JP3952601B2 - 磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器その他の電気機器の鉄心等の用途に用いるのに適した方向性けい素鋼板の製造方法に関するものであり、特に磁気特性に優れるけい素鋼板を提供せんとするものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼板は、主として変圧器あるいは回転機器等の鉄心材料として使用され、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損及び磁気歪が小さいことが要求される。特に近年、省エネルギー及び省資源の観点から磁気特性に優れた方向性けい素鋼板のニーズはますます高まっている。
【0003】
磁気特性に優れる方向性けい素鋼板を得るには、{110}<001>方位、いわゆるゴス方位に高度に集積した2次再結晶組織を得ることが肝要である。
【0004】
かかる方向性けい素鋼板は、二次再結晶に必要なインヒビター、例えばMnS,MnSe, AlN等を含む方向性けい素鋼スラブを加熱して熱間圧延を行ったのち、必要に応じて焼鈍を行い、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍を行ったのち、鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を行うことによって製造される。
【0005】
そして、この方向性けい素鋼板の表面には、特殊な場合を除いて、フォルステライト(Mg2SiO4) を主体とする絶縁皮膜(以下、単に「フォルステライト絶縁皮膜又はフォルステライト皮膜」という。)が形成されているのが普通である。
この皮膜は表面の電気的絶縁だけでなく、その低熱膨張性に起因する引張応力を鋼板に付与することにより、鉄損さらには磁気歪をも効果的に改善する。
【0006】
一方、近年、鋼板のヒステリシス損を改善して磁気特性を向上させるために、フォルステライト皮膜を有さない鋼板の製造方法に関する技術も開示されている。これらは、例えば脱炭焼鈍後、鋼板にAl2O3 等を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を行って、フォルステライト皮膜を有さない鋼板を製造した後、張力コーティングを施して製造される。
【0007】
方向性けい素鋼板の磁気特性の改善技術は多種多様にわたっているが、AlNを主たるインヒビターとする方向性けい素鋼板の製造においては、酸可溶AlとNの量が二次再結晶に大きく影響して、得られる製品の磁気特性を左右することが知られている。
【0008】
そのために、例えば特開平1−316421号公報、同2−8328号公報、同2−209426号公報、同2−209427号公報及び同2−243721号公報では、酸可溶Al量(%)を{(27/14)×N(%)+0.0035}〜{(27/14)×N(%)+0.0100}の範囲にすることが提案されている。
【0009】
また、特開平2−77524号公報、同2−209428号公報、同2−213419号公報及び同2−243720号公報では、酸可溶Al量(%)を{(27/14)×N(%)+0.0030}〜{(27/14) ×N(%)+0.0150}の範囲にすることが提案されている。
【0010】
かかる提案がされた方法では、いずれの場合も酸可溶Alの量が提案された式の範囲よりも多いと、二次再結晶が不完全になって細粒が発生して磁気特性が劣化するとされており、また、酸可溶Alの量が提案された式の範囲よりも少ないと、二次再結晶は安定であるが方向性が劣るため良好な鉄損が得られにくいとされている。
【0011】
また、特公昭62−53576号公報では、酸可溶AlとNの量によって表されるAlR 値{AlR =酸可溶Al(ppm) −14/27 ×N(ppm) }が多くなるに対応して、▲1▼最終冷延前の焼鈍における均熱時間を短く、▲2▼最終冷延前の焼鈍後における冷却水温を高く、▲3▼冷間圧延におけるパス間時効を弱く、▲4▼脱炭焼鈍における昇温速度を遅く、▲5▼1次再結晶焼鈍における最高板温を低く、▲6▼高温仕上げ焼鈍における昇温速度を速く、▲7▼高温仕上げ焼鈍における昇温中雰囲気の中のH2 %を低く、することの少なくとも1項を行う技術が開示されている。
【0012】
しかし、工業生産における酸可溶AlとNの成分的中技術は近年かなり向上してきたとはいえ、現行溶製技術ではある程度の実績のばらつきはやむを得ない。
また、たとえスラブ段階での分析値では酸可溶Al量が限定した範囲内であっても、分析採取位置による酸可溶AlとNの量の若干の変動、あるいは熱延板焼鈍・中間焼鈍やその後の冷却条件などによる酸可溶Al量の若干の変動、途中工程条件での変動等が生じる。
【0013】
故に、部分的に二次再結晶不良が生じたり、方位の劣る二次粒が成長して磁性劣化が生じる場合があり、加えて、AlR 値に対する各条件(▲1▼〜▲7▼)の制御範囲が明示されていないこともあり、磁性不良を充分に抑制できない。
【0014】
さらに、AlNは、仕上げ焼鈍炉内の雰囲気の影響で分解あるいは粗大化するため、炉内雰囲気の制御、特に炉内のN2 分圧の制御が重要であることが知られており、例えば、特開昭52−78615号公報には、窒素含有量20〜70%の窒素−水素雰囲気中にて700 〜1000℃で二次再結晶させ、次いで、水素雰囲気中にて1000〜1200℃の温度で2時間以上加・均熱して脱窒処理を行う方法についての開示が、特開昭55−47324号公報には、昇温中850 〜950 ℃までのいずれかの温度の焼鈍雰囲気のN2 分圧を20%以下とし、二次再結晶が開始し完了するまでの温度領域ではN2 分圧を3%以上とする技術についての開示が、特開昭59−185726号公報には、仕上げ焼鈍炉内の雰囲気ガスとしてH2 とArの混合ガスを用いる技術の開示が、特開昭64−75627号公報には、段階的にN2 分圧を増加させる技術についての開示が、特開平4ー187721号公報には、段階的にN2 分圧を減少させる技術についての開示が、そして、特公平7−122094号公報には、最終冷延圧下率が50〜80%の場合にN2 分圧を50%未満とする技術についての開示がある。
【0015】
しかし、これらの公報に記載された技術では、いずれも成分や工程条件の変動による磁性のばらつきを充分に抑制して良好な磁性を安定的に得ることはできなかった。
【0016】
また、特開平7−118748号公報では、熱延板の酸可溶Al量に応じて仕上げ焼鈍昇温過程での800 ℃以上二次再結晶完了までのN2 とH2 の分圧を制御する方法が開示されている。
【0017】
しかし、この方法では、AlNインヒビターの1成分である酸可溶Al量のみに着目しており、AlとNの量の両者には着目していなかった。尚、特開平7−305116号公報と特開平8−279408号公報では、AlR 値{AlR =酸可溶Al(ppm) −14/27×N(ppm) }に応じて仕上げ焼鈍中のN2 分圧を制御する技術が開示されているが、これらは脱炭焼鈍後、鋼板に窒化処理を行う場合に関して規定したものであった。
【0018】
さらに、インヒビター成分としてAlNを含む方向性けい素鋼板においては、脱炭焼鈍時に形成されるサブスケールの物性が仕上げ焼鈍中の脱窒挙動あるいは焼鈍雰囲気からの浸窒挙動に大きく影響を及ぼし、従って、磁気特性にも大きな影響を与えることが知られている。
【0019】
これまで方向性けい素鋼板の脱炭焼鈍に関しては、例えば、特開昭59−185725号公報に開示されているように、脱炭焼鈍後、鋼板の酸素含有量を制御する方法、特公昭57−1575号公報に開示されているように、雰囲気の酸化度を脱炭焼鈍の前部領域では0.15以上とし、引き続く後部領域の酸化度を0.75以下でかつ前部領域よりも低くする方法、特開平2−240215号公報や特公昭54−24686号公報に開示されているように、脱炭焼鈍後に非酸化性雰囲気中で850 〜1050℃の熱処理を行う方法、また、特公平3−57167号公報に開示されているように、脱炭焼鈍後の冷却を750℃以下の温度域では酸化度を0.008 以下として冷却する方法、あるいは特開平6−336616号公報に開示されているように、均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値にする方法、さらに特開平7−278668号公報に開示されているように昇温速度と焼鈍雰囲気を規定する方法等が知られている。
【0020】
また、良質なフォルステライト皮膜を得る方法としては、例えば特開昭59−226115号公報には、素材中にMoを0.003 〜0.100 %の範囲で含有させると共に、脱炭焼鈍を、雰囲気温度:820 〜860 ℃でかつ、P(H2O)/P( H2) で表される雰囲気酸化性:0.30〜0.50の条件下に行って、鋼板表面に形成されるサブスケール中のシリカ(SiO2)とファイヤライト(Fe2SiO4) の比Fe2SiO4/SiO2を0.05〜0.45の範囲に調整する方法についての開示があり、また、特公平7−42503号公報には、熱延板焼鈍時の雰囲気と、脱炭焼鈍時の雰囲気とを規定した方法について開示されている。
【0021】
しかしながら、上述した方法は、いずれも一定の効果が認められるとはいえ、必ずしも素材の酸可溶AlやNの量の変動や途中工程での変動に起因する磁性劣化の抑制に対しては必ずしも充分なものではなかった。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上述した問題点を有利に解決するものであり、素材中に含有する酸可溶AlとNの量の変動や途中工程での雰囲気の変動に起因する磁性劣化を効果的に抑制することによって、従来法で製造したけい素鋼板に比べて磁気特性に優れる方向性けい素鋼板を安定して製造できる方法を提案することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、AlNを主インヒビターとして利用する基本成分系の素材を用いて、仕上げ焼鈍中のインヒビター変化に及ぼす各種工程条件の影響を詳しく調査し、鋭意検討したところ、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性の影響が大きいことを新たに見出した。以下にその検討結果を示す。
【0024】
C:0.065 wt%、Si:3.25wt%,Mn:0.072 wt%,酸可溶Al:0.023 wt%,N:0.0080 wt %,Se:0.018 wt%,Sb:0.025 wt%を含むけい素鋼スラブを、1430℃で30分間加熱後、熱間圧延を施して2.0 mm厚の熱延板とした。ついで1100℃で2分間焼鈍後、40℃/sの速さで急冷処理を行ってから、冷間圧延し最終冷延板厚:0.23mmとした。このとき、最終冷間圧延は、3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃になるような圧延を行った。
【0025】
次いで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O −N2 雰囲気にて850 ℃の温度で、片面当たりの酸素目付量が0.5 〜0.6 (g/m2)になるように脱炭焼鈍を施した。
【0026】
その後、MgO にTiO2を6wt%配合した焼鈍分離剤をスラリー状にして、それぞれの脱炭焼鈍板コイルに塗布して乾燥させたのち、窒素雰囲気中で850 ℃で20時間保持し、続いて、窒素:25%,水素:75%の雰囲気中で15℃/hの昇温速度を保ちながら仕上げ焼鈍を行った。
【0027】
図1は、脱炭焼鈍の際の均熱雰囲気の酸化性、具体的には雰囲気酸化性(P( H2O)/ P(H2))を0.3 〜0.6 の範囲で変化させたときの、仕上げ焼鈍途中温度(℃)と鋼中の酸可溶Al含有量(ppm) との関係を示したものである。
【0028】
尚、酸可溶Alは、その大部分がAlN を形成してインヒビターになっているので、鋼中の酸可溶Al含有量はインヒビター強度を示す指標と考えてよい。また、雰囲気酸化性(P( H2O)/ P(H2))は、露点とH2ガス濃度によって調整した。
【0029】
図1の結果から、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P( H2O )/P( H2))の値が低い場合ほど、インヒビター強度が速く劣化することがわかった。
【0030】
次に、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P( H2O )/P( H2))の値が低い場合ほどインヒビター強度が速く劣化する理由について調べたところ、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性の違いによってサブスケール中のSiO2層の構造が変化していることを新たに見出した。
【0031】
脱炭焼鈍均熱中の雰囲気酸化性の違いによるサブスケール中のSiO2層の構造の変化は、特開平7−103938号公報、同8−218124号公報あるいはCAMP−ISIJ8(1995),1591、CAMP−ISIJ9(1996),448に開示されている電気化学的なサブスケールの評価法によって把握することができる。
【0032】
図2は、この方法で得られる代表的な電位−時間曲線の一例である。
図2に示すように、通常の場合、I〜IVの4つの領域に分けられが、発明者らの鋭意検討を行ったところ、III の領域の幅は、サブスケールを形成するSiO2中のO量と比例関係にあり、しかも、脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性が異なると、その関係が異なってくることが新たにわかった。
【0033】
即ち、図3に、脱炭焼鈍均熱中の雰囲気酸化性を変化させたときの、III 領域の幅(s) に対してサブスケールSiO2量中の酸素目付量(g/m2) を測定したときの一例を示してあるが、この図から分かるように、III 領域の幅とサブスケールSiO2量中のO量とは比例関係にあることがわかった。尚、上記比例関係は、焼鈍時の雰囲気酸化性が異なっても成り立つが、図3からもわかるように、同一直線上には乗ってなく、完全な比例関係は成立していない。
【0034】
これは、サブスケール中のSiO2層の構造が脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性により異なることを反映しているものと考えられる。
【0035】
図4(a),(b) は、サブスケール層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM) によって観察したものであり、図4(a) は低雰囲気酸化性下でサブスケール層を形成した場合(P(H2O)/P(H2)=0.40 )、図4(b) は高雰囲気酸化性下でサブスケール層を形成した場合(P(H2O)/P(H2)=0.55 )のものであり、前記酸素目付量はともに0.6 (g/m2)である。
【0036】
これらの図から、ほぼ同じ酸素目付量であっても脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性が高くなるとラメラ(あるいはフィルム)状のSiO2が多く存在するのが観察され、従って、サブスケール中のSiO2層の構造が脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性により異なることが確認できた。
【0037】
尚、脱炭焼鈍温度として通常採られる780 〜880 ℃の温度範囲で、脱炭焼鈍時の均熱温度がサブスケール構造に及ぼす影響についても調べたが、均熱温度が影響するのは脱炭量や鋼板表層の酸化量に対してであって、サブスケール構造にはほとんど影響しなかった。
即ち、サブスケール構造の支配因子は均熱時の雰囲気酸化性であった。
【0038】
また、特開昭57−1575号公報に開示されているような雰囲気の酸化度を脱炭焼鈍の前部領域では0.15以上とし、引き続く後部領域の酸化度を0.75以下でかつ前部領域よりも低くする方法や特許第2579717号公報に開示されているような雰囲気の酸化度を脱炭焼鈍の前部領域では0.15〜0.75の範囲とし、引き続く後部領域の酸化度を0.15以下にする方法の場合も、サブスケール構造の支配因子は前部領域の雰囲気酸化性であって、後部領域の雰囲気酸化性はサブスケールのほんの表層のみにしか影響しないことも判明した。
【0039】
このようにサブスケール中のSiO2層の構造が変化すると、これに伴ってインヒビターの分解挙動が異なってくることが新たにわかった。
【0040】
尚、特許第2716916号公報には、「インヒビター劣化の律速過程は、鋼板界面におけるAlの酸化過程が最大の因子であり、鋼板中の酸可溶Alは、仕上げ焼鈍中でSiO2を主体とする酸化層から酸素をとり、 Al2O3等となって酸化層中に析出する。故に、鋼板中の酸可溶Al量は減少していく。」旨が記載されている。
【0041】
また、インヒビター強度の変化は、簡便的には鋼板表面に蛍光X線を照射することによるAl分析によってもわかる。
【0042】
図5は、図1と同一試料を用い、これらの各表面の蛍光X線Al分析結果であるが、図1及び図5を見ればわかるように、鋼板中の酸可溶Al量が速く減少していく試料ほど、蛍光X線でのAl強度は速く大きくなっていることがわかる。
そこで以後の実験では、インヒビター強度の変化を簡便的に鋼板表面の蛍光X線Al分析によって調べた。
【0043】
以上から、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P(H2O)/P(H2)) の違いにより、仕上げ焼鈍時のインヒビター(AlN)の分解過程が大きく異なることがわかった。
【0044】
この発明は主にこの新たな知見に立脚してなされたものである。
すなわち、例えば特開平2−77524号公報では、前述したように酸可溶Al量(%)を{(27/14) ×N( %)+0.0030}〜{(27/14) ×N( %)+0.0150}の範囲にすることが提案されているが、この範囲内であっても酸可溶Al量が多いと二次再結晶が不完全になって細粒が発生しやすく、一方、酸可溶Al量が少ないと二次再結晶は安定であるが方向性が劣るため良好な鉄損が得られにくい場合があったが、この発明は、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P(H2O)/P(H2)) の違いにより、仕上げ焼鈍時のインヒビター(AlN) の分解過程が大きく異なるという新たな知見に基づき、酸可溶Al量とN量の比に応じて脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P(H2O)/P(H2)) を制御すれば、安定的に磁気特性の優れた製品が得られるばかりか、従来以上に優れた磁気特性が得られる可能性があることに着目してなされたものである。
【0045】
この発明は、具体的には、C:0.03〜0.12wt%、Si:2.0 〜4.5 wt%、酸可溶Al:0.01〜0.05wt%、N:0.004 〜0.012 wt%を含有するけい素鋼スラブを、熱間圧延した後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、その後、脱炭・一次再結晶焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍及び純化焼鈍を施す一連の工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法において、鋼中の酸可溶Al含有量(wt%)とN含有量(wt%)の比(=Al/N比)を2.0 〜4.0 の範囲にすること、前記冷間圧延工程における最終の圧延の前に焼鈍と急冷処理を行うこと、最終冷間圧延を、圧下率が80〜95%でかつ少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃の範囲となる条件下で行うこと、 脱炭焼鈍工程における均熱時のP (H 2 O) /P (H 2 ) で表される雰囲気酸化性yを、 Al /N比をxとして、次式(1)、
0.02+0.12x≦y≦ 0.10 +0.12x -----------(1)
の関係を満足する値に定め、該雰囲気中で均熱することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法である。
【0046】
また、二次再結晶焼鈍中、少なくとも900 〜1050℃の範囲は窒素と水素を含有する混合雰囲気で行うものとし、その際、窒素ガス分圧をzとした場合、窒素ガス分圧zを前記Al/N比(x)との関連で、次式(2)
20x−40≦z≦20x−30 ------------------ (2)
の範囲に制限することがより好適である。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を由来するに至った実験結果について説明する。
まず発明者らは、鋼中の酸可溶Al含有量とN含有量の比 (=Al/Nと脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))が磁性に及ぼす影響を詳細に調査した。
【0048】
〔実験1]
AlN を主インヒビターとして利用する成分系の素材(C:0.07wt%,Si:3.25wt%,Mn:0.07wt%,Se:0.018 wt%,Sb:0.025 wt%が共通)を用い、
1)酸可溶Al量がN量に対して相対的に多く(Al/N値が高い場合に相当)、例えば特開平2−77524号公報で提案された酸可溶Al量(%)の上限式{(27/14)×N(%)+0.0150}を超える成分組成をもつ素材(Al=320 〔ppm 〕,N=80〔ppm 〕,Al/N=4.0 )と、
2)酸可溶Al量がN量に対して適当量あり、例えば特開平2−77524号公報で提案された酸可溶Al量(%)の下限式{(27/14) ×N(%)+0.0030}と上限式{(27/14) ×N(%)+0.0150}の範囲内にある成分組成をもつ素材3種(a) Al=280 ppm ,N=80 ppm , Al/N=3.5 、(b) Al=240 ppm , N=80 ppm , Al/N=3.0 、(c) Al=200 ppm ,N=80 ppm , Al/N=2.5 )と、
3)酸可溶Al量がN量に対して相対的に少なく(Al/N値が低い場合に相当)、例えば特開平2−77524号公報で提案された酸可溶Al量(%)の下限式{(27/14) ×N(%)+0.0030}を下回る成分組成をもつ素材(Al=160 ppm , N=80 ppm , Al/N=2.0)と
からなる各けい素鋼スラブを、1430℃で30分間加熱した後、熱間圧延を施して2.0 mm厚の熱延板とした。
【0049】
次いで、1100℃で1分間焼鈍した後、40℃/sの冷却速度で急冷処理を行ってから、冷間圧延し最終冷延板厚を0.23mmとした。このとき、3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃になるような圧延を行った。
その後、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O −N2雰囲気にて850 ℃の温度で、片面当たりの酸素目付量が0.4 〜0.6 (g/m2)になるように脱炭焼鈍を施した。
この脱炭焼鈍の際、均熱雰囲気の酸化性を露点とH2 ガス濃度の調整によって、雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2)): 0.20〜0.65の範囲で変化させた。
【0050】
そして、MgO にTiO2を6wt%配合した焼鈍分離剤をスラリー状にして、それぞれの脱炭焼鈍板コイルに塗布して乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて850 ℃で20時間保持し、続いて、窒素:25%,水素:75%の雰囲気中で15℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施した後、1200℃の水素雰囲気中で5時間の純化焼鈍を行った。
【0051】
このようにして得られた各条件の磁気特性を評価した。
素材のAl/N値:xと脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P( H2O)/P( H2) ):yが磁気特性に及ぼす影響を図6に示す。
図6の結果から、Al/N値に応じて最も良好な磁性が得られる脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))が変わり、Al/N値が低いほど良好な磁性が得られる脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))は低くなることがわかる。
【0052】
次に、この結果をB8 ≧1.93〔T〕が得られる素材のAl/N値と脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))値で整理したものを図7に示す。
図7の結果から、脱炭焼鈍均熱時の(P(H2O) /P(H2))で表される雰囲気酸化性をyとし、前記Al/N比をxとすれば、雰囲気酸化性yは、0.02+0.12x≦y≦ 0.10 +0.12xの条件式を満足することで、良好な磁気特性が得られることがわかる。
【0053】
尚、脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))が0.40の時の仕上げ焼鈍中のインヒビター強度の変化を鋼板表面の蛍光X線Al分析によって調べた結果を図8に示す。
図8から、素材のAl/N値が高いほど、インヒビター強度が速く劣化することがわかり、このことから、素材のAl/N値に応じて脱炭焼鈍・均熱時の雰囲気酸化性を制御すれば、二次再結晶中でのインヒビターの分解過程を、ちょうど方位の良い二次粒が発現するように制御することができることがわかった。
【0054】
また、上記の結果から、Al/N値が2.0 を下回ると、良好な磁性が得られる脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))の上限は0.34未満になると思われ、この場合、脱炭に要する時間が実操業を考えた場合に実際的でないほど長くなると考えられ、一方、Al/N値が4.0 を上回ると、良好な磁性が得られる脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))の下限は0.50を超えて、良好なフォルステライト質皮膜が得られにくくなると考えられることから、この発明では、鋼中の酸可溶AlとNの含有量の比(=Al/N比)を2.0 〜4.0 の範囲に限定した。
【0055】
次に、発明者らは最終冷間圧延時の圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃の範囲内になるように圧延するパス数の影響を調べる実験を行った。
【0056】
[実験2]
AlNを主インヒビターとして利用する成分系の素材(C:0.06wt%,Si:3.3 wt%,Mn:0.07wt%,Se:0.02wt%,Sb:0.03wt%が共通)を用い、
1)Al/N=3.72(Al=290 ppm ,N=78 ppm )、
2)Al/N=2.94(Al=250 ppm ,N=85 ppm )、
3)Al/N=2.37(Al=220 ppm ,N=93 ppm )
である成分組成をもつ3種類の素材を用意し、1430℃で20分間加熱した後、熱間圧延し2.0 mm厚の熱延板とした。
【0057】
次いで、酸化性雰囲気にて1100℃、1分間の熱延板焼鈍を施して40℃/sの冷却速度で急冷処理を行ってから酸洗した後、冷間圧延を施して0.23mm厚に仕上げた。
このとき、最終冷間圧延を、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となるような圧延と、1パス又は2パスのみ圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃になるような圧延を施した。
【0058】
これは、特公昭54−29182号公報あるいは特開昭63−100127号公報で開示されているような冷間圧延時のパス間で時効させる技術とは異なり、鋼板がロールにかみこんで圧延された直後の温度が所定温度に達するような圧延である。従って、パス間での温度は50℃未満の低い温度でもかまわない。
【0059】
その後、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O −N2 雰囲気にて850 ℃の温度で、片面当たりの酸素目付量が0.5 〜0.7 (g/m2)になるように脱炭焼鈍を施した。
この脱炭焼鈍の際、雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))を、露点とH2 ガス濃度の調整によって0.25〜0.60の範囲で変化させた。
【0060】
そして、MgO にTiO2を10wt%配合した焼鈍分離剤をスラリー状にして、それぞれの脱炭焼鈍板コイルに塗布して乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて850 ℃で10時間保持し、続いて、窒素:25%,水素:75%の雰囲気中で10℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施した後、1200℃の水素雰囲気中で5時間の純化焼鈍を行い、このようにして得られた各条件の磁気特性を評価した。
【0061】
脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性と、最終冷延時での圧延ロール出側直後の鋼板温度を150 〜350 ℃の範囲になるように圧延するパス数とが磁性に及ぼす影響について調べた結果を図9に示す。
【0062】
脱炭焼鈍均熱時の(P(H2O) /P(H2))で表される雰囲気酸化性yが、Al/N値:xによって定められる式;0.02+0.12x≦y≦0.1 +0.12xの条件であって、かつ最終冷間圧延時での圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃の範囲である圧延が3パス以上行われたときに非常に良好な磁性が得られることがわかる。
【0063】
圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃の範囲となるような圧延を3パス以上実施したときに良好な磁性が得られる理由としては、従来から報告されている時効効果以外に圧延時の表面摩擦の影響もあるものと考えられる。
【0064】
即ち、150 〜350 ℃の範囲内の温度で圧延を行うことで、摩擦の影響によって鋼板表層部での変形挙動が150 ℃未満の冷間圧延や350 ℃を超える高温で行われる場合の圧延とは異なり、二次再結晶の核となるGoss核の生成に有利な方向に作用するものと考えられる。
従って、そのような圧延を3パス以上行うことにより磁性が向上したものと考えられる。
【0065】
尚、冷間圧延の場合でも摩擦の影響が鋼板表層に生じることは、戸田ら、日本金属学会講演概要、 112 p.87 (1993) で開示した「フェライト鋼の冷間圧延変形挙動の解明」の中に示された図からも読み取れる。
【0066】
さらに、発明者らは最終冷延時での圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃の範囲である圧延が3回以上実施された場合に、脱炭焼鈍均熱時の(P(H2O) /P(H2))で表される雰囲気酸化性yを、Al/N値:xによって定められる式;0.02+0.12×≦y≦0.1 +0.12xの条件とした時に、二次再結晶焼鈍時の雰囲気(N2 分圧)が磁性に及ぼす影響について調査した。
【0067】
前述したように、従来からAlN 系インヒビターの場合、二次再結晶焼鈍時のN2 分圧が磁性に及ぼす影響は大きいことが知られており、例えば特許第2716916号公報では、「仕上げ焼鈍中の鋼中酸可溶Al量は、窒素分圧の高い方が減少は少なく、高温までインヒビターは強い」と述べられている。
しかしながら、これまでは脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性(P(H2O) /P(H2))が低い場合ほど、インヒビター強度が速く劣化するということはわかっていなかった。
【0068】
このため、発明者らは、この新たな知見に立脚した場合、従来水準を凌駕する特性がさらに安定的に得られる可能性があると考え、以下の実験を行った。
【0069】
[実験3]
AlNを主インヒビターとして利用する成分系の素材(C:0.07wt%,Si:3.4 wt%,Mn:0.07wt%,Se:0.02wt%,Sb:0.03wt%が共通)を用い、
1)Al/N=3.89(Al=270 ppm , N=72 ppm )、
2)Al/N=3.33(Al=270 ppm ,N=81 ppm )、
3)Al/N=3.01(Al=250 ppm , N=83 ppm )、
4)Al/N=2.58(Al=230 ppm ,N=89 ppm )、
5)Al/N=2.07(Al=180 ppm ,N=87 ppm )
である成分組成をもつ5種類の素材を用意し、1430℃で20分間加熱した後に熱間圧延し2.0 mm厚の熱延板とした。
【0070】
次いで、酸化性雰囲気にて1100℃で1分間の熱延板焼鈍を施した後、40℃/sの冷却速度で急冷処理を行ってから酸洗し、その後、冷間圧延を施して0.23mm厚に仕上げた。
このとき、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となるような圧延を実施した。
【0071】
その後、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、30℃/sの昇温速度で昇温しH2−H2O −N2雰囲気にて820 ℃の温度で、片面当たりの酸素目付量が0.4 〜0.7 (g/m2)になるように脱炭焼鈍を施した。
この脱炭焼鈍の際、均熱雰囲気の酸化性を露点とH2 ガス濃度の調整によって変化させ、雰囲気酸化性yを、素材1)は0.51,素材2)は0.47,素材3)は0.42, 素材4)は0.36, 素材5) は0.33とした。
【0072】
その後、MgO にTiO2を8wt%配合した焼鈍分離剤をスラリー状にして、それぞれの脱炭焼鈍板コイルに塗布して乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて900 ℃までの昇温に続いて、窒素分圧を0〜60%に変化させ、残部は水素とした雰囲気中で15℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施した後、水素雰囲気中にて1200℃で5時間の純化焼鈍を行い、このようにして得られた各供試材について磁気特性を評価した。
【0073】
5種類の素材について、二次再結晶焼鈍時の窒素分圧(残部は水素)に対する磁束密度の測定した値をプロットしたものを図10に示す。
図10の結果から、最も良好な磁性が得られる二次再結晶焼鈍時の窒素分圧はAl/N値に応じて変化し、Al/N値が低いほど最高値の磁性が得られる窒素分圧は低くなることがわかる。
【0074】
また、この結果を磁束密度B8 ≧1.95〔T〕が得られる素材Al/N値と二次再結晶焼鈍時の窒素分圧で整理した結果を図11に示す。
図11の結果から、脱炭焼鈍均熱時の雰囲気酸化性yを、Al/N値:xによって定められる式;0.02+0.12x≦y≦0.10+0.12xの条件にして、かつ、二次再結晶焼鈍中の雰囲気ガスの窒素分圧:z(%)を、Al/N値:xによって定められる式;20x−40≦z≦20x−30の条件とし、残部は水素とすることで、従来法で製造したけい素鋼板よりもさらに磁気特性に優れたけい素鋼板が安定して得られていることがわかる。
【0075】
なお、二次再結晶に影響を及ぼす雰囲気制御は、二次再結晶開始前から完了後まで行えばよいので、900 〜1050℃の範囲に限定した。
【0076】
次に、この発明の鋼スラブ中の成分組成を前記範囲に限定した理由について説明する。
この発明の対象とするけい素鋼板用スラブでは、C:0.03〜0.12wt%、Si:2.0 〜4.5 wt%、酸可溶Al:0.01〜0.05wt%、N:0.004 〜0.012 wt%を含有させることが必要である。
【0077】
その他、必要に応じて、Mn:0.02〜0.20wt%、S及びSeのうちから選んだ少なくとも一種:0.010 〜0.040 wt%、Mo:0.01〜0.10wt%、Sb:0.01〜0.20wt%、Cu:0.01〜0.20wt%、Sn:0.02〜0.30wt%、Ge:0.02〜0.30wt%、Ni:0.01〜0.50wt%、P:0.002 〜0.300 wt%、Nb:0.003 〜0.100 wt%、V:0.003 〜0.100 wt%、B:0.0005〜0.0300wt%及びBi:0.001 〜0.200 wt%の範囲で各成分を含有させることもできる。
【0078】
C:0.03〜0.12wt%
Cは、熱間圧延時のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行うために重要な成分である。C含有量は、0.03wt%に満たないと良好な一次再結晶組織が得られず、0.12wt%を超えると脱炭が難しくなって脱炭不良となり磁気特性が劣化するので0.03〜0.12wt%に限定した。
【0079】
Si:2.0 〜4.5 wt%
Siは、製品の電気抵抗を高め、渦電流損を低減させる上で重要な成分である。Si含有量は、2.0 wt%に満たないと最終仕上げ焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位が損なわれ、4.5 wt%を超えると冷延性に問題が生じるため、2.0 〜4.5 wt%に限定した。
【0080】
酸可溶Al:0.01〜0.05wt%,N:0.004 〜0.012 wt%
酸可溶Al及びNは、AlN インヒビターを形成させるために必要不可欠な成分である。良好に二次再結晶させるには、酸可溶Al含有量を0.01〜0.05wt%、N含有量を0.004 〜0.012 wt%の範囲にすることが必要である。即ち、酸可溶Al及びNの含有量が上記範囲を超えるとAlN の粗大化を招いて抑制力を失う傾向があり、また、上記範囲未満ではAlN インヒビターの量が不足するからである。
【0081】
従って、この発明で対象とするけい素鋼板用スラブでは、C:0.03〜0.12wt%、Si:2.0 〜4.5 wt%、酸可溶Al:0.01〜0.05wt%、N:0.004 〜0.012 wt%を含有させることが必要である。
【0082】
MnとSe及びSもインヒビターとして機能するもので、Mn量が0.02%未満、又はSとSeの単独若しくは合計量が0.010 wt%未満であると、インヒビター機能が十分に得られなくなり、一方、Mn量が0.20wt%を超え、又はSとSeの単独若しくは合計量が0.040 %を超えると、スラブ加熱に必要な温度が高くなりすぎて実用的ではないので、Mn含有量は0.02〜0.20wt%の範囲、S又はSeは単独あるいは合計量として0.010 〜0.04%の範囲とすることが好ましい。
【0083】
さらに磁束密度を向上させるためにSb,Cu,Sn, Ge, Ni, P,Nb, V,B,Biなどを単独又は複合して添加することが可能である。
【0084】
Sbの含有量は、0.20wt%を超えると脱炭性が悪くなり、0.01wt%に満たないと十分な効果が得られないので、0.01〜0.20wt%の範囲にするのが好ましい。
【0085】
Cuの含有量は、0.20wt%を超えると酸洗性が悪化する傾向があり、0.01wt%に満たないと十分な効果が得られないので、0.01〜0.20wt%の範囲にするのが好ましい。
【0086】
Sn及びGeの含有量は、いずれも0.30wt%を超えると、良好な一次再結晶組織が得られず、0.02wt%未満では十分な効果が得られないので、これらの含有量はともに0.02〜0.30wt%の範囲にすることが好ましい。
【0087】
Niの含有量は、0.50wt%を超えると熱間強度が低下する傾向があり、0.01wt%未満では十分な効果が得られないので、0.01〜0.50wt%の範囲にするのが好ましい。
【0088】
Pの含有量は、0.300wt %を超えると、良好な一次再結晶組織が得られず、0.002 wt%未満では十分な効果が得られないので、0.002 〜0.300wt %の範囲にするのが好ましい。
【0089】
Nb及びVの含有量は、いずれも0.100 wt%を超えると、脱炭性が悪くなる傾向があり、0.003 wt%に満たないと十分な効果が得られないので、これらの含有量はともに0.003 〜0.100wt %の範囲にするのが好ましい。
【0090】
Bの含有量は、0.0300wt%を超えると、良好な一次再結晶組織が得られず、0.0005wt%に満たないと、十分な効果が得られないので、0.0005〜0.0300wt%の範囲にするのが好ましい。
【0091】
Biの含有量は、0.200wt %を超えると、良好な一次再結晶組織が得られず、0.001 wt%に満たないと、十分な効果が得られないので、0.001 〜0.200 wt%の範囲にするのが好ましい。
【0092】
Moは、表面性状を改善するために有効な成分である。Moの含有量は、0.10wt%を超えると脱炭性が悪くなる傾向があり、0.01wt%に満たないと十分な効果が得られないので、0.01〜0.10wt%の範囲にするのが好ましい。
【0093】
次に、この発明に従う製造条件について述べる。
従来より用いられている製鋼法で上記成分組成に調整した溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブを製造し、1100〜1450℃の温度範囲でスラブ加熱を行い、その後熱間圧延を行う。次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回ないしは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最柊板厚の冷延板とする。
【0094】
その際、最終冷延前の焼鈍後には炭化物の析出状態を制御するため急冷処理を行うことが必要である。
【0095】
また、AlN 系インヒビターの特性を充分に発揮させるために、最終冷延での圧下率は80〜95%の強冷延であることが必要である。
【0096】
さらに、最終冷間圧延は、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となる条件下で行うことが必要である。
【0097】
次いで、雰囲気酸化性と酸素目付量とを制御した脱炭焼鈍を行う。
即ち、
0.02+0.12x≦y≦0.10+0.12x ------(1)
ここで、x:Al/N比、y:雰囲気酸化性
を満足する条件下で脱炭焼鈍均熱処理を行うのである。
【0098】
なお、かかる脱炭焼鈍における昇温速度は、通常の10〜30℃/sの範囲に限るものではなく、5〜60℃/sより広範囲で行うことができる。また、鋼板表層の酸素目付量は片面当たり0.3 〜1.0 (g/m2)であるサブスケールを形成するのが好ましい。
【0099】
即ち、酸素目付量が0.3 〔g/m2〕未満では、フォルステライト形成源としてのSiO2量が不足するためにフォルステライト皮膜が充分に生成せず、逆に1.0 〔g/m2〕を超えるとフォルステライト皮膜が過厚になって部分的に剥落しやすくなって皮膜特性を劣化させる傾向があるためである。
【0100】
さらに、均熱温度は780 〜880 ℃の範囲にするのが好ましい。これより均熱温度が低くても高くても、脱炭に要する時間が実操業を考えた場合に実際的でないほど長くなるからである。
【0101】
この脱炭焼鈍を施した鋼板表面に、焼鈍分離剤をスラリー状にして塗布した後乾燥してから、2次再結晶焼鈍を施す。かかる2次再結晶焼鈍工程中、特に900 〜1050℃の温度範囲について、
20x−40≦z≦20x−30 ------(2)
ここで、x:Al/N比、z:窒素ガス分圧
の範囲を満足する条件下で行うのが有利なことは前述したとおりである。
【0102】
尚、二次再結晶焼鈍時の昇温速度は5〜35℃/hの範囲で行えばよい。
ここに、焼鈍分離剤の主成分としてMgO を用いる場合は、その水和量(20℃×6分間にて水和後、1000℃×1時間の強熱による減量)が1〜5%の範囲のものを用いるのがよい。
【0103】
これは、MgO の水和量が1%未満ではフォルステライト皮膜の生成が不充分となり、5%を超えるとコイル層間への持ち込み水分量が多くなりすぎ鋼板の追加酸化量が多くなるため、良好なフォルステライト皮膜が得られなくなるおそれがあるからである。
また、MgO の30℃でのクエン酸活性度(CAA 40 %値)は、30秒から150 秒のものを用いるのがよい。CAA 40値が30秒未満では反応性が強すぎ、またCAA 40値が150 秒を超えると反応性が弱すぎていずれも良好なフォルステライト被膜が得られなくなる恐れがあるからである。
【0104】
また、MgO を主成分とする焼鈍分離剤の塗布量は鋼板片面当たり4〜10g/m2の範囲で塗布するのが好ましい。
【0105】
これは、塗布量が4g/m2より少ないとフォルステライトの生成が不充分となり、10g/m2を超えるとフォルステライト皮膜が過剰に生成して厚くなるため占積率の低下をきたすからである。なお、磁気特性あるいは皮膜特性の向上を目的として、焼鈍分離剤中に従来公知のTiO2, SnO2や Fe2O3等の酸化物や、Mg2SO4, SnSO4 等の硫化物、あるいはSr(OH)2 ・8H2O・SrSO4 などのSr化合物の1種又は2種以上をそれぞれ単独又は複合して添加してもよい。
【0106】
尚、この発明では、 Al2O3あるいはSiO2等を主成分とする焼鈍分離剤を用いて、仕上げ焼鈍後にフォルステライト皮膜を有しない鋼板も製造できる。
【0107】
また、この発明を適用することによって、フォルステライト皮膜を生成させない条件でも良好に二次再結晶させ、磁気特性の優れた鋼板を得ることができる。
【0108】
次いで、二次再結晶・純化焼鈍(最終仕上げ焼鈍)を行った後、りん酸塩系の絶縁コーティング好ましくは張力を有する絶縁コーティングを施して製品とする。
また、最終冷延後、最経仕上げ焼鈍後あるいは絶縁コーティング後に既知の磁区細分化処理を行うこともでき、これは、さらなる鉄損の低減に有効である。
【0109】
【実施例】
〔実施例1〕
C:0.071 wt%,Si:3.43wt%,Mn:0.069wt %,酸可溶Al:0.025wt %,N:0.0090 wt%,Se:0.019 wt%, Cu:0.10wt%、Sb:0.044 wt%を含み、Al/N比xは2.78 であるけい素鋼スラブを、1430℃で30分間加熱した後、熱間圧延を施して、2.5 mm厚の熱延板とした。次いで、1000℃・1分間の熱延板焼鈍後、冷間圧延にて板厚1.8 mmとし、1100℃・1分間の中間焼鈍とその後の急冷処理(30℃/s)を行ったのち、2回目の冷間圧延( 圧下率87.2%)により最終板厚0.23mmに仕上げた。この際、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となるように圧延を実施した。その後、これらの冷延板に、H2−H2O −N2雰囲気にて820 ℃で脱炭焼鈍を施した。このとき、表1に示すように、酸化性雰囲気yを0.33〜0.45の範囲で変化させるとともに、均熱時間・昇温速度・最終冷延後(脱炭焼鈍前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.4 〜0.6 〔g/m2〕になるようにした。次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤をスラリーとして脱炭焼鈍板コイルにそれぞれ塗布し乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて850 ℃で10時間保持し、続いて、窒素分圧を10〜30%にし残部は水素とした雰囲気中で10℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施したのち、1200℃の水素雰囲気中で5時間の純化焼鈍を行った。しかるのち、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0110】
かくして得られた各製品コイルの磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)を調査した。その結果を表1に併記する。
【0111】
【表1】
【0112】
表1の結果から、この発明に従う条件で製造した本発明例は、いずれも良好な磁気特性を示している。
【0113】
〔実施例2〕
C:0.067 wt%,Si:3.23wt%,Mn:0.074 wt%,酸可溶Al:0.027 wt%,N:0.0079 wt %,Se:0.021wt %,Cu:0.10wt%、Sb:0.024 wt%を含み、Al/N比xは3.42 であるけい素鋼スラブを、1430℃で30分間加熱後、熱間圧延を施して、2.2 mm厚の熱延板とした。ついで1125℃・1分間の熱延板焼鈍後、30℃/sの速さで急冷処理を行ってから冷間圧延( 圧下率87.7%)により最終板厚0.27mmに仕上げた。その際、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となるように圧延を実施した。その後、これらの冷延板に、H2−H2O −N2雰囲気にて850 ℃で脱炭焼鈍を施した。その際、酸化性雰囲気yを0.40〜0.52の範囲で変化させるとともに、均熱時間・昇温速度・最終冷延後(脱炭焼鈍前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.5 〜0.8 〔g/m2〕になるようにした。
【0114】
ついでMgOを主成分とする焼鈍分離剤をスラリーとして脱炭焼鈍板コイルにそれぞれ塗布し乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて850 ℃までの昇温に続いて、窒素分圧を25〜40%にし残部は水素とした雰囲気中で15℃/hの速度で1050℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施したのち、1200℃の水素雰囲気中で5時間の純化焼鈍を行った。しかるのち、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0115】
かくして得られた各製品コイルについて、磁気特性(磁束密度B8,鉄鎖W17/50)を調査した。その結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表2の結果から、この発明に従う条件で製造した本発明例は、いずれも良好な磁気特性を示している。
【0118】
〔実施例3〕
C:0.067 wt%,Si:3.29wt%,Mn:0.070 wt%,酸可溶Al:0.025 wt%, N:0.0083 wt %,Se:0.017 wt%,Cu:0.12wt%、Sb:0.024 wt% を含み、Al/N比xは3.10であるけい素鋼スラブを、1430℃で30分間加熱後、熱間圧延を施して、2.4 mm厚の熱延板とした。ついで1125℃・1分間の熱延板焼鈍後、25℃/sの速さで急冷処理を行ってから冷間圧延( 圧下率85.8%) により最終板厚0.34mmに仕上げた。その際、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となるように圧延を実施した。その後、これらの冷延板に、H2−H2O −N2雰囲気にて830 ℃で脱炭焼鈍を施した。このとき、酸化性雰囲気yを0.35〜0.48の範囲で変化させるとともに、均熱時間・昇温速度・最終冷延後(脱炭焼鈍前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.6 〜0.9 g/m2]になるようにした。次いで、MgO を主成分とする焼鈍分離剤をスラリーとして脱炭焼鈍板コイルにそれぞれ塗布し乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて850 ℃で20時間保持し、続いて、窒素分圧を15〜35%にし残部は水素とした雰囲気中で15℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施したのち、1200℃の水素雰囲気中で5時間の純化焼鈍を行った。
【0119】
しかるのち、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
かくして得られた各製品コイルについて、磁気特性(磁束密度B8, 鉄鎖W17/50 )を調査した。その結果を表3に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
表3の結果から、この発明に従う条件で製造した本発明例は、いずれも良好な磁気特性を示している。
【0122】
〔実施例4〕
表4に示す種々の成分組成からなる5種類のけい素鋼スラブA〜Eを用意した。これらのけい素鋼スラブを1430℃で30分間加熱後、熱間圧延を施して、2.0mm 厚の熱延板とした。次いで、1125℃で1分間の熱延板焼鈍を施した後、25℃/sの速さで急冷処理を行ってから冷間圧延により最終板厚0.23mmに仕上げた。その際、少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃となるように圧延を実施した。その後、これらの冷延板に、H2−H2O −N2雰囲気にて840 ℃で脱炭焼鈍を施した。このとき、酸化性雰囲気yを0.27〜0.53の範囲で変化させるとともに、均熱時間・昇温速度・最終冷延後(脱炭焼鈍前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.4 〜1.0 g/m2]になるようにした。次いで、MgO を主成分とする焼鈍分離剤をスラリーとして脱炭焼鈍板コイルにそれぞれ塗布し乾燥させたのち、窒素雰囲気中にて850 ℃で20時間保持し、続いて、窒素分圧を 3〜45%にし残部は水素とした雰囲気中で15℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施したのち、1200℃の水素雰囲気中で5時間の純化焼鈍を行った。しかるのち、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0123】
【表4】
【0124】
かくして得られた各製品コイルについて、磁気特性(磁束密度B8, 鉄鎖W17/50 )を調査した。この結果を素材別に表5〜9に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
【表7】
【0128】
【表8】
【0129】
【表9】
【0130】
表5〜9の結果から、この発明に従う条件で製造した本発明例はいずれも良好な磁気特性を示している。
【0131】
【発明の効果】
かくして、この発明に従い、AlN系インヒビターを有する方向性けい素鋼板の製造に際し、素材中の酸可溶Al量とN量の比xに応じて、脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性yを制御することにより、優れた磁気特性を得ることができる。
また、脱炭焼鈍時の雰囲気酸化性yに加えて、二次再結晶焼鈍時のN2 分圧を制御することにより、より一層優れた磁気特性を有する方向性けい素鋼板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍・均熱時の雰囲気酸化性yの変化が、二次再結晶焼鈍中のインヒビター強度の変化に及ぽす影響を示す図である。
【図2】サブスケールの評価法によって得られる電圧一時間曲線の一例を示す模式図である。
【図3】サブスケール中のSiO2に起因する酸素目付量と、図2の電圧−時間曲線の領域III の幅との関係を示す図である。
【図4】 (a),(b) は脱炭焼鈍板に形成したサブスケールの図面代用断面SEM写真であり、(a) は低雰囲気酸化性下で形成した場合、(b) は高雰囲気酸化性下で形成した場合のものである。
【図5】脱炭焼鈍・均熱時の雰囲気酸化性yの変化が、二次再結晶焼鈍中のインヒビター強度の変化に及ぼす影響を示す図である。
【図6】素材成分のAl/N値xと、脱炭焼鈍・均熱時の雰囲気酸化性yの変化が、磁気特性(磁束密度B8)に及ぼす影響を示した図である。
【図7】素材成分のAl/N値と脱炭焼鈍・均熱時の雰囲気酸化性yの変化が、磁気特性(磁束密度B8)に及ぼす影響を示した図である。
【図8】素材成分のAl/N値が、二次再結晶焼鈍中のインヒビター強度の変化に及ぼす影響を示す図である。
【図9】 (a),(b),(c) は、冷間圧延時の圧延ロール出側直後の鋼板温度と脱炭焼鈍・均熱時の雰囲気酸化性yの変化が、磁気特性(磁束密度B8)に及ぼす影響を示した図であり、(a) はx=3.72の場合、(b) はx=2.94の場合、(c) はx=2.37の場合である。
【図10】二次再結晶焼鈍時のN2 分圧zが磁気特性(磁束密度B8)に及ぼす影響を示した図である。
【図11】素材成分のAl/N値xと、二次再結晶焼鈍時のN2 分圧zが、磁気特性(磁束密度B8)に及ぼす影響を示した図である。
Claims (2)
- C:0.03〜0.12wt%、Si:2.0 〜4.5 wt%、酸可溶Al:0.01〜0.05wt%、N:0.004 〜0.012 wt%を含有するけい素鋼スラブを、熱間圧延した後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、その後、脱炭・一次再結晶焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍及び純化焼鈍を施す一連の工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法において、
鋼中の酸可溶Al含有量(wt%)とN含有量(wt%)の比(=Al/N比)を2.0〜4.0 の範囲にすること、
前記冷間圧延工程における最終圧延の前に焼鈍と急冷処理を行うこと、
最終冷間圧延を、圧下率が80〜95%でかつ少なくとも3パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150 〜350 ℃の範囲となる条件下で行うこと、
脱炭焼鈍工程における均熱時のP (H 2 O) /P (H 2 ) で表される雰囲気酸化性yを、 Al /N比をxとして、次式(1)、
0.02+0.12x≦y≦ 0.10 +0.12x -----------(1)
の関係を満足する値に定め、該雰囲気中で均熱することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - 二次再結晶焼鈍中、少なくとも900 〜1050℃の範囲は窒素と水素を含有する混合雰囲気で行うものとし、その際、窒素ガス分圧をzとした場合、窒素ガス分圧(z)を、前記Al/N比(x)との関連で次式(2)
20x−40≦z≦20x−30 ------------------ (2)
の範囲に制限することを特徴とする請求項1記載の方向性けい素鋼板の製造方法。
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