JP3196457B2 - 浮揚溶解装置 - Google Patents

浮揚溶解装置

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JP3196457B2
JP3196457B2 JP29372693A JP29372693A JP3196457B2 JP 3196457 B2 JP3196457 B2 JP 3196457B2 JP 29372693 A JP29372693 A JP 29372693A JP 29372693 A JP29372693 A JP 29372693A JP 3196457 B2 JP3196457 B2 JP 3196457B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、導電性の被溶解材を
交番磁界中に置いて電磁誘導作用によって誘導加熱する
とともに、磁界を所定の分布にして被溶解材に電磁力に
よる浮揚力を与えて浮揚状態で溶解することによって高
純度の材料を得ることのできる浮揚溶解装置に関する。
【0002】
【従来の技術】浮揚溶解装置は、所定の分布になるよう
に生成された交番磁界中に溶解される材料を置き、誘導
加熱と電磁力による浮揚力の双方を同時に与えて材料が
浮いてるつぼなど他の物に接触しない状態で溶解させて
所定の材質と寸法の製品を得る装置である。溶解時に他
の物と接触しないために異物の混入が極めて少ないこ
と、融点の高い材料でも溶解が可能であること、熱伝導
損失が小さいこと、などの特長があることから、高融点
でしかも高純度が要求される材料、例えば、チタニウ
ム、シリコンなどの溶解処理に用いられる。
【0003】図6は従来の浮揚溶解装置の運転状態の全
体を示す縦断面斜視図、図7は図6の初期状態の要部を
示す縦断面斜視図であり、これらの図はこの発明と同じ
出願人による特願平4-140811号に示されているものに類
似である。これらの図において、浮揚溶解装置は、上る
つぼ11と下るつぼ12からなるるつぼ1、その外径側に周
回して設けられた誘導コイル2、るつぼ1の上部の開口
部から被溶解材5からなる小片53を連続的に投入する連
続投入装置3、これを制御する制御装置31及びこれの制
御情報を得るための湯面温度計32、下るつぼ12を上下方
向に駆動する駆動装置4、これを制御する制御装置41、
これの制御情報を得るための湯面レベル計42などからな
っている。
【0004】誘導コイル2は交流電源6によって高周波
の電圧が印加され電流が供給される。連続投入装置3に
は小片53をあらかじめ加熱するための交流電源34で励磁
される誘導コイル33が設けられている。上るつぼ11、下
るつぼ12はいずれも図示のように所定の形状を持つ複数
のセグメント111,121 がマイカなどの絶縁板112,122 を
挟んで図示のように上下のるつぼを合わせたるつぼ1の
形状が底のある略円柱状に形成されるもので、それぞれ
のセグメント111,121 は銅製で内部に図示しない冷却孔
が設けられていて冷却水によって強力に冷却される構造
になっている。
【0005】図6は溶解過程の最終段階に近い状態を示
し、図7は初期の状態を示すもので、初期には小さな被
溶解材5が浮揚するとともに溶解して初期溶解部50とな
り、以下に詳しく説明する過程で初期溶解部50から始ま
って被溶解材5が成長して長くなった状態を示したのが
図6である。実際に被溶解材5が溶解されて所定の製品
が得られる過程を次に説明する。 図7に示すように、最初に初期溶解部50となる所定の
量の被溶解材5を入れて誘導コイル2を励磁する。これ
によって、誘導コイル2の内側空間に交流磁界が発生し
電磁誘導作用によってそれぞれのセグメント111,121 及
び被溶解材5に渦電流が流れる。るつぼ1内の磁束はる
つぼ1の内面に沿った分布をするが、下るつぼ12のセグ
メント121 が図示のように下に絞られた形状をしている
ので被溶解材5がある底部近傍の磁束分布は下から上に
向かって開いた分布になる。渦電流によって被溶解材5
は加熱されるが、一方、前述のような磁束分布と渦電流
の相互作用から詳しい説明は省略するが被溶解材5には
重力に逆らう上向きの電磁力が働く。図のような下るつ
ぼ12の底部の形状は浮揚力を発生させるに適した磁束分
布が得られるように設定されているのである。 誘導コイル2が励磁されると電磁力は同時に働き僅か
の時間遅れで被溶解材5は浮揚し、重力と電磁力とが釣
り合う位置で停止する。一方、被溶解材5の融点は高い
ので溶解までに時間がかかり、融点に達した時点ではす
でに浮揚した状態になっている。したがって被溶解材5
が溶解して初期溶解部50となったときに浮揚してるつぼ
1の内壁に接触しないので不純物が混入することがな
い。 連続投入装置31によって小片53を投入する。小片53は
誘導コイル33による電磁誘導加熱によって加熱されて融
点には達しないが高温になっており、初期溶解部50と接
触して熱伝導によって融点以上に加熱されて溶解し初期
溶解部50と文字通り一体になる。小片53が連続して投入
されるにつれて初期溶解部50は大きくなって成長してゆ
く。小片53の投入は湯面温度計32が所定の値以上のと
きに行い、以下になったときには停止するというように
制御装置31によって投入頻度が適宜制御される。 小片53の投入によって初期溶解部50から大きくなった
被溶解材5の浮揚力は重量の増加ほどには増加しないの
で被溶解材5の成長とともに浮揚位置が下がってゆきつ
いに被溶解材5の下部が下るつぼ12の底部に接触する。
前述のように下るつぼ12は冷却されて常温近くの低温に
保持されているので接触部はただちに固化する。このよ
うにして固化部52が生成され以後は被溶解材5の成長と
ともに固化部52も成長する。溶解部51は常に被溶解材5
の上先端部に存在し、この溶解部51に小片53が投入され
る。溶解部51は固化部52の上にあるのでるつぼ1と接触
することがないことから不純物が混入しない条件のまま
被溶解材5は大きく成長することができる。 被溶解材5がある程度成長したところで下るつぼ12を
下に向けて移動させて溶解部51が上るつぼ11及び誘導コ
イル2に対して一定の位置を保持するように制御され
る。この制御は湯面レベル計42によって被溶解材5の上
面位置を計測しその結果を制御装置41に入力しこれに基
づいて駆動装置4によって下るつぼ12が駆動される。 被溶解材5が所定の長さになったところで下るつぼ12
の駆動、小片53の投入、及び誘導コイル2の励磁を止め
ると、図6のように棒状に成長した被溶解材5は全体が
固化するのでこれを取り出して所望の製品が得られる。
この製品の大きさ、特にその長さは下るつぼ12の移動
距離によって決まるので、この浮揚溶解装置はるつぼ1
の容積に比べてはるかに大きな製品を得ることができる
という特長を持つものである。
【0006】なお、図6では被溶解材5の固化部52とる
つぼ1の内面との間にかなりの隙間があるものとして図
示してあるが、前述の説明からも分かるように固化部52
とるつぼ1の内面との間の隙間は実質的に零か僅かなの
が実際である。また、溶解部51に凸凹があるように図示
してあるが、これは小片53が溶解部51に入った瞬間や溶
解部が振動して変形するなどの実際の現象を示したもの
であり、小片53の投入の影響がなくなったときの溶解部
51の形状は後述のように軸対称性の安定した形状を保つ
のが実際である。
【0007】なお、誘導コイル2の電流は数千アンペア
と非常に大きくしかも周波数は50kHz と高いのでその導
体やリードの断面積が大きいことから誘導コイル2の上
下方向を移動させるのは困難である反面、上るつぼ11や
下るつぼ12は冷却水用の配管がつながるとはいえ、移動
させるのは誘導コイル2に比べてはるかに容易なので、
実際に採用される構造も誘導コイル2は固定しておき下
るつぼ12を移動可能になっているのが実際である。
【0008】下るつぼ12の移動の制御は前述のように被
溶解材5の上面、すなわち溶解部51の上面位置を湯面レ
ベル計42で計測しその結果を基に、上面位置が高すぎる
と下るつぼ12を下げる速度を上げ、低すぎると速度を下
げるという考えを基に行われる。その際、基準になる位
置は溶解部51の消費電力が最大になる位置に設定され
る。溶解部51で消費電力が最大になる条件は誘導コイル
2との位置関係から決まる。
【0009】図8は溶解部51の上面と誘導コイル2の上
端面との間の寸法hと溶解部の形状の関係を示す3つの
模式的断面図である。図8(a) は溶解部51が後述するよ
うに消費電力が最大となる最適位置(h=h m )、図8
(b) は溶解部51が最適位置よりも高い位置にあるとき
(h=ho >h m )、図8(c) は溶解部51が最適位置よ
りも低い位置にあるとき(h=hU <h m )であり、図
から明らかなように、図8(a) では溶解部51の頂点は
丸くなり図8(b) では平坦になり、図8(c) では尖った
形になる。
【0010】その理由は、概ね次の通りである。図8
(b) の場合、誘導コイル2が低いために溶解部51近傍の
磁界強度が小さくなり溶解部51の誘導コイル2に対する
反発力が低下して盛り上がりが少なくなり、図8(c) の
場合は磁界強度が大きくなって溶解部51の誘導コイル2
に対する反発力が大き過ぎるために盛り上がりが大きく
なり過ぎて尖った形状となるものであり、図8(a) はこ
れらの中間の丁度よい盛り上がりをしている状態を示す
ものである。
【0011】図9は誘導コイルと溶解部位置との相対寸
法に対する溶解部温度の違いを示すグラフである。この
図において、横軸は相対寸法hの最適寸法hm に対する
差Δh、縦軸は溶解部51の温度(T)である。このグラ
フ上の相対寸法Δh=0となる点(a) が図8(a) の状態
に相当し、相対寸法hがプラスになる点(b) が図8(b)
の状態に、当し、相対寸法Δhがマイナスになる点(c)
が図8(c) の状態にそれぞれ相当する。
【0012】図8(a) のように溶解部51の形状が丸くな
っているときに溶解部51の消費電力が最大になって誘導
加熱の効率が最高になることが実験的に確認されている
が、同時にその温度も最高になっていることが判る。し
たがって、湯面レベル計42で溶解部51の上面の位置を計
測し、その誘導コイル2に対する相対位置が図8(a)の
状態になるように制御するのが理想的である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、溶解部51の
温度は高温なので、湯面レベル計は非接触で計測するこ
とが必須であり、このような計測器としてレーザを利用
したものが使用されるのが一般である。この湯面レベル
計はレーザを湯面に向かって発射し反射してきたレーザ
を基に湯面までの距離を計測するものである。このよう
なレーザ型湯面レベル計では湯面に面してレンズが設け
られているが、湯面からのふく射熱のために加熱されて
寿命が低下するので、特に耐熱性の高いものを使用する
か充分離れた位置に設けるかしなければならないが、耐
熱性の高いものは高価であるし、離れた位置に設けると
計測精度が悪くなるという問題がある。また、溶湯から
生ずる金属ガスによってレンズ表面が汚れ安定した計測
が困難であるという問題もある。
【0014】この発明の目的は、このような問題を解決
して、湯面レベル計による湯面レベルの直接計測をする
ことなしに適切な湯面位置を維持しながら運転が可能な
浮揚溶解装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明によれば、良導電金属製のセグメントが絶
縁板を挟んで周方向に積層され、有底の円筒状に形成さ
れたるつぼ、このるつぼの外径側に同軸に設けられた誘
導コイル、誘導コイルに電流を供給する交流電源、るつ
ぼの上部から被溶解材をるつぼ内に投入する連続投入装
置とその制御装置からなる浮揚溶解装置において、 (1)絶縁板が設けられた周方向位置の所定の軸方向位
置に、少なくとも1つの半径方向の磁束を計測する磁束
計測手段が設けられ、この磁束計測手段の出力する磁束
信号を基に被溶解材の湯面レベルを検出する、 (2)セグメントを冷却する冷却水の注入時と排出時の
温度を計測しこれら計測された2つの温度の差から冷却
水温度上昇値を求める冷却水温度上昇値計測手段が設け
られ、この冷却水温度差計測手段が出力する温度上昇値
信号を基に被溶解材の湯面レベルを検出する、 (3)誘導コイルに印加される電圧を計測し電圧信号を
出力する電圧計測手段、誘導コイルに流れる電流を計測
し電流信号を出力する電流計測手段、印加電圧の周波数
を計測し電流信号を出力する周波数計測手段の少なくと
も1つが設けられ、これらの出力信号に基づいて被溶解
材の湯面レベルを検出する、 (4)前記るつぼは上るつぼと駆動装置により上下方向
に駆動される下るつぼとから構成され、前記(1)〜
(3)のいずれかにより検出された被溶解材の湯面レベ
ルに基づいて湯面レベルと誘導コイルとの相対位置を溶
解部の消費電力が最大になる位置となるように下るつぼ
を移動させる、ものとする。
【0016】
【作用】この発明の構成において、周方向に積層された
セグメントを互いに絶縁する絶縁板が設けられた周方向
位置の所定の軸方向位置に少なくとも1つの磁束計測手
段を設けて絶縁板から漏れ出る半径方向磁束成分を計測
する。この磁束成分は誘導コイルと溶解部との相対位置
によって変化する量なので、計測された磁束成分を基に
相対位置が最適になるように制御することができる。
【0017】また、前述の磁束計測手段に代えて、セグ
メントを冷却する冷却水の注入時と排出時の温度を計測
しこれらの温度差から冷却水温度上昇値を求める冷却水
温度上昇値計測手段を設ける。この冷却水温度上昇値計
測手段が出力する温度上昇値信号は溶解部とるつぼとの
相対位置の変化に依存するので、るつぼと誘導コイルの
相対位置のデータをう考慮すると溶解部と誘導コイルと
の相対位置が判るので、計測された冷却水温度上昇値に
基づいて相対位置が最適になるように制御することがで
きる。また、前述の磁束計測手段に代えて、誘導コイル
に印加される電圧を計測し電圧信号を出力する電圧計測
手段、誘導コイルに流れる電流を計測し電流信号を出力
する電流計測手段、印加電圧の周波数を計測し電流信号
を出力する周波数計測手段のうちの少なくとも1つ計測
手段を設けると、これらの出力信号値は交流電源の制御
方式に応じて溶解部のるつぼ又は誘導コイルとの相対位
置に対応した関係にあるので、交流電源の制御方式に応
じた1つ又は複数の出力信号に基づいた最適制御を行う
ことができる。
【0018】
【実施例】以下この発明を実施例に基づいて説明する。
図1はこの発明の第1の実施例を示す浮揚溶解装置の部
分斜視図である。この図において、上るつぼ11、誘導コ
イル2は図5、図6のそれと同じなので共通の符号を付
けてある。周方向に積層されて上るつぼ11を構成する複
数のセグメント111 は絶縁板112 を介して接している。
セグメント111 の数は8つとして図示してあり他の図と
一致してはいないが、セグメント111 の数はるつぼの寸
法、形状によって異なる値が採用されるものであり、こ
の発明ではその値は直接関係しない。
【0019】1枚の絶縁板112 のある周方向位置に2つ
の検出コイル71,72 を設けてある。これら検出コイル7
1,72 は図示のようにそれぞれ異なる軸方向位置に設け
てある。上るつぼ11の内外の磁束は絶縁板112 の磁気的
な隙間を介して出入りする。それは、セグメント111 に
は渦電流が流れしかも周波数が高くて表皮効果の著しい
状態になっているために磁束はセグメント111 の中を殆
ど通ることがてきないからである。
【0020】図2は前述の図8の3つの状態に対応した
誘導コイル2によって生成される磁束分布図である。図
2(a) は図8(a) に、図2(b) は図8(b) に、図2(c)
は図8(c) にそれぞれ対応したものである。ただし、誘
導コイル2の代わりにこの誘導コイル2に流れる電流の
方向を模式的に示してある。また、磁束分布は軸方向に
対して略対称分布をするが、ここでは右半分だけを図示
してある。
【0021】図2(a) は図8(a) に対応する最適位置の
場合の磁束付分布を示すもので、これに対して図2(b)
は図8(b) に対応して溶解部51の位置が最適位置から高
い位置の場合であり、磁束分布は被溶解材5によって図
2(a) に比べて上の部分が右の方に押しやられている。
また、図2(c) は図8(c) に対応して溶解部51の位置が
最適位置よりも低い位置に有る場合であり、図2(a) に
比べて溶解部51の上の空間が大きくなっているのでこの
部分に磁束が入り込んでいる。これらの磁束分布の違い
は図2のように、上るつぼ11の外表面に取付けられた検
出コイル71,72によってその違いを検出することができ
る。検出コイルは例えば検出コイル71だけでもよいが、
検出される磁束に比例した信号である磁束信号は誘導コ
イル2に流れる電流値にも比例するので、その影響を無
くすために磁束信号を電流信号で割り算する操作が必要
になる。一方、2つの検出コイル71,72 を使用すれば、
これらの値の比率をとることでよく、しかも2つの磁束
信号を使用して最適位置からのずれの判定が可能になる
のでそれだけ検出感度が向上するという利点を持つ。
【0022】なお、図1の磁束計測手段としての検出コ
イル71,72 の代わりにホール素子を使用することも考え
られる。しかし、周知のようにホール素子は温度特性を
持っているのでセグメント111 や誘導コイル2のように
大量の熱を発生する部材が近くにある場合には適してい
ない。これに反して検出コイル71,72 の場合は温度に関
係するのはその抵抗値であり、その値は検出コイルのイ
ンダクティブなインピーダンスに比べてはるかに小さい
のが普通なので殆ど温度に無関係な出力信号が得られる
という利点がある。
【0023】図3はこの発明の第2の実施例を説明する
ための被溶解材5の上るつぼ11に接触する面積とセグメ
ント111 の冷却水の温度上昇値との関係を示す模式的な
グラフである。この図において、横軸は被溶解材5の上
るつぼ11への接触面積、縦軸はセグメント111 の冷却水
の出口と入口の温度差としての温度上昇値である。冷却
水温度上昇値はセグメント111 に注入される電力に比例
するが、それはセグメント111 自身に流れる渦電流によ
るもの、被溶解材5からのふく射熱によるもの、及び接
触面からの熱伝導によるものの3種類がある。冷却水温
度上昇値をTとして、このTは、被溶解材5のセグメン
ト111 の接触面を介しての伝導熱によるものT1 、被溶
解材からのふく射熱によるものT2 、セグメント111 自
身の発生熱によるものT3 の和からなっているものと考
えられる。図示のようにT2 、T 3 は一定とみなしてよ
くT1 が接触面積に比例して増大する。したがって、冷
却水温度上昇値Tを計測すれば被溶解材5のセクメント
111 、言い換えれば上るつぼ11との接触面積が判ること
になる。接触面積は軸方向接触寸法と上るつぼ11の内径
周囲長との積であるから、結局、冷却水温度上昇値Tは
被溶解材5の上るつぼ11との相対位置に関係することに
なる。すなわち、冷却水温度上昇値Tを計測することに
よって被溶解材5の上るつぼ11に対する相対位置が判
る。したがって、この冷却水温度上昇値計測値Tに基づ
いて前述と同様に浮揚溶解装置が最適状態で運転される
よう制御することができる。
【0024】冷却水温度上昇値は前述のように冷却水の
出口と入口の温度差なので、例えばサーモカップルでそ
れぞれの温度を電気量として求め、これらを回路的に引
き算することによって容易に求めることができる。図4
はこの発明の第3の実施例を示す浮揚溶解装置の模式図
とその交流電源の回路図であり、浮揚溶解装置について
は図6と同じ部材に対して共通の符号を付けて詳しい説
明を省く。この図において、誘導コイル2を励磁する交
流電源6は、図示のように直流電源67の直流電力をイン
バータ66によって50 kHz程度の高周波交流に変換し変圧
器62で所定の電圧に変換した上で誘導コイル2に印加す
る構成になっており、直流電源67は配電系統から得られ
る三相商用周波交流を整流器で整流して得られるもので
ある。
【0025】インバータ66の出力側の回路には直列コン
デンサ65が挿入されており、これは変圧器62の漏れイン
ダクタンスなどの遅れ成分を補償して力率改善を行うも
のである。変圧器62と誘導コイル2との間に設けられて
いる直列コンデンサ64は誘導コイル2と直列共振させる
ものである。誘導コイル2の端子間の電圧を計測するた
めの電圧計測手段61が図示の位置に設けられ、電流を計
測するための電流計測手段63が変圧器62の入力側回路に
設けられている。電圧計測手段61は計器用変圧器であ
り、通常の電磁誘導の原理を用いたものとコンデンサ分
圧によるものなどが用いられる。また、電流計測手段は
変流器である。ただ、これらは高周波に適したものなの
で例えば鉄心にはフェライトコアーが使用されたものな
ど、高周波特性の優れたものが用いられる。
【0026】電圧計測手段61の出力である電圧信号、電
流計測手段63の出力である電流信号は制御装置41に入力
され、制御装置41内の制御信号演算器43によって制御信
号が生成され、この制御信号が制御指令器44に入力され
て駆動装置4が制御される。この実施例における主眼は
誘導コイル2の印加電圧、電流およびその周波数が図4
の寸法hの値に関係することを利用するもので、最適寸
法hm に対応する最適値にちなるようにこれらの電気量
の1つ又は複数の信号に基づいて制御しようとするもの
である。
【0027】電圧、周波数一定の条件で交流電源6が制
御される場合には、電流計測手段から得られる電流信号
に基づいて最適制御することになり、電流、周波数一定
制御の場合には電圧信号をそれぞれ使用することができ
る。また、誘導コイル2と直列コンダンサ64とが共振状
態になるよう周波数を制御する場合には、誘導コイル2
の端子からみたインダクタンスは被溶解材5の位置によ
って変化することから、周波数計測手段によって得られ
る周波数信号に基づいて最適制御を行うこともできる。
また、電力に基づくのが適している場合には電圧信号と
電流信号とから得られる電力値に基づけばよい。このよ
うに、交流電源6の制御方式などを考慮して3つの電気
量のうちの少なくとも1つを使用して浮揚溶解装置を最
適制御することができる。なお、周波数の値は瞬時値と
して得られる電圧信号又は電流信号から得ることもでき
るし、インバータ66への周波数に関する制御信号、ある
いはインバータ66を構成する半導体スイッチング素子に
対するパルス信号から得ることもできる。
【0028】図5は前述の浮揚溶解装置と異なるこの発
明を適用することのできる浮揚溶解装置の断面図であ
り、特開平5-15950 号公報に開示されているものであ
る。この浮揚溶解装置は、るつぼ1A、るつぼ1Aの外径側
に同軸に設けられた誘導コイル2A、誘導コイル2Aに電力
を供給するための図示しない交流電源及び上部から被溶
解材の小片を連続又は間欠的に投入する図示しない被溶
解材投入装置からなっている。そして、るつぼ1Aの底部
に開いた穴から連続的又は間欠的に溶解物55を取り出し
て次工程、例えば図示のような金型8に注入して鋳物を
製作するなどするものである。
【0029】この浮揚溶解装置では、供給電力、被溶解
材の投入量などを制御して被溶解材5Aの大きさや温度な
どを最適に保持しながら、投入量に応じた量を下部から
溶解物55として流出させる。供給電力や被溶解材の投入
量などの制御は被溶解材5Aの大きさや温度などの計測量
を基に行われるが、被溶解材5Aの大きさはその頂部のる
つぼ1Aに対する相対位置から求められる。したがって、
前述の実施例をこの浮揚溶解装置に適用して被溶解材5A
の頂部位置のるつぼ1Aに対する相対位置に関係する量を
求めてこの量に基づいて最適制御を行うことができる。
すなわち、図6に示す浮揚溶解装置の主な制御対象は下
部るつぼ12の駆動装置4の制御にあるが、この発明の適
用はこれに限るものではなく、より一般的な浮揚溶解装
置の運転制御に適用することができる。
【0030】
【発明の効果】この発明は前述のように、周方向に積層
されたセグメントを互いに絶縁する絶縁板が設けられた
周方向位置の所定の軸方向位置に少なくとも1つの磁束
計測手段を設けて絶縁板から漏れ出る半径方向磁束成分
を計測する。この磁束成分は誘導コイルと溶解部との相
対位置によって変化する量なので、被溶解材の湯面レベ
ルの検出が可能となり、計測された磁束成分を基に相対
位置が最適になるように制御することができる。したが
って、湯面レベル計による溶解部の頂点部である湯面位
置の計測が不要になり、湯面レベル計を使用することに
よる種々の問題が全て解決されるという効果が得られ
る。
【0031】また、前述の磁束計測手段に代えて、セグ
メントを冷却する冷却水の注入時と排出時の温度を計測
しこれらの温度差から冷却水温度上昇値を求める冷却水
温度上昇値計測手段を設けると、この冷却水温度上昇値
計測手段が出力する温度上昇値信号は溶解部とるつぼの
相対位置、ひいては溶解部と誘導コイルとの相対位置の
変化に依存するので、被溶解材の湯面レベルの検出が可
能となり、計測された冷却水温度上昇値に基づいて溶解
部の相対位置が最適になるように制御することができ
る。また、前述の磁束計測手段に代えて、誘導コイルに
印加される電圧を計測し電圧信号を出力する電圧計測手
段、誘導コイルに流れる電流を計測し電流信号を出力す
る電流計測手段、印加電圧の周波数を計測し周波数信号
を出力する周波数計測手段のうちの少なくとも1つの計
測手段を設けると、これらの出力信号値は交流電源の制
御方式に応じて溶解部のるつぼ又は誘導コイルとの相対
位置に対応した関係にあるので、被溶解材の湯面レベル
の検出が可能となり、交流電源の制御方式に応じた1つ
又は複数の出力信号に基づいた最適制御を行うことがで
きるので、いずれの場合も磁束計測手段を設けた場合と
同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例を示す浮揚溶解装置の
部分斜視図
【図2】被溶解材と誘導コイルとの3つの異なる位置関
係に対応した磁束分布図
【図3】この発明の第2の実施例を説明するための被溶
解材の上るつぼに接触する面積とセグメントの冷却水の
温度上昇値との関係を示す模式的なグラフ
【図4】この発明の第3の実施例を示す浮揚溶解装置の
模式図とその交流電源の回路図
【図5】この発明を適用することのできる浮揚溶解装置
の断面図
【図6】従来の浮揚溶解装置の運転状態の全体を示す縦
断面斜視図
【図7】図5の浮揚溶解装置の初期状態の要部を示す縦
断面斜視図
【図8】被溶解材と誘導コイルとの3つの異なる位置関
係を示す模式断面図
【図9】誘導コイルと溶解部位置との相対寸法に対する
溶解部温度の違いを示すグラフ
【符号の説明】
1,1A るつぼ 11 上るつぼ 12 下るつぼ 2,2A 誘導コイル 3 連続投入装置 4 駆動装置 41 制御装置 43 制御信号演算器 44 制御指令器 6 交流電源 61 電圧計測手段 63 電流計測手段 5,5A 被溶解材 51 溶解部 52 固化部 53 小片 71、72 検出コイル
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F27B 14/06 F27B 14/20 F27D 11/06 H05B 6/32

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】良導電金属製のセグメントが絶縁板を挟ん
    で周方向に積層され、有底の円筒状に形成されたるつ
    ぼ、このるつぼの外径側に同軸に設けられた誘導コイ
    ル、誘導コイルに電流を供給する交流電源、るつぼの上
    部から被溶解材をるつぼ内に投入する連続投入装置とそ
    の制御装置からなる浮揚溶解装置において、 絶縁板が設けられた周方向位置の所定の軸方向位置に、
    少なくとも1つの半径方向の磁束を計測する磁束計測手
    段が設けられ、この磁束計測手段の出力する磁束信号を
    基に被溶解材の湯面レベルを検出することを特徴とする
    浮揚溶解装置。
  2. 【請求項2】良導電金属製のセグメントが絶縁板を挟ん
    で周方向に積層され、有底の円筒状に形成されたるつ
    ぼ、このるつぼの外径側に同軸に設けられた誘導コイ
    ル、誘導コイルに電流を供給する交流電源、るつぼの上
    部から被溶解材をるつぼ内に投入する連続投入装置とそ
    の制御装置からなる浮揚溶解装置において、 セグメントを冷却する冷却水の注入時と排出時の温度を
    計測しこれら計測された2つの温度の差から冷却水温度
    上昇値を求める冷却水温度上昇値計測手段が設けられ、
    この冷却水温度差計測手段が出力する温度上昇値信号を
    基に被溶解材の湯面レベルを検出することを特徴とする
    浮揚溶解装置。
  3. 【請求項3】良導電金属製のセグメントが絶縁板を挟ん
    で周方向に積層され、有底の円筒状に形成されたるつ
    ぼ、このるつぼの外径側に同軸に設けられた誘導コイ
    ル、誘導コイルに電流を供給する交流電源、るつぼの上
    部から被溶解材をるつぼ内に投入する連続投入装置とそ
    の制御装置からなる浮揚溶解装置において、 誘導コイルに印加される電圧を計測し電圧信号を出力す
    る電圧計測手段、誘導コイルに流れる電流を計測し電流
    信号を出力する電流計測手段、印加電圧の周波数を計測
    し電流信号を出力する周波数計測手段の少なくとも1つ
    が設けられ、これらの出力信号に基づいて被溶解材の湯
    面レベルを検出することを特徴とする浮揚溶解装置。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の浮揚溶解
    装置において、前記るつぼは上るつぼと駆動装置により
    上下方向に駆動される下るつぼとから構成され、検出さ
    れた被溶解材の湯面レベルに基づいて湯面レベルと誘導
    コイルとの相対位置を溶解部の消費電力が最大になる位
    置となるように下るつぼを移動させることを特徴とする
    浮揚溶解装置。
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