JP4585141B2 - 方向性珪素鋼板の製造方法及び脱炭焼鈍炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として変圧器その他の電気機器等の鉄心として利用される一方向性珪素鋼板の製造方法、及びその方法に適した脱炭焼鈍炉に関するものである。
特に、その表面を効果的に仕上げることにより、鉄損特性の向上を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
一方向性珪素鋼板は、磁気鉄心として多くの電気機器に用いられている。一方向性珪素鋼板は、Siを0.8〜4.8%含有し、製品の結晶粒の方位を{110}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。その磁気特性として磁束密度が高く(B8 値で代表される)、鉄損が低い(W17/50 値で代表される)ことが要求される。特に最近では、省エネルギーの見地から電力損失の低減に対する要求が高まっている。
【0003】
この要求に応え、一方向性珪素鋼板の鉄損を低減させる手段として、磁区を細分化する技術が開発された。
積み鉄心の場合、仕上げ焼鈍後の鋼板にレーザービームを照射して局部的な微少歪を与えることにより、磁区を細分化して鉄損を低減させる方法が、例えば特開昭58−26405号公報に開示されている。
しかしながら、これらの磁区の動きを観察すると、鋼板表面のグラス皮膜の凹凸によりピン止めされ、動かない磁区も存在していることが分かった。従って、方向性珪素鋼板の鉄損値を更に低減させるためには、磁区細分化と合わせて磁区の動きを阻害する鋼板表面のグラス皮膜の凹凸によるピン止め効果をなくすことが重要であると考えられる。
【0004】
そのためには、磁区の動きを阻害する鋼板表面のグラス皮膜を形成させない事が有効であると考えられ、その手段として、焼鈍分離剤として粗大高純アルミナを用いることによりグラス皮膜を形成させない方法が、例えばU.S.P.3785882号に開示された。しかしながらこの方法では表面直下の介在物をなくすことができず、その介在物によるピニング効果のため、鉄損の向上代はW15/60 で高々2%に過ぎない。
【0005】
この表面直下の介在物を制御し、かつ表面の鏡面化を達成する方法として、仕上げ焼鈍後に表面酸化層を除去した後に化学研磨或いは電解研磨を行う方法が、例えば特開昭49−96920号公報、特開昭64−83620号公報に開示されている。しかしながら、化学研磨・電解研磨等の方法は、研究室レベルでの少試料の材料を加工することは可能であるが、工業的規模で行うには薬液の濃度管理、温度管理、公害設備の付与等の点で大きな問題があり、いまだ実用化されるに至っていない。
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために種々の実験を行い、脱炭焼鈍の露点を制御し、脱炭焼鈍時に形成される酸化層において鉄系酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)を形成させないことが、表面の介在物を消去することに有効であること(特開平7−118750号公報)、またこのような酸化層の制御と脱炭を両立させるためには、脱炭焼鈍工程において加熱速度を9℃/0秒以上で770〜860℃の温度域まで加熱し、鉄系酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)を形成させない雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.01〜0.15で焼鈍を行えば良いこと(特開平7−278668号公報)を提示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
脱炭焼鈍のヒ−トサイクルは、例えば特開平1ー290716号公報、特開平6ー212262号公報、特公平8−32929号公報、特開平9−256051号公報等に開示されるように、製品の磁気特性に影響を及ぼす一次再結晶組織を調整するうえで重要な制御因子である。
本発明は、脱炭焼鈍工程の加熱帯の一部を酸素含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ、更に均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O /PH2)に制御して焼鈍することにより、前記特開平7−278668号公報に開示されたヒ−トサイクルの適正範囲を更に広げる方法と、その方法に適した脱炭焼鈍炉を開示するものである。この方法及び炉により、脱炭焼鈍の操業安定化または一次再結晶組織の適正化により、製品の磁気特性を大幅に改善することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために種々の実験を行い、脱炭焼鈍工程の加熱帯の一部を酸素含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ、更に均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O /PH2)に制御して焼鈍することにより、加熱帯、均熱帯のヒ−トサイクルの適正領域が広い範囲で鋼板表面の酸化層と脱炭が両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の要旨は以下の構成からなる。
(1) 質量%で、
Si:0.8〜4.8%、 C:0.003〜0.1%、
酸可溶性Al:0.012〜0.050%
を含有する珪素鋼帯を冷延・脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し仕上げ焼鈍を施す工程を含む方向性珪素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍工程の加熱帯の一部を酸素含有雰囲気として焼鈍し、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ、更に均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O/PH2):0.01以上0.15以下(但し0.15を除く)に制御して焼鈍することを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
(2) 質量%で、
Si:0.8〜4.8%、 C:0.003〜0.1%、
酸可溶性Al:0.012〜0.050%
を含有する珪素鋼帯を冷延・脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し仕上げ焼鈍を施す工程を含む方向性珪素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍工程において、酸素含有雰囲気中で予備焼鈍を行い、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ、その後、脱炭焼鈍を均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O/PH2):0.01以上0.15以下(但し0.15を除く)に制御して焼鈍することを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
(3) 酸素含有雰囲気中での焼鈍により鋼板表面に酸素量として、0.03g/m2 以上0.3g/m2 以下となる酸化物を形成することを特徴とする前記(1)または(2)記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
(4) 焼鈍分離剤として、アルミナを主成分として使用することを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
(5) 焼鈍分離剤として、マグネシアを主成分として使用することを特徴とする前記項(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
(6) 方向性珪素鋼板の脱炭焼鈍炉において、大気雰囲気中で焼鈍する予備焼鈍炉を備えたことを特徴とする脱炭焼鈍炉。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者等は、珪素鋼板の脱炭挙動に対し、脱炭焼鈍初期(加熱過程)で形成される酸化層が以降の脱炭挙動に大きな影響を及ぼすものと考え、これに関連した種々の実験を行った。
質量で、Si:3.3%、Mn:0.14%、C:0.05%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%、残部実質的にFeと不純物である珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚1.6mmに熱延した。この熱延板を1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.15mmに冷延した。この冷延板に脱炭焼鈍を施した。その際、脱炭設備の加熱帯と均熱帯の間をシ−ルし、これらの炉帯の雰囲気を分離した。
【0011】
加熱帯の雰囲気ガスとして、(1)酸化度(PH2O /PH2):0.06の湿潤ガス(水蒸気−水素−窒素混合ガス)中、及び(2)酸素5%含有する窒素ガス中で830℃まで加熱し、830℃で90秒間、酸化度(PH2O /PH2):0.06の雰囲気ガス中で脱炭焼鈍を施した。ここでの脱炭焼鈍における加熱時間として、(1)30秒(28℃/秒)、(2)60秒(14℃/秒)、(3)90秒(9℃/秒)、(4)120秒(7℃/秒)の各条件を採用した。
【0012】
焼鈍後の炭素量を図1に示す。図1より、(1)酸化度が0.06の湿潤ガス(水蒸気−水素−窒素混合ガス)の場合は、加熱速度9℃/秒以上で鋼中炭素量が0.003%以下になるが、酸素を5%含有する窒素ガス中で加熱した場合には、全ての加熱速度で鋼中炭素量が0.003%以下になることが分かる。
【0013】
この原因は、加熱過程で鋼板表面に形成される酸化物の質に依存するものと考えられる。即ち、脱炭焼鈍の表面においては、一般に脱炭(鋼中炭素の酸化)反応とシリカ等の酸化物形成(鋼中シリコンの酸化)反応が、雰囲気の水分に対して競合して行われている。鉄系酸化物が形成しないような低酸化度雰囲気ガス中で焼鈍すると、一般に鋼板表面のシリカは稠密な膜状で生成し脱炭を阻害するが、加熱速度を高めこのシリカ膜が全面を覆わないうちに脱炭反応を開始させることにより、脱炭反応のサイトでのシリカ形成が抑制され、引き続いて脱炭反応がおこるものと考えられる。
【0014】
本発明は、加熱過程の一部を従来の湿潤ガス(水蒸気−水素−窒素混合ガス)ではなく、酸素含有雰囲気ガス中で行うことにより、鋼板表面に一旦Fe3 O4 、FeO等の鉄系酸化物を形成させて、稠密な膜状のシリカ形成反応を抑制した後、均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O /PH2)に制御して焼鈍することにより、鉄系酸化物を還元すると共に脱炭反応を促進させるものである。
【0015】
この結果を基に、脱炭焼鈍温度の影響を調べた。すなわち、前述の冷延板を (1)雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.06の湿潤ガス中、及び(2)酸素含有雰囲気ガス中で、加熱速度28℃/秒で740〜920℃の温度範囲で焼鈍を行った。
焼鈍後の炭素量を図2に示す。図2より、雰囲気ガスの酸化度が0.06の湿潤ガスの場合は、焼鈍温度770〜860℃の範囲で鋼中炭素量が0.003%以下になるが、酸素含有雰囲気ガスの場合には770〜920℃の焼鈍温度で鋼中炭素量が0.003%以下になり、適正温度域が拡がることが分かる。
【0016】
以上の結果より、脱炭焼鈍工程の加熱帯を酸素含有雰囲気ガス中で焼鈍し、鋼板表面に一旦鉄系酸化物を形成させ、均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O /PH2)に制御して焼鈍することにより、鋼板表面の酸化層制御と脱炭を両立可能な加熱帯、均熱帯のヒ−トサイクルの適正領域を広げることが可能となることが分かった。
【0017】
次に、酸素含有雰囲気ガス中の焼鈍により形成される鉄系酸化物の必要量を調査した。すなわち、先述の冷延板を酸素含有雰囲気ガス中で300〜700℃の温度域で100℃/秒で加熱し、1〜30秒焼鈍した後、酸化度が0.06の湿潤ガス中で28℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、830℃で90秒間脱炭焼鈍を施した。
【0018】
焼鈍後の炭素量を図3に示す。図3より、脱炭焼鈍の前に酸素含有雰囲気中で焼鈍することにより、鋼板表面の酸化層制御と脱炭を両立可能な加熱帯、均熱帯のヒ−トサイクルの適正領域を広げることが可能であること、また鋼板表面に鉄系酸化物の量が、鋼板面積当たりの酸素量として0.03g/m2 以上0.3g/m2 以下とすることにより、脱炭焼鈍後の鋼中炭素量が0.003%以下になることが分かる。0.03g/m2 未満では脱炭の阻害要因となるシリカの形成を抑制できない。また0.3g/m2 超では、均熱時の鉄系酸化物の還元に時間を要するために脱炭に悪影響を及ぼし、工業的に問題となる。
【0019】
この様に、酸素含有雰囲気ガス中で焼鈍することにより、鋼板表面の酸化物の質を制御することにより、鋼板表面の酸化層と脱炭を両立できるヒートサイクルの範囲が広がることが分かった。尚、当然ながら大気雰囲気も酸素含有雰囲気として採用可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
基本的な製造法としては、磁束密度B8 が高い製品を製造できる田口・坂倉等によるAlNとMnSを主インヒビタ−として用いる製造法(例えば特公昭40−15644号公報)、または小松等による(Al.Si)Nを主インヒビタ−として用いる製造法(例えば特公昭62−45285号公報)等を適用すれば良い。
【0021】
先ず、本発明における化学成分の限定理由を説明する。
Siは電気抵抗を高め、鉄損を下げる上で重要な元素である。含有量が4.8%を超えると、冷間圧延時に材料が割れ易くなり、圧延不可能となる。一方、Si量を下げると仕上げ焼鈍時にα→γ変態を生じ、結晶の方向性が損なわれるので、実質的に結晶の方向性に影響を及ぼさない0.8%を下限とする。
【0022】
酸可溶性Alは、Nと結合してAlNまたは(Al,Si)Nとしてインヒビタ−として機能するために必須の元素である。磁束密度が高くなる0.012〜0.050%を限定範囲とする。
【0023】
Nは製鋼時に0.01%超添加すると、ブリスターとよばれる鋼板中の空孔を生じるので、0.01%を上限とする。
他のインヒビター構成元素として、必要に応じてB,Bi,Se,Pb,Sn,Ti等を添加することもできる。
【0024】
Cは、残留すると製品特性(鉄損)の低下を引き起こすので、0.003%以下に抑えることが必要とされている。しかしながら、製鋼段階でC量を低くすると熱延板の結晶組織に粗大な{100}伸長粒が存在し、二次再結晶に悪影響を及ぼす。また、析出物や一次再結晶集合組織制御の観点からも、Cはある程度製鋼段階で添加することが必要である。従って、製鋼段階では0.003%以上、好ましくはα/γ変態が生じる0.02%以上添加することが望ましい。一方、0.1%より多く添加しても、上述の結晶組織、析出物等への影響はほぼ飽和し、脱炭に必要な時間が長くなるので、0.1%を上限とする。
【0025】
上記成分の溶鋼は、通常の工程により熱延板とされるか、もしくは溶鋼を連続鋳造して薄帯とする。前記熱延板または連続鋳造薄帯は直ちに、もしくは短時間焼鈍を経て冷間圧延される。
上記焼鈍は750〜1200℃の温度域で30秒〜30分間行われ、この焼鈍は製品の磁気特性を高めるために有効である。望む製品の特性レベルとコストを勘案して採否を決めるとよい。
冷間圧延は、一回もしくは焼鈍を挟む複数の冷延によって行う。基本的には特公昭40−15644号公報に開示されているように、最終冷延圧下率80%以上とすれば良い。
【0026】
冷間圧延後の材料は、鋼中に含まれる炭素を除去するために、湿水素雰囲気中で脱炭焼鈍を行う。脱炭焼鈍工程の加熱帯の一部を酸素含有雰囲気ガス中で焼鈍するか、または脱炭焼鈍工程に先立って酸素含有雰囲気中で焼鈍することにより、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ(本発明の鉄系酸化物を形成させる焼鈍とは、この両方を含むものとする。)、更に均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O /PH2)に制御して焼鈍することが本発明の特徴である。
酸素含有雰囲気ガスとしては、一般に酸素と窒素の混合ガスを用いるが、窒素をアルゴン等の不活性ガスに置き換えても良い。また酸素含有量としては0.1%から30%が良い。酸素含有量が0.1%より低いと、鉄系酸化物を形成させるために長時間を要し、また30%以上ではコストがかかり工業的に問題となる。
【0027】
酸素含有雰囲気ガス中の焼鈍の温度、時間は鋼板表面に形成された鉄系酸化物を主体とする酸化物の量が、酸素量として0.03g/m2 以上0.3g/m2 以下となるように行えば良い。均熱帯の雰囲気ガスは酸化度を0.01以上0.15以下(但し0.15を除く)として焼鈍すれば良い。酸化度が0.15以上の場合、製品の表面下に介在物が生成して鉄損低下の障害となる。また酸化度が0.01より低いと、脱炭速度が遅くなり工業的に問題となる。
このような脱炭工程を行う設備としては、加熱帯中または加熱帯と均熱帯の間に雰囲気シール装置を配設すればよい。
【0028】
この脱炭焼鈍板に、(Al,Si)Nを主インヒビタ−として用いる製造法 (例えば特公昭62−45285号公報)においては、窒化処理を施す。この窒化処理の方法は特に限定するものではなく、アンモニア等の窒化能のある雰囲気ガス中で行う方法等がある。量的には0.005%以上、望ましくは全窒素量として鋼中のAl当量以上窒化すれば良い。
【0029】
これらの脱炭焼鈍板を積層(コイル)する際に、シリカと反応し難いアルミナを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリ−もしくは静電塗布法等により塗布することにより、仕上げ焼鈍後の表面を鏡面状に仕上げ、鉄損を大きく低下させることができる。 また、従来のようにマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリ−で塗布、もしくは静電塗布法等によりドライ・コ−トすることも有効である。この場合は焼鈍分離剤としてアルミナを用いた場合のように表面は鏡面にはならないが、表面グラス被膜の凸凹を低減し、鉄損を従来製品よりも低下させることができる。
【0030】
この積層した脱炭焼鈍板を仕上げ焼鈍して、二次再結晶と窒化物の純化を行う。二次再結晶を、特開平2ー258929号公報に開示される様に、一定の温度で保持する等の手段により所定の温度域で行うことは、磁束密度を上げるうえで有効である。
二次再結晶完了後、窒化物の純化等を行うために100%水素で1100℃以上の温度で焼鈍する。
仕上げ焼鈍後、表面に張力コーテイング処理を行い、必要に応じてレーザー照射等の磁区細分化処理を施せば良い。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
質量%で、Si:3.3%、Mn:0.14%、C:0.05%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%を含有する珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚2.0mmに熱延した。この熱延板を1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.14mmに冷延した。
この冷延板の一部の試料を、(A)酸素1%含有する窒素ガス中、(B)大気雰囲気中で、(1)500℃、(2)600℃、(3)700℃で10秒焼鈍した。その後、加熱帯及び均熱帯の雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.12の湿潤ガス中で、5℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、830℃で110秒間脱炭焼鈍を施した。
焼鈍後の鋼板の炭素量を表1(表1−A,1−B)に示す。表1から、酸素含有雰囲気で予備焼鈍を施し、脱炭焼鈍前の鋼板表面の酸化物としての酸素量を所定の範囲とすることにより、脱炭焼鈍後炭素量が30ppm 以下に制御できることが分かる。
【0032】
【表1】
【0033】
(実施例2)
質量%で、Si:3.3%、Mn:0.1%、C:0.06%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.008%、Sn:0.05%を含有する珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚2.0mmの熱延板とした。
この熱延板を1100℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.22mmに冷延した。この冷延板を(A)酸素1%含有する窒素ガス中、(B)大気雰囲気中で700℃まで加熱速度28℃/秒で加熱し、また比較例として(C)加熱帯及び均熱帯の酸化度(PH2O /PH2):0.33(従来法)で加熱速度28℃/秒で加熱し、その後雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.12で830℃に加熱し、その後いずれも830℃で110秒焼鈍した。
これらの鋼板をその後、一部は(1)アルミナ(Al2 O3 )を、一部は(2)従来のようにマグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を水スラリ−で塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
これらの試料を張力コーテイング処理を施した後、レーザー照射して磁区細分化した。得られた製品の磁気特性を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
(実施例3)
実施例2の冷延板の一部の試料に、酸素(1)0%、(2)0.1%、(3)1%、(4)10%、(5)30%含有する窒素ガス中で、600℃で10秒焼鈍した。その後、加熱帯及び均熱帯の雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.12の湿潤ガス中で、5℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、830℃で150秒間脱炭焼鈍を施した。
焼鈍後の鋼板の炭素量を表3に示す。表3から、酸素含有雰囲気の予備焼鈍を施すことにより、脱炭焼鈍後炭素量が30ppm 以下に制御できることが分かる。
【0036】
【表3】
【0037】
(実施例4)
質量%で、Si:3.2%、Mn:0.07%、C:0.08%、S:0.025%、酸可溶性Al:0.026%、N:0.008%、Sn:0.12%、Cu:0.1%含有する珪素鋼スラブを1350℃で加熱した後、板厚2.3mmの熱延板とした。この熱延板を1000℃で2分間焼鈍した後、1.8mmの板厚まで冷延し、更に1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.22mmに冷延した。
この冷延板の一部の試料に、大気雰囲気中で(1)500℃、(2)600℃、(3)700℃で10秒焼鈍した。その後、加熱帯及び均熱帯の雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.12とした湿潤ガス中で、5℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、830℃で150秒間脱炭焼鈍を施した。
焼鈍後の鋼板の炭素量を表4に示す。表4から、大気雰囲気中の予備焼鈍を施すことにより、脱炭焼鈍後炭素量が30ppm 以下に制御できることが分かる。
【0038】
【表4】
【0039】
(実施例5)
質量%で、Si:3.2%、Mn:0.07%、C:0.08%、S:0.025%、酸可溶性Al:0.026%、N:0.008%、Sn:0.12%、Cu:0.1%含有する珪素鋼スラブを1350℃で加熱した後、板厚2.3mmの熱延板とした。この熱延板を1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.22mmに冷延した。
この冷延板の一部の試料に、酸素1%含有する窒素ガス中で(1)500℃、(2)600℃、(3)700℃で10秒焼鈍した。その後、加熱帯及び均熱帯の雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.12とした湿潤ガス中で、5℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、830℃で150秒間脱炭焼鈍を施した。
焼鈍後の鋼板の炭素量を表5に示す。表5から、酸素含有雰囲気の予備焼鈍を施すことにより、脱炭焼鈍後炭素量が30ppm 以下に制御できることが分かる。
【0040】
【表5】
【0041】
(実施例6)
実施例5に記載した脱炭板に、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリ−状で塗布した後,仕上げ焼鈍を施した。これらの試料を張力コーテイング処理を施した後、レーザー照射して磁区細分化した。得られた製品の磁気特性を表6に示す。本発明の条件範囲において低鉄損化が達成されることが分かる.
【0042】
【表6】
【0043】
【発明の効果】
本発明により、製品の表面を効果的に仕上げることにより、従来製品よりも低い鉄損の方向性珪素鋼板をコストアップすることなく製造することができる。
即ち、脱炭焼鈍工程において鋼板表面の酸化層制御と脱炭が広い範囲のヒ−トサイクルで両立でき、脱炭焼鈍の操業安定化または一次再結晶組織の適正化により、製品の磁気特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍時の加熱速度と脱炭焼鈍後の炭素残留量の関係を示す図である。
【図2】脱炭焼鈍時の焼鈍温度と脱炭焼鈍後の炭素残留量の関係を示す図である。
【図3】酸素含有雰囲気中の焼鈍後の酸素量と脱炭焼鈍後の炭素残留量の関係を示す図である。
Claims (6)
- 質量%で、
Si:0.8〜4.8%、
C :0.003〜0.1%、
酸可溶性Al:0.012〜0.050%
を含有する珪素鋼帯を冷延・脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し仕上げ焼鈍を施す工程を含む方向性珪素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍工程の加熱帯の一部を酸素含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ、更に均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O/PH2):0.01以上0.15以下(但し0.15を除く)に制御して焼鈍することを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。 - 質量%で、
Si:0.8〜4.8%、
C :0.003〜0.1%、
酸可溶性Al:0.012〜0.050%
を含有する珪素鋼帯を冷延・脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し仕上げ焼鈍を施す工程を含む方向性珪素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍工程において、酸素含有雰囲気中で予備焼鈍を行い、鋼板表面に鉄系酸化物を形成させ、その後、脱炭焼鈍を均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度(PH2O/PH2):0.01以上0.15以下(但し0.15を除く)に制御して焼鈍することを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。 - 酸素含有雰囲気中での焼鈍により鋼板表面に酸素量として、0.03g/m2 以上0.3g/m2 以下となる酸化物を形成することを特徴とする請求項1または2記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
- 焼鈍分離剤として、アルミナを主成分として使用することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
- 焼鈍分離剤として、マグネシアを主成分として使用することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
- 方向性珪素鋼板の脱炭焼鈍炉において、大気雰囲気中で焼鈍する予備焼鈍炉を備えたことを特徴とする脱炭焼鈍炉。
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