JP3746550B2 - タキサン型ジテルペンの製造方法 - Google Patents

タキサン型ジテルペンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、卵巣癌、乳癌、肺癌等の治療薬として有用であるタキソールを含むタキサン型ジテルペンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
卵巣癌、乳癌、肺癌等の治療薬として有用であるタキソール(Taxol)は、イチイ科イチイ属植物であるタイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia NUTT)より単離同定されたタキサン型ジテルペンであり、活性と関連する複雑なエステルグループを有している。タキソールはタイヘイヨウイチイ植物体中のどの部位にも存在し、その含量は樹皮で最も高いことが報告されている。現在、タキソールは天然のまたは栽培された植物体中から採取されているが、イチイ属植物は地上20cmの高さに成長するのに10年以上かかる生育の遅い植物であり、また樹皮を剥ぐと木が枯れてしまうことから容易に大量のタキソールを得ることは困難である。もし、タキソールおよび/またはタキソールの前駆物質であるバッカチンIII 等のタキサン型ジテルペンの合成が組織培養を利用して行なうことができれば、樹木を伐採する事なく、大量のタキソールを容易に得ることができるので有利である。
【0003】
これまでの植物の培養細胞を利用したタキソール生産方法については、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia NUTT)培養細胞によるタキソール生産が米国で特許〔US Patent:5019504〕になっているが、そのタキソール生産量は1〜3mg/lと記載されており、工業的生産には不十分である。また、細胞培養によるタキソールの生産性は不安定であり、選抜で一次的には生産性の高い細胞が得られるが、継代培養してその含量を維持することは難しい〔E.R.M.Wickremesine et al., World Congress on Cell and Tissue Culture(1992)〕。
【0004】
一方、タキソール生産法の先行技術としては、タキソール生合成前駆体であるバッカチンIII(baccatin III) からの半合成法がHoltonらの米国特許に開示されている〔US Patent:5015744〕。植物の組織培養法を用いれば、バッカチンIII 等の半合成原料の生産も可能であり、本法によるタキソール生産にも有利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、植物組織培養により、タキサン型ジテルペンの簡便な製造法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、タキサン型ジテルペンの生産方法を開発するため、種々の生理活性物質のスクリーニングをおこなった。鋭意研究の結果、タキサン型ジテルペン産生植物植物の培養細胞または培養組織をコロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を含む培地中で培養を行うと、培養物中のタキサン型ジテルペン生産性が向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
コロナチン類は、シュードモナス菌が生産するクロロシス誘導物質として発見され、植物に対して壊死、エチレンの生成促進、老化促進を誘導する活性があり、ジャスモン酸と同様にポテトの塊茎を肥大促進する作用も有している。
【0008】
すなわち、本発明はタキサン型ジテルペンを産生する植物の培養細胞または培養組織を、コロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を含む培地中で培養し、得られる培養物および/または培地からタキサン型ジテルペンを回収することを特徴とするタキサン型ジテルペンの製造方法である。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法の対象となるタキサン型ジテルペンとしては、タキサン骨格を有するジテルペンであれば特に制限はなく、例えばタキソール、10−デアセチルタキソール、7−エピタキソ−ル、バッカチンIII 、10−デアセチルバッカチンIII 、7−エピバッカチンIII 、セファロマニン、10−デアセチルセファロマニン、7−エピセファロマニン、バッカチンVI、タキソールC、タキシシンI、タキシシンIII、タキシンI、タキシンII、タキサギフィン、タキサン1a、キシロシルセファロマニン、キシロシルタキソール等が挙げられる。
【0010】
本発明の組織培養に用いられるタキサン型ジテルペンを産生する植物としては、例えばセイヨウイチイ(Taxus baccata LINN)、イチイ(T. cuspidata SIEB.et ZUCC)、キャラボク(T. cuspidata SIEB.et ZUCC var. nana REHDER)、タイヘイヨウイチイ(T. brevifolia NUTT)、カナダイチイ(T. canadiensis MARSH)、中国イチイ(T. chinensis)、T.media等のイチイ属植物をあげることができる。
【0011】
前記植物の組織培養は、本発明によりコロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を添加する以外は、従来から知られている方法によって行なうことができる。
【0012】
コロナチン類産生菌としては、Pseudomonas属、Xanthomonas属が知られている。Pseudomonas属としては、具体的には、P. syringae(IFO 3310)、P. glycinea、P. tabaci(IFO 3508、IFO 14081)、P. aptata(IFO 12655)、P. coronafaciens、P. phaseolicola(IFO 12656、IFO 14078)、P. mori(IFO 14053、IFO 14054、IFO 14055)、P. helianthi(IFO 14077)等を例示できる。また、Xanthomonas属としては、X. campestris(IFO 13303、IFO 13551)、X. citri、X. cucurbitae(IFO 13552)、X. phaseoli(IFO 13553、IFO 13554)、X. pruni(IFO 3780、IFO 13557)等を例示できる。
【0013】
コロナチン類としては、下記の一般式(I):
【0014】
【化6】
Figure 0003746550
または一般式(II) :
【0015】
【化7】
Figure 0003746550
【0016】
[式中R1は、水酸基、OR2(ここでR2 は、炭素数1〜6のアルキル基または炭水化物残基を表す。)、OM1 (ここでM1 は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはNH4を表す。)、またはNR3a3b{ここで、R3a、R3bは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ酸残基、または一般式(III):
【化8】
Figure 0003746550
(ここで、R4は、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または、次式
−CO−R7
(式中R7は、水酸基、OM2 (ここでM2 は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはNH4を表す。)、NR8a8b(ここで、R8a、R8bは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ酸残基を表す。)、またはOR9 (ここでR9 は、炭素数1〜6のアルキル基、または炭水化物残基を表す。)を表す。)で示される基を表し;
5a 、R5b、R6a、およびR6bは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)で示される基を表す。)を表し;
10a、R10b 、R11a 、R11b、R12、R13、R14a 、R14b 、R15a 、R15b 、R16a 、R16b 、R17、およびR19は、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
18は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭水化物残基を表し;
式中の五員環および六員環は、隣接する炭素原子間で二重結合を形成してもよい。]
で示される化合物等が挙げられる。
【0017】
前記一般式(I)、(II)、(III) において、R2 、R3a、R3b、R4 、R5a、R5b、R6a、R6b、R8a、R8b、R9 、R10a 、R10b 、R11a 、R11b 、R12、R13、R14a 、R14b 、R15a 、R15b 、R16a 、R16b 、R17、R18、R19で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
前記一般式(I)、(II)、(III) において、R4 、R5a、R5b、R6a、R6b、R10a 、R10b 、R11a 、R11b 、R12、R13、R14a 、R14b 、R15a 、R15b 、R16a 、R16b 、R17、またはR19で表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
1 またはR7 がOM1 またはOM2 である場合において、M1 またはM2 で表されるアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム等が挙げられる。
【0020】
1またはR7が、NR3a3bまたはNR8a8bである場合において、R3a、R3b、R8a、またはR8bで表される炭素数1〜6のアシル基は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0021】
1 またはR7 がNR3a3bまたはNR8a8bである場合において、R3a、R3b、R8a、R8bで表されるアミノ酸残基としては、例えばイソロイシル基、バリル基、グルタミル基、リジル基を例示することができる。
【0022】
1 またはR7 がOR2 またはOR9 である場合において、R2 、R9 で表される炭水化物残基としては、グルコピラノシル基が挙げられる。
【0023】
前記一般式(II) においてR18が、炭水化物残基である場合としては、例えばグルコピラノシル基が挙げられる。
【0024】
コロナチン類の好ましい化合物としては、コロナチン(式IV) 、あるいはコロナファシック酸(式V)が挙げられる。
なかでもコロナチンは、式 (I) のなかでも活性がもっとも強く、その構造は、コロナファッシック酸と2−エチル−1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸とがアミド結合したものである。
【0025】
【化9】
Figure 0003746550
【0026】
【化10】
Figure 0003746550
【0027】
本発明で使用されるコロナチン類には種々の立体異性体(シストランス異性体、光学異性体)が存在するが、それぞれの異性体を単独で用いても、混合物の形で用いてもよい。
【0028】
コロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物を培地に添加する場合は、コロナチン類の培地における濃度は通常0.001〜1000μMとすることが必要であり、特に0.01〜100μMの範囲に調整することが本発明の方法にとって好ましい。
【0029】
本発明の組織培養に使用される培地としては、従来から知られている植物の組織培養に用いられる培地、例えばムラシゲ・スクーグ(1962年)〔Murashige & Skoog〕の培地、リンスマイヤー・スクーグ(1965年)〔Linsmaier Skoog〕の培地、ウッディー・プラント・メディウム(1981年) 〔Woody Plant Medium〕の培地、ガンボルグ〔Gamborg〕のB−5培地、三井のM−9培地等が挙げられる。
【0030】
これら培地に植物ホルモンを添加し、更に必要に応じて炭素源、無機成分、ビタミン類、アミノ酸等を添加することもできる。
【0031】
炭素源としては、シュクロース、マルトース、ラクトース等の二糖類、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、デンプンあるいはこれら糖源の2種類以上を適当な比率で混合したものを使用できる。
【0032】
無機成分としては、例えばリン、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、銅、モリブデン、塩素、ナトリウム、ヨウ素、コバルト等があげられ、これらの成分は例えば硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、塩化カリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、ホウ酸、硫酸銅、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデン、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等の化合物として添加できる。
【0033】
植物ホルモンとしては、例えばインドール酢酸(IAA)、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)等のオーキシン類、カイネチン、ゼアチン、ジヒドロゼアチン等のサイトカイニン類が用いられる。
【0034】
ビタミン類としては、例えばビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が用いられる。
【0035】
アミノ酸類としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、ロイシン、グルタミン、システイン等を添加できる。
【0036】
一般に前記の各成分は、無機成分が約0.1μM、ないし100mM、炭素源が約1〜約30g/l、植物ホルモン類が約0.01〜約10μM、ビタミン類及びアミノ酸類がそれぞれ約0.1〜約100mg/lの濃度で用いられる。
【0037】
尚、本発明には液体培地及び寒天やゲランガム等を通常0.1〜1%含有する固形培地のいずれも使用できるが、通常は液体培地が好ましい。
【0038】
本発明の組織培養においては、上記植物の根、生長点、葉、茎、種子、花粉、葯、がく等の組織片または細胞、あるいはこれらを上記培地あるいは他の従来の培地によって組織培養して得られる培養細胞を使用することができる。
【0039】
これらの組織または細胞を本発明によりコロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を含む培地を用いて培養すると、無添加の場合と比較してタキサン型ジテルペンの高生産性培養組織又は培養細胞が得られる。
【0040】
植物細胞培養物にコロナチン類を添加すると、ある種の二次代謝に関与する生合成系が活性化されることが報告されているが〔W. Weiler et al., FEBS Letters 345: 1 (1994)〕、タキサン型ジテルペン産生植物の組織培養において培地添加物としてコロナチン類を存在させて組織培養をおこなった例は報告されておらず、しかもそれによりタキサン型ジテルペンの産生量が増大することは予想外のことであった。
【0041】
また、イチイ培養細胞に微生物または微生物培養抽出物をエリシッターとして利用し、タキサン型ジテルペンの生産性を高める方法は、国際公開WO93/17121、US Patent:5019504に明記されている。しかし、これらの特許においてはエリシッターとして明記してあるものの、効果の程度については定かではない。また、これらの中には本発明で使用するコロナチン類産生菌であるPseudomonas属、Xanthomonas属に関する記載はない。従って、コロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、またはそれら菌類の培養抽出物を存在させてイチイ細胞の培養を行い、タキサン型ジテルペンの産生量が増大することは予想外のことであった。
【0042】
以上のようにして、タキサン型ジテルペンを産生する植物の培養細胞または培養組織を、コロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を含む培地中で培養を行うことによって得られる培養物および/または培地からメタノール等の有機溶媒による抽出によってタキサン型ジテルペンを分離することができる。また、培地中に適当な吸着剤や有機溶媒を共存させ、連続的にタキサン型ジテルペンを回収することができる。
【0043】
本発明の組織培養の好ましい一例としては、次の方法が挙げられる。
【0044】
先ずイチイ属に属する植物の植物体、例えば根、生長点、葉、茎、種子などから採取される植物片を殺菌処理後、ゲランガムで固めたウッディー・プラント・メディウムの固体培地上に置床し、10〜35℃で14〜60日程度経過させて組織片の一部をカルス化させる。このようにして得られたカルスを継代培養すると生育速度が漸次高まり安定化したカルスが得られる。ここで、安定化したカルスとは、培養中にカルスの一部がシュートや根に分化しないでカルスの状態を保持する性質をもち細胞の生育速度が均質であるものをいう。
【0045】
この安定化したカルスを増殖に適した液体培地、例えばウッディー・プラント・メディウムの液体培地に移して増殖させる。液体培地において更に生育速度が高められる。本発明では、この安定化したカルス又は該カルスを構成する細胞は、コロナチン類を含有する固体培地又は液体培地で培養される。
【0046】
コロナチン類産生菌の増殖は、一般細菌培養用培地あるいは最少培地でおこなう。
【0047】
本発明に使用するコロナチン類産生菌培養液としては、一例としてそれら菌類を培養した培養液を無菌ろ過したものが挙げられる。
【0048】
また、コロナチン類産生菌培養抽出物としては、一例としてそれら菌類を培養した培養液をオートクレーブ(120℃、15分間)したもの、あるいはそれら菌類の培養液を酸性条件で酢酸エチルなどの有機溶媒により抽出したもの、あるいはさらにコロナチン、コロナファシック酸を含む画分としてSephadex LH 20カラムなどにより部分精製したものが挙げられる。
【0049】
コロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物は、培養細胞が対数増殖期ないし定常期に添加することがもっとも効果的であり、この中でも特に対数増殖期から定常期に移行する時期に添加することが本発明の方法にとって好ましい。たとえば、21日おきに細胞を移植している場合には7〜16日目がコロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物の添加の適期にあたる。また、添加方法としては、一度に所定の量を添加してもよいし、数回に分けて逐次添加してもよい。
【0050】
本発明の組織培養における培養温度としては、通常は約10〜約35℃、特に約23〜28℃が増殖速度が大きいので好適である。また、培養期間としては、14〜 42日間が好適である。
【0051】
本発明の培養方法において液体培地を用いた場合には、培養終了後に培養細胞をデカンテーションまたは濾過等の方法によって培地から分離し、培養細胞および/または培地から目的とするタキサン型ジテルペンを有機溶媒による抽出等の方法によって分離することができる。
【0052】
本発明の効果を高める方法として、特願平6−36156、6−104211、6−104212、6−104213号明細書にタキサン系化合物の生産促進物質として開示されている、ジャスモン酸及びその誘導体の存在下に培養する方法との併用が挙げられる。
ジャスモン酸類としては、例えば、一般式(VI) :
【0053】
【化11】
Figure 0003746550
【0054】
[式中、R0 は次式:
−(CH2n −CO−R25
{式中、R25は水酸基、OM(ここで、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表す。)、NR26a 26b (ここで、R26a 、R26b は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基又はアミノ酸残基を表す。)、OR27(ここで、R27 は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭水化物残基を表す。)又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは1〜7の整数を表す。}で示される基を表し;
1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びR1fは、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
20、R21、R22、R23及びR24a は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し;
1 −C2 −C3 −C4 −C5 −C6 からなる側鎖は、1個又は2個以上の二重結合を含んでいてもよく;
24b は、水酸基又は−O−炭水化物残基を表し;
前記5員環は隣接する環員炭素原子間で二重結合を形成してもよい。]
で示される化合物、または一般式(VII):
【0055】
【化12】
Figure 0003746550
【0056】
[式中、R0 は次式:
−(CH2n −CO−R25
{式中、R25は水酸基、OM(ここで、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表す。)、NR26a 26b (ここで、R26a 、R26b は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基又はアミノ酸残基を表す。)、OR27(ここで、R27は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭水化物残基を表す。)又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは1〜7の整数を表す。}で示される基を表し;
1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びR1fは、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し;
1 −C2 −C3 −C4 −C5 −C6 からなる側鎖は、1個又は2個以上の二重結合を含んでいてもよく;
前記5員環は隣接する環員炭素原子間で二重結合を形成してもよい。]
で示される化合物、又は一般式 (VIII) :
【0057】
【化13】
Figure 0003746550
【0058】
[式中、R0 は次式:
−(CH2n −CO−R25
{式中、R25は水酸基、OM(ここで、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表す。)、NR26a 26b (ここで、R26a 、R26b は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基又はアミノ酸残基を表す。)、OR27(ここで、R27は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭水化物残基を表す。)又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは1〜7の整数を表す。}で示される基を表し;
1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びR1fは、それぞれ水素原子、水酸基、炭 素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し;
1 −C2 −C3 −C4 −C5 −C6 からなる側鎖は、1個又は2個以上の二重結合を含んでいてもよく;
前記5員環は隣接する環員炭素原子間で二重結合を形成してもよい。]
で示される化合物等が挙げられる。
【0059】
前記一般式(VI) 、(VII)及び (VIII) において、R0 、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R20、R21、R22、R23、R24、R24a 、R25、R26a 、R26b 、又はR27で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0060】
前記一般式(VI) 、(VII)及び (VIII) において、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e又はR1fで表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
25がOMである場合において、Mで表されるアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムが挙げられる。
25がNR26a 26b である場合において、R26a 、R26b で表される炭素数1〜6のアシル基は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0062】
25がNR26a 26b である場合において、R26a 、R26b で表されるアミノ酸残基としては、例えばイソロイシル基、チロシル基、トリプトフィル基が挙げられる。
25がOR27である場合において、R27で表される炭水化物残基としては、例えばグルコピラノシル基が挙げられる。
前記一般式(VI) において、R24b が−O−炭水化物残基である場合における炭水化物残基としては、例えばグルコピラノシル基が挙げられる。
【0063】
前記一般式(VI) 、(VII)又は (VIII) で示される化合物の好ましいものとしては、R0 が−(CH2n COOH又は−(CH2n COOCH3 であり、R0 、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R20、R21、R22、R23、R24a 、R24が、それぞれ水素原子を表すか、或いはC1 とC2 、C3 とC4 、又はC3 とC4 の間で二重結合を含んでいる化合物が挙げられる。
【0064】
前記一般式(VI) で示されるジャスモン酸類の好ましい具体例としては、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
(化合物A)
【0065】
【化14】
Figure 0003746550
【0066】
(化合物B)
【0067】
【化15】
Figure 0003746550
【0068】
(化合物C)
【0069】
【化16】
Figure 0003746550
【0070】
(化合物D)
【0071】
【化17】
Figure 0003746550
【0072】
前記一般式 (VII)で示されるジャスモン酸類の好ましい具体例としては、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
(化合物E)
【0073】
【化18】
Figure 0003746550
【0074】
(化合物F)
【0075】
【化19】
Figure 0003746550
【0076】
(化合物G)
【0077】
【化20】
Figure 0003746550
【0078】
(化合物H)
【0079】
【化21】
Figure 0003746550
【0080】
前記一般式(VIII) で示されるジャスモン酸類の好ましい具体例としては、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
(化合物I)
0 :−(CH2n COOH又は−(CH2n COOCH3
(n=1〜3)
1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R202122,R23,R24:H
3 −C4 間:二重結合
(化合物J)
0 :−CH2 COOH
1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f,R202122,R23,R24:H
また、前記一般式(VIII) で示される化合物は、5員環が、更に水酸基で置換されていてもよく、隣接する環員炭素原子間で二重結合を形成してもよい。
【0081】
5員環が、更に水酸基で置換された化合物、又は隣接する環員炭素原子間で二重結合が形成された化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
(化合物K)
【0082】
【化22】
Figure 0003746550
【0083】
(化合物L)
【0084】
【化23】
Figure 0003746550
【0085】
(化合物M)
【0086】
【化24】
Figure 0003746550
【0087】
(化合物N)
【0088】
【化25】
Figure 0003746550
【0089】
前記ジャスモン酸類には種々の立体異性体(シストランス異性体、光学異性体)が存在するが、それぞれの異性体を単独で用いても、混合物の形で用いてもよい。
以上のジャスモン酸類は、全てタキサン型ジテルペンの生産性向上に効果を有するが、中でも前記一般式(VI) 、(VII) 、及び(VIII)においてR0 が−CH2 COOH又は−CH2 COOCH3 であり、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R20、R21、R22、R23、R24、R24a が水素原子であり、C3 とC4 の間で二重結合を形成している化合物であるジャスモン酸又はジャスモン酸メチル、ツベロン酸又はツベロン酸メチル、及びククルビン酸又はククルビン酸メチルが生産性向上に対する効果の大きさの点から特に好ましい。
【0090】
これらジャスモン酸類は、合成により、又は植物からの抽出等により調製される(H. Yamane et al., Agric. Biol. Chem., 44, 2857-2864(1980) )。一方、ジャスモン酸類は、生長促進や組織の成熟、病害抵抗性の発現にかかわる諸反応を誘起する植物ホルモン様物質として、種々の植物が自ら生産することが、吉原照彦著、植物細胞工学第2巻第4号523〜531頁(1990年)に記載されている。
【0091】
従って、前記ジャスモン酸類は、培養系外から添加するほかに、使用する培養細胞又は培養組織に自ら生産させることもできる。この内在性ジャスモン酸類の培養細胞又は培養組織による生産を促進する方法としては、微生物の培養物又はその抽出物、熱処理物或いは植物抽出物などの培地への添加を例示することができ、具体的にはM.J.Mueller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,90(16), 7490-7494 (1993) に記載の、カビ細胞壁画分を添加する方法を例示することができる。更に、使用する培養細胞又は培養組織に、機械的に又は紫外線、熱などによって部分的に傷害を与えることによっても、内在性ジャスモン酸の生産量を高めることが可能であり、具体的には、R.A.Cleeman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,89(11), 4938-4941 (1989) に記載の、機械的に一部の細胞を破壊する方法を例示することができる。
【0092】
ジャスモン酸類は、水に対して難溶性のため、通常エタノール、メタノール等の有機溶媒、又は界面活性剤等に溶解した後、培地に添加する。また、遊離形のジャスモン酸類は、そのまま用いてもよいし、アルカリで中和して塩にして用いてもよい。
【0093】
ジャスモン酸類は、5員環カルボニル基のα位が、酸、アルカリ、熱によってエピマー化を起こすため、不安定なシス型より安定なトランス型になりやすい。天然又は合成ジャスモン酸を用いた平衡実験では、トランス型が90%、シス型が10%の状態で存在する。一般にはシス型の方が活性が強いとされているが、本発明で使用することができるジャスモン酸類は、前記式(VI)(VII)(VIII)で示される全ての立体異性体化合物及びその混合物を包含する。
【0094】
ジャスモン酸類は、培地における濃度は0.01〜1000μMであり、この中でも特にジャスモン酸類の濃度を0.1〜500μMの範囲に調整することが好ましい。
【0095】
ジャスモン酸類は、培養細胞の対数増殖期ないし定常期に添加することが効果的であり、この中でも特に対数増殖期から定常期に移行する時期にジャスモン酸類を添加することが好ましい。また、内在性ジャスモン酸類の生産量を高めるための処理の時期についてもこれと同様である。例えば、21日おきに細胞を移植している場合には7〜16日目がジャスモン酸類の添加又は内在性ジャスモン酸類の生産量を高めるための処理の適期にあたる。また、ジャスモン酸類の添加及び内在性ジャスモン酸類の生産量を高める処理は、一度に行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
【0096】
また本発明は、特願平6−146826号明細書に開示されている、培養器内の気相中の酸素濃度を培養初期より大気中の酸素濃度未満の条件下に制御して培養を行うか、或いは組織及び/又は細胞と接する流動性の培地中の溶存酸素濃度を培養初期よりその温度に於ける飽和溶存酸素濃度未満である条件下に制御して培養する方法とも併用することができる。
【0097】
ここで、培養初期とは、培養開始時ないし培養開始後7日目をいい、培養器内の気相中の酸素濃度、又は組織及び/又は細胞と接する流動性の培地中の溶存酸素濃度の制御は、培養開始時から行うことが好ましい。また、制御の期間としては、培養全期間を通して該条件に制御してもよいし、培養全期間中の一部期間のみを制御してもよく、特に限定するものではないが、全培養期間中の、少なくとも3日間制御することが好ましい。
【0098】
培養器内の気相中の酸素濃度は、4ないし15%に制御することが必要であり、特に6ないし12%に制御することが好ましい。また、流動性の培地中の溶存酸素濃度は、その温度における飽和溶存酸素濃度値の1ないし75%に制御することが必要であり、特に10ないし75%に制御することが好ましい。
【0099】
また、本発明は、特願平5−284893号、同6−104213号明細書に開示されている、細胞を比重の違いにより複数の層に分け、少なくとも1つの層に含まれる細胞を培養する方法と併用することもできる。
細胞を比重によって分離する方法としては、一般に遠心分離用媒体を用いて密度勾配を作成し、細胞を重層した後、遠心分離する方法が知られている。
【0100】
遠心分離用媒体としては、Ficoll、Percoll (共にPharmacia LKB Biotechnology 社製)、ショ糖、塩化セシウム等が用いられる。
密度勾配を形成する層の数に特に制限はない。各層の比重差は、特に限定されるものではなく、また各比重差は同じであっても異なっていてもよい。
従って、この密度勾配の定義には勾配が連続的に変化する場合(密度勾配を形成する層の数が無限大、各層の比重差が0に近い状態)も含む。
【0101】
このようにして密度勾配を形成し、細胞を重層、遠心分離することにより細胞を比重の違いにより複数の層に分けることができる。
作成する層の比重は、通常1.00〜1.20g/ml、好ましくは1.03〜1.11g/mlの範囲である。培養の対象となる層としては、少なくとも1つの層を選択し、また全ての層を選択して培養してもよい。
【0102】
複数の層を選択して培養する場合、これらの複数の層は、それぞれ個別に培養することもできるが、選択した複数の層のうちの2層以上の層を混合して培養することもできる。
タキサン型ジテルペン産生能の高い培養細胞は、通常、比重が1.07以下の層に含まれる細胞を培養して得られるが、培養する細胞や培養の条件により変動する場合があり、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。また、単に比重の違いによって分画しただけでは、比重の高い層の細胞の方がタキサン型ジテルペン含量が高くなる傾向が認められる。従って、より確実にタキサン型ジテルペン高産生培養細胞を取得するためには、分画された全ての層の細胞を一定期間培養した後、各層の細胞に含まれるタキサン型ジテルペン濃度を測定し、それらの中からタキサン型ジテルペン高産生細胞を含む層を選択することが望ましい。
【0103】
また、例えば1.07g/mlのように、ある1つの特定の比重の遠心分離媒体を作成し、前述の方法で遠心分離することによっても、培養細胞を比重の違いにより複数の層に分けることができる。
【0104】
また、本発明は、特願平6−201150号明細書に記載されている、重金属を含む化合物類、重金属イオンを含む錯イオン類、及び重金属イオンから選ばれた少なくとも一つの存在下に培養する方法との併用が挙げられる。
ここで、重金属としては、銀に代表される銅族、コバルトに代表的される鉄族を使用することが好ましく、当該重金属を含む化合物、当該重金属を含む錯イオン類、又は当該金属イオンの形で使用することが好ましい。特にチオ硫酸銀イオンが好ましい。重金属の濃度は10-8M〜10-2Mが好ましい。
また、本発明は、特願平6−201151号明細書に記載されている、アミン類の存在下に培養する方法との併用が挙げられる。
ここでアミン類としては、ポリアミン類、具体的にはプトレッシン、スペルミジン、スペルミン、エチレンジアミン、N,N-ジエチル-1,3- プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、及びこれらの化合物の塩より成る群から選ばれる少なくとも一種以上を使用することが好ましい。アミン類の濃度は10-8M〜10-1Mが好ましい。
【0105】
また、本発明は、特願平6−291783号明細書に記載されている、サイクロデキストリンなどの環状多糖類の存在下に培養する方法との併用が挙げられる。
【0106】
また、本発明にかかる方法と、上述の先願特許に記載の方法のいくつか又はすべてを組み合わせることも可能である。
【0107】
以上のようにして得られた組織又は細胞から、メタノール等の有機溶媒による抽出によってタキサン型ジテルペンを分離することができる。
【0108】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
〔実施例1〕
ナフタレン酢酸を10-5Mの濃度になるように添加したウッディー・プラント・メディウムの固体培地(ゲランガム0.25重量%)に、前もって2%アンチホルミン溶液または70%エタノール溶液等で滅菌処理したセイヨウイチイ(Taxus baccata LINN)の茎の一部を置床し、25℃で暗所にて静置培養してセイヨウイチイカルスを得た。次にこのカルス1g(新鮮重)を、上記成分を同じ濃度で添加したウッディー・プラント・メディウムの液体培地20ml入りの三角フラスコに移し、ロータリーシェーカー上で旋回培養(振幅25mm、120rpm)し、21日毎に植えつぎ、該カルスの生育速度を速めた。
【0110】
一方、コロナチン類産生菌としてPseudomonas syringae(IFO 3310)を用い、まず細菌培養用802培地(Polypepton 1.0%, Yeast extract 0.2%, MgSO4・7H2O 0.1%, pH 7.0)3ml入りの試験管で、180rpm、30℃で24時間培養し菌を増殖する。次に増殖した菌を含む上記培養液100μlをグルコース最少培地(glucose 8.8g/l, KH2PO4 2.6g/l, Na2HPO4・2H2O 6.9g, NH4Cl 2.5g/l, Na2SO4 1g/l, FeSO4 0.01g/l, MnSO4 0.01g/l, MgCl2 0.05g/l, pH6.8)50ml入りの三角フラスコに移し、さらに30℃で24時間培養した。このようにして得られたコロナチン類産生菌培養液を約1/20に濃縮後、2N H2SO4でpHを3に調整し、酢酸エチルで抽出した。得られたカルボン酸画分を減圧乾燥の後、エタノール2mlに溶解し、その無菌ろ過液をコロナチン類産生菌培養抽出液とした。
【0111】
得られたセイヨウイチイ培養細胞1g(新鮮重)を、ウッディー・プラント・メディウムの液体培地20ml入りの三角フラスコに移して25℃で14日間振盪培養した。培養14日目にコロナチン類産生菌培養抽出液50μlを培地に添加し、さらに7日間培養した。
【0112】
培養終了後、セイヨウイチイ培養細胞をろ過により採取し、凍結乾燥した後その乾燥重量を測定し、液体培地1L当たりの培養細胞の生育重量を求めた。得られた乾燥カルスからメタノール等を用いてタキサン型ジテルペンを抽出し、高速液体クロマトグラフィーを用いて標準品タキソール、セファロマニン、バッカチンIII と比較定量することによってタキサン型ジテルペン収量を測定した。その結果を表1に示す。
【0113】
〔比較例1〕
実施例1において、コロナチン類産生菌培養抽出液を添加しない以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0114】
〔実施例2〕
実施例1において、コロナチン類産生菌抽出液のかわりにPseudomonas syringaeを最小培地で培養後無菌ろ過した液1mlを添加して培養する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0115】
〔実施例3〕
実施例1において、コロナチン類産生菌抽出液のかわりにPseudomonas syringaeを最小培地で培養後オートクレーブした液1mlを添加して培養する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0116】
〔実施例4〕
実施例1において、コロナチン類産生菌としてXanthomonas campestris(IFO 13551)を用いた以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0117】
〔実施例5〕
実施例1において、コロナチン類産生菌としてPseudomonas syringaeを培養14日目のイチイ培養培地に直接植菌し、さらに7日間培養した。培養終了後は、該実施例と同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0118】
〔実施例6〕
実施例1において、コロナチン類産生菌としてXanthomonas campestrisを培養14日目のイチイ培養培地に直接植菌し、さらに7日間培養した。培養終了後は、該実施例と同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
Figure 0003746550
【0120】
〔実施例7〕
ナフタレン酢酸を10-5Mの濃度になるように添加したウッディー・プラント・メディウムの固体培地(ゲランガム0.25重量%)に、前もって2%アンチホルミン溶液または70%エタノール溶液等で滅菌処理したセイヨウイチイ(Taxus baccata LINN)の茎の一部を置床し、25℃で暗所にて静置培養してセイヨウイチイカルスを得た。次にこのカルス1g(新鮮重)を、上記成分を同じ濃度で添加した液体ウッディー・プラント・メディウム20ml入りの三角フラスコに移し、ロータリーシェーカー上で旋回培養(振幅25mm、120rpm)し、21日毎に植えつぎ、該カルスの生育速度を速めた。
【0121】
このようにして得られた培養細胞1g(新鮮重)を、上記成分を同じ濃度で添加した液体ウッディー・プラント・メディウム20ml入りの三角フラスコに移して25℃で14日間振盪培養した。培養14日目にコロナチン類としてコロナチン〔式(IV)〕をその終濃度が0.001〜1000μMになるように添加し、さらに7日間培養した。
【0122】
培養終了後、セイヨウイチイ培養細胞を濾過により採取し、凍結乾燥した後その乾燥重量を測定し、液体培地1L当たりの培養細胞の生育重量を求めた。得られた乾燥カルスからメタノール等を用いてタキサン型ジテルペンを抽出し、高速液体クロマトグラフィーを用いて標準品タキソール、セファロマニン、バッカチンIII と比較定量することによってタキサン型ジテルペン収量を測定した。その結果を表2に示す。
【0123】
〔比較例2〕
実施例7において、コロナチンを添加しない以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0124】
〔実施例8〕
実施例7において、コロナチン類としてN−コロナファコイルバリン〔式(IX) 〕を1μM添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0125】
【化26】
Figure 0003746550
【0126】
〔実施例9〕
実施例7において、コロナチン類としてコロナチンのメチルエステルを1μM添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0127】
〔実施例10〕
実施例7において、コロナチン類としてコロナファシック酸〔式(V)〕を10μM添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0128】
〔実施例11〕
実施例7において、コロナチン類としてコロナファシック酸のメチルエステルを10μM添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0129】
〔実施例12〕
実施例7と同様にして得られたメディアイチイ(Taxus media) 培養細胞を用い、コロナチン類としてコロナチンをその終濃度が1μMになるように添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0130】
〔比較例3〕
実施例12において、コロナチンを添加しない以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
Figure 0003746550
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、コロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を含む組織培養培地を用いたタキサン型ジテルペン産生植物の組織培養によって、大量のタキサン型ジテルペンを簡便に得ることが可能になった。

Claims (15)

  1. タキサン型ジテルペンを産生する植物の培養細胞および/または培養組織を下記の一般式(I):
    Figure 0003746550
    または一般式( II ):
    Figure 0003746550
    [ 式中R 1 は、水酸基、OR 2 (ここでR 2 は、炭素数1〜6のアルキル基または炭水化物残基を表す。)、OM 1 (ここでM 1 は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはNH 4 を表す。)、またはNR 3a 3b (ここで、R 3a 、R 3b は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ酸残基、または一般式( III ):
    Figure 0003746550
    (ここで、R 4 は、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または、次式
    −CO−R 7
    (式中R 7 は、水酸基、OM 2 (ここでM 2 は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはNH 4 を表す。)、NR 8a 8b (ここで、R 8a 、R 8b は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ酸残基を表す。)、またはOR 9 (ここでR 9 は、炭素数1〜6のアルキル基、または炭水化物残基を表す。)を表す。)で示される基を表し;
    5a 、R 5b 、R 6a 、およびR 6b は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜6の アルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)で示される基を表す。)を表し;
    10a 、R 10b 、R 11a 、R 11b 、R 12 、R 13 、R 14a 、R 14b 、R 15a 、R 15b 、R 16a 、R 16b 、R 17 、およびR 19 は、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
    18 は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭水化物残基を表し;
    式中の五員環および六員環は、隣接する炭素原子間で二重結合を形成してもよい。]
    で表されるコロナチン類、またはコロナチン類産生菌、それら菌類の培養液、もしくはそれら菌類の培養抽出物から選ばれる少なくとも1種以上を含む培地中で培養し、得られる培養物および/または培地からタキサン型ジテルペンを回収することを特徴とするタキサン型ジテルペンの製造方法。
  2. コロナチン類がコロナチン(式IV)であることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
    Figure 0003746550
  3. コロナチン類がコロナファシック酸(式V)であることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
    Figure 0003746550
  4. タキサン型ジテルペンが、タキソール、10−デアセチルタキソール、7−エピタキソ−ル、バッカチンIII 、10−デアセチルバッカチンIII 、7−エピバッカチンIII 、セファロマニン、10−デアセチルセファロマニン、7−エピセファロマニン、バッカチンVI、タキソールC、タキシシンI、タキシシンIII、タキシンI、タキシンII、タキサギフィン、タキサン1a、キシロシルセファロマニン、及びキシロシルタキソールよりなる群から選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  5. タキサン型ジテルペンを産生する植物がイチイ属植物であることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  6. タキサン型ジテルペンを産生する植物がTaxus baccataであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  7. タキサン型ジテルペンを産生する植物がTaxus mediaであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  8. コロナチン類産生菌がPseudomonas属であることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  9. コロナチン類産生菌がPseudomonas syringaeであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  10. コロナチン類産生菌がXanthomonas属であることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  11. コロナチン類産生菌がXanthomonas campestrisであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  12. コロナチン類産生菌の培養液が、それら菌類の培養液を無菌ろ過したものであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  13. コロナチン類産生菌の培養抽出物が、それら菌類の培養液を酸性条件で有機溶媒により抽出したものであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  14. コロナチン類産生菌の培養抽出物が、それら菌類の培養液を加熱処理したものであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  15. 培地中のコロナチン類の濃度が0.001〜1000μMであることを特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
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