JPH1033115A - ホエー飲料とその製造法 - Google Patents

ホエー飲料とその製造法

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JPH1033115A
JPH1033115A JP8212114A JP21211496A JPH1033115A JP H1033115 A JPH1033115 A JP H1033115A JP 8212114 A JP8212114 A JP 8212114A JP 21211496 A JP21211496 A JP 21211496A JP H1033115 A JPH1033115 A JP H1033115A
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lactic acid
acid bacteria
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JP8212114A
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English (en)
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Hisatoshi Ito
敞敏 伊藤
忠夫 ▲斎▼藤
Tadao Saito
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NOUCHIKUSANGIYOU SHINKO JIGYOD
NOUCHIKUSANGIYOU SHINKO JIGYODAN
ZENKOKU NOKYO NYUGYO PLANT KYO
ZENKOKU NOKYO NYUGYO PLANT KYOKAI
Original Assignee
NOUCHIKUSANGIYOU SHINKO JIGYOD
NOUCHIKUSANGIYOU SHINKO JIGYODAN
ZENKOKU NOKYO NYUGYO PLANT KYO
ZENKOKU NOKYO NYUGYO PLANT KYOKAI
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、ホエーをベースにした保健栄養効
果の高い新型ドリンクを提供しようとするものであり、
乳成分濃度と乳酸菌数を制御することで、発酵乳として
も乳酸菌飲料とすることもできる。本発明は、高いAC
E転換阻害活性を有するため、血圧降下作用が期待でき
るホエー飲料を提供することを目的とし、さらに、有用
乳酸菌やその発酵代謝物を共に含有しているため、免疫
賦活化能が期待でき、風味も良好なホエー飲料を提供す
ることを目的とする。 【解決手段】 ホエー由来の新規生理活性ペプチド類、
乳酸菌及びその代謝生産物を含有するホエー飲料、並び
にホエーにタンパク質分解酵素を作用させ、新規生理活
性ペプチド類を遊離させたホエー加水分解物を得た後、
乳酸菌を接種し、乳酸発酵させることを特徴とする前記
ホエー飲料の製造法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホエー飲料とその
製造法に関し、詳しくは、ホエー由来の新規生理活性ペ
プチド類、乳酸菌及びその代謝生産物を含有するホエー
飲料とその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ホエー
(チーズホエー)は、乳糖を主成分とし、その他タンパ
ク質およびミネラル分を含む溶液である。このホエー
は、チーズやカゼイン等を製造する際、副産物として大
量に生成するが、従来は大部分がそのまま廃棄されてい
た。このため、深刻な環境汚染(水質汚染)の原因とな
り、世界的に深刻な問題となっていた。
【0003】現在、我が国では、ホエーは主に噴霧乾燥
されてホエーパウダーを製造したり、或いは成分を膜処
理技術(逆浸透、限外濾過、イオン交換など)により分
画して、乳糖、ホエータンパク濃縮物(WPC)等の製
造に用いられている。これらの製品は、家畜飼料や食品
工業における各種原料に用いられているが、その利用の
程度は、単に乳製品(乳飲料、ヨーグルト、発酵乳な
ど)の製造時に固形分を増やすために添加される、いわ
ゆる増量剤としての利用に止まっており、とても高度な
利用が図られているものとは言い難いのが現状である。
【0004】しかも、噴霧乾燥や膜処理技術による成分
分画などには、巨額の設備投資とランニングコストがか
かっており、製造コストに比べて、実際の製品の価格が
安価なため、世界的にはそれほど利用されておらず、よ
り付加価値の高い利用法が求められている。従って、世
界的に見ると、相変わらず、ホエーの大部分を廃棄して
いるのが実情であり、そのため、国によっては深刻な環
境汚染の原因となっており、その解決が求められてい
る。
【0005】ところで、最近、食品の持つ「内分泌系、
神経系、免疫系などに働きかけ、生体リズムの調整や、
神経の覚醒と鎮静、生体防御系の調節などを行う生体調
節の機能」が注目されている。この機能は、食品の栄養
素としての機能(食品の第一次機能)や、摂取するヒト
の味覚や食感などの感覚を刺激する機能(食品の第二次
機能)に続く、食品の第三の機能である。すなわち、従
来の食品を成分化学や嗜好性、ひいては美味しさ、不味
さ等から捉える視点ではなく、食品を摂取後の消化過程
で新たに生じた分解成分が、新たな生理活性を発現した
りする機構の解析から、食品が本来そのような潜在的な
役割を有し、そのために合目的的に分子設計されてきた
のではないかという視点から、食品を捉え直す研究が盛
んに行われつつある。そして、このような生体調節機能
を有すると認められた食品成分や食品を、特定保健食品
として認可する制度の整備が進んでいる。
【0006】この生体調節機能についての研究は、畜産
食品においても進められている。中でも、乳タンパク
質、鶏卵タンパク質及び食肉(特に鶏肉)などにおいて
は、生体調節機能の研究が進んでおり、種々の生理活性
ペプチドが誘導されている。例えば、ウシやヒトの乳由
来のカゼインからは、オピオイドペプチド、オピオイド
アンタゴニストペプチド、平滑筋作動性ペプチド、ファ
ゴサイトシス促進ペプチド、アンジオテンシン転換阻害
ペプチド、細胞成長促進ペプチド、血漿板凝集阻害ペプ
チドなどの生理活性ペプチドが誘導されている。
【0007】しかしながら、ホエーに含まれるタンパク
質成分よりの生理活性ペプチドの誘導についての報告は
見当たらない。これは、乳タンパク質の主成分はカゼイ
ンであり、ホエータンパク質成分については、あまり重
要視されなかったためと考えられる。
【0008】本発明者らは、これまで余り注目されてい
なかったホエーについて研究を続けてきており、これま
での本発明者らの研究により、ホエーに含まれるカゼイ
ノグリコペプチド(以下、CGPと略称する。)のプロ
テアーゼ消化物中にも、アンジオテンシン転換阻害ペプ
チドが含まれていることが分かった。
【0009】アンジオテンシン変換酵素(以下、ACE
と略称する。)は、細胞膜結合性酵素であり、特に肺血
管内皮細胞膜に豊富に存在する。ACEは、標的ペプチ
ドのカルボキシル末端より2残基分のジペプチド部分を
加水分解して遊離させる「ジペプチジルカルボキシペプ
チダーゼ」の一種である。肝臓で生合成され、血中に放
出されたアンジオテンシノーゲンが、主として腎臓の傍
糸球体細胞で生合成されたタンパク質分解酵素の一つで
あるレニン(EC3.4.23.15)で加水分解され、血中に
アンジオテンシン1が生成し、これがACEに切断され
てアンジオテンシン2が生じる。この成分は、平滑筋を
収縮させるために、強い昇圧作用(血圧を上げる作用)
を示す。また、このACEは、降圧作用(血圧を下げる
作用)を示すブラジキニンの分解にも直接関与するため
に、二重の意味で血圧上昇作用を示すことになる。何
故、ある種のペプチドがこのACEの転換阻害活性を示
すのかは、明確に分かっていない。
【0010】アンジオテンシン転換阻害活性を有するペ
プチド(以下、ACE転換阻害ペプチドと略称する。)
は、ACEによる加水分解を阻害するため、上記のアン
ジオテンシン1からアンジオテンシン2を生成させな
い。このようなペプチド類が消化吸収され、血中に入
り、血流を循環することになれば、肺に局在するACE
を阻害し、降圧作用の発現が期待される。
【0011】本発明者らは、ホエーをタンパク質分解酵
素処理することにより、このACE転換阻害ペプチド類
を誘導できることを見出した。さらに、乳酸発酵を導入
することにより、風味の改善やラクトースの事前分解に
よる腸管への負担の軽減などを図ることに成功した。
【0012】本発明は、これまで製造例や販売例のな
い、ホエーをベースにした保健栄養効果の高い新型ドリ
ンク(新型ホエー飲料)を提供しようとするものであ
る。乳成分濃度と乳酸菌数を制御することで、発酵乳、
あるいは、乳酸菌飲料のいずれともすることもできる。
すなわち、本発明は、高いACE転換阻害活性を有し、
血圧降下作用が期待できるホエー飲料を提供することを
目的とするものである。さらに本発明は、有用乳酸菌や
その発酵代謝物を共に含有しているため、高い免疫賦活
化能が期待でき、風味も良好なホエー飲料を提供するこ
とを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明
は、ホエー由来の新規生理活性ペプチド類、乳酸菌及び
その代謝生産物を含有するホエー飲料を提供するもので
ある。
【0014】請求項3記載の本発明は、ホエーにタンパ
ク質分解酵素(プロテアーゼ)を作用させ、新規生理活
性ペプチド類を遊離させたホエー加水分解物を得た後、
乳酸菌を接種し、乳酸発酵させることを特徴とする、前
記請求項1記載のホエー飲料の製造法を提供するもので
ある。
【0015】
【発明の実施の形態】上記のように、請求項1記載の本
発明のホエー飲料は、請求項3記載の本発明の製造法に
より得られるものである。すなわち、請求項1記載の本
発明のホエー飲料は、請求項3に記載のように、チーズ
を製造する産業の副産物であるホエーに対し、タンパク
質分解酵素を作用させ、新規生理活性ペプチド類を遊離
させたホエー加水分解物を得た後、乳酸菌を接種し、乳
酸発酵を行わせることによって製造されるものである。
【0016】従って、以下、請求項3記載の本発明につ
いて説明し、次いで請求項1記載の本発明について説明
することとする。
【0017】なお、請求項1記載の本発明のホエー飲料
は、乳酸菌数と乳成分濃度を制御することで、法令の定
める発酵乳又は乳酸菌飲料とすることができる。すなわ
ち、飲料1ml当たりの乳酸菌の生菌数が107個(一千万
個)以上であって、かつ、無脂乳固形分が8.0%以上の
ものであれば、発酵乳として表示することができる。ま
た、無脂乳固形分が8.0%未満のものであっても、3.0
%以上のものであれば、乳酸菌飲料として表示すること
ができる。
【0018】請求項2記載の本発明においては、まずホ
エーにタンパク質分解酵素を作用させ、消化させる。こ
れにより、血圧上昇作用を持つアンジオテンシン変換酵
素(ACE)の活性を阻害するペプチド成分を誘導させ
る。
【0019】本発明の原料となるホエーとタンパク質分
解酵素について検討するために、本発明者らは次の実験
を行った。
【0020】まず3種類の試料〔試料A:ホエータンパ
ク質(CGPを含む試料)、試料B:ホエータンパク質
(CGPを含まない試料)及び試料C:市販のホエーパ
ウダー(以下、WPと略称する。)〕を用意した。この
うち試料Cは、市販のWPをそのまま用いたが、その化
学組成及び諸性質は次の第1表に示す通りである。
【0021】
【表1】
【0022】試料Aは、試料Cで用いたものと同様のW
Pを水に分散させた後、透析チューブに移し、蒸留水に
対して充分に透析し、透析内液の全て(沈殿部を含む)
を凍結乾燥したものである。ミルク由来の塩やラクトー
スは除かれているが、CGPを含んでいるホエータンパ
ク質混合物である。
【0023】試料Bは、試料Cで用いたものと同様のW
Pを12%トリクロロ酢酸溶液に分散させ、遠心分離に
より沈殿部(ホエータンパク質)を得た後、これを再度
蒸留水に分散させて充分に透析した後に凍結乾燥させた
ものである。ミルク由来の塩、ラクトース及びカゼイン
由来のCGPのいずれも除去されており、純粋なホエー
タンパク質混合物そのものである。これらのタンパク質
試料は、WPの製造段階の噴霧乾燥過程で加熱された際
に、その一部が熱変性をしており、水に不溶の画分も含
まれている。
【0024】以上の試料A、B及びCのそれぞれに、起
源の異なる7種類のタンパク質分解酵素〔1:ペプシン
(消化液)、2:トリプシン(消化液)、3:キモトリ
プシン(消化液)、4:プロティナーゼK(カビ)、
5:アクチナーゼE(放線菌)、6:サーモライシン
(細菌)、7:パパイン(植物)〕を加え、それぞれの
最適条件下(最適緩衝液、最適pH、最適温度))で、2
4時間反応させ、次いで100℃で10分間加熱して酵
素反応を停止させた。この溶液を、良く攪拌して不溶部
を含んだままACE転換阻害活性用被験液とした。
【0025】具体的には、これらの反応液を、ボルテッ
クスを用いて充分に攪拌し、その75μlを用いて、A
CE転換阻害活性を測定した。ここで各試料の使用量
は、試料A,Bでは各10mg、試料Cは第1表から、タ
ンパク質含量を10%と概算したため、100mgとし、
これを各10mlの緩衝液に分散させ、基質蛋白質の5%
量(基質:酵素=5:100重量比)に相当する0.5
mgの各種酵素を用いた。なお、試料中のタンパク質含量
は、フェノール試薬を用いた Folin-Lowry 法により求
めた。
【0026】ACE転換阻害活性の測定は、Lieberman
の原法(Am. Rev. Resp. dis., 109, 743 (1974))の
改良法である、山本らの方法(日胸疾会誌、18、297
(1980))に準じて行った。すなわち、ネジ付き試験管
に被験液の試料を採り、次いで基質溶液(馬尿酸−ヒス
チジルロイシン、合成基質、ホウ酸緩衝液に溶かしたも
の、pH8.3 )を加え、次いでACE酵素溶液(ウサギ
肺由来、和光純薬工業製、50%グリセロールに溶かし
たもの)を加えてから、37℃で1時間反応させた。同
時に、コントロールとブランクについても同様の操作を
行った。0.5N塩酸を加えて反応を停止させた後、反
応停止液に酢酸エチルを加え、酵素活性に応じて生成し
た馬尿酸を液液抽出した。次いで、この抽出溶媒(酢酸
エチル)を80℃に加熱しながら、チッソ噴霧法により
除去した後、残渣を生理食塩水に溶解させて、228nm
の紫外部吸収を測定した。ACE転換阻害活性値は、以
下の式により求めた。
【0027】
【数1】・ACE転換阻害活性(%)=( Ec − Es )
/( Ec − Eb )×100
【0028】但し、式中の Ec はコントロールの紫外部
吸収(228nm)、 Es は被験液の紫外部吸収(228
nm)、 Eb はブランクの紫外部吸収(228nm)とす
る。
【0029】試料Aで得られたACE転換阻害活性値の
測定結果を、図1に示した。用いた7種類のタンパク質
分解酵素(プロテアーゼ)の全てで、比較的高いACE
転換阻害活性が誘導された。特に、パパイン消化試料
(試料A−7)で最も高い活性値(91.91%)が得
られた。次いで、サーモライシン(試料A−6)及びプ
ロティナーゼK(試料A−4)による消化後にも、それ
ぞれ86.52%および85.67%という高い活性が
誘導されることが分かった。
【0030】また、試料Bで得られたACE転換阻害活
性値の測定結果を、図2に示した。用いた7種類のタン
パク質分解酵素の全てで、試料Aと同様に高いACE転
換阻害活性が誘導された。試料Aと比較すると、アクチ
ナーゼEによる転換阻害活性だけが特に低い値を示した
が、他のタンパク質分解酵素では全て70%以上の活性
が誘導されることが分かった。最も高い活性(95.2
2%)は、サーモライシン(試料B−6)で誘導され、
ペプシン(試料B−1)でも93.12%と高かった。
両試料の成分的な違いは、カゼイン由来のCGPが含ま
れているか否かの差のみであるが、この結果からは、ホ
エータンパク質から誘導されるACE転換阻害活性の方
がCGPより誘導されるそれよりもはるかに高いことが
予想され、CGPのホエー試料における有無はあまり問
題でないことが分かった。
【0031】最後に、試料Cで得られたACE転換阻害
活性値の測定結果を、図3に示した。試料Aおよび試料
Cと同様に、WPそれ自体でも、ホエータンパク質をわ
ざわざ単離して利用するまでもなく、全ての酵素で55
%以上の活性が誘導されることが確認された。特に高い
98.56%という活性は、サーモライシン(試料C−
6)で誘導されたが、ほぼ同程度の活性がプロティナー
ゼK(C−4)でも検出された。
【0032】以上の実験結果から,本発明のホエー飲料
の原料となるホエーは、チーズを製造する産業の副産物
として得られるものであれば、いずれをも用いることが
できるが、ホエータンパク質を膜処理などの手法で単離
したものなどでなくとも良く、安価かつ容易に入手でき
るWPで充分であることが分かった。
【0033】すなわち、ホエー( cheese whey )は、
チーズ製造やカゼイン製造の副産物として得られるもの
である。このようなホエーとしては、ゴーダチーズやチ
ェダーチーズなどの製造によって生じる甘性ホエー( s
weet cheese whey )(中性ホエー)と、カッテージチ
ーズやカゼインなどの製造によって生じる酸性ホエーと
があるが、本発明においては、このいずれをも使用する
ことができる。
【0034】さらに、このようなホエーだけでなく、ホ
エーを粉末化したホエーパウダー(WP)、ホエータン
パク質の濃縮物(WPC)、ホエータンパク質の分画物
(WPI)などを用いることもでき、これらを水で還元
してホエータンパク質を含む溶液にして用いても良い。
但し、ホエータンパク質を膜処理などの手法で単離・利
用することは経済的にも時間的にも大変な時間がかかる
が、本発明においては、上記したように、安価かつ容易
に入手できるWPで充分である。
【0035】また、本発明のホエー飲料に用いるタンパ
ク質分解酵素としては、特に血圧降下作用のあるペプチ
ド類を最も良く生成する点から、細菌由来のサーモライ
シン、消化液由来のペプシン、トリプシンおよびキモト
リプシン、カビ由来のプロティナーゼ(プロティナーゼ
K)、放線菌由来のアクチナーゼE、植物由来のパパイ
ンなどが挙げられ、これらのいずれを用いても構わな
い。上記した実験結果からは、比較的安価で高純度の酵
素製品が安定入手できる点から、プロティナーゼKなど
が好適であることが分かる。
【0036】上記の如きホエーにタンパク質分解酵素を
作用させる条件、すなわち酵素反応の際の温度、時間、
pH等は、用いる酵素に好適な範囲とすれば良い。例え
ば、タンパク質分解酵素としてプロティナーゼKを用い
た場合、2〜4時間の範囲で充分なACE転換阻害活性
が得られる。
【0037】より具体的には、例えば、市販のWPを用
い、無脂乳固形分が3%以上のWP水溶液を作成する。
このWP水溶液には、糖源としてラクトースが存在する
ので、新たに他の糖質を補う必要はない。しかし、本発
明においては、糖源として、例えばグルコース及び/又
はスクロースを添加しても構わない。
【0038】得られた溶液について、ホエーに含まれる
タンパク質よりACE転換阻害ペプチド類を得るため
に、タンパク質分解酵素による反応を行う。反応条件
は、用いる酵素に応じて異なり、一義的に規定すること
はできないが、高いACE転換阻害活性を得ることがで
きる範囲の温度、時間、pHであることが望ましい。例
えば、プロティナーゼKを用いるときは、37℃前後の
温度の場合、1〜24時間、好ましくは2〜4時間程度
行えば良い。ここで酵素処理時間が、その酵素にとって
の最適時間に比べて短か過ぎると、WPに含まれるAC
E転換阻害ペプチド類の誘導が不充分となり、好ましく
ない。一方、酵素処理時間が長いと、乳酸菌の生育は高
まるものの、苦みペプチドの生成の可能性が増したり、
製品の風味が落ちたり、さらには、せっかく生成した生
理活性ペプチド類が乳酸菌により資化され減少する可能
性があるため、好ましくない。
【0039】請求項3記載の本発明においては、上記の
ようにホエーにタンパク質分解酵素を作用させ、新規生
理活性ペプチド類を遊離させたホエー加水分解物を得た
後、乳酸菌を接種し、乳酸発酵させる。但し、必要に応
じて、ホエーにタンパク質分解酵素を作用させながら、
乳酸発酵させることもできる。
【0040】ここで接種する乳酸菌は、一般に発酵乳に
使用されているものであれば、いずれも用いることが出
来る。それらの一例としては、ラクトバチルス( Lacto
bacillus)属乳酸菌、ラクトコッカス( Lactococcus
属乳酸菌、ロイコノストック(Leuconostoc )属乳酸
菌、ストレプトコッカス( Streptococcus)属乳酸菌が
ある。本発明において、これらの乳酸菌は、1種を単独
で用いても良いし、或いは2種類以上を組み合わせて用
いることもできる。
【0041】本発明では、これらの中でも特にヨーグル
ト製造に一般的に使用されているラクトバチルス・デル
ブレッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス( Lacto
bacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)(ブルガ
リア菌)と、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブ
スピーシーズ・サーモフィラス( Streptococcus sali
varius subsp. thermophilus)(サーモフィラス菌)と
を用いた。
【0042】より具体的には、ラクトバチルス・デルブ
レッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスB6株( L
actobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus NIAI
B6)(以下、単にB6株と略称する。)、同B5b株
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus N
IAI B5b )(以下、単にB5b株と略称する。)、スト
レプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サ
ーモフィラス510株(Streptococcus salivarius su
bsp. thermophilus NIAI 510 )(以下、単に510株
と略称する。)を用いた。これら菌株は、いずれも農林
水産省畜産試験場に保管されており、分譲申請により入
手することが可能である。
【0043】本発明では、このような乳酸菌の代わり
に、ビフィズス菌や、ケフィールグレインのような混合
した天然の発酵種をスターターとして用いることもでき
る。ビフィズス菌としては、例えば、ビフィドバクテリ
ウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(Bifido
bacterium longum subsp. longum)、ビフィドバクテ
リウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum )等
が挙げられる。
【0044】さらに、本発明者らは、ホエー飲料に適し
た乳酸菌の発酵条件を検討するために、以下の実験を行
った。
【0045】すなわち、WP7gに蒸留水93gを加
え、7% (w/w)WP溶液を作成し、これを基本培地
とした。また、この基本培地にグルコース(ブドウ糖)
2%を添加した培地(培地D)と、基本培地にスクロー
ス(ショ糖)10%を添加した培地(培地E)を作成し
た。これらの培地に、以下のようにして、乳酸菌(2つ
の組み合わせの乳酸菌スターター)を接種して、6種の
試料を作成した。
【0046】 ・試料D−1:基本培地+B6株+510株 ・試料D−2:基本培地+B5b株+510株 ・試料D−3:基本培地+B6株+510株+2%グル
コース ・試料D−4:基本培地+B5b株+510株+2%グ
ルコース ・試料E−1:基本培地+B6株+510株+2%スク
ロース ・試料E−2:基本培地+B5b株+510株+2%ス
クロース
【0047】これらの試料は、培地を100℃で10分
間加熱殺菌してから、2つの組み合わせの乳酸菌スター
ターを添加し、37℃で24時間培養した後、pH値及
び乳酸酸度の経時変化を検討した。なお、WP試料に窒
素源を新たに加えるのではなく、プロテアーゼ消化をさ
せ、既にWP中にあるタンパク質より窒素源を生じさせ
た。
【0048】ここで乳酸酸度は、乳酸菌を接種し、培養
した試料中の酸性物質を、乳酸に換算して重量%で示し
た。すなわち、試料10gを三角フラスコに取り、蒸留
水10mlとフェノールフタレイン指示薬0.5mlを加え
た。次いで、ビューレットより、0.1N NaOH 溶液を、微
紅色が消えない点まで滴下した。乳酸酸度は以下の式よ
り求めた。
【0049】
【数2】・乳酸酸度(重量%)=NaOH滴下量(ml)×ファク
ター×0.009/試料重量(g) × 100
【0050】試料D−1〜D−4における乳酸菌の生育
性をpH値及び乳酸酸度の経時変化により検討した結果
を、図4に示した。すなわち、図4は、2%グルコース
を添加した7%CWP培地における乳酸菌接種後のpH
値及び乳酸酸度の経時変化を示すグラフであり、図4
(a)がpHの経時変化を示すグラフであり、図4
(b)が乳酸酸度の経時変化を示すグラフである。
【0051】図4に示した通り、試料D−1、D−2、
及びグルコースを添加した試料D−3、D−4には、最
終pH値及び乳酸酸度に差が認められなかった。すなわ
ち、24時間培養後では、コントロールとしての試料D
−1及び試料D−2では、pH値は、それぞれ4.32
及び4.53に減少し、乳酸酸度は、それぞれ0.40
及び0.32であった。一方、2%グルコースを添加し
た培地についてみると、試料D−3及び試料D−4で
は、pH値は、それぞれ4.53及び4.55に減少
し、乳酸酸度は、それぞれ0.31および0.30であ
った。
【0052】さらに、2種類の乳酸菌の組み合わせに
も、有意差は認められず、どちらの組み合わせでも充分
な生育が得られることが分かった。
【0053】また、試料E−1及び試料E−2における
24時間培養までのpH値及び乳酸酸度の経時変化も、
図4に示したグルコースの場合とほとんど同様の結果を
示した。
【0054】以上の結果より、乳酸菌培養においては、
7%WP試料中の糖源として存在するラクトース(第1
表より計算して、約5.88%のラクトース濃度)で充
分であり、新たに炭素源としての他の糖質を補う必要は
ないことが分かった。
【0055】また、7%WP試料に、タンパク質分解酵
素アクチナーゼEを添加(15mg/100gのWP溶
液)し、37℃で、2時間、4時間及び24時間反応さ
せた。次いで、培地を加熱殺菌(100℃、10分)
し、2種の組み合わせの乳酸菌スターター(B6株+5
10株と、B5b株+510株の2種)を加えて、37
℃で24時間培養し、経時的にpH値と乳酸酸度を測定
し、その結果を図5に示した。すなわち、図5は、タン
パク質分解酵素アクチナーゼEによる2時間及び4時間
反応試料における乳酸菌接種後のpH値と乳酸酸度の経
時変化を示すグラフであり、図5(a)がpHの経時変
化を示すグラフであり、図5(b)が乳酸酸度の経時変
化を示すグラフである。
【0056】図5に示す通り、2時間及び4時間のタン
パク質分解酵素処理時間では、その後の乳酸菌の生育性
に全く差が認められなかった。さらに、2種類の乳酸菌
の組み合わせにも、有意差は認められなかった。
【0057】一方、アクチナーゼEで37℃、24時間
充分に消化した後は、最終的なpHと酸度には大きな差
異が認められた。図6は、アクチナーゼEによる24時
間反応試料における乳酸菌接種後のpH及び乳酸酸度の
変化を示すグラフであり、図6(a)がpHの経時変化
を示すグラフであり、図6(b)が乳酸酸度の経時変化
を示すグラフである。
【0058】図6に示すように、タンパク質分解酵素処
理を行なわなかったコントロール試料では、24時間後
のpHが6.46から4.62−4.66と大きく減少
し、酸度も0.09から0.30−0.31に大きく上
昇した。一方、アクチナーゼEを添加し、24時間消化
した試料では、pHが5.70から3.82−3.90
とコントロールより大きく減少し、酸度も0.23から
0.94−1.04とコントロールより大きく上昇し
た。
【0059】従って、24時間という長時間のタンパク
質分解酵素消化を継続すれば、コントロールに比較して
多くのペプチドや遊離アミノ酸が生成したために、より
乳酸菌の生育性が向上したものと解釈された。
【0060】また、7%WP試料に対して、アクチナー
ゼEと乳酸菌を同時に加え、タンパク質分解酵素消化反
応を行いながら、乳酸菌培養を行うことも、モデル的に
試みた。その結果、コントロールとほとんど差異を生じ
ず、乳酸菌は良好に生育し、図5と同様の結果が得られ
た。
【0061】ここで本発明のホエー飲料の製造法の一例
を述べると、以下の通りである。市販のWPを用い、7
%(w/w)WP水溶液を作成する。このWP水溶液に
は、糖源としてラクトースが存在するので、新たに他の
糖質を補う必要はない。しかし、糖源としてグルコース
及び/又はスクロースを添加しても構わない。得られた
溶液について、ホエーに含まれるCGPのACE転換阻
害ペプチドを得るために、タンパク質分解酵素反応を行
う。酵素反応の際の温度、時間及びpHは、用いる酵素
に最適の範囲とすれば良い。例えば、プロティナーゼK
を用いる場合、37℃で2時間程度行えば良い。上記の
酵素反応を行った後、得られた試料を75℃で15分間
加熱殺菌し、次いで乳酸菌を添加し、乳酸発酵を行う。
乳酸発酵の時間は、用いる乳酸菌の種類によって大きく
異なり、ヨーグルトスターターを用いた場合、乳業現場
での実際のヨーグルト発酵時間である4時間程度でも良
いが、好ましくは8時間以上行うことにより、添加スク
ロースの甘味とバランスのとれた酸味を有するホエー乳
酸菌飲料を提供することができる。図7は、このような
本発明のホエー飲料の製造法の一例を示すフローチャー
トである。通常は、最も一般的に使用されるプロティナ
ーゼKを用いた場合、37℃程度の温度にて、酵素処理
は2時間以上とし、乳酸発酵は4時間以上、できれば8
時間以上とすることが好適である。
【0062】以上の如くして、目的とする、請求項1記
載のホエー由来の新規生理活性ペプチド類、乳酸菌及び
その代謝生産物を含有するホエー飲料が得られる。この
ようにして得られるホエー飲料は、発酵乳の場合、通
常、乳酸菌の菌数としては、2.5 ×107 cells /ml程度
含有し、その重量としては、約1g/L程度含有するも
のである。また、乳酸量としては、約15〜20mg/ml
程度含有するものである。
【0063】なお、本発明のホエー飲料には、必要に応
じて、ラクトース,スクロース等の糖類、トリポリリン
酸塩,メタリン酸ナトリウム等のリン酸塩類、安定剤を
添加することができる。この他、本発明のホエー飲料に
は、各種香料、果汁、果肉、調味料等を添加することも
できる。
【0064】
【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明する
が、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0065】参考例1 第1表に示す化学組成と諸性質を有するWP7g及びス
クロース10gを蒸留水83gに加え、7%(w/w)
WP溶液を作成し、出発試料E−0とした。この試料E
−0について、ACE転換阻害活性値、pH値、酸味の
バランス度を調べた。結果を第2表に示す。なお、酸味
のバランス度は、複数のパネラーにより、甘味と酸味及
び風味の総合点で判定した。判定は3段階〔◎=良い、
○=普通、△=やや劣る〕にて評価した。
【0066】参考例2 参考例1で作成した試料E−0に、酵素:基質が2:1
00(w/w)であるプロティナーゼK( Tritirachiu
m album 由来、EC 3.4.21.14、30m Anson単位/mg
、ドイツ Merck 社製)を添加し、37℃で2時間処
理して得られた試料E−1を、続いて、75℃で15分
間加熱殺菌し、試料E−10を得た。この試料E−10
について、ACE転換阻害活性値、pH値、酸味のバラ
ンス度を調べた。結果を第2表に示す。
【0067】参考例3 参考例1で作成した試料E−0に、酵素:基質が2:1
00(w/w)であるプロティナーゼK(同前)を添加
し、37℃で4時間処理して得られた試料E−2を、続
いて、75℃で15分間加熱殺菌し、試料E−20を得
た。この試料E−20について、ACE転換阻害活性
値、pH値、酸味のバランス度を調べた。結果を第2表
に示す。
【0068】実施例1 参考例1で作成した試料E−0に、酵素:基質が2:1
00(w/w)であるプロティナーゼK(同前)を添加
し、37℃で2時間処理して得られた試料E−1を、続
いて、75℃で15分間加熱殺菌した後、2%乳酸菌カ
ルチャー(前記B6株と前記510株をそれぞれ1%ず
つ)を接種し、4時間培養し、試料E−104を得た。
なお、使用した乳酸菌は、スキムミルク中で−20℃に
凍結保存しておいたストックカルチャーを、スキムミル
クを用いて3回継代培養したものを用いた。この試料E
−104について、ACE転換阻害活性値、pH値、酸
味のバランス度を調べた。結果を第2表に示す。
【0069】実施例2 実施例1において、4時間培養する代わりに、8時間培
養を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行い、試
料E−108を得た。この試料E−108について、A
CE転換阻害活性値、pH値、酸味のバランス度を調べ
た。結果を第2表に示す。
【0070】実施例3 実施例1において、4時間培養する代わりに、24時間
培養を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行い、
試料E−1024を得た。この試料E−1024につい
て、ACE転換阻害活性値、pH値、酸味のバランス度
を調べた。結果を第2表に示す。
【0071】実施例4 比較例1で作成した試料E−0に、酵素:基質が2:1
00(w/w)であるプロティナーゼK(同前)を添加
し、37℃で4時間処理して得られた試料E−2を、続
いて、75℃で15分間加熱殺菌した後、2%乳酸菌カ
ルチャー(前記B6株と前記510株をそれぞれ1%ず
つ)を接種し、4時間培養し、試料E−204を得た。
この試料E−204について、ACE転換阻害活性値、
pH値、酸味のバランス度を調べた。結果を第2表に示
す。
【0072】実施例5 実施例4において、4時間培養する代わりに、8時間培
養を行ったこと以外は、実施例4と同様にして行い、試
料E−208を得た。この試料E−208について、A
CE転換阻害活性値、pH値、酸味のバランス度を調べ
た。結果を第2表に示す。
【0073】実施例6 実施例4において、4時間培養する代わりに、24時間
培養を行ったこと以外は、実施例4と同様にして行い、
試料E−2024を得た。この試料E−2024につい
て、ACE転換阻害活性値、pH値、酸味のバランス度
を調べた。結果を第2表に示す。
【0074】
【表2】
【0075】第2表の結果からは、参考例2に示すよう
に、タンパク質分解酵素反応が2時間という短時間で
も、ほぼ100%に近い値が得られることが分かった。
このようにタンパク質分解酵素反応は2時間という短時
間で良いことが分かったので、この条件下で、さらに乳
酸発酵について検討した。すると、乳酸菌の発酵時間
は、実施例1に示すように、4時間でも良いが、実施例
2に示すように、試料E−108、つまり乳酸発酵を8
時間行った後に生成したホエー乳酸菌飲料が、添加スク
ロースの甘みとバランスのとれた酸味を呈することが分
かった。従って、最も好結果となった、この実施例2の
試料について、以下に示す実施例7と実施例8の2つの
実験を行った。
【0076】実施例7(IC50値の測定) 実施例2から、好結果が出された試料E−108につい
て、以下の操作により、50%ACE転換阻害活性値
(以下、IC50値と称する。)を与える試料濃度を検討
した。まず、E−108の試料溶液そのものを用いて、
ACE転換阻害活性を検討した。その結果を図8に示し
た。図8は、E−108の試料溶液のACE転換阻害活
性を示すグラフであり、本発明の新型ホエー飲料の示す
容量依存的なACE転換阻害活性を示すものである。そ
の結果、本試料は、原液の約1.32μl/150μl
量の被験液、すなわち8.8μl/ml量を用いれば、こ
の実験系において、50%のACE転換阻害活性を発現
することが明らかとなった。
【0077】次いで、この試料E−108の正確なタン
パク質濃度を Folin-Lowry 法により定量した。その結
果、蒸留水で400倍に希釈した、この試料溶液1μl
には、40.3 ng の含窒素成分を含んでいることがわ
かった。この含窒素成分は、ペプチド、タンパク質、遊
離アミノ酸などからなる混合物と推定される。従って、
原液の試料E−108は、約1.61g/100mlのタン
パク質を含むことが明らかとなった。
【0078】このタンパク質含量値により、図8を計算
し直した結果を図9に示した。図9は、E−108の試
料溶液のIC50値を示すグラフである。図9から、本試
料のIC50値は、59.09ngと極めて低く、文献値と
比較してもかなり高いACE転換阻害活性ペプチド類が
ホエータンパク質より誘導されることが初めて明らかと
なった。
【0079】なお、IC50値は次のようにして測定し
た。すなわち、試料E−108の一定量を用い、前記し
た山本らの方法に準じてACE転換阻害活性を測定し、
次いで、この試料中のタンパク質含量を測定し、容量デ
ータをタンパク質含量データに変換して、最終的にAC
E転換阻害活性曲線を求め、さらに計算によりIC50
を求めた。
【0080】実施例8(乳酸菌生菌数の測定) わが国では、飲料1ml当たりの乳酸菌の生菌数が107
(一千万個)以上のもののみを、無脂乳固形分の割合に
応じて発酵乳(無脂乳固形分が8.0%以上)又は乳酸
菌飲料(無脂乳固形分が3.0%以上)と表示すること
ができる。そこで、公定法に従って、実施例2の試料
(試料E−108)中の乳酸菌生菌数を測定した。
【0081】実施例2の試料中の乳酸菌生菌数の測定
は、厚生省の法令で指定されている乳酸菌数測定用・公
定法培地(BCP加プレートカウントアガール、日水製
薬製、コードNo.05622)を用いて測定した。すなわち、
カウントアガール24.7gを蒸留水1リットルに加温
溶解し、滅菌試験管に20mlずつ分注後、121℃で1
5分間高圧蒸気滅菌した。試料を予めオートクレーブ滅
菌しておいた生理食塩水を用いて、100個、101個、1
02個、103個、104個、105個、106個、107個及び1
08個に段階希釈した。この各段階希釈液0.1mlを、予
め溶解し50℃に保持しておいた培地20mlと、滅菌シ
ャーレ内で合わせ、固化後、37℃のインキュベーター
内で無菌的に72±3時間培養した。規定時間後のシャ
ーレにおいて、公定法に従い、30〜300個の黄変コ
ロニーを与えるプレートを選び、正確にカウントした。
カウントの平均値(平均コロニー数)に希釈倍率を乗じ
ることにより、試料1ml中の乳酸菌生菌数を推定した。
結果を第3表に示す。
【0082】その結果、実施例2の試料(試料E−10
8)における乳酸菌生菌数は、2.5×108個/mlであ
ることが明らかとなった。この値は、この試料中に発酵
乳又は乳酸菌飲料の表示規定に充分許可されうる量の生
きている乳酸菌菌体が存在することを示していた。
【0083】
【表3】
【0084】
【発明の効果】本発明のホエー飲料は、高いACE転換
阻害活性を有する。これは、WP中のホエータンパク質
が酵素的な分解を受け、新たに生じたペプチド類が、こ
のような新規な生理活性を発現したものと考えられる。
従って、本発明のホエー飲料は、摂取後は大いに血圧降
下(降圧)作用を期待することができ、保健健康飲料と
して新たな市場拡大を図ることが期待される。
【0085】また、本発明のホエー飲料は、酵素処理を
施した消化液に、ヨーグルト製造用の乳酸菌を接種し、
乳酸発酵させたものであり、乳酸菌やその代謝生産物
(発酵代謝物)を含有しているので、風味と味も良好で
あるばかりか、高い免疫賦活化能が期待でき、菌体及び
菌体外成分による保健栄養作用、整腸保健作用も加味さ
れている。
【0086】なお、請求項1記載の本発明のホエー飲料
は、乳成分濃度と乳酸菌数を制御することで、飲料1ml
当たりの乳酸菌の生菌数が107個(一千万個)以上とす
ることができ、この場合に、無脂乳固形分が8%以上で
あれば、発酵乳として表示することができる。また、無
脂乳固形分が3%以上であれば、乳酸菌飲料として表示
することができる。
【0087】しかも、本発明のホエー飲料は、その有効
かつ高度利用が求められているホエーを原料にしてお
り、また製造コストも安価なため、より付加価値が高く
なっており、さらに環境汚染(水質汚染)の防止にも寄
与するものである。
【0088】本発明は、これまで厄介者としか位置づけ
られなかった、チーズを製造する産業における副産物
(ホエー)の消費拡大と、高度利用に道を開くものと期
待される。なお、本発明は、畜産振興事業団の平成7年
度需要開発調査研究事業によりなされたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料Aで得られたACE転換阻害活性値の測定
結果である。
【図2】試料Bで得られたACE転換阻害活性値の測定
結果である。
【図3】試料Cで得られたACE転換阻害活性値の測定
結果である。
【図4】試料D−1〜D−4における乳酸菌の生育性を
pH値及び乳酸酸度の経時変化により検討した結果示す
グラフであり、図4(a)がpHの経時変化を示すグラ
フであり、図4(b)が乳酸酸度の経時変化を示すグラ
フである。
【図5】アクチナーゼEによる2時間及び4時間反応試
料における乳酸菌接種後のpH及び乳酸酸度の変化を示
すグラフであり、図5(a)がpHの経時変化を示すグ
ラフであり、図5(b)が乳酸酸度の経時変化を示すグ
ラフである。
【図6】アクチナーゼEによる24時間反応試料におけ
る乳酸菌接種後のpH及び乳酸酸度の変化を示すグラフ
であり、図6(a)がpHの経時変化を示すグラフであ
り、図6(b)が乳酸酸度の経時変化を示すグラフであ
る。
【図7】本発明のホエー飲料の製造法の一例を示すフロ
ーチャートである。
【図8】E−108の試料溶液のACE転換阻害活性を
示すグラフである。
【図9】E−108の試料溶液のIC50値を示すグラフ
である。
【符合の説明】
A−1,B−1,C−1:ペプシン消化物 A−2,B−2,C−2:トリプシン消化物 A−3,B−3,C−3:キモトリプシン消化物 A−4,B−4,C−4:プロティナーゼK消化物 A−5,B−5,C−5:アクチナーゼE消化物 A−6,B−6,C−6:サーモライシン消化物 A−7,B−7,C−7:パパイン消化物

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホエー由来の新規生理活性ペプチド類、
    乳酸菌及びその代謝生産物を含有するホエー飲料。
  2. 【請求項2】 新規生理活性ペプチド類がアンジオテン
    シン変換酵素阻害活性を有するものである請求項1記載
    のホエー飲料。
  3. 【請求項3】 ホエーにタンパク質分解酵素を作用さ
    せ、新規生理活性ペプチド類を遊離させたホエー加水分
    解物を得た後、乳酸菌を接種し、乳酸発酵させることを
    特徴とする請求項1記載のホエー飲料の製造法。
  4. 【請求項4】 新規生理活性ペプチド類がアンジオテン
    シン変換酵素阻害活性を有するものである請求項3記載
    の製造法。
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