JPH1042588A - 電動機の制御装置および可変速発電機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】一次側に交流電源を接続し、二次側に可変周波
数の交流を印加して可変速運転する二次励磁電動機の交
流電源側に不平衡電圧が発生したり、不平衡電流が流れ
たりする擾乱が発生した場合に、電動機を介して二次側
に流れ込む電流を極力抑え、安定した制御を継続する。 【解決手段】電動機９の一次側電圧の逆相成分及び正相
成分を検出し、これらを二次側誘起電圧に換算して、こ
れらの電圧分を打ち消すようにあらかじめ電圧補償する
ように周波数変換器出力を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、二次励磁電動機の
制御装置に関し、特に二次側から可変周波数の交流を印
加して可変速運転する電動機の一次側に不平衡電圧が発
生した場合にも安定した運転を行うことができる電動機
の制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、従来の二次励磁の電動機制御技
術では電動機の二次側に流れる電流を制御する電動制御
装置を備え、電動機一次側に発生した不平衡電圧に起因
して流れる高周波電流を抑制するように電圧を制御して
いる。

【０００３】図４は従来の二次励磁電動機の制御装置の
ブロック図である。

【０００４】電動機９は固定子即ち一次側を交流電源１
１に接続し、回転子即ち二次側を周波数変換器８に接続
し一次側を固定周波数の交流で励磁し、二次側を可変周
波数（以下励磁周波数という）の交流で励磁することに
よってその差の周波数で電動機が回転する二次励磁電動
機である。周波数変換器８は交流電源１１から変圧器１
０を介して可変周波数の交流を出力する。周波数変換器
８はサイリスタ素子を用いて交流電源をこれより低い周
波数の交流に直接変換するサイクロコンバータを用いて
可変周波数の交流を出力することもできるし、自己消弧
型のゲートターンオフサイリスタやトランジスタなどの
素子をブリッジ接続したコンバータにより交流を一度直
流に変換し、さらにこの直流を用いてインバータで可変
周波数の交流を出力する方式（以下自励式と言う）を用
いることもできる。

【０００５】これらの方式を用いた周波数変換器８は制
御装置から出力する励磁周波数の交流電圧指令１７に従
った電圧を出力するように制御する。

【０００６】出力する交流電圧の振幅は電流検出器５で
検出した電流が電流指令に一致するように電流制御器６
で決定する。電流制御器６は三相電流を出力する基本波
成分の周波数での回転座標変換により二相の直流電流に
変換して直流ベースの比例積分制御で誤差を零とする直
流電流制御や交流ベースの電流指令に追従させる交流電
流制御、もしくはこれらを組み合わせて構成する。

【０００７】周波数変換器８は、サイリスタを用いたサ
イクロコンバータ方式では決定した電圧が出るような点
弧タイミングでサイリスタを点弧させ、自励式において
は決定した電圧が出るような変調度のパルス（ＰＷＭ制
御）を用いたスイッチング素子を点弧する。

【０００８】出力する交流電圧の位相は電圧検出器７に
より検出した交流電源１１の電圧から正相分の電圧位相
または三相電圧の平均位相Ｐｖを正相電圧検出器１３で
検出する。一方、電動機９の位相を検出する位相検出器
２０により検出した電動機位置から回転子位相検出器１
２により回転子位相Ｐｒを検出する。すべり位相Ｐｓ即
ち出力電圧の位相は正相分電圧位相Ｐｖと回転子位相Ｐ
ｒを用いてすべり位相検出器１４により決定し、電流制
御器１４が出力する交流電圧指令の位相として用いる。
ここで用いる正相電圧位相検出器１３は、比例積分制御
により位相を検出電圧に追随させるＰＬＬ（フェーズロ
ックループ）方式の位相検出器を用いてもよいし、フー
リエ変換を用いた基本波位相検出方式を用いてもよい。
すべり位相検出器１４は回転子位相Ｐｒ及び正相電圧位
相Ｐｖが電動機の極対数を考慮した電気位相であれば単
に数１により求めることができる。

【０００９】

【数１】 Ｐｓ＝Ｐｖ−Ｐｒ …（数１） 図４に示した二次励磁電動機では電動機の回転速度は電
圧指令１７の基本波電圧の周波数と交流電源１１の周波
数の差に応じた速度で決定され、二次側の励磁周波数を
変えることにより電動機の速度を変化することができ、
この電動機速度変化に対応して一次側電力の吸収や放出
を高応答で行うことができる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術では、
交流電源１１で三相のうちの一相の欠落状態や、電源の
地絡事故などの要因により交流電源が不平寡状態になる
と、交流電源の逆相分の影響等により発生する誘起電圧
等により、回転子側の電流に図２（ａ）に示したような
高周波成分が重畳する。このような、不平衡電圧に起因
して流れる電流を電流制御で抑制する場合には、回転座
標変換した制御を行った場合でも振動成分は変換の基本
波周波数とは異なるため制御遅れに起因する位相ずれを
補償する位相補償の効果が少なく、電流制御の検出遅れ
や電流制御の伝達特性等に起因して、制御装置の指令に
基づいた周波数変換器の出力電圧と一次側の不平衡電圧
が二次側に誘起電圧として影響する電圧との間に位相差
を生じるため、電流制御の応答時定数によっては変動を
抑制できない場合や、さらに大きくしてしまう虞もあ
る。

【００１１】また、一次側に不平衡電圧が発生した場合
に、正相電圧の変動を電流の変動により検出して補償す
る場合には、電流の検出値が逆相電圧成分の影響を受け
大きく変動するので正しい正相電圧を出力することがで
きずに制御性能の低下をまねく虞がある。

【００１２】さらに、可変速発電機で不平衡電圧状況下
で運転を行う場合に、発電機の一次側の電圧の逆相成分
や正相成分の変動の影響を受け、安定した発電機出力を
維持できない虞がある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、電動機の一次側の電圧の逆相成分を検出す
る逆相検出手段と、検出した逆相成分を二次側交流部に
換算する二次換算手段と、二次側交流電圧に高周波成分
を重畳する高周波重畳手段とを備え、二次側から印加す
る交流電圧に二次換算手段により換算した電圧を誘起電
圧を打ち消すように高周波電圧として重畳する手段を備
えている。

【００１４】さらに本発明では、電動機の一次側の電圧
の正相成分を検出する手段と、二次側から印加する可変
周波数の交流電圧の位相と大きさを任意に変更すること
ができる交流電圧印加手段とを備え、二次側から印加す
る可変周波数の交流電圧の位相と大きさを検出した一次
側電圧の正相成分に一致するように調整する調整手段を
備えている。

【００１５】本発明は、電動機の一次側の電圧の逆相成
分を検出し、この逆相成分を二次側交流部の電圧に換算
し、二次側交流電圧基本波に高周波成分を重畳するので
電流検出等の遅れによる位相遅れなしに逆相成分による
誘起電圧分を補償するので、一次電圧の逆相成分の影響
を最小に押さえることができる。

【００１６】さらに本発明は、電動機の一次側の電圧の
正相成分を検出し、二次側から印加する可変周波数の交
流電圧の位相と大きさを検出した一次側電圧の正相成分
を一致するように調整するので、逆相成分の影響を受け
た状態でも確実に一次電圧の正相成分を対応する基本波
電圧を出力することができ安定した運転を継続すること
ができる。

【００１７】さらに本発明によれば、電動機の一次側に
電圧の逆相成分が存在する不平衡電圧のもとでも正確な
基本波の出力や電圧の逆相分補償を行える制御により発
電機を駆動するので、電力系統の地絡事故発生時等の、
不平衡電圧のもとでも安定した発電が行える。

【００１８】

【発明の実施の形態】本発明の実施例について図１を用
いて説明する。図１は本発明の一実施例による電動機制
御装置のブロック図である。

【００１９】本発明では、逆相成分検出器１を備えてお
り、これにより発電機電圧の逆相成分の電圧ベクトルを
検出して出力するとともに、検出した電圧ベクトルの振
幅を求めて出力する。また、逆相電圧位相検出器１５は
検出した電圧ベクトルより逆相電圧成分の位相Ｐｎを検
出する。これらの検出は、電源電圧逆方向に回転するベ
クトルの正弦項及び余弦項を用いたフーリエ変換等によ
り検出することができる。

【００２０】数１から正相電圧成分及び逆相電圧成分の
ベクトルの位相変化関係を示すと数２及び数３になる。

【００２１】

【数２】 ωｓｔ＝（ωｖ＋Ｐｖ０−ωｒ）ｔ …（数２）

【００２２】

【数３】 ωｎｓｔ＝（ωｎ＋Ｐｎ０−ωｒ）ｔ …（数３） ここでωは角速度を示しており、添字ｓはすべり位相、
ｖは正相電圧位相、ｒは回転位相、ｎは逆相電圧位相、
ｎｓは逆相電圧すべり位相に関するものであることを示
す。また、Ｐｖ０，Ｐｎ０は固定値であり正相電圧位相
と回転子側からの誘起電圧の間の位相ずれ分を示してい
る。今数２及び数３で逆相電圧成分は正相電圧成分と同
じ周波数で逆方向に回転する電圧ベクトルであることを
考慮して数３は数４と置き換えることができる。

【００２３】

【数４】 ωｎｓｔ＝(−ωｖ＋Ｐｎ０−ωｒ)ｔ …（数４） 数２でωｖとωｒが同一方向の回転であるので電動機が
同期速度近くで運転する場合（ωｖ＝ωｒ）、回転子側
からみた場合、電圧の正相成分は図２（ｂ）に示すよう
な非常に低い周波数の電圧となるが、逆相成分は電源電
圧の周波数のほぼ２倍の周波数で回転する成分となる。
この様子を図２（ｃ）に示す。交流電源の不平衡時など
に電動機回転子側の誘起電圧はこれらの成分の和とな
り、図２（ａ）のようになる。

【００２４】二次励磁電動機の場合回転子側に発生する
誘起電圧の大きさはすべり周波数にほぼ比例するので、
電圧の正相成分に対応する誘起電圧Ｖ１は数５、逆相電
圧に対応する誘起電圧Ｖ２は数６に示すようになる。

【００２５】

【数５】

【００２６】

【数６】

【００２７】ここで、Ｖは固定子電圧の正相成分、Ｖｎ
は固定子電圧の逆相成分の振幅を表す。

【００２８】二次誘起電圧換算器２は数６に従って電圧
の逆相成分に対応する誘起電圧を検出する。また、補償
電圧発生器３は電圧換算器２で検出した誘起電圧を打ち
消すような周波数変換器８への電圧指令を作成する。補
償位相検出器１６はすべり位相Ｐｓと逆相電圧位相Ｐｎ
から数７に従って逆相電圧成分の回転子側での位相を検
出する。

【００２９】

【数７】 Ｐｎｓ＝Ｐｎ−Ｐｒ …（数７） 三相変換器４は得られた逆相補償電圧を三相に振り分け
電圧指令補正値を作成する。

【００３０】本実施例によれば固定子側の電圧検出値か
ら回転子側に発生する誘起電圧成分を検出し、誘起電圧
による電流が流れ始める前に補償することができるの
で、位相遅れなく逆相成分の影響を除去することができ
る。

【００３１】次に図３を用いて本発明の他の実施例につ
いて説明する。図３は本発明の一実施例による電動機制
御装置のブロック図である。

【００３２】本実施例では図１に加えて数５から得られ
る基本波成分、すなわち正相電圧に対する誘起電圧成分
も検出して、これに対応する補償電圧を出力する。さら
に詳しく説明すると、正相成分検出器３１で数５に示す
Ｖを検出する。検出の方法は電源電圧同一方向に回転す
るベクトルの正接項及び余弦項を用いたフーリエ変換等
により検出することができる。二次電圧換算器は数５に
従って誘起電圧を検出し、さらに基本波電圧発生器で正
相電圧に対する誘起電圧成分補償量を作成し、三相変換
器４ですべり位相Ｐｓの三相電圧に分解して電圧指令補
償量を作成する。

【００３３】本実施例によれば、固定子側の交流電圧の
振幅や位相の急変時にその影響が回転子電流に現れる前
に検出することができ、前もった補償をかけることがで
きるので、交流電源の変動に強い電動機の制御装置を構
成することができる。

【００３４】次に図５を用いて本発明の一実施例に関わ
る逆相成分検出器について説明する。図５は逆相成分検
出器１のブロック図である。

【００３５】正弦波発信器５１は電源電圧と逆向きに回
転するベクトルの正弦項ＳＩＮ及び余弦項ＣＯＳを作成
する。検出された三相の電圧Ｖｕ，Ｖｖ，Ｖｗは乗算器
５３で正弦項ＳＩＮ及び余弦項ＣＯＳに乗算される。そ
して乗算結果を一周期積分器５２で積分すると、Ｖｕ，
Ｖｖ，Ｖｗそれぞれの電圧ベクトルが検出される。電圧
ベクトル検出器５４は、検出した各相の電圧ベクトルを
回転して同一位相に変換してベクトル和を求め余弦項軸
電圧成分ＶＲ及び正弦項軸電圧成分ＶＭを求める。逆相
電圧振幅検出器５５は数８に基づいて逆相成分電圧振幅
Ｖ２を検出し、また位相検出器１５は数９に基づいて逆
相位相Ｐｎを検出する。ここで検出されたＰｎは正弦波
発信器５１の余弦項ＣＯＳとのずれ分として検出され
る。

【００３６】

【数８】

【００３７】

【数９】

【００３８】このようにして検出したＶＲ，ＶＭはフー
リエ変換の数１０及び数１１に従った周波数ω０の成分
を求めるものであり、本実施例では求める周波数を−ω
ｖの逆相成分としたものである。

【００３９】

【数１０】

【００４０】

【数１１】

【００４１】正弦波発信器５１の入力をωｖとすると全
く同様にして電圧の正相成分を求めることができる。

【００４２】

【発明の効果】本発明によれば、電動機の一次側の電圧
の逆相成分を検出する逆相検出手段と、検出した逆相成
分を二次側交流部に換算する二次換算手段と、二次側交
流電圧に高周波成分を重畳する高周波重畳手段を備え、
二次側から印加する交流電圧に二次換算手段により換算
した電圧を高周波電圧として重畳する手段を備えてお
り、電流検出等の遅れによる位相遅れなしに逆相成分に
よる誘起電圧分を補償するので、一次電圧の逆相成分の
影響を最小に押さえることができ、交流電圧の不平衡時
でも安定した運転を継続することができる。

【００４３】さらに本発明によれば、電動機の一次側の
電圧の正相成分を検出し、二次側から印加する可変周波
数の交流電圧の位相と大きさを検出した一次側電圧の正
相成分に一致するように調整するので、逆相成分の影響
を受けた状態でも確実に一次電圧の正相成分に対応する
基本波電圧を出力できるので、不平衡電圧が発生した場
合でも安定した出力を得ることができる。

【００４４】さらに本発明によれば、電動機の一次側に
電圧の逆相成分が存在する不平衡電圧の元でも正確な基
本波の出力や電圧の逆相分補償を行える制御により発電
機を駆動するので、電力系統の地絡事故発生時等の、不
平衡電圧の下でも安定した発電が行える。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例における電動機制御装置のブ
ロック図。

【図２】本発明の一実施例の原理の説明図。

【図３】本発明の一実施例の電動機制御装置のブロック
図。

【図４】従来の技術による電動機制御装置のブロック
図。

【図５】本発明の一実施例における逆相成分検出器のブ
ロック図。

【符号の説明】

１…逆相成分検出器、２…二次誘起電圧換算器、３…補
償電圧発生器、４…三相変換器、５…電流検出器、６…
電流制御器、７…電圧検出器、９…電動機、１０…変圧
器、１１…交流電源。

フロントページの続き (72)発明者 本部 光幸 茨城県日立市大みか町七丁目２番１号 株 式会社日立製作所電力・電機開発本部内 (72)発明者 樋口 幹祐 茨城県日立市幸町三丁目１番１号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】電動機の一次側を交流に接続し、二次側か
   ら可変周波数の交流電圧を印加して一次側の交流周波数
   と二次側の交流周波数の差に応じた周波数で電動機を回
   転させるものにおいて、一次側の電圧の逆相成分を検出
   する逆相検出手段と、検出した逆相成分を二次側交流部
   に換算する二次換算手段と、二次側交流電圧に高周波成
   分を重畳する高周波重畳手段を備え、二次側から印加す
   る交流電圧に二次換算手段により換算した電圧を高周波
   電圧として重畳することを特徴とする電動機の制御装
   置。
2. 【請求項２】請求項１において、交流の過去の一周期ま
   たは半周期分の検出電圧を用いて、電圧の逆相成分の位
   相と大きさを検出する逆相検出手段を備えた電動機の制
   御装置。
3. 【請求項３】請求項１または請求項２において、電動機
   の一次側の電圧の正相成分を検出する手段と、二次側か
   ら印加する可変周波数の交流電圧の位相と大きさを任意
   に変更することができる交流電圧印加手段を備え、二次
   側から印加する可変周波数の交流電圧の位相と大きさを
   検出した一次側電圧の正相成分に一致するように調整す
   る調整手段を備えた電動機の制御装置。
4. 【請求項４】電動機の一次側を交流に接続し、二次側か
   ら可変周波数の交流電圧を印加して前記一次側の交流周
   波数と前記二次側の交流周波数の差に応じた周波数で電
   動機を回転させるものにおいて、前記一次側の電圧の正
   相成分を検出する正相逆相検出手段と、検出した正相成
   分を前記二次側交流部に換算する二次換算手段を備え、
   前記二次側から印加する交流電圧に前記二次換算手段に
   より換算した電圧を重畳することを特徴とする電動機の
   制御装置。
5. 【請求項５】請求項１，２または３の前記制御装置によ
   り駆動する可変速発電機。