JPH10339121A - 内燃機関の吸排気弁駆動制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ディスクハウジングの支軸を廃止して、部品
点数の削減による製造作業能率の向上とコストの低廉化
を図ると共に、各摺動部の摩擦抵抗を低減し、駆動機構
の負荷の低減とバルブタイミング制御精度の向上を図
る。 【構成】 駆動軸２１とカムシャフト２２に対向して設
けられた第１，第２フランジ部３１，３３の間に、ディ
スクハウジング３８と該ディスクハウジング３８の内周
に偏心カムリング３８ａを介して回転自在に支持された
環状ディスク３９とを揺動自在に設ける。ディスクハウ
ジング４８を介して環状ディスク３９の中心Ｙを駆動軸
２１の軸心Ｘに対して偏心動させて、弁の作動角を変化
させるようになっている。前記ディスクハウジング３８
は、両側部３８ｂ，３８ｃが両フランジ部３１，３３の
各外周面にニードルベアリング４１，４２によって回転
自在に支持されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術】本発明は、内燃機関の運転状態に
応じて吸気・排気弁の開閉時期を可変制御する吸排気弁
駆動制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種の従来の装置としては種々提供さ
れており、その一つとして本出願人が先に出願した特願
平５−２０２７１８号に記載されたものがある。

【０００３】図１０〜図１１に基づいて概略を説明すれ
ば、この吸排気弁駆動制御装置は、多気筒機関のクラン
ク軸からスプロケットを介して回転力が伝達される駆動
軸１と、該駆動軸１の外周同軸上に相対回転自在に設け
られたカムシャフト２と、各気筒毎に分割された該カム
シャフト２の分割端部間に設けられた制御機構３とを備
えている。前記各カムシャフト２は、夫々外周に１気筒
当たり２つの吸気弁４，４をバルブリフター４ａ，４ａ
を介してバルブスプリング５のばね力に抗して開作動さ
せる２個のカム６，６を一体に有していると共に、シリ
ンダヘッド７上の一対のカム軸受８，９によって回転自
在に支持されている。

【０００４】前記制御機構３は、図１０に示すように各
カムシャフト２の一端部に一体に設けられた円環状の第
１フランジ部１０と、駆動軸１の所定外周位置に連結ピ
ン１１によりスリーブ１２ａを介して固定されて、前記
第１フランジ部１０に対向する円環状の第２フランジ部
１２と、両フランジ部１０，１３間に介装されて駆動軸
１の軸心Ｘからほぼ径方向へ揺動自在に設けられた略円
環状のディスクハウジング１４と、該ディスクハウジン
グ１４の内周に有する大径な支持孔内にプレーンベアリ
ング１３を介して回転自在に保持された環状ディスク１
６とを備えている。また、前記ディスクハウジング１４
は、直径方向の一端部がシリンダヘッド７の上端部に機
関前後方向に沿って延設された支軸１５によって回転自
在に支持されていると共に、他端部が駆動機構により揺
動するようになっている。更に、第１，第２フランジ部
１０，１２の外周部には、互いに１８０°位置に細長い
係合溝１７，１８が半径方向に沿って形成されている一
方、環状ディスク１６には、各先端部が互いに反対方向
に突出して前記各係合溝１７，１８に係合するピン１９
ａ，１９ｂが回転自在に保持されている。

【０００５】そして、例えば機関の高回転時には、ディ
スクハウジング１４が揺動せずに、環状ディスク１６の
中心が駆動軸１の軸心Ｘに合致する一方、機関の低回転
時には、駆動機構２０によりディスクハウジング１４が
支軸１５を支点として揺動し、環状ディスク１６を駆動
軸１の軸心Ｘに対して偏心動させる。

【０００６】即ち、例えば機関高回転時には、ディスク
１６の中心が駆動軸１の軸心Ｘに合致して、駆動軸１と
カムシャフト２との回転位相差が生じない。したがっ
て、駆動軸１の回転に伴い制御機構３を介してカムシャ
フト２が駆動軸１と同期回転し、カム６，６による弁の
作動角が大きくなり、開弁時期が早くなる共に、閉弁時
期が遅くなるため、吸気慣性力を利用した吸気充填効率
が向上する。

【０００７】一方、低回転域では、駆動機構によりディ
スクハウジング１４を介してディスク１６の中心が駆動
軸１の軸心Ｘから偏心可能に制御されるため、各ピン１
９ａ，１９ｂが各係合溝１７，１８の内周面に沿って径
方向に摺動し、一方側ピン１９ａが駆動軸１の軸心Ｘに
接近する場合は、他方側ピン１９ｂは軸心Ｘから離れる
関係になる。したがって、この場合は、ディスク１６
は、駆動軸１に対して角速度が大きくなり、ディスク１
６に対し、カムシャフト２の角速度も大きくなる。この
ため、カムシャフト２は、駆動軸１に対して２重に増速
された状態になる。

【０００８】したがって、駆動軸１とカムシャフト２の
回転位相差が変化し、カムシャフト２の角速度が相対的
に大きい場合は、駆動軸１に対する回転位相は両者１，
２が等速になるまで進み、やがてカムシャフト２の角速
度が相対的に小さくなると、回転位相は両者１，２が等
速になるまで遅れる。

【０００９】そして、回転位相差の最小，最大点の途中
に同位相点が存在し、回転位相の変化では、弁の作動角
が同位相点よりも前の開弁時期が遅れ、同位相点より後
の閉弁時期が進み、全体に小さく制御される。したがっ
て、吸排気弁のバルブオーバラップが小さくなり、燃焼
室の残留ガスが減少し、安定した燃焼により燃費の向上
が図れる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の装置にあっては、前述のようにディスクハウジング
１４は、一端部がシリンダヘッド７の上端部に設けられ
た支軸１５によって支持され、ここを揺動支点として揺
動するようになっている。したがって、支軸１５を必ず
設けなければならないため、部品点数の増加と大型化が
余儀なくされる。

【００１１】しかも、支軸１５は、カムシャフト２のカ
ム軸受８，９とは一切拘わりなく、独立した形でシリン
ダヘッド７上に別個の支持機構により支持されているた
め、さらに大型化が助長され、装置のシリンダヘッド７
上への大きな取付スペースが要求されて、機関への搭載
性が悪化する。

【００１２】また、ディスクハウジング１４の一端部を
支軸１５で支持しているため、駆動軸１の軸心Ｘに対す
る環状ディスク１６の中心位置決め精度が出しにくい。
この結果、所望のバルブタイミング制御が得られないば
かりか、各気筒毎にバルブタイミングのばらつきが生
じ、気筒間の出力ばらつきにより機関の作動の不安定化
を招く惧れがある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記従来の実
情に鑑みて案出されたもので、請求項１記載の発明は、
機関により回転駆動する駆動軸と、該駆動軸の外周に相
対回転自在に設けられて、外周に吸，排気弁を開作動さ
せるカムを一体に有しかつ各気筒毎に分割されたカムシ
ャフトと、該各カムシャフトの一端部に固定された第１
フランジ部と、駆動軸の所定部位に固定されて、前記第
１フランジ部と対向する第２フランジ部と、該両フラン
ジ部間に配置されたほぼ円環状のディスクハウジング
と、該ディスクハウジングの内周に偏心カムリングを介
して回転自在に支持されて、ディスクハウジングの回動
に伴い中心が駆動軸の軸心に対して偏心動可能な環状デ
ィスクと、該環状ディスクと前記各フランジ部との間に
介装されて、環状ディスクのほぼ径方向へ係合溝を介し
て摺動可能なピンと、前記ディスクハウジングを回動制
御する駆動機構とを備えた吸排気弁駆動制御装置におい
て、前記ディスクハウジングを、ベアリングを介して前
記両フランジ部の少なくともいずれか一方の外周面に回
転自在に支持したことを特徴としている。

【００１４】請求項２記載の発明は、前記ディスクハウ
ジングの両側部を、ベアリングを介して前記両フランジ
部の各外周面に回転自在に支持したことを特徴としてい
る。

【００１５】請求項３記載の発明は、前記ベアリングの
環状内輪を前記フランジ部の外周面に嵌合固定したこと
を特徴としている。

【００１６】請求項４記載の発明は、前記内輪を、フラ
ンジ部の外周面に嵌合固定した円環状本体と、該円環状
本体の前記環状ディスク側の端縁から外方へ立設した鍔
部とから構成して、横断面Ｌ字形に形成したことを特徴
としている。

【００１７】請求項５記載の発明は、前記駆動軸の内部
軸方向に油供給通路を形成すると共に、該駆動軸の外周
面と環状ディスクの駆動軸挿通孔の内周面との間に、前
記係合溝と連通する油留まり部を形成し、かつ駆動軸の
周壁に油供給通路と油留まり部とを連通する連通孔を形
成し、さらに前記環状ディスクの内部に前記油留まり部
と前記ベアリングとを連通する油通路をほぼ径方向に沿
って貫通形成したことを特徴としている。

【００１８】請求項６記載の発明は、前記油通路は、環
状ディスクに形成された前記各ピン保持用のピン孔を通
過すると共に、環状ディスクに前記ピンを介して径方向
に作用する主たる荷重方向に対してほぼ直交する方向で
かつ前記各ピン孔の外端側に有する薄肉部を避けた位置
に開口部が形成されたことを特徴としている。

【００１９】

【発明の実施の形態】図１〜図３は本発明に係る吸排気
弁駆動制御装置を多気筒内燃機関の吸気側に適用した第
１の実施形態を示し、図中２１は機関のクランク軸から
スプロケットを介して回転力が伝達される駆動軸、２２
は該駆動軸２１の外周に相対回転可能に配置され、かつ
駆動軸２１の中心Ｘと同軸上に設けられた複数のカムシ
ャフトであって、前記駆動軸２１は、機関前後方向に延
設されていると共に、内部軸線方向に外部から潤滑油を
導入する油供給通路２１ｂが形成されている。

【００２０】前記カムシャフト２２は、長手方向の所定
位置で各気筒毎に軸直角方向から分割されており、内部
軸方向に形成された挿通孔２２ａ内に駆動軸２１が挿通
している一方、図外のシリンダヘッド７上端部に有する
カム軸受２４に回転自在に支持されている。また、カム
シャフト２２は、図２に示すように外周の所定位置に１
気筒当たり２つの吸気弁２３を図外のバルブスプリング
のばね力に抗してバルブリフター２５を介して開作動さ
せる２つのカム２６が一体に設けられている。

【００２１】前記カム軸受２４は、図１，図２に示すよ
うに、シリンダヘッド７の上面に形成されたカム受面上
に跨設されたメインブラケット２７と、該メインブラケ
ット２７の上面に設けられたサブブラケット２８と、両
ブラケット２７，２８の両端部を共締め固定する左右一
対のカムボルト２９，３０とを備えている。また、前記
メインブラケット２７の上面中央に円弧状の軸受面２７
ａが形成されている一方、サブブラケット２８の下面中
央に前記軸受面２７ａと共働して後述する制御シャフト
４４を軸受けする円弧状の軸受面２８ａが形成されてい
る。

【００２２】また、各カムシャフト２２の一方側の分割
端部には、第１フランジ部３１が一体に設けられてお
り、この第１フランジ部３１の外周部に、Ｕ字形状の第
１係合溝３２が径方向に沿って形成されている。さら
に、この第１フランジ部３１と所定の隙間をもって対向
する軸方向位置に駆動軸２１に連結された第２フランジ
部３３が設けられている。この第２フランジ部３３は、
外径が第１フランジ部３１の外径と同一に設定されてい
ると共に、内周部に駆動軸２１の所定外周面に嵌合した
スリーブ３３ａを一体に有し、該スリーブ３３ａに径方
向から挿通された連結ピン３４とによって駆動軸２１に
連結されている。また、第２フランジ部３３の外周部つ
まり第１フランジ部３１の第１係合溝３２と反対側の位
置にＵ字形の第２係合溝３５が径方向に沿って形成され
ている。そして、前記第１係合溝３２と第２係合溝３５
には、後述する環状ディスク３９に基端部が保持された
第１，第２ピン３６，３７の先端部３６ａ，３７ａが摺
動自在に係合している。

【００２３】この第１，第２ピン３６，３７は、図４Ａ
に示すように円柱状の基端部の前記先端部３６ａ，３７
ａがほぼ長方体を呈し、先端部３６ａ，３７ａの両側面
３６ｂ，３７ｂが各係合溝３２，３５の対向する内面に
摺接するように二面巾状に形成されていると共に、上下
面３６ｃ，３７ｃも最大外方向の摺動位置において後述
する内輪４１ａ，４２ａとの干渉を防止するために平坦
状に切欠形成されている（図４Ｂ参照）。

【００２４】さらに、前記第１フランジ部３１と第２フ
ランジ３３の外周側に円環状のディスクハウジング３８
が設けられていると共に、両フランジ部３１，３３の間
には、環状ディスク３９がサンドイッチ状に介装されて
いる。

【００２５】前記ディスクハウジング３８は、図１及び
図２に示すように、その巾寸法が第１，第２フランジ部
３１，３３と環状ディスク３９と各巾寸法全体を合わせ
た大きさよりも小さく設定され、内周面の巾方向の中心
位置に偏心カムリング３８ａが周方向に沿って一体に設
けられていると共に、外周面の巾方向の中央位置に伝達
機構の一部を構成する平歯車４０が周方向に沿って一体
に設けられている。

【００２６】そして、このディスクハウジング３８は、
偏心カムリング３８ａを中心とした両側部の３８ｂ，３
８ｃ内周面がニードルベアリング４１，４２を介して両
フランジ部３１，３３に回転自在に支持されている。即
ち、この両側部３８ｂ，３８ｃは円環状を呈し、内径が
両ニードルベアリング４１，４２の外径寸法より若干大
きく設定されている一方、両フランジ部３１，３３の各
外端縁にニードルベアリング４１，４２のスラスト方向
の移動を規制する環状ストッパ３１ｂ，３３ｂが一体に
突設されている。

【００２７】また、前記ニードルベアリング４１，４２
は、図５に示すように円環状の内輪４１ａ，４２ａと、
該各内輪４１ａ，４２ａの外周を転動する複数のローラ
４１ｂ，４２ｂと、該ローラ４１ｂ，４２ｂの外側に嵌
合保持する外輪４１ｃ，４２ｃとを備えている。前記内
輪４１ａ，４２ａは、鋼材で形成され、各フランジ部３
１，３３の外周面に圧入固定されて、該各フランジ部３
１，３３外周全体を挾圧支持すると共に、第１，第２係
合溝３２，３５の各開口端を閉止するようになってい
る。前記外輪４１ｃ，４２ｃは、夫々横断面コ字形状を
呈し、夫々の両側壁が各環状ストッパ３１ｂ，３３ｂの
内側と偏心カムリング３８ａの両側に摺動自在に配置さ
れている。

【００２８】また、前記偏心カムリング３８ａは、図２
に示すように肉厚巾が円周方向に変化し、図示のように
最上端部側が最大厚肉部３８ｄに設定されて、ここから
下端部側へ漸次薄肉に設定されて、全体が三ケ月状に形
成されている。また、このディスクハウジング３８は、
後述する駆動機構４３によって回転制御されている。

【００２９】前記環状ディスク３９は、外径が両フラン
ジ部３１，３３の外径より小径なドーナツ板状を呈し、
中央に駆動軸２１が挿通される比較的大径な挿通孔３９
ａが形成されて駆動軸２１と挿通孔３９ａ間に自身の偏
心回転を許容する隙間Ｓが形成されていると共に、外周
面３９ｂが前記偏心カムリング３８ａの内周側に設けら
れた第２のニードルベアリング４８によって回転自在に
支持されている。

【００３０】この第２のニードルベアリング４８は、図
５に示すように環状ディスク３９の外周面に転動自在に
支承された複数のローラ４８ａと、該ローラ４８ａの外
側を保持する横断面ほぼコ字形状の外輪４８ｂとから構
成されている。また、環状ディスク３９は、前記第１係
合溝３２と第２係合溝３５とに対応した両端面位置に、
図３にも示すように前記第１，第２ピン３６，３７の基
端部を回転自在に保持する第１，第２ピン孔３９ｂ，３
９ｃが夫々形成されている。また、前記隙間Ｓは、油溜
まり部として機能し、各係合溝３２，３５に連通してい
ると共に、駆動軸２１の周壁に半径方向に形成された油
孔２１ｂを介して駆動軸２１内の油供給通路２１ａと連
通している。

【００３１】また、前記環状ディスク３９の内部には、
図７Ａ，Ｂに示すように隙間Ｓと各ニードルベアリング
４１，４２，４８とを連通する一対の油通路４９，５０
が径方向に貫通形成されている。この各油通路４９，５
０は、図７Ａに示すように環状ディスク３９に前記ピン
３６，３７を介して径方向に作用する荷重方向（白矢
印）に対してほぼ直交する方向に沿って形成され、中央
部位４９ａ，５０ａが各ピン孔３９ｂ，３９ｃに臨んで
開口されていると共に、外端開口部４９ｂ，５０ｂがピ
ン孔３９ｂ，３９ｃの外端側に有する薄肉部３９ｄ，３
９ｅを避けた部位に外側開口形成されている。

【００３２】前記駆動機構４３は、図３に示すようにカ
ムシャフト２２の上方位置に平行に設けられた制御シャ
フト４４と、該制御シャフト４４の一端部に設けられた
電磁アクチュエータたるステッピングモータ４５とから
構成されている。

【００３３】前記制御シャフト４４は、外径が比較的小
径に形成され、機関前後方向へ延設されていると共に、
カム軸受２４，２４に対応した大径部位４４ａ，４４ａ
が前記両軸受面２７ａ，２８ａ間で軸受けされている。
また、両大径部位４４ａ，４４ａ間に、前記ディスクハ
ウジング３８の平歯車４０に噛合して回転力を伝達する
伝達機構の一部を構成する筒状の歯車部４６が一体に設
けられている。

【００３４】前記ステッピングモータ４５は、コントロ
ーラ４７によって回転駆動され、このコントローラ４７
は、クランク角センサやエアーフローメータ等の各種セ
ンサによって機関回転数及び機関の負荷等を検出してス
テッピングモータ４５に制御信号を出力するようになっ
ている。

【００３５】以下、本実施例の作用について説明する。
まず、機関低回転時には、かかる運転状態を検出したコ
ントローラ４７からの制御信号によりステッピングモー
タ４５が一方向へ回転して制御シャフト４４を同方向へ
回転させる。これにより、ディスクハウジング３８は、
歯車部４６と平歯車４０を介して両フランジ部３１，３
３に支持されながら回転して、偏心カムリング３８ａの
厚肉部３８ｄが最下端となる位置に回転保持されるた
め、環状ディスク３９は図１に示すようにその中心Ｙが
駆動軸２１の軸心Ｘから垂直上方向位置に偏心移動す
る。したがって、第１係合溝４１に対する第１ピン３６
並びに第２係合溝４２に対する第２ピン３７との摺動位
置が駆動軸２１の１回転毎に径方向へ往復移動し、環状
ディスク３９の角速度が変化する。

【００３６】即ち、第１ピン３６が第１係合溝４１内を
摺動して駆動軸２１の中心Ｘに接近し、第２ピン３７が
第２係合溝４２内を摺動して中心Ｘから離れると、環状
ディスク３９は駆動軸２１に対して角速度が小さくな
り、カムシャフト２２の角速度も小さくなり、両者２
１，２２の角速比（ｗｃ／ｗｄ）は図８Ａの破線で示す
特性となる（上記作用は図８Ａの※印点を示す）。した
がって、カムシャフト２２は、駆動軸２１に対して２重
に減速された状態になる。

【００３７】この結果、カムシャフト２２及びカム２６
と駆動軸２１との回転位相差は、図８Ｂの破線に示すよ
うに変化する。したがって、吸気弁２３は、そのバルブ
リフト特性が図８Ｃの破線で示すように弁作動角（バル
ブタイミング）が小さくなり、開弁時期が遅く、閉弁時
期が十分に早くなる。このため、排気弁とのバルブオー
バラップが小さくなって燃焼が改善され、燃費の向上等
が図れる。

【００３８】一方、機関低回転域から高回転域に移行し
た場合は、その運転状態を検出したコントローラ４７か
らステッピングモータ４５に制御信号が出力されて、制
御シャフト４４が例えばさらに同方向へ１８０°回転す
る。したがって、ディスクハウジング３８は、図１，図
２に示すように偏心カムリング３８ａの厚肉部３８ｄが
最上端となる位置に回転保持される。このため、環状デ
ィスク３９は、図示のようにその中心Ｙが駆動軸２１の
軸心Ｘから垂直下方向位置に偏心移動する。したがっ
て、第２係合溝４２と第２ピン３７並びに第１係合溝４
１と第１ピン３６との摺動位置が前述と同じく、駆動軸
２１の回転毎に環状ディスクの径方向へ往復移動し、環
状ディスク３９の角速度が変化する。

【００３９】そして、環状ディスク３９の角速度の変化
に伴い駆動軸２１に対するカムシャフト２２の角速度が
低回転時とは逆に大きくなり、両者２１，２２の角速度
比が図８Ａの実線で示す特性となる（図８Ａの☆印の点
となる）。したがって、カムシャフト２２は、駆動軸２
１に対して２重に増速された状態になり、両者２１，２
２の回転位相は、図８Ｂの実線で示すように変化し、低
回転時とは略対称形の変化特性となる。このため、吸気
弁２３は、バルブリフト特性が図８Ｃの実線で示すよう
にバルブリフトは一定のまま、弁作動角（バルブタイミ
ング）が大きくなり、低回転時に比較して開弁時期が早
くなり、閉弁時期が遅くなる。このため、慣性吸気を利
用した吸気充填効率が向上し、出力トルクの向上が図れ
る。

【００４０】また、本実施態様では、ディスクハウジン
グ３８を、従来のように支軸によって支持するのではな
く、両フランジ部３１，３３の外周面でニードルベアリ
ング４１，４２を介して回転自在に支持するようにした
ため、支軸やこの支軸を支持する支持機構が不要とな
り、この分、部品点数の削減が図れると共に、装置全体
のコンパクト化が図れる。

【００４１】さらに、ディスクハウジング３８が２つの
ニードルベアリング４１，４２によって回転支持され、
かつ環状ディスク３９も第２のニードルベアリング４８
で支持されているため、各フランジ部３１，３３とディ
スクハウジング３８との間、並びにディスクハウジング
３８と環状ディスク３９との間の摩擦抵抗が大巾に低減
し、各構成部品の常時円滑な揺動及び回転作用が得られ
る。この結果、特にディスクハウジング３８の各フラン
ジ部３１，３３の回転による連れ回りが防止され、これ
によってステッピングモータ４５の負荷も軽減される。
このため、ステッピングモータ４５を小型化できると共
に、バルブタイミング制御精度を向上させることが可能
になる。

【００４２】しかも、前記両フランジ部３１，３３は、
ニードルベアリング４１，４２の内輪４１ａ，４２ａに
よって夫々外周面が挾圧クランプ状態に保持されるた
め、駆動時に各ピン３６，３７から各フランジ部３１，
３３に伝達される荷重負荷を十分に支持することができ
る。すなわち、駆動軸２１の回転力が直接的に作用する
第２ピン３７は、その回転力を第２フランジ部３３の第
２係合溝３５の内面から伝達するのに際し、該第２係合
溝３５の回転方向と反対方向の内面を周方向に押圧し、
該第２係合溝３５を拡開する方向に押圧する（図６白矢
印）。一方、第２ピン３７から環状ディスク３９を介し
て第１ピン３６に作用した回転力はさらに第１係合溝３
２の回転方向の内面に作用して同じく拡開する方向に押
圧する（図６黒矢印）。したがって、各フランジ部３
１，３３には、拡径方向の引張応力が作用するため、そ
の材質も強度の高いものが要求される。しかし、本実施
形態によれば、前述のように各内輪４１ａ，４２ａが各
フランジ部３１，３３の外周面全体をクランプ状態に嵌
合するので、前記過度な引張応力を確実に支持すること
ができる。したがって、例えば第１フランジ部３１及び
それと一体のカムシャフト２２を、耐摩耗性が良いが強
度の低い例えばねずみ鋳鉄チル材で形成することが可能
になり、耐久性の向上とコストの低廉化が図れる。

【００４３】さらにまた、両フランジ部３１，３３の支
持力によりディスクハウジング３８の変形も抑制できる
ので、環状ディスク３９の中心Ｙの位置ずれも防止で
き、これによってバルブタイミングのずれが防止でき
る。

【００４４】しかも、ディスクハウジング３８は、前述
のようにカムシャフト２２の第１フランジ部３１と駆動
軸２１の第２フランジ部３３にニードルベアリング４
１，４２を介して回転自在に支持されて、この内周側で
さらに別のニードルベアリング４８を介して環状ディス
ク３９を回転自在に支持するようにしているため、駆動
軸２１の軸心Ｘに対する環状ディスク３９の回転中心の
位置精度が出し易くなる。

【００４５】また、油供給通路２１ａから通孔２１ｂを
介して隙間Ｓ内に供給された潤滑油は、各係合溝３２，
３５内に流入する一方油通路４９，５０を通って各ピン
孔３９ｂ，３９ｃ、ピン３６，３７や環状ディスク３９
の外周側の第２のニードルベアリング４８や及び各フラ
ンジ部３１，３３の外周側の各ニードルベアリング４
１，４２等の各摺動部に供給される。特に、各係合溝３
２，３５に流入した潤滑油は、各内輪４１ａ，４２ａに
よって各係合溝３２，３５から外部への流出が抑制され
て貯留された形になるので、各ピン３６，３７先端部３
６ａ，３７ａと係合溝３２，３５の内面との間の潤滑性
が良好になることは勿論のこと、各係合溝３２，３５内
の潤滑油が遠心力によって各部の隙間並びに前記油通路
４９，５０から各ニードルベアリング４１，４２，４８
にも積極的に供給されるため、該各ニードルベアリング
４１，４２，４８のローラ４１ｂ，４２ｂ，４８ａ等の
潤滑性もさらに良好になり、各摺動部の潤滑性能が向上
し、摩耗の発生を防止できる。 また、各フランジ部３
１，３３とディスクハウジング３８間の摩擦抵抗が各ニ
ードルベアリング４１，４２と供給された潤滑油によっ
てさらに低減できるため、カムシャフト２２全体の駆動
損失を低減できる。また、各フランジ部３１，３３とデ
ィスクハウジング３８との間の良好な潤滑性により駆動
軸２１とカムシャフト２２との回転に伴うディスクハウ
ジング３８の連れ回りが十分に防止されるため、ステッ
プモータ４５の回転駆動負荷が一層減少する。

【００４６】また、油通路４９，５０の前述のような特
異な配置構成によって環状ディスク３９の剛性の低下を
防止できる。

【００４７】さらに、制御シャフト４４は、カムシャフ
ト２２のカム軸受２４を利用し、つまりカム軸受２４の
メインブラケット２７とサブブラケット２８の各軸受面
２７ａ，２８ａ間に軸受け支持するようにしたため、別
個に設ける必要がなくなり、この点でも部品点数の削減
が図れる。

【００４８】また、駆動軸２１に、カムシャフト２２，
ピン３６，３７，環状ディスク３９，ディスクハウジン
グ３８などが一体的に組み付けられたカムシャフトアッ
センブリの上から制御シャフト４４を順に組み付けるこ
とができ、組立作業能率が向上する。

【００４９】さらに、両ニードルベアリング４１，４２
は、各フランジ部３１，３３の突起部３１ｂ，３３ｂに
よってスラスト方向に保持されて、ディスクハウジング
３８もスラスト方向に支持されるため、簡単な構造で効
果的な支持作用が得られる。また、第２のニードルベア
リング４８は、外輪４８ｂのみで内輪を有していないた
め、その分、環状ディスク３９の外径も小さくなるの
で、ディスクハウジング３８の外径も小さくでき、この
結果、装置のコンパクト化が図れ、機関への搭載性が良
好になる。

【００５０】また、制御シャフト４４は、ディスクハウ
ジング３８を回転させるトルクを伝達できればよいた
め、細径化でき、これによりサブブラケット２８の高さ
を十分に低くすることが可能になる。

【００５１】図９は本発明の第２の実施形態を示し、両
ニードルベアリング４１，４２の内輪４１ａ，４２ａの
構造を変更すると共に、外輪を廃止したものである。

【００５２】すなわち、各内輪４１ａ，４２ａは、全体
が横断面Ｌ字形に折曲形成され。円環状の本体と、該円
環状本体の環状ディスク３９側の端縁から直角外方へ折
曲された環状鍔部４１ｄ，４２ｄとから構成されてい
る。また、環状本体のほぼ中央に各係合溝３２，３５と
連通する油孔４１ｅ，４２ｅが形成されている。

【００５３】前記環状本体は、第１の実施形態のものと
ほぼ同一構成であるが、鍔部４１ｄ，４２ｄは、外面が
偏心カムリング３８ａの両側面に摺接自在に当接して、
各ローラ４１ｂ，４２ｂの偏心カムリング３８ａの両側
面への当接を防止するように配置されている。

【００５４】このように、本実施形態にあっては、外輪
を廃止して内輪４１ａ，４２ａのみとしたため、内輪４
１ａ，４２ａによる作用効果は第１実施形態と同様であ
ることは勿論のこと、部品点数の削減が図れると共に、
ニードルベアリング４１，４２の巾方向の長さを短尺化
でき、さらに外径を小さくすることが可能となる。ま
た、外輪を廃止した分、ディスクハウジング３８の偏心
量を拡大し易くなる。

【００５５】また、内輪４１ａ，４２ａは、単に横断面
Ｌ字形に折曲されているだけであるから、第１実施形態
のように外輪をコ字形状に折曲したことによる平面度を
出すことの困難性に比較して、環状本体の外周面の平面
度が出し易くなり、各ローラ４１ｂ，４２ｂの円滑な転
動性及び耐久性が図れる。

【００５６】さらに、各係合溝３２，３５に貯留された
潤滑油は、各油孔４１ｅ，４２ｅからローラ４１ｂ，４
２ｂ方向に流出されるため、該各ローラ４１ｂ，４２ｂ
の潤滑性が良好になる。

【００５７】尚、本発明は前記実施例の構成に限定され
るものではなく、例えばディスクハウジング３８を両フ
ランジ部３１，３３ではなく、一方のフランジ部の外周
面でニードルベアリングを介して支持することも可能で
ある。また、偏心カムリング３８ａは、環状ディスク３
９の外周に一体に設けることも可能である。

【００５８】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、ディスクハウジングを、従来のような支軸では
なく、少なくともいずれか一方のフランジ部によって回
転自在に支持するようにしたため、前記支軸や該支軸を
支持する支持機構が全く不要になる。したがって、部品
点数が減少し、製造作業能率の向上とコストの低廉化が
図れると共に、装置全体のコンパクト化が図れ、機関へ
の搭載性が向上する。

【００５９】請求項２の発明によれば、ディスクハウジ
ングを両フランジ部の各外周面で支持したため、荷重に
よるディスクハウジングの変形を抑制でき、環状ディス
クの中心のずれが防止できると共に、駆動軸の曲げ荷重
の発生も防止できる。この結果、バルブタイミングの制
御精度の低下が防止される。

【００６０】特に、本発明はディスクハウジングをフラ
ンジ部の外周面でニードルベアリングによって回転自在
に支持したため、ディスクハウジングとフランジ部との
間の摩擦抵抗が大巾に低減して、フランジ部の高速回転
に伴うディスクハウジングの連れ回りが防止される。こ
の結果、駆動機構の駆動負荷が抑制できると共に、バル
ブタイミングの制御精度が向上する。

【００６１】請求項３記載の発明によれば、内輪によっ
てフランジ部をクランプ状態として支持するため、ピン
から伝達される過度な引張応力を抑制することが可能と
なり、この結果、フランジ部の材質を耐摩耗性が高く強
度が比較的低いものも使用することが可能になる。

【００６２】請求項４記載の発明によれば、内輪の特異
な構造に伴い、外輪を廃止できることにより、部品点数
の削減と、ベアリングの外径を小さくすることが可能に
なると共に、ディスクハウジングの偏心量を拡大し易く
なる。

【００６３】請求項５記載の発明によれば、各ベアリン
グやディスクハウジングの各摺動部の潤滑性が良好とな
り、摩擦抵抗がさらに低減する。

【００６４】請求項６記載の発明によれば、油通路によ
るディスクハウジングと環状ディスクとの間に積極的に
潤滑油を供給することが可能となり、潤滑性が向上する
ばかりか、油通路の特異な配置構成により、環状ディス
クの剛性の低下を抑制できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施形態を示す要部断面図。

【図２】図１のＡ−Ａ線断面図。

【図３】本実施形態の要部平面図。

【図４】Ａは本実施形態に供されるピンの斜視図、Ｂは
該ピンと内輪との配置関係を示す説明図。

【図５】本実施形態の要部を示す断面図。

【図６】本実施形態におけるフランジ部に作用する荷重
特性を示す概略図。

【図７】Ａは環状ディスクハウジングの正面図、Ｂは平
面図。

【図８】Ａは本実施形態における駆動軸とカムシャフト
の角速度比の特性図、ＢはＡに対応する駆動軸とカムシ
ャフトの回転位相差の特性図、Ｃはバルブリフト特性
図。

【図９】本発明の第２実施形態を示す要部断面図。

【図１０】従来の装置を示す要部断面図。

【図１１】図１０のＣ矢視図。

【符号の説明】

２１…駆動軸 ２１ａ…油供給通路 ２１ｂ…油孔（連通孔） ２２…カムシャフト ２３…吸気弁 ２４…カム軸受 ２７…メインブラケット ２８…サブブラケット ３１…第１フランジ部 ３２…第１係合溝 ３３…第２フランジ部 ３５…第２係合溝 ３６，３７…第１，第２ピン ３８…ディスクハウジング ３８ａ…偏心カムリング ３９…環状ディスク ３９ａ…挿通孔 ４１，４２…ニードルベアリング ４１ａ，４２ａ…内輪 ４３…駆動機構 ４４…制御シャフト ４５…ステップモ−タ Ｓ…隙間（油留まり部）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 吉彦 神奈川県厚木市恩名1370番地 株式会社ユ ニシアジェックス内 (72)発明者 中村 信 神奈川県横浜市神奈川区宝町２番地 日産 自動車株式会社内

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 機関により回転駆動する駆動軸と、該駆
   動軸の外周に相対回転自在に設けられて、外周に吸，排
   気弁を開作動させるカムを一体に有しかつ各気筒毎に分
   割されたカムシャフトと、該各カムシャフトの一端部に
   固定された第１フランジ部と、駆動軸の所定部位に固定
   されて、前記第１フランジ部と対向する第２フランジ部
   と、該両フランジ部間に配置されたほぼ円環状のディス
   クハウジングと、該ディスクハウジングの内周に偏心カ
   ムリングを介して回転自在に支持されて、ディスクハウ
   ジングの回動に伴い中心が駆動軸の軸心に対して偏心動
   可能な環状ディスクと、該環状ディスクと前記各フラン
   ジ部との間に介装されて、環状ディスクのほぼ径方向へ
   係合溝を介して摺動可能なピンと、前記ディスクハウジ
   ングを回動制御する駆動機構とを備えた吸排気弁駆動制
   御装置において、 前記ディスクハウジングを、ベアリングを介して前記両
   フランジ部の少なくともいずれか一方の外周面に回転自
   在に支持したことを特徴とする内燃機関の吸排気弁駆動
   制御装置。
2. 【請求項２】 前記ディスクハウジングの両側部を、ベ
   アリングを介して前記両フランジ部の各外周面に回転自
   在に支持したことを特徴とする請求項１記載の内燃機関
   の吸排気弁駆動制御装置。
3. 【請求項３】 前記ベアリングの環状内輪を前記フラン
   ジ部の外周面に嵌合固定したことを特徴とする請求項１
   または２記載の内燃機関の吸排気弁駆動制御装置。
4. 【請求項４】 前記内輪を、フランジ部の外周面に嵌合
   固定した円環状本体と、該円環状本体の前記環状ディス
   ク側の端縁から外方へ立設した鍔部とから構成して、横
   断面Ｌ字形に形成したことを特徴とする請求項３記載の
   内燃機関の吸排気弁駆動制御装置。
5. 【請求項５】 前記駆動軸の内部軸方向に油供給通路を
   形成すると共に、該駆動軸の外周面と環状ディスクの駆
   動軸挿通孔の内周面との間に、前記係合溝と連通する油
   留まり部を形成し、かつ駆動軸の周壁に油供給通路と油
   留まり部とを連通する連通孔を形成し、さらに前記環状
   ディスクの内部に前記油留まり部と前記ベアリングとを
   連通する油通路をほぼ径方向に沿って貫通形成したこと
   を特徴とする請求項１〜４いずれかに記載の内燃機関の
   吸排気弁駆動制御装置。
6. 【請求項６】 前記油通路は、環状ディスクに形成され
   た前記各ピン保持用のピン孔を通過すると共に、環状デ
   ィスクに前記ピンを介して径方向に作用する主たる荷重
   方向に対してほぼ直交する方向でかつ前記各ピン孔の外
   端側に有する薄肉部を避けた位置に開口部が形成された
   ことを特徴とする請求項５記載の内燃機関の吸排気弁駆
   動制御装置。