JPH1053421A - 塗布型磁気記録媒体の下層用粉末 - Google Patents

塗布型磁気記録媒体の下層用粉末

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JPH1053421A
JPH1053421A JP22074696A JP22074696A JPH1053421A JP H1053421 A JPH1053421 A JP H1053421A JP 22074696 A JP22074696 A JP 22074696A JP 22074696 A JP22074696 A JP 22074696A JP H1053421 A JPH1053421 A JP H1053421A
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誠一 久野
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Kazuji Sano
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Yoshifumi Horikawa
義史 堀川
Yasuhiko Aihara
靖彦 粟飯原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁性層(上層)と支持体の間に非磁性層(下
層)を設ける塗布型磁気記録媒体の表面平滑性,強度,
磁気特性および耐候性等を改善する下層用粉末を得る。 【解決手段】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
粒子からなり且つ100℃で放出するH2Oの量が2重
量%以下のオキシ水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒
体用の下層用粉末。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,重層構造の塗布型
磁気記録媒体に用いられる下層用粉末に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】結合剤樹脂(バインダー)に磁性粉を分
散含有させた塗膜を支持体上に塗布することによって支
持体上に磁性層を形成するいわゆる塗布型磁気記録媒体
において,低ノイズで高出力特性を得るために該磁性層
の厚みをより薄くすることが望まれ,このために,該磁
性層と支持体の間に,非磁性粉末を結合剤樹脂中に分散
含有させた非磁性層の塗膜(本明細書では下層と呼ぶ)
を形成する重層構造の塗布型磁気記録媒体が提案されて
いる。
【0003】従来,この下層を形成するための非磁性粉
末としては,球状酸化チタン粉末または針状酸化鉄粉末
が主に使用されている。また,このような下層をもつ磁
気記録媒体については,例えば特開昭63−18741
8号公報,特開平4−167225号公報,特開平6−
60362号公報,特開平6−131653号公報に記
載されたようなものがある。また,特開平4−1672
25号公報,特開平6−139553号公報,特開平6
−215360号公報,特開平7−78331号公報,
特開平7−105530号公報,特開平7−18264
9号公報,特開平7−282443号公報,特開平7−
326037号公報,特開平7−334835号公報等
には,かような重層構造の磁気記録媒体において,下層
を形成する非磁性粉として針状のヘマタイト等を用いた
場合の特性値が示されており,針状の非磁性粉として
は,開示された実施例の他にもオキシ水酸化鉄等も使用
可能であるとの教示もなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,重層構造の磁
気記録媒体において,オキシ水酸化鉄を下層用粉体とし
て使用した実績はなく,前記の公報にもオキシ水酸化鉄
(FeOOH)を下層用粉末とした場合の具体例は示さ
れていない。したがって,どのようなオキシ水酸化鉄で
あれば,磁気記録媒体用の下層用粉末として意図する機
能が発揮されるかは未知の部分が多い。一方,オキシ水
酸化鉄は一般にFe(OH)2の懸濁液を酸化する方法で
製造されるが,良く知られているように,この酸化の条
件がわずかに変動しても生成相が異なり,性状や形態の
異なるものとなる。したがって,公知のオキシ水酸化鉄
のあらゆるものが前記の下層粉に適した性質を具備する
と言う訳のものでもない。
【0005】本発明は,オキシ水酸化鉄粉を下層用粉体
に適用する場合に,その粉体の化学的・物理的性質や形
状特性がどのように磁気記録媒体の表面平滑性,強度,
磁気特性更には耐候性等に影響を与えるかを明らかに
し,重層構造磁気記録媒体の特性向上に寄与することを
課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,平均長
軸長0.01〜0.5μmの針状粒子からなり且つ10
0℃で放出するH2Oの量が2重量%以下のオキシ水酸
化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒体用の下層用粉末を提
供する。さらに,本発明によれば,枝分かれ方向が二次
元方向に偏りをもつ平均長軸長0.01〜0.5μmの
針状粒子からなり且つ100℃で放出するH2Oの量が
2重量%以下のオキシ水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記
録媒体用の下層用粉末を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】支持体と磁性層との間に,非磁性
粉末を分散させた非磁性層(下層)を設ける本来の目的
は,磁性層の厚みを薄くして短い記録波長領域での出力
を確保し,また優れた電磁変換特性例えば消去特性やオ
ーバーライト特性を改良することにある。このためには
磁性層自身にもそれなりの特性が要求されるが,下層の
非磁性層側の役割としては,表面凹凸の少ない滑らかな
薄い磁性層をその上に塗布できること,すなわち,非磁
性層自体が表面平滑性に優れること,磁気記録媒体の強
度に寄与すること,そして上層の磁性層の磁気特性を充
分に引出し得ることが主として挙げられる。
【0008】下層用粉末として使用されたことのある球
状酸化チタンでは,テープ化した場合に強度が針状のも
のに比べて充分ではなくかつ微粒子化も困難である。ま
た針状の酸化鉄(ヘマタイト)については,その製法
上,粒子間焼結を免れることができないので,表面平滑
性が十分得られないという問題が付随する。
【0009】オキシ水酸化鉄を結合剤樹脂に分散させた
塗膜を形成する場合,表面平滑性や強度等は,使用する
結合剤樹脂にもよるが,オキシ水酸化鉄の物理・化学的
性質や寸法・形状に大きく影響を受ける。前記の下層の
役割,すなわち表面平滑性,強度および磁性層の特性改
善を果たすことができる下層用オキシ水酸化鉄粉として
は,平均長軸長0.01〜0.5μmの針状粒子からな
り且つ100℃で放出するH2Oの量が2重量%以下の
オキシ水酸化鉄粉であるのがよい。
【0010】さらに,下層が有すべき前記の役割は,枝
分かれ方向が二次元方向に偏りをもつ平均長軸長0.0
1〜0.5μmの針状粒子からなり且つ100℃で放出
するH2Oの量が2重量%以下のオキシ水酸化鉄粉によ
って,より有利に果たすことができる。
【0011】前記の役割は,平均長軸長0.01〜0.
5μmの針状粒子からなり,0.1〜30重量%のAl
を含有し且つ100℃で放出するH2Oの量が2重量%
以下のオキシ水酸化鉄粉によっても,より有利に果たす
ことができる。
【0012】前記の役割は,平均長軸長0.01〜0.
5μmの針状粒子からなり,0.1〜30重量%のSi
を含有し且つ100℃で放出するH2Oの量が2重量%
以下のオキシ水酸化鉄粉によっても,より有利に果たす
ことができる。
【0013】前記の役割は,平均長軸長0.01〜0.
5μmの針状粒子からなり,AlとSiを合計で0.1
〜30重量%含有し且つ100℃で放出するH2Oの量
が2重量%以下のオキシ水酸化鉄粉によっても,より有
利に果たすことができる。
【0014】前記の役割は,平均長軸長0.01〜0.
5μmの針状粒子からなり,タップ密度が0.4以上で
且つ100℃で放出するH2Oの量が2重量%以下のオ
キシ水酸化鉄粉によっても,より有利に果たすことがて
きる。
【0015】さらに前記の役割は,平均長軸長0.01
〜0.5μmの針状粒子からなり,0.1〜30重量%
のAlを含有し且つ大気中での分解温度が210℃以
上,好ましくは215℃以上で100℃で放出するH2
Oの量が2重量%以下のオキシ水酸化鉄粉によっても,
より有利に果たすことができる。本発明に従うオキシ水
酸化鉄粉は,前記に加えて,さらに次の特性を有するも
のが好ましい。
【0016】〔比表面積〕 BET法による測定値で1
0〜300m2/gの範囲であればよく,望ましくは40m2
/g以上,さらに好ましくは40〜150m2/gである。 〔タップ密度〕 0.3〜0.8g/cm3 ,好ましくは0.
40g/cm3 以上のものがよい。 〔圧縮密度〕 0.5〜3.0g/cm3, 好ましくは1.0
〜2.0g/cm3 である。 〔真比重〕 3.0〜6.0g/cm3 が望ましく,より好ま
しくは3.5〜4.3g/cm3 である。このように真比重に
対する圧縮密度とタップ密度が高いと,テープ化工程中
でカレンダーをかけたときに塗膜中で粉が圧密し易くな
り,このことがテープ表面平滑性の向上に有利に作用す
る。 〔結晶粒径〕(結晶子) 10〜200オングストロー
ム,好ましくは50〜150オングストロームである。
【0017】粒子サイズは,要するところ,平均長軸長
0.01〜0.5μm,平均短軸長0.01〜0.05
μm,平均軸比1〜30が望ましく,比表面積は10〜
300m2/gが望ましく,結晶粒径は10〜200A
が望ましいが,このような微粒子では,特に最も短い軸
の長さ(最短軸長)がテープ表面平滑性に作用し,最短
軸長が短いことにより表面平滑性が向上する。最短軸長
は結晶粒径と比表面積に反映されている。
【0018】また,粉末の表面処理状態およびpHも塗
料化に際しての分散性に影響するので,表面平滑性に影
響を与える。これらの好ましい範囲は次のとおりであ
り,この範囲に調整することが望ましい。 〔ステリアン酸吸着量〕 0.1〜3.0mg/m2。 〔樹脂吸着量〕 0.5〜4.0mg/m2。 〔pH〕 粉体 pHは6〜11,好ましくは8〜10,
更に好ましくは8.0〜9.5である。この pH調整に
よって塗料化時の分散性が良好となり,表面平滑性の向
上に有効に作用する。
【0019】本発明に従う下層用粉末は,通常のオキシ
水酸化鉄粉末の製法によって得られる。例えば第一鉄塩
水溶液に当量以上の水酸化アルカリ水溶液を加えて得ら
れる水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液をpH11以上
にて80℃以下の温度で酸素含有ガスを通気して酸化反
応を行い,乾燥後調湿することによって生成させる方
法,または第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液とを反
応させて得られる懸濁液に酸素含有ガスを通気して酸化
反応を行い,乾燥後調湿することによって生成させる方
法等が挙げられる。このような方法によっ得られるオキ
シ水酸化鉄粉は,針状酸化鉄(ヘマタイト)粉を製造す
る場合に比べると,高温度での処理工程がないので粒子
間焼結の問題は起きない。
【0020】図1は,長軸長=0.30μm,Al=2.
8重量%,比表面積(BET)=65m2/gの本発明に従
うオキシ水酸化鉄粉のTEM(透過型電子顕微鏡)写真
である。図1に見られるように,各粒子は枝分かれを有
しているが,その枝分かれ方向は紙面と平行な方向に偏
っている。このことは3個以上の枝分かれをもつもので
も,その枝分かれ角度がほぼ一定の角度に見えることか
ら伺い知れる。紙面と垂直な方向の成分が多いならば枝
分かれ角度はよりシャープに見える筈だからである。こ
のように各粒子について,複数の枝分かれをもっても,
各粒子の枝分かれ方向が或る一面の二次元方向に偏って
いることは,この粒子からなる粉体を下層用粉末とした
とき,表面平滑性に寄与することになる。塗布したとき
に,支持体面と垂直方向の枝分かれ成分が少ないからで
ある。そして,枝分かれを有することは互いに絡み合う
からテープ強度向上にも寄与する。
【0021】特に長軸長が0.5μm以下の場合に,こ
れを樹脂バイダーに分散させて支持体に塗布すると極め
て良好な表面平滑性を示す。図1にも見られるように,
このような微細なオキシ水酸化鉄の針状粒子は短軸長が
非常に細くて針状比が高いという特徴があり,このため
に塗布時にテープ長手方向に良好に配向され(枝分かれ
方向もこの方向に配向され),表面平滑性に加えてテー
プ強度も向上する。
【0022】さらに,オキシ水酸化鉄に適量のAlを含
有させると耐熱性および保存安定性を増すことができ
る。Alの含有量が0.1〜30重量%であれば,テー
プ化の際の乾燥工程における昇温時にもオキシ水酸化鉄
粉体が変質せず安定で存在できる。Alの含有量が0.
1重量%未満ではAlの含有による効果は不充分であ
る。Alの含有量が30重量%より多いと粉体の比表面
積が大きくなって分散性が悪くなる。ここで,Alの含
有量とは,Alが化合物として含有されている場合には
その化合物の量ではなく,Al元素の含有量を言う。ま
たAlの含有は,オキシ水酸化鉄中に固溶していてもよ
いし,オキシ水酸化鉄の表面に被着していてもよい。
【0023】オキシ水酸化鉄にAlを含有させるのに
は,Al2(SO4)3, Al(NO3)3,AlCl3 などの
水可溶塩,更にはNaAlO2(アルミン酸ナトリウ
ム)などの水可溶性アルミン酸などの化合物を使用する
ことができる。これらのAl化合物を用いてAlをオキ
シ水酸化鉄粒子の表面に“被着”させるには, 例えばこ
れらのAl化合物をアルカリ水溶液中に溶解させ,この
溶液中に該オキシ水酸化鉄を分散させた後,炭酸ガスを
吹き込むか酸を添加し中和させることによって行うこと
ができ,結晶質ないし非晶質なAl23・nH2O(含
水酸化アルミニウム)としてAlは粒子表面に被着され
る。一方,Alをオキシ水酸化鉄粒子に“固溶”させる
には,FeSO4 やFeCl2 等の第一鉄塩の水溶液を
NaOH,Na2CO3,NH4OH等の中和剤で中和し
た後に空気等により酸化してα−FeOOH,γ−Fe
OOH等を生成させる反応系に, 上記の水可溶性のAl
塩やアルミン酸塩を添加すればよい。
【0024】また,本発明に従う粉末はSi化合物等の
他元素を用いてその粒子表面性をコントロールしてもよ
い。Siを含有させる場合には,0.1〜30重量%の
範囲とする。AlとSiを含有させる場合には,両者の
合計量で0.1〜30重量%の範囲とするのがよい。こ
こで,Siの含有量とは,Siが化合物として含まれて
いる場合でも,Si化合物の量ではなく,Si元素の含
有量を言う。
【0025】オキシ水酸化鉄を大気中で加熱したさいの
分解温度はオキシ水酸化鉄中のAl含有量によって変化
することがわかった。図2にオキシ水酸化鉄中のAl含
有量(重量%)を変えた場合の分解開始温度と分解終了
温度を示した。これらの分解温度はJIS K 712
0に準じて示差熱分析計で測定したものである。図2中
に示した星印を結ぶ曲線は各測定値のプロットから演繹
されたものである。この曲線に見られるように,オキシ
水酸化鉄の分解開始温度と分解開始温度はいずれもAl
含有量の増加とともに高くなることがわかる。各曲線の
代表値を挙げると下記のとおりである。
【0026】
【0027】オキシ水酸化鉄に含まれる水分は下層の特
性に影響を与える。100℃に保持したときに放出する
水分量が2重量%以下であることが必要で,好ましくは
100℃で放出される水分量が1.5重量%以下であ
る。100℃で放出される水分量が2重量%より多い場
合には,結合剤樹脂への分散が不十分となり,塗布して
もテープ化が困難となる。この水分量はカールフイッシ
ャー法による水分測定の原理を用いて計測できる。その
一例を下記に示した。
【0028】
【0029】重層構造の磁気記録媒体において,本発明
に従うオキシ水酸化鉄粉を用いた下層を形成する場合,
上層の磁性層としては,次の成分組成をもつ針状のメタ
ル粉を用いて構成するのがよい。
【0030】〔上層メタル粉の成分組成〕 Co:5〜50at.% Al:0.1〜30at.% 希土類元素(Yを含む):0.1〜10at.%, 周期律表第1a族元素:0.05重量%以下, 周期律表第2a族元素:0.1重量%以下(0重量%を
含む), をFe中に含有し,100℃で放出するH2Oの量が2
重量%以下または300℃で放出するH2Oの量が4.
0重量%以下である針状の強磁性金属粉。
【0031】ここで,周期律表第1a族元素の例として
は,Li,Na,K等が挙げられ,これらが複合して含
有する場合にもその総量を0.05重量%以下とする。
周期律表第2a族元素の例としては,Mg,Ca,S
r,Ba等が挙げられ,これらが複合して含有する場合
にもその総量を0.1重量%以下とする。また希土類元
素としては,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,T
b,Dy,Gd等が挙げられ,これらが複合して含有す
る場合にもその総量を0.1〜10at.%とする。これら
の元素が化合物として含有されている場合にも,化合物
の量ではなく化合物中の当該元素の含有量を言う。
【0032】このメタル粉が具備すべき好ましい形状と
物性は次のとおりである。 〔長軸長〕:0.01〜0.4μm 〔比表面積〕:BET法で30〜70m2/g 〔結晶粒径〕:50〜250オングストローム 〔保磁力Hc〕:1200〜3000(Oe) 〔飽和磁束密度σS 〕:100〜200(emu/g)
【0033】このメタル粉を製造するにはCoを含むオ
キシ水酸化鉄または酸化鉄に所定量のAlを含有させ,
これを加熱還元する方法が好適である。この加熱還元に
供するオキシ水酸化鉄ないし酸化鉄を主体として含む化
合物粉末としてはα−FeOOH,γ−FeOOH,α
−Fe23,γ−Fe23,Fe34及びこれらの中間
型に相当するものの他,これらにNi,Cr,Mn,Z
n等の金属成分を含有したものが好適なものとして挙げ
られ,針状性の良いものが好ましい。そのさい,Alを
含有させるのに使用できるAl化合物としては,Al2
(SO43,Al(NO33,AlCl3等の水可溶
塩,さらにはNaAlO2などの水可溶性アルミン酸な
どが挙げられる。これらのAl化合物を被還元物の粒子
表面に被着させるには,通常これらのAl化合物をアル
カリ水溶液中に溶解させ,この溶液中に被還元物粉末を
分散させた後,炭酸ガスを吹き込むか酸を添加して中和
することによって行われ,結晶質ないし非晶質なAl2
3・nH2O(含水酸化アルミニウム)として粒子表面
に被着される。またAlを該被還元物の粒子に固溶させ
る方法でも良い。
【0034】Coを含むα−FeOOH,γ−FeOO
HにAlを固溶させるには,FeSO4,FeCl2等の
第1鉄塩を主成分とした水溶液をNaOH,Na2
3,NH4OH等の中和剤で中和した後に空気等により
酸化してα−FeOOH,γ−FeOOH等を生成させ
る反応系に上記の水可溶性のAl塩やアルミン酸塩を添
加すればよい。さらにCoを含むα−Fe23にAlを
固溶させるにはFe2(SO43,FeCl3等の第2鉄
塩の水溶液とNaOH,KOH等の中和剤を使用し,水
熱合成法によりα−Fe23を合成する反応系に上記の
水可溶性のAl塩やアルミン酸塩を添加すればよい。
【0035】このようにして得られたCoを含むAl含
有オキシ水酸化鉄ないし酸化鉄を加熱してAlをAl2
3として固定し,このものを,Y(希土類元素を含
む)を含有させる工程の原料として使用するのが良い。
このときオキシ水酸化鉄は脱水反応により酸化鉄に変成
されている。Yを含有する液中に原料粒子を分散させて
アルカリを添加して水酸化物の形で析出させる方法,Y
元素化合物含有液中に原料粒子を分散させ水分を蒸発さ
せる方法等がある。
【0036】上記の各種方法にて所定量のCoとAlと
Y(希土類元素を含む)を含有させた酸化鉄の粉末は,
還元性雰囲気中で加熱することにより還元され鉄を主成
分とするCoとAlとY(希土類元素を含む)を含有す
る金属磁性粉となる。
【0037】金属磁性粉のY(希土類元素を含む)の含
有量は0.1〜10原子%,好ましくは0.2〜5原子%
が良い。0.1原子%未満ではY(希土類元素)の効果
が小さくて焼結しやすくなり,10原子%を超えるとY
(希土類元素)の酸化物の量が多くなって飽和磁化が小
さくなり,上層用の金属磁性粉として不適当なものとな
る。
【0038】金属磁性粉のAlの含有量は0.1〜30
原子%,好ましくは1〜20原子%であるのが良い。
0.1原子%未満では,焼結しやすくなり,30原子%
を超えると飽和磁化が小さくなってしまう。
【0039】上記金属磁性粉において,周期律表第1a
族元素を0.05重量%以下及び第2a族元素を0.1
重量%以下とするには,原料として周期律表第1a族及
び第2a族元素を含まないもの或いは出来るだけ含有量
の低いものを使用することに加え,オキシ水酸化鉄,酸
化鉄,金属磁性粉の各化合物の段階で十分な洗浄を行っ
て除去することが好ましい。洗浄する場合,工程が進む
につれて上記元素は粒子表面に偏析してくるようになる
ので洗浄効率は良くなる。また洗浄水に温水や酸を加え
pHを下げた洗浄水を用いれば更に効率よく除去するこ
とができる。
【0040】第1a族元素が0.05重量%を超えると
テープ化のときに樹脂との相溶性が悪くなって分散でき
なかったり,磁気塗料化しても塗膜強度の低いものとな
る。またこの元素が可溶性であるために,テープを或る
時間保持したときにテープ表面に析出して結晶性の化合
物となり,この化合物がドロップアウトの増大等の原因
となりテープ保存安定性を低下させる。また第2a族元
素が0.1重量%を超えると樹脂との相溶性が悪くなる
と共に塗膜強度も低くなり,極端に多くなると第1a族
元素と同様にテープ保存安定性も悪くなる。
【0041】金属磁性粉が保有する水分は,100℃で
検出(放出)される量が2.0重量%以下,好ましくは
1.5重量%以下で,300℃で検出(放出)される量
が4.0重量%,好ましくは3.0重量%以下であるの
が良い。金属磁性粉が保有する水分量により塗料の粘度
が変化し,バイダー吸着量も変化するが,100℃で検
出される水分量が2.0重量%を超えると,または30
0℃で検出される水分量が4.0重量%を超えると,下
層の上に重層塗布するさいに,分散不十分となってテー
プ化が困難となる。
【0042】金属磁性粉の粒子サイズは0.01〜0.4
μmが適当で,好ましくは0.4〜0.2μmが良い。
0.01μm未満では磁性粉が超常磁性となり電磁変換
特性が著しく低下し,0.4μmを超えると磁性粉が多
磁区となり電磁変換特性が低下する。
【0043】金属磁性粉の比表面積(BET)は30〜
70m2/gが適当で,好ましくは40〜60m2/gが
良い。30m2/g未満ではテープ化時の樹脂との相溶
性が悪くなって電磁変換特性が低下する。70m2/g
を超えるとテープ化時に分散不良を起こしてやはり電磁
変換特性が低下する。
【0044】金属磁性粉の結晶子は50〜250オング
ストロームが適当で,好ましくは100〜200オング
ストロームであるのが良い。50オングストロム未満で
は磁性粉が超常磁性となり電磁変換特性が著しく低下す
る。250オングストロームを超えるとノイズが増大し
て電磁変換特性が低下する。
【0045】金属磁性粉の磁気特性は保磁力Hcは高い
ほど高密度記録に適するが,ヘッドの性能に合わせて1
200〜3000(Oe)にコントロールされ,好まし
くは1600〜2600(Oe)である。飽和磁束密度
σS は高いほど高出力となるが,耐酸化性やノイズ等と
の兼ね合いから120〜180emu/g程度が好まし
い。
【0046】重層構造の磁気記録媒体を形成するため
に,下層および上層を塗布する支持体としては,ポリエ
チレンテレフタラート,ポリエチレンナフタレート等の
ポリエステル類,ポリオレフィン類,セルローストリア
セテート,ポリカーボネイト,ポリアミド,ポリイミ
ド,ポリアミドイミド,ポリスルフォン・アラミド,芳
香族ポリアミド,等の公知のフィルムが使用できる。
【0047】
【実施例】
(1) 表1に示したように,本発明に従う下層用粉末の実
施例〔下層例1〜20〕および下層比較例1〜8と,
(2) 表2〜3に示したように,本発明に従う下層用粉末
を用いた下層に金属磁性粉を用いた上層を塗布して構成
した磁気記録媒体の実施例〔媒体例1〜15〕および媒
体比較例1〜13について,以下に説明する。
【0048】先ず,各実施例に示した特性値の測定につ
いて説明する。
【0049】平均長軸長(表中にIで示す),平均短軸
長(同dで示す)および軸比(同I/dで示す)は,1
08000倍(下層用粉末の場合)または174000
倍(上層の金属磁性粉の場合)の電子顕微鏡写真から測
定した100個の粒子の平均値で示した。結晶粒径すな
わち結晶子(同Dx)は,X線回析装置を用いて得られ
たプロファイルから(110)面に相当するピークの半
価幅を求め,これをシェラーの式に代入して算出した。
【0050】比表面積(同BET)はBET法で測定し
た。ステアリン酸吸着量(同STAまたはSt.吸着量)
は,試料粉末をステアリン酸2%のMEK溶液に分散さ
せた後,遠心分離機により試料粉末を沈ませ,上澄み液
の濃度を求めることにより比表面積当りの吸着量として
算出した。樹脂吸着量(同樹脂)はポリウレタン樹脂の
2%MIBK溶液を使用し,ステアリン酸吸着量と同様
の方法で算出した。
【0051】粉体pHはJIS K5101により測定
した。真比重は溶媒としてトルエンを使用し液浸法で測
定した。圧縮密度(同CD)は試料を80kgf/cm
2で圧縮したときの密度である。タップ密度(同TA
P)はJIS K5101により測定した。
【0052】粉体の水分量は,カールフイッシャー法に
より100℃(または300℃)での重量変化から求め
た。また,分解温度も示差熱データから分解開始温度と
終了温度を求めた。水分量による粘性の変化は,塗料に
分散させたときの該塗料の粘度をE型粘度計により求め
た。
【0053】表面平滑性は,株式会社小坂研究所製の3
次元微細形状測定機(ET−30HK)を用いて,テー
プの下地層表面のRa(粗度)を測定することにより評
価した。
【0054】なお,各表において, Hc:保磁力(Oe), σs:金属磁性粉の飽和磁束密度(emu/g), σr:金属磁性粉の残留磁束密度(emu/g), Br:テープの残留磁束密度(ガウス), Bm:テープの飽和磁束密度(ガウス), σr/σsおよびBr/Bm:角形比 ΔσsおよびΔBm:60℃で90RH(相対湿度)の
雰囲気下で1週間放置後のσsおよびBmの低下率
(%), 耐候試験後の析出物の有無:60℃で90RHの雰囲気
下で1週間放置後のテープ表面を顕微鏡観察したときの
析出物の有無, を示している。電磁変換特性の測定はHi8デッキを用
いて行った。
【0055】(1) 下層用粉末の実施例〔下層例1〜2
0〕および下層比較例1〜8
【0056】〔下層例1〕以下の組成からなる塗料を用
意する。 オキシ水酸化鉄 100重量部 (本例では長軸長=0.15μm,100℃の水分量=
1重量%) ポリウレタン樹脂 20重量部 メチルエチルケトン 165重量部 シクロヘキサノン 65重量部 トルエン 165重量部 ステアリン酸 1重量部 アセチルアセトン 1重量部 遠心ボールミルで1時間分散させて得た上記組成の塗料
を,ポリエチレンテレフタラートからなるベースフィル
ム上に,アプリケーターを用いて,目標厚みが約3μm
となるように塗布して非磁性の下層を形成した。用いた
オキシ水酸化鉄粉末の諸特性値と得られた下層の性質を
表1に示した(以下の例および比較例についても同じく
表1に併記した)。
【0057】〔下層例2〕前記実施例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=0.2重量%被着のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0058】〔下層例3〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=1.0重量%被着のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0059】〔下層例4〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=2.5重量%被着のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0060】〔下層例5〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=5.0重量%被着のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0061】〔下層例6〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=30.0重量%被着のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0062】〔下層例7〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=1.0重量%固溶のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0063】〔下層例8〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=2.5重量%固溶のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0064】〔下層例9〕前記下層例1の塗料を構成す
る長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長=
0.15μm,Al=5.0重量%固溶のオキシ水酸化鉄
に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とした。
【0065】〔下層例10〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.15μm,Al=10.0重量%固溶のオキシ水酸
化鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0066】〔下層例11〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.15μm,Al=20.0重量%固溶のオキシ水酸
化鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0067】〔下層例12〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.10μmのオキシ水酸化鉄に変え,他の条件は下
層例1と同一にして下層とした。
【0068】〔下層例13〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.30μmのオキシ水酸化鉄に変え,他の条件は下
層例1と同一にして下層とした。
【0069】〔下層例14〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.05μm,Al=5.0重量%被着のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0070】〔下層例15〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.10μm,Al=5.0重量%被着のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0071】〔下層例16〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.30μm,Al=5.0重量%被着のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0072】〔下層例17〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.05μm,Al=5.0重量%固溶のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0073】〔下層例18〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.10μm,Al=5.0重量%固溶のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0074】〔下層例19〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.30μm,Al=5.0重量%固溶のオキシ水酸化
鉄に変え,水分量を(A)0.5重量%,(B)1.0重
量%および(C)2.0%と3水準で変化させたものを
下層とした。
【0075】〔下層例20〕前記下層例1の塗料を構成
する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長
=0.50μm,Al=5.0重量%固溶のオキシ水酸化
鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0076】〔下層比較例1〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.15μmのα−Fe23に変え,他の条件は下
層例1と実質的に同一として下層とした。
【0077】〔下層比較例2〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,平均
径=0.035μmの酸化チタンに変え,他の条件は下
層例1と実質的に同一にして下層とした。
【0078】〔下層比較例3〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.15μm,Al=35.0重量%被着のオキシ水
酸化鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層と
した。
【0079】〔下層比較例4〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.15μm,Al=35.0重量%固溶のオキシ水
酸化鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層と
した。
【0080】〔下層比較例5〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.005μmのオキシ水酸化鉄に変え,他の条件
は下層例1と同一にして下層とした。
【0081】〔下層比較例6〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.60μmのオキシ水酸化鉄に変え,他の条件は
下層例1と同一にして下層とした。
【0082】〔下層比較例7〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.60μm,Al=5.0重量%被着のオキシ水酸
化鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0083】〔下層比較例8〕前記下層例1の塗料を構
成する長軸長=0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸
長=0.60μm,Al=5.0重量%固溶のオキシ水酸
化鉄に変え,他の条件は下層例1と同一にして下層とし
た。
【0084】
【表1】
【0085】表1の結果に見られるように,本発明に従
うオキシ水酸化鉄粉末を用いた下地層は比較例のものに
比べて粗度が小さく表面平滑性に優れた且つ十分な強度
を有することがわかる。
【0086】(2) 記録媒体の実施例〔媒体例1〜17〕
および媒体比較例1〜13
【0087】〔媒体例1〕 ・以下の組成からなる下層塗料を用意する。 オキシ水酸化鉄 100重量部 (本例では長軸長=0.15μm,100℃の水分量=
1.0重量%) ポリウレタン樹脂 20重量部 メチルエチルケトン 165重量部 シクロヘキサノン 65重量部 トルエン 165重量部 ステアリン酸 1重量部 アセチルアセトン 1重量部 遠心ボールミルで1時間分散させて得た上記組成の塗料
を,ポリエチレンテレフタレートからなるベースフィル
ム上にアプリケーターを用いて塗布して下層を形成し
た。用いたオキシ水酸化鉄粉末の諸特性値と得られた下
層の性質を表2に示す(下記の例及び比較例も表2に併
記する)。
【0088】・以下の組成からなる上層塗料を用意す
る。 金属磁性粉 100重量部 (本例では,金属Fe中に,Co:30at.%,Al:1
0at.%,Y:4at.%,Na:0.002wt%,Ca:0.
004wt%を含有する) ポリウレタン樹脂 30重量部 メチルエチルケトン 190重量部 シクロヘキサノン 80重量部 トルエン 110重量部 ステアリンブチル 1重量部 アセチルアセトン 1重量部 α−アルミナ 3重量部 カーボンブラック 2重量部 遠心ボールミルで1時間分散させて得たこの組成の上層
用塗料を,前記の下層の上にアプリケーターを用いて塗
布してシート状試料を形成,これをさらにカレンダー処
理を行った後8mm幅にスリットし磁気テープを得た。
用いた金属磁性粉末の諸特性値と,得られた磁気テープ
の性質を表2〜表3に示した(下記の例及び比較例も表
2〜表3に併記する)。
【0089】〔媒体例2〕媒体例1の下層を構成する長
軸長0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長0.30μ
mのオキシ水酸化鉄に変え,他の条件は媒体例1と同一
にして磁気テープを得た。
【0090】〔媒体例3〕媒体例1の上層を構成する金
属磁性粉のCo量,Y量および長軸長を,Co:10a
t.%,Y:2at.%,長軸長:0.095μmの金属磁性粉
に変え,他の条件は媒体例1と同一にして磁気テープを
得た。
【0091】〔媒体例4〕媒体例1の下層を構成する長
軸長0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長0.30μ
m,Al:5重量%被着のオキシ水酸化鉄に変え,他の
条件は媒体例1と同一にして磁気テープを得た。
【0092】〔媒体例5〕媒体例1の下層を構成する長
軸長0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長0.30μ
m,Al:5重量%固溶のオキシ水酸化鉄に変え,他の
条件は媒体例1と同一にして磁気テープを得た。
【0093】〔媒体例6〕媒体例5の上層を構成する金
属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をCo:
30at.%,Al:8at.%,Y:3at.%,長軸長:0.0
8μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一にして
磁気テープを得た。
【0094】〔媒体例7〕媒体例1の下層を構成する長
軸長0.15μmのオキシ水酸化鉄を,長軸長0.10μ
m,Al:5重量%固溶のオキシ水酸化鉄に変え,他の
条件は媒体例1と同一にして磁気テープを得た。
【0095】〔媒体例8〕媒体例5の上層を構成する金
属磁性粉のY量をLa:4at.%のものに変え,他の条件
は媒体例5と同一にして磁気テープを得た。
【0096】〔媒体例9〕媒体例5の上層を構成する金
属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をCo:
10at.%,Al:10at.%,Y:4at.%,長軸長:0.
08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一にし
て磁気テープを得た。
【0097】〔媒体例10〕媒体例5の上層を構成する
金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:20at.%,Al:10at.%,Y:4at.%,長軸長:
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0098】〔媒体例11〕媒体例5の上層を構成する
金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:40at.%,Al:10at.%,Y:4at.%,長軸長:
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0099】〔媒体例12〕媒体例5の上層を構成する
金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:50at.%,Al:10at.%,Y:4at.%,長軸長:
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0100】〔媒体例13〕媒体例5の上層を構成する
金属磁性粉のCo量,Al量,Y量,Na量,Ca量お
よび長軸長をCo:30at.%,Al:10at.%,Y:4
at.%,Na:0.006重量%,Ca:0.12重量%,
長軸長:0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例
5と同一にして磁気テープを得た。
【0101】〔媒体例14媒体例1の下層を構成するオ
キシ水酸化鉄を,長軸長:0.30μm,Si:2.5重
量%含有のものに変え,他の条件は媒体例1と同一にし
て磁気テープを得た。
【0102】〔媒体例15〕媒体例1の下層を構成する
オキシ水酸化鉄を,長軸長:0.30μm,Al:5重
量%固溶,Si:2.5重量%含有のものに変え,他の
条件は媒体例1と同一にして磁気テープを得た。
【0103】〔媒体比較例1〕媒体例1の下層を構成す
るオキシ水酸化鉄を,長軸長が0.15μmのα−Fe2
3に変え,他の条件は媒体例1のものと実質的に同一
にして磁気テープを得た。
【0104】〔媒体比較例2〕媒体例1の下層を構成す
るのオキシ水酸化鉄を,平均粒径が0.035μmの酸
化チタンに変え,他の条件は媒体例1のものと実質的に
同一にして磁気テープを得た。
【0105】〔媒体比較例3〕媒体例1の下層を構成す
るオキシ水酸化鉄を,長軸長:0.30μm,Al:3
5重量%固溶のものに変え,他の条件は媒体例1と同一
にして磁気テープを得た。
【0106】〔媒体比較例4〕媒体例5の上層を構成す
る金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:3at.%,Al:10at.%,Y:4at.%,長軸長0.
08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一にし
て磁気テープを得た。
【0107】〔媒体比較例5〕媒体例5の上層を構成す
る金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:55at.%,Al:10at.%,Y:4at.%,長軸長
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0108】〔媒体比較例6〕媒体例5の上層を構成す
る金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:30at.%,Al:0at.%,Y:4at.%,長軸長0.
08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一にし
て磁気テープを得た。
【0109】〔媒体比較例7〕媒体例5の上層を構成す
る金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:30at.%,Al:35at.%,Y:4at.%,長軸長
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0110】〔媒体比較例8〕媒体例5の上層を構成す
る金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:30at.%,Al:10at.%,Y:0at.%,長軸長
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0111】〔媒体比較例9〕媒体例5の上層を構成す
る金属磁性粉のCo量,Al量,Y量および長軸長をC
o:30at.%,Al:10at.%,Y:15at.%,長軸長
0.08μmのものに変え,他の条件は媒体例5と同一
にして磁気テープを得た。
【0112】〔媒体比較例10〕媒体例5の上層を構成
する金属磁性粉のCo量,Al量,Y量,Na量,Ca
量および長軸長をCo:30at.%,Al:10at.%,
Y:4at.%,Na:0.16重量%,Ca:0.12重量
%,長軸長:0.08μmのものに変え,他の条件は媒
体例5と同一にして磁気テープを得た。
【0113】〔媒体比較例11〕媒体例1の下層を構成
するオキシ水酸化鉄を,長軸長:0.30μm,Al:
5重量%固溶,Si:35重量%含有のものに変え,他
の条件は媒体例1と同一にして磁気テープを得た。
【0114】〔媒体比較例12〕媒体比較例11の上層
を構成する金属磁性粉の水分量を,100℃で3.5重
量%,300℃で5.5重量%のものに変え,他の条件
は媒体比較例11と同一にして磁気テープを得た。
【0115】〔媒体比較例13〕媒体比較例11の下層
を構成するオキシ水酸化鉄の水分量を,100℃で3.
5重量%のものに変え,たの条件は媒体比較例11と同
一にして磁気テープを得た。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】表2〜3より,本発明に従うオキシ水酸化
鉄からなる下層用粉体を用いた重層構造の磁気記録媒体
は,強度,表面粗度,磁気変換特性,耐候性がともに優
れたものとなることがわかる。また,上層の金属磁性粉
としては,可溶成分となる周期律表第1a族及び第2a
族元素のNa,Caの多いものは分散しにくくかつ分散
されてもテープ耐久性が低く60℃,90RHで1週間
保存したものはテープの表面を観察すると結晶が析出し
保存安定性の悪いものとなった。そして,金属磁性粉に
Co,Y,Al量を共存させた場合には一層磁気特性が
向上し,本発明に従う下層を用いるとこの磁気特性を有
利に引き出せることがわかる。
【0119】
【発明の効果】以上説明したように,本発明の下層用粉
末は,重層構造の塗布型磁気記録媒体の高品質化,具体
的には表面平滑性,強度,磁気特性,耐候性等の向上に
寄与するところが大きいので,電磁変換特性の良好な高
密度磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う針状オキシ水酸化鉄からなる下層
用粉体の個々の粒子の形状(枝分かれ状態)を写した電
子顕微鏡写真である。
【図2】オキシ水酸化鉄中のAl含有量とオキシ水酸化
鉄の分解温度との関係を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 紺野 慎一 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 堀川 義史 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 粟飯原 靖彦 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
    粒子からなり且つ100℃で放出するH2Oの量が2重
    量%以下のオキシ水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒
    体用の下層用粉末。
  2. 【請求項2】 枝分かれ方向が二次元方向に偏りをもつ
    平均長軸長0.01〜0.5μmの針状粒子からなり且
    つ100℃で放出するH2Oの量が2重量%以下のオキ
    シ水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒体用の下層用粉
    末。
  3. 【請求項3】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
    粒子からなり,0.1〜30重量%のAlを含有し且つ
    100℃で放出するH2Oの量が2重量%以下のオキシ
    水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒体用の下層用粉
    末。
  4. 【請求項4】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
    粒子からなり,0.1〜30重量%のSiを含有し且つ
    100℃で放出するH2Oの量が2重量%以下のオキシ
    水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒体用の下層用粉
    末。
  5. 【請求項5】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
    粒子からなり,AlとSiを合計で0.1〜30重量%
    含有し且つ100℃で放出するH2Oの量が2重量%以
    下のオキシ水酸化鉄粉からなる塗布型磁気記録媒体用の
    下層用粉末。
  6. 【請求項6】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
    粒子からなり,タップ密度が0.4以上で且つ100℃
    で放出するH2Oの量が2重量%以下のオキシ水酸化鉄
    粉からなる塗布型磁気記録媒体用の下層用粉末。
  7. 【請求項7】 平均長軸長0.01〜0.5μmの針状
    粒子からなり,0.1〜30重量%のAlを含有し且つ
    大気中での分解温度が210℃以上で100℃で放出す
    るH2Oの量が2重量%以下のオキシ水酸化鉄粉からな
    る塗布型磁気記録媒体用の下層用粉末。
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