JPH1036942A - 転がり軸受およびその製造方法 - Google Patents

転がり軸受およびその製造方法

Info

Publication number
JPH1036942A
JPH1036942A JP8191233A JP19123396A JPH1036942A JP H1036942 A JPH1036942 A JP H1036942A JP 8191233 A JP8191233 A JP 8191233A JP 19123396 A JP19123396 A JP 19123396A JP H1036942 A JPH1036942 A JP H1036942A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
tempering
bearing
cementite
ferrite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP8191233A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3519548B2 (ja
Inventor
Masayuki Tsushima
全之 対馬
Yasuhiro Yamamoto
康裕 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NTN Corp, NTN Toyo Bearing Co Ltd filed Critical NTN Corp
Priority to JP19123396A priority Critical patent/JP3519548B2/ja
Priority to US08/896,417 priority patent/US6048414A/en
Priority to GB9715219A priority patent/GB2315525B/en
Publication of JPH1036942A publication Critical patent/JPH1036942A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3519548B2 publication Critical patent/JP3519548B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • F16C33/58Raceways; Race rings
    • F16C33/64Special methods of manufacture
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D9/00Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor
    • C21D9/40Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for rings; for bearing races
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D1/00General methods or devices for heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering
    • C21D1/18Hardening; Quenching with or without subsequent tempering
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10STECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10S148/00Metal treatment
    • Y10S148/902Metal treatment having portions of differing metallurgical properties or characteristics
    • Y10S148/906Roller bearing element

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼材のミクロ組成を改善することによって、
長時間の高温放置による圧痕、落下や衝撃による圧痕を
防止し、耐音響劣化抵抗に優れ、情報機器用として最適
な転がり軸受、およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 内外の軌道輪とこれら両軌道輪の間に介
装される転動体からなる転がり軸受において、少なくと
も前記軌道輪が、そのミクロ組織が(フェライト+セメ
ンタイト)である鋼材からなる。また鋼材を焼入れまた
は浸炭窒化処理した後、鋼の焼戻し第3段階の温度以上
で焼戻しを行ない、鋼材のミクロ組織を(フェライト+
セメンタイト)とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばハードディ
スク装置等の情報処理機器に使用される回転スピンドル
支承用として適する転がり軸受、および転がり軸受を製
造する為の方法に関するものであり、殊に振動や音響の
発生を効果的に防止できる転がり軸受、およびこうした
転がり軸受を製造する為の有用な方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】例えば磁気記録媒体であるハードディス
ク装置等の情報処理機器に使用されるハードディスク駆
動モータ用の軸受や、レーザビームプリンタのポリゴン
ミラーモータ用の軸受は、小型で比較的軽荷重で使用さ
れるが、高速で回転するスピンドルを支承して駆動する
際に軸受自身から発生する振動や音響が可能な限り低い
ことが要求される。こうした要求に対応する為、従来で
は軸受鋼を焼入れ焼戻しして所定の表面硬さと表面寸法
精度を確保してきた。
【0003】近年、情報処理機器は小型化される傾向が
あり、可搬型や携帯型が普及するにつれて、その使用環
境も多様化しており、50℃以上の高温環境で長時間停
止状態で放置された後に軸受が使用される頻度が多くな
っている。この様に軸受の環境温度が高くなると、転が
り軸受からの機械的振動や音響的な振動が目立って大き
くなる傾向がある。また可搬型や携帯型の機器では、持
ち運びの途中で落下させたり、何物かにぶつけたりする
場合があり、その後使用する際に軸受から発生する音響
が大きくなることがある。そして情報処理機器等の精密
機器に使用される軸受の場合には、軸受の転がり疲労寿
命よりも軸受から発生する音響が使用者の認容限界を超
えることによって寿命が決まってしまうので、上記の様
な音響性能劣化が生じない様に改善する必要がある。
【0004】転がり軸受において音響性能劣化が生じる
のは、次の様な現象に起因していると考えられる。例え
ば60〜90℃の高温で100時間もの長時間に亘って
軸受が停止状態で放置されると、内外の軌道輪の間に介
装された転動体(例えば、鋼球)と、前記両軌道輪との
接触面における集中応力によって、軌道輪と転動体の転
走面に極めて浅いが凹陥状である圧痕が転動体の数だけ
形成され、軸受作動時に鋼球が回転しつつ複数の圧痕を
同時に通過することによって、音響的な振動が発生する
ものと思われる。また落下や衝撃が加わった場合におい
ても、上記と同様な凹陥状の圧痕が転動体との接触位置
に発生することがあり、これも軸受作動時における音響
性能劣化の原因になる。
【0005】上述の様に、音響性能劣化の原因になる圧
痕は、軌道輪と転動体との接触による集中応力によるも
のであるが、この集中応力は軸受を構成する鋼材の弾性
限の1/2以下の応力であるのが通常であり、理論的に
は圧痕は形成されない筈である。また機器が物体にぶつ
かったときの衝撃力も、軸受の静負荷容量に比較すれば
1/3以下程度であり、大きな衝撃力とは言えない。し
かしながら、この様に通常は問題にならないと思われる
様な微小な応力による微小な圧痕の形成が、高度の精密
さが要求される情報処理機器では音響性能劣化として問
題になるのである。
【0006】以前の転がり軸受では、軸受鋼を焼入れし
た後に200℃以下の低温で焼戻しを行ない、焼入れ後
の未分解オーステナイトを或る程度残して所要の硬さと
耐衝撃性を確保する様にしていた。しかしながら高精度
の機器で用いれらる軸受においては、焼戻しの第2段階
を利用して残留オーステナイトを量を0%にまで低減し
たものの方が、残留オーステナイトを量を或る程度残し
たものよりも、塑性変形による圧痕の形成が小さいもの
となり、高精度機器用の軸受として最良であるとの新し
い知見が得られるに至っている[例えば、「Trans.AS
ME J.Basic Engineering」June(1960)P302,「ベア
リング」第25巻(1983)P23 ]。また残留オーステナイ
ト量を6容量%以下に抑制して音響性能劣化の防止を図
った軸受も開発されている(例えば、特開平7−103
241号)。
【0007】しかしながら上記特開平7−103241
号に開示された技術では、軸受が60〜90℃の高温に
長時間保持されると、転動体鋼球と転走面との集中応力
により不安定な残留オーステナイトが徐々に分解されて
永久変形を生じ、転動体の接触部位に圧痕として残るも
のと考えられる。また衝撃荷重により形成される鋼球と
転走面とにおける微小な圧痕も、残留オーステナイトの
弾性限がマルテンサイトに比べて低いことからして、形
成されることが十分予想される。こうしたことからすれ
ば、残留オーステナイト量を低減することは、上記した
現象を防止する為の有効な手段の1つとなり得るものと
考えられる。しかしながら、こうした技術によっても、
圧痕の形成に起因する音響性能劣化を十分に解消できて
いるとは言えないのが実情である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、転が
り軸受の少なくとも軌道輪として用いる鋼材のミクロ組
織を、これまでと違う観点から改善することによって、
長時間の高温保持による圧痕や、落下や衝撃による圧痕
の発生を防止し、音響性能劣化に対する抵抗性に優れ
た、情報処理機器用として最適な転がり軸受およびその
様な転がり軸受を製造する為の有用な方法を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る転がり軸受は、内外の軌道輪とこ
れら両軌道輪の間に介装される転動体からなる転がり軸
受において、少なくとも前記軌道輪は、そのミクロ組織
が(フェライト+セメンタイト)である鋼材からなるも
のである点に要旨を有するものである。尚本発明に係る
転がり軸受において用いる鋼材としては、高炭素クロム
軸受鋼が代表的なものとして挙げられる。
【0010】また上記本発明の転がり軸受を製造するに
当たっては、鋼材を焼入れした後、鋼の焼戻しの第3段
階の温度以上で焼戻しを行ない、鋼材のミクロ組織を
(フェライト+セメンタイト)とする様にすれば良い。
この方法において、鋼材のミクロ組織を(フェライト+
セメンタイト)とした後、表層部の硬さをロックウエル
硬度(HR C)で56以上にすることも、転がり軸受の
性能を更に向上させるという観点から有効である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、音響性能劣化に対
する抵抗性を高めるべく、これまでとは全く違う視点か
ら検討を重ねた。その結果、内外の軌道輪とこれら両軌
道輪の間に介装される転動体からなる転がり軸受におい
て、少なくとも前記軌道輪(内輪と外輪)を、そのミク
ロ組織が(フェライト+セメンタイト)である鋼材によ
って構成すれば、上記目的が見事に達成されることを見
出し、本発明を完成した。
【0012】本発明では上記の様に、鋼材におけるミク
ロ組織を(フェライト+セメンタイト)としたものであ
るが、この組織は鋼材を焼入れした後、焼戻しの第3段
階の温度以上(後記図1参照)で焼戻しを行なうことに
よって得られる。焼戻しの第3段階の温度以上で焼戻し
を行なえば、ミクロ組織は焼入れ直後に存在する残留セ
メンタイト(「球状セメンタイト」とも呼ばれる)と、
焼入れマルテンサイトが焼戻しにより分解して生成した
フェライトおよび微小なセメンタイト(この混合組織
は、「焼戻しトルースタイト」と呼ばれる)と、焼入れ
時の残留オーステナイトが焼戻しで分解して生成したフ
ェライトおよび微小なセメンタイトからなっている。即
ち、本発明の鋼材のミクロ組織は、球状化セメンタイト
と、フェライトおよび微小なセメンタイトの3相からな
っており[実質的には、(フェライト+セメンタイト)
の2相組織]、その大部分はフェライトである。
【0013】本発明においては、焼戻しの第3段階の温
度以上で高温焼戻しを行なうことによって、鋼材のミク
ロ組織を(フェライト+セメンタイト)の2相組織にす
るものであるが、こうした状態を図面を用いて説明す
る。
【0014】図1は、焼戻しの各段階を説明する為の流
れ図であり、焼戻しの第2段階では残留オーステナイト
が分解して生じたフェライトおよびε−炭化物、焼入れ
マルテンサイトが分解して生じた低炭素マルテンサイト
およびε−炭化物等の混合組織である。尚焼戻しの第2
段階ではこれらの組織の他に、上記した残留セメンタイ
トが通常存在するが、図1では焼入れ温度を高くして残
留セメンタイトが存在しない状態としたものである。即
ち、図1では、焼戻しの第2段階を経た後の組織は、フ
ェライト、ε−炭化物および低炭素マルテンサイトから
なる3相であることを示している。
【0015】焼戻しの第3段階の温度以上の高温焼戻し
によって、焼入れ組織中のマルテンサイトは分解して
(フェライト+セメンタイト)の混合組織となり、組織
が一層安定化され、硬度測定においては軟化しているの
であるが、本発明の様に極めて小さい量の塑性変形を問
題にする場合には、組織の安定化はむしろ微小応力の下
での塑性変形に対する抵抗性を高くするものと考えられ
る。
【0016】焼戻しの第2段階で生成される低炭素マル
テンサイトと、焼戻しの第3段階で生成されるフェライ
トとの本質的な違いは、炭素固溶量の違いである。即
ち、低炭素マンテンサイトは、0.3%程度の炭素を固
溶するのに対し、フェライトでは0.002%以下の炭
素しか固溶できない。そしてこの固溶炭素量の違いによ
り格子定数が異なり、結晶学的には低炭素マルテンサイ
トが正方晶であるのに対し、フェライトではより安定な
立方晶である。この様に結晶構造が安定なものとなるに
つれて、格子欠陥も小さくなり、微小応力での微小な塑
性変形が小さくなるものと考えられる。即ち、焼戻しの
第3段階を終了して、極めて安定になった結晶構造にお
いては、高温放置による塑性変形や衝撃荷重による塑性
変形も生じにくい。また焼戻しの第2段階ではε−炭化
物が必ず存在しているのであるが、焼き戻しの第3段階
でこのε−炭化物はセメンタイトに変化している。
【0017】本発明者らが検討したところによると、焼
戻しの第2段階で析出するε−炭化物の大きさは100
0Å以下であり、5000倍程度の倍率でその組織を識
別することは困難である。これに対し、焼戻しの第3段
階の温度以上での焼戻しによって析出したセメンタイト
は、電子顕微鏡で明確に観察できる程度になる(例え
ば、0.1μm程度)。この様に微細ではあるが或る大
きさを持ち、均一に分散したセメンタイトが軽荷重下で
の塑性変形を阻止する要因になるものと考えられる。
【0018】図2,3は、上記した結晶組織の違いを示
した図面代用顕微鏡写真である。図2(a)は180℃
で焼戻ししたときの結晶組織を、図2(b)は250℃
で焼戻ししたときの結晶組織を、図3(a)は300℃
で焼戻ししたときの結晶組織を図3(b)は、350℃
で焼戻ししたときの結晶組織を夫々示している。これら
から、次の様に考察できる。焼戻しの第2段階をほぼ終
了した250℃焼戻品では、180℃焼戻品と同様にま
だ微小なセメンタイトの析出は識別できないが、焼戻し
の第3段階である300℃焼戻品では、微小セメンタイ
トの析出が認められ、形状的には細長く、その長さは平
均的には0.2μm程度である。また焼戻し温度を上げ
た350℃焼戻品では、微小セメンタイトの成長が認め
られる。
【0019】本発明方法において、鋼材のミクロ組織を
(フェライト+セメンタイト)とした後、機械加工処理
等によって表層部硬さをHR C56以上にすることも、
転がり軸受の性能を更に向上させるという観点から有効
である。こうした機械加工処理としては、ショットピー
ニングやローリング等の表面硬化処理が挙げられる。例
えばSUJ2軸受鋼の場合では、焼戻しの第3段階の温
度以上焼戻し処理を行なえば表層部硬さは若干低下する
が、この表層部硬さがHR C56未満になると、研削加
工で表面に疵が付き易くなり軸受に組み立てたときに、
軸受作動時の初期の音響(即ち初期音)が高くなること
があり、また軸受内への異物の混入によって使用中に疵
が付いて音響が大きく変化することがある。表層部硬さ
をHR C56以上にすることは、こうした不都合を回避
するという観点から有効である。尚表面加工処理後に、
生成された残留応力の不均一さを除去する為に、200
℃以下の温度で再焼戻しを行なうことも有効である。
【0020】本発明方法において実施される焼入れ処理
(焼入れ硬化処理)としては、通常の焼入れ(ずぶ焼入
れ)や浸炭焼入れを採用しても良いが、これらの代わり
に浸炭窒化焼入れを行ない、表面直下に高窒素組織を形
成しても良い。この様に表面直下を高窒素濃度とするこ
とによって、焼戻しの第3段階終了後も表面層硬さをH
R C58以上にすることができ、音響性能劣化に対する
抵抗性と共に転がり疲労寿命を更に優れたものとするこ
とができる。
【0021】本発明においては、少なくとも前記軌道輪
に上記の要件を満足する鋼材を使用すれば、本発明の目
的が達成できるが、転動体においても上記の要件を満足
する鋼材を使用することも有効である。これによって、
転動体の表面における圧痕形成を阻止することができ、
音響性能劣化に対する抵抗性を更に高めることができ
る。但し、上記転動体は鋼製ばかりでなく、セラミック
ス製のものを使用することも有効である。セラミックス
製転動体を使用すれば、転がり軸受を高温下に放置した
場合であっても、転動体自体には軌道輪との接触による
圧痕が殆ど形成されず、また耐摩耗性にも優れたものと
なる。こうした転動体に使用できるセラミックスとして
は、転がり軸受に通常使用されているものがそのまま使
用できるが、例えば窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、ジ
ルコニア等が挙げられる。尚本発明で用いる鋼材の種類
としては、高炭素クロム軸受鋼(例えば、JISのSU
J1〜3)が代表的なものとして挙げられる。
【0022】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0023】
【実施例】リング状平板にボールを押し付けて静止状態
で加熱保持し、除荷後に平板に生成した圧痕の深さを測
定することによって、圧痕形成試験を行なった。このと
き、試料としてのリング状平板は、通常のSUJ2相当
鋼(鋼A)、およびSUJ2鋼の含有Siを1.0%に
増加した鋼(鋼B)を用いて作製した。このとき用いた
鋼A,Bの化学成分組成を、下記表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】また試料としてのリング状平板は、直径:
28mm,厚さ:2.5mmの円板とし、中央部に直
径:15mmの穴をくり抜いたものである。そして各試
料を、850℃×30分の条件で加熱した後油中焼入れ
し、次いで180〜500℃の温度で120分の焼戻し
を行ない、最終的に精密研磨仕上げを行なった。得られ
た試料の表面近傍の残留オーステナイト量をX線回折法
により測定すると共に、リング状平板に対してボール
(SUJ2鋼製鋼球,直径3/16inch)を最大接触面
圧:1.6GPaで加圧接触させて、この状態で90℃
の温度で120時間保持した。
【0026】90℃×120時間保持による圧痕形成試
験の結果を図4に示す。図4から明らかな様に、平板上
の平均圧痕深さに及ぼす焼戻し温度の影響を見ると、焼
戻し温度が高くなる程平均圧痕深さが小さくなり、いず
れの鋼でも焼戻し温度が300℃以上では圧痕深さはほ
ぼ0μmとなり、圧痕は形成されないことが分かる。そ
して、これら300℃以上で焼戻しした鋼材は、前記図
1との関係から、その組織が(フェライト+セメンタイ
ト)となっていると判断できた。
【0027】上記の様に焼入れした鋼を焼戻しの第3段
階の温度以上で焼戻しして、その組織を(フェライト+
セメンタイト)の組織にして熱的に安定な組織にするこ
とによって、圧痕は極めて効果的に防止できることがわ
かる。
【0028】次に、本発明者らは、音響試験を行なって
試験軸受の加熱前後の音響劣化について調査した。まず
鋼AおよびBの夫々を使用して内輪、外輪および転動体
からなる転がり軸受を作製した。このとき、下記に示す
条件の焼入れ処理を施し、冷却後下記表2に示す様に1
50〜500℃の温度範囲にて120分の焼戻しを行な
い、研磨仕上げをして軸受番号696の小型の軸受に組
み立てて試験軸受とした。
【0029】焼入れ処理:850℃で0.5時間加熱し
た後、油中で急冷した。音響試験は、試験軸受2個を所
定の面圧が負荷される様に組込み、軸受単体のアキシャ
ル方向振動速度を軸受の発する音響として測定した。振
動測定に使用した測定器は、回転軸にアキシャル方向振
動速度を測定する検出器が内蔵されており、軸受の内輪
の側面に測定器の回転軸を軽く押し当てて測定した。こ
のときの測定条件は、転動体と内輪・外輪との間の最大
接触面圧を1.3GPaとし、回転数は2200rpm
であり、測定周波数範囲は、300〜6300Hzの可
聴音域とした。
【0030】上記の玉軸受を用いて上記の測定方法およ
び条件にて、高温放置前に音響試験を行ない、次いで9
0℃に加熱して120時間放置した後に、再度音響試験
を行なって、夫々振動速度を測定した。加熱後の測定振
動速度Vhと加熱前の測定振動速度Vcとの比Vh/V
cを音響劣化量とし、デシベルで表示した(20 log
[Vh/Vc])。
【0031】表2に残留オーステナイト量、圧痕深さ
(これらの測定方法は上記と同じ)、および表層部の硬
さ等と共に音響試験の結果を示すが、焼戻し温度が高い
程音響劣化は小さくなり、この傾向は鋼AとBの種類の
違いによっては大差がないことがわかる。しかしなが
ら、合金成分の異なる鋼Aと鋼Bを比較すれば、Si含
有量の少ない鋼Aの方が低い焼戻し温度で音響劣化量が
小さくなる傾向が認められる。これは鋼Aの方が、焼戻
しの第3段階がより低い温度で始まる為と考えられる。
【0032】
【表2】
【0033】前記図4に示した圧痕形成試験の結果から
明らかであるが、単に焼戻しの第2段階で焼戻しを行な
い、残留オーステナイト量を0%にするよりも、更に焼
戻し温度を高めた方が、高温放置における圧痕深さも小
さくなるので、焼戻し温度が高くなるほど音響劣化量が
小さくなるのは、残留オーステナイト量以外の影響があ
ることは確実であり、高温焼戻しによる基地組織の安定
化が圧痕発生の防止に大きく寄与していると考えられ
る。
【0034】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、少
なくとも軌道輪の素材として用いる鋼材のミクロ組織を
フェライトとセメンタイトの混合組織とすることによっ
て、高温放置や衝撃荷重による音響劣化に対する抵抗性
に優れたものとなり、音響的な振動を嫌う情報処理機器
に最適な軸受が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼戻しの各段階とミクロ組織の関係を示す流れ
図である。
【図2】鋼を180℃,250℃の各温度で焼戻したと
きのミクロ組織の変化を示す図面代用電子顕微鏡写真で
ある。
【図3】鋼を300℃,350℃の各温度で焼戻したと
きのミクロ組織の変化を示す図面代用電子顕微鏡写真で
ある。
【図4】試料であるリング状平板に鋼球を押しつけて9
0℃で120時間静置保持した後の平板圧痕深さに及ぼ
す焼戻し温度の影響を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内外の軌道輪とこれら両軌道輪の間に介
    装される転動体からなる転がり軸受において、少なくと
    も前記軌道輪は、そのミクロ組織が(フェライト+セメ
    ンタイト)の鋼材からなるものであることを特徴とする
    転がり軸受。
  2. 【請求項2】 前記鋼材が高炭素クロム軸受鋼である請
    求項1に記載の転がり軸受。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の転がり軸受を
    製造するに当たり、前記鋼材を焼入れした後、鋼の焼戻
    しの第3段階の温度以上で焼戻しを行ない、鋼材のミク
    ロ組織を(フェライト+セメンタイト)とすることを特
    徴とする転がり軸受の製造方法。
  4. 【請求項4】 鋼材のミクロ組織を(フェライト+セメ
    ンタイト)とした後、表層部の硬さをロックウエル硬度
    (HR C)で56以上にする請求項3に記載の製造方
    法。
JP19123396A 1996-07-19 1996-07-19 転がり軸受およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3519548B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19123396A JP3519548B2 (ja) 1996-07-19 1996-07-19 転がり軸受およびその製造方法
US08/896,417 US6048414A (en) 1996-07-19 1997-07-18 Rolling bearings and methods of producing the same
GB9715219A GB2315525B (en) 1996-07-19 1997-07-18 Rolling type bearings and methods of producing the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19123396A JP3519548B2 (ja) 1996-07-19 1996-07-19 転がり軸受およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1036942A true JPH1036942A (ja) 1998-02-10
JP3519548B2 JP3519548B2 (ja) 2004-04-19

Family

ID=16271123

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19123396A Expired - Fee Related JP3519548B2 (ja) 1996-07-19 1996-07-19 転がり軸受およびその製造方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US6048414A (ja)
JP (1) JP3519548B2 (ja)
GB (1) GB2315525B (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001208079A (ja) * 2000-01-20 2001-08-03 Koyo Seiko Co Ltd 転がり軸受
JP2007170680A (ja) * 1999-07-19 2007-07-05 Nsk Ltd 玉軸受
JP2010117033A (ja) * 2010-02-23 2010-05-27 Jtekt Corp 転がり軸受およびその製造方法
JP2021004404A (ja) * 2019-06-27 2021-01-14 Ntn株式会社 転動部品及び転がり軸受

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001074053A (ja) 1999-04-01 2001-03-23 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2001280348A (ja) * 2000-03-28 2001-10-10 Nsk Ltd 転がり軸受
DE102013201321A1 (de) * 2013-01-28 2014-07-31 Aktiebolaget Skf Verfahren zur Herstellung eines Wälzlagers und Wälzlager
CN111593193A (zh) * 2020-06-28 2020-08-28 洛阳明臻轴承钢球有限公司 一种用于钢球回火的电阻炉操作方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3682519A (en) * 1970-07-15 1972-08-08 Mo Vecherny Metallurgishesky I Antifriction bearing
JPS61279620A (ja) * 1985-06-03 1986-12-10 Daido Steel Co Ltd 鋼の加工熱処理法
JPH04337023A (ja) * 1991-05-10 1992-11-25 Sumitomo Metal Ind Ltd 軸受鋼の製造方法
JPH04337024A (ja) * 1991-05-10 1992-11-25 Sumitomo Metal Ind Ltd 軸受鋼の製造方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007170680A (ja) * 1999-07-19 2007-07-05 Nsk Ltd 玉軸受
JP2001208079A (ja) * 2000-01-20 2001-08-03 Koyo Seiko Co Ltd 転がり軸受
JP2010117033A (ja) * 2010-02-23 2010-05-27 Jtekt Corp 転がり軸受およびその製造方法
JP2021004404A (ja) * 2019-06-27 2021-01-14 Ntn株式会社 転動部品及び転がり軸受

Also Published As

Publication number Publication date
US6048414A (en) 2000-04-11
GB2315525A (en) 1998-02-04
GB9715219D0 (en) 1997-09-24
JP3519548B2 (ja) 2004-04-19
GB2315525B (en) 2000-08-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2001074053A (ja) 転がり軸受
GB2281106A (en) Ball bearing for supporting a spindle rotating at high speed
US6440233B2 (en) Rolling bearing
JP2001193743A (ja) 転がり軸受
JP3519548B2 (ja) 転がり軸受およびその製造方法
JP2002188702A (ja) 無段変速機用転動体およびその製造方法
JPH10259451A (ja) 転がり軸受
JP3548918B2 (ja) 転がり軸受
JP2007186760A (ja) 転がり軸受用軌道輪の製造方法及び転がり軸受
JP3391345B2 (ja) 転がり軸受
JPH11344037A (ja) 情報機器のスピンドルモータの回転支持装置
JP2001289251A (ja) 転がり軸受及びその製造方法
JPH11100647A (ja) 転がり軸受およびその製造方法
JP4360178B2 (ja) トロイダル型無段変速機の製造方法
JP2002013538A (ja) 転がり軸受
JP2000297819A (ja) セラミックスコーティングボールを用いた軸受
JP4013519B2 (ja) 転がり軸受
JPH11218134A (ja) 表面被覆球体及びこれを組み込んだ軸受
JP2000199524A (ja) 転動装置
JPWO2006041184A1 (ja) 転がり、摺動部材、これを用いたトロイダル型無段変速機および転がり、摺動部材の製造方法
JP2002349581A (ja) 転動装置
JP2000248954A (ja) ターボチャージャのロータ支持装置
JP2002276674A (ja) 転がり軸受
JP2001032048A (ja) 転がり軸受
JP2001323932A (ja) 転がり支持装置

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040113

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040129

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080206

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090206

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees