JPH10259451A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JPH10259451A
JPH10259451A JP9363739A JP36373997A JPH10259451A JP H10259451 A JPH10259451 A JP H10259451A JP 9363739 A JP9363739 A JP 9363739A JP 36373997 A JP36373997 A JP 36373997A JP H10259451 A JPH10259451 A JP H10259451A
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bearing
carbides
carbide
area ratio
rolling
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JP9363739A
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Shigeru Okita
滋 沖田
Manabu Ohori
學 大堀
Satoshi Kadokawa
聡 角川
Akihiro Kiuchi
昭広 木内
Akira Iida
彰 飯田
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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    • C21D9/36Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for balls; for rollers
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面損傷の発生を極力回避して耐久性の向上
を図ることができ、且つ軸受軌道面から発生する振動や
音響を低減化し、安価にして音響特性の優れた転がり軸
受を提供する。 【解決手段】 本発明に係る転がり軸受は、C:0.9
〜1.1wt%、Si:0.1〜0.5wt%、Mn:
0.2〜0.8wt%、Cr:1.0〜1.8wt%、
残部:Fe及び不可避不純物からなり、転動体の表面層
が、面積率で5%〜15%の炭化物を有すると共に、該
炭化物のうち平均粒径0.5μm以下の炭化物が全炭化
物に対して面積率で50%以上であって且つ前記炭化物
のうち平均粒径1μm以上の炭化物が全炭化物に対して
面積率で2%以下であり、さらに、前記転動体のビッカ
ース表面硬さHVが750〜900である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受に関し、
より詳しくは、自動車、農業機械、建設機械などに使用
されるトランスミッション等において動力伝達を補佐す
る針状ころ軸受、更にはエアコン用ファンモータや各種
機器の冷却用ファンモータ更にはハードディスクドライ
ブ(以下、「HDD」という)やビデオテープレコーダ
(以下、「VTR」という)等の回転スピンドル支承用
として使用される比較的小形の精密玉軸受等の転がり軸
受に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等のトランスミッションにおいて
は動力を伝達する回転部に転がり軸受を使用している
が、負荷容量やスペース的な観点から針状ころ軸受が採
用されることが多く、特にオートマチックトランスミッ
ションではラジアル型やスラスト型を含めて針状ころ軸
受が多用されている。
【0003】従来より、この種転がり軸受は、成分的に
は、C:0.95〜1.05wt%、Si:0.15〜
0.35wt%、Mn:0.5wt%以下、Cr:1.
30〜1.60wt%、残部:Fe及び不可避不純物か
らなる高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)が使用され
ている。
【0004】また、上記転がり軸受の転動体に使用され
るコイル材は、真円度等の寸法精度を厳しく設定する必
要があるため、一般的には図13に示すように、熱間圧
延コイル材51を軟化焼鈍52した後、酸洗53、被膜
処理54を経て、冷間引抜き加工55を繰り返すことに
より、高精度のコイル材56を製造している。
【0005】さらに、近年は、圧延技術の向上によっ
て、図14に示すように、熱間圧延コイル材51に対し
て冷間精密圧延加工57を施すことにより、引抜き材に
近い精度のコイル材を作製し、その後、上記図13の製
造方法と同様、軟化焼鈍52、酸洗53、被膜処理54
を経て、冷間引抜き加工55を行ない、これによって高
精度のコイル材56を得る技術も開発されている(以
下、「第1の従来技術」という)。
【0006】また、所謂ピーリング損傷や滑り摩耗を回
避して耐久性に優れた転がり軸受を得んとする観点から
は、耐摩耗性に優れたCr、Mo、V等の元素を軌道輪
材料や転動体材料に添加したり、或いはこれら軌道輪材
料や転動体材料に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施して軸
受の表面硬さや圧縮残留応力を高める技術も知られてい
る。さらに、同様の観点から軌道輪や転動体の表面に多
数の凹状窪みを形成し、軸方向と円周方向との表面粗さ
の比を調整する技術も提案されている(特開平2−16
8021号公報、特開平3−117724号公報)(以
下、これらの従来技術を「第2の従来技術」という)。
【0007】一方、エアコン用ファンモータやHDDの
回転スピンドル支承用として使用される比較的小形の精
密玉軸受(以下、単に「玉軸受」という)は、比較的軽
荷重で使用されるものの、軸受自体から発生する振動や
音響の低いことが要請されており、このため音響劣化が
原因で使用限界となる場合もある。したがって、これら
の玉軸受においては、転がり疲労寿命に達する前に音響
劣化により軸受の使用限界が生じるのを回避すべく、よ
り良好な音響特性を有することが要求される。
【0008】そこで、かかる観点から音響特性を劣化さ
せる原因と考えられる鋼中の残留オーステナイト量を所
定量以下に低減したり(特開平7−103241号公
報)、或いは少なくとも軌道輪材料に浸炭窒化処理を施
すか又は軌道輪材料におけるSi含有率を高めて残留オ
ーステナイト量を0%とすることにより、表面硬さを高
くして耐音響劣化抵抗性を優れたものとした技術も提案
されている(特開平8−312651号公報)(以下、
これらの従来技術を「第3の従来技術」という)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第
1の従来技術では、1回の冷間引抜きで軸受の転動体の
素材に使用可能な高精度のコイル材を低コストで得るこ
とができるものの、潤滑条件が悪い場合や軸受に異物が
混入した場合は、軸受使用中の油膜不足により軌道輪で
ある内外輪と転動体とが金属接触し、その結果ピーリン
グ損傷や滑り摩耗等の表面損傷が生じやいという問題点
があった。すなわち、自動車等のトランスミッションに
おいては、その構造上軸受への潤滑経路が複雑なため軸
受内部への潤滑剤の供給が十分になされない場合があ
り、したがって厳しい潤滑条件下で軸受の使用がなされ
ることも多い。そして、このような厳しい潤滑条件下で
軸受の使用かなされた場合は転動体と軌道輪との接触部
における油膜の形成が不十分となって金属同士が直接接
触し、所謂転走面にピーリング損傷や滑り摩耗等の表面
損傷が生じ、早期剥離や異常振動等の不具合が生じる虞
があるという問題点があった。
【0010】また、第2の従来技術では、ピーリング損
傷や滑り摩耗等の表面損傷を防ぐことは可能であって
も、その方法は研削加工後に特殊な処理を施すことによ
って表面粗さを調整するものであり、コストアップの招
来を回避するのは困難であるという問題点があった。
【0011】一方、玉軸受において発生する振動や音響
には種々の原因が存在すると考えられるが、上述した比
較的小形の玉軸受においては軌道輪の軌道面から発生す
る振動や音響が高くなることに主たる原因があると考え
られる。すなわち、衝撃荷重等によって永久変形し軌道
面に圧痕を形成しやすい残留オーステナイト量の存在が
音響劣化の主たる原因と考えられるため、第3の従来技
術のように残留オーステナイト量を低減又は0%にする
ことは音響劣化対策として有効と考えられる。
【0012】しかしながら、上記第3の従来技術のよう
に残留オーステナイト量を低減又は0%にする方策は、
所謂サブゼロ処理や高温での焼戻処理を伴うことからコ
ストアップを招来するという問題点がある。
【0013】また、該第3の従来技術は、圧痕形成の原
因となる残留オーステナイト量を可能な限り除去しよう
とするものであり、軌道面から元々発生する振動や音響
を低減化するものではなく、音響特性の抜本的な改善を
図るものではないという問題点があった。
【0014】本発明は斯かる問題点に鑑みなされたもの
であって、第1に、表面損傷の発生を極力回避して耐久
性の向上を図ることができる転がり軸受を提供すること
を目的とする。
【0015】また、本発明は、第2に、軸受軌道面から
発生する振動や音響を低減化し、安価にして音響特性の
優れた転がり軸受を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本願出願人は、トランス
ミッション内で使用されるラジアル型又はスラスト型の
針状ころ軸受に関し、潤滑条件が悪く軸受内部に異物が
混入した状態を想定し耐久性について鋭意研究した結
果、以下のことが判明した。すなわち、 (1)破損状況は、ピーリング損傷や滑り摩耗等の表面
損傷タイプであり、転動体が激しく損傷する場合が多
い。 (2)軸受のビッカース表面硬さ(以下、単に「表面硬
さ」という)HVの値が大きい程、長寿命化傾向を示
し、さらに、Cr、Mo、V等の炭化物を生成する元素
を適量添加して微細な炭化物を表面に析出させた場合は
より一層の長寿命化傾向を示す。すなわち、軸受表面、
特に転動体表面に微細な炭化物を多量に析出させること
により、耐久性を向上させることができることが判明し
た。 (3)一方、浸炭処理又は浸炭窒化処理を施した場合
は、C、Nの固溶、炭化物や炭窒化物の析出で表面層を
硬化させると共に、C、Nの濃度勾配ができるため圧縮
残留応力が発生する。すなわち、浸炭処理を施した場合
は従来の転がり軸受に比べ耐久性が向上し、さらに、浸
炭窒化処理を施した場合は表面に微細な炭窒化物が析出
し、表面硬さHVの値が大きくなってより一層の耐久性
向上を図ることができることも判明した。
【0017】上述の研究結果から、本願出願人は、潤滑
条件が悪く軸受内部に異物が混入した針状ころ軸受にお
いては、表面硬さHVが高く、更に表面層に微細な炭化
物を存在させることにより軸受の耐久性が向上するとい
う知見を得た。
【0018】一方、現在の優れた加工技術によって仕上
加工された玉軸受においては、保持器やシール部材等の
付属部品が不良品である場合を除くと良好な潤滑剤を使
用した場合に発生する振動・騒音は、その軌道面から発
生する所謂「レース音」であると考えられるている。該
「レース音」は、軌道面のミクロ的な「うねり」によっ
て発生し、軌道輪の有する固有振動数付近の加振力成分
を選択して振動し騒音となることが報告されている
(「転がり軸受の振動・音響」野田:NSK Technical
Journal No. 661, 1996;以下、「文献1」という)。
また、玉軸受の軌道輪の軌道面及び転動体の表面には極
めて小さいが不規則な連続した多数の山(凸部)が形成
されており、該連続した山数に対して連続な山の高さの
円周方向のうねりを有する。このため、玉軸受が回転す
ると振動が発生し、軌道輪の固有振動が強調されて音に
なることが報告されている(「玉軸受の騒音」五十嵐:
日本機械学会論文集30巻 220号, 1964;以下、「文献
2」という)。すなわち、前記文献1及び文献2による
と、振動・騒音の原因は「レース音」にあり、しかも該
「レース音」は「うねり」によって発生することが報告
されており、したがって、振動の原因となる「うねり」
を減ずることにより軌道面から発生する音響特性を改善
することができると考えられる。
【0019】さらに、玉軸受の軸受材料としては通常高
炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)が使用されるが、該
SUJ2には1μm前後の炭化物が表面に分布している
ため、本願出願人は、炭化物の分布を種々変化させて音
響特性について研究を重ねた結果、以下のことが判明し
た。すなわち、 (4)軌道輪の炭化物を微細化しても軸受の振動は余り
変わらない。 (5)転動体の炭化物を微細化すると軸受の振動が小さ
くなる。 (6)軌道輪の炭化物及び転動体の炭化物の双方を微細
化すると振動は小さくなるが、その程度は上記(5)と
同程度であった。
【0020】上述の研究結果から、本願出願人は、軸受
の更なる低騒音化に関しては転動体の低振動化を図るこ
とが効果的であり、精密加工で「レース音」を限界まで
低減している軸受については転動体の炭化物を微細化す
ると更なる低騒音化を実現することが可能であるという
知見を得た。
【0021】すなわち、転動体の炭化物を微細化するこ
とにより、転がり軸受に関し上述した耐久性の向上のみ
ならず、音響特性の向上をも図ることができることが判
った。
【0022】次に、炭化物を微細化する手段であるが、
軸受の生産性・量産性を考慮するとできるだけ低コスト
でもって炭化物の微細化を行う必要がある。
【0023】しかしながら、上記(2)(3)に記した
ように、Mo、V等の炭化物生成元素を適量添加した
り、或いは浸炭窒化処理を施して微細な炭化物が多量に
析出させた場合は、Mo、V等の高価な元素を使用しな
ければならなっかたり、或いは熱処理工程が増加するた
め、結果としてコストアップを招く。
【0024】また、玉軸受においては、通常の生産工程
では転動体はコイル材から冷間型加工によって連続的に
大量生産されており、その生産コストは現状では既に極
限まで節減されていると考えられている。しかも玉軸受
の転動体は玉形状であるため刻印やマーキングをするこ
とができず、生産は全てロット管理を行っている。した
がって、転動体が玉形状である玉軸受の場合は、低コス
トな素材を使用し且つ加工性を考慮しても工程の組み替
えや材料管理に関するコストが嵩むためコストダウンは
殆ど不可能である。したがって、転動体表面の炭化物を
微細化するために、炭化物の生成に寄与するC含有率や
Cr含有率を低減して合金成分の組成を変更することは
得策ではない。
【0025】そこで、本願出願人は、更に鋭意研究を重
ねた結果、従来のSUJ2の成分と同様の成分からなる
高炭素クロム軸受鋼に対して温間精密圧延加工を施すこ
とにより、低コストでもって、従来と同様の焼入・焼戻
を行なっても表面が硬く、且つ表面層に微細な炭化物が
存在する軸受を得ることができるという知見を得た。
【0026】すなわち、ピーリング損傷や滑り摩耗等に
より生ずる表面損傷は、ころの滑りや接触により表面に
微細な亀裂が発生して表面層が剥離し、隙間が発生する
ために生じるものと考えられ、また音響劣化は、転動体
の表面に分布している平均粒径が1μm以上の炭化物が
「うねり」を形成するために生じるものと考えられる
が、従来のように(第1の従来技術)熱間圧延後に冷間
引抜きや冷間精密圧延を行なう場合は、加工中の炭化物
を微細化することができない。すなわち、1.0%前後
のC成分を有する高炭素鋼では熱間圧延後に冷却した場
合、網状炭化物(セメンタイト)とパーライト組織とに
なるため、この状態では硬くて加工が困難である。した
がって、従来より冷間引抜き加工を行なう前に軟化焼鈍
52(図13、図14参照)を行なっているが、かかる
軟化焼鈍は一般に球状化焼鈍を行なっている。そして、
該球状化焼鈍では、いわゆるA1変態点(723℃)前
後に加熱されると、網状炭化物の一部が溶解してパーラ
イトの層状組織が破壊され、炭化物は球状化する。この
ため、球状化処理を終了した後はフェライト素地中に球
状化炭化物が存在し、炭化物の平均粒径は全炭化物に対
して面積率で50%以上が0.5μm以上となり、しか
も2μm以上の炭化物が存在し得る場合もあり、炭化物
を微細化することができない。
【0027】これに対して、温間精密圧延を行なった場
合は、網状炭化物とパーライト組織とが温間加熱によっ
て炭化物の球状化が進行するのと同時に強加工が加わ
る。したがって、網状炭化物とパーライト中の板状炭化
物とが微細化しながら球状化し、冷却後には炭化物が微
細球状化した組織となる。つまり、パーライト組織に冷
間圧延等を行なっても、その後に軟化のための球状化焼
鈍を行なった場合は略通常の球状化組織になるのに対し
て、パーライト組織に温間精密圧延加工を施すと炭化物
を細かく球状化することができるという知見を得た。
【0028】本発明に係る転がり軸受は、かかる知見に
基づき上述した温間精密圧延での加熱条件を設定するこ
とにより得られたものであって、本発明の転がり軸受
は、C:0.9〜1.1wt%、Si:0.1〜0.5
wt%、Mn:0.2〜0.8wt%、Cr:1.0〜
1.8wt%、残部:Fe及び不可避不純物からなり、
少なくとも転動体の表面層が、面積率で5%〜15%の
炭化物を有すると共に、該炭化物のうち平均粒径0.5
μm以下の炭化物が全炭化物に対して面積率で50%以
上であって且つ前記炭化物のうち平均粒径1μm以上の
炭化物が全炭化物に対して面積率で2%以下であり、さ
らに、少なくとも前記転動体の表面硬さHVが750〜
900であることを特徴とするものである。
【0029】斯かる組成成分を有する転がり軸受は、長
寿命化を達成し、且つ音響特性を改善し得る微細表面と
表面硬さを有するものである。尚、既に球状化した組織
を温間圧延しても炭化物は殆ど微細化しないことも本願
出願人の研究の結果判明した。
【0030】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る転がり軸受の
実施の形態について詳説する。
【0031】上述したように、本発明に係る転がり軸受
は、C:0.9〜1.1wt%、Si:0.1〜0.5
wt%、Mn:0.2〜0.8wt%、Cr:1.0〜
1.8wt%、残部:Fe及び不可避不純物からなり、
少なくとも転動体の表面層、即ち完成品表面が、面積率
で5%〜15%の炭化物を有すると共に、該炭化物のう
ち平均粒径0.5μm以下の炭化物が全炭化物に対して
面積率で50%以上であって且つ前記炭化物のうち平均
粒径1μm以上の炭化物が全炭化物に対して面積率で2
%以下であり、さらに、少なくとも前記転動体の表面硬
さHVが750〜900である。
【0032】以下、本転がり軸受の成分範囲を限定した
理由を説明する。
【0033】(1)C C(炭素)は、軸受に必要とされる硬さと炭化物を得る
ための元素であり、寿命に必要十分な硬さと炭化物の面
積率を得るためには0.9%以上は必要である。一方、
Cの含有量が1.1%を超えると製鋼時に巨大炭化物が
発生したり偏析が強くなる。このため通常SUJ2材で
行なっているソーキング処理では巨大炭化物の発生や偏
析を十分に調整できなくなる場合があり、その結果その
後の温間精密圧延加工での炭化物の微細化が不十分とな
る。そこで、Cの含有量を0.9〜1.1wt%に限定
した。尚、温間圧延での炭化物微細化を更に厳密に制御
する場合は、Cは0.95〜1.05wt%とするのが
好ましい。
【0034】(2)Si Si(珪素)は、素材の製鋼時に脱酸材として使用し、
焼入性を向上させると共に基地マルテンサイトを強化す
るので、軸受の寿命を向上させるのに有効な元素である
が、斯かる効果を奏するためにはSiは少なくとも0.
1wt%は必要である。一方、Siの含有量が多すぎる
場合は被削性や鍛造性を含む加工性が劣化するため上限
を0.5wt%に設定した。すなわち、Siの含有量
は、0.1〜0.5wt%、好ましくは、0.15〜
0.35wt%に限定した。
【0035】(3)Mn Mn(マンガン)は、焼入性を向上させる元素である
が、斯かる効果を奏するためには少なくとも0.2wt
%は必要である。一方、Mnは素材のフェライトを強化
する元素でありその含有量が多すぎる場合は加工性を低
下させる。そこで、特に素材の炭素量が多く炭化物も多
い本実施の形態では上限を0.8wt%に設定した。す
なわち、Mnの含有量は0.2〜0.8wt%に設定し
た。尚、Mnは、熱処理時に結晶粒を粗大化させ、軸受
として重要な清浄度も低下させる傾向があるため、好ま
しくは、0.25〜0.5wt%が望ましい。
【0036】(4)Cr Cr(クロム)は、軸受に必要な硬さと炭化物を得るた
めの重要な元素であり、焼入性、焼戻軟化抵抗性の向上
等基地マルテンサイトを強化する元素であるが、長寿命
化を達成するのに必要十分な硬さと炭化物の面積率を得
るためには少なくとも1.0wt%以上は必要である。
一方、Crの含有量が1.8wt%を超えると製鋼時に
巨大炭化物の発生や偏析が強くなって通常SUJ2材で
行なっているソーキング処理では巨大炭化物の発生や偏
析を十分に調整できなくなる場合があり、その結果その
後の温間精密圧延加工での炭化物の微細化が不十分とな
る。そこで、Crの含有量を1.0〜1.8wt%に限
定した。尚、温間精密圧延加工での炭化物微細化を更に
厳密に制御する場合は、Crは1.30〜1.60wt
%が好ましい。
【0037】(5)表面層の炭化物の面積率 転がり軸受としての針状ころ軸受に発生する摩耗は、潤
滑不足や転動体の滑り摩耗等による接触摩耗であり、一
般に表面硬さHVの値が大きい方が、耐摩耗性に対して
効果があり、さらに摩耗面に存在する炭化物量が多い方
が耐摩耗性に対して効果があることが知られている。
【0038】図1は、潤滑不良の場合の炭化物の面積率
Xと摩耗率ηとの関係を示した摩耗特性図である。この
図1から明らかなように、炭化物の面積率Xが5%を超
えると摩耗率ηが大幅に低下し、耐摩耗性が向上するこ
とが判る。
【0039】一方、軸受に組み込まれる針状ころは、通
常、コイル材を切断して製造している。図2は炭化物の
面積率Xと切断工具寿命Wとの関係を示した加工特性図
である。この図2から明らかなように、炭化物の面積率
Xが15%以上になると切断工具寿命Wが極端に低下す
ることが判る。
【0040】また、玉軸受においても耐摩耗性は重要な
特性であり、潤滑不良と玉のスピン滑りにより摩耗が発
生し得る。このため玉軸受の場合も炭化物面積率Xは、
針状ころ軸受の場合と同様、5%以上とする必要があ
る。また、玉軸受の転動体は通常コイル材をヘッダ加工
により製造しており、針状ころ軸受の場合と同様、炭化
物の面積率Xが15%以上になると切断工具寿命Wが極
端に低下する。
【0041】また、図3は玉軸受における炭化物の面積
率Xと音響特性との関係を示した音響特性図である。図
中、アンデロン値とは、軸受の騒音を振動成分として把
えたものであり、Hiバンド(1800Hz〜1000
0Hz)で測定している。
【0042】良好な音響特性が要求される玉軸受におい
ては上述したように炭化物の微細化が重要である一方
で、この図3から明らかなように、炭化物の面積率Xが
15%(好ましくは12%)を超えるとアンデロン値が
上昇して音響特性の悪化を招く。
【0043】そこで、本発明の実施の形態では、耐摩耗
性、切断工具寿命W及び音響特性の全てを充足すべく、
表面層の炭化物の面積率Xを5〜15%に限定した。
尚、耐摩耗性と加工性を十分に確保するためには、上述
した図1〜図3からも判るように、9〜12%が好まし
い。
【0044】(6)平均粒径0.5μm以下の炭化物の
面積率 潤滑不良や摩耗分混入等に起因して転がり軸受に発生す
る滑り摩耗やピーリング等の表面損傷は、軸受使用中の
油膜不足によって内外輪と転動体とが金属接触するため
に生ずると考えられる。表面損傷は、摩耗特性と比例す
る傾向があり、摩耗特性が良好な場合は表面損傷も良好
な傾向にはあるが、斯かる摩耗率の検討のみでは表面損
傷を解決することはできない。
【0045】本願出願人は、軸受試験での表面損傷状態
を観察した結果、ころの滑りや上述した金属接触により
表面に微細な亀裂が発生し、該亀裂が進行して表面層が
剥離していることを確認した。
【0046】炭化物を微細析出させることは、組織の微
細化等マトリックスを強化するだけでなく、炭化物の析
出していない素地の隙間を小さくすることにもなる。ま
た、ビッカース硬さ等の硬さを測定する硬さ測定機は被
測定物の塑性変形能を硬さに換算しているが、その硬さ
は炭化物が素地に析出した状態を測定している。しか
し、表面損傷はミクロな金属接触によって発生している
ため、炭化物の析出していない素地の隙間と接触する場
合があり、該ミクロ部分では耐摩耗性や耐ピーリング性
が低く、微細な亀裂の発生する可能性が高くなる。
【0047】そこで、本実施の形態では、炭化物の微細
析出により、表面損傷が発生し易い隙間を限りなく小さ
くすることにより、長寿命化を達成した。
【0048】そして、かかる長寿命化を達成するために
は、平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率を全炭化
物の面積率の50%以上にすることが必要であり、さら
に十分な長寿命化効果を得るためには平均粒径0.5μ
m以下の炭化物の面積率を全炭化物の面積率の70%以
上にするのが好ましい。
【0049】一方、玉軸受については、転動体表面の炭
化物を微細化することにより「うねり」の形成を阻止し
て軸受の低騒音化を図ることができるが、所期の目的を
達成するためには平均粒径0.5μm以下の炭化物の面
積率を全炭化物の面積率の50%以上にすることが必要
であり、さらに十分な長寿命化効果を得るためには平均
粒径0.5μm以下の炭化物の面積率を全炭化物の面積
率の70%以上にするのが好ましい。
【0050】このような観点から本発明の実施の形態で
は、平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率を50%
以上、好ましくは70%以上に設定した。
【0051】(7)平均粒径1μm以上の炭化物の面積
率 上述の如く、平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率
を全炭化物の面積率の50%以上にすることにより、表
面損傷の発生し易い隙間を限りなく少なくしているもの
の、軟化焼鈍や焼入条件によっては微細炭化物が部分的
に凝集して比較的大きな炭化物となってしまう場合もあ
り、かかる凝集して大きな炭化物となった箇所は表面損
傷に対して急激に寿命が低下してしまう結果となる。
【0052】このため表明損傷に対して長寿命を得るた
めには、焼鈍条件や焼入条件を調整し、平均粒径1μm
以上の炭化物の面積率を全炭化物の面積率の2%以下に
する必要がある。そして、さらに十分な長寿命化効果を
得るためには平均粒径1μm以上の炭化物の面積率を全
炭化物の面積率の1%以下にするのが好ましい。
【0053】一方、玉軸受については、上述したように
音響特性は転動体表面の「うねり」に依存する。そし
て、微細炭化物が部分的に凝集して粗大化し、比較的粒
径の大きな炭化物を形成するに至った場合は当該部分に
「うねり」が生じ、該「うねり」の部分に振動が発生し
て軸受の音響特性が悪化する。
【0054】このため、所望の音響特性を得るために
は、焼鈍条件や焼入条件を調整し、平均粒径1μm以上
の炭化物の面積率を全炭化物の面積率の2%以下にする
必要がある。そして、さらに十分な長寿命化効果を得る
ためには平均粒径1μm以上の炭化物の面積率を全炭化
物の面積率の1%以下にするのが好ましい。
【0055】このような観点から本発明の実施の形態で
は、平均粒径1μm以上の炭化物の面積率を2%以下、
好ましくは1%以下に設定した。
【0056】(8)表面硬さHV 炭化物の微細析出は,組織の微細化等マトリックスを強
化するので、表面硬さHVを上げる傾向にあり、従来の
転がり軸受と同一の熱処理を行なっても表面硬さHVの
値は大きくなるため、炭化物の微細化と表面硬さHVの
上昇とは同時に得ることができる。
【0057】一方、耐摩耗性や耐ピーリング特性に対し
て、表面硬さHVは重要な要素であり、炭化物を微細析
出させても全体の表面硬さHVの値が低下すると、軸受
寿命も極端に低下してしまう。
【0058】かかる観点から、本願出願人は潤滑不良と
摩耗分の混入を想定した寿命試験を行なった結果、表面
硬さHVが750未満では所望の長寿命を得ることがで
きないことが判明した。
【0059】一方、急速加熱や高周波加熱等の熱処理条
件や、水焼入、サブゼロ処理等の冷却方法により、炭化
物の微細析出処理を保持したまま、表面硬さHVの値を
大きくした場合は長寿命化傾向を示すが、表面硬さHV
が900を超えると素地の靱性が急激に低下し、結果と
して軸受寿命が低下することが判明した。
【0060】そこで、本実施の形態では表面硬さHVを
750〜900に限定した。尚、素地の強化が安定して
得られるためには表面硬さHVは770〜850が好ま
しい。
【0061】(9)その他 上述したC,Si,Mn及びCr以外にも鋼中には不可
避的な不純物元素が含まれ得るが、斯かる不純物元素と
して重要なものにO(酸素)とTi(チタン)がある。
O及びTiは軸受材料の清浄度を低下させる元素であ
り、特にOは転がり寿命に有害な酸化物系の非金属介在
物を生成するため15ppm以下の含有率とする必要が
あり、転がり寿命をより重視する場合は10ppm以下
とするのが望ましい。一方、Tiは鋼中のN(窒素)と
反応してTiNとなる。TiNは酸化物系の非金属介在
物と同様に転がり寿命に有害であり、しかも、その存在
形態や硬さの関係から音響特性を悪化させる傾向がある
ため60ppm以下の含有率とする必要がある。そし
て、音響特性を重視する場合はNの含有率は40ppm
以下が望ましく、Tiによる音響劣化を完全になくすた
めには20ppm以下が好ましい。
【0062】次に、本発明の転がり軸受の製造方法につ
いて説明する。
【0063】図4は転がり軸受の針状ころ用素材として
のコイル材の製造工程を示す図である。
【0064】まず、熱間圧延加工により得られた熱間圧
延コイル材1に対し、温間精密圧延加工2を施す。
【0065】すなわち、該温間精密圧延加工2で網状炭
化物とパーライト中の板状炭化物とを微細化させながら
球状化させる。ここで、パーライト組織の球状化率を高
めるためには加熱条件を設定する必要があるが、未溶解
のパーライトを残留させないためには600℃以上で温
間圧延を行なう必要がある。一方、温度が過剰に上昇す
るとオーステナイト変態してパーライトが再生するた
め、加熱温度は820℃以下で温間圧延を行なう必要が
ある。
【0066】さらに、冷却後の硬さを下げるためには、
温間圧延後の冷却速度を徐冷制御することが必要とな
る。冷却速度は極力遅い方が好ましいが、仕上引抜き加
工の可能な硬さまで軟化させるためには5℃/sec 以下
の設定が必要となる一方、生産性や経済性を考慮すると
1℃/sec 以上に設定する必要がある。
【0067】以上より、温間精密圧延加工2における加
熱条件は600〜820℃、冷却速度は1〜5℃/sec
に限定した。尚、斯かる加熱条件や冷却速度の設定如何
では、後述する軟化焼鈍工程3を省略することが可能で
あるが、その場合の条件は、加熱条件は680〜780
℃、冷却速度は1〜3℃/sec である。
【0068】このようにして温間精密圧延加工2を終了
した後、該温間精密圧延加工2における上記加熱条件及
び冷却速度に応じて、直接酸洗工程4に進むか、或いは
軟化焼鈍工程3を経て酸洗工程4に進む。
【0069】加熱条件及び冷却速度によっては軟化焼鈍
工程3を実行する必要があるのは以下の理由による。
【0070】転がり軸受の針状ころや音響特性が要求さ
れる玉軸受は小さいサイズのものも多く、コイル材もφ
2以下の細い素材となる。このため、温間精密圧延加工
2での加工率や加熱温度更には冷却速度等を精密に調整
しても該温間精密圧延加工2後のコイル材の表面硬さが
硬すぎて後述する仕上引抜き加工6が困難となる場合が
ある。そこで、仕上引抜き加工6が可能な硬さとなるま
で軟化焼鈍させる必要がある。尚、焼鈍温度が高すぎた
り、長時間焼鈍を行なうと球状化組織が粗大化してしま
うため、引抜き加工が可能な硬さまで軟化させるには温
度をできるだけ低く設定し、しかも短時間で行なう必要
がある。かかる炭化物の粗大化を最低限とするためには
焼鈍温度はA1変態点以下の700℃以下とするのが望
ましく、加熱時間も5時間以内が望ましい。
【0071】そして、この後、酸洗4、被膜処理5、仕
上引抜き加工6等の周知の工程を経て、高精度のコイル
材7を得る。
【0072】尚、かかる高精度のコイル材7は、図5に
示すように、切断加工8及びバリ取り加工9等の機械加
工によりニードルに加工され、また冷間型加工(ヘッダ
加工)10によりころに加工され、焼入焼戻等の所定の
熱処理11及び研削12、表面仕上加工13を経て針状
ころを使用した転がり軸受としての完成品を得ることが
できる。また、玉軸受の転動体は通常は冷間加工(ヘッ
ダ加工)10により製造される。
【0073】このように本実施の形態は、材料の組織や
炭化物の分布によって転がり軸受の耐久性及び音響特性
を向上させたものであり、これに浸炭処理や浸炭窒化処
理等の表面処理、更にはバレルやショットピーニング等
の表面加工を施することにより、表面硬さHV、表面圧
縮残留応力や表面粗さを調整することができ、さらに耐
久性の向上した転がり軸受を得ることが可能である。
【0074】尚、玉軸受の音響特性については、軸受自
体の初期時における音響が悪い場合と使用中に音響が劣
化する場合とがある。
【0075】玉軸受の初期時における音響は、軸受すき
まや加工精度、表面粗さ等にも依存する。そして、これ
ら軸受製造時における条件を統一した場合(例えば、J
ISG 1514の5級以上)は、初期時の騒音発生の
主たる原因は、玉軸受の組込時に転動体が軌道輪に押し
付けられて軌道輪に微小な圧痕が形成されることにあ
る。また、使用中に音響劣化が生じる主たる原因は、予
圧が特定状態で長時間保持された場合や玉軸受に衝撃荷
重が負荷された場合に転動体と軌道輪との接触部分に微
小な圧痕が形成されることにある。すなわち、いずれの
場合においても微小な圧痕が原因で音響特性の劣化が生
じる。そして、このような微小な圧痕の発生は、玉軸受
の表面硬さや鋼の組織に依存し、特に、鋼中の残留オー
ステナイト量に大きく依存し、該残留オーステナイト量
が6%を超えて高くなると微小な圧痕が形成され易くな
って初期時の音響特性や使用中の音響特性が悪化する。
【0076】したがって、本転がり軸受においては、鋼
中の残留オーステナイト量を6%以下とするのが望まし
く、さらに初期時の音響特性や厳しい音響特性が要求さ
れる環境下で使用される場合は2%以下とするのが望ま
しい。
【0077】また、玉軸受の音響特性には転動体の硬さ
等も影響するため、転動体の面粗さとしては3μmRM
S以下とし、熱処理後に表面硬化処理を行った後、さら
に再焼戻処理を行うことが望ましい。
【0078】
【実施例】次に、本発明の実施例について具体的に説明
する。
【0079】〔第1の実施例〕本願出願人は、まず、針
状ころ軸受の表面層における炭化物の面積率Xと摩耗率
η及び切断工具寿命Wとの関係を測定した。
【0080】炭化物の面積率Xは、まず、軸受表面の組
織を電子顕微鏡で撮影し、次いで電子顕微鏡で撮像され
た画像の中から画像解析装置を使用して炭化物を取り出
し、さらにその形状、面積、個数等を測定して炭化物の
面積率Xを算出した。尚、電子顕微鏡及び画像解析装置
としては、以下のものを使用した。
【0081】 電子顕微鏡: 日本電子社製、JSM−T220A 画像解析装置:カールツァイス社製、IBAS2000 次に、二円筒式摩耗試験機を使用して摩耗率ηを測定し
た。すなわち、該二円筒式摩耗試験機は、図6に示すよ
うに、上下に対向して配設された一対の円筒(第1の円
筒15a及び第2の円筒15b)を有している。そし
て、第1の円筒15a及び第2の円筒15bの夫々に転
動体16a、16bを外嵌し、上方から第1の円筒15
aに所定の荷重Pを負荷することにより第1の円筒15
a及び第2の円筒15bを互いに接触状態とする。そし
て、オイルホース18から潤滑油を転動体16aに注ぎ
ながら第1の円筒15aを矢印A方向に、第2の円筒1
5bを矢印B方向に低速で回転させる。そして、滑り率
を所定値に設定して第1の円筒15aの回転数と第2の
円筒の回転数15bの回転数を相違させ、転動体16
a、16bの摩耗率の平均値を求め、摩耗率η(g/
m)とした。本第1の実施例では、特に潤滑不良状態で
の摩耗特性を再現するため、第1及び第2の円筒15
a、15bの回転中に油膜が切れやすい低粘土の潤滑油
を使用した。
【0082】摩耗試験条件は以下の通りである。
【0083】〔摩耗試験条件〕 試験機:二円筒式摩耗試験機 荷重P:100kgf 第1の円筒15aの回転数:10rpm 滑り率:30% 潤滑油:スピノックス10(日本石油(株)製) 粘度:ISOVG10 油温度:60℃ 次に、コイル材の製造に使用される切断工具(切断治
具)の切断加工性について実験した。すなわち、針状こ
ろは通常コイル材をカットして製造しているが、炭化物
の面積率Xを高く設定しすぎると切断工具が摩耗して切
断加工性が低下するため、斯かる面積率Xの決定には切
断加工性をも考慮する必要がある。
【0084】本第1の実施例では針状ころの製造で一般
に使用されている上下スライド式切断機を使用して切断
工具寿命Wを測定し、切断加工性を評価した。
【0085】上下スライド式切断機は、図7に示すよう
に、先端に超硬ダイス18が固着されたダイス19と、
先端に切断超硬ダイス20が固着された切断歯21が互
いに対向状に配設され、挿入穴22にコイル材を挿入
し、切断歯21を矢印C方向に上下移動させてコイル材
をカットした。
【0086】切断超硬ダイス20が初期状態のときは、
図8(a)に示すように、断面が直径dの真円を有する
コイル材を得ることができる。しかしながら、挿入穴2
2に挿入されたコイル材に対して連続切断が行なわれて
ゆくと、切断歯21のカット面の切断超硬ダイス20が
摩耗し(図7中、Dが摩耗部を示す)、その結果、図8
(b)に示すように、コイル材のエッジEがR形状とな
って、いわゆる「だれ」が発生する。このような切断面
の「だれ」は、転動体完成品の形状に影響を及ぼすた
め、通常はだれ量tを直径dの10%以下に抑制する必
要がある。すなわち、だれ量tが直径dの10%を超え
ると切断歯21のカット面23を研削し、摩耗部Dを除
去する必要があるため、斯かるだれ量tが直径dの10
%となったときを切断工具寿命Wとして切断加工性を評
価した。
【0087】切断工具寿命試験の条件は以下の通りであ
る。
【0088】〔切断工具寿命試験〕 試験機:上下スライド式切断機 金型:V30(JIS B 4053) コイル線径:φ3.2 加工速度:1000〜1200本/min 潤滑:燐酸亜鉛被膜+潤滑油 炭化物の面積率Xと摩耗率η及び切断工具寿命Wの測定
結果を表1に示す。
【0089】
【表1】 表1中、No.1〜No.6が本発明の実施例であり、
No.11〜No.16は比較例を示す。
【0090】この表1から明らかなように、炭化物の面
積率Xが大きくなればなる程、摩耗率ηは大きくなり、
耐摩耗性を向上させる観点からのみからは炭化物の面積
率Xを大きくするのが望ましいことが判る。すなわち、
炭化物の面積率Xが5%以下である比較例のNo.11
〜No.14では摩耗率ηがいずれも1(g/m)以上
と大きな値を示しているが、炭化物の面積率Xが5%以
上の場合は、摩耗率ηがいずれも0.5(g/m)以下
の小さな値を示している。
【0091】一方、切断工具寿命Wについては、炭化物
の面積率Xが15%以上である比較例のNo.15、N
o.16でその寿命Wが著しく低下し、切断加工性が劣
るのが判る。したがって、これらのことからも炭化物の
面積率Xは5〜15%に設定する必要がある。特に、炭
化物の面積率Xが9〜12%であるNo.3、No.4
においては、摩耗率η及び切断工具寿命Wの双方におい
て極めて優れた測定結果が得られた。
【0092】次に、本願出願人は、平均粒径1μm以上
及び平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率に対する
表面硬さHV、軸受(針状ころ軸受)のラジアル軸受寿
命RL10及びスラスト軸受寿命SL10を測定した。
【0093】平均粒径1μm以上の炭化物の面積率X′
及び平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率X″は、
素材となるコイル材の成分、軟化焼鈍条件、焼鈍回数、
焼入条件等を調整して得た。
【0094】本発明の実施例では、図4の素材製造工程
で熱間圧延コイル材1から高精度のコイル材7を作製す
る場合、軟化焼鈍工程3を経て作製した。すなわち、熱
間圧延コイル材を温度650〜700℃で2〜5時間保
持し、温度が500℃以下になるまで、30〜100℃
/hrの冷却速度でもって低温軟化焼鈍を行ない、本発
明の実施例サンプルを作製した。
【0095】一方、比較例は、従来の素材製造工程で作
製し、冷間精密圧延加工57の後、軟化焼鈍工程52で
球状化焼鈍処理を行なった(図14参照)。すなわち、
冷間精密圧延加工57がなされたコイル材を温度750
〜830℃で3〜7時間保持し、温度が550〜650
℃になるまで、10〜40℃/hrの冷却速度でもって
球状化焼鈍処理を行い。斯かる球状化焼鈍処理を行なっ
たものを比較例サンプルとした。
【0096】そして、斯かる実施例サンプル及び比較例
サンプルに熱処理を施し、表面硬さHVを測定した。す
なわち、高精度コイル材を温度830〜860℃で0.
5〜1時間保持した後、焼入を行い、次いで温度160
℃〜200℃で2時間焼戻を行い、その後表面硬さHV
を測定し、さらにラジアル軸受寿命RL10及びスラスト
軸受寿命SL10を測定した。
【0097】斯かる軸受寿命の測定においては、表面損
傷が発生し易い自動車用潤滑油として、例えばDEXR
ON(GM社のオートマティックトランスミッションフ
ルード規格)IIタイプのオートマティックトランスミ
ッションを想定して実験する必要がある。そこで、本第
1の実施例では、潤滑油としてオートマチックトランス
ミッション専用のギヤ油を使用し、さらに表面損傷が発
生し易い厳しい潤滑状況を再現するために微細な異物を
混入して軸受寿命を評価した。
【0098】軸受の寿命試験は、荷重負荷位置で振動を
測定し、初期振動値に対して3倍以上の振動が発生した
ときに試験軸受を調査し、剥離や異常摩耗があれば寿命
であると判断し、その耐久時間からワイブルプロットを
作成し、各ワイブル分布から夫々ラジアル軸受寿命RL
10及びスラスト軸受寿命SL10を測定した。ラジアル軸
受寿命試験及びスラスト軸受寿命試験の試験条件は次の
通りである。
【0099】〔ラジアル針状ころ軸受寿命試験条件〕 試験面圧:最大2300MPa 回転数:6800rpm 潤滑油:キャッスルオートフルードD−II(トヨタ自
動車(株)製) 潤滑油温度:100℃ 混入異物: 組成:Fe3C(セメンタイト)系粉末 ロックウェル硬さ:HRC60 粒径:50μm以下 混入量:潤滑油中に300ppm 〔スラスト針状ころ軸受寿命試験条件〕 試験面圧:最大2,300MPa 回転数:6800rpm 潤滑油:キャッスルオートフルードD−II(トヨタ自
動車(株)製) 潤滑油温度:100℃ 混入異物: 組成:Fe3C(セメンタイト)系粉末 ロックウェル硬さ:HRC60 粒径:50μm以下 混入量:潤滑油中に300ppm 表面硬さHV、ラジアル軸受寿命RL10及びスラスト軸
受寿命SL10の測定結果を表2に示す。
【0100】
【表2】 表2中、No.21〜No.27が本発明の実施例であ
り、No.31〜No.36は比較例を示す。
【0101】この表2から明らかなように、平均粒径1
μm以上の炭化物の面積率X′が2%以下(好ましく
は、1%以下)であって、平均粒径0.5μm以下の炭
化物の面積率X″が50%以上(好ましくは、70%以
上)の軸受は表面の炭化物が微細化されているため、表
面損傷に対して長寿命化傾向を示し、軸受の耐久性が向
上することが判る。
【0102】すなわち、比較例No.31、No.32
では平均粒径1μm以上の炭化物の面積率X′が2%を
超えているため、炭化物が粒状に凝集した箇所が部分的
に増加する。斯かる凝集箇所ではミクロ的に微細炭化物
が殆ど存在しないため、表面損傷が激しく軸受寿命RL
10、SL10が急激に低下する。これに対して、平均粒径
1μm以上の炭化物の面積率X′が1%以下の実施例N
o.21、No.24及びNo.26では長寿命を示し
ている。
【0103】一方、比較例No.33、No.34では
平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率X″が50%
未満であるため、表面損傷が発生し易い箇所が増加し、
軸受寿命RL10、SL10が急激に低下する。これに対し
て、平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率X″が7
0%以上の実施例No.21、No.24及びNo.2
6では長寿命を示している。
【0104】また、表面硬さHVも表面損傷に対して効
果があるが、炭化物の微細化による硬さ向上が表面損傷
に対して効果を発揮している。しかし、比較例No.3
5は、熱処理条件で表面硬さHVのみを低減させたもの
であるが、表面硬さHVが750以下になると軸受寿命
が急激に低下している。一方、比較例No.36のよう
に炭化物を微細化した状態で表面硬さHVを900以上
とした場合は素地の靱性が急激に低下するため、表面損
傷が発生し易く軸受寿命が低下することが判る。これに
対して、表面硬さHVが750〜900である実施例N
o.21、No.24及びNo.26は素地が安定して
いるため、長寿命の傾向を示していることが判る。
【0105】以上より平均粒径1μm以上の炭化物の面
積率X′が2%以下(好ましくは、1%以下)であっ
て、平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積率X″が5
0%以上(好ましくは、70%以上)で、且つ表面硬さ
HVが750〜900の軸受は耐久性向上に大きな寄与
をしていることが判る。
【0106】〔第2の実施例〕次に、本願出願人は、玉
軸受の音響特性について調査した。
【0107】まず、本願出願人は、「うねり」の定量的
尺度として平均粗さRaを予め測定し、該平均粗さRa
の異なる種々の玉軸受を家庭電化製品用のファンモータ
に組み込んで軸受の軌道面及び転動体表面の「うねり」
と騒音の原因となる振動との関係を測定し、玉軸受から
発生する振動は軌道輪が原因であるのか或いは転動体が
原因であるのかを調査した。
【0108】図9は本測定に使用した振動測定装置の概
略を模式的に示したブロック構成図であって、該振動測
定装置は、玉軸受が組み込まれたファンモータ24と、
該ファンモータ24に組み込まれた玉軸受の振動を測定
する加速度センサ25と、該加速度センサ25により測
定された振動加速度信号を増幅するコンディショニング
アンプ26と、該コンディショニングアンプ26からの
出力結果に基づいて前記振動加速度信号を周波数分析す
るFFTアナライザ27とから構成されている。そし
て、転動体については玉軸受の玉数や回転数等に関連し
た周波数に振動ピークが現れるため、振動加速度信号を
FFTアナライザ27で周波数分析することにより軌道
輪の振動と容易に峻別することができる。
【0109】振動測定条件は以下の通りである。
【0110】〔振動測定条件〕 試験軸受種:深溝玉軸受608 ファンモータの回転数:984rpm 軸受予圧:2kgf(スラスト) 測定装置の仕様 加速度センサ:B&K社製No.4393 コンディショニングアンプ:B&K社製No.2626 FFTアナライザ:小野測器製CF−360Z 図10は平均粗さRa(うねり)と振動加速度との関係
を示した振動特性図であって、●は転動体の測定値、◆
は軌道輪の測定値を示している。
【0111】この図10から明らかなように、転動体は
加工方法との関連から軌道輪よりも仕上がり状態が良く
平均粗さRaが低くなる傾向にあるが、振動加速度は平
均粗さRaが低い転動体で大きな値を示している。すな
わち、玉軸受から発生する騒音の起因となる振動は主と
して転動体が原因で生じていることが判った。尚、転動
体の振動加速度にはかなりのバラツキがあるため、加工
工程で故意に平均粗さRaの大きな軸受を作製し、平均
粗さRaと振動加速度との関係を測定したところ、転動
体の方が軌道輪よりも振動加速度が大きい傾向を示すこ
とが確認された。これにより、玉軸受の更なる低騒音化
を図るには転動体の振動を更に低下させるのが効果的で
あることが判明した。
【0112】次に、本願出願人は、アンデロンメータを
使用し、転動体の炭化物の分布を種々変化させて音響特
性を測定した。ここで、アンデロンメータは、玉軸受の
騒音を振動成分として把えるアンデロン値を検出するも
のであり、本第2の実施例ではアンデロン値により音響
特性を評価している。すなわち、同一の炭化物分布を有
する玉軸受を各々40個宛作製し、これら玉軸受にアン
デロンメータをセットして所定条件下、個々のアンデロ
ン値を測定し、これらアンデロン値の平均値(以下、こ
の平均値を単に「アンデロン値」という)を音響レベル
として評価した。
【0113】音響試験条件は以下の通りである。
【0114】〔音響試験条件〕 試験軸受種:深溝玉軸受608 ファンモータの回転数:1800rpm 軸受予圧:2kgf(スラスト) アンデロンメータ:(株)菅原研究所製AD−0200 測定範囲:Hiバンド(1800〜10000Hz) 加速度センサ:B&K社製No.4393 コンディショニングアンプ:B&K社製No.2626 FFTアナライザ:小野測器製CF−360Z 尚、炭化物の面積率は、第1の実施例と同様の電子顕微
鏡(日本電子社製、JSM−T220A)及び画像解析
装置(カールツァイス社製、IBAS2000)を使用
し、第1の実施例と同様の手順で算出した。
【0115】表3は全炭化物に対する平均粒径1μm以
上の炭化物の面積率X′及び全炭化物に対する平均粒径
0.5μm以下の炭化物の面積率X″と、アンデロン値
との関係を示した表である。
【0116】
【表3】 また、図11は全炭化物に対する平均粒径1μm以上の
炭化物の面積率X′とアンデロン値との関係を示す特性
図である。
【0117】この表3及び図11から明らかなように、
比較例52及び比較例53は平均粒径0.5μm以下の
炭化物の面積率X″は50%以上であるが、平均粒径1
μm以上の炭化物の面積率X′が2%を超えているた
め、アンデロン値が夫々0.470及び0.520と大
きな値を示している。これは炭化物の面積率X′が2%
を超えると、微細炭化物が部分的に凝集して粗大化する
ため大きな「うねり」が発生し、該「うねり」に起因し
た振動により軸受の音響が急激に悪化してしまうためで
あると思われる。
【0118】図12は全炭化物に対する平均粒径0.5
μm以下の炭化物の面積率X′とアンデロン値との関係
を示す特性図である。
【0119】比較例51及び比較例54は平均粒径1μ
m以上の炭化物の面積率X′は2%以下であるが、平均
粒径0.5μm以下の炭化物の面積率X″が50%(図
12中、破線で示すライン)以下であるため、アンデロ
ン値が夫々0.530及び0.520と大きな値を示し
ている。これは炭化物の面積率X″が50%以下の場合
は転動体の表面層における炭化物の微細化が不充分であ
るため、更なる低騒音化を達成することができないもの
と思われる。
【0120】これに対して、実施例41〜47は、いず
れも平均粒径1μm以上の炭化物の面積率X′は2%以
下であり、また平均粒径0.5μm以下の炭化物の面積
率X″が50%以上であるため、良好なアンデロン値を
得ることができることが判る。特に、平均粒径1μm以
上の炭化物の面積率X′は1%以下、平均粒径0.5μ
m以下の炭化物の面積率X″が70%以上である実施例
41〜43では優れた音響特性を得ることができること
が確認された。
【0121】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る転がり
軸受は、C:0.9〜1.1wt%、Si:0.1〜
0.5wt%、Mn:0.2〜0.8wt%、Cr:
1.0〜1.8wt%、残部:Fe及び不可避不純物か
らなり、少なくとも転動体の表面層が、面積率で5%〜
15%の炭化物を有すると共に、該炭化物のうち平均粒
径0.5μm以下の炭化物が全炭化物に対して面積率で
50%以上であって且つ前記炭化物のうち平均粒径1μ
m以上の炭化物が全炭化物に対して面積率で2%以下で
あり、さらに、少なくとも前記転動体のビッカース表面
硬さHVが750〜900であるので、従来の軸受成分
と略同様の成分を有する高炭素クロム軸受鋼の粒状炭化
物を均一に微細化することができ、表面損傷に対して長
寿命化傾向を示すことができ、転がり軸受、特に針状こ
ろ軸受の耐久性向上を図ることができる。さらに、比較
的小形の玉軸受についても、低コストでもって一層の音
響特性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭化物の面積率Xと摩耗率ηとの関係を示した
摩耗特性図である。
【図2】炭化物の面積率Xと切断工具寿命Wとの関係を
示した加工特性図である。
【図3】炭化物の面積率Xとアンデロン値Aとの関係を
示した音響特性図である。
【図4】転がり軸受の針状ころ用素材としてのコイル材
の製造工程図である。
【図5】転がり軸受の針状ころの製造工程図である。
【図6】二円筒式摩耗試験機の概要を示した図である。
【図7】上下スライド式切断機の概要を示した図てあ
る。
【図8】コイル材に切断された切断断面が切断工具の摩
耗状態に応じて変化する状態を説明するための図であ
る。
【図9】振動測定装置の概略を模式的に示したブロック
構成図である。
【図10】平均粗さRaと振動加速度との関係を示した
振動特性図である。
【図11】全炭化物に対する平均粒径1μm以上の炭化
物の面積率X′とアンデロン値との関係を示す特性図で
ある。
【図12】全炭化物に対する平均粒径0.5μm以下の
炭化物の面積率X′とアンデロン値との関係を示す特性
図である。
【図13】転がり軸受の針状ころの従来の製造工程図で
ある。
【図14】転がり軸受の針状ころの他の従来例を示す製
造工程図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木内 昭広 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 飯田 彰 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.9〜1.1wt%、Si:0.
    1〜0.5wt%、Mn:0.2〜0.8wt%、C
    r:1.0〜1.8wt%、残部:Fe及び不可避不純
    物からなり、 少なくとも転動体の表面層が、面積率で5%〜15%の
    炭化物を有すると共に、該炭化物のうち平均粒径0.5
    μm以下の炭化物が全炭化物に対して面積率で50%以
    上であって且つ前記炭化物のうち平均粒径1μm以上の
    炭化物が全炭化物に対して面積率で2%以下であり、 さらに、少なくとも前記転動体のビッカース表面硬さH
    Vが750〜900であることを特徴とする転がり軸
    受。
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