JP3907264B2 - 内燃機関の吸排気弁駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転状態に応じて吸気・排気弁の開閉時期を可変制御する吸排気弁駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の吸排気弁駆動制御装置としては種々提供されており、その一つとして本出願人が先に出願した特開平5−20217号に記載されたものがある。
【0003】
図13〜図14に基づいて概略を説明すれば、この吸排気弁駆動制御装置は、多気筒機関のクランク軸からスプロケットを介して回転力が伝達される駆動軸1と、該駆動軸1の外周側に同軸上に相対回転自在に設けられたカムシャフト2と、各気筒毎に分割された該カムシャフト2の分割端部間に設けられた制御機構3とを備えている。前記各カムシャフト2は、夫々外周に1気筒当たり2つの吸気弁4,4をバルブリフター4a,4aを介してバルブスプリング5のばね力に抗して開作動させる2個のカム6,6を一体に有していると共に、シリンダヘッド7上の一対のカム軸受8,9によって回転自在に支持されている。
【0004】
前記制御機構3は、図13に示すように各カムシャフト2の一端部に一体に設けられた円環状の第1フランジ部10と、駆動軸1の所定外周位置に連結ピン11によりスリーブ12aを介して固定されて、前記第1フランジ部10に対向する円環状の第2フランジ部12と、両フランジ部10,12間に介装されて駆動軸1の軸心Xから略径方向へ揺動自在に設けられた略円環状のディスクハウジング14と、該ディスクハウジング14の内周に有する大径な支持孔内にプレーンベアリング13を介して回転自在に保持された環状ディスク16とを備えている。
【0005】
また、前記ディスクハウジング14は、直径方向の一端部がシリンダヘッド7の上端部に機関前後方向に沿って延設された支軸15によって回転自在に支持されていると共に、他端部が駆動機構により揺動するようになっている。更に、第1,第2フランジ部10,12の外周部には、互いに180°位置に細長い係合溝17,18が半径方向に沿って形成されている一方、環状ディスク16の両側面には、互いに反対方向に突出して前記各係合溝17,18に係合するピン19a,19bが突設されている。
【0006】
そして、例えば機関の高回転時には、ディスクハウジング14が揺動せずに、環状ディスク16の中心が駆動軸1の軸心Xに合致する一方、機関の低回転時には、駆動機構20によりディスクハウジング14が支軸15を支点として揺動し、環状ディスク16を駆動軸1の軸心Xに対して偏心動させる。
【0007】
即ち、例えば機関高回転時には、ディスク16の中心が駆動軸1の軸心Xに合致して、駆動軸1とカムシャフト2との回転位相差が生じない。したがって、駆動軸1の回転に伴い制御機構3を介してカムシャフト2が駆動軸1と同期回転し、カム6,6による弁の作動角が大きくなり、開弁時期が早くなる共に、閉弁時期が遅くなるため、吸気慣性力を利用した吸気充填効率が向上する。
【0008】
一方、低回転域では、駆動機構によりディスクハウジング14を介してディスク16の中心が駆動軸1の軸心Xから偏心可能に制御されるため、各ピン19a,19bが各係合溝17,18の内周面に沿って径方向に摺動し、一方側ピン19aが駆動軸1の軸心Xに接近する場合は、他方側ピン19bは軸心Xから離れる関係になる。したがって、この場合は、ディスク16は、駆動軸1に対して角速度が大きくなり、ディスク16に対し、カムシャフト2の角速度も大きくなる。このため、カムシャフト2は、駆動軸1に対して2重に増速された状態になる。
【0009】
したがって、駆動軸1とカムシャフト2の回転位相差が変化し、カムシャフト2の角速度が相対的に大きい場合は、駆動軸1に対する回転位相は両者1,2が等速になるまで進み、やがてカムシャフト2の角速度が相対的に小さくなると、回転位相は両者1,2が等速になるまで遅れる。
【0010】
そして、回転位相差の最小,最大点の途中に同位相点が存在し、回転位相の変化では、弁の作動角が同位相点よりも前の開弁時期が遅れ、同位相点より後の閉弁時期が進み、全体に小さく制御される。したがって、吸排気弁のバルブオーバラップが小さくなり、燃焼室の残留ガスが減少し、安定した燃焼により燃費の向上が図れる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の装置にあっては、前述のようにディスクハウジング14の一端部が、シリンダヘッド7の上端部に設けられた支軸15によって支持されており、すなわち、制御機構3の主たる構成部材とは一切拘わりなく、独立した形でシリンダヘッド7上に別個の支持機構により支持されているため、大型化が余儀なくされ、装置のシリンダヘッド7上への大きな取付スペースが要求されて、機関への搭載性が悪化する。
【0012】
また、ディスクハウジング14の一端部を制御機構3とは分離した支軸15で支持しているため、駆動軸1の軸心Xに対する環状ディスク16の中心位置決め精度が出しにくい。この結果、所望のバルブタイミング制御が得られないばかりか、各気筒毎にバルブタイミングのばらつきが生じ、気筒間の出力のばらつきにより機関の作動の不安定化を招く惧れがある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の実情に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、機関により回転駆動する駆動軸の外周に相対回転自在の設けられ、各気筒毎に分割形成されたカムシャフトと、該カムシャフトの外周に設けられて、吸,排気弁を開作動させるカムと、前記各カムシャフトと駆動軸との間を連係しつつ中心が駆動軸の軸心に対して偏心動可能な環状ディスクと、を備え、前記駆動軸の外周に第1カムリングを摺動自在に嵌装すると共に、該第1カムリングの外周に駆動機構によって回転駆動する第2カムリングを回転自在に保持し、かつ該第2カムリングの外周に前記環状ディスクを偏心回動自在に支持したことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、前記環状ディスクが、該環状ディスクのほぼ径方向へ摺動可能に設けられたピンを介して前記各カムシャフトの端部と該端部に対向して配置されて駆動軸に固定された駆動プレートとを連係させたことを特徴としている。
請求項3記載の発明は、前記第1カムリングを回転規制手段によって自由な回転を規制したことを特徴としている。
請求項4記載の発明は、前記第2カムリングの中心を、第1カムリングの中心に対して前記駆動軸の軸心側に位置させて、第2カムリングの中心の移動軌跡が駆動軸の軸心を通過するように形成したことを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記環状ディスクが、該環状ディスクのほぼ径方向へ摺動可能に設けられたピンを介して前記各カムシャフトの端部と該端部に対向して配置されて駆動軸に固定された駆動プレートとを連係させたことを特徴としている。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記第1カムリングを回転規制手段によって自由な回転を規制したことを特徴としている。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記第2カムリングの中心を、第1カムリングの中心位置と反対側に位置させると共に、第2カムリングの中心移動軌跡を駆動軸の中心を通過するように形成したことを特徴としている。
【0019】
前記請求項の発明は、基本的には環状ディスクを従来のようなディスクハウジングによって支持するのではなく、駆動軸の外周に設けられたカムリングを介して駆動軸の外周に回転自在に支持するようにしたため、装置全体のコンパクト化が図れ、機関への搭載性が良好となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明に係る吸排気弁駆動制御装置を多気筒内燃機関の吸気側に適用した第1実施例を示し、図中21は機関のクランク軸からスプロケットを介して回転力が伝達される駆動軸、22は該駆動軸21の外周に相対回転可能に配置され、かつ駆動軸21の中心Xと同軸上に設けられた複数のカムシャフトであって、前記駆動軸21は、機関前後方向に延設されていると共に、内部軸線方向に外部から潤滑油を導入する油供給通路21aが形成されている。
【0021】
前記カムシャフト22は、長手方向の所定位置で各気筒毎に軸直角方向から分割されており、内部軸方向に形成された挿通孔22a内に駆動軸21が挿通している一方、シリンダヘッド7の上端部に有するカム軸受24に回転自在に支持されている。また、図1及び図3に示すように外周の所定位置に1気筒当たり2つの吸気弁23を図外のバルブスプリングのばね力に抗してバルブリフター25を介して開作動させる2つのカム26が一体に設けられている。
【0022】
前記カム軸受24は、図1,図3に示すように、シリンダヘッド7の上面に形成されたカム受面上に跨設されたメインブラケット27と、該メインブラケット27の上面に設けられたサブブラケット28と、両ブラケット27,28の両端部を共締め固定する左右一対のカムボルト29,29とを備えている。また、前記メインブラケット27の上面中央に円弧状の軸受面27aが形成されている一方、サブブラケット28の下面中央に前記軸受面27aと共働して後述する制御シャフトを軸受けする円弧状の軸受面28aが形成されている。
【0023】
また、各カムシャフト22の一方側の分割端部22bは、図1,図2に示すように比較的大径に形成されていると共に、その端面の一部にカム26のリフト形状とほぼ等しい三角形状のボス部31が一体に突設されており、このボス部31に、第1保持孔32が軸方向に貫通形成されている。さらに、このボス部31上のカムシャフト分割端面と所定の隙間をもって対向する位置に、駆動軸21に連結された駆動プレート33が設けられている。
【0024】
この駆動プレート33は、ほぼ半円形状を呈し、ボス部31と同一平面上に配置されていると共に、内周に駆動軸21の所定外周面に嵌合する嵌合孔33aを有し、ボス部31側の薄肉部33bから径方向に沿って挿通された連結ピン34によって駆動軸21に連結固定されている。また、駆動プレート33の外周部つまりボス部31の第1保持孔32の反対側つまり180°対称位置には第2保持孔35がカムシャフト軸方向に沿って貫通形成されている。
【0025】
そして、前記第1保持孔32と第2保持孔35には、駆動ピン36と従動ピン37が回転自在に保持されている。この両ピン36,37は、各先端部36a,37bが2面巾に形成されて後述する環状ディスク38に連係している。尚、駆動ピン36の後端部は、分割端部22bの端面の一部に当接して第2保持孔35からの抜け出しが防止されている。
【0026】
前記環状ディスク38は、ほぼドーナツ板状を呈し、ボス部31と駆動プレート33の外側面側に当接配置され、中央には駆動軸21や後述する第1カムリング39及び第2カムリング40が挿通される比較的大径な挿通孔38aが形成されていると共に、前記第1保持孔32と第2保持孔35に対応する位置に駆動ピン36と従動ピン37の各先端部36a,37aが径方向へ摺動自在に係合するほぼU字形の第1,第2係合溝41,42が径方向に沿って形成されている。また、その中心Yは第2カムリング40の中心と同一点となり、同一円弧軌跡となる。
【0027】
前記第1カムリング39は、図1〜図3に示すように駆動軸21の軸方向に沿った円筒状を呈し、ほぼ中央に形成された通孔39aを介して駆動軸21の外周面に回転自在に嵌装されていると共に、中心Zが駆動軸21の軸心Xの水平方向側部に位置し、したがって厚肉部39bが図3中右側に形成配置されていると共に、薄肉部39cが左側に形成配置されている。また、第1カムリング39は、先端部が環状ディスク38の挿通孔38a内に配置されていると共に、後端部に一体に有する回転規制手段たるリテーナ43によって自由な回転が規制されるようになっている。
【0028】
すなわち、前記リテーナ43は、上下方向へ延出形成されたフォーク状を呈し、基部43aが第1カムリング39の後端部に一体に設けられていると共に、先端部43bが二又状に形成されて、その中央のU字状溝43cの内面が後述する制御シャフト46に摺動自在に係着している。したがって、第1カムリング39は、このリテーナ43を介して制御シャフト46に固定された形になっている。
【0029】
一方、第2カムリング40は、図1〜図3に示すように内筒状を呈し、ほぼ中央に形成された摺動孔40aを介して第1カムリング39の外周面に回転自在に嵌合保持されていると共に、外周面40bに環状ディスク38の挿通孔38aが嵌挿されて、該環状ディスク38を回転自在に支持している。また、第2カムリング40は、図7に示すようにその中心(環状ディスク38の中心Yと同じ)が第1カムリング39の中心Zを中心として円弧状の軌跡上を移動し、その移動中央位置で駆動軸21の軸心Xを通過するように設定されていると共に、後端部に一体に設けられた後述の従動平歯車48を介して駆動機構45によって回転位置が制御され、厚肉部40cと薄肉部40dの回動位置に応じて環状ディスク38を偏心動させるようになっている。
【0030】
また、第2カムリング40とリテーナ43との間には、該第2カムリング40を駆動プレート33側に押圧するコイルばね44が弾装されており、このコイルばね44の押圧力を十分に確保するために前記第1,第2カムリング39,40の各先端部と駆動プレート33,ボス部31との間に所定の隙間Cが形成されている。すなわち、このコイルばね44によって第2カムリング40を押圧することにより、環状ディスク38を従動平歯車48を介して駆動プレート33とボス部31の外側面に常時弾接させるようになっている。
【0031】
さらに、前記第1カムリング39と第2カムリング40には、前記駆動軸21の周壁に径方向に形成されて前記油供給通路21aと連通する油孔21bに連通する油供給孔39b,40cが貫通形成されている。
【0032】
前記駆動機構45は、図1〜図4に示すように、カムシャフト22の上方向位置に平行に設けられた制御シャフト46と、該制御シャフト46の一端部に設けられたアクチュエータたるステッピングモータ47と、該ステッピングモータ47を回転制御する図外のコントローラとから構成されていると共に、制御シャフト46と第2カムリング40との間に伝達機構が設けられている。
【0033】
前記制御シャフト46は、外径が比較的小径に形成され、機関前後方向へ延設されていると共に、カム軸受24,24に対応した大径部位46aが前記両軸受面27a,28a間で軸受けされている。また、この制御シャフト46の前記両軸受間の中央位置には、図1に示すように前記従動平歯車48と噛合して該従動平歯車48とともに伝達機構を構成する駆動平歯車49が固定されている。
【0034】
前記ステッピングモータ47を回転制御するコントローラは、マイクロコンピュターが内蔵され、このマイクロコンピュターがクランク角センサやエアーフローメータ等の各種センサによって機関回転数及び機関の負荷等を検出してステッピングモータ47に制御信号を出力するようになっている。
【0035】
以下、本実施例の作用について説明する。まず、機関高回転時には、かかる運転状態を検出したコントローラからの制御信号によりステッピングモータ47が一方向へ所定量回転して制御シャフト46及び駆動平歯車49を同方向へ回転させる。これによって、従動平歯車48を介して第2カムリング40が反対に回転して図1及び図3に示すように厚肉部40cがほぼ下方に位置し、したがって、環状ディスク38は、図7に示すようにその中心Yが駆動軸21の軸心Xから下方位置Y1に偏心移動する。
【0036】
これによって、駆動ピン36は、第1係合溝41内を径方向へスライドしながら環状ディスク38の中心Y1と離れた状態となる。このため、カムシャフト22の角速度が小さくなり、両者21,22の角速度比も図8aの実線で示す特性となって、カム26のバルブリフト最大点でカムシャフト22の角速度が最小となる。したがって、駆動軸21とカムシャフト22との回転位相差は図8bに示すようにほぼ零になる。このため、吸気弁23はバルブリフト特性が図8cの実線で示すようにリフト量は一定のまま弁作動角(弁開期間)が大きくなり、低回転時に比較して開弁時期が早くなり、閉弁時期が遅くなる。このため、慣性吸気を利用した吸気充填効率が向上し、出力トルクの向上が図れる。
【0037】
一方、機関高回転域から低回転域に移行した場合は、その運転状態を検出したコントローラからステッピングモータ47に制御信号が出力されて、制御シャフト46及び駆動平歯車49は反対にほぼ180°回転し、第2カムリング40の厚肉部40cが図6に示すように上方へ移動し、したがって環状ディスク38は図6及び図7に示すようにその中心Yが駆動軸21の軸心Xから上方のY2の位置に円弧軌跡を描きながら偏心移動する。
【0038】
これによって、駆動ピン36は、第1係合溝41内を径方向へスライドしながら環状ディスク中心Y2に接近する状態となる。このため、カムシャフト22の角速度が大きくなり、両者21,22の角速度比も図8aの破線で示す特性となって、バルブリフト最大点でカムシャフト22の角速度が最大となる。したがって、駆動軸21とカムシャフト22の回転位相差は図8bの破線で示すように高回転時とは対称形の特性となり、ほぼ零となる。このため、吸気弁23は、バルブリフト特性が図8cの破線で示すようにリフト量は一定のまま弁作動角が小さくなり、開弁時期が遅く、閉弁時期が十分に早くなる。このため、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなって燃焼が改善され、燃費の向上等が図れる。
【0039】
尚、環状ディスク38の中心Yの偏心動に伴い、各ピン36,37は駆動軸21の回転毎に各係合溝41,42内を摺動している。
【0040】
また、機関低回転あるいは高回転域から中回転域に移行すると、制御シャフト46の回転制御に伴い環状ディスク38は、その中心Yが図7に示すように駆動軸21の軸心Xと同一点位置となる。つまり、第2カムリング40と駆動軸21との間に、固定状態にある第1カムリング39を介装してあるため、環状ディスク38の中心Yを駆動軸21の軸心Xと同一点とすることができる。このため、斯かる同一点上では駆動軸21とカムシャフト22とは常に等速で回転することとなる。したがって、実用上使用頻度の高い中回転域では、弁作動角を低高回転時の略中間位置に設定でき、機関運転状態に応じた最適な弁開閉時期を選択できることは勿論のこと、各ピン36,37が第1,第2係合溝41,42内で摺動することなく、定位置状態とすることができる。この結果、各ピン36,37と各係合溝41,42との間の摺動摩擦を十分に抑制でき、ひいては摩耗によるピン打音の発生やバルブタイミングのずれ等を防止でき、耐久性に優れたものとなる。
【0041】
また、本実施形態では、環状ディスク38を従来のようにディスクハウジングで支持したり、このディスクハウジングをシリンダヘッド7の上端部で別個の支持機構によって支持するのではなく、第1,第2カムリング39,40を介して駆動軸21の外周面で支持するようにしたため、駆動軸21やカムリング及び環状ディスク38を一体化することができると共に、外径を十分に小さくすることができるので、装置全体のコンパクト化が図れ、機関への搭載性が良好となる。
【0042】
さらに、環状ディスク38を駆動軸21に支持させることにしたため、駆動軸21の軸心Xに対する環状ディスク38の中心位置決め精度が出し易くなる。この結果バルブタイミングの制御精度が向上する。
【0043】
しかも、環状ディスク38は、コイルばね44のばね力で常時駆動プレート33やボス部31の各外側面に押し付けられているため、駆動軸21等の回転時に各ピン36,37から伝達される荷重による環状ディスク38の倒れを抑制することが可能になる。つまり、環状ディスク38と駆動プレート33,ボス部31が少しでも離れていると、各係合溝41,42が駆動プレート33,ボス部31側の環状ディスク38面に形成されているから環状ディスク38が傾倒し易い。従い、環状ディスク38の挿通孔38aと第2カムリング40の外周面との間に片当たりが発生して、摩耗やしぶり等が生じ易くなるが、常時当接していれば、環状ディスク38の倒れが防止されて開口縁への片当たりが防止されるのである。この結果、摩耗の発生が防止される。
【0044】
さらに、前記油供給通路21aから油孔21bを通った潤滑油が油供給孔39b,40cを介して第1カムリング39と第2カムリング40の内外周に積極的に供給されるため、かかる摺動部位の潤滑性が向上し、回転精度が良好になる。
【0045】
図9〜図11は本発明に関連する参考例を示し、この参考例では、1つのカムリング50で環状ディスク38を支持すると共に、駆動機構45を介して環状ディスク38を偏心動させるようになっている。
【0046】
具体的に説明すれば、前記カムリング50は、図12に示すように前述の第2カムリング40とほぼ同様な円筒状を呈し、ほぼ中央に形成された摺動孔50aを介して駆動軸21の外周面に回転自在に嵌合保持されていると共に、外周面50bに環状ディスク38の挿通孔38aが嵌挿されて、該環状ディスク38を回転自在に支持している。また、このカムリング50は、図10に示すように厚肉部50cと薄肉部50dの回転移動に伴って中心(環状ディスク38の中心Yと同じ)が駆動軸21の軸心Xを中心として円弧軌跡を描きながら所定の角度範囲内を上下に移動するようになっている。また、後端部には駆動平歯車49によって回転してカムリング50を回転させる従動平歯車51が一体に設けられている。また、厚肉部50cの内部径方向には、油孔21bと連通して環状ディスク38との摺動面に潤滑油を供給する油供給孔50eが形成されている。他の構成は、前記の実施形態と同一であるから具体的な説明は省略する。
【0047】
したがって、この参考例によれば、機関高回転時には、駆動機構45によってカムリング50を一方側へ回転させて図10に示すように厚肉部50cを下方に位置させる。このため、環状ディスク38は、中心Yが下方位置Y1に偏心動する。
【0048】
一方、機関低回転域では、駆動機構45によってカムリング50を反対側に回転させて厚肉部50cを上方に位置させる。このため、環状ディスク38は中心Yが上方位置Y2に偏心動する。したがって、高低回転時には、駆動軸21とカムシャフト22の角速度比やバルブタイミング等が第1実施例と同様に図7a,b,cに示す特性となり、最適なバルブタイミング制御が可能になる。
【0049】
また、中回転域では、カムリング50が低回転域と高回転域の中間位置に制御されて、厚肉部50cを図10の左側に位置させる。このため、環状ディスク38は、中心Yが軸心Xのほぼ水平側方に偏心動する。これによって、所望のバルブタイミングを得ることができる。
【0050】
しかも、環状ディスク38は、カムリング50を介して駆動軸21に回転自在に支持されるため、前述と同様に装置全体のコンパクト化による機関への搭載性が向上する。特に、この実施例では、前述の第1カムリング39を廃止して1つのカムリング50としたため、径方向の大きさが減少し、コンパクト化をさらに助長できる。
【0051】
また、環状ディスク38は駆動軸21に支持されているため、中心位置決め精度も良好になることは勿論である。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、従来のようなディスクハウジングを廃止し、しかも環状ディスクを別異の支持機構ではなくカムリングを介して駆動軸の外周で回転自在に支持するようにしたため、駆動軸やカムシャフト及び環状ディスク等の各構成部品を一体化することが可能になる。このため、装置全体のコンパクト化が図れ、機関への搭載性が良好となる。
【0053】
また、環状ディスクを駆動軸に支持させたため、駆動軸の軸心に対する環状ディスクの中心位置決め精度が出し易くなる。したがって、環状ディスクの正確な偏心量及び偏心軌跡が得られ、この結果、所望のバルブタイミング制御が得られると共に、気筒間の出力のばらつきが防止されて、機関作動の安定化が図れる。また、正確な弁作動により高速回転に十分に対応可能となる。
【0054】
しかも、請求項4の発明によれば、第2カムリングの中心移動軌跡を駆動軸の軸心を通過するように形成したため、実用上使用頻度の多い例えば機関中回転域において環状ディスクの中心を駆動軸の軸心と合致させることが可能となり、これによって、機関運転状態に応じた最適な弁開閉時期を選択できることは勿論のこと、各ピンを摺動させることなく定位置に保持することができるので、該各ピンと該ピンが係合する係合溝内周面との間の摩耗の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である装置の一部を断面して示す要部正面図。
【図2】本装置の分解斜視図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】本装置の要部平面図。
【図5】図1のB−B線断面図。
【図6】本実施例の作用を示す図1のA−A線断面図。
【図7】本実施例に供される環状ディスクの偏心動軌跡を示す説明図。
【図8】 (a)は本実施例における駆動軸とカムシャフトの角速度比の特性図、(b)はAに対応する駆動軸とカムシャフトの回転位相差の特性図、(c)はバルブリフト特性図。
【図9】本発明の第2実施例の装置を示す要部断面図。
【図10】図9のC−C線断面図。
【図11】本装置の要部平面図。
【図12】本実施例に供されるカムリングを示す斜視図。
【図13】従来の装置を示す要部断面図。
【図14】図13のD矢視図。
【符号の説明】
21…駆動軸
22…カムシャフト
23…吸気弁
25…バルブリフター
26…カム
31…ボス部
33…駆動プレート
36,37…従動,駆動ピン
38…環状ディスク
39…第1カムリング
40…第2カムリング
41,42…係合溝
43…リテーナ
45…駆動機構
46…制御シャフト
48…従動平歯車
49…駆動平歯車
50…カムリング
Claims (4)
- 機関により回転駆動する駆動軸の外周に相対回転自在の設けられ、各気筒毎に分割形成されたカムシャフトと、
該カムシャフトの外周に設けられて、吸,排気弁を開作動させるカムと、
前記各カムシャフトと駆動軸との間を連係しつつ中心が駆動軸の軸心に対して偏心動可能な環状ディスクと、を備え、
前記駆動軸の外周に第1カムリングを摺動自在に嵌装すると共に、
該第1カムリングの外周に駆動機構によって回転駆動する第2カムリングを回転自在に保持し、
かつ該第2カムリングの外周に前記環状ディスクを偏心回動自在に支持したことを特徴とする内燃機関の吸排気弁駆動制御装置。 - 前記環状ディスクは、該環状ディスクのほぼ径方向へ摺動可能に設けられたピンを介して前記各カムシャフトの端部と該端部に対向して配置されて駆動軸に固定された駆動プレートとを連係させたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸排気弁駆動制御装置。
- 前記第1カムリングを回転規制手段によって自由な回転を規制したことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸排気弁駆動制御装置。
- 前記第2カムリングの中心を、第1カムリングの中心に対して前記駆動軸の軸心側に位置させて、第2カムリングの中心の移動軌跡が駆動軸の軸心を通過するように形成したことを特徴とする請求項2及び3記載の内燃機関の吸排気弁駆動制御装置。
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JP8710197A JP3907264B2 (ja) | 1997-04-07 | 1997-04-07 | 内燃機関の吸排気弁駆動制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP8710197A JP3907264B2 (ja) | 1997-04-07 | 1997-04-07 | 内燃機関の吸排気弁駆動制御装置 |
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JPH10280926A JPH10280926A (ja) | 1998-10-20 |
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