JP2004283047A - 発酵乳およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた保形性と、滑らかな風味(食感)を有し、且つカードの脆さの少ない発酵乳を提供すること。
【解決手段】熱凝固性を有するホエー蛋白質と乳ペプチドとを含有することを特徴とする発酵乳およびその製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流通に適する保形性を有し、かつ滑らかな食感を有する発酵乳およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発酵乳(ヨーグルト)は、通常原料乳に乳酸菌を接種して発酵させることにより得られるものであり、その形状は、ハードヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ソフトヨーグルトに分類される。通常、これらのヨーグルトには、食感や風味をよくするために添加物として種々の安定剤(ゲル化剤)が使用されている。一般に使用される安定剤としては、ゼラチン、寒天およびペクチン等が挙げられ、これらはヨーグルト組織の安定化に寄与している。
【0003】
中でもハードヨーグルトでは、添加するゼラチンや寒天等が食感へ寄与すると同時にカードの増強や改質、ホエー分離の防止等の役割を果たしている。しかし、ゼラチンや寒天は、凝固点が低いため低温でゲル化するという性質を有しており、温度管理や製造時の混合方法等の管理が難しいという問題があった。また、これらの添加によるヨーグルトの風味低下等の問題も指摘されている。
【0004】
更に、ゼラチンや寒天等の安定剤を添加したヨーグルトは、良好な粘弾性を有するが、温度変化により軟化しやすい性質であったり、十分な硬さを有するが、組織が脆く崩れやすい性質をもつといった得られる製品の食感への課題があった。そのため、ゼラチンや寒天等の安定剤はヨーグルトの製造に必ずしも好ましい添加剤であるとは言えない。
【0005】
そこで最近では、天然の乳由来の成分である乳蛋白質をヨーグルトの安定剤として用いる例が数多く見られるようになっている。一般に安定剤として使用される乳蛋白質としては、トータルミルクプロテイン(TMP)、ホエー蛋白濃縮物(WPC)およびホエー蛋白分離物(WPI)とが知られており、これらを添加したヨーグルトは、適度な硬さを有し、保存時の離水(ホエーオフ)を防止する役割を持つことが報告されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
ところが、本発明者らの実験結果では、流通時の形状維持を目的として十分な硬さを得るために、原料乳中に安定剤としてホエー蛋白質(WPCまたはWPI)を、大量に添加する必要があるが、その場合形成されるカードが、硬くなり過ぎると共に、ゲル組織が粗くなり、風味(食感)が著しく低下するといった問題が見いだされた。
【0007】
これらの問題を解決する方法として、新たな熱凝固性のないあるいは部分加熱変性等の性質を有するホエー蛋白質を製造し、ヨーグルトの安定剤として利用する方法も提示されているが、これらは、ヨーグルト製造時に通常使用するホエー蛋白質(WPCあるいはWPI)を別途処理する工程を行わなければならず、作業性および作業効率等に課題を残していると同時にカードの脆さに関して十分な改善がなされたとはいえない(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平1−196254号公報
【特許文献2】
特開平3−198738号公報
【特許文献3】
特開平3−52940号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、優れた保形性と、滑らかな風味(食感)を有し、かつカードの脆さの少ない発酵乳が求められており、本発明は、このような発酵乳の提供をその課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、発酵乳原料液にホエー蛋白質と乳ペプチドとを併用添加し、これを乳酸発酵させることにより、優れた保形性を有するとともに脆さが少なく、かつ滑らかな食感を有した発酵乳が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は熱凝固性を有するホエー蛋白質と乳ペプチドとを含有することを特徴とする発酵乳を提供するものである。
【0012】
また、本発明は発酵乳原料液に、熱凝固性を有するホエー蛋白質と乳ペプチドとを添加し、加熱保持させる工程と、これを均質化して殺菌冷却した後、乳酸菌を接種して培養する工程を含むこと特徴とする発酵乳の製造方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の発酵乳に添加される熱凝固性を有するホエー蛋白質(以下、「ホエー蛋白質」と省略する)とは、熱凝固性、すなわち、加熱処理することにより分子が凝集する性質を有するホエー蛋白である。これらのホエー蛋白としては、チーズやカゼインを製造する際の副産物であるホエー蛋白質、ホエータンパク濃縮物(以下、「WPC」という)あるいはホエータンパク分離物(以下、「WPI」という)等を挙げることができる。
【0014】
WPCおよびWPIは、ホエーを出発物質として異なる処理工程により得られるものである。これらには種類が豊富にあり、それぞれに異なる性質および性状を有するが、一般にWPIは、処理工程において加熱処理をしないため、他のホエー蛋白質よりも熱凝固性に優れていることが知られている。本発明においては、これらのいずれを使用してもよく特に限定されるものではないが、熱凝固性に優れているWPI、例えば90〜100℃で90秒間加熱処理することにより90%以上のタンパク質成分が熱変性(熱凝集)する性質を有するものが好ましい。
【0015】
本発明の発酵乳に添加される、もう一方の成分である乳ペプチドとは、天然の乳由来の成分である乳蛋白質をアミノ酸が少なくとも数個結合した分子に分解したものである。より具体的には、ホエー(乳清タンパク質)、カゼイン等の乳蛋白質をプロテナーゼ等の酵素により加水分解し、これを濾過して得られる濾液を殺菌・濃縮して乾燥することにより得られるホエーペプチド、カゼインペプチド等が挙げられる。この乳ペプチドとしては、ホエーペプチドを用いることが風味改善および良好な食感を付与できる点で望ましい。
【0016】
このホエーペプチドは、チーズやカゼインを製造する際の副産物であるホエー蛋白質を上記の方法で処理することにより得られるものである。これらには、種類が豊富にあり、それぞれに異なる性質および性状を有する。本発明においては、これらのいずれを使用してもよく特に限定されるものではないが、分子サイズの小さいものが好ましく、特に分子量の20%以上が200〜50,000、好ましくは10,000〜50,000の範囲内にあるホエーペプチドを使用することが好ましい。また、乳蛋白質の加水分解工程で生じるアミノ酸分子は、特有の風味を有するため、これらをなるべく含有しないものが好ましい。
【0017】
本発明におけるホエー蛋白質と乳ペプチドとの配合比は、特に限定されるものではないが、ホエー蛋白質はその添加量に比例してカード値が上昇(硬さが増す)する傾向があり、乳ペプチドはその添加量に比例してカードの形成が弱くなる傾向がある。このため、これらを発酵乳に添加する場合にはホエー蛋白質の凝集力とホエーペプチド添加量によるカードテンション値の低下率とを考慮しつつ配合、添加する必要がある。
【0018】
本発明においては、製造コスト面を考慮して発酵乳が適度な硬さを有する程度、すなわち硬さ(圧縮降伏強さ)が1.0〜1.8N、好ましくは1.0〜1.6N、脆さが0.1未満、好ましくは0.09N以下になるように、発酵乳原料液にホエー蛋白質と乳ペプチドとを適宜配合すればよい。具体的には、例えば、発酵乳原料液に対してホエー蛋白質を0.05〜1.0質量%(以下、単に「%」という)、好ましくは0.1〜0.8%、ホエーペプチドを0.1〜1.0%、好ましくは0.2〜0.8%添加することが好ましい。
【0019】
なお、発酵乳の硬さが1.0〜1.8Nの範囲内にあっても、乳ペプチドの添加によって、カードの脆さが0.1N以上となる場合は、保形性に優れたヨーグルトができるが滑らかさがないため、風味嗜好上好ましくない。
【0020】
ここで、上記硬さは圧縮降伏強さを意味し、荷重の値が上昇し始めてから最初にピーク(極大値)となる時点の荷重値を示すものとする。なお、硬さは、測定方法によりその数値は変動するが、本発明ではレオメーター(本体:SUN RHEO METER MODEL CR−150、検出部:SUN RHEO METER MODEL CR−200D、ヨーグルトのカード測定用プランジャー(いずれもサン科学社製)を用いて測定した値を用いる。
【0021】
また、「脆さ」とは下式(1)から算出されるものとする。
【0022】
【式1】
Figure 2004283047
【0023】
本発明の発酵乳は上記範囲内でホエー蛋白質とホエーペプチドを配合するものであるが、その無脂乳固形分は8.5〜10.5%、好ましくは9〜10%のものが風味の点から好ましい。
【0024】
本発明の発酵乳の調製は、発酵乳原料にホエー蛋白質と乳ペプチドとを加える以外は定法に従って行えばよく、その一例を示せば以下の通りである。
【0025】
まず、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、バター、クリーム等の混合加水物等などを含む発酵乳原料液を用意し、これに、所定量のホエー蛋白質と乳ペプチドとを添加する。次いで90〜98℃で2分〜1時間程度加熱保持し、10〜15MPaで均質化する。更に、これをプレート式殺菌機を用いて100〜120℃で3秒間殺菌し、30〜40℃まで冷却した後、乳酸菌あるいはビフィズス菌をスターターとして添加し、培養装置中で30〜40℃で5〜8時間発酵させる。
最後にこれを10℃まで冷却することで本発明の発酵乳を得ることができる。
【0026】
この発酵乳を製造するために使用される乳酸菌あるいはビフィズス菌は特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ.ブルガリカス、ラクトバチルス・ヘルベティカス等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス等のエンテロコッカス属細菌等の乳酸菌あるいは、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム等のビフィドバクテリウム属細菌等のビフィズス菌が挙げられ、これらは単独あるいは併用して使用することができる。
【0027】
また、本発明の発酵乳の製造に当たっては、発酵乳原料液中にまたは製造の適当な段階で任意成分を添加することができる。この任意成分としては、シロップ等の甘味料の他、それ以外の各種食品素材、例えば、各種糖質や乳脂肪、乳化剤、酸味料、果汁等が挙げることができる。具体的には、ショ糖、異性化糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖、オリゴ糖等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水あめ、還元麦芽糖水あめ等の糖アルコール、クリーム、バター等の乳脂肪、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料が挙げられる。その他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類やカルシウム、鉄、亜鉛等のミネラル類を配合することができる。
【0028】
以上のようにして得られた発酵乳は、安定剤として寒天やゼラチンを使用していないにもかかわらず、それらの安定剤と同等の安定なヨーグルト組織を形成し、高い保形性と滑らかな食感を有しており、特に搬送時等の振動によるカードの崩れが少ない発酵乳である。
【0029】
従って、本発明の発酵乳は、プレーンヨーグルトや果汁・果肉入り固型ヨーグルト等のハード(固形)タイプの発酵乳として広く使用できるものである。
【0030】
【作用】
本発明において、発酵乳原料中に熱凝固性を有するホエー蛋白質とホエーペプチドを併用添加することにより、優れた保形性を有するとともに脆さの少ない、かつ滑らかな食感を有したハードヨーグルトが得られる理由は定かではないが、以下のような作用が関与していると考えられる。
【0031】
通常、ホエー蛋白質は、加熱処理を行うと、蛋白質の変性が生じ、静電的な反発力と疎水性相互作用を有する鎖状のタンパク質分子が広がったネットワーク構造を形成する。この構造は、疎水性が高いため、他の食品素材の影響を受けやすく、且つ塩の添加等によって静電的な反発力を失い会合しやすい状態となる。
一般に使用される発酵乳の原料は、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳等があるが、これらのいずれにもカルシウムイオン等の塩が含まれており、pH低下に伴いホエー蛋白質の静電的な反発力が失われ、これら乳成分やホエー蛋白質同士と会合しやすくなる。その結果、これら乳成分とホエー蛋白質またはホエー蛋白質同士が複雑に絡み合った状態、すなわちゲル状を形成し、ゼラチンや寒天等の安定剤(ゲル化剤)を添加したときと同等の安定化作用を発現させる。
【0032】
このようにして得られるゲル状態は、その組織が緻密に改善されたものであるが本発明においては、併用添加される分子の小さいホエーペプチドが、このように緻密に組織化されたゲル状態の隙間に入り込み、緻密な組織を破壊することなく、凝固性を緩和し、適度な弾力性と滑らかな食感をもたらすものと考えられる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
参 考 例 1
ホエー蛋白質の添加量と硬さの関係:
脱脂粉乳、クリーム、トータルミルクプロテイン(TMP)(Nutrilac YO−8113:アーラーフーズ イングレディンツ ジャパン(株)製)、ホエーペプチド(W800:森永乳業社製、分子量の20%以上が10,000〜50,000の範囲にあるもの)、ホエー蛋白質(WPI)(アラセン895:ニュージーランド デイリーボード社製)を表1の配合で混合溶解したものを原料液とした。
【0035】
これらの原料液を90〜95℃、約5分間加熱保持した後、15MPaで均質化し、115℃で3秒間殺菌後、37℃まで冷却した。これに乳酸菌スターターとしてラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus debrueckii ss. bulgaricus)YIT0446 を1.0%(v/v)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)YIT2021を0.5%(v/v)接種し、混合後、容器に充填し、37℃の発酵室で5〜6時間発酵を行った。その後、10℃以下まで冷却し、無脂乳固形分9.5%のヨーグルトを得た。
【0036】
それぞれのヨーグルトについて下記の条件でレオメーター(本体:SUN RHEO METER MODEL CR−150、検出部:SUN RHEO METER MODEL CR−200D、ヨーグルトのカード測定用プランジャー(いずれもサン科学社製)を用いて硬さ(圧縮降伏強さ)を測定した。その結果も表1に示した。
【0037】
【表1】
Figure 2004283047
【0038】
< 測 定 条 件>
TABLE SPEED : 75 mm/min
RANGE : 500mV
測定温度 : 5〜6℃
圧縮距離 : 30mm(歪み;67%)
* 試験に際しては、応力が生じてから(プランジャーとヨーグルトが接して
から)応力の測定を開始した。
【0039】
表1より、ホエー蛋白質の添加量の増加に伴って、硬さ(圧縮降伏強さ)の値が大きくなっていることがわかった。
【0040】
実 施 例 1
ヨーグルトの調製(1):
脱脂粉乳、クリーム、トータルミルクプロテイン(TMP)、ホエーペプチド、ホエー蛋白質(WPI)を表2の配合で混合溶解したものを原料液とした。
【0041】
これらの原料液を90〜95℃で約5分間加熱保持した後、15MPaで均質化し、115℃で3秒間殺菌後、37℃まで冷却した。これに乳酸菌スターターとしてラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ.ブルガリカス YIT0446 を1.0%(v/v)、ストレプトコッカス サーモフィラス YIT2021を0.5%(v/v)接種し、混合後、容器に充填し、37℃の発酵室で5〜6時間発酵を行った。その後、10℃以下まで冷却し、無脂乳固形分9.5%のヨーグルトを得た。
【0042】
このようにして得られたヨーグルトについて参考例1と同様に硬さ(圧縮降伏強さ)と脆さを測定した。その結果を図1に示した。また、図1から算出した硬さおよび脆さの値を表2に示した。
【0043】
【表2】
Figure 2004283047
【0044】
表2より発明品1は比較品1よりも硬さが高い値を示すことがわかった。また、図1の荷重−変位量曲線から、発明品1は比較品2に比べ脆さのないヨーグルトであることがわかった。
【0045】
実 施 例 2
ヨーグルトの調製(2):
表3の配合の原料液を用いて、実施例1と同様の方法で無脂乳固形分9.5%のヨーグルトを得た。これら得られたヨーグルトについて参考例1と同様に硬さ(圧縮降伏強さ)と脆さを測定した。その結果を図2に示した。また、図2から算出した硬さおよび脆さの値を表3に示した。
【0046】
【表3】
Figure 2004283047
【0047】
表3より、発明品2〜5の硬さの値は、1.0〜1.8Nの範囲内にあり、比較品1よりも硬さで高い値を示すことがわかった。一方、図2の荷重−変位量曲線から、発明品8〜11は比較品3よりも得られた製品に脆さがないことがわかった。
【0048】
実 施 例 3
ヨーグルトの調製(3):
実施例1の原料液に、ホエーペプチド(以下、単に「ペプチド」ということもある)とホエー蛋白質(WPI)の濃度を表4に示す配合で添加して実施例1と同様の方法で無脂乳固形分9.5%のヨーグルトを得た。これらの得られたヨーグルトについて参考例1と同様に硬さ(圧縮降伏強さ)と脆さを算出した結果を表5に示した。また、それぞれのヨーグルトの官能面における評価を自由描写と表6の評価基準に基づいて評価した結果を表7に示した。更に、ヨーグルトの官能面における評価とホエーペプチド、WPI濃度との関係を図3に示した。また更に、ヨーグルトの官能面における評価と、硬さおよび脆さとの関係を図4に示した。
【0049】
【表4】
Figure 2004283047
【0050】
【表5】
Figure 2004283047
【0051】
【表6】
Figure 2004283047
【0052】
【表7】
Figure 2004283047
【0053】
以上の結果より、本発明の高い保形性と滑らかな食感を有するヨーグルトは、硬さが1.0〜1.8Nで脆さが0.1N未満にあるものが好ましく、特に硬さが1.0〜1.6N、脆さが0.09N以下であるものが好ましいことがわかった。
また、上記硬さと脆さを有するヨーグルトは、WPIを0.05〜1.0%、好ましくは0.1〜0.8%、ホエーペプチドを0.1〜1.0%、好ましくは0.2〜0.8%にあるものが好ましいことがわかった。更に、本発明のヨーグルトは下式(2)で示される硬さ(圧縮降伏強さ)と脆さの関係を有することもわかった。
【0054】
【式2】
Figure 2004283047
【0055】
【発明の効果】
本発明は、発酵乳製造にホエー蛋白質を使用した場合に、更にホエーペプチドを併用添加することによって、通常の安定剤を添加した発酵乳に比べて、高い保形性と滑らかな食感を有する発酵乳を得ることができる。
【0056】
従って、本発明の発酵乳は、食感が優れていると同時に製品の搬送時等の揺れによるカードの崩れを防ぐことができるものであり、商品的に価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で調製したヨーグルトの荷重−変位量曲線を示す図面である(A:圧縮降伏強さ、B:下部降点)。
【図2】図2は、実施例2で調製したヨーグルトの荷重−変位量曲線を示す図面である。
【図3】図3は、実施例3で調製したヨーグルトの官能面における評価とホエーペプチド、WPI濃度との関係を示す図面である。
【図4】図4は、実施例3で調製したヨーグルトの官能面における評価と硬さ、脆さとの関係を示す図面である。
以 上

Claims (6)

  1. 熱凝固性を有するホエー蛋白質と乳ペプチドとを含有することを特徴とする発酵乳。
  2. 熱凝固性を有するホエー蛋白質が、ホエータンパク分離物またはホエータンパク濃縮物である請求項第1項記載の発酵乳。
  3. 乳ペプチドが、その20%以上のものの分子量が200〜50,000の範囲にある乳ペプチドである請求項第1項または第2項記載の発酵乳。
  4. 硬さが1.0〜1.8N、脆さが0.1N未満である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の発酵乳。
  5. 発酵乳が、ハードタイプの発酵乳である請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の発酵乳。
  6. 発酵乳原料液に、熱凝固性を有するホエー蛋白質と乳ペプチドとを添加し、加熱保持させる工程と、これを均質化して殺菌冷却した後、乳酸菌を接種して培養する工程を含むこと特徴とする発酵乳の製造方法。
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