JP3562433B2 - 磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板 - Google Patents

磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器その他の電気機器の鉄心等の用途に供して好適な磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼板は、主として変圧器あるいは回転機器等の鉄心材料として使用され、磁気特性として磁束密度が高く、かつ鉄損および磁気歪が小さいことが要求される。
特に近年、省エネルギーおよび省資源の観点から、磁気特性に優れた方向性けい素鋼板のニーズはますます高まっている。
【0003】
磁気特性に優れる方向性けい素鋼板を得るには、{110}<001>方位、いわゆるゴス方位に高度に集積した2次再結晶組織を得ることが肝要である。
かかる方向性けい素鋼板は、二次再結晶に必要なインヒビター、例えばMnS,MnSe,AlN,BN等を含むけい素鋼スラブを、加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで脱炭焼鈍を行った後、鋼板にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を行うことによって製造される。
【0004】
そして、この方向性けい素鋼板の表面には、特殊な場合を除いて、フォルステライト(MgSiO)を主体とする絶縁被膜(以下、単にフォルステライト絶縁被膜またはフォルステライト被膜という)が形成されているのが一般的である。この被膜は、表面の電気的絶縁だけでなく、その低熱膨張性に起因する引張応力を鋼板に付与することによって、鉄損さらには磁気歪をも効果的に改善する。
従って、フォルステライト被膜の熱膨張係数を何らかの方法で低下させることができれば、更なる鉄損の向上が期待できる。
【0005】
上記の観点から検討を行い、フォルステライト被膜中にフォルステライトより熱膨張係数が低い化合物を形成させて磁気特性や被膜特性を向上させた例としては、特許第 2710000号公報に開示されているMgAl および特許第 2984195号公報に開示されているTiNが知られている。
ここに、 MgAlの存在は、Fujii らによる報告「Glass Film Structure ofGrain−Oriented Silicon Steel Using Aluminum Nitride as an Inhibitor 」(Journal of Materials Engineering and Performance, Vo1.3 (2) April 1994, P.214)から、X線ターゲットとしてCuKαを用いた場合、2θ=37°付近のピークから確認できることが判る。これは、MgAl の (311)ピークであり、MgSiOの (211)ピークとは明確に分離して存在することがわかる(図1参照)。
また、特許第2984195 号公報に開示されているように、TiNの存在はX線ターゲットとしてCuKαを用いた場合、2θ=42.6°付近のピークから確認でき、これはTiN (200)ピークである。
【0006】
これらにより、方向性けい素鋼板の磁気特性や被膜特性は向上したものの、省エネルギー化という時代の流れは、更なる特性の向上を求めている。
そこで、発明者らは、フォルステライト被膜中にTiNとMgAl を共存させれば、一層の磁気特性と被膜特性の向上が図れるのではないかと考え、種々検討を行ったが、意に反して必ずしも良好な結果を得ることはできなかった。
フォルステライト被膜中にTiNとMgAl を共存させても、その被膜形成挙動は、鋼中のMnS,MnSe,AlN等のインヒビターの挙動にも影響するため、優れた磁気特性を得るために必須の過程である二次再結晶そのものにも影響を及ぼす。従って、目的とする被膜組成が得られても、必ずしも磁気特性の向上に結びつかなかったものと考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、従来のフォルステライト被膜に比べて磁気特性に有利に作用し、かつ被膜密着性にも優れたフォルステライト質被膜を有する方向性けい素鋼板を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
上述したとおり、フォルステライト被膜中にTiNとMgAl を共存させても、必ずしも良好な磁気特性を得ることはできなかった。
そこで、発明者らは、良好な二次再結晶を生じさせ、かつTiNとMgAl を共存させるために、特許第 2710000号公報および特許第 2984195号公報に開示されている技術内容を再検討した結果、フォルステライト被膜は焼鈍分離剤を一方の原料とし、また脱炭焼鈍時に生成するサブスケールを他方の原料として生成するものであるのに対し、上記の技術では、脱炭焼鈍条件に関する検討が不十分だったのではないかとの考えに至った。
【0009】
そこで、フォルステライト被膜中にTiNを生成させる特許第 2984195号公報の技術をベースにして、脱炭焼鈍時の昇温速度と雰囲気酸化度に着目し、脱炭焼鈍条件に関する検討を行った。
脱炭焼鈍時の昇温速度に着目した理由は、昇温速度については、過去に多くの検討がなされている(例えば特開昭60−121222号公報、特開平4−160114号公報、特開平6−128646号公報)が、いずれも磁気特性向上の観点からなされたものであって、被膜特性に着目したものではなかったからである。
【0010】
すなわち、発明者らは、脱炭焼鈍条件について鋭意検討した結果、 800℃以上、900 ℃以下の均熱温度で、常温から 750℃までは平均昇温速度:12〜35℃/sで昇温すると共に、 750℃から均熱温度までは平均昇温速度:1〜10℃/sで昇温し、かつ均熱時の雰囲気酸化度(P(HO)/P(H);雰囲気の水素分圧に対する水蒸気分圧の比)を0.35〜0.50とする条件で脱炭焼鈍を行った場合に、極めて優れた磁気特性と被膜特性が得られることが判明した。
【0011】
しかしながら、それらのフォルステライト被膜を調べたところ、被膜中にTiNは生成していたが、 MgAlは生成していなかった。
その例を図2に示すが、2θ=37°付近に MgAlの (311)ピークが見られないことが判る。
しかしながら、2θ=19°や31°付近には、 MgSiOとTiNでは同定できない不明ピーク(☆印)が存在するので、それらがAl化合物に起因するものではないかと考え、調査したところ、FeAl のピークであることが判明した。
JCPDS カードで調べると、FeAl (JCPDS No.34−192)の (311)ピークはMgSiO (JCPDS No.34−189)の(211) ピークとほぼ重なることが判る。これに対し、前述したように、MgAl (JCPDS No.21−1152) の場合、その (311)ピークは MgSiO の (211)ピークとは明確に区別できる。
従って、FeAl は、その (311)ピークと前述の☆印のピークによりMgAlと分別することが可能である。
【0012】
その結果、鋼中にAlを含みインヒビターとしてAlNを使用する場合、Al酸化物として特許第 2710000号公報に開示されている MgAlではなく、 FeAlを生成させ、かつフォルステライト被膜中にTiNと共存させることによって、極めて優れた磁気特性と被膜特性が得られることが新たに究明されたのである。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0013】
すなわち、この発明は、表面にフォルステライト質被膜を有する方向性けい素鋼板であって、該フォルステライト質被膜が、Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなることを特徴とする磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板である。
【0014】
また、この発明は、表面にフォルステライト質被膜を有する方向性けい素鋼板であって、該フォルステライト質被膜が、Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなり、かつ被膜表面の薄膜X線回折によるMg2SiO4(131)ピークの強度をI0 、FeAl2O4(111)ピークの強度をI1 、TiN(200) ピークの強度をI2 とするとき、これらが、次式(1), (2)
3/100 ≦I1 /I0 ≦40/100 --- (1)
3/100 ≦I2 /I0 ≦40/100 --- (2)
但し、I1 /I0 +I2 /I0 ≦50/100
の関係を満足することを特徴とする磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を由来するに至った実験結果について説明する。
なお、以後、各元素の含有量の表示に用いる「%」は、特に断わりがない限り質量百分率(mass%)を表すものとする。
実験1
C:0.072 %,Si:3.42%,Mn:0.069 %,Se:0.019 %,Al:0.025 %,N:0.0084%,Cu:0.10%,Sb:0.043 %を含む組成になる鋼スラブを、1430℃の温度で20分間加熱後、熱間圧延により2.4 mm厚の熱延板とした。ついで、1000℃, 1分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:1.7mm の中間厚とし、1050℃, 1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.23mmに仕上げた。
その後、得られた冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H −HO −N雰囲気中にて 850℃の温度で、片面当たりの酸素目付量が 0.4〜0.8 g/mになるように脱炭焼鈍を施した。その際、室温からT ℃(T =600 , 650 , 700 ,750 , 800 , 850)までの昇温速度とT ℃から 850℃までの昇温速度をそれぞれ独立して、前者は5〜50℃/s、後者は 0.5〜20℃/sの範囲で変化させた。また均熱時のP(HO)/P(H)で表される雰囲気の酸化度は 0.2〜0.7 とした。
【0016】
ついで、MgOを主成分として、マグネシア:100 重量部に対しTiOを10重量部配合した焼鈍分離剤をスラリー状にし、それぞれの脱炭焼鈍板コイルに塗布したのち、乾燥させた。なお、マグネシアは水和量が2%、30℃でのクエン酸活性度(CAA40) が75秒、BET(比表面積)が 25 m/gのものを用いた。
その後、窒素雰囲気中にて 850℃, 20時間の保定処理に引き続き、窒素:25 vol%,水素:75 vol%の雰囲気中にて10℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍および水素雰囲気中で1200℃, 5時間焼鈍する仕上げ焼鈍を行った。
その際、試料を 850〜1150℃の温度域にて98 MPaの荷重で加圧すると共に、鋼板単位重量(kg)および単位時間(h) 当たりのガス流量を1×10−2/(kg ・h)にした。なお、加圧は、実際の工程での巻取り張力と昇温中のコイルの熱膨張による鋼板間の圧力を想定したものである。
【0017】
かくして得られた試料のフォルステライト被膜の外観と曲げ密着性および磁気特性を評価したが、室温から一定の速さで昇温することに該当するT =850 ℃の場合、この条件ではいずれの場合も優れた磁気特性と被膜特性の両者を得ることはできなかった。
また、室温からT ℃までの昇温速度が、T ℃から850 ℃までの昇温速度より遅い場合も優れた特性を得ることはできなかった。逆に室温からT ℃までの昇温速度が、T ℃から850 ℃までの昇温速度より速い場合には優れた被膜特性が得られ易かったが、それでもT <700 ℃の場合には良好な磁気特性を得ることはできなかった。この場合は形成される1次再結晶集合組織への影響が大きかったためと思われる。
【0018】
これに対し、比較的広い範囲で非常に良好な磁気特性と被膜特性が得られたのは、T =750 ℃の場合であった。特に、脱炭焼鈍均熱時のP(HO)/P(H)で表される雰囲気の酸化度が0.35〜0.50の時に、極めて優れた磁気特性と被膜特性の両者を併せて得ることができた。
図3に、T =750 ℃、均熱時の雰囲気酸化度が0.35〜0.50の時の磁気特性と被膜特性の評価結果を示す。なお、被膜の曲げ密着性は、直径:5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
【0019】
同図から明らかなように、室温から 750℃までの昇温速度を12〜35℃/sにすると共に、 750〜850 ℃間の昇温速度を1〜10℃/sにすることによって、極めて優れた磁気特性と被膜特性が併せて得られることが判る(均熱時の雰囲気酸化度は0.35〜0.50)。
また、これらのフォルステライト質被膜を調査したところ、被膜中にはフォルステライト以外にTiNとFeAl が生成しており、 MgAlは生成していなかった。
【0020】
脱炭焼鈍時に、常温から750 ℃までの昇温速度を12〜35℃/sにすると共に750℃から均熱温度までの昇温速度を1〜10℃/sにすることで磁気特性および被膜特性が向上する理由について、発明者らは次のように考えている。
すなわち、発明者らは、予備実験を行って脱炭焼純板の5%HCl・60℃・60秒間の酸洗条件で酸洗前後の重量変化すなわち酸洗減量を調べたところ、酸洗減量値と磁気特性および被膜特性との間には相関があり、酸洗減量値が低いほど磁気・被膜特性は向上する傾向にあることが判明した。
この酸洗減量値はサブスケール最表面の性質を反映すると考えられ、従って何らかのかたちで被膜形成初期の反応に影響を及ぼすものと考えられる。
【0021】
そこで、脱炭焼鈍時の昇温速度と酸洗減量値との関係を調べたところ、昇温速度を上記の範囲に制御した場合には、そうでない場合に比べて酸洗減量値は低くなって、酸洗減量値を 0.3 g/m 以下の低い値に抑制できることが判った。
酸洗減量値が低いほど磁気・被膜特性が向上する理由は、明確に解明されたわけではないが、おそらくこれは鋼板表面での雰囲気との反応性すなわち活性度を表すものと考えられる。従って、酸洗減量値が低くて活性度が低いほど仕上げ焼鈍における雰囲気、つまりマグネシアの水和水から放出される水蒸気の影響を受けにくいからだと考えられる。昇温速度を上述のように規定することで酸洗減量値が低下するのは、酸化初期の昇温速度を遅くすることで、酸化初期に緻密なサブスケールが形成されるためと考えられる。
【0022】
また、 脱炭焼鈍均熟時のP(HO)/P(H)で表される雰囲気の酸化度を0.35〜0.50にすることで磁気・被膜特性が向上する理由については、発明者らは次のように考えている。
すなわち、脱炭焼鈍・均熱時雰囲気の酸化度の違いによってサブスケール中SiO層の構造が変化するが、その構造の違いにより仕上げ焼鈍中の被膜形成過程が変化し、極めて優れた磁気特性につながるインヒビター分解過程をもたらすためと考えられる。
【0023】
すなわち、脱炭焼鈍・均熱雰囲気の酸化度の違いによるサブスケール中SiO2層の構造の変化は、特開平8−218124号公報に開示されている電気化学的なサブスケールの評価法で把握することができる。この方法による電圧−時間曲線から得られる電圧変化量V34値はサブスケール中のSiO2層の性状を反映するが、均熱時の雰囲気酸化度を0.35〜0.50の範囲にすることでV34値は−0.05〜+0.05 (V)の一定範囲となった。
つまり、常温から 750℃までは平均昇温速度:12〜35℃/sで昇温すると共に、750 ℃から850 ℃までは平均昇温速度:1〜10℃/sで昇温し、かつ均熱時の雰囲気酸化度(P(H2O)/P(H2);雰囲気の水素分圧に対する水蒸気分圧の比)を0.35〜0.50の条件で脱炭焼鈍を行うことにより、サブスケールの酸洗減量値を 0.3 g/m2 以下、V34値を−0.05〜0.05(V)に制御し、表面の反応性と内部構造を一定範囲に規制することによって、極めて優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性けい素鋼板を得ることができるわけである。
ここに、V34値とは、電圧変化曲線の第3領域の電圧に関する値で、次式
34値=(第3領域の終わりの電圧値)−(第3領域の始まりの電圧値)
で定義されるものである。
ただし、第3領域の始まりの電圧値とは、1秒間の電圧降下量が0.01V未満でかつそれが連続して2秒以上続き始める時の電圧値、また第3領域の終わりの電圧値とは1秒間の電圧降下量が0.01V以上でかつそれが連続して4秒以上続いて後の電圧値のことである。
【0024】
次に、上記の知見事実を基にして、フォルステライト質被膜中のTiN量およびFeAl 量と磁気・被膜特性との関係を調べる実験を行った。
実験2
C:0.069 %, Si:3.44%,Mn:0.071 %,Se:0.018 %,Al:0.026 %,N:0.0087%,Cu:0.10%,Ni:0.20%,Sb:0.043 %を含む組成になる鋼スラブを、1430℃の温度で20分間加熱後、熱間圧延により2.6 mm厚の熱延板とした。ついで1000℃, 1分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:1.8 mmの中間厚とし、1100℃, 1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延によって最終板厚:0.23mmに仕上げた。
その後、得られた冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H −HO −N2雰囲気中にて 820℃の温度で、片面当たりの酸素目付量が 0.4〜0.8 g/mになるように脱炭焼鈍を施した。その際、室温からT ℃(T =600 , 650 , 700 ,750 , 800 , 850)までの昇温速度とT ℃から 850℃までの昇温速度をそれぞれ独立して、前者は5〜50℃/s,後者は0.5 〜40℃/sの範囲で変化させた。また均熱時のP(HO)/P(H)で表される雰囲気の酸化度は0.30〜0.55とした。
【0025】
ついで、MgOを主成分として、マグネシア:100 重量部に対しTiOを8重量部配合した焼鈍分離剤をスラリー状にし、それぞれの脱炭焼鈍板コイルに塗布してから乾燥させた。なお、マグネシアは水和量が 1.5%、30℃でのクエン酸活性度CAA40)が65秒、BET(比表面積)が 15 m/gのものを用いた。
その後、窒素雰囲気中にて 850℃, 20時間の保定処理に引き続き、窒素:25 vol%、水素:75 vol%の雰囲気中にて10℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍および水素雰囲気中で1200℃, 5時間焼鈍する仕上げ焼鈍を行った。
その際、試料を 850〜1150℃の温度域にて0,49,98,147, 196 MPaの5条件で加圧すると共に、鋼板単位重量(kg)および単位時間(h) 当たりのガス流量を1×10−5,1×10−4,1×10−3,1×10−2,1×10−1,1 m/(kg ・h)の6段階で変化させた。なお、加圧は、実際の工程での巻取り張力と昇温中のコイルの熱膨張による鋼板間の圧力を想定したものであり、またガス流量の変化はそれに伴うコイル層間雰囲気の変化を想定したものである。
【0026】
かくして得られた試料のフォルステライト質被膜と磁気・被膜特性との関係について、とくに被膜表面の薄膜X線回折によるMgSiO(131)ピークの強度I ,FeAl(111)ピークの強度I ,TiN(200) ピークの強度I と磁気・被膜特性との関係について調査した。
この時、脱炭焼鈍板サブスケールの酸洗減量値が 0.3 g/m 以下,V34値が−0.05〜+0.05 (V)の範囲を満足する条件下では、フォルステライト被膜中にMgAl ではなく FeAlが生成していた。
【0027】
2 /I0 が5/100以上 10/100 以下である場合のI1 /I0 と磁気特性との関係を図4に示す。
1 /I0 が3/100以上の場合に、W17/50 ≦ 0.82 W/kgという極めて良好な鉄損が得らることが判る。
また、 FeAl2O4が生成すると磁束密度 (B8)が向上していることから、おそらくFeAl2O4 生成による鉄損低減効果は、被膜張力向上効果以外に磁束密度 (B8)向上効果も大きいものと考えられる。
インヒビター分解過程は被膜形成過程の差異により影響を受けるが、TiNが生成する条件では、被膜形成過程において MgAl2O4が生成する場合よりもFeAl2O4 が生成する方が、Goss方位に近い粒が二次再結晶する意味において、有利なインヒビター分解過程となるものと考えられる。但し、I1 /I0 が40/100を超えると、FeAl2O4 に対する Mg2SiO4の生成量が相対的に不足するためか、被膜表面に若干の欠陥がみられ、外観の均一性がやや劣化した。
【0028】
次に、図5に、I /I , I /I と磁気・被膜特性との関係を示す。
この図から、極めて優れた磁気・被膜特性が得られる領域は、次式(1), (2)
3/100 ≦I /I ≦40/100 −−− (1)
3/100 ≦I /I ≦40/100 −−− (2)
但し、I /I +I /I ≦50/100
の関係を満足する範囲であることが判る。
この場合も、この領域では磁束密度 (B)が向上していたことから、おそらくFeAl とTiNの生成が関与した二次再結晶過程への影響による磁束密度 (B)向上効果も大きいと考えられる。
【0029】
また、TiNが全く生成していない場合(I /I =0)には、FeAl の生成により逆に鉄損は劣化しており、 FeAlの生成が鉄損の低減に有利になるのはTiNが生成する場合であることが一目瞭然である。
なお、I /I >40/100 またはI /I >40/100 あるいはI /I+I /I >50/100 の範囲では、フォルステライト質被膜中の MgSiOの生成量が相対的に不足するためか、被膜表面に若干の欠陥がみられ、外観の均一性がやや劣る傾向が見られた。
【0030】
以上の実験結果により、フォルステライト質被膜が、MgSiO, FeAlおよびTiNを主体とし、特に被膜表面の薄膜X線回折によるMgSiO(131)ピークの強度I ,FeAl(111)ピークの強度I ,TiN(200) ピークの強度I が、次式(1), (2)
3/100 ≦I /I ≦40/100 −−− (1)
3/100 ≦I /I ≦40/100 −−− (2)
但し、I /I +I /I ≦50/100
の関係を満足する場合に、極めて優れた磁気特性と被膜特性の両者が併せて得られることが解明されたのである。
【0031】
次に、この発明における素材鋼板の好適組成範囲について述べる。
この発明で対象とする含けい素鋼スラブの成分組成としては、C:0.03〜0.12%、Si:2.0 〜4.5 %、sol.Al:0.005 〜0.05%およびN:0.003 〜0.012 %を含有させることが必要である。
sol.AlおよびNは、AlNインヒビターを形成させるために必要であり、良好に二次再結晶させるためには、sol.Al:0.005 〜0.05%、N:0.003 〜0.012 %とする必要がある。なお、これを超える量ではAlNの粗大化を招いて抑制力を失い、一方これ未満ではAlNの量が不足する。また、Alはフォルステライト被膜中に生成させる FeAlの原料としても必要である。
Cは、熱間圧延時のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行うために重要な成分である。含有量が0.03%に満たないと良好な一次再結晶組織が得られず、一方0.12%を超えると脱炭が難しくなって脱炭不良となり磁気特性が劣化するので、0.03〜0.12%とする。
Siは、製品の電気抵抗を高め、渦電流損を低減させる上で重要な成分である。含有量が 2.0%に満たないと最終仕上げ焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位が損なわれ、一方 4.5%を超えると冷延性に問題が生じるので、 2.0〜4.5 %に限定する。
【0032】
その他、必要に応じて、Mn:0.02〜0.20%、SおよびSeのうちから選んだ少なくとも一種:0.010 〜0.040 %、Sb:0.0l〜0.20%、Cu:0.0l〜0.20%、Mo:0.005 〜0.10%、Sn:0.02〜0.30%、Ge:0.02〜0.30%、Ni:0.01〜0.50%、Cr:0.05〜0.5 %、P:0.002 〜0.30%、Nb:0.003 〜0.10%、V:0.003 〜0.10%およびBi:0.005 〜0.20%の範囲で各成分を含有させることができる。
MnとSeおよびSもインヒビターとして機能するものであるが、Mn量が0.02%未満またはSとSeの単独もしくは合計量が 0.010%未満では、インヒビター機能が不十分であり、一方Mn量が0.20%を超えまたはSとSeの単独もしくは合計量が0.040 %を超えるとスラブ加熱の際に必要とする温度が高くなりすぎて実用的でないので、Mnは0.02〜0.20%、S, Seは単独または合計量で 0.010〜0.040 %の範囲とするのが好ましい。
【0033】
また、さらに磁束密度を向上させるために、Sb, Cu, Sn, Ge, Ni, P, NbおよびV等を単独または複合して添加することが可能である。
しかしながら、Sbは、含有量が0.20%を超えると脱炭性が悪くなり、一方0.0l%に満たないと効果がないので、その含有量は0.01〜0.20%程度とするのが好ましい。
Cuは、含有量が0.20%を超えると酸洗性が悪化し、一方0.01%に満たないと効果がないので、その含有量は0.01〜0.20%程度とするのが好ましい。
Sn, Geは、含有量が0.30%を超えると良好な一次再結晶組織が得られず、一方0.02%未満では効果がないので、それぞれの含有量は0.02〜0.30%程度とするのが好ましい。
Niは、含有量が0.50%を超えると熱間強度が低下し、一方0.0l%未満では効果がないので、その含有量は0.01〜0.50%程度とするのが好ましい。
Pは、含有量が0.30%を超えると良好な一次再結晶組織が得られず、一方0.002 %未満では効果がないので、その含有量は 0.002〜0.30%程度とするのが好ましい。
Nb, Vは、含有量が0.10%を超えると脱炭性が悪くなり、一方 0.003%に満たないと効果がないので、それぞれの含有量は 0.003〜0.10%程度とするのが好ましい。
【0034】
また、表面性状を改善するためにMoを添加することができる。しかしながら、含有量が0.10%を超えると脱炭性が悪くなり、一方 0.005%に満たないと効果がないので、その含有量は 0.005〜0.10%程度とするのが好ましい。
Crは、被膜特性の更なる改善に有効である。しかしながら、含有量が0.05%未満では目立った改善効果が得られず、一方0.50%を超えると磁気特性が劣化するので、Crは0.05〜0.50%程度が好適である。
【0035】
さらに、Biは、磁気特性を大きく向上させ、高磁束密度の素材を得る上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.20%を超えると良好な一次再結晶組織が得られず、磁束密度の向上が見られなくなり、一方 0.005%に満たないとその添加効果に乏しいので、その含有量は 0.005〜0.20%程度とするのが好ましい。但し、Biの添加は、被膜特性を劣化させるので、その改善にCrを併せて含有させることが効果的である。この場合におけるCr量は、上述した0.05〜0.50%の範囲で構わない。
【0036】
次に、この発明の対象とする方向性けい素鋼板の製造条件について述べる。
従来より用いられている製鋼法を利用して、上記の好適成分組成に調整した溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブとしたのち、1100〜1450℃の温度範囲でスラブ加熱を行い、その後熱間圧延を行う。
ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回ないしは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。なお、最終冷間圧延時に、圧延ロール出側直後の鋼板温度が 150〜350 ℃となる圧延を少なくとも1パス以上行うことが望ましい。
【0037】
ついで、脱炭焼鈍を行うわけであるが、この発明では脱炭焼純により生成するサブスケールの酸洗減量値を0.3 g/m以下、V34値を−0.05〜+0.05 (V)の範囲にすることが肝要である。そのためには、例えば常温から 750℃までは平均昇温速度:12〜35℃/sで昇温し、ついで 750℃から均熱温度までは平均昇温速度:1〜10℃/sで昇温し、しかも均熱時の雰囲気酸化度(P(HO)/P(H);雰囲気の水素分圧に対する水蒸気分圧の比) が0.35〜0.50の条件で行うことが望ましいが、本質的には、酸洗減量値とV34値を上述の範囲に制御できる脱炭焼純条件であればいずれでも良い。
また、均熱温度は 800〜900 ℃の範囲が好適である。というのは、均熱温度がこれより低くても高くても、脱炭に要する時間が実操業を考えた場合に実際的でなくなるからである。また、サブスケール量については、鋼板の酸素目付量(片面当たり) で 0.4〜0.8 g/mとするのが好ましい。というのは、0.4 g/m未満では、フォルステライトの原料となるサブスケールが不足するために良好な被膜が形成され難く、一方 0.8 g/m を超えるとフォルステライト被膜が過剰に生成し厚くなるため占積率の低下を来すからである。なお、脱炭焼鈍に引き続いて30〜200 ppm 程度鋼板を窒化させる処理を行っても良い。
【0038】
この脱炭焼鈍を施した鋼板表面に、マグネシアを主成分にした焼純分離剤をスラリー状にして塗布したのち、乾燥する。
ここで、焼鈍分離剤に用いるマグネシアは、水和量 (20℃, 6分間にて水和後、1000℃, 1時間の強熱による減量) が1〜4%の範囲のものを用いることが有利である。というのは、MgO の水和量が1%未満ではフォルステライト被膜の生成が不十分となり、一方4%を超えるとコイル層間への持ち込み水分量が多くなりすぎるためか、TiNの生成が不十分になるからである。
また、30℃でのクエン酸活性度(CAA40) は、45秒から120 秒のものが好適である。というのは、45秒未満では反応性が強すぎてフォルステライトが急激に生成して剥落し易く、一方 120秒を超えると反応性が弱すぎてフォルステライト生成が進行しないからである。
さらに、BET(比表面積) は12〜40 m/g のものを用いることが好ましい。というのは、12 m/g 未満では反応性が弱すぎてフォルステライト生成が進行せず、一方 40 m/gを超えると反応性が強すぎてフォルステライトが急激に生成して剥落し易くなるからである。
【0039】
また、焼純分離剤の塗布量は、鋼板片面当たリ4〜10 g/m の範囲とするのが好適である。というのは、塗布量が4g/mより少ないとフォルステライトの生成が不十分となり、一方 10 g/mを超えるとTiNがほとんど生成しなくなるからである。
さらに、焼純分離剤中にTi酸化物または加熱によりTi酸化物になるTi化合物を、マグネシア:100 重量部に対するTiOを換算で 2.0〜20重量部の範囲で含有させることが重要である。このTi化合物は、フォルステライト質被膜中に生成するTiNの成分中、Tiの供給源となる。
Ti酸化物または加熱によりTi酸化物になるTi化合物としては、たとえばTiO,TiO・H0, TiO・(OH), Ti(OH)などが挙げられる。また、焼純分離剤中のTi酸化物または加熱によりTi酸化物になるTi化合物の量が、TiO換算でマグネシア:100 重量部に対して 2.0重量部に満たないとTiNの生成が不十分となり磁気特性および被膜特性の改善効果に乏しく、一方20重量部を超えるとマグネシアの量が相対的少なくなり、フォルステライトの生成反応が進まない。
【0040】
なお、被膜・ 磁気特性の一層の均一性向上を目的として、焼鈍分離剤中にSnO, Fe, CaOのような酸化物、 MgSOやSnSO のような硫化物、あるいはSrSO、 Sr(OH)・8HOようなSr化合物の1種または2種以上をそれぞれ単独または複合して添加してもよい。特に、マグネシア:100 重量部に対し、Sr化合物をSr換算で 0.5〜5重量部添加することは、フォルステライト被膜中に FeAlとTiNを共に生成させる上で有効に作用する。
これに反して、 NaのようなB系化合物、Sb やSb(SO のようなSb系化合物は、フォルステライト被膜中での FeAlの生成を妨げて MgAlを生成し易くするので、その添加は好ましくない。
【0041】
加えて、TiN生成のためには、分離剤塗布後の巻き取り張力を29.4〜245 MPaにすることが好適である。その理由は、巻き取り張力が29.4 MPaより小さいと生成する被膜はほぼフォルステライトであってTiNはほとんど生成せず、一方 245MPa を超えるとTiNは生成するものの、FeAl の生成量が不足して、被膜の均一性が劣化するからである。
【0042】
その後、二次再結晶焼鈍ついで純化焼鈍(最終仕上げ焼純)を行うわけであるが、この純化焼鈍では、まず1050℃以上の温度範囲で、少なくとも3時間は窒素濃度:15 vol%以上の非酸化性雰囲気中で、その後1150〜1250℃の温度範囲で少なくとも2時間は窒素濃度:2 vol%未満の水素雰囲気中で焼鈍を行う。
すなわち、純化焼純の前半部ではTiNを生成させ易くするため、TiOが分解し始める温度である1100℃以上で雰囲気中に窒素を導入することが肝要である。このとき、雰囲気中の窒素濃度が15 vol%に満たないとTiNの生成が十分ではなくなるので、15 vol%以上とする。また、焼鈍時間が3時間に満たないとTiNの生成が十分ではなくなるので、焼鈍時間は3時間以上とする。なお、残余の雰囲気成分はTiNを優先的に形成させるために非酸化性であればよく、具体的には水素雰囲気や不活性ガス雰囲気が挙げられる。
また、純化焼鈍の後半部の温度が1150℃に満たないとSないしSe等の除去が不十分となって磁気特性が劣化し、一方1250℃を超えると熱間強度が低下しコイル形状が悪化して巻き取りができなくなるので、1150〜1250℃の範囲とする。また、窒素濃度が2 vol%以上あるいは焼鈍時間が2時間に満たないと、SないしSe等の除去が不十分となって磁気特性が劣化するので、純化焼純後半部の窒素濃度は2 vol%未満かつ焼鈍時間は2時間以上とする。
【0043】
最後に、鋼板単位重量(kg)および単位時間(h) 当たりの雰囲気ガスの導入量を100 ×10−6〜2000×10−6/(kg ・h)程度とすることが重要である。というのは、雰囲気ガス導入量が 100×10−6/(kg ・h)より少ないと、コイル層間でのガス流通が不足するためか、TiNの生成が十分でない上、被膜の均一性にも劣り、一方ガス導入量が2000×10−6/(kg ・h)より多いと経済性に劣るばかりか、特にコイル外巻き部で被膜中にTiNがほとんど生成しなくなるからである。
【0044】
上述したように、フォルステライト質被膜中にTiNを生成させるには、(a) マグネシア水和量、(b) 分離剤塗布量、(c) 分離剤塗布後の鋼板巻き取り張力および(d) 純化焼純時の雰囲気とガス流量などを適正に制御することが重要であり、実際、これらを制御することによって、フォルステライト質被膜中に FeAlとTiNの両者を形成させることができた。
【0045】
その後、りん酸塩系の絶縁コーティング好ましくは張力を有する絶縁コーティングを施して製品とする。
また、最終冷延後、最終仕上げ焼鈍後あるいは絶縁コーティング後に既知の磁区細分化処理を行うこともよく、さらなる鉄損の低減に有効である。
【0046】
【実施例】
実施例1
C:0.068 %, Si:3.45%, Mn:0.069 %, sol.Al:0.025 %, N:0.0089%, Se:0.020 %, Cu:0.12%およびSb:0.040 %を含む組成になる鋼スラブ、計10本 (各スラブ重量は10t)をそれぞれ、1430℃で30分間加熱後、熱間圧延により2.5 mm厚の熱延板とした。ついで、1000℃, 1分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:1.8 mmの中間厚とし、1100℃, 1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.26mmに仕上げた。なお、この際、圧延ロール出側直後の鋼板温度が200 ℃以上となる圧延を2パス行った。
ついで、H −HO −N 雰囲気中にて 830℃の脱炭焼純を施した。この時、750 ℃までの昇温速度と 750℃から830 ℃までの昇温速度を変化させると共に、均熱帯雰囲気の酸化性ポテンシャル(P(HO)/P(H))を 0.2〜0.7 の範囲で変化させることによって、脱炭焼鈍板サブスケールの酸洗減量値とV34値を表1に示すように変化させた。また、脱炭焼鈍時の均熱時間や最終冷延後(脱炭焼純前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.4 g/m以上、0.8 g/m以下になるように調整した。
その後は、表1に示す条件で処理した。
なお、以後の工程における共通条件は、マグネシア:100 重量部に対してTiOを10重量部、Sr化合物をSr換算で1重量部含有させた焼純分離剤を鋼板表面に塗布し、その後、窒素雰囲気中で 850℃まで昇温した後、窒素:20 vol%、水素:80 vol%の雰囲気中で12℃/hの速度で1050℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を行い、ついで窒素濃度が2 vol%未満の水素雰囲気中にて1160℃, 5時間の純化焼鈍を行ったことである。そして、かような純化焼鈍後、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0047】
かくして得られた各製品コイルの磁気特性(磁束密度B 、鉄損W17/50)と被膜の曲げ密着性および被膜外観について調査した。なお、被膜の曲げ密着性は、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
また、被膜表面の薄膜X線測定を行い、MgSiO(131)ピークI ,FeAl(111)ピークI , TiN(200) ピークI の強度とMgA1(311)ピークの有無についても調査した。
得られた結果を整理して表2に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003562433
【0049】
【表2】
Figure 0003562433
【0050】
表2から明らかなように、この発明に従い、フォルステライト質被膜Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなるものはいずれも、極めて優れた被膜特性および磁気特性を示している。
【0051】
実施例2
C:0.065 %, Si:3.26%, Mn:0.068 %, sol.Al:0.024 %, N:0.0083%, Se:0.018 %, Cu:0.10%およびSb:0.025 %を含む組成になる鋼スラブ、計10本(各スラブ重量は10t)をそれぞれ、1430℃で30分間加熱後、熱間圧延により2.7mm 厚の熱延板とした。ついで、1000℃, 1分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:1.9 mmの中間厚とし、1100℃, 1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.34mmに仕上げた。なお、この際、圧延ロール出側直後の鋼板温度が 220℃となる圧延を1パス行った。
ついで、H −HO −N 雰囲気中にて 850℃の脱炭焼鈍を施した。この時、750 ℃までの昇温速度と 750℃から850 ℃までの昇温速度を変化させると共に、均熱帯雰囲気の酸化性ポテンシャル(P(HO)/P(H))を 0.2〜0.7 の範囲で変化させることによって、脱炭焼純板サブスケールの酸洗減量値とV34値を表3に示すように変化させた。また、脱炭焼鈍時の均熱時間や最終冷延後(脱炭焼純前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.4 g/m以上、0.8 g/m以下になるように調整した。
その後は、表3に示す条件で工程処理した。
なお、以後の工程における共通条件は、マグネシア:100 重量部に対してTiOを6重量部含有させた焼純分離剤を鋼板表面に塗布し、その後、窒素雰囲気中での 850℃, 25時間の保定処理に続いて、窒素:25 vol%、水素:75 vol%の雰囲気中にて10℃/hの速度で1050℃まで昇温する二次再結晶焼純を行ったのち、窒素濃度が2 vol%未満の水素雰囲気中にて1200℃, 3時間の純化焼鈍を行ったことである。そして、かような純化焼鈍後、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0052】
かくして得られた各製品コイルの磁気特性(磁束密度B 、鉄損W17/50)と被膜の曲げ密着性および被膜外観について調査した。
また、被膜表面の薄膜X線測定を行い、MgSiO(131)ピークI ,FeAl(111)ピークI , TiN(200) ピークI の強度とMgA1(311)ピークの有無についても調査した。
得られた結果を整理して表4に示す。
【0053】
【表3】
Figure 0003562433
【0054】
【表4】
Figure 0003562433
【0055】
表4から明らかなように、この発明に従い、フォルステライト質被膜Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなるものはいずれも、極めて優れた被膜特性および磁気特性を示している。
【0056】
実施例3
表5に示す種々の成分組成になる含けい素鋼スラブを用意した。これらの鋼スラブを1430℃で30分間加熱後、熱間圧延により 2.3mm厚の熱延板とした。ついで、1000℃, 1分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:1.7 mmの中間厚とし、1050℃, 1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.22mmに仕上げた。なお、この際、圧延ロール出側直後の鋼板温度が 200℃以上となる圧延を2パス行った。
ついで、H −HO −N 雰囲気中にて 840℃の脱炭焼鈍を施した。この時、750 ℃までの昇温速度と 750℃から 840℃までの昇温速度を変化させると共に、均熱帯雰囲気の酸化性ポテンシャル(P(HO)/P(H))を 0.2〜0.7 の範囲で変化させることによって、脱炭焼鈍板サブスケールの酸洗減量値とV34値を表6に示すように変化させた。また、脱炭焼鈍時の均熱時間や最終冷延後(脱炭焼純前)の電解脱脂条件(有無を含めて)等を適宜変更して、酸素目付量(片面当たり)が0.4 g/m以上、0.8 g/m以下になるように調整した。なお、表5中、F組成のコイルは、脱炭焼鈍後に窒化処理を行って窒素量を 200 ppmとした。
その後は、表6に示す条件で処理した。
なお、以後の工程における共通条件は、マグネシア:100 重量部に対してTiOを8重量部、Sr化合物をSr換算で 2.5重量部含有させた焼純分離剤を鋼板表面に塗布し、その後、窒素雰囲気中での 850℃, 20時間の保定に続いて、窒素:25 vol%、水素:75 vol%の雰囲気中で10℃/hの速度で1050℃まで昇温する二次結晶焼鈍を行ったのち、窒素濃度が2 vol%未満の水素雰囲気中にて1180℃, 3時間の純化焼鈍を行ったことである。そして、かような純化焼鈍後、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0057】
かくして得られた各製品コイルの磁気特性(磁束密度B 、鉄損W17/50)と被膜の曲げ密着性および被膜外観について調査した。
また、被膜表面の薄膜X線測定を行い、MgSiO(131)ピークI ,FeAl(111)ピークI , TiN(200) ピークI の強度とMgA1(311)ピークの有無についても調査した。
得られた結果を整理して表7に示す。
【0058】
【表5】
Figure 0003562433
【0059】
【表6】
Figure 0003562433
【0060】
【表7】
Figure 0003562433
【0061】
表7から明らかなように、この発明に従、フォルステライト質被膜Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなるものいずれも、極めて優れた被膜特性および磁気特性が得られている。
【0062】
【発明の効果】
かくして、この発明に従い、フォルステライト質被膜Mg2SiO4 ,FeAl2O4 およびTiNからなるものとすることによって、極めて優れた磁気特性および被膜特性の両者を同時に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フォルステライト被膜中の MgSiOとMgAl の生成例を示した図である。
【図2】フォルステライト質被膜表面の薄膜X線回折による MgSiOとFeAlおよびTiNの生成例を示した図である。
【図3】脱炭焼鈍時の昇温速度が磁気特性および被膜特性に及ばす影響を示した図である。
【図4】MgSiO(131)ピークの強度I とTiN(200) ピークの強度I の関係が5/100 ≦I /I ≦10/100 である場合に、MgSiO(131)ピークの強度Iに対するFeAl(111)ピークの強度I の比I /I が磁気特性に及ぼす影響を示した図である。
【図5】MgSiO(131)ピークの強度I , FeAl(111)ピークの強度I およびTiN(200) ピークの強度I 間の強度比I /I 、I /I が磁気・被膜特性に及ぼす影響を示した図である。

Claims (2)

  1. 表面にフォルステライト質被膜を有する方向性けい素鋼板であって、該フォルステライト質被膜が、Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなることを特徴とする磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板。
  2. 表面にフォルステライト質被膜を有する方向性けい素鋼板であって、該フォルステライト質被膜が、Mg2SiO4, FeAl2O4およびTiNからなり、かつ被膜表面の薄膜X線回折によるMg2SiO4(131)ピークの強度をI0 、FeAl2O4(111)ピークの強度をI1 、TiN(200) ピークの強度をI2 とするとき、これらが、次式(1), (2)
    3/100 ≦I1 /I0 ≦40/100 --- (1)
    3/100 ≦I2 /I0 ≦40/100 --- (2)
    但し、I1 /I0 +I2 /I0 ≦50/100
    の関係を満足することを特徴とする磁気特性と被膜特性に優れた方向性けい素鋼板。
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