JP3769826B2 - 浮揚溶解装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、投入電力を自動制御するようにした浮揚溶解装置とその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
浮揚溶解装置は、るつぼの外周側に巻かれた誘導コイルによってるつぼ内の溶湯と、良導電金属製のるつぼとに誘導電流を発生させ、溶湯とるつぼとの誘導電流が互いに逆向きであることから電磁反発力が発生するので、この反発力で溶湯を浮揚させて、るつぼと溶湯とが非接触の状態で溶解する装置である。溶解時に他の物と接触しないために異物の混入が極めて少ないこと、融点の高い材料でも溶解が可能であること、熱伝導損失が小さいこと、などの特徴があることから、高融点でしかも高純度が要求される材料、例えば、チタン、シリコン等の溶解に用いられる。
【0003】
溶湯を浮揚させるためには、溶湯の重力以上の浮揚力(電磁反発力)を発生させれば良いことになるが、過度に浮揚力を発生させると溶湯がるつぼ内で激しく運動して安定性を欠きるつぼと溶湯とが非接触の状態を保てない恐れがある。
そのために、溶湯の重力とそれに与える浮揚力とは適度にバランスさせなければならない。しかし、溶湯に加わる浮揚力は被溶解金属の材質や湯の温度、不純物の有無、ノロの量、被溶解金属が合金の場合はその成分比等に影響されるので溶解中も電源の微調整が必要である。
【0004】
廃棄物の溶解、またはロット毎に異なる金種の溶解、それらの量、および材料形状、ならびに成分が異なる場合は溶解、および出湯に要する時間が溶解毎に異なる。
また、出湯時るつぼ内の溶湯量は数g〜数kg/secで変化するが、安定した出湯を継続するためには残りの溶湯重量に見合うよに浮揚力を調整しなければならない。
【0005】
図6は従来例の構成図を示す。この図6において、1は有底の円筒状に形成され円筒状部に放射状に略等間隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電金属製のるつぼ、1aはるつぼ1の底部に形成された溶湯2の流出口、3aは被溶解材に、電磁誘導によって流れる渦電流を利用して主に溶解、加熱電力を与える上誘導コイル、3bは被溶解材に、電磁誘導によって流れる渦電流を利用して溶湯に浮揚力を与える下誘導コイル、4aは上誘導コイル3aに電流を供給する交流電源,4bは下誘導コイル3bに電流を供給する交流電源を示す。上記の構成で、るつぼ1は電気的に絶縁された2つ以上のセグメントを誘導コイル3a,3bの内側に並べて構成される。このるつぼ1内に被溶解材料が入れられており、誘導コイル3a,3bで発生する磁束はセグメント間のスリットの隙間からるつぼ内に進入して被溶解材料と鎖交する。るつぼ1を構成するセグメントは溶けないように水冷されている。
【0006】
誘導コイル3a,3bの電流は、電気的に絶縁されたそれぞれのセグメントに渦電流を誘導するとともに、被溶解材料にも渦電流を誘導する。このるつぼ1と被溶解材料とに流れる渦電流の方向は対向する表面部分では互いに逆方向を向いているので磁気的に反発力となり、るつぼ1は固定されているので被溶解材料には浮揚力が働きこの浮揚力が被溶解材料の重量より大きければ被溶解材料はるつぼ1から離れて浮揚する。被溶解材料は抵抗損により熱を発生して加熱しつづける。このために被溶解材料は浮揚状態で溶解する。ここで被溶解材料はるつぼ1への接触を防ぐために、るつぼ1の中央部分に安定して位置することが望ましい。このるつぼ1内で安定して浮揚させるために、るつぼ底部になるほで被溶解材料の重量に対抗するるつぼ1からの電磁反発力を大きくする必要がある。この電磁反発力をるつぼ底部で大きくするために、るつぼ底部に巻かれた下誘導コイル3bには上誘導コイル3aに比べて大きい浮揚力が得られるように低い周波数の交流電源4bから電流を供給し、上誘導コイル3aには被溶解材料を溶解する高周波電流を別の交流電源4aから供給することが行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の構成では、被溶解金属の溶解から出湯までの溶解作業の際に、運転電力は被溶解金属の溶解状態や溶湯の安定性を目視により観察しながら調整していた。しかし、出湯時るつぼ内の溶湯量は数g〜数kg/secで変化するが、これに対し安定した出湯を継続するための残りの溶湯重量に見合うよに浮揚力の調整、種類の異なる被溶解金属の材質や湯の温度、不純物の有無、ノロの量、被溶解金属が合金の場合等その都度被溶解金属に見合う溶解電力、および浮揚力を調整するのは熟練を要する作業である。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、全溶解期に渡って投入電力の調整を自動制御できる浮揚溶解装置とその運転方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明によれば、有底の円筒状に形成されその底部に形成された溶湯を出す流出口および円筒状部に放射状に略等間隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電金属製のるつぼと、るつぼの外径側に設けられた誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を供給する交流電源とを備え、被溶解材料をるつぼ内で浮揚させて溶解する浮揚溶解装置において、被溶解金属の物性値(例えば、融点、比熱、融解熱、抵抗率、密度)、被溶解金属の材料形状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等を設定する運転条件設定手段と、計測値の変化からるつぼ内の状況を監視して投入電力を制御するようにした制御装置とを備える。
【0010】
上記構成により、るつぼは水冷された金属製であるからるつぼの形状が変わることは無く、溶湯との関係位置も浮揚状態が安定した運転状態では略同じに保たれている。従って、同じ溶解金属で形状、および溶解重量が同じ物を繰り返し溶解する場合は、交流電源の出力側の電気諸元の変化は再現性が高く制御がし易い。ここで、誘導コイル端子から見た浮揚溶解装置のインダクタンス値に注目する。水冷るつぼにはスリットが入っており、誘導コイルからの磁束はスリットよりるつぼ中に侵入してくる。その際、るつぼ中に金属が存在し、しかもその金属が一体化してるつぼの形状に近い形状(金属が完全溶解している状態、またはるつぼ内で固化したものを再溶解する状態)の場合誘導コイルからの磁束は金属の中へは殆ど侵入しないので磁束の漏洩が少ない(金属に誘導電流が生じる部分と誘導コイルとの結合が密である)。この場合のインダクタンス値は小さくなる。これは互いに反対向きの電流が流れる往復導体間の距離が小さくなると往復導体全体でのインダクタンス値が小さくなるのと同じ現象である。
【0011】
なお、るつぼ内が空の場合は磁束はるつぼ内に侵入するので磁束の漏洩が大きくなりインダクタンス値が大きくなる。また、小さな塊の金属がるつぼ内に充満している場合は塊間に隙間があるので磁束はるつぼ内に侵入するがるつぼ内が空の場合よりは少ない。
次に、誘導コイル端子から見た浮揚溶解装置の抵抗値に注目する。
被溶解金属の抵抗値Rは、その金属の基準温度T0 のときの抵抗率がρ0 で温度係数をbとするとこの金属の表面温度がT1 のときの抵抗率ρ1
【0012】
【数1】
ρ1 =ρ0 +b×(T1 −T0
【0013】
【数2】
R=ρ1 ×L/s
となる。但し、Lは電流経路の長さを、sは電流が流れる領域の断面積を示す。この被溶解金属の抵抗値Rを誘導コイル側に換算して等価抵抗値Re とする場合等価抵抗値Re は被溶解金属と誘導コイルとの結合状態により異なった値になる。この結合状態を被溶解金属の抵抗値R×結合係数=等価抵抗値Re とすると、小さな塊の金属がるつぼ内に充満している状態から溶解を始める場合は、溶解初期は結合係数は小さく、完全溶解で結合係数は最大になり、出湯で湯量が減少するに従って結合係数は減少する。
【0014】
温度係数bは温度依存性があり一定値ではないが金属の場合は温度が上昇するに従って抵抗率ρ1 は増加するので被溶解金属の抵抗値も温度が上昇するに従って増加する。例えば、チタンの場合、抵抗率ρ1 は20℃で55μΩであり、1685℃(融点)では172μΩである。
前記のインダクタンス値と等価抵抗値Re とを纏めて表1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0003769826
浮揚溶解装置に電力Pが投入される場合,誘導コイルの電流をIとし、誘導コイルの抵抗をRc ,るつぼの誘導コイル側に換算された抵抗をRceとすると、
【0016】
【数3】
P=I2 ×(Rc +Rce+Re
となる。上式中でコイルが水冷されており殆ど温度変化が無いことから誘導コイルの抵抗Rc は一定値になる。さらに、るつぼの誘導コイル側に換算された抵抗Rceはるつぼと誘導コイルとの関係位置が変わらないこと、るつぼが水冷されていることから一定値になる。
【0017】
従って、浮揚溶解装置の電力Pを一定にすれば等価抵抗値Re が大きくなれば(結合係数が大きく、かつ被溶解金属の温度が高い)その分コイル電流Iは小さくなる。このことは結合係数が大きく、かつ被溶解金属の温度が高い場合(完全溶解時)は誘導コイル、およびるつぼで消費する電力は減少し、その分溶湯に入る電力が増加することを示す。
【0018】
また、誘導コイルの端子電圧V,および共振周波数fは、
【0019】
【数4】
V=2πfLi
【0020】
【数5】
f=1/(2π(Li C)1/2
但し、Li は誘導コイルのインダクタンス、Iは誘導コイルの電流、Cは共振コンデンサの容量を表す。
誘導コイルの端子電圧Vの式に共振周波数fを代入すれば、共振コンデンサの容量Cは既知であるので、誘導コイルの端子電圧Vと誘導コイルの電流Iを測定することにより誘導コイルのインダクタンスを求めることが可能になる。
【0021】
上記のインダクタンスを一定の周期で求めてその変化をチェックすることにより表1に示すように溶解の状態を監視することが可能になる。
【0022】
始めに運転パターンを説明する。運転パターンを決める基本モデルは各溶解段階により▲1▼〜▲4▼の4段階に区分できる。
▲1▼材料投入時;その材料に投入可能な許容最大電力を投入する。
▲2▼全材料が投入完了して最後に投入した材料が例えば80%溶け落ちるまでの間;溶湯の上に未溶解材料が蓋を被せた状態になっている間は溶湯のあばれは未溶解材料で抑えられるので許容最大電力が投入できる。その後、溶湯が安定する電力になるように順次電力を逓減して完全溶解で▲3▼の溶湯安定電力にする。
▲3▼完全に溶解した後安定して浮揚し出湯温度にまで昇温する間;安定した浮揚状態が保てる溶湯安定電力を投入する。
▲4▼出湯開始から出湯完了までの間;湯量が減少するに従って溶湯が安定するように電力を逓減する。
【0023】
上記の中で▲3▼完全に溶解した後安定して浮揚し出湯温度にまで昇温する間に投入する電力は溶湯量がその浮揚溶解装置で溶解できる定格湯量の場合、溶湯の抵抗率、および密度から予め電磁解析により求められる。従って、異なる抵抗率、および密度に対する投入電力を求めてデータテーブルを作成しておけば、種々のケースに対して略合致する投入電力を求められる。
【0024】
また、溶解重量が異なる場合の▲3▼の投入電力は、上記の定格湯量の場合の解析から順次湯量を逓減した状態で予め電磁解析により求めて減少した湯量とそのときの投入電力を定格値との比率にしてデータテーブルを作成しておけば、補間法を用いて種々のケースに対して略合致する投入電力を求められる。
▲1▼材料投入時の投入電力は、るつぼが略充満するように(例えば、定格容量の1/5の材料)小塊の材料を投入して浮揚溶解装置が許容できる最大電力(電源の定格出力を越えない範囲)を投入し、その許容最大電力で被溶解金属が例えば略80%溶け落ちるまで継続する。
【0025】
▲2▼▲1▼の材料が例えば略80%溶け落ちた時点で残りの材料を数回に分けた一回分を投入し、その一回分の被溶解金属が例えば略80%溶け落ちた時点で順次次回分を投入し、全材料が投入完了してから最後に投入した材料が例えば略80%溶け落ちるまで▲1▼の許容最大電力を維持して、その後は▲3▼の投入電力にする。
なお、投入材料が例えば、80%溶解するまでの時間は、予め溶解材料の物性値(融点までの過熱エネルギ、融解潜熱、溶け落ち後の昇温エネルギ、比重、抵抗率)、および溶解量を制御装置に入力しておき、そのデータからの熱計算と、前記▲1▼〜▲3▼の投入電力から概略値を求めて使用することができる。
【0026】
上記で説明した運転パターンと交流電源の出力値から求めた溶解状態の監視とを併用して、かつ、出湯温度を計測して出湯可能時点を求めることにより、自動運転が可能になる。
【0027】
請求項2の発明によれば、溶解初期時は周波数が徐々に上昇して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は周波数の低下に従って投入電力を逓減するものとする。
このように、インダクタンスを求める代わりに運転周波数fを測定すればその周波数はインダクタンスの平方根に反比例するので周波数の変化を追跡すれば溶解の状態を監視することが可能になる。
【0028】
請求項3の発明によれば、溶解初期時は誘導コイルの電流が徐々に減少して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は誘導コイルの電流の増加に従って投入電力を逓減する。
また、請求項4の発明によれば、溶解初期時は誘導コイルの端子電圧が徐々に減少して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は誘導コイルの端子電圧の増加に従って投入電力を逓減する。
【0029】
請求項3,4の発明は、誘導コイルの電流と端子電圧に注目する。
表1に電力一定で運転する条件を付加すると、誘導コイルの電流Iは被溶解金属の等価抵抗値Rの平方根に略反比例するので表2が得られる。また誘導コイルの端子電圧はインダクタンス値Lと誘導コイルの電流Iの積に比例する。
【0030】
従って表2に示すように、誘導コイルの電流と端子電圧は溶解状態により変化するので、その変化を追跡すれば溶解状態を監視することが可能になる。
【0031】
【表2】
Figure 0003769826
【0032】
請求項5の発明によれば、溶解初期時はるつぼの冷却水温度が徐々に上昇して略一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時はるつぼの冷却水温度の増加に従って投入電力を逓減する。
【0033】
請求項5の発明によれば、冷却水温の変化はるつぼ、または誘導コイルでの発熱量に比例し、その発熱量はるつぼ、または誘導コイルの抵抗値が殆ど変化しないことから誘導コイル電流の2乗に比例するので、冷却水温の変化を追跡すれば溶解状態を監視することが可能になる。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の実施の形態の主要部の構成図を示す。この図1において、従来例と同一の符号を付けた部材はおおよそ同一の機能を有するのでその説明は省略する。この図1において、1は有底の円筒状に形成され円筒状部に放射状に略等間隔で設けられた縦長のスリット1bを有する良導電金属製のるつぼ、1aはるつぼ1の底部に形成された溶湯2の流出口、3aは電磁誘導によって流れる渦電流を利用して溶湯2に主に溶解、加熱電力を与える上誘導コイル、3bは電磁誘導によって流れる渦電流を利用して溶湯2に浮揚力を与える下誘導コイル、4aは上誘導コイル3aに電流を供給する交流電源,4bは下誘導コイル3bに電流を供給する交流電源を示す。
【0035】
また、Vは高圧プローブ等を使用した誘導コイル3a,3bの端子電圧測定器、Aは変流器を介して誘導コイル3a,3bの電流を測定する電流測定器、5は端子電圧測定器V,電流測定器Aの出力を取り込み誘導コイル3a,3bのインダクタスを求めインダクタス、または端子電圧、コイル電流の変化を用いて誘導コイル3a,3bに投入する電力を制御する制御装置を示す。
【0036】
上記の構成で、るつぼ1は電気的に絶縁された2つ以上のセグメントを誘導コイル3a,3bの内側に並べて構成される。このるつぼ1内に被溶解材料が入れられており、誘導コイル3a,3bで発生する磁束はセグメント間のスリットの隙間からるつぼ内に進入して被溶解材料と鎖交する。るつぼ1を構成するセグメントは溶けないように水冷されている。
【0037】
誘導コイル3a,3bの電流は、電気的に絶縁されたそれぞれのセグメント1cに渦電流を誘導するとともに、被溶解材料にも渦電流を誘導する。このるつぼ1と被溶解材料とに流れる渦電流の方向は対向する表面部分では互いに逆方向を向いているので磁気的に反発力となり、るつぼ1は固定されているので被溶解材料には浮揚力が働きこの浮揚力が被溶解材料の重量より大きければ被溶解材料はるつぼ1から離れて浮揚する。被溶解材料は抵抗損により熱を発生して加熱しつづける。このために被溶解材料は浮揚状態で溶解する。ここで被溶解材料はるつぼ1への接触を防ぐために、るつぼ1の中央部分に安定して位置することが望ましい。このるつぼ1内で安定して浮揚させるために、るつぼ底部になるほで被溶解材料の重量に対抗するるつぼ1からの電磁反発力を大きくする必要がある。この電磁反発力をるつぼ底部で大きくするために、るつぼ底部に巻かれた下誘導コイル3bには上誘導コイル3aに比べて大きい浮揚力が得られるように低い周波数の交流電源4bから電流を供給し、上誘導コイル3aには被溶解材料を溶解する高周波電流が別の交流電源4aから供給されることが行われている。
【0038】
また、上記の構成では、誘導コイル3a,3bの端子電圧V,およびコイル電流Aを測定して制御装置5に取り込み、誘導コイル3a,3bのインダクタンスを求めると共に求めたインダクタス、または端子電圧、コイル電流の変化を用いてるつぼ1内の状況を監視するとともに、出湯時の誘導コイル3a,3bに投入する電力を制御するようにしている。
【0039】
制御装置5は、被溶解金属の物性値(例えば、融点、比熱、融解熱、抵抗率、密度)、被溶解金属の材料形状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等の運転条件設定が例えばキーボードから設定できるようになっており、その設定値を使って内部で運転パターンおよび溶湯安定電力が求められ、運転パターンおよび溶湯安定電力と、インダクタスまたは端子電圧、コイル電流の変化を用いたるつぼ1内の状況の監視とを併用して浮揚溶解装置の投入電力を自動制御する。
【0040】
有底の円筒状に形成され円筒状部に放射状に略等間隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電金属製のるつぼ1のインダクタンスの変化は、るつぼ1のスリットからるつぼ1内に侵入する磁束がるつぼ1内の溶解金属の状態により変化することに起因している。
図2はるつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束との関係を示し、(a)は溶湯がほぼ定格湯量の状態の磁束分布図、(b)はるつぼ内に被溶解金属の小塊が投入された状態の磁束分布図、(c)はるつぼ内に被溶解金属が存在しない状態の磁束分布図をしめす。この図2において、(a)は溶湯がほぼ定格湯量で一体化した状態でありるつぼ1内に侵入する磁束は殆ど溶湯2内には侵入できないので誘導コイル3により発生する磁束6のるつぼ1内での漏洩磁束は少ない。
【0041】
そのために誘導コイル3から見たインダクタンスは最小になる。(b)はるつぼ1内に被溶解金属の小塊が投入された状態を示す。この状態では被溶解金属の小塊間に隙間があり(a)に比べてるつぼ1内に侵入する磁束6が増加するのでそれに伴い誘導コイル3から見たインダクタンスは増加する。(c)はるつぼ1内に被溶解金属が存在しない状態を示す。この状態ではるつぼ1内に侵入する磁束6は最大になりそれに伴い誘導コイル3から見たインダクタンスは最大になる。
【0042】
また、図3はるつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束との関係を示し、(a)は出湯開始時の磁束分布図、(b)は出湯途中の磁束分布図、(c)は完全出湯時の磁束分布図を示す。この図3(a)〜(c)は出湯開始からるつぼ1内の漏洩磁束6が、溶湯量の減少に従って増加することを示しており、その漏洩磁束6の増加に伴って誘導コイル3のインダクタンスが増加することを示す。
【0043】
図4はこの発明の別の実施の形態のフローチャートを示す。この図4において、浮揚溶解装置を自動運転する際は、まず始めに運転条件設定を行う。ここで設定される項目は、被溶解金属の抵抗率、密度、溶解エネルギ、材料形状(小塊か、るつぼ内径とほぼ同じ大きさか)、溶解重量(このチャージで溶かす重量)、溶解温度、材料形状が小塊の場合の初回投入重量、および残りを何回に分けて投入するか、および出湯するか否かである。また運転条件設定が完了するとその内容から運転パターンが制御装置内で決められる。図5は材料形状が小塊で初回投入重量が全溶解重量の20%の場合の運転パターンの例を示す。この図5において、初回投入材料が例えば80%溶解する時間t1 ,最終投入材料が例えば80%溶解する時間t1 〜t2 ,全投入材料が溶解した時間t2 〜t3 は投入材料の重量と、溶解エネルギと、浮揚溶解装置の概略効率とから概略値が求められる。
【0044】
さらに、被溶解金属の抵抗率、密度、および溶解重量から全投入材料が溶解された後の溶湯安定電力が制御装置内の収納されているデータテーブルから求められる。
以上で運転条件設定の設定が終了したので、次に材料(初回分)が投入され、通電が開始される。この際の投入電力は投入材料に対して、例えば低入力から段階的に増大させて電流リミット、電圧リミット範囲内の浮揚溶解装置のほぼ最大許容電力に相当する電力P1 が入力される。
【0045】
その後は運転パターンのタイミングに従って材料が投入される。投入電力、誘導コイルの端子電圧、コイル電流は通電開始から周期的に計測されて制御装置に取り込まれており、投入電力P1 は一定に制御され、誘導コイルの端子電圧、コイル電流はインダクタンスの計算に使用すると共に、それらの変化からるつぼ内の状況を監視するのに使用される。
【0046】
全材料が投入された後、最終投入材料が例えばほぼ80%溶解した時点t2 から全材料が溶け落ちるt3 までの間に投入電力は運転パターンに従って溶湯安定電力P2 に逓減され、その後は溶湯安定電力P2 に保持する。最終投入材料が例えばほぼ80%溶解した時点t2 はインダクタンス、誘導コイルの端子電圧、コイル電流の変化が殆ど無くなることからも推定できる。
【0047】
溶湯安定電力P2 で運転中は定期的に輻射温度計で溶湯温度を測定し出湯可能温度になれば出湯条件(鋳型の確認、ノロ取り完了)が整いしだい出湯するか否かの設定に従い出湯する場合はるつぼ下部の栓を開栓して出湯する。出湯中はインダクタンス、誘導コイルの端子電圧、コイル電流の変化に注目して投入電力を自動的に逓減し溶湯が安定するように制御し、出湯完了で運転を停止する。
【0048】
【発明の効果】
この発明によれば、材料溶け落ちまでの時間は概略値として求めているが出湯時点は輻射温度計で計測して決めているので溶け落ちまでの時間に誤差があっても差し支えなく自動運転できる効果がある。またインダクタンス、誘導コイルの端子電圧、コイル電流、周波数の変化はるつぼ内の状況の監視に役立つので自動運転の監視と溶解工程間のインターロックに使用できる効果がある。
【0049】
また投入電力を自動制御することにより、種々の金属の溶解作業が容易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の主要部分の構成図
【図2】 るつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束との関係を示し、(a)は溶湯がほぼ定格湯量の状態の磁束分布図、(b)はるつぼ内に被溶解金属の小塊が投入された状態の磁束分布図、(c)はるつぼ内に被溶解金属が存在しない状態の磁束分布図
【図3】 るつぼ内の溶解金属とるつぼ内に侵入する磁束との関係を示し、(a)は出湯開始時の磁束分布図、(b)は出湯途中の磁束分布図、(c)は完全出湯時の磁束分布図
【図4】 この発明の別の実施の形態のフローチャート
【図5】 運転パターンの一例図
【図6】 従来例の構成図
【符号の説明】
1 るつぼ
2 溶湯
3a 上誘導コイル
3b 下誘導コイル
4a 上交流電源
4b 下交流電源
5 制御装置

Claims (5)

  1. 有底の円筒状に形成されその底部に形成された溶湯を出す流出口および円筒状部に放射状に等間隔で設けられた縦長のスリットを有する良導電金属製のるつぼと、るつぼの外径側に設けられた誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を供給する交流電源とを備え、被溶解材料をるつぼ内で浮揚させて溶解する浮揚溶解装置において、被溶解金属の物性値、被溶解金属の材料形状、溶解重量、溶解温度、および出湯量等を設定する運転条件設定手段と、計測値の変化からるつぼ内の状況を監視して投入電力を制御するようにした制御装置とを備え、溶解初期時は計測される周波数または誘導コイルの電流または誘導コイルの端子電圧またはるつぼの冷却水温度が一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は計測される周波数または誘導コイルの電流または誘導コイルの端子電圧またはるつぼの冷却水温度の変化に従って投入電力を逓減することを特徴とする浮揚溶解装置。
  2. 請求項1に記載の浮揚溶解装置において、溶解初期時は周波数が徐々に上昇して一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は周波数の低下に従って投入電力を逓減することを特徴とする浮揚溶解装置。
  3. 請求項1に記載の浮揚溶解装置において、溶解初期時は誘導コイルの電流が徐々に減少して一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は誘導コイルの電流の増加に従って投入電力を逓減することを特徴とする浮揚溶解装置。
  4. 請求項1に記載の浮揚溶解装置において、溶解初期時は誘導コイルの端子電圧が徐々に減少して一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時は誘導コイルの端子電圧の増加に従って投入電力を逓減することを特徴とする浮揚溶解装置。
  5. 請求項1に記載の浮揚溶解装置において、溶解初期時はるつぼの冷却水温度が徐々に上昇して一定になるまで浮揚溶解装置の許容最大電力を投入し、その後投入電力を予め被溶解金属の物性値から求めた溶湯安定電力にして溶湯を昇温し、溶湯温度を計測して出湯可能状態になった時点で出湯を開始し、出湯時はるつぼの冷却水温度の増加に従って投入電力を逓減することを特徴とする浮揚溶解装置。
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