JP2992213B2 - 方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性けい素鋼板の製造方法

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JP2992213B2 JP6292673A JP29267394A JP2992213B2 JP 2992213 B2 JP2992213 B2 JP 2992213B2 JP 6292673 A JP6292673 A JP 6292673A JP 29267394 A JP29267394 A JP 29267394A JP 2992213 B2 JP2992213 B2 JP 2992213B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、方向性けい素鋼板の
製造方法に関し、特に脱炭焼鈍工程を工夫することによ
って、磁気特性及びフォルステライト被膜特性を改善し
ようとするものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は軟磁性材料として、
主に変圧器あるいは回転機器等の鉄心材料として使用さ
れるもので、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損及び
磁気歪が小さいことが要求される。近年、エネルギー事
情の悪化に伴い、磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の
ニーズは高まっている。
【0003】磁気特性に優れた方向性けい素鋼板を得る
には、{110}〈001〉方位、いわゆるゴス方位に
高度に集積した2次再結晶組織を得ることが必要であ
る。そして、かかる方向性けい素鋼板の一般的な製造方
法としては、ゴス方位に高度に集積した2次再結晶組織
を得るために必要なインヒビターを含む方向性けい素鋼
スラブを加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて均
一化焼鈍を行い、1回あるいは中間焼鈍を挟む2回以上
の冷間圧延によって最終製品板厚とし、次いで脱炭焼鈍
を行った後、鋼板にMgO 等を主成分とする焼鈍分離剤を
塗布し、コイル状に巻取ってから、高温仕上げ焼鈍が行
われる。
【0004】そして、このような製造工程を経て得られ
た方向性けい素鋼板の表面には、特殊な用途に供される
場合を除き、フォルステライト (Mg2SiO4)質の絶縁被膜
が形成されているのが通常である。この被膜は、表面の
電気的絶縁のためだけでなく、その低熱膨脹性を利用し
て引張応力を鋼板に付与することにより、鉄損さらには
磁気歪の改善にも効果的に寄与している。
【0005】さらに、このフォルステライト被膜が形成
されるその被膜形成挙動は、鋼中のMnS ,MnSe,AlN 等
のインヒビターの挙動に影響を及ぼすため、優れた磁気
特性を得るために必須の過程である2次再結晶そのもの
にも影響を及ぼす。すなわち、フォルステライト形成反
応は仕上げ焼鈍の昇温過程より開始するわけであるが、
この際の雰囲気が過酸化状態になると、フォルステライ
ト形成反応が急速に進行する箇所が局所的に発生してフ
ォルステライト結晶粒が大きくなる結果、フォルステラ
イト被膜の緻密さが損なわれてポーラスな被膜となる。
逆に、雰囲気が過還元状態になると、フォルステライト
形成反応の進行が抑制されるため、フォルステライト被
膜の形成が遅れてしまう。このように、フォルステライ
ト被膜がポーラスになった場合及びフォルステライト被
膜形成が遅れた場合には、いずれも焼鈍雰囲気が地鉄中
に侵入し易くなり、鋼中のインヒビターが焼鈍雰囲気に
よって分解され易くなってしまう。このため、ゴス方位
以外の粒成長を抑制してゴス方位だけを優先的に2次再
結晶させる役割を果たすインヒビターの量が減少する故
に、インヒビターが十分に存在しない状態で2次再結晶
が起こる。その結果として得られる2次再結晶組織は、
ゴス方位への集積度が低いものになるのである。ゴス方
位への集積度が低い2次再結晶組織では、磁気特性も劣
る。
【0006】加えて、形成されたフォルステライト被膜
は、2次再結晶が完了した後には不要となるインヒビタ
ー成分を被膜中に吸い上げ、鋼を純化することによって
も、鋼板の磁気特性の十分な発揮を助けている。したが
って、このフォルステライト被膜形成過程を制御して被
膜を均一に形成することは、優れた品質の方向性けい素
鋼板を得るうえで非常に重要である。
【0007】また、当然のことながら、形成されたフォ
ルステライト被膜は外観が均一で欠陥のないこと、かつ
せん断、打抜き及び曲げ加工等において被膜のはく離を
生じさせないため密着性に優れることが要求される。さ
らに、その表面は平滑で鉄心として積層したときに、高
い占積率を有することが要求される。
【0008】かように製品品質に多大な影響を及ぼすフ
ォルステライト質絶縁被膜は、一般に以下のような工程
によって形成される。まず、所望の最終板厚に冷間圧延
された方向性けい素鋼板用の最終冷延板を、湿水素中で
700 ℃から900 ℃の温度で連続焼鈍を行う。この焼鈍に
より 冷間圧延後の組織を、最終仕上げ焼鈍において適正な
2次再結晶が起こるように、1次再結晶させ、 最終仕上げ焼鈍における2次再結晶を完全に行わせる
と共に製品の磁気特性の時効劣化を防止するため、鋼中
に0.01〜0.10wt%程度含まれる炭素を、0.003 wt%以下
にまで脱炭し、 鋼中Siの酸化によって、SiO2を含むサブスケールを鋼
板表層に生成させる。
【0009】その後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を
鋼板上に塗布し、コイル状に巻取ってから、還元あるい
は非酸化性雰囲気中において1000℃から1200℃程度の高
温で仕上げ焼鈍を行うことにより、以下の式で示される
固相反応によってフォルステライト質絶縁被膜を形成さ
せるのである。
【数1】2MgO + SiO2 → Mg2SiO4
【0010】このフォルステライト質絶縁被膜は、1μ
m 程度の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜で
あり、上述のごとく、脱炭焼鈍において鋼板表層に生成
した、SiO2を含有するサブスケールを一方の原料物質と
して、その鋼板上に生成するものであるから、このサブ
スケールの種類、量、分布等は、フォルステライトの核
生成や粒成長挙動に影響を及ぼし、さらにはフォルステ
ライト結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及ぼ
し、したがって仕上げ焼鈍後の被膜品質にも多大な影響
を及ぼす。
【0011】また、他方の原料物質であるMgO を主体と
する焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に
塗布されることから、乾燥させた後も物理的に吸着した
H2Oを保有する他、一部が水和してMg(OH)2 に変化して
いる。そのため、仕上げ焼鈍中には800 ℃付近まで少量
ながらH2O を放出し続ける。このH2O により仕上げ焼鈍
中に鋼板表面は酸化される。この酸化もフォルステライ
ト被膜の生成挙動に影響を及ぼすとともに、インヒビタ
ーの酸化や分解につながることから、この追加酸化が多
いと磁気特性の劣化する原因となる。このMgO が放出す
るH2O による酸化の受け易さも、脱炭焼鈍で形成された
サブスケールの物性に大きく影響される。
【0012】さらに、インヒビター成分としてAlN を含
む方向性けい素鋼板においては、このサブスケールの物
性が、仕上げ焼鈍中の脱窒挙動あるいは焼鈍雰囲気から
の侵窒挙動に影響を及ぼし、したがって磁気特性にも影
響を及ぼす。すなわち、脱窒が進行するとインヒビター
の抑制力は弱まり、磁気特性の劣化を来す。逆に、侵窒
が進行するとインヒビターの抑制力が過剰となって正常
な2次再結晶が起こりにくくなり、この場合も磁気特性
の劣化が生じる。このように、インヒビターとしてAlN
を用いる場合には、高磁束密度が得られるとされる反
面、2次再結晶が不安定になる傾向があり、その主要な
原因のひとつとして、このようなサブスケール物性のば
らつきが影響しているとされている。
【0013】以上述べたように、脱炭焼鈍において鋼板
表層に形成されるサブスケールの物性を制御すること
は、優れたフォルステライト質絶縁被膜を適切な温度で
均一に形成させるために、また2次再結晶を正常に発現
させるために欠かせない技術であり、方向性けい素鋼板
の製品品質を左右する製造技術上の重要なポイントのひ
とつである。
【0014】方向性けい素鋼板の脱炭焼鈍に関しては、
例えば、特開昭59−185725号公報に開示されているよう
に、焼鈍雰囲気の露点を50〜70℃に制御する方法、特公
昭57−1575号公報に開示されているように、雰囲気の酸
化度を脱炭焼鈍の前部領域では0.15以上とし、引き続く
後部領域の酸化度を0.75以下でかつ前部領域よりも低く
する方法、特開平2−240215号公報や特公昭54−24686
号公報に示されているように、脱炭焼鈍後に非酸化性雰
囲気中で850 〜1050℃の熱処理を行う方法、あるいは特
公平3−57167 号公報に開示されているように、脱炭焼
鈍後の冷却を750 ℃以下の温度域では酸化度を0.008 以
下として冷却する方法等が知られている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法はいずれも、一定の効果は認められるとはいえ必ず
しも十分なものではなく、ストリップの幅方向あるいは
長手方向で磁気特性やフォルステライト質絶縁被膜の密
着性、厚み、均一性が劣化する場合があり、優れた品質
を有する製品を安定生産し、さらなる歩留まり向上を図
るためには、いまだ改善の余地を残すものであった。特
に前述したように、AlN をインヒビターとして利用する
ことにより高磁束密度の方向性けい素鋼板を製造する場
合には、2次再結晶が不安定となって磁気特性がばらつ
く傾向が往々にして見られた。
【0016】この発明は、上記の問題点を有利に解決し
ようとするものであり、コイルの全幅及び全長にわたっ
て、欠陥のない均一で密着性に優れたフォルステライト
質絶縁被膜を有し、かつ磁気特性にも優れた方向性けい
素鋼板を得るための製造方法について提案するものであ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ストリップ
におけるフォルステライト質絶縁被膜の品質ばらつき及
び磁気特性のばらつきの原因を詳細に調査した結果、脱
炭焼鈍において鋼板表層に生成するサブスケールの量及
び質のばらつきが大きく影響していることを見出した。
このことは、ストリップの幅方向あるいは長手方向にお
いて、サブスケール形成反応が、必ずしも均一には起こ
っていないことを意味する。さらに、この原因としてさ
らに解明を図ったところ、特に脱炭焼鈍の昇温過程にお
ける雰囲気酸化性の変動が関係していること、そしてCu
の添加によってこの脱炭焼鈍の昇温過程における雰囲気
酸化性の変動の影響が異なることを新たに見出し、この
発明を完成するに至った。
【0018】すなわち、この発明は、方向性けい素鋼板
用スラブを熱間圧延した後、1回又は中間焼鈍を挟む2
回の冷間圧延を施し、次いで脱炭焼鈍を施した後、MgO
を主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼
鈍を施す一連の工程よりなる方向性けい素鋼板の製造方
法において、上記スラブに、Cu:0.03〜0.20wt%を含有
するものを用い、かつ上記脱炭焼鈍の際、その均熱過程
における水素分圧に対する水蒸気分圧の比P(H2O) /P
(H2)を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分圧に対
する水蒸気分圧の比P(H2O) /P(H2)を均熱過程よりも
低い値に設定することを特徴とする方向性けい素鋼板の
製造方法である。
【0019】
【作用】さて、発明者らは、脱炭焼鈍における雰囲気酸
化性、すなわち水素分圧に対する水蒸気分圧の比P(H
2O) /P(H2)(以下、単にP(H2O) /P(H2)という) 及
びCu含有量が、脱炭焼鈍において生成するサブスケール
物性に及ぼす影響を詳細に調査した。以下に、この実験
結果について述べる。
【0020】C:0.042 wt%(以下、単に%という)、
Si:3.32%、Mn:0.070 %、Se:0.023 %、Sb:0.023
%を含み、かつCuをそれぞれ検出下限以下、0.03%、0.
05%、0.10%、0.20%、0.50%、0.80%及び1.0 %で含
有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる方向性けい
素鋼板用の各素材を熱間圧延した後、900 ℃で均一化焼
鈍を行ってから、980 ℃で2分間の中間焼鈍を挟む2回
の冷間圧延によって最終冷延板厚0.23mmとした。次い
で、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化した後、H2
−H2O −N2雰囲気中にて820 ℃で120 秒間の脱炭焼鈍を
施した。この脱炭焼鈍のとき、昇温過程及び均熱過程の
雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表1に示す値に制御し
た。
【0021】
【表1】
【0022】この脱炭焼鈍を終えた鋼板の鋼中C含有量
と酸素目付量とを化学分析によって求めた。また、60℃
の5%HCl 中で60秒酸洗したときの溶解量(以下、酸洗
減量と称する)を求めた。酸素目付量はサブスケールの
量的指標として重要であり、これが不足した場合にはフ
ォルステライト質絶縁被膜の密着性と均一性及び磁気特
性の劣化を招き易い。また、酸洗減量はサブスケールの
質的指標として重要である。酸洗減量が大きいことは、
表面の化学活性度が大きいことを意味する。この表面の
化学的活性度が大きい場合には、仕上げ焼鈍中の雰囲気
ガスやMgO の放出する水和水による酸化を受け易く、フ
ォルステライト質絶縁被膜の品質劣化や磁気特性の劣化
を生じ易い。これらの結果を図1に示す。
【0023】図1中の記号□は、昇温過程におけるP(H
2O) /P(H2)が均熱過程でのP(H2O) /P(H2)よりも小
さい例であるが、均熱過程でのP(H2O) /P(H2)が0.70
以上である。この例の酸洗減量は、Cu含有量によらず非
常に高い値となっており、表面の化学的活性度が高いこ
とを示している。さらに、このときは酸素目付量も高
く、また脱炭焼鈍後のC含有量も高い。
【0024】次に、図1中の記号Δは均熱過程のP(H
2O) /P(H2)は0.70未満であるが、昇温過程のP(H2O)
/P(H2)が均熱過程P(H2O) /P(H2)と等しい場合の例
である。この例では、酸洗減量は記号□の例に比べて低
い値となり、かつCu含有量が増加するとともに酸洗減量
が低減する傾向を示しているが、酸素目付量は低いレベ
ルに留まり、脱炭焼鈍後のC含有量も高い。
【0025】これらに対して、図1中の記号○は、均熱
過程のP(H2O) /P(H2)が0.70未満でかつ昇温過程のP
(H2O) /P(H2)が均熱過程のP(H2O) /P(H2)よりも小
さい例であるが、記号Δに比べて酸洗減量は低い値とな
り、酸素目付量は増加し、かつ脱炭焼鈍後のC含有量も
低減している。
【0026】さらに、図1中の記号○の例と記号Δの例
とを比較すると、昇温過程でのP(H 2O) /P(H2)を均熱
過程でのP(H2O) /P(H2)よりも低くすることによる酸
洗減量の低減は、Cu含有量がtr〜0.02%の範囲ではほぼ
同等であるが、Cu含有量が0.03%以上となるとその効果
が顕著となり、Cu含有量が0.20を超過するとその効果が
飽和していることがわかる。
【0027】以上に述べたように、均熱過程のP(H2O)
/P(H2)を0.70未満とし、かつ昇温過程のP(H2O) /P
(H2)を均熱過程のそれよりも低下し、さらにCu含有量を
0.30%〜0.20%とすることによって、脱炭と酸化を促進
し、かつ化学的に安定なサブスケールを得られることが
わかる。この脱炭と酸化の促進は、脱炭焼鈍ラインにお
けるライン速度を速めることを可能とし、生産性の向上
にも寄与できる。
【0028】したがって、この発明では、均熱過程のP
(H2O) /P(H2)を0.70未満と限定し、昇温過程のP(H
2O) /P(H2)を均熱過程のP(H2O) /P(H2)よりも低い
値に設定すると限定する。均熱過程におけるP(H2O) /
P(H2)が0.70以上では、表面の化学的活性度が高いサブ
スケールになり、また脱炭焼鈍後のC含有量が高いこと
から、良好な被膜特性や磁気特性が得られない。また、
昇温過程のP(H2O) /P(H2)が均熱過程のP(H2O) /P
(H2)と同等以上では、酸素目付量が低く、脱炭焼鈍後の
C含有量が高いことから、良好な被膜特性や磁気特性が
得られない。脱炭焼鈍時のP(H2O) /P(H2)のより好適
な条件は、均熱過程のP(H2O) /P(H2)が0.40〜0.60、
昇温過程のP(H2O) /P(H2)が0.20〜0.40である。
【0029】さらに、この発明では、Cu含有量を0.03〜
0.20%と限定する。Cu含有量が0.03%に満たないと、所
期した良好なサブスケールの改善効果が得られず、一
方、Cu含有量が0.20%を超えると、その効果が飽和する
からである。Cu含有量のより好適な範囲は、0.05〜0.15
%である。
【0030】この発明に従い、昇温過程の雰囲気酸化性
を均熱過程のそれよりも低下させることによって酸化が
促進されるメカニズムはまだ明らかでないが、酸化の初
期過程で生成する酸化物の形態や物性が、その後の均熱
過程で酸素が鋼中に拡散し易い状態になるためと考えら
れる。また、均熱過程のP(H2O) /P(H2)が0.70以上に
なると酸洗減量が増大するのは、図2に示すけい素鋼板
の表面に生成する酸化物から考えると、FeO の生成によ
るものと思われる。FeO は酸素の内部拡散ではなく、Fe
の外部拡散によって生成する酸化物であり、このような
酸化物が表面に一旦生成すると表面の化学的活性度は増
大するものと思われる。
【0031】また、Cu含有量が0.03以上になると、昇温
過程の雰囲気酸化性を均熱過程のそれよりも低下させる
ことによる酸洗減量の低減効果が顕著になるメカニズム
はまだ明らかではないが、Cuが表面近傍に偏析するタイ
プの元素であり、その偏析量が一定量を超えると、酸化
の初期過程で生成する酸化物の形態や物性に影響を及ぼ
して、表面の化学的活性度を低減するためと考えられ
る。そして、その効果がCu含有量0.20%で飽和するの
は、表面近傍へのCu偏析量が多くなり過ぎるためと考え
られる。
【0032】この発明に従って脱炭焼鈍を行う際の昇温
過程の昇温速度は、通常の脱炭焼鈍での昇温速度10〜20
℃/sに限ることなく、5〜30℃/sの範囲で行うことがで
きる。昇温速度が5℃/sに満たなかったり、30℃/sを超
える場合には、他の脱炭焼鈍条件を満たしていても良好
なフォルステライト被膜が得られない。
【0033】次に、この発明における方向性珪素鋼板用
素材の好適な成分組成について説明する。Cは、熱間圧
延時のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行うため
に必要な成分であるが、多すぎると脱炭が難しくなるた
め、0.02〜0.10%の範囲が好適である。
【0034】Siは、鋼板の電気抵抗を高め、鉄損特性を
向上するために必要な成分であるが、少なすぎると鋼板
の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増大するために良
好な鉄損特性が得られず、多すぎると冷間圧延が困難と
なるので、2.5 〜4.5 %程度の範囲が好適である。
【0035】このC、Si及び前述のCuの他、方向性けい
素鋼板用素材には、1次再結晶組織の中からゴス方位以
外の粒成長を抑制することにより、ゴス方位の粒のみを
選択的に成長させるという2次再結晶に不可欠の機能を
有するインヒビターの形成成分を含有することが必須で
ある。このインヒビターには、AlN ,MnSe,MnS 等のよ
うに微細析出物として機能するものと、Sb, Sn等のよう
に粒界偏析によって機能するものの2つのタイプが知ら
れている。現在の方向性けい素鋼板の製造において主要
な機能を発揮しているのは、前者の析出物として機能す
るタイプのものであり、この発明においては、MnSe系、
MnS 系、AlN 系、 AlN−MnSe系、 AlN−MnS 系等いずれ
のインヒビター系を用いる場合でも適用できる。なお、
AlN は強い抑制力を有するため、AlN を含むインヒビタ
ー系の場合は高磁束密度の製品を得ることができるとさ
れている。
【0036】Mnは、インヒビター成分として必要である
が、過剰になるとインヒビターの粒子径が粗大化して粒
成長抑制力が低下するため、0.03〜0.30%の範囲が好適
である。
【0037】Se及び/又はSは、インヒビター成分とし
て必要であるが、過剰になると仕上げ焼鈍での純化が困
難となるため、合計で0.01〜0.05%の範囲が好適であ
る。
【0038】Al及びNは、AlN インヒビターを形成する
ために必要である。Alは、少なすぎると磁束密度が低下
し、多すぎると2次再結晶が安定しなくなるため、酸可
溶Alとして0.01〜0.05%の範囲が好適である。また、N
は、少なすぎるとAlN インヒビターの量が不足して磁束
密度が低下し、多すぎるとブリスターと呼ばれる表面欠
陥が製品に多発するため、0.004 〜0.012 %の範囲が好
適である。
【0039】さらに、この発明では、上述した粒界偏析
によって機能するインヒビターSb、Sn等を併用して用い
ることができる。特に、磁界800A/mにおける磁束密度B
8 値で1.92T 以上という極めて優れた磁気特性を有する
高級方向性けい素鋼板を製造するに当たっては、析出物
タイプのみならず、粒界偏析タイプのインヒビターをも
併用して、これらのインヒビター効果を最大限に発揮さ
せることが有利である。
【0040】Sb、Sn等の粒界偏析型インヒビター成分
は、その添加量が少なすぎると磁気特性への改善効果が
少なく、多すぎるとぜい化やフォルステライト被膜への
悪影響が生じるため、0.01〜0.30%の範囲が好適であ
る。
【0041】また、熱間圧延時の表面ぜい化に起因する
表面欠陥を防止するために、0.10%以下のMoを添加する
ことも有効である。
【0042】次に、この発明の好適製造条件について説
明する。上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、連続鋳
造または造塊−分塊法により、所定厚みのスラブとした
のち、インヒビター成分であるAlやSe,Sを完全に固溶
させるために1350〜1450℃に加熱する。上記のスラブ加
熱後、熱間圧延を行い、次いで必要に応じて熱延板焼鈍
を施す。次いで、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧
延により、0.23〜0.35mm程度の最終製品板厚に仕上げ
る。
【0043】ついで、脱炭焼鈍を施すわけであるが、こ
の脱炭焼鈍は、既に述べたこの発明に従う脱炭焼鈍条件
に従って行うことが肝要である。
【0044】その後、鋼板表面に MgOを主成分とする焼
鈍分離剤を塗布してから、1000〜1200℃で3〜50h 程度
の2次再結晶焼鈍および純化焼鈍を施して製品板とす
る。なお、その後さらに、りん酸塩系の上塗りコーティ
ングを施すことは有利である。
【0045】
【実施例】
実施例1 表2に示す組成の方向性けい素鋼板用スラブを熱間圧延
して板厚2.3mm の熱延板にした後、1000℃で均一化焼鈍
を行い、次いで冷間圧延を、1100℃で2分間の中間焼鈍
を挟んで2回行って0.23mmの最終冷延板厚とした。これ
らの冷延板をアルカリ脱脂して表面を清浄化した後、H2
−H2O −N2雰囲気中にて、840 ℃で120秒の脱炭焼鈍を
行った。この脱炭焼鈍のとき、昇温速度は10℃/sとし、
昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に
表3に示す値に制御した。次いで、5%のTiO2を含有す
るMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして鋼板表面に塗布、乾
燥させた後、H2雰囲気中での1200℃で10時間の2次再結
晶、純化焼鈍を行った。この後、りん酸マグネシウムと
コロイダルシリカを主成分とするコーティングを施し
た。
【0046】このようにして得られた製品の、磁界800A
/mにおける磁束密度B8 値、1.7 T、50Hzにおける鉄損
17/50 値、被膜の曲げ密着性及び被膜外観の均一性に
ついて調査した。この被膜の曲げ密着性は、5mm間隔で
種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜のはく
離が生じない最小径で評価した。また、脱炭焼鈍後の鋼
板のC含有量及び酸素目付量についても化学分析を行っ
た。これらの結果を表3に併記する。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】表3によれば、均熱過程のP(H2O) /P(H
2)が0.70を超えたNo. 9,10は脱炭が不十分であり、ま
た磁気特性、被膜密着性、被膜外観が劣っている。ま
た、昇温過程のP(H2O) /P(H2)を均熱過程のそれより
も低くしなかったNo. 7,8は、脱炭と酸素目付量が不
十分であり、かつ磁気特性、被膜密着性、被膜外観も劣
っている。そして、Cuを含有しないNo.11, 12 は、磁気
特性の向上が見られない。これらに対して、発明例であ
るNo. 1〜6は、脱炭、酸素目付量ともに良好なレベル
であり、製品の磁気特性、被膜特性ともに優れている。
【0050】実施例2 表4に示す組成の方向性けい素鋼板用スラブを熱間圧延
して板厚2.0mm にした後、900 ℃で均一化焼鈍を行い、
次いで冷間圧延を970 ℃で2分間の中間焼鈍を挟んで2
回行って最終冷延板厚0.23mmとした。これらの冷延板を
アルカリ脱脂して表面を清浄化した後、H2−H2O −N2
囲気中にて、820 ℃で120 秒の脱炭焼鈍を行った。この
脱炭焼鈍のとき、昇温速度は15℃/sとし、昇温過程及び
均熱過程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表5に示す値
に制御した。次いで、1%のTiO2と2%のSrSO4 を含有
するMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして塗布し乾燥させた
後、N2雰囲気中850 ℃で50時間の2次再結晶焼鈍と、引
き続くH2雰囲気中での1200℃で10時間の純化焼鈍を行っ
た。この後、実施例1と同様の処理を行い、得られた製
品について、実施例1と同様の調査を行った。これらの
結果を表5に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】表5によれば、均熱過程のP(H2O) /P(H
2)が0.70を超えたNo. 9,10は脱炭が不十分であり、ま
た磁気特性、被膜密着性、被膜外観が劣っている。ま
た、昇温過程のP(H2O) /P(H2)を均熱過程のそれより
も低くしなかったNo. 7,8は、脱炭と酸素目付量が不
十分であり、かつ磁気特性、被膜密着性、被膜外観も劣
っている。そして、Cuを含有しないNo.11, 12 は、磁気
特性の向上が見られない。これらに対して、この発明例
であるNo. 1〜6は、脱炭、酸素目付量ともに良好なレ
ベルであり、製品の磁気特性、被膜特性ともに優れてい
る。
【0054】
【発明の効果】この発明によれば、被膜特性、磁気特性
ともにきわめて優れた方向性けい素鋼板を安定して生産
することができる。また、脱炭焼鈍における脱炭及び酸
化速度も速くなるため、生産性の向上にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cr含有量と酸洗減量、酸素目付量、C含有量の
関係を示すグラフである。
【図2】3%けい素鋼の湿水素中における生成酸化物の
平衡状態図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−185725(JP,A) 特開 平2−240215(JP,A) 特公 平3−57167(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 9/46 501 C21D 8/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性けい素鋼板用スラブを熱間圧延し
    た後、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施し、
    次いで脱炭焼鈍を施した後、MgO を主体とする焼鈍分離
    剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程よ
    りなる方向性けい素鋼板の製造方法において、 上記スラブに、Cu:0.03〜0.20wt%を含有するものを用
    い、かつ上記脱炭焼鈍の際、その均熱過程における水素
    分圧に対する水蒸気分圧の比P(H2O) /P(H2)を0.70未
    満に、かつ昇温過程における水素分圧に対する水蒸気分
    圧の比P(H2O) /P(H2)を均熱過程よりも低い値に設定
    することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
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