JPH1038467A - 浮揚溶解装置とその運転方法 - Google Patents

浮揚溶解装置とその運転方法

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JPH1038467A
JPH1038467A JP19379496A JP19379496A JPH1038467A JP H1038467 A JPH1038467 A JP H1038467A JP 19379496 A JP19379496 A JP 19379496A JP 19379496 A JP19379496 A JP 19379496A JP H1038467 A JPH1038467 A JP H1038467A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】全溶解期に渡って投入電力を自動制御する。 【解決手段】被溶解金属の物性値、被溶解金属の材料形
状、溶解重量、溶解温度、および出湯量を設定する運転
条件設定手段を設け、交流電源の電力、誘導コイル端子
電圧およびコイル電流を計測する計測器を設けるととも
に、前記計測器の出力を取り込みそれらの変化からるつ
ぼ内の状況を監視し、かつ運転条件設定値から誘導して
投入電力を制御するようにした制御装置5を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、投入電力を自動
制御するようにした浮揚溶解装置とその運転方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】浮揚溶解装置は、るつぼの外周側に巻か
れた誘導コイルによってるつぼ内の溶湯と、良導電金属
製のるつぼとに誘導電流を発生させ、溶湯とるつぼとの
誘導電流が互いに逆向きであることから電磁反発力が発
生するので、この反発力で溶湯を浮揚させて、るつぼと
溶湯とが非接触の状態で溶解する装置である。溶解時に
他の物と接触しないために異物の混入が極めて少ないこ
と、融点の高い材料でも溶解が可能であること、熱伝導
損失が小さいこと、などの特徴があることから、高融点
でしかも高純度が要求される材料、例えば、チタン、シ
リコン等の溶解に用いられる。
【0003】溶湯を浮揚させるためには、溶湯の重力以
上の浮揚力(電磁反発力)を発生させれば良いことにな
るが、過度に浮揚力を発生させると溶湯がるつぼ内で激
しく運動して安定性を欠きるつぼと溶湯とが非接触の状
態を保てない恐れがある。そのために、溶湯の重力とそ
れに与える浮揚力とは適度にバランスさせなければなら
ない。しかし、溶湯に加わる浮揚力は被溶解金属の材質
や湯の温度、不純物の有無、ノロの量、被溶解金属が合
金の場合はその成分比等に影響されるので溶解中も電源
の微調整が必要である。
【0004】廃棄物の溶解、またはロット毎に異なる金
種の溶解、それらの量、および材料形状、ならびに成分
が異なる場合は溶解、および出湯に要する時間が溶解毎
に異なる。また、出湯時るつぼ内の溶湯量は数g〜数k
g/secで変化するが、安定した出湯を継続するため
には残りの溶湯重量に見合うよに浮揚力を調整しなけれ
ばならない。
【0005】図6は従来例の構成図を示す。この図6に
おいて、1は有底の円筒状に形成され円筒状部に放射状
に略等間隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電
金属製のるつぼ、1aはるつぼ1の底部に形成された溶
湯2の流出口、3aは被溶解材に、電磁誘導によって流
れる渦電流を利用して主に溶解、加熱電力を与える上誘
導コイル、3bは被溶解材に、電磁誘導によって流れる
渦電流を利用して溶湯に浮揚力を与える下誘導コイル、
4aは上誘導コイル3aに電流を供給する交流電源,4
bは下誘導コイル3bに電流を供給する交流電源を示
す。上記の構成で、るつぼ1は電気的に絶縁された2つ
以上のセグメントを誘導コイル3a,3bの内側に並べ
て構成される。このるつぼ1内に被溶解材料が入れられ
ており、誘導コイル3a,3bで発生する磁束はセグメ
ント間のスリットの隙間からるつぼ内に進入して被溶解
材料と鎖交する。るつぼ1を構成するセグメントは溶け
ないように水冷されている。
【0006】誘導コイル3a,3bの電流は、電気的に
絶縁されたそれぞれのセグメントに渦電流を誘導すると
ともに、被溶解材料にも渦電流を誘導する。このるつぼ
1と被溶解材料とに流れる渦電流の方向は対向する表面
部分では互いに逆方向を向いているので磁気的に反発力
となり、るつぼ1は固定されているので被溶解材料には
浮揚力が働きこの浮揚力が被溶解材料の重量より大きけ
れば被溶解材料はるつぼ1から離れて浮揚する。被溶解
材料は抵抗損により熱を発生して加熱しつづける。この
ために被溶解材料は浮揚状態で溶解する。ここで被溶解
材料はるつぼ1への接触を防ぐために、るつぼ1の中央
部分に安定して位置することが望ましい。このるつぼ1
内で安定して浮揚させるために、るつぼ底部になるほで
被溶解材料の重量に対抗するるつぼ1からの電磁反発力
を大きくする必要がある。この電磁反発力をるつぼ底部
で大きくするために、るつぼ底部に巻かれた下誘導コイ
ル3bには上誘導コイル3aに比べて大きい浮揚力が得
られるように低い周波数の交流電源4bから電流を供給
し、上誘導コイル3aには被溶解材料を溶解する高周波
電流を別の交流電源4aから供給することが行われてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の構成
では、被溶解金属の溶解から出湯までの溶解作業の際
に、運転電力は被溶解金属の溶解状態や溶湯の安定性を
目視により観察しながら調整していた。しかし、出湯時
るつぼ内の溶湯量は数g〜数kg/secで変化する
が、これに対し安定した出湯を継続するための残りの溶
湯重量に見合うよに浮揚力の調整、種類の異なる被溶解
金属の材質や湯の温度、不純物の有無、ノロの量、被溶
解金属が合金の場合等その都度被溶解金属に見合う溶解
電力、および浮揚力を調整するのは熟練を要する作業で
ある。
【0008】この発明は上記課題を解決するためになさ
れたもので、その目的とするところは、全溶解期に渡っ
て投入電力の調整を自動制御できる浮揚溶解装置とその
運転方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明によ
れば、有底の円筒状に形成されその底部に形成された溶
湯を出す流出口および円筒状部に放射状に略等間隔で設
けられた縦長のスリットを有する良導電金属製のるつぼ
と、るつぼの外径側に設けられた誘導コイルと、誘導コ
イルに高周波電流を供給する交流電源とを備え、被溶解
材料をるつぼ内で浮揚させて溶解する浮揚溶解装置にお
いて、被溶解金属の物性値(例えば、融点、比熱、融解
熱、抵抗率、密度)、被溶解金属の材料形状、溶解重
量、溶解温度、および出湯量等を設定する運転条件設定
手段と、交流電源の電力または誘導コイル端子電圧また
はコイル電流を計測する計測器と、前記計測器の出力を
取り込みそれらの変化からるつぼ内の状況を監視し、か
つ運転条件設定値から誘導して投入電力を制御するよう
にした制御装置とを設けた浮揚溶解装置とする。
【0010】上記構成により、るつぼは水冷された金属
製であるからるつぼの形状が変わることは無く、溶湯と
の関係位置も浮揚状態が安定した運転状態では略同じに
保たれている。従って、同じ溶解金属で形状、および溶
解重量が同じ物を繰り返し溶解する場合は、交流電源の
出力側の電気諸元の変化は再現性が高く制御がし易い。
ここで、誘導コイル端子から見た浮揚溶解装置のインダ
クタンス値に注目する。水冷るつぼにはスリットが入っ
ており、誘導コイルからの磁束はスリットよりるつぼ中
に侵入してくる。その際、るつぼ中に金属が存在し、し
かもその金属が一体化してるつぼの形状に近い形状(金
属が完全溶解している状態、またはるつぼ内で固化した
ものを再溶解する状態)の場合誘導コイルからの磁束は
金属の中へは殆ど侵入しないので磁束の漏洩が少ない
(金属に誘導電流が生じる部分と誘導コイルとの結合が
密である)。この場合のインダクタンス値は小さくな
る。これは互いに反対向きの電流が流れる往復導体間の
距離が小さくなると往復導体全体でのインダクタンス値
が小さくなるのと同じ現象である。
【0011】なお、るつぼ内が空の場合は磁束はるつぼ
内に侵入するので磁束の漏洩が大きくなりインダクタン
ス値が大きくなる。また、小さな塊の金属がるつぼ内に
充満している場合は塊間に隙間があるので磁束はるつぼ
内に侵入するがるつぼ内が空の場合よりは少ない。次
に、誘導コイル端子から見た浮揚溶解装置の抵抗値に注
目する。被溶解金属の抵抗値Rは、その金属の基準温度
0 のときの抵抗率がρ0 で温度係数をbとするとこの
金属の表面温度がT1 のときの抵抗率ρ1
【0012】
【数1】ρ1 =ρ0 +b×(T1 −T0
【0013】
【数2】R=ρ1 ×L/s となる。但し、Lは電流経路の長さを、sは電流が流れ
る領域の断面積を示す。この被溶解金属の抵抗値Rを誘
導コイル側に換算して等価抵抗値Re とする場合等価抵
抗値Re は被溶解金属と誘導コイルとの結合状態により
異なった値になる。この結合状態を被溶解金属の抵抗値
R×結合係数=等価抵抗値Re とすると、小さな塊の金
属がるつぼ内に充満している状態から溶解を始める場合
は、溶解初期は結合係数は小さく、完全溶解で結合係数
は最大になり、出湯で湯量が減少するに従って結合係数
は減少する。
【0014】温度係数bは温度依存性があり一定値では
ないが金属の場合は温度が上昇するに従って抵抗率ρ1
は増加するので被溶解金属の抵抗値も温度が上昇するに
従って増加する。例えば、チタンの場合、抵抗率ρ1
20℃で55μΩであり、1685℃(融点)では17
2μΩである。前記のインダクタンス値と等価抵抗値R
e とを纏めて表1に示す。
【0015】
【表1】 浮揚溶解装置に電力Pが投入される場合,誘導コイルの
電流をIとし、誘導コイルの抵抗をRc ,るつぼの誘導
コイル側に換算された抵抗をRceとすると、
【0016】
【数3】P=I2 ×(Rc +Rce+Re ) となる。上式中でコイルが水冷されており殆ど温度変化
が無いことから誘導コイルの抵抗Rc は一定値になる。
さらに、るつぼの誘導コイル側に換算された抵抗Rce
るつぼと誘導コイルとの関係位置が変わらないこと、る
つぼが水冷されていることから一定値になる。
【0017】従って、浮揚溶解装置の電力Pを一定にす
れば等価抵抗値Re が大きくなれば(結合係数が大き
く、かつ被溶解金属の温度が高い)その分コイル電流I
は小さくなる。このことは結合係数が大きく、かつ被溶
解金属の温度が高い場合(完全溶解時)は誘導コイル、
およびるつぼで消費する電力は減少し、その分溶湯に入
る電力が増加することを示す。
【0018】また、誘導コイルの端子電圧V,および共
振周波数fは、
【0019】
【数4】V=2πfLi
【0020】
【数5】f=1/(2π(Li C)1/2 ) 但し、Li は誘導コイルのインダクタンス、Iは誘導コ
イルの電流、Cは共振コンデンサの容量を表す。誘導コ
イルの端子電圧Vの式に共振周波数fを代入すれば、共
振コンデンサの容量Cは既知であるので、誘導コイルの
端子電圧Vと誘導コイルの電流Iを測定することにより
誘導コイルのインダクタンスを求めることが可能にな
る。
【0021】上記のインダクタンスを一定の周期で求め
てその変化をチェックすることにより表1に示すように
溶解の状態を監視することが可能になる。請求項2記載
の発明によれば、被溶解金属の物性値、被溶解金属の材
料形状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等を設定
し、それらの設定値から溶解および/または出湯の運転
パターンを決定し、初回の材料を投入して運転し、投入
材料が溶け落ちる前に次回投入材料を追加し全材料が投
入されるまで初回材料投入時電力を維持し、全投入材料
がほぼ溶解した後投入電力を予め被溶解金属の物性値か
ら求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、出湯温度を
計測し、出湯可能状態で出湯し、出湯状況を監視してそ
の状況に応じて自動的に投入電力量を制御するようにし
た浮揚溶解装置の運転方法とする。
【0022】始めに運転パターンを説明する。運転パタ
ーンを決める基本モデルは各溶解段階により〜の4
段階に区分できる。 材料投入時;その材料に投入可能な許容最大電力を投
入する。 全材料が投入完了して最後に投入した材料が例えば8
0%溶け落ちるまでの間;溶湯の上に未溶解材料が蓋を
被せた状態になっている間は溶湯のあばれは未溶解材料
で抑えられるので許容最大電力が投入できる。その後、
溶湯が安定する電力になるように順次電力を逓減して完
全溶解での溶湯安定電力にする。 完全に溶解した後安定して浮揚し出湯温度にまで昇温
する間;安定した浮揚状態が保てる溶湯安定電力を投入
する。 出湯開始から出湯完了までの間;湯量が減少するに従
って溶湯が安定するように電力を逓減する。
【0023】上記の中で完全に溶解した後安定して浮
揚し出湯温度にまで昇温する間に投入する電力は溶湯量
がその浮揚溶解装置で溶解できる定格湯量の場合、溶湯
の抵抗率、および密度から予め電磁解析により求められ
る。従って、異なる抵抗率、および密度に対する投入電
力を求めてデータテーブルを作成しておけば、種々のケ
ースに対して略合致する投入電力を求められる。
【0024】また、溶解重量が異なる場合のの投入電
力は、上記の定格湯量の場合の解析から順次湯量を逓減
した状態で予め電磁解析により求めて減少した湯量とそ
のときの投入電力を定格値との比率にしてデータテーブ
ルを作成しておけば、補間法を用いて種々のケースに対
して略合致する投入電力を求められる。 材料投入時の投入電力は、るつぼが略充満するように
(例えば、定格容量の1/5の材料)小塊の材料を投入
して浮揚溶解装置が許容できる最大電力(電源の定格出
力を越えない範囲)を投入し、その許容最大電力で被溶
解金属が例えば略80%溶け落ちるまで継続する。
【0025】の材料が例えば略80%溶け落ちた時
点で残りの材料を数回に分けた一回分を投入し、その一
回分の被溶解金属が例えば略80%溶け落ちた時点で順
次次回分を投入し、全材料が投入完了してから最後に投
入した材料が例えば略80%溶け落ちるまでの許容最
大電力を維持して、その後はの投入電力にする。な
お、投入材料が例えば、80%溶解するまでの時間は、
予め溶解材料の物性値(融点までの過熱エネルギ、融解
潜熱、溶け落ち後の昇温エネルギ、比重、抵抗率)、お
よび溶解量を制御装置に入力しておき、そのデータから
の熱計算と、前記〜の投入電力から概略値を求めて
使用することができる。
【0026】上記で説明した運転パターンと交流電源の
出力値から求めた溶解状態の監視とを併用して、かつ、
出湯温度を計測して出湯可能時点を求めることにより、
自動運転が可能になる。請求項3記載の発明によれば、
請求項2に記載の運転方法において、溶解初期の周波数
が徐々に上昇して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容
最大電力を投入し、その後溶け落ち完了後の溶湯安定電
力を投入し、出湯時は周波数の低下に従って投入電力を
逓減する、電力制御をするようにした浮揚溶解装置の運
転方法とする。
【0027】上記構成により請求項1で説明したように
インダクタンを求める代わりに運転周波数fを測定すれ
ばその周波数はインダクタンの平方根に反比例するので
周波数の変化を追跡すれば溶解の状態を監視することが
可能になる。請求項4記載の発明によれば、請求項2に
記載の運転方法において、溶解初期の電流が徐々に減少
して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投
入し、その後溶け落ち完了後の溶湯安定電力を投入し、
出湯時は電流の増加に従って投入電力を逓減する、電力
制御をするようにした浮揚溶解装置の運転方法とする。
【0028】請求項5記載の発明によれば、請求項2に
記載の運転方法において、溶解初期の誘導コイルの端子
電圧が徐々に減少して略一定になるまで浮揚溶解装置の
許容最大電力を投入し、その後溶け落ち完了後の溶湯安
定電力を投入し、出湯時は電流の増加に従って投入電力
を逓減する、電力制御をするようにした浮揚溶解装置の
運転方法とする。
【0029】請求項4および請求項5の構成により、誘
導コイルの電流と端子電圧に注目する。表1に電力一定
で運転する条件を付加すると、誘導コイルの電流Iは被
溶解金属の等価抵抗値Re の平方根に略反比例するので
表2が得られる。また誘導コイルの端子電圧はインダク
タンス値Li と誘導コイルの電流Iの積に比例する。
【0030】従って表2に示すように、誘導コイルの電
流と端子電圧は溶解状態により変化するので、その変化
を追跡すれば溶解状態を監視することが可能になる。
【0031】
【表2】 請求項6記載の発明によれば、請求項2に記載の運転方
法において、水冷銅るつぼの冷却水温度が徐々に上昇し
て略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入
し、その後溶け落ち完了後の溶湯安定電力を投入し、出
湯時は水冷銅るつぼの冷却水温度の増加に従って投入電
力を逓減する、電力制御をするようにした浮揚溶解装置
の運転方法とする。
【0032】請求項7記載の発明によれば、請求項2に
記載の運転方法において、誘導コイルの冷却水温度が徐
々に減少して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大
電力を投入し、その後溶け落ち完了後の溶湯安定電力を
投入し、出湯時は誘導コイルの冷却水温度の増加に従っ
て投入電力を逓減する、電力制御をするようにした浮揚
溶解装置の運転方法とする。
【0033】請求項6、および請求項7の構成によれ
ば、冷却水温の変化はるつぼ、または誘導コイルでの発
熱量に比例し、その発熱量はるつぼ、または誘導コイル
の抵抗値が殆ど変化しないことから誘導コイル電流の2
乗に比例するので、冷却水温の変化を追跡すれば溶解状
態を監視することが可能になる。
【0034】
【発明の実施の形態】図1はこの発明の実施の形態の主
要部の構成図を示す。この図1において、従来例と同一
の符号を付けた部材はおおよそ同一の機能を有するので
その説明は省略する。この図1において、1は有底の円
筒状に形成され円筒状部に放射状に略等間隔で設けられ
た縦長のスリット1bを有する良導電金属製のるつぼ、
1aはるつぼ1の底部に形成された溶湯2の流出口、3
aは電磁誘導によって流れる渦電流を利用して溶湯2に
主に溶解、加熱電力を与える上誘導コイル、3bは電磁
誘導によって流れる渦電流を利用して溶湯2に浮揚力を
与える下誘導コイル、4aは上誘導コイル3aに電流を
供給する交流電源,4bは下誘導コイル3bに電流を供
給する交流電源を示す。
【0035】また、Vは高圧プローブ等を使用した誘導
コイル3a,3bの端子電圧測定器、Aは変流器を介し
て誘導コイル3a,3bの電流を測定する電流測定器、
5は端子電圧測定器V,電流測定器Aの出力を取り込み
誘導コイル3a,3bのインダクタスを求めインダクタ
ス、または端子電圧、コイル電流の変化を用いて誘導コ
イル3a,3bに投入する電力を制御する制御装置を示
す。
【0036】上記の構成で、るつぼ1は電気的に絶縁さ
れた2つ以上のセグメントを誘導コイル3a,3bの内
側に並べて構成される。このるつぼ1内に被溶解材料が
入れられており、誘導コイル3a,3bで発生する磁束
はセグメント間のスリットの隙間からるつぼ内に進入し
て被溶解材料と鎖交する。るつぼ1を構成するセグメン
トは溶けないように水冷されている。
【0037】誘導コイル3a,3bの電流は、電気的に
絶縁されたそれぞれのセグメント1cに渦電流を誘導す
るとともに、被溶解材料にも渦電流を誘導する。このる
つぼ1と被溶解材料とに流れる渦電流の方向は対向する
表面部分では互いに逆方向を向いているので磁気的に反
発力となり、るつぼ1は固定されているので被溶解材料
には浮揚力が働きこの浮揚力が被溶解材料の重量より大
きければ被溶解材料はるつぼ1から離れて浮揚する。被
溶解材料は抵抗損により熱を発生して加熱しつづける。
このために被溶解材料は浮揚状態で溶解する。ここで被
溶解材料はるつぼ1への接触を防ぐために、るつぼ1の
中央部分に安定して位置することが望ましい。このるつ
ぼ1内で安定して浮揚させるために、るつぼ底部になる
ほで被溶解材料の重量に対抗するるつぼ1からの電磁反
発力を大きくする必要がある。この電磁反発力をるつぼ
底部で大きくするために、るつぼ底部に巻かれた下誘導
コイル3bには上誘導コイル3aに比べて大きい浮揚力
が得られるように低い周波数の交流電源4bから電流を
供給し、上誘導コイル3aには被溶解材料を溶解する高
周波電流が別の交流電源4aから供給されることが行わ
れている。
【0038】また、上記の構成では、誘導コイル3a,
3bの端子電圧V,およびコイル電流Aを測定して制御
装置5に取り込み、誘導コイル3a,3bのインダクタ
ンスを求めると共に求めたインダクタス、または端子電
圧、コイル電流の変化を用いてるつぼ1内の状況を監視
するとともに、出湯時の誘導コイル3a,3bに投入す
る電力を制御するようにしている。
【0039】制御装置5は、被溶解金属の物性値(例え
ば、融点、比熱、融解熱、抵抗率、密度)、被溶解金属
の材料形状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等の運
転条件設定が例えばキーボードから設定できるようにな
っており、その設定値を使って内部で運転パターンおよ
び溶湯安定電力が求められ、運転パターンおよび溶湯安
定電力と、インダクタスまたは端子電圧、コイル電流の
変化を用いたるつぼ1内の状況の監視とを併用して浮揚
溶解装置の投入電力を自動制御する。
【0040】有底の円筒状に形成され円筒状部に放射状
に略等間隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電
金属製のるつぼ1のインダクタンスの変化は、るつぼ1
のスリットからるつぼ1内に侵入する磁束がるつぼ1内
の溶解金属の状態により変化することに起因している。
図2はるつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束と
の関係を示し、(a)は溶湯がほぼ定格湯量の状態の磁
束分布図、(b)はるつぼ内に被溶解金属の小塊が投入
された状態の磁束分布図、(c)はるつぼ内に被溶解金
属が存在しない状態の磁束分布図をしめす。この図2に
おいて、(a)は溶湯がほぼ定格湯量で一体化した状態
でありるつぼ1内に侵入する磁束は殆ど溶湯2内には侵
入できないので誘導コイル3により発生する磁束6のる
つぼ1内での漏洩磁束は少ない。
【0041】そのために誘導コイル3から見たインダク
タンスは最小になる。(b)はるつぼ1内に被溶解金属
の小塊が投入された状態を示す。この状態では被溶解金
属の小塊間に隙間があり(a)に比べてるつぼ1内に侵
入する磁束6が増加するのでそれに伴い誘導コイル3か
ら見たインダクタンスは増加する。(c)はるつぼ1内
に被溶解金属が存在しない状態を示す。この状態ではる
つぼ1内に侵入する磁束6は最大になりそれに伴い誘導
コイル3から見たインダクタンスは最大になる。
【0042】また、図3はるつぼ内の溶解金属とるつぼ
内に侵入する磁束との関係を示し、(a)は出湯開始時
の磁束分布図、(b)は出湯途中の磁束分布図、(c)
は完全出湯時の磁束分布図を示す。この図3(a)〜
(c)は出湯開始からるつぼ1内の漏洩磁束6が、溶湯
量の減少に従って増加することを示しており、その漏洩
磁束6の増加に伴って誘導コイル3のインダクタンスが
増加することを示す。
【0043】図4はこの発明の別の実施の形態のフロー
チャートを示す。この図4において、浮揚溶解装置を自
動運転する際は、まず始めに運転条件設定を行う。ここ
で設定される項目は、被溶解金属の抵抗率、密度、溶解
エネルギ、材料形状(小塊か、るつぼ内径とほぼ同じ大
きさか)、溶解重量(このチャージで溶かす重量)、溶
解温度、材料形状が小塊の場合の初回投入重量、および
残りを何回に分けて投入するか、および出湯するか否か
である。また運転条件設定が完了するとその内容から運
転パターンが制御装置内で決められる。図5は材料形状
が小塊で初回投入重量が全溶解重量の20%の場合の運
転パターンの例を示す。この図5において、初回投入材
料が例えば80%溶解する時間t1 ,最終投入材料が例
えば80%溶解する時間t1 〜t2 ,全投入材料が溶解
した時間t2 〜t3 は投入材料の重量と、溶解エネルギ
と、浮揚溶解装置の概略効率とから概略値が求められ
る。
【0044】さらに、被溶解金属の抵抗率、密度、およ
び溶解重量から全投入材料が溶解された後の溶湯安定電
力が制御装置内の収納されているデータテーブルから求
められる。以上で運転条件設定の設定が終了したので、
次に材料(初回分)が投入され、通電が開始される。こ
の際の投入電力は投入材料に対して、例えば低入力から
段階的に増大させて電流リミット、電圧リミット範囲内
の浮揚溶解装置のほぼ最大許容電力に相当する電力P1
が入力される。
【0045】その後は運転パターンのタイミングに従っ
て材料が投入される。投入電力、誘導コイルの端子電
圧、コイル電流は通電開始から周期的に計測されて制御
装置に取り込まれており、投入電力P1 は一定に制御さ
れ、誘導コイルの端子電圧、コイル電流はインダクタン
スの計算に使用すると共に、それらの変化からるつぼ内
の状況を監視するのに使用される。
【0046】全材料が投入された後、最終投入材料が例
えばほぼ80%溶解した時点t2 から全材料が溶け落ち
るt3 までの間に投入電力は運転パターンに従って溶湯
安定電力P2 に逓減され、その後は溶湯安定電力P2
保持する。最終投入材料が例えばほぼ80%溶解した時
点t2 はインダクタンス、誘導コイルの端子電圧、コイ
ル電流の変化が殆ど無くなることからも推定できる。
【0047】溶湯安定電力P2 で運転中は定期的に輻射
温度計で溶湯温度を測定し出湯可能温度になれば出湯条
件(鋳型の確認、ノロ取り完了)が整いしだい出湯する
か否かの設定に従い出湯する場合はるつぼ下部の栓を開
栓して出湯する。出湯中はインダクタンス、誘導コイル
の端子電圧、コイル電流の変化に注目して投入電力を自
動的に逓減し溶湯が安定するように制御し、出湯完了で
運転を停止する。
【0048】
【発明の効果】この発明によれば、材料溶け落ちまでの
時間は概略値として求めているが出湯時点は輻射温度計
で計測して決めているので溶け落ちまでの時間に誤差が
あっても差し支えなく自動運転できる効果がある。また
インダクタンス、誘導コイルの端子電圧、コイル電流、
周波数の変化はるつぼ内の状況の監視に役立つので自動
運転の監視と溶解工程間のインターロックに使用できる
効果がある。
【0049】また投入電力を自動制御することにより、
種々の金属の溶解作業が容易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の主要部分の構成図
【図2】るつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束
との関係を示し、(a)は溶湯がほぼ定格湯量の状態の
磁束分布図、(b)はるつぼ内に被溶解金属の小塊が投
入された状態の磁束分布図、(c)はるつぼ内に被溶解
金属が存在しない状態の磁束分布図
【図3】るつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束
との関係を示し、(a)は出湯開始時の磁束分布図、
(b)は出湯途中の磁束分布図、(c)は完全出湯時の
磁束分布図
【図4】この発明の別の実施の形態のフローチャート
【図5】運転パターンの一例図
【図6】従来例の構成図
【符号の説明】
1 るつぼ 2 溶湯 3a 上誘導コイル 3b 下誘導コイル 4a 上交流電源 4b 下交流電源 5 制御装置

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有底の円筒状に形成されその底部に形成さ
    れた溶湯を出す流出口および円筒状部に放射状に略等間
    隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電金属製の
    るつぼと、るつぼの外径側に設けられた誘導コイルと、
    誘導コイルに高周波電流を供給する交流電源とを備え、
    被溶解材料をるつぼ内で浮揚させて溶解する浮揚溶解装
    置において、被溶解金属の物性値、被溶解金属の材料形
    状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等を設定する運
    転条件設定手段と、交流電源の電力または誘導コイル端
    子電圧またはコイル電流を計測する計測器と、前記計測
    器の出力を取り込みそれらの変化からるつぼ内の状況を
    監視し、かつ運転条件設定値から誘導して投入電力を制
    御するようにした制御装置とを設けたことを特徴とする
    浮揚溶解装置。
  2. 【請求項2】被溶解金属の物性値、被溶解金属の材料形
    状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等を設定し、そ
    れらの設定値から溶解および/または出湯の運転パター
    ンを決定し、初回の材料を投入して運転し、投入材料が
    溶け落ちる前に次回投入材料を追加し全材料が投入され
    るまで初回材料投入時電力を維持し、全投入材料がほぼ
    溶解した後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求め
    た溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、出湯温度を計測
    し、出湯可能状態で出湯し、出湯状況を監視してその状
    況に応じて自動的に投入電力量を制御するようにしたこ
    とを特徴とする浮揚溶解装置の運転方法。
  3. 【請求項3】請求項2に記載の運転方法において、溶解
    初期の周波数が徐々に上昇して略一定になるまで浮揚溶
    解装置の許容最大電力を投入し、その後溶け落ち完了後
    の溶湯安定電力を投入し、出湯時は周波数の低下に従っ
    て投入電力を逓減する、電力制御をするようにしたこと
    を特徴とする浮揚溶解装置の運転方法。
  4. 【請求項4】請求項2に記載の運転方法において、溶解
    初期の電流が徐々に減少して略一定になるまで浮揚溶解
    装置の許容最大電力を投入し、その後溶け落ち完了後の
    溶湯安定電力を投入し、出湯時は電流の増加に従って投
    入電力を逓減する、電力制御をするようにしたことを特
    徴とする浮揚溶解装置の運転方法。
  5. 【請求項5】請求項2に記載の運転方法において、溶解
    初期の誘導コイルの端子電圧が徐々に減少して略一定に
    なるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後
    溶け落ち完了後の溶湯安定電力を投入し、出湯時は電流
    の増加に従って投入電力を逓減する、電力制御をするよ
    うにしたことを特徴とする浮揚溶解装置の運転方法。
  6. 【請求項6】請求項2に記載の運転方法において、水冷
    銅るつぼの冷却水温度が徐々に上昇して略一定になるま
    で浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後溶け落
    ち完了後の溶湯安定電力を投入し、出湯時は水冷銅るつ
    ぼの冷却水温度の増加に従って投入電力を逓減する、電
    力制御をするようにしたことを特徴とする浮揚溶解装置
    の運転方法。
  7. 【請求項7】請求項2に記載の運転方法において、誘導
    コイルの冷却水温度が徐々に減少して略一定になるまで
    浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後溶け落ち
    完了後の溶湯安定電力を投入し、出湯時は誘導コイルの
    冷却水温度の増加に従って投入電力を逓減する、電力制
    御をするようにしたことを特徴とする浮揚溶解装置の運
    転方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015127608A (ja) * 2013-12-27 2015-07-09 シンフォニアテクノロジー株式会社 加熱溶解装置、加熱溶解システムおよび出湯制御装置

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