JPH08191010A - 磁気特性の良好な方向性けい素鋼板及びその製造方法 - Google Patents
磁気特性の良好な方向性けい素鋼板及びその製造方法Info
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Abstract
非金属物質を除去した表面に、ファイヤライト又はファ
イヤライトを主成分とする、厚み0.05μm 以上の極薄層
を具備することを特徴とする磁気特性の良好な方向性け
い素鋼板。また、ファイヤライト等の極薄層の下地を鏡
面化したものでも良く、さらに、当該極薄層のに重ねて
張力付与型の絶縁コーティングをしたものでも良い。 【効果】 ファイヤライト結晶層自身が張力付与効果を
持つため、鉄損低減効果がある。また、張力付与型の絶
縁コーティングとの密着性が優れているため、さらなる
鉄損低減を図ることができる。
Description
びその製造方法に関し、特に磁気特性に優れる方向性け
い素鋼板をその有利な製造方法とともに提案しようとす
るものである。
の他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度及
び鉄損値等で示される磁気特性に優れることが基本的に
重要である。特に電気機器のエネルギーロスを少なくす
るためには、より低鉄損である方向性けい素鋼板が求め
られている。
手段として、二次再結晶焼鈍後の鋼板に張力を付加する
ことが知られている。これは、張力を付加することによ
り、磁区が細分化できることを利用するものである。そ
して、かような鋼板への張力付与を施すために、鋼板に
比べて熱膨張係数の小さい材質からなる被膜を高温で生
成することが行われている。このような張力付与用の被
膜として、仕上げ焼鈍工程で鋼板表面の酸化物と焼鈍分
離剤とを反応させて生成する、フォルステライトを主成
分とする被膜が、鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減
に効果があるために常用されている。また、このフォル
ステライト被膜に重ねて、張力付与型の絶縁コーティン
グを施すことも、さらなる張力を付与して鉄損低減を図
るために行われている。
て意図的にフォルステライト被膜の形成を行わなかった
り、一旦形成させたフォルステライト被膜を除去した
り、さらには除去した後に鋼板表面を平滑に仕上げる
と、著しい鉄損の減少が認められることが明らかになっ
てきている。例えば、特公昭52−24499号公報に
は、仕上げ焼鈍後、酸洗により表面生成物を除去し、次
いで化学研磨又は電解研磨により鋼板表面を鏡面状態に
仕上げる方法が示されている。このように鋼板表面を平
滑化することによって鉄損が減少するのは、磁化過程に
おいて鋼板表面近傍の磁壁移動を妨げるピンニングサイ
トが、この平滑化により減少するためである。
縁コーティングが施されるのが一般的であり、特にフォ
ルステライト被膜を有する方向性けい素鋼板には、前述
のように張力付与型の絶縁コーティングを適用して、さ
らなる鉄損低減が図られていることが多い。かような張
力付与型の絶縁コーティングは、通常、リン酸とコロイ
ダルシリカ、無水クロム酸塩を主成分とした処理液を塗
布し、焼き付けすることによって形成され、例えば特公
昭53−28373号公報あるいは特公昭56−521
157号公報などにその形成法が示されている。
は、下地との関係で密着力が強いことを必要とする。さ
もなければ、被膜がはく離してしまうからである。ここ
において、フォルステライト系被膜が下地として存在す
る場合には、密着性は良好であり、実際の製品にも多用
されている。しかし、前述のようにフォルステライト系
被膜の除去等の処理をしてフォルステライト系被膜が存
在しない場合には、密着性がはなはだ悪い。すなわち、
フォルステライト系被膜が存在しない鋼板に、張力付与
型絶縁コーティングを被成させれば、より磁気特性が向
上すると考えられるのに、実際には密着性の問題から実
用に供することができなかった。
表面さらには平滑に調整された表面に張力付与型絶縁コ
ーティングを密着性良く被成する方法として、従来いく
つかの方法が提案されてきた。例えば、特開平6−18
4762号公報には、SiO2を形成させた後に、当該絶縁
コーティング液を塗布、焼き付ける方法が示されてい
る。また、特公昭56−4150号公報には、下地被膜
としてセラミックス薄膜を蒸着、スパッタリング、溶射
などによって形成させる方法が、さらに、特公昭63−
54767号公報には、窒化物や炭化物の被膜をイオン
プレーティング又はイオンインプラテーションによって
形成する方法が、それぞれ示されている。さらに、特公
平2−223770号公報には、いわゆるゾル−ゲル法
によってセラミックス被膜を形成する方法が開示されて
いる。
は、平滑化された表面を有する鋼板に張力を付与して鉄
損を低減することは確かにできるものではあるが、いく
つかの問題を抱えている。すわなち、金属薄めっきを下
地とし、その上に絶縁コーティング処理する方法では、
被膜の密着性が十分ではない。また、SiO2薄膜を形成さ
せる方法も、鉄損の改善効果は十分とはいえなかった。
さらに、蒸着、スパッタリング、溶射、イオンプレーテ
ィング、イオンインプランテーション又はゾル−ゲル法
によるセラミックス被膜を形成する方法は、高コストで
あったり、大面積を大量処理する際の均一性確保が困難
であるなど、工業生産上の問題があった。
有利に解決するもので、フォルステライト等のグラス質
被膜のない方向性けい素鋼板に、張力を付与する被膜を
密着性良く形成して、鉄損を効果的に低減することので
きる方向性けい素鋼板及びその製造方法を提案すること
を目的とする。
ルステライト系被膜のない方向性けい素鋼板に、張力付
与型の絶縁コーティングを施す場合に、両者の密着性を
確保できる下地について種々の検討を行った結果、鋼板
にファイヤライト又はファイヤライトを主成分とする層
を形成させた後、絶縁コーティングを施せば、十分な密
着性が得られることを見出した。また、このファイヤラ
イト又はファイヤライトを主成分とする層は、それ自体
が張力付与性を有するため、この層のみでも磁気特性を
向上できることも併せて見出した。この発明は、上記の
知見に立脚するものである。
りである。 仕上げ焼鈍済みの方向性けい素鋼板表面上の非金属
物質を除去した表面に、ファイヤライト又はファイヤラ
イトを主成分とする、厚み0.05μm 以上の極薄層を具備
することを特徴とする磁気特性の良好な方向性けい素鋼
板(第1発明)。
面上の非金属物質を除去した後、研磨により平滑に仕上
げた表面に、ファイヤライト又はファイヤライトを主成
分とする、厚み0.05μm 以上の極薄層を具備することを
特徴とする磁気特性の良好な方向性けい素鋼板(第2発
明)。
面上の非金属物質を除去した後、研磨により平滑に仕上
げた表面に、ファイヤライト又はファイヤライトを主成
分とする、厚み0.05μm 以上の極薄層を具備し、該極薄
層上に重ねて被着した、張力付与型絶縁コーティング層
をも具備することを特徴とする磁気特性の良好な方向性
けい素鋼板(第3発明)。
面の非金属物質被膜を除去したのち、該鋼板表面にファ
イヤライト又はファイヤライトを主成分とする厚み0.05
μm 以上の被膜を形成することを特徴とする磁気特性の
良好な方向性けい素鋼板の製造方法(第4発明)。
鋼板表面の非金属物質被膜を除去後、算術平均粗さRa
で0.4 μm 以下にまで該鋼板表面を平滑化し、しかる後
にファイヤライト又はファイヤライトを主成分とする厚
み0.05μm 以上の被膜を該鋼板表面に形成することを特
徴とする磁気特性の良好な方向性けい素鋼板の製造方法
(第5発明)。
イヤライト又はファイヤライトを主成分とする被膜を形
成したのち、張力付与型の絶縁コーティングを施す磁気
特性の良好な方向性けい素鋼板の製造方法(第6発
明)。
いて、該鋼板として、Si:2〜5wt%及びMn:0.02〜0.
10wt%を含有するものを用い、かつファイヤライト又は
ファイヤライトを主成分とする被膜を形成させる工程と
して、P(H2O) /P(H2)が0.15〜0.7 の範囲内の酸化性
雰囲気にて 600〜1000℃の熱処理を施す磁気特性の良好
な方向性けい素鋼板の製造方法。
鈍により2次再結晶したいわゆるゴス粒と呼ばれる(1
10)〈001〉方位を圧延方向に揃えた大きな結晶粒
上にエピタキシャル成長したファイヤライト結晶層のこ
とである。図1に2次再結晶させた鋼板表面上に成長し
たファイヤライト結晶層のSEMによる表面写真を示
す。図中、矢印の方向が(110)〈001〉ゴス方位
であり、ファイヤライト層が下地結晶粒に対し、エピタ
キシャルに成長していることが分かる。
ルステライ被膜や特開平6−184762号公報に開示
されたSiO2層とは決定的に異なり、異方性を有するた
め、鋼板を励磁した際に、磁壁の移動を容易にするよう
な方向に張力を与える。つまり、ファイヤライト結晶層
自身が張力付与効果を持つのである。
る。この発明では、まず、仕上げ焼鈍済みの方向性けい
素鋼板に被成している非金属物質(代表例は、フォルス
テライト)の被膜を酸洗、機械的研磨又はそれらの組み
合わせにより除去する。ここに、仕上げ焼鈍前に塗布す
る焼鈍分離剤中に、Na、K等のアルカリ金属、塩化物等
のフォルステライト被膜の形成を阻害するような添加物
を加えたり、もしくは焼鈍分離剤の主成分をAl2O3 など
のSiO2と反応しにくい酸化物とすることによって、仕上
げ焼鈍後の鋼板表面の酸化物生成を抑制させることがで
きるので、上記の被膜除去が簡便になる。
じて研磨を行い、該非金属物質被膜のない鋼板表面を鏡
面ないしそれに近い状態に平滑化してもよい。研磨を行
って鋼板表面を平坦に仕上げることによって磁壁の移動
が容易となり、さらなる鉄損低減が図られるため、より
好適である。この平滑化は、算術平均粗さRa で0.4μm
以下となるようにすることが、所望の鉄損低減を図る
ために効果的である。平滑化の具体的手段は、リン酸
系、硫酸系、リン酸−硫酸系、過塩素酸系等の浴による
電解研磨、HF−H2O2や H3PO4−H2O2等による化学研磨、
又はハロゲン化物水溶液中での陽極電解、あるいは微粒
の研磨剤を用いる歪の少ない機械的研磨をこれらと組み
合わせることがある。この他、1000℃以上の還元雰囲気
中でサーマルエッチングすることによっても同様の表面
が得られる。
又はさらに平坦化を行った鋼板表面に、ファイヤライト
層を形成させる。ファイヤライト層の形成は、具体的に
は湿水素雰囲気中にて雰囲気酸化性P(H2O) /P(H2)が
0.15〜0.7 、温度が 600〜1000℃の範囲の熱処理を行え
ばよい。この熱処理により得られたファイヤライト層
は、下地鋼板と同様に(110)〈001〉方位に配向
したファイヤライト結晶粒からなり、すなわち、ファイ
ヤライト結晶粒層は、それぞれの下地の2次再結晶粒の
方位に沿ってエピタキシャル成長して形成されたのであ
る。下地鋼板は、仕上げ焼鈍後のゴス方位への集積度が
極めて高いため、各粒上に形成したファイヤライト層の
厚みにもばらつきは見られず、均質な絶縁コーティング
が得られる。
げ焼鈍被膜を酸洗により除去しただけの凸凹な表面上、
又は電解研磨や化学研磨、歪の少ない機械的研磨あるい
は還元雰囲気でのサーマルエッチング等により調整した
平滑な表面上の、いずれの場合でも形成させることがで
きる。また、ファイヤライト層は、ファイヤライト結晶
層自身がエピタキシャル成長しているため、前述したと
おり張力付与効果を有し、鉄損低減効果がある。
前後で、鋼板の鉄損値をそれぞれ測定した結果を示す。
なお、この鋼板は、次の工程を経てファイヤライト層を
形成させたものである。C: 0.067wt%、Si:3.30wt
%、Mn: 0.072wt%、Al:0.027 wt%、N:0.0080wt%
を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラ
ブを1400℃に加熱して熱間圧延を施して板厚2.6mm とし
た。次いで1000℃の熱延板焼鈍、酸洗を経てから冷間圧
延を、1100℃、2min の中間焼鈍を挟んで2回行って最
終冷延板厚0.23mmに仕上げた。次いで湿水素雰囲気中で
850℃、2min の脱炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、
MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから1200℃、
10hの純化を兼ねた2次再結晶焼鈍を施した。次いで、
この発明に従い、塩酸により酸洗して表面のフォルステ
ライト被膜を除去した後、試料の一部については電解研
磨により表面を研磨して算術平均粗さRa で 0.2μm に
仕上げた。さらに湿水素中、雰囲気酸化性P(H2O) /P
(H2)が0.55、温度が 900℃で30秒の熱処理を施して鋼板
表面に 0.2μm のファイヤライト層を形成させたもので
ある。
た鋼板表面に、ファイヤライトを被成すると、鉄損特性
が向上することがわかる。また、下地鋼板を鏡面化した
のちにファイヤライトを被成すると、鉄損特性がより向
上することが分かる。
リン酸とコロイダルシリカを主成分とする張力付与型絶
縁コーティング処理を常法に従って行い、絶縁コーティ
ングの密着性を調べた。なお、密着性の評価は、φ50mm
の丸棒による曲げはく離判定によって、はく離しない鋼
板を良好と判定した。その結果を表2に示す。
た鋼板表面に、張力付与型絶縁コーティングを施した場
合には、全面はく離が生じているのに対して、この発明
に従い、ファイヤライト層を形成させた鋼板に、絶縁コ
ーティング処理を施した場合には、フォルステライト系
被膜と同程度の被膜密着性を示し、密着性が十分である
ことが分かった。
型絶縁コーティングとの密着性が良好である理由は、フ
ォルステライトが Mg2SiO4、ファイヤライトがFe2SiO4
を主成分とした同種の無機物であることから、ファイヤ
ライトは、フォルステライトと同様の密着性を示すもの
と推定できる。
μm 以上あれば良い。0.05μm 未満では、張力付与型絶
縁コーティングの密着性が十分でなく、ファイヤライト
層自身の結晶化も十分にはなされないからである。より
好ましくは 0.1μm 以上である。なお、上限については
特に限定するものではない。
被膜の他、ファイヤライトを主成分とする被膜であって
もよい。このファイヤライトを主成分とする被膜には、
このファイヤライトに加えて、(Fe,Mn)2SiO4、(Fe,Ni)2
SiO4、(Fe,Co)2SiO4、(Fe,Mg)2SiO4等が存在するものが
ある。これらは、Mn, Ni, Co等を鋼板表層に含有させる
ことにより形成されるものである。
適な熱処理条件は、既に述べたように湿水素雰囲気中に
て雰囲気酸化性P(H2O) /P(H2)が0.15〜0.7 、温度が
600〜1000℃の範囲である。この理由は、かかる雰囲気
酸化性P(H2O) /P(H2)及び熱処理温度を種々に変化さ
せてファイヤライト形成状況を調べてみたところ、図2
に示すように、十分な絶縁コーティングの密着が得られ
るファイヤライト層の熱処理条件は、雰囲気酸化性P(H
2O) /P(H2)が0.15〜0.7 、温度が600 〜1000℃の範囲
であることが分かったからである。すわなち、雰囲気酸
化性P(H2O) /P(H2)が0.15に満たない場合には、シリ
カが形成されるためにファイヤライトが十分にできず、
一方 0.7を超えるとウスタイトが形成されるためにファ
イヤライトが十分にできない。同様に熱処理温度が600
℃に満たない場合には、酸化が進行しないのためにファ
イヤライトが十分にできず、一方1000℃を超えると形成
されるファイヤライトがはく落しやすい。より好ましい
熱処理条件は、雰囲気酸化性P(H2O) /P(H2)が 0.3〜
0.6 、温度が 750〜900 ℃の範囲である。なお、熱処理
時間については、特に限定するものではないが、30秒〜
2分程度が好適である。
素材の成分組成ついては特に限定されず、従来公知のい
かなる鋼板にも適用するとことができるが、代表的な成
分組成範囲を挙げると次のとおりである。
%、Mn:0.02〜0.10wt%、Se及び/又はSを合計で 0.0
10〜0.030 wt%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物
からなる組成。 C:0.02〜0.6 wt%、Si:2.0 〜5.0 wt%、Mn:0.02
〜0.10wt%、Se及び/又はSを合計で 0.010〜0.030 wt
%を含み、かつSb、Snのうち少なくとも1種を0.005 〜
0.20wt%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からな
る組成。
%、Mn:0.02〜0.10wt%、sol.Al:0.005〜0.040 wt%、
Se及び/又はSを合計で 0.010〜0.030 wt%及びN:
0.004〜0.013 wt%を含有し、残部が鉄及び不可避的不
純物からなる組成。
%、Mn:0.02〜0.10wt%、sol.Al:0.005〜0.040 wt%、
Se及び/又はSを合計で 0.010〜0.030 wt%及びN:
0.004〜0.013 wt%を含み、かつSb、Snのうち少なくと
も1種を 0.005〜0.20wt%を含有し、残部が鉄及び不可
避的不純物からなる組成
が、過剰な含有では良好な磁気特性が得られないために
C含有量は0.02〜0.10wt%程度が好ましい。
向上するために必要な成分であるが、少なすぎると鋼板
の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増大するために良
好な鉄損特性が得られず、多すぎると冷間圧延が困難と
なるので、 2.0〜5.0 wt%程度の範囲が好適である。
り、また熱間脆性を改善するという作用も有する。しか
し、過剰になるとインヒビターの粗大化を招くため、0.
02〜0.10wt%の範囲が好適である。
て必要であるが、過剰になると仕上げ焼鈍での純化が困
難となるため、合計で 0.005〜0.030 wt%の範囲が好適
である。
ために必要である。Alは、少なすぎると磁束密度が低下
し、多すぎると2次再結晶が安定しなくなるため、酸可
溶Alとして 0.005〜0.040 wt%の範囲が好適である。ま
た、Nは、少なすぎるとAlNインヒビターの量が不足し
て磁束密度が低下し、多すぎるとブリスターと呼ばれる
表面欠陥が製品に多発するため、 0.004〜0.013 wt%の
範囲が好適である。
機能するインヒビターSb、Sn等を併用して用いることが
できる。特に、磁界800A/mにおける磁束密度B8 値で1.
92T以上という極めて優れた磁気特性を有する高級方向
性けい素鋼板を製造するに当たっては、析出物タイプの
みならず、粒界偏析タイプのインヒビターをも併用し
て、これらのインヒビター効果を最大限に発揮させるこ
とが有利である。
は、その添加量が少なすぎると磁気特性への改善効果が
少なく、多すぎるとぜい化やフォルステライト被膜への
悪影響が生じるため、 0.005〜0.20wt%の範囲が好適で
ある。
表面欠陥を防止するために、0.10wt%以下のMoを添加す
ることも有効である。
明する。上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、連続鋳
造または造塊−分塊法により、所定厚みのスラブとした
のち、インヒビター成分であるAlやSe,Sを完全に固溶
させるために1350〜1450℃に加熱する。上記のスラブ加
熱後、熱間圧延を行い、次いで必要に応じて熱延板焼鈍
を施す。次いで、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧
延により、0.15〜0.35mm程度の最終製品板厚に仕上げ
る。次いで、脱脂後、40〜70℃の湿水素中にて脱炭・1
次再結晶焼鈍を施す。
から、1000〜1200℃で3〜50h 程度の純化焼鈍を兼ねた
2次再結晶焼鈍を施すのである。2次再結晶焼鈍後は、
この発明に従って酸洗、必要に応じて平滑化処理及びフ
ァイヤライト被膜形成処理を行う。なお、その後さら
に、りん酸塩系の上塗りコーティングを施すことは有利
である。
なる鉄損低減を目的としてレーザーあるいはプラズマ炎
等を照射して、磁区の細分化を行っても絶縁コーティン
グの密着性には何ら問題ない。また、この発明の方向性
けい素鋼板の製造工程の任意の段階で磁区細分化のため
に表面にエッチングや歯形ロールで一定間隔の溝を形成
することも、一層の鉄損低減を図る手段として有効であ
る。
0.025wt%及びSb:0.024 wt%を含有し、残部が鉄及び
不可避的不純物からなる鋼スラブを1420℃に加熱して熱
間圧延を施して板厚 2.4mmとした。、次いで 970℃の熱
延板焼鈍、酸洗を経てから冷間圧延を、 950℃、2min
の中間焼鈍を挟んで2回行って最終冷延板厚0.23mmに仕
上げた。次いで湿水素雰囲気中で 830℃、3min の脱炭
・1次再結晶焼鈍を施したのち、MgO を主成分とする焼
鈍分離剤を塗布してから1200℃、10hの純化を兼ねた2
次再結晶焼鈍を施した。この仕上げ焼鈍板をH2SO4 で酸
洗して表面のフォルステライト被膜を除去した後、 H3P
O4−CrO3浴中で電解研磨を行い、表面を算術平均粗さR
a で0.25μm に仕上げた。さらに湿水素中、雰囲気酸化
性P(H2O) /P(H2)が0.55、温度が900℃で30秒の熱処
理を施して鋼板表面にファイヤライト層を形成させた。
このファイヤライト層は、断面SEM写真の観察から膜
厚0.3 μm であった。その後、張力コーティングとして
リン酸マグネシウム−コロイダルシリカ−無水クロム酸
を主成分とする水性処理液を塗布し、800 ℃で焼き付
け、約2.0 μm の被膜を形成した。
8 、鉄損W17/50を測定し、さらに、被膜密着性を評
価した。被膜の密着性は、種々の径を持つ丸棒に試料を
巻き付け、被膜がはく離しない最小径(mm)で評価し
た。その結果を表3に示す。なお、ファイヤライト層を
形成させずに絶縁コーティング処理した例を比較例1と
して表3に併せて示す。
0.025wt%、Al:0.024 wt%、及びN:0.0080wt%を含
有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼スラブを
1400℃に加熱して熱間圧延を施して板厚 2.1mmとし
た。、次いで1050℃の熱延板焼鈍、酸洗を経てから冷間
圧延を、1150℃、1min の中間焼鈍を挟んで2回行って
最終冷延板厚0.23mmに仕上げた。次いで湿水素雰囲気中
で 845℃、2min の脱炭・1次再結晶焼鈍を施したの
ち、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから1250
℃、7hの純化を兼ねた2次再結晶焼鈍を施した。この
仕上げ焼鈍板をH2SO4 で酸洗して表面のフォルステライ
ト被膜を除去した後、さらに湿水素中、雰囲気酸化性P
(H2O) /P(H2)が0.50、温度が850 ℃で50秒の熱処理を
施して鋼板表面にファイヤライト層を形成させた。この
ファイヤライト層は、断面SEM写真の観察から膜厚0.
2 μm であった。その後、張力コーティングとしてリン
酸カルシウム−コロイダルシリカ−クロム酸マグネシウ
ムを主成分とする水性処理液を塗布し、800 ℃で焼き付
け、約1.8 μm の被膜を形成した。その後、実施例1と
同様の評価をした。その結果を表3に示す。なお、ファ
イヤライト層を形成させずに絶縁コーティング処理した
例を比較例2として表3に併せて示す。
0.020wt%、Al:0.022wt%、及びN:0.0075wt%を含有
し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼スラブを14
00℃に加熱して熱間圧延を施して板厚 1.8mmとした。次
いで 900℃の熱延板焼鈍、酸洗を経てから冷間圧延を、
1020℃、3min の中間焼鈍を挟んで2回行って最終冷延
板厚0.23mmに仕上げた。次いで湿水素雰囲気中で 840
℃、3minの脱炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、MgO
を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから1150℃、 7.5
hの純化を兼ねた2次再結晶焼鈍を施した。この仕上げ
焼鈍板をHCL で酸洗して表面のフォルステライト被膜を
除去した後、さらに湿水素中、雰囲気酸化性P(H2O) /
P(H2)が0.40、温度が850 ℃で90秒の熱処理を施して鋼
板表面に(Fe,Mn)2SiO4層を形成させた。この(Fe,Mn)2Si
O4層は、断面SEM写真の観察から膜厚0.45μm であっ
た。その後、張力コーティングとしてリン酸アルミニウ
ム−コロイダルシリカ−無水クロム酸を主成分とする水
性処理液を塗布し、800 ℃で焼き付け、約1.5 μm の被
膜を形成した。その後、実施例1と同様の評価をした。
その結果を表3に示す。なお、(Fe,Mn)2SiO4層を0.01μ
m の膜厚で形成させて絶縁コーティング処理した例を比
較例3として表3に併せて示す。
焼鈍により生じた非金属物質被膜のない表面上に、ファ
イヤライト又はファイヤライトを主成分とする結晶層を
形成させることにより、鋼板に張力を付与して鉄損低減
を図ることができ、また、重ねて張力付与型の絶縁コー
ティングを被成すれば、被膜密着性の優れた鉄損の極め
て低い方向性けい素鋼板を製造することが可能となり、
その効果は大である。
ヤライト結晶層のSEMによる金属組織写真である。
(H2)が、ファイヤライト層の形成状況に及ぼす影響を示
すグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 仕上げ焼鈍済みの方向性けい素鋼板表面
上の非金属物質を除去した表面に、 ファイヤライト又はファイヤライトを主成分とする、厚
み0.05μm 以上の極薄層を具備することを特徴とする磁
気特性の良好な方向性けい素鋼板。 - 【請求項2】 仕上げ焼鈍済みの方向性けい素鋼板表面
上の非金属物質を除去した後、研磨により平滑に仕上げ
た表面に、 ファイヤライト又はファイヤライトを主成分とする、厚
み0.05μm 以上の極薄層を具備することを特徴とする磁
気特性の良好な方向性けい素鋼板。 - 【請求項3】 仕上げ焼鈍済みの方向性けい素鋼板表面
上の非金属物質を除去した後、研磨により平滑に仕上げ
た表面に、 ファイヤライト又はファイヤライトを主成分とする、厚
み0.05μm 以上の極薄層を具備し、該極薄層上に重ねて
被着した、張力付与型絶縁コーティング層をも具備する
ことを特徴とする磁気特性の良好な方向性けい素鋼板。 - 【請求項4】 仕上げ焼鈍済みの方向性けい素鋼板表面
の非金属物質被膜を除去したのち、該鋼板表面にファイ
ヤライト又はファイヤライトを主成分とする厚み0.05μ
m 以上の被膜を形成することを特徴とする磁気特性の良
好な方向性けい素鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 仕上げ焼鈍済みの方向性けい素鋼板の鋼
板表面の非金属物質被膜を除去後、算術平均粗さRa で
0.4μm 以下にまで該鋼板表面を平滑化し、しかる後に
ファイヤライト又はファイヤライトを主成分とする厚み
0.05μm 以上の被膜を該鋼板表面に形成することを特徴
とする磁気特性の良好な方向性けい素鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 ファイヤライト又はファイヤライトを主
成分とする被膜を形成したのち、張力付与型の絶縁コー
ティングを施すことを特徴とする請求項4又は5記載の
磁気特性の良好な方向性けい素鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 該鋼板として、Si:2〜5wt%及びMn:
0.02〜0.10wt%を含有するものを用い、かつファイヤラ
イト又はファイヤライトを主成分とする被膜を形成させ
る工程として、P(H2O) /P(H2)が0.15〜0.7 の範囲内
の酸化性雰囲気にて 600〜1000℃の熱処理を施すことを
特徴とする請求項4、5又は6記載の磁気特性の良好な
方向性けい素鋼板の製造方法。
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