JPH104955A - 植物二次代謝産物の製造方法 - Google Patents

植物二次代謝産物の製造方法

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JPH104955A
JPH104955A JP8162150A JP16215096A JPH104955A JP H104955 A JPH104955 A JP H104955A JP 8162150 A JP8162150 A JP 8162150A JP 16215096 A JP16215096 A JP 16215096A JP H104955 A JPH104955 A JP H104955A
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JP
Japan
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culture
plant
group
secondary metabolite
acid
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Application number
JP8162150A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuhiro Hara
康弘 原
Takahito Yukimune
敬人 行宗
Homare Tabata
誉 多葉田
Yasusuke Azuma
庸介 東
Atsuko Miyake
篤子 三宅
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Publication date
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  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Preparation Of Fruits And Vegetables (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 イチョウ科、メギ科、ツヅラフジ科、ウ
リ科、ニッサ科、ウコギ科、ヤマゴボウ科、アカザ科ま
たはヤマノイモ科に属する植物の組織または細胞培養に
おいて、ジャスモン酸類の存在下に培養を行い、得られ
る培養物から各親植物に含まれる二次代謝産物を回収す
ることを特徴とする植物二次代謝産物の製造方法。 【効果】 本発明方法は、イチョウ科、メギ科、ツヅラ
フジ科、ウリ科、ニッサ科、ウコギ科、ヤマゴボウ科、
アカザ科またはヤマノイモ科に属する植物に含まれる二
次代謝産物の効率的生産を可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬原料、化粧品
原料、食品用色素などとして有用な植物二次代謝産物を
植物組織または細胞培養を用いて製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】現在、医薬原料、化粧品原料、食品用色
素などとして使用されている各種植物二次代謝産物は、
ほとんど栽培または野生植物から抽出されており、ムラ
サキ培養細胞による創傷治癒薬原料シコニンの生産、薬
用ニンジン培養細胞によるジンセノシド等含有エキスの
生産など少数の例を除けば、植物組織または細胞培養を
用いて工業的に生産した例は知られていない。
【0003】植物組織または細胞培養によるこれら有用
二次代謝産物の生産については、20年以上も前から、
大学、公的研究機関または企業で精力的に研究が進めら
れてきたにもかかわらず、実用化に結びついた例は極め
て少ない。その原因の一つに、培養物に含まれる二次代
謝産物の含量が低いことが挙げられる。この二次代謝産
物の含量を増加させる有力な戦略の一つに、培地組成の
最適化が挙げられるが、含量の増加に適した培地組成は
植物種および二次代謝産物ごとに異なるのが普通であ
り、また長期間の検討を要する割には、実用化に充分な
レベルにまで二次代謝産物の含量を増加させることが困
難であるケースが多かったため、効率よく実用化研究を
進める上での障害になっていた。
【0004】近年、汎用的に二次代謝産物の生産性を向
上させる一つの手段として、微生物の培養物などのエリ
シターを培養組織または細胞に添加する方法が提案され
たが、普遍的に使用できる菌種を見いだすことができ
ず、また生産性向上にも限界があったため、実用化には
至らなかった。このような背景のもと、特定の植物種で
は、上記のエリシターを処理した細胞中で、植物ホルモ
ンの一種であるジャスモン酸のレベルが高まり、これが
二次代謝産物の生産性向上に寄与することが明らかにさ
れ、この原理に基づいた植物二次代謝産物の生産促進物
質に関する特許(DE 4122208)がドイツで成立し、日本
にも出願されている(特開平5-184355号公報)。
【0005】前記日本特許には、ジャスモン酸が二次代
謝産物の生産性を向上させうる植物種として、マメ科、
キョウチクトウ科、アカネ科、ナス科およびショウガ科
に属する植物種が挙げられ、それらをもってジャスモン
酸が植物全般に効果を有するものとしているが、本願発
明者らが実施した結果では、ナス科に属するズボイシア
(Duboisia myoporoides)のようにジャスモン酸を作用さ
せても二次代謝産物生産量が増加しない植物種も認めら
れた。さらに、何らかの二次代謝産物の増加が認められ
る植物種においても、ジャスモン酸の作用によって生産
性が増加する二次代謝産物と全く増加を示さない二次代
謝産物が共存する場合があり、ジャスモン酸による二次
代謝産物の生産性向上は、植物全般に一様に認められる
ものではないと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ジャスモン
酸が有効に作用する植物種及び二次代謝産物を明らかに
し、各親植物に含まれる二次代謝産物を効率よく生産さ
せ、回収することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記特許
に記載されていない植物種について広くジャスモン酸の
効果の有無を検討し、特定の植物では前記特許に記載さ
れている以上にジャスモン酸の効果が認められ、さらに
前記特許には記載されていないジャスモン酸類の使用お
よび添加時期などの作用条件を工夫することによって、
前記特許に記載されている効果を上回る効果が得られる
ことを見出し、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、イチョウ科、メギ
科、ツヅラフジ科、ウリ科、ニッサ科、ウコギ科、ヤマ
ゴボウ科、アカザ科またはヤマノイモ科に属する植物の
組織または細胞培養において、ジャスモン酸類の存在下
に培養を行い、得られる培養物から各親植物に含まれる
二次代謝産物を回収することを特徴とする植物二次代謝
産物の製造方法に関する。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
製造方法の対象となる植物種としては、イチョウ科イチ
ョウ属のイチョウ(Ginkgo biloba)、およびメギ科植
物、好ましくはメギ(Berberis thunbergii)などを含むB
erberis属植物ならびにPodophyllum peltatumなどを含
むPodophyllum属植物、およびツヅラフジ科植物、好ま
しくはタマサキツヅラフジ(Stephania cepharantha)な
どを含むStephania属植物、およびウリ科植物、好まし
くはヘチマ(Luffa cylindrica)などを含むLuffa属植物
ならびにメロン(Cucumis melo)などを含むCucumis属植
物ならびにスイカ(Citrullus vulgaris)などを含むCitr
ullus属植物、およびニッサ科植物好ましくはキジュ(Ca
mptotheca acuminata)などを含むCamptotheca属植物、
およびウコギ科植物、好ましくはオタネニンジン(Panax
ginseng)などを含むPanax属植物、およびヤマゴボウ科
植物、特に好ましくはヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca
americana)などを含むPhytolacca属植物、およびアカザ
科植物、好ましくはビート(Beta vulgaris)などを含むB
eta属植物、およびヤマノイモ科植物、好ましくはDiosc
orea compositaなどを含むDioscorea属植物ならびにオ
ニドコロ(Aspidistra elatior)などを含むAspidistra属
植物が例示される。
【0010】また、これらの中でも、イチョウ(Ginkgo
biloba)、Berberis属植物、Podophyllum属植物、Stepha
nia属植物、Luffa属植物、Cucumis属植物、Citrullus属
植物、Camptotheca属植物、Panax属植物、Phytolacca属
植物、Beta属植物が特に好ましい。また、本発明の製造
方法の対象となる二次代謝産物としては、前記の植物が
産生する二次代謝産物が挙げられるが、好ましくはイチ
ョウが生産するギンゴリドAなどのギンゴリド類および
ビロバリド類、Berberis属植物などが生産するベルベリ
ンなどのイソキノリンアルカロイド類、Podophylum属植
物などが生産するポドフィロトキシンなどのフェニルテ
トラリン型リグナン類、Stephania属植物などが生産す
るアロモリン、セファランチンなどのビスベンジルイソ
キノリンアルカロイド類、Luffa属植物、Cucumis属植
物、Citrullus属植物などが生産するブリオノール酸な
どのトリテルペン類、Camptotheca属植物などが生産す
るカンプトテシンなどのキノリンアルカロイド類、Pana
x属植物などが生産するジンセノシドなどのジンセンサ
ポニン類、Phytolacca属植物、Beta属植物などが生産す
るベタニンなどのベタシアニン類、Dioscorea属植物、A
spidistra属植物などが生産するジオスゲニンなどのス
テロイド類が例示される。
【0011】また、これらの中でも、ギンゴリド類およ
びビロバリド類、イソキノリンアルカロイド類、フェニ
ルテトラリン型リグナン類、ビスベンジルイソキノリン
アルカロイド類、トリテルペン類、キノリンアルカロイ
ド類、ジンセンサポニン類、ベタシアニン類が特に好ま
しい。本発明で使用されるジャスモン酸類としては、ジ
ャスモン酸およびその誘導体、ククルビン酸およびその
誘導体、並びに、ツベロン酸およびその誘導体を例示す
ることができる。
【0012】ジャスモン酸誘導体は、下記の一般式
(I):
【0013】
【化1】
【0014】〔式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基
又は次式: −(CH2 n −CO−R6 (式中、R6 は水酸基、OM(ここで、Mはアルカリ金
属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表す。)、
NHR7 (ここで、R7 は、水素原子、炭素数1〜4の
アシル基、炭素数1〜4のアルキル基又はアミノ酸残基
を表す。)又はOR8 (ここで、R8 は炭素数1〜4の
アルキル基又は炭水化物残基を表す。)を表し、nは1
〜7の整数を表す。)で示される基を表し;R2
3 、R 4、及びR5 は、それぞれ水素原子を表すか、
あるいはR2 とR3 、R3 とR 4、又はR 4とR5 は、
共同して二重結合を表してもよく、;前記5員環は、更
に水酸基で置換されていてもよく、隣接する環員炭素原
子間で二重結合を形成してもよい。〕で示すことができ
る。
【0015】前記一般式(I)において、R1 、R7
はR8 で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、
例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、
t−ブチル基が挙げられる。R6 がOMである場合にお
いて、Mで表されるアルカリ金属原子又はアルカリ土類
金属原子としては、例えばナトリウム、カリウム、カル
シウムが挙げられる。
【0016】R6 がNHR7 である場合において、R7
で表される炭素数1〜4のアシル基は、直鎖、分岐鎖の
いずれでもよく、例えばホルミル基、アセチル基、プロ
ピオニル基、ブチリル基、アクリロイル基が挙げられ
る。R6 がNHR7 である場合において、R7 で表され
るアミノ酸残基とは、イソロイシル基、チロシル基、ト
リプトフィル基が挙げられる。
【0017】R6 がOR8 である場合において、R8
表される炭水化物残基としては、グルコピラノシル基が
挙げられる。前記一般式(I)で示される化合物の好ま
しいものとしては、R1 が−(CH 2 n COOH又は
−(CH2 n COOCH3 であり、R2 、R3 、R4
及びR5 が、それぞれ水素原子を表すか、あるいはR2
とR3 、R3 とR4 、又はR 4 とR5 が、共同して二重
結合を表す化合物が挙げられる。
【0018】これらの好ましい化合物の具体例として
は、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。 (化合物A) R1 :−(CH2 n COOH又は−(CH2 n CO
OCH3 (n=1〜3) R2 ,R3 :H R4 +R5 :二重結合 (化合物B) R1 :−CH2 COOH R2 ,R3 ,R4 ,R5 :H また、前記一般式(I)で示される化合物は、5員環
が、更に水酸基で置換されていてもよく、隣接する環員
炭素原子間で二重結合を形成してもよい。
【0019】5員環が、更に水酸基で置換された化合
物、又は隣接する環員炭素原子間で二重結合が形成され
た化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物
が挙げられる。 (化合物C)
【0020】
【化2】
【0021】(化合物D)
【0022】
【化3】
【0023】(化合物E)
【0024】
【化4】
【0025】(化合物F)
【0026】
【化5】
【0027】以上のジャスモン酸誘導体は、全て植物二
次代謝産物の生産性向上に効果を有するが、中でも前記
一般式(I)においてR1 が−CH2 COOH又は−C
2COOCH3 であり、R2 及びR3 が水素原子であ
り、R4 とR5 が共同して二重結合を形成している化合
物であるジャスモン酸又はジャスモン酸メチルが生産性
向上に対する効果の大きさの点から特に好ましい。
【0028】ククルビン酸誘導体は、下記の一般式(I
I):
【0029】
【化6】
【0030】〔式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基
又は次式: −(CH2 n −CO−R6 (式中、R6 は水酸基、OM(ここで、Mはアルカリ金
属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表す。)、
NHR7 (ここで、R7 は、水素原子、炭素数1〜4の
アシル基、炭素数1〜4のアルキル基又はアミノ酸残基
を表す。)又はOR8 (ここで、R8 は炭素数1〜4の
アルキル基又は炭水化物残基を表す。)を表し、nは1
〜7の整数を表す。)で示される基を表し;R2
3 、R 4、及びR5 は、それぞれ水素原子を表すか、
あるいはR2 とR3 、R3 とR 4、又はR 4とR5 は、
共同して二重結合を表してもよく、R9 は水酸基、又は
−O−炭化物残基を示し、;前記5員環は、更に水酸基
で置換されていてもよく、隣接する環員炭素原子間で二
重結合を形成してもよい。〕で示すことができる。
【0031】前記一般式(II)において、R1 、R7
又はR8 で表される炭素数1〜4のアルキル基として
は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−
プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブ
チル基、t−ブチル基を例示することができる。R6
OMである場合において、Mで表されるアルカリ金属原
子又はアルカリ土類金属原子としては、例えばナトリウ
ム、カリウム、カルシウムが挙げられる。
【0032】R6 がNHR7 である場合において、R7
で示される炭素数1〜4のアシル基は、直鎖、分岐鎖の
いずれでもよく、例えばホルミル基、アセチル基、プロ
ピオニル基、ブチリル基、アクリロイル基が挙げられ
る。R6 がNHR7 である場合において、R7 で示され
るアミノ酸残基とは、イソロイシル基、チロシル基、ト
リプトフィル基が挙げられる。
【0033】R6 がOR8 である場合において、R8
示される炭水化物残基、及びR9 が−O−炭水化物残基
である場合における炭水化物残基としては、グルコピラ
ノシル基が挙げられる。また、前記一般式(II)で示さ
れる化合物は、5員環は、さらに水酸基で置換されてい
てもよく、隣接する環員炭素原子間で二重結合を形成し
てもよい。
【0034】一般式(II)で示される化合物の具体例と
しては、以下に示す化合物が挙げられるが、中でもツベ
ロン酸、又はツベロン酸メチルが植物二次代謝産物の生
産性向上に対する大きさの点から特に好ましい。
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】ククルビン酸誘導体は、下記の一般式(II
I):
【0040】
【化11】
【0041】〔式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基
又は次式: −(CH2 n −CO−R6 (式中、R6 は水酸基、OM(ここで、Mはアルカリ金
属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表す。)、
NHR7 (ここで、R7 は、水素原子、炭素数1〜4の
アシル基、炭素数1〜4のアルキル基又はアミノ酸残基
を表す。)又はOR8 (ここで、R8 は炭素数1〜4の
アルキル基又は炭水化物残基を表す。)を表し、nは1
〜7の整数を表す。)で示される基を表し;R2
3 、R 4、及びR5 は、それぞれ水素原子を表すか、
あるいはR2 とR3 、R3 とR 4、又はR 4とR5 は、
共同して二重結合を表してもよく、;前記5員環は、更
に水酸基で置換されていてもよく、隣接する環員炭素原
子間で二重結合を形成してもよい。〕で示すことができ
る。
【0042】前記一般式(III)で示される化合物にお
いて、R1 、R7 、又はR8 で表される炭素数1〜4の
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−
プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、イソブチ
ル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を例示すること
ができる。R6 がOMである場合において、Mで表され
るアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子として
は、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムが挙げら
れる。
【0043】R6 がNHR7 である場合において、R7
で示される炭素数1〜4のアシル基は、直鎖、分岐鎖の
いずれでもよく、例えばホルミル基、アセチル基、プロ
ピオニル基、ブチリル基、アクリロイル基が挙げられ
る。R6 がNHR7 である場合において、R7 で示され
るアミノ酸残基とは、イソロイシル基、チロシル基、ト
リプトフィル基が挙げられる。
【0044】R6 がOR8 である場合において、R8
示される炭水化物残基としては、グルコピラノシル基が
挙げられる。また、前記一般式(III)で示される化合
物は、5員環は、さらに水酸基で置換されていてもよ
く、隣接する環員炭素原子間で二重結合を形成してもよ
い。一般式(III)で示される化合物の具体例として
は、以下に示す化合物が挙げられるが、中でもククルビ
ン酸、又はククルビン酸メチルがタキサン型ジテルペン
の生産性向上に対する大きさの点から特に好ましい。
【0045】
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
【化14】
【0048】
【化15】
【0049】以上のジャスモン酸類は、合成により、又
は植物からの抽出等により調製される(H.Yamane et a
l. Agric. Biol. Chem., 44, 2857-2864(1980) )。本
発明で使用されるジャスモン酸類には種々の異性体が存
在し、それぞれの異性体を単独で用いても、混合物の形
で用いてもかまわないが、シス体化合物を用いることが
特に好ましい。
【0050】前記植物の組織または細胞培養は、本発明
によりジャスモン酸類の存在下に行うこと以外は、従来
から知られている方法によって行なうことができる。ジ
ャスモン酸類の用途としては、本願に記載の培地に添加
するなどして組織または細胞を培養し、得られる培養物
および/または培地から二次代謝産物を回収する方法の
ほか、当該植物体にジャスモン酸類を含む溶液を噴霧す
るなどして、二次代謝産物含量を増加させる方法を例示
することができる。
【0051】本発明で使用されるジャスモン酸類は、培
地における濃度が0.01〜1000μMとすることが
必要であり、この中でも特にジャスモン酸類の濃度を
0.1〜500μMの範囲に調整することが本発明の方
法にとって好ましい。植物細胞培養物にジャスモン酸類
を添加して特定の二次代謝産物の生産が促進されること
はドイツで特許公告[DE 4122208]になっているが、本
発明に記載の各植物種に関しては、具体的な実施結果が
全く記載されていない。
【0052】また、本発明者らが、該ドイツ特許に基づ
いて、多くの植物種の二次代謝産物生産に対して、ジャ
スモン酸メチルの生産促進効果を調べた結果では、ジャ
スモン酸メチルの効果は植物種によって大きく異なり、
ジャスモン酸メチルの存在下に組織または細胞を培養し
ても、二次代謝産物生産が全く促進されない植物種も認
められた。
【0053】たとえば、ズボイシア(Duboisia myoporoi
des)の培養根は、通常、乾燥重量当たり約1%のトロパ
ンアルカロイド(ヒヨシアミン+スコポラミン)を生産
するが、広濃度範囲のジャスモン酸メチルの存在下に培
養を行っても、トロパンアルカロイドの生産量は全く増
加しなかった。さらに、他の植物について、二次代謝産
物の生産に対するジャスモン酸メチルの効果を調べた結
果、該ドイツ特許に記載されない特定の植物種、すなわ
ちイチョウ科、メギ科、ツヅラフジ科、ウリ科、ニッサ
科、ウコギ科、ヤマゴボウ科、アカザ科、キキョウ科ま
たはヤマノイモ科に属する植物の組織または細胞培養に
おいては、該ドイツ特許に記載される効果(対照に対す
る目的二次代謝産物生産性の増加割合:2倍〜40倍)
をはるかに上回るレベルで、各二次代謝産物の生産性向
上が認められた。これらの結果は、予想外のことであっ
た。
【0054】さらに、本発明者らは、ジャスモン酸メチ
ルなどの添加効果を詳しく検討する中で、培養開始後、
言い換えれば組織または細胞を新鮮培地に移植後、ジャ
スモン酸類などを特定の期間に添加することによって、
それらの二次代謝産物の生産促進作用を著しく高めうる
ことを見いだした。このことは、細胞内におけるジャス
モン酸類などの受容機構、つまりレセプターや信号伝達
機構が整うのが、特定の期間に限定されることを意味し
ており、予想外のことであった。
【0055】具体的な添加時期としては、組織または細
胞を新鮮培地に添加した後、0〜72時間後を例示する
ことができ、特に好ましくは0〜36時間後を例示する
ことができる。これらの時期は、細胞の増殖から見たと
きの誘導期初期にあたる。本発明の組織培養に使用され
る培地としては、従来から知られている植物の組織培養
に用いられる培地、例えばムラシゲ・スクーグ(1962年)
〔Murashige & Skoog〕の培地、リンスマイヤー・スク
ーグ(1965年)〔Linsmaier Skoog〕の培地、ウッディー
・プラント・メディウム(1981年) 〔Woody Plant Mediu
m〕の培地、ガンボルグ〔Gamborg〕のB−5培地、三井
のM−9培地等が挙げられる。
【0056】これら培地に植物ホルモンを添加し、更に
必要に応じて炭素源、無機成分、ビタミン類、アミノ酸
等を添加することもできる。炭素源としては、シュクロ
ース、マルトース、ラクトース等の二糖類、グルコー
ス、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、デンプン
あるいはこれら糖源の2種類以上を適当な比率で混合し
たものを使用できる。
【0057】無機成分としては、例えばリン、窒素、カ
リウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マン
ガン、亜鉛、ホウ素、銅、モリブデン、塩素、ナトリウ
ム、ヨウ素、コバルト等があげられ、これらの成分は例
えば硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、
塩化カリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カ
リウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナト
リウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸マンガン、硫酸
亜鉛、ホウ酸、硫酸銅、モリブデン酸ナトリウム、三酸
化モリブデン、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等の化合
物として添加できる。
【0058】植物ホルモンとしては、例えばインドール
酢酸(IAA)、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4−ジクロロフ
ェノキシ酢酸(2,4-D)等のオーキシン類、カイネチン、
ゼアチン、ジヒドロゼアチン等のサイトカイニン類が用
いられる。ビタミン類としては、例えばビオチン、チア
ミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、
パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が用いられ
る。
【0059】アミノ酸類としては、例えばグリシン、フ
ェニルアラニン、ロイシン、グルタミン、システイン等
を添加できる。一般に前記の各成分は、無機成分が約0.
1μM、ないし100mM、炭素源が約1〜約30g/l、植物ホル
モン類が約0.01〜約10μM、ビタミン類およびアミノ酸
類がそれぞれ約0.1〜約100mg/lの濃度で用いられる。
【0060】尚、本発明には液体培地および寒天やゲラ
ンガム等を通常0.1〜1%含有する固形培地のいずれも使
用できるが、通常は液体培地が好ましい。本発明の組織
培養においては、上記植物の根、生長点、葉、茎、種
子、花粉、葯、がく等の組織片または細胞、あるいはこ
れらを上記培地あるいは他の従来の培地によって組織培
養して得られる培養細胞を使用することができる。
【0061】これらの組織または細胞をジャスモン酸類
の存在下に培養すると、無添加または無処理の場合と比
較して、当該植物種が生産する各二次代謝産物の高生産
性培養組織または培養細胞が得られる。以上のようにし
て生産された二次代謝産物は、得られた培養組織または
培養細胞および/または培地から、メタノール等の有機
溶媒による抽出によって分離することができる。また、
培地中に適当な吸着剤や有機溶媒を共存させ、連続的に
を回収することもできる。
【0062】本発明における組織培養の好ましい一例と
しては、次の方法が挙げられる。イチョウ科、メギ科、
ツヅラフジ科、ウリ科、ニッサ科、ウコギ科、ヤマゴボ
ウ科、アカザ科、またはヤマノイモ科に属する植物の植
物体、例えば根、生長点、葉、茎、種子などから採取さ
れる植物片を殺菌処理後、ゲランガムで固めたムラシゲ
・スクーグ培地などの固体培地上に置床し、10〜35℃で
14〜60日程度経過させて組織片の一部から、苗条、培養
根またはカルスを生成させる。このようにして得られた
培養体を継代培養すると生育速度が漸次高まり安定化し
た培養体が得られる。ここで、安定化した培養体とは、
培養中に目的外の器官分化やカルス化が起こらない状態
を保持する性質をもち培養体の生育速度が均質であるも
のをいう。
【0063】この安定化した培養体を増殖に適した液体
培地、例えばムラシゲ・スクーグの液体培地に移して増
殖させる。液体培地において更に生育速度が高められ
る。本発明では、この安定化した培養体は、ジャスモン
酸類を含有する固体培地または液体培地で培養される。
本発明で使用されるジャスモン酸類は、培養体が増殖の
誘導期に添加することがもっとも効果的であり、この中
でも特に誘導期初期に添加することが本発明の方法にと
って好ましく、培養直後〜72時間がジャスモン酸類の
添加の適期として例示できる。ジャスモン酸類の添加方
法としては、一度に行ってもよいし、複数回に分けて行
ってもよい。
【0064】本発明の培養のための温度としては、通常
は約10〜約35℃、特に約23〜28℃が増殖速度が大きいの
で好適である。また、培養期間としては、7〜42日間
が好適である。また、培養体が苗条である場合、または
二次代謝産物の生成に光が必要な場合には、培養体を蛍
光灯など、1000〜10000ルックスの照明下で行うことも
可能である。
【0065】本発明の培養方法において液体培地を用い
た場合には、培養終了後に培養体をデカンテーションま
たは濾過等の方法によって培地から分離し、培養細胞お
よび/または培地から目的とする二次代謝産物を有機溶
媒による抽出等の方法によって分離することができる。
以上のようにして生産された二次代謝産物は、得られた
培養体からメタノール等の有機溶媒による抽出によって
分離することができる。
【0066】
【発明の実施の形態】
【0067】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明を更
に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例
に限定されるものではない。 [参考例1]ズボイシア(Duboisia myoporoides)の茎か
ら誘導したカルスを、植物ホルモンとして10-5Mの2,4-
Dを含むムラシゲ・スクーグ液体培地に移植した後、三
角フラスコを用いて振盪培養し、暗黒下、3週間おきに
移植を繰り返すことによって得られた液体培養細胞を使
用した。培地に細胞を移植する直前または移植の24時
間後、メタノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス
体およびトランス体の混合物)を、培地中の濃度が10
0μMになるように添加し、振盪培養を継続した。培養
開始から3週間経過後、ろ過によって細胞を集め、凍結
乾燥した。得られた乾燥細胞に含まれるトロピン誘導
体、スコポラミンは、Yukimuneらの方法(Y. Yukimune e
t al., Biosci. Biotech. Biochem., 58, pp.1824-182
7, 1994)にしたがって抽出し、同文献に記載のGC−M
Sを用いる方法で同定および定量した。結果を表1に示
した。
【0068】[参考例2]参考例1において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、参考例1と同様に
実施した。結果を表1に示した。 [参考例3]参考例1において、取得した培養物が培養
根であり、その培養に用いた培地に含まれる植物ホルモ
ンが10-5MのIBAであること以外は、参考例1と同様に
実施した。結果を表1に示した。
【0069】[参考例4]参考例3において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、参考例3と同様に
実施した。結果を表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】[実施例1]イチョウ(Ginkgo biloba L.)
の幼葉から誘導したカルスを、植物ホルモンとして10-5
Mのα-ナフタレン酢酸および10-8Mのベンジルアデニ
ンを含むリンスマイヤー・スクーグ液体培地に移植した
後、三角フラスコを用いて振盪培養し、暗黒下、3週間
おきに移植を繰り返すことによって得られた液体培養細
胞を使用した。培地に細胞を移植する直前または移植の
24時間後、メタノールに溶解したジャスモン酸メチル
(シス体およびトランス体の混合物)を、培地中の濃度
が100μMになるように添加し、振盪培養を継続し
た。培養開始から3週間経過後、ろ過によって細胞を集
め、凍結乾燥した。得られた乾燥細胞に含まれるギンゴ
リド類は、Carrierらの方法(D.J. Carrier et al., In
"Progress in Plant Cellular and Molecular Biolog
y" eds. H.J.J. Nijkamp et al., Kluwer Academic Pub
lishers, Dordrecht, 1990, pp.614-618)にしたがって
抽出し、同文献に記載のGC−MSを用いる方法で同定
および定量した。結果を表2に示した。
【0072】[比較例1]実施例1において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例1と同様に
実施した。結果を表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】[実施例2]メギ(Berberis thunbergii D
C.)の幼葉から誘導したカルスを、植物ホルモンとして1
0-5Mのα−ナフタレン酢酸と10-8Mのベンジルアデニ
ンを含むムラシゲ・スクーグ液体培地に移植した後、暗
黒下、三角フラスコを用いて振盪培養し、2週間おきに
移植を繰り返すことによって得られた液体培養細胞を使
用した。培地に細胞を移植する直前または移植の24時間
後、メタノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス体
およびトランス体の混合物)を、培地中の濃度が100
μMになるように添加し、振盪培養を継続した。培養開
始から2週間経過後、ろ過によって細胞を集め、凍結乾
燥した。得られた乾燥細胞に含まれるベルベリンは、Mo
rimotoらの方法(T. Morimoto et al., Agric. Biol. Ch
em., vol. 52, pp.1835-1836, 1988)にしたがって抽出
し、同文献に記載の液体クロマトグラフィー(LC)を
用いる方法で定量した。なお、化合物の同定は、塩化ベ
ルベリン標品とのLC−MSフラグメントの比較によっ
て行った。結果を表3に示した。
【0075】[比較例2]実施例2において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例2と同様に
実施した。結果を表3に示した。
【0076】
【表3】
【0077】[実施例3]Podophyllum peltatum L.の
胚から誘導した培養根を、植物ホルモンとして10- 6Mの
α−ナフタレン酢酸を含むガンボルグのB5液体培地に
移植した後、暗黒下、三角フラスコを用いて振盪培養
し、3週間おきに移植を繰り返すことによって得られた
安定化培養根を使用した。培地に培養根を移植する直前
または移植の24時間後、メタノールに溶解したジャスモ
ン酸メチル(シス体およびトランス体の混合物)を、培
地中の濃度が100μMになるように添加し、振盪培養
を継続した。培養開始から3週間経過後、培養根を回収
し、凍結乾燥した。得られた乾燥培養根に含まれるポド
フィロトキシンは、Van Udenらの方法(W. Van Uden eta
l., Plant Cell Reports Vol.8, 165-168, 1989)にした
がって抽出し、同文献に記載の液体クロマトグラフを用
いる方法で同定および定量した。結果を表4に示した。
【0078】[比較例3]実施例3において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例3と同様に
実施した。結果を表4に示した。
【0079】
【表4】
【0080】[実施例4]タマサキツヅラフジ(Stephan
ia cephantha Hayata)の幼葉から誘導した培養根を、植
物ホルモンとして10-5Mの3-インドール酪酸を含むガン
ボルグのB5液体培地に移植した後、暗黒下、三角フラ
スコを用いて振盪培養し、3週間おきに移植を繰り返す
ことによって得られた培養根を使用した。培地に培養根
を移植する直前または移植の24時間後、メタノールに溶
解したジャスモン酸メチル(シス体およびトランス体の
混合物)を、培地中の濃度が100μMになるように添
加し、振盪培養を継続した。培養開始から3週間経過
後、ろ過によって細胞を集め、凍結乾燥した。得られた
乾燥細胞に含まれるアロモリンは、Sugimotoらの方法
(Y. Sugimoto et al., J. Nat. Prod., vol.52, 199-20
2, 1989)にしたがって抽出し、同文献に記載の液体クロ
マトグラフを用いる方法で同定および定量した。結果を
表5に示した。
【0081】[比較例4]実施例4において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例4と同様に
実施した。結果を表5に示した。
【0082】
【表5】
【0083】[実施例5]ヘチマ(Luffa cylindrica)の
胚軸から誘導したカルスを、植物ホルモンとして10-7
のα−ナフタレン酢酸を含むリンスマイヤー・スクーグ
液体培地に移植した後、暗黒下、三角フラスコを用いて
振盪培養し、3週間おきに移植を繰り返すことによって
得られた液体培養細胞を使用した。培地に細胞を移植す
る直前または移植の24時間後、メタノールに溶解したジ
ャスモン酸メチル(シス体およびトランス体の混合物)
を、培地中の濃度が100μMになるように添加し、振
盪培養を継続した。培養開始から3週間経過後、ろ過に
よって細胞を集め、凍結乾燥した。得られた乾燥細胞に
含まれるブリオノール酸は、Kamisakoらの方法(W. Kami
sako et al., Plant & Cell Physiol., Vol.25, 1571-1
574, 1984)にしたがって抽出し、同文献に記載のGC−
MSを用いる方法で同定および定量した。結果を表6に
示した。
【0084】[比較例5]実施例5において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例5と同様に
実施した。結果を表6に示した。
【0085】
【表6】
【0086】[実施例6]キジュ(Camptotheca acumina
ta Dence)の茎から誘導したカルスを、植物ホルモンと
して10-5Mのαーナフタレン酢酸と10ー6Mのカイネチン
含むムラシゲ・スクーグ液体培地に移植した後、暗黒
下、三角フラスコを用いて振盪培養し、3週間おきに移
植を繰り返すことによって得られた液体培養細胞を使用
した。培地に細胞を移植する直前または移植の24時間
後、メタノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス体
およびトランス体の混合物)を、培地中の濃度が100
μMになるように添加し、振盪培養を継続した。培養開
始から3週間経過後、ろ過によって細胞を集め、凍結乾
燥した。得られた乾燥細胞に含まれるカンプトテシン
は、Arjonらの方法(Plant Cell, Tissue and Organ Cul
ture, vol.28, pp.11-18, 1992)にしたがって抽出し、
同文献に記載の液体クロマトグラフィー条件にを用いる
方法で定量した。なお、カンプトテシンの同程は、前記
条件にしたがったLC−MSによった。結果を表7に示
した。
【0087】[比較例6]実施例6において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例6と同様に
実施した。結果を表7に示した。
【0088】
【表7】
【0089】[実施例7]オタネニンジン(Panax ginse
ng C.A.Meyer)の幼葉から誘導した培養根を、植物ホル
モンとして2.2μMの2,4-Dおよび0.8μMのカイネチン
を含むムラシゲ・スクーグ液体培地に移植した後、暗黒
下、三角フラスコを用いて振盪培養し、3週間おきに移
植を繰り返すことによって得られた培養根を使用した。
培地に培養根を移植する直前または移植の24時間後、メ
タノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス体および
トランス体の混合物)を、培地中の濃度が100μMに
なるように添加し、振盪培養を継続した。培養開始から
3週間経過後、培養根を集め、凍結乾燥した。得られた
乾燥培養根に含まれるジンセンサポニン類は、Furuyaら
の方法(T. Furuya et al., Chem. Pharm. Bull. Vol.2
1, 98-101, 1973)にしたがって抽出し、同文献に記載の
液体クロマトグラフを用いる方法で同定および定量し
た。結果を表8に示した。
【0090】[比較例7]実施例7において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例7と同様に
実施した。結果を表8に示した。
【0091】
【表8】
【0092】[実施例8]ヨウシュヤマゴボウ(Phytola
cca americana)の茎から誘導したカルスを、植物ホルモ
ンとして10-5Mの2,4-Dを含むニッチ・アンド・ニッチ
液体培地に移植した後、約8000ルックスの光照射
下、三角フラスコを用いて振盪培養し、3週間おきに移
植を繰り返すことによって得られた液体培養細胞を使用
した。培地に細胞を移植する直前または移植の24時間
後、メタノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス体
およびトランス体の混合物)を、培地中の濃度が100
μMになるように添加し、振盪培養を継続した。培養開
始から3週間経過後、ろ過によって細胞を集め、凍結乾
燥した。得られた乾燥細胞に含まれるベタシアニンは、
三澤らの方法(化学と生物13巻、pp.625-632, 1977)にし
たがって抽出し、抽出液の535nmにおける吸光度を測定
し標品の吸光度と比較することによって定量した。結果
を表9に示した。
【0093】[比較例8]実施例8において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例8と同様に
実施した。結果を表9に示した。
【0094】
【表9】
【0095】[実施例9]ビート(Beta vulgaris)の茎
から誘導したカルスを、植物ホルモンとして10-5Mの2,
4-Dを含むムラシゲ・スクーグ液体培地に移植した後、
暗黒下、三角フラスコを用いて振盪培養し、3週間おき
に移植を繰り返すことによって得られた液体培養細胞を
使用した。培地に細胞を移植する直前または移植の24時
間後、メタノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス
体およびトランス体の混合物)を、培地中の濃度が10
0μMになるように添加し、振盪培養を継続した。培養
開始から3週間経過後、ろ過によって細胞を集め、凍結
乾燥した。得られた乾燥細胞に含まれるベタシアニン
は、三澤らの方法(化学と生物13巻、pp.625-632, 1977)
にしたがって抽出し、抽出液の535 nmにおける吸光度を
測定し標品の吸光度と比較することによって定量した。
結果を表10に示した。
【0096】[比較例9]実施例9において、ジャスモ
ン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例9と同様に
実施した。結果を表10に示した。
【0097】
【表10】
【0098】[実施例10]Dioscorea compositaの幼
葉から誘導した培養根を、植物ホルモンとして10-5Mの
αーナフタレン酢酸および10ー8Mのベンジルアデニンを
含むムラシゲ・スクーグ液体培地に移植した後、暗黒
下、三角フラスコを用いて振盪培養し、3週間おきに移
植を繰り返すことによって得られた培養根を使用した。
培地に培養根を移植する直前または移植の24時間後、メ
タノールに溶解したジャスモン酸メチル(シス体および
トランス体の混合物)を、培地中の濃度が100μMに
なるように添加し、振盪培養を継続した。培養開始から
3週間経過後、培養根を集め、凍結乾燥した。得られた
乾燥培養根に含まれるジオスゲニンは、Stohsらの方法
(S.T. Stohs et al., Lloydia, Vol.38, 191-194, 197
5)にしたがって抽出し、同文献に記載の液体クロマトグ
ラフを用いる方法で同定および定量した。結果を表11
に示した。
【0099】[比較例10]実施例10において、ジャ
スモン酸メチルを添加しないこと以外は、実施例10と
同様に実施した。結果を表11に示した。
【0100】
【表11】
【0101】
【発明の効果】本発明によれば、イチョウ科、メギ科、
ツヅラフジ科、ウリ科、ニッサ科、ウコギ科、ヤマゴボ
ウ科、アカザ科またはヤマノイモ科に属する植物の組織
または細胞培養において、ジャスモン酸類の存在下に培
養を行い、得られる培養物から各親植物に含まれる二次
代謝産物を効率よく回収することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 東 庸介 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (72)発明者 三宅 篤子 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イチョウ科、メギ科、ツヅラフジ科、ウ
    リ科、ニッサ科、ウコギ科、ヤマゴボウ科、アカザ科ま
    たはヤマノイモ科に属する植物の組織または細胞培養に
    おいて、ジャスモン酸類の存在下に培養を行い、得られ
    る培養物から各親植物に含まれる二次代謝産物を回収す
    ることを特徴とする植物二次代謝産物の製造方法。
  2. 【請求項2】 使用するジャスモン酸類が、ジャスモン
    酸およびその誘導体、ククルビン酸およびその誘導体、
    ならびにツベロン酸およびその誘導体の中から選ばれる
    少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請
    求項1記載の植物二次代謝産物の製造方法。
  3. 【請求項3】 使用するジャスモン酸誘導体が、ジャス
    モン酸の炭素数1〜6のアルキルエステルであることを
    特徴とする請求項2記載の植物二次代謝産物の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 使用するジャスモン酸類が、シス型ジャ
    スモン酸類であることを特徴とする請求項1乃至3のい
    ずれか一項に記載の植物二次代謝産物の製造方法。
  5. 【請求項5】 ジャスモン酸類を添加または作用させる
    時期が、培養開始直後〜72時間の間であることを特徴
    とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の植物二次
    代謝産物の製造方法。
  6. 【請求項6】 培養組織または細胞に生産される二次代
    謝産物が、ギンゴリド類、ビロバリド類、イソキノリン
    アルカロイド類、ポドフィロトキシン類、ビスベンジル
    イソキノリンアルカロイド類、ブリオノール酸類、カン
    プトテシン類、ジンセンサポニン類、ベタシアニン類お
    よびジオスゲニン類から選ばれる少なくとの1種以上の
    化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれ
    か一項に記載の植物二次代謝産物の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019510828A (ja) * 2016-03-30 2019-04-18 セルトリオン, インク. 没食子酸含有量が増大したハスカルス抽出物、その製造方法及びそれを含有する美白用化粧料組成物
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