2O)/P(H2)
を均熱過程のそれよりも低く(好ましくは0.05以上)設
定することが肝要である。
【0037】なお、脱炭焼鈍時における昇温速度は、通
常の速度である10〜20℃/sに限ることなく、この範囲よ
り幾分広い5〜30℃/sの範囲において好適に行うことが
できる。昇温速度が5℃/sに満たなかったり、30℃/sを
超える場合には、雰囲気酸化性が好適条件を満たしてい
たとしても良好なフォルステライト被膜を得ることはで
きない。
【0038】その後、鋼板表面に MgOを主成分とする焼
鈍分離剤を塗布してから、1000〜1200℃, 3〜50h程度
の純化焼鈍を施して製品板とする。なお、その後さら
に、りん酸塩系の上塗りコーティングを施すことは有利
である。
【0039】
【実施例】
実施例1 C:0.052 wt%、Si:2.87wt%、Mn:0.075 wt%、Se:
0.024 wt%、sol.Al:0.022 wt%、N:0.0085wt%およ
びSb:0.026 wt%を含み、残部はFe及び不可避的不純物
からなる方向性けい素鋼用素材を、電磁誘導加熱により
スラブ中心温度:1410℃に加熱後、熱間圧延により 2.2
mm厚の熱延板としたのち、1100℃での熱延板焼鈍後、急
冷し、ついで圧延スタンドを4基備えたタンデム圧延機
による1回の冷間圧延で0.35mmの最終板厚とした。つい
で、H2−N2−H2O 雰囲気中で 840℃, 140 秒間の脱炭焼
鈍を行った。このとき、H2濃度を50%としかつ露点を62
℃にすることによって、均熱過程の雰囲気のP(H2O)/P
(H2)を0.55とした。また昇温過程(昇温速度:10℃/s)
の雰囲気のP(H2O)/P(H2)は0.42に調整した。さらに、
タンデム圧延機の各スタンドの圧延ロールとしては同一
径のロールで表2に示すロール径のものを使用した。
【0040】その後、 MgO中にTiO2を3wt%添加した焼
鈍分離剤を塗布してから、乾H2雰囲気中で、1200℃, 10
時間の二次再結晶焼鈍および純化焼鈍を施した。その
後、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分と
する上塗りコーティングを施した。かくして得られた製
品板の磁気特性について調べた結果を表2に併記する。
なお、表2には、従来例としてロール径が 100mmのゼン
ジマー圧延機を用いて冷間圧延を行った場合の調査結果
も併せて示す。
【0041】
【表2】
【0042】表2から明らかなように、この発明法に従
えば、ロール径が 300mm〜400mm の範囲において良好な
磁気特性が得られた。これに対し、従来のゼンジマー圧
延機を用いた場合には、ロール径が小さくてもこの発明
ほど優れた磁気特性は得られなかった。
【0043】実施例2 C:0.045 wt%、Si:2.7 wt%、Mn:0.073 wt%、Se:
0.026 wt%、sol.Al:0.024 wt%、N:0.0083wt%およ
びSb:0.024 wt%を含み、残部はFe及び不可避的不純物
からなる方向性けい素鋼用素材を、実施例1と同様の工
程で最終板厚:0.35mmの冷延板とした。この冷間圧延に
際し、圧延ロールとしては径が 335 mmのロールを用い
た。ついで、この冷延板に脱炭焼鈍を施した。このと
き、H2濃度および露点を変更することによって、昇温過
程および均熱過程の雰囲気のP(H2O)/P(H2)を表3に示
す値に調整した。また、昇温速度はいずれも15℃/sとし
た。その後、実施例1と同様に処理して製品板とした。
かくして得られた製品板の磁気特性について調べた結果
を表3に併記する。
【0044】
【表3】
【0045】表3から明らかなように、均熱過程のP(H
2O)/P(H2)が 0.7未満でかつ、昇温過程のP(H2O)/P(H
2)が均熱過程のそれよりも低い場合には、タンデム圧延
機の圧延ロールとしてロール径が 300mm以上のものを用
いたとしても、優れた磁気特性が得られている。
【0046】実施例3 実施例1のNo2の場合(発明例)と、ロール径が 100mm
のゼンジマー圧延機を用いる以外は実施例1と同様にし
て方向性電磁鋼板を製造した場合(従来例)における、
生産能率について調査した。その結果、従来例の生産高
は12t/hであったのに対し、発明例の生産高は17
0t/hであり、この発明に従った場合には従来に比べ
生産性を格段に向上することができた。
【0047】
【発明の効果】かくして発明によれば、300mm 以上とい
う比較的大径の圧延ロールを用いたタンデム圧延による
1回冷延法という、極めて能率的な冷間圧延法によっ
て、しかも従来に比べて一段と優れた磁気特性の方向性
けい素鋼板を安定して得ることができる。また、この発
明では、冷間圧延工程において中間焼鈍が必要ないた
め、生産時のエネルギー資源の消費を軽減でき、製造お
よび製品使用一貫した省エネルギーにも大いに貢献す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍工程の昇温過程および均熱過程におけ
るP(H2O)/P(H2)が仕上げ焼鈍後のフォルステライト被
膜の外観に及ぼす影響を示したグラフである。
【図2】3%けい素鋼の湿水素中における生成酸化物の
平衡状態図である。
【図3】タンデム冷間圧延におけるロール径とB8 との
関係を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石飛 宏威 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 本田 厚人 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 小原 隆史 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 AlおよびNを主インヒビター成分として
    含有する方向性けい素鋼用スラブを、熱間圧延し、つい
    で熱延板焼鈍後、1回の冷間圧延により最終板厚とした
    のち、脱炭焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してか
    ら、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性け
    い素鋼板を製造するに際し、 i) 冷間圧延を、ロール径が 300〜400 mmの圧延ロール
    を用いたタンデム圧延で行うこと、 ii) 脱炭焼鈍の昇温過程および均熱過程における水素分
    圧に対する水蒸気分圧の比P(H2O)/P(H2)を調整し、均
    熱過程におけるP(H2O)/P(H2)を 0.7未満とする一方、
    昇温過程におけるP(H2O)/P(H2)を均熱過程のそれより
    も低く設定すること を特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
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