JPH108133A - 磁気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH108133A
JPH108133A JP8154028A JP15402896A JPH108133A JP H108133 A JPH108133 A JP H108133A JP 8154028 A JP8154028 A JP 8154028A JP 15402896 A JP15402896 A JP 15402896A JP H108133 A JPH108133 A JP H108133A
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annealing
silicon steel
oriented silicon
steel sheet
acid
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JP8154028A
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Takashi Suzuki
隆史 鈴木
Atsuto Honda
厚人 本田
Mineo Muraki
峰男 村木
Noriko Makiishi
規子 槇石
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コイルの全幅及び全長にわたって欠陥のない
均一で密着性に優れるフォルステライト質絶縁被膜を有
し、かつ磁気特性にも優れる方向性けい素鋼板を安定し
て得る。 【解決手段】 方向性けい素鋼用スラブに、Cuを0.03〜
0.20wt%含有するものを用いる。熱間圧延から脱炭焼鈍
までの途中工程で施す酸洗を、酸化力を有しない酸にて
行う。脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分圧に対
する水蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程におけ
る水素分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱過程よ
りも低い値で行う。これらの要件の結合により最終冷延
板の表面近傍にCu偏析層が形成されて被膜特性等が改善
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、方向性けい素鋼
板の製造方法に関し、特に素材成分と途中工程での酸洗
方法と脱炭焼鈍工程とを工夫することによって、磁気特
性及びフォルステライト被膜特性を改善しようとするも
のである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は、主に変圧器や回転
機器等の鉄心材料として使用されるものであり、磁気特
性として磁束密度が高く、鉄損及び磁気歪が小さいこと
が要求される。
【0003】かかる要求に応えるためには、{110}
〈001〉方位、いわゆるゴス方位に方向性けい素鋼板
の二次再結晶組織を高度に集積させることが必要であ
り、そのため、方向性けい素鋼板の一般的な製造方法に
おいては、インヒビターを含む方向性けい素鋼スラブを
加熱して熱間圧延を行ったのち、必要に応じて熱延板焼
鈍を行い、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷延圧延
によって最終製品板厚とし、次いで脱炭焼鈍を行った
後、鋼板表面にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し
てからコイル状に巻取って、高温の仕上焼鈍を施してい
る。
【0004】この仕上焼鈍において、インヒビターは一
次再結晶組織の中からゴス方位以外の粒の成長を抑制す
ることにより、ゴス方位の粒だけを選択的に成長させる
ことから、所期した二次再結晶に不可欠の機能を有す
る。かかるインヒビターにはAlN 、MnSe、MnS 等のよう
に微細析出物として機能するものと、Sb、Sn等のように
粒界偏析によって機能するものとの2つのタイプが知ら
れている。これらのなかでも、特公昭40−15644
号公報に開示されているAlN は、特に強い抑制力を有す
るため、AlN をインヒビターとして用いることにより高
磁束密度を有する方向性けい素鋼板を得ることができ
る。そして磁界800 A/m における磁束密度B 8 で1.92T
以上という極めて優れた磁気特性を有する高級方向性け
い素鋼板を製造するに当たっては、AlN の如き析出物タ
イプのみならず粒界偏析タイプのインヒビターをも併用
して、これらのインヒビター効果を最大限に発揮させる
ことが行われている。
【0005】ところで、この方向性けい素鋼板の表面に
は、特殊な用途に供される場合を除き、フォルステライ
ト(Mg2SiO4 )質の絶縁被膜が形成されているのが普通
である。この被膜は表面の電気的絶縁のためだけでな
く、その低熱膨張性を利用して引張応力を鋼板に付与す
ることより、鉄損さらには磁気歪をも効果的に改善する
のに役立っている。したがって、フォルステライト質絶
縁被膜には、外観が均一で欠陥のないこと、かつ剪断、
打抜き及び曲げ加工等において被膜の剥離が生じないよ
うに密着性に優れること、その表面が平滑で積層したと
きに高い占積率を有すること等、多くの品質を満足する
ことが要求される。
【0006】かようなフォルステライト質絶縁被膜は、
品質の如何により製品品質に多大な影響を及ぼすのであ
るが、一般には以下のような過程によって形成される。
所望の最終板厚に冷間圧延された方向性けい素鋼板の最
終冷延板を、湿水素中で700 ℃から900 ℃の温度で連続
焼鈍を行う。この焼鈍は、冷間圧延後の組織を最終仕上
焼鈍において適正な二次再結晶が起こるように一次再結
晶させること、及び鋼中に0.01〜0.10wt%程度含まれる
炭素を0.003 wt%以下にまで脱炭させることで二次再結
晶を完全に行わせかつ製品の磁気特性の時効劣化を防止
することばかりでなく、鋼中Siの酸化によって、SiO2
主成分とするサブスケールを鋼板表層に生成させること
をも目的としている。その後、MgO を主成分とする焼鈍
分離剤を鋼板表面上に塗布してからコイル状に巻取っ
て、還元あるいは非酸化性雰囲気中において1000℃から
1200℃程度の温度で、高温仕上焼鈍を行うことにより、
焼鈍分離剤中のMgO と鋼板表層に生成しているSiO2
の、以下の式で示される固相反応によってフォルステラ
イト質絶縁被膜を形成させる。 2MgO +SiO2→Mg2SiO4
【0007】このフォルステライト質絶縁被膜は、1μ
m 程度の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜で
あり、上述のごとく脱炭焼鈍において鋼板表層に生成し
たSiO2を主成分とするサブスケールを一方の原料物質と
して、その鋼板状に生成するものであるから、このサブ
スケールの種類、量、分布等はフォルステライトの核生
成や粒成長挙動に影響を及ぼし、更にはフォルステライ
ト結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及ぼし、
したがって仕上焼鈍後の被膜品質にも多大な影響を及ぼ
す。
【0008】また、他方の原料物質であるMgO を主成分
とする焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板
に塗布されるために、乾燥させた後も物理的に吸着した
H2Oを保有する他、一部が水和してMg(OH)2 に変化して
いるため、仕上焼鈍の際は800 ℃付近まで少量ながらH2
O を放出し続ける。このH2O によって鋼板表面は仕上焼
鈍中に酸化される。この酸化もフォルステライト被膜の
生成挙動に影響を及ぼすとともに、インビビターの酸化
や分解につながることから、この酸化が多いと磁気特性
の劣化する原因となる。この焼鈍分離剤が放出するH2O
による酸化の受け易さもまた、脱炭焼鈍の際に形成され
たサブスケールの物性によって大きく影響される。
【0009】更に、インヒビター成分としてAlN を含む
方向性けい素鋼板においては、このサブスケールの物性
が、仕上焼鈍中の脱窒挙動又は焼鈍雰囲気からの侵窒挙
動に影響を及ぼすことから、磁気特性にも影響を及ぼ
す。すなわち、脱窒が進行するとインヒビターの抑制力
は弱まり、磁気特性の劣化を来す。逆に、侵窒が進行す
ると、インヒビターの抑制力が過剰となって正常な二次
再結晶が起こりにくくなり、この場合も磁気特性の劣化
が生じる。このようにして、インヒビターとしてAlN を
用いる場合には、高磁束密度が得られる反面、二次再結
晶が不安定になる傾向があり、その主要な原因の一つと
して、このようなサブスケール物性のばらつきが影響し
ている。
【0010】以上述べたところから分かるように、脱炭
焼鈍において鋼板表層に形成されるサブスケールの物性
を制御することは、優れたフォルステライト質絶縁被膜
を適正な温度で均一に形成させるために、また、二次再
結晶を正常に発現させるために欠かせない技術であり、
方向性けい素鋼板の製品品質を左右する製造技術上の重
要なポイントのひとつである。
【0011】方向性けい素鋼板の脱炭焼鈍で形成される
サブスケール品質を制御する方法に関しては、例えば特
開昭59−185725号公報に開示されているよう
に、焼鈍雰囲気の露点を50〜75℃に制御する方法、特公
昭57−1575号公報に開示されているように、雰囲
気の酸化度を脱炭焼鈍の前部領域では0.15以上とし、引
き続く後部領域の酸化度を0.75以下でかつ前部領域より
も低くする方法、特開平2−240215号公報や特公
昭54−24686号公報に示されているように、脱炭
焼鈍後に非酸化性雰囲気中で850 〜1050℃の熱処理を行
う方法、あるいは特公平3−57167号公報に開示さ
れているように、脱炭焼鈍後の冷却を750℃以下の温度
域では酸化度を0.008 以下として冷却する方法、特開平
6−336616号公報に開示されているように、脱炭
焼鈍の均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の
比を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分圧に対す
る水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値に設定する方
法などが知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述した方法は、いず
れも一定の効果は認められるものの、必ずしも十分なも
のではなく、時としてストリップの幅方向あるいは長手
方向で磁気特性やフォルステライト質絶縁被膜の密着
性、厚み、均一性が劣化する場合があり、優れた品質を
有する製品の安定生産、極限までの歩留まり向上を目指
すためには、いまだ改善の余地を残すものであった。特
に前述したようにAlN をインヒビターとして利用するこ
とにより高磁束密度の方向性けい素鋼板を製造する場合
には、二次再結晶が不安定となって磁気特性がばらつく
傾向が往々にして見られた。
【0013】この発明は、上記の問題点を有利に解決す
るもので、コイルの全幅及び全長にわたって欠陥のない
均一で密着性に優れるフォルステライト質絶縁被膜を有
し、かつ磁気特性にも優れる方向性けい素鋼板を得るた
めの製造方法について提案するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】発明者らは、最終冷延板
の表面状態が、一次再結晶焼鈍で生成するサブスケール
物性に及ぼす影響を詳細に調査した。その結果、鋼中に
Cuを添加した場合には、最終冷延板の表面近傍にCu偏析
層が形成される場合があること、このCu偏析層が存在し
た場合は、特開平6−336616号公報に開示されて
いる方法の効果が十分に得られること、更に、熱間圧延
から脱炭焼鈍までの途中工程においてスケール除去ない
し表面清浄化の目的で行う酸洗に使用される酸の種類
が、Cu偏析層の形成に大きな影響を及ぼすことを解明
し、この発明を完成するに至った。
【0015】すなわち、この発明は、方向性けい素鋼用
スラブを熱間圧延した後、熱延板焼鈍を施し又は省略し
て1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、
次いで脱炭焼鈍を施し、更にMgO を主体とする焼鈍分離
剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施す一連の工程からな
る方向性けい素鋼板の製造方法において、上記方向性け
い素鋼用スラブに、Cuを0.03〜0.20wt%含有するものを
用いること、熱間圧延から脱炭焼鈍までの途中工程で施
す酸洗を、酸化力を有しない酸にて行うこと、及び上記
脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分圧に対する水
蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程における水素
分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱過程よりも低
い値で行うことを特徴とする磁気特性及び被膜特性に優
れる方向性けい素鋼板の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】発明者らは、最終冷延板の表面近
傍に形成されているCu偏析層が、一次再結晶焼鈍(脱炭
焼鈍)で生成するサブスケール物性に及ぼす影響を詳細
に調査した。以下に、この実験結果について述べる。
【0017】C含有量が0.04wt%であり、インヒビター
としてMnSe及びSbを含み、更に、0.08wt%のCuを含有す
る方向性けい素鋼素材を熱間圧延した後、900 ℃で均一
化焼鈍を行い、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって
最終板厚0.27mmに仕上げた。このとき、中間焼鈍後にCu
偏析層が形成された試料を選別し、更に一部の試料につ
いては表面を研削してCu偏析層を除去し、図1に示され
るごとくCu偏析層がある試料及びCu偏析層がない試料を
調製した。なお、Cu偏析層は最終冷延板の板厚方向Cuプ
ロファイルをGDS(グロー放電分光)によって調べる
ことにより評価した。次いで、これらの冷延板を脱脂し
て表面を清浄化した後、湿水素中にて820 ℃に2分間保
持する一次再結晶焼鈍を施した。このとき、昇温過程及
び均熱過程の雰囲気酸化性を表1に示す値に制御した。
その後、鋼中のC量と酸素目付量とを化学分析によって
求めた。また、60℃の5%HCl 中で60秒の酸洗による一
次再結晶焼鈍後の試料の溶解量(以下、「酸洗減量」と
称する。)を求めた。これらの結果を表1に示す。かか
る酸素目付量はサブスケールの量的指標として重要であ
り、これが不足するとフォルステライト質絶縁被膜の密
着性及び外観均一性が劣化し、磁気特性の劣化も併せて
生じる。また、酸洗減量はサブスケールの質的指標とし
て重要であり、この値が大きい場合には、表面の化学的
活性度が高いため仕上焼鈍中の追加酸化を受け易く、フ
ォルステライト質絶縁被膜の品質や磁気特性の劣化を生
じる。
【0018】
【表1】
【0019】表1のNo. 1,2は、最終冷延板表面近傍
にCu偏析層を有する試料をこの発明の範囲において一次
再結晶焼鈍したものであり、C含有量は十分に低く、酸
素目付量も確保されていて、また、酸洗減量も低い値を
示している。これに対して、No. 3,4は一次再結晶焼
鈍条件はこの発明の範囲であるが、Cu偏析層が存在しな
い場合である。このときには、No. 1,2に比べて酸洗
減量が高くなっている。次に、No. 5,6は最終冷延板
表面近傍にCu偏析層が存在するが、一次再結晶焼鈍にお
ける昇温過程雰囲気と均熱過程雰囲気とが同一条件の場
合であり、C含有量が増大し、酸素目付量が不十分とな
り、酸洗減量が高めとなっている。そして、No. 7,8
は最終冷延板表面近傍にCu偏析層が存在するが、均熱過
程のP(H2O)/P(H2)が0.70を超えた場合であり、酸洗減量
が著しく増大している。
【0020】この実験結果から、最終冷延板の表面にCu
偏析層が存在し、かつ脱炭焼鈍均熱過程のP(H2O)/P(H2)
を0.70未満とし昇温過程のP(H2O)/P(H2)を均熱過程のそ
れよりも低下することによって、良好な物性を有するサ
ブスケールを得られることがわかる。
【0021】このように、昇温過程の雰囲気酸化性を均
熱過程のそれよりも低下させることによってサブスケー
ル品質が向上するメカニズムはまだ明らかでないが、昇
温過程でのサブスケール形成を均熱過程よりも緩やかに
進行させることにより、酸化初期に生成する酸化物の形
態や物性が変化し、その後の均熱過程における酸素の鋼
中への拡散に好影響を及ぼすためと考えられる。また、
均熱過程のP(H2O)/P(H 2)が0.70以上になるとサブスケー
ル品質が劣化するのは、図2に示すけい素鋼板の表面に
生成する酸化物から考えると、FeO の生成によるものと
思われる。FeOは酸素の内部拡散ではなく、Feの外部拡
散によって生成する酸化物であり、このような酸化物が
表面に一旦、生成すると、被膜の生成過程に重大な悪影
響を与えるものと思われる。
【0022】次に、発明者らは鋼板表面近傍にCu偏析層
を形成させるための条件についても検討した。Cu含有量
が0.01〜0.30wt%である方向性けい素鋼板の中間焼鈍板
を、板厚方向Cuプロファイルがフラットになるまで研削
した。その後、これらの板を塩酸及び硝酸によってそれ
ぞれ酸洗した。いずれも酸濃度は10wt%、酸温度は70
℃、酸洗時間は30秒とした。次いで、この試料を冷間圧
延によって板厚0.23mmとし、脱脂を行って表面を清浄化
した後、GDSによって板厚方向のCuプロファイルを調
べた。その結果を図3に示す。図3によれば、酸洗を硝
酸で行った場合には、Cu含有量に関係なく鋼板表面にCu
偏析層が存在しないことが分かる。一方、酸洗を塩酸で
行った場合には、Cu含有量が0.03wt%を超えると鋼板表
面にCu偏析層が形成されていること、及びCu含有量が0.
20wt%を超えるとCu偏析層の形成があまり進行しなくな
ることがわかる。
【0023】この実験結果から、最終冷延板の表面近傍
にCu偏析層を生成させるためには、鋼中にCuを0.03〜0.
20wt%含有させた上で途中工程での酸洗を、硝酸を含有
しない酸で行えば良いことが分かる。
【0024】酸洗を硝酸で行うことによりCu偏析層が生
じない原因は以下のように考えられる。Cuはイオン化傾
向が水素よりも小さいため、通常の酸によっては溶解し
ない。しかしながら、硝酸のような酸化力を有する酸の
場合には酸のイオンとCuの酸化還元反応によってCuがイ
オン化して溶解すると考えられる。すなわち、硝酸の場
合には、以下の反応が生じていると考えられる。 3Cu+ NO3 - +4H+ →3Cu+ +NO+2H2O
【0025】このように考えると、硝酸のように酸化力
を有する酸を用いた場合には、硝酸と同様にCu偏析層が
形成されないと推定される。そこで、発明者らは、酸化
力を有する酸として濃硫酸、酸化力を有しない酸として
リン酸、また酸化力を有する酸と有しない酸が混在する
場合として塩酸と硝酸との混酸を用い、同様の実験を行
った結果、やはり濃硫酸ではCu偏析層が形成されず、リ
ン酸ではCu偏析層が形成されること、塩酸と硝酸との混
酸ではCu偏析層が形成されないことを確認した。したが
って、この発明ではCu偏析層を形成されるための条件と
して、熱間圧延から脱炭焼鈍までの途中工程での酸洗を
酸化力を有しない酸によって行うと限定する。この酸化
力を有しない酸としては、塩酸、リン酸の他、希硫酸等
が挙げられる。
【0026】なお、以上の実験例はインヒビターとして
MnSeとSbとを含有する鋼種で示したが、この発明はイン
ヒビターの種類は問わず、AlN −MnSe系、AlN −MnSe−
Sb系、AlN −MnS 系、等、他のインヒビターを含有する
方向性けい素鋼のいずれに対しても適用できる。
【0027】次に、この発明における方向性けい素鋼素
材の好適成分組成について説明する。Cは、熱間圧延時
のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行うために必
要であるが、多すぎると脱炭が困難となるため、0.02〜
0.10wt%の範囲が好適である。Siは、少なすぎると鋼板
の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増大するために良
好な鉄損特性が得られず、多すぎると冷間圧延が困難と
なるので、2.5 〜4.5wt%程度の範囲が好適である。Mn
は、インヒビター成分として必要であるが、過剰になる
とインヒビターの粒子径が粗大化して粒成長抑制力が低
下するため、0.03〜0.30wt%の範囲が好適である。
【0028】Se及び/又はSは、インヒビター成分とし
て必要であるが、過剰になると仕上焼鈍での純化が困難
となるため、合計で0.01〜0.05wt%の範囲が好適であ
る。Al及びNは、AlN インヒビターを形成するために必
要である。Alは少なすぎると磁束密度が低下し、多すぎ
ると二次再結晶が安定しなくなるため、酸可溶性Alとし
て0.01〜0.05wt%の範囲が好適である。一方、Nは少な
すぎるとAlN インヒビターの量が不足して磁束密度が低
下し、多すぎるとブリスターと呼ばれる表面欠陥が製品
に多発するため、0.004 〜0.012 wt%の範囲が好適であ
る。
【0029】Cuは、先に述べた理由により、この発明で
必須の成分であり、0.03〜0.20wt%の範囲とする。更
に、この発明では粒界偏析型インヒビターとしてSbやSn
の添加が有効である。これらの成分は、添加量が少なす
ぎると磁気特性の改善効果が少なく、多すぎると脆性の
低下やフォルステライト質被膜への悪影響が生じるた
め、0.01〜0.30wt%の範囲が好適である。また、熱間圧
延時の表面脆化に起因する表面欠陥を防止するために、
0.10wt%以下のMoを添加することも有効である。
【0030】かかる方向性けい素鋼素材を出発材とし
て、熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍を施し又は省略し
て1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、
次いで脱炭焼鈍を施し、更にMgO を主体とする焼鈍分離
剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施して方向性けい素鋼
板を得る。このとき、熱間圧延から脱炭焼鈍までの途中
工程で施す酸洗を、酸化力を有しない酸にて行うこと、
及び上記脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分圧に
対する水蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程にお
ける水素分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱過程
よりも低い値で行うことが肝要であることは、前述した
とおりである。その他の製造条件については、常法に従
って行えば良い。
【0031】
【実施例】
(実施例1) C:0.070 wt%、Si:3.34wt%、Mn:0.071 wt%、Se:
0.024 wt%、sol.Al:0.026 wt%、N:0.0088wt%、S
b:0.025 wt%、Cu:0.08wt%を含有する方向性けい素
鋼スラブを板厚2.3 mmに熱間圧延したのち、1000℃で均
一化焼鈍を行い、1100℃で2分間の中間焼鈍を挟む2回
の冷間圧延によって0.23mmの最終冷延板厚とした。この
とき中間焼鈍後にスケール除去のため、5%塩酸又は5
%硝酸を用いて80℃で60秒の酸洗を行った。次いで、こ
れらの冷延板をアルカリ脱脂して表面を清浄化した後、
H2−H2O −N2雰囲気にて、840 ℃で120 秒の脱炭焼鈍を
行った。このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化
性をそれぞれ独立に表2に示す値に制御した。次いで、
5%のTiO2を含有するMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして
塗布、乾燥後、H2雰囲気中での1200℃で10時間の二次再
結晶、純化焼鈍を行った。この後、リン酸マグネシウム
とコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施し
た。このようにして得られた製品の、磁界800 A/m にお
ける磁束密度B 8 値、1.7 T、50Hzにおける鉄損W17/50
値、被膜の曲げ密着性及び被膜外観の均一性について調
査した。なお、被膜の曲げ密着性は、5mm間隔の種々の
径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜の剥離が生じ
ない最小径で評価した。また、脱炭焼鈍後のC含有量及
び酸素目付量についても化学分析を行った。これらの結
果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2によれば、均熱過程のP(H2O)/P(H2)が
0.70を超えたNo. 9,10は、磁気特性、被膜密着性、被
膜外観が劣っている。また、昇温過程のP(H2O)/P(H2)を
均熱過程のそれよりも低くしなかったNo. 7,8は、脱
炭と酸素目付量が不十分であり、かつ磁気特性、被膜密
着性、被膜外観も劣っている。そして、硝酸で酸洗を行
ったNo. 11,12は、磁気特性、被膜外観が劣っている。
これらに対して、この発明に従うNo. 1〜6は、脱炭、
酸素目付量ともに良好なレベルであり、製品の磁気特
性、被膜特性ともに優れている。
【0034】(実施例2) C:0.043 wt%、Si:3.39wt%、Mn:0.069 wt%、Se:
0.023 wt%、Sb:0.026 wt%、Cu:0.08wt%を含有する
方向性けい素鋼スラブを板厚2.6 mmに熱間圧延した後、
900 ℃で均一化焼鈍を行い、970 ℃で2分間の中間焼鈍
を挟む2回の冷間圧延によって0.23mmの最終冷延板厚と
した。このとき、中間焼鈍後にスケール除去のため、5
%塩酸又は5%硝酸を用いて80℃で30秒の酸洗を行っ
た。次いで、これらの冷延板をアルカリ脱脂して表面を
清浄化した後、H2−H2O −N2雰囲気にて、820 ℃で120
秒の脱炭焼鈍を行った。このとき、昇温過程及び均熱過
程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表3に示す値に制御
した。次いで、1%のTiO2と2%のSrSO4 を含有するMg
O 焼鈍分離剤をスラリーとして塗布、乾燥後、N2雰囲気
中での850 ℃で50時間の二次再結晶焼鈍と、引き続くH2
雰囲気での1200℃で10時間の純化焼鈍を行った。この
後、実施例1と同様の処理を行い、得られた製品につい
て実施例1と同様の調査を行った。これらの結果を表3
に示す。
【0035】
【表3】
【0036】表3によれば、均熱過程のP(H2O)/P(H2)が
0.70を超えたNo. 9,10は、磁気特性、被膜密着性、被
膜外観が劣っている。また、昇温過程のP(H2O)/P(H2)を
均熱過程のそれよりも低くしなかったNo. 7,8は、脱
炭と酸素目付量が不十分であり、かつ磁気特性、被膜密
着性、被膜外観も劣っている。そして、硝酸で酸洗を行
ったNo. 11,12は、磁気特性、被膜外観が劣っている。
これらに対して、この発明に従うNo. 1〜6は、脱炭、
酸素目付量ともに良好なレベルであり、製品の磁気特
性、被膜特性ともに優れている。
【0037】
【発明の効果】この発明によれば、被膜特性、磁気特性
ともに極めて優れた方向性けい素鋼板を安定して生産す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】GDSによって評価した板厚方向Cuプロファイ
ルを示す図である。
【図2】3%けい素鋼の湿水素中における生成酸化物の
平衡状態図である。
【図3】GDSによって評価した板厚方向Cuプロファイ
ルを示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 村木 峰男 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 槇石 規子 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性けい素鋼用スラブを熱間圧延した
    後、熱延板焼鈍を施し又は省略して1回又は中間焼鈍を
    挟む2回以上の冷間圧延を行い、次いで脱炭焼鈍を施
    し、更にMgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布してから最
    終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性けい素鋼板
    の製造方法において、 上記方向性けい素鋼用スラブに、Cuを0.03〜0.20wt%含
    有するものを用いること、 熱間圧延から脱炭焼鈍までの途中工程で施す酸洗を、酸
    化力を有しない酸にて行うこと、及び上記脱炭焼鈍を、
    その均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比
    を0.70未満で、かつ昇温過程における水素分圧に対する
    水蒸気分圧の比を前記の均熱過程よりも低い値で行うこ
    とを特徴とする磁気特性及び被膜特性に優れる方向性け
    い素鋼板の製造方法。
JP8154028A 1996-06-14 1996-06-14 磁気特性及び被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 Pending JPH108133A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001200317A (ja) * 2000-01-21 2001-07-24 Kawasaki Steel Corp 良好な被膜を有する低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法
EP3369834A4 (en) * 2015-10-26 2019-07-10 Nippon Steel Corporation ORIENTED GRAIN ELECTROMAGNETIC STEEL SHEET AND DECORBED STEEL SHEET USED TO PRODUCE SAME
CN114622070A (zh) * 2022-03-11 2022-06-14 安阳钢铁股份有限公司 一种改善取向硅钢涂层附着性的生产方法

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US10907234B2 (en) 2015-10-26 2021-02-02 Nippon Steel Corporation Grain-oriented electrical steel sheet and decarburized steel sheet used for manufacturing the same
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