JP2020188724A - 乳原料発酵品およびその製造方法 - Google Patents

乳原料発酵品およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低pHにおいても沈殿が生じ難く、沈殿が固結し難い新規な乳原料発酵品の製造方法、及び乳風味付与剤の提供。【解決手段】工程1:乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させる工程、工程2:工程1で得られた乳原料に微生物を添加し発酵を行う工程を含む、乳原料発酵品の製造方法、乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させたのち、微生物発酵を行ってなる乳原料発酵品、及び当該乳原料発酵品を有効成分として含有する乳風味付与剤。【選択図】図1

Description

本発明は、乳原料発酵品およびその製造方法に関し、より詳しくは、低pH飲食品に配合しても沈殿が発生しづらい乳原料発酵品およびその製造方法に関する。
飲料において、乳風味を付与するために各種乳原料やその加工品を添加することは日常的に行われている。例えば、特許文献1には、乳又は乳製品のリパーゼ処理及び/又は乳酸菌による発酵処理により得られる処理物を有効成分として含有することを特徴とする乳飲料又は発酵乳の風味改良剤が記載され、乳感の増強などの効果を奏することが記載されている。また、特許文献2には、乳または乳加工品をリパーゼの存在下に酵素反応させて得られる酵素分解物および乳または乳加工品を香気回収手段に供して得られる回収香からなる乳製品フレーバーが記載され、優れた各種乳風味を付与可能なことが記載されている。また、フレッシュな乳の香味付与のための乳タンパク質含有素材として、特許文献3では、飲食品の香味付与物、その製造法および香味付与物含有飲食品が提案されており、トータルミルクプロテインを乳酸発酵後に殺菌し、プロテアーゼ処理して得られる処理物を有効成分として含有する飲食品の香味付与物が記載されている。
一方で、pHの低い飲料に乳原料またはその加工品を添加すると、乳原料に含まれる乳タンパク質が酸により変性して凝集が生じ、乳タンパク質を含む沈殿やその固結を招いて、飲料の外観を損ねたり、風味の変質をもたらしたりする場合があった。
特開2003−250482号公報 特開2002−142713号公報 特許第5292604号公報
本発明の課題は、低pHにおいても沈殿の生じにくい新規な乳原料発酵品を提供することである。
本発明者らは、低pHにおいても沈殿を生じにくい新規な乳原料発酵品について鋭意検討したところ、全く意外なことに、乳原料の加工において従来行われてきた乳原料の乳タンパク質分解処理および微生物による発酵処理を、単に特定の順番とすることにより、低pHにおいても沈殿が生じにくく沈殿が固結しにくい乳原料発酵品が得られることを見出した。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 工程1:乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させる工程
工程2:工程1で得られた乳タンパク質分解物に微生物を添加し発酵を行う工程
を含む、乳原料発酵品の製造方法。
[2] 微生物が乳酸菌である、[1]に記載の乳原料発酵品の製造方法。
[3] 工程1において、タンパク質分解酵素としてエンド型とエキソ型の混合物を1種または2種以上使用する、[1]または[2]に記載の乳原料発酵品の製造方法。
[4] 工程1においてタンパク質分解酵素の作用時間が30分〜30時間である、および/または工程2において微生物発酵の時間が30分〜30時間である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の乳原料発酵品の製造方法。
[5] 乳タンパク質を含有する乳原料が、脱脂粉乳、トータルミルクプロテイン、および乳タンパク濃縮物から選択される1種以上である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の乳原料発酵品の製造方法。
[6] 乳原料中の乳タンパク質濃度が1〜20質量%である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の乳原料発酵品の製造方法。
[7] 乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させたのち、微生物発酵を行ってなる乳原料発酵品。
[8] [1]〜[6]に記載の方法によって製造された乳原料発酵品、または[7]に記載の乳原料発酵品を有効成分として含有する、乳風味付与剤。
本発明によって、新規な優れた乳原料発酵品およびその製造方法を提供できる。
図1は、本発明の乳原料発酵品と比較品の乳原料発酵品の沈殿量を示す図である。
以下、本発明について例を挙げつつ詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。本明細書において、「〜」は下限値および上限値を含む範囲を意味する。
本発明の乳原料発酵品は、低pHの飲食品において、従来の乳原料発酵品より沈殿やその固結が生じ難く、飲食品の外観、食感、風味などを損ね難い。さらには、飲食品に良好な乳風味を付与することもできる。ここでいう良好な乳風味とは、乳製品に由来する自然な風味であって、例えば、生乳のようなフレッシュなミルク感、甘味、クリーミー感、まろやかさ、乳脂感、発酵乳感、コク、濃厚感、ボリューム感、呈味感、飲み応え、食べ応えのうち1種以上を含むものであってよい。発酵乳感とは、例えばヨーグルトのような、まろやかな酸味、コク、濃厚感などを伴う感覚をいう。また、本発明の乳原料発酵品は、飲食品の風味、特に乳風味の持続性などを付与または増強することもできる。また、飲食品のタンパク質やアミノ酸強化用の飲食品素材としても使用できる。
本発明において、乳原料発酵品とは、以下に説明する本発明の工程を経て得られるものであって、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)に記載の乳製品や発酵乳に該当するものであっても、該当しないものであってもよい。
本発明において、低pHとは、おおよそpH5.0以下でよい。例えば、乳タンパク質の80質量%程度を占めるカゼインの等電点であるpH4.6程度(例えばpH4.5、pH4.7、またはpH4.8)を上限としてよく、例えば、pH2.0〜5.0、pH2.5〜4.8の範囲内であってよい。
[乳原料発酵品の製造方法]
本発明の乳原料発酵品の製造方法は、少なくとも以下の工程をこの順で含むことを特徴とする。
工程1:乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させる工程
工程2:工程1で得られた乳タンパク質分解物に微生物を添加し発酵を行う工程
(乳原料)
本発明に使用可能な乳原料は、特に限定されない。乳原料は乳タンパク質を含有するもの、または乳タンパク質それ自体、またはこれらを含有する液体または固体であってよい。乳タンパク質とは、乳汁に含まれる各種のタンパク質およびそれらを含む組成物であり、具体的には、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ラクトフェリン、ホエープロテインコンセントレート(WPC)、トータルミルクプロテイン(TMP)、乳タンパクペプチド、牛乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、チーズ、乳タンパク濃縮物(milk protein concentrate,MPC)、これらの2種以上の混合物、またはこれらを含有する液体などが挙げられる。好ましくは、上記のような市販の乳原料を、水などのタンパク質分解や微生物発酵を進行可能な溶媒と混合させた液(本明細書では乳原料液とも称する)を、工程1に供する乳原料として使用してもよい。
工程1に供する乳原料中の乳タンパク質濃度は、工程1のタンパク質分解および工程2の微生物発酵が進行すれば特に限定されない。乳原料の乳タンパク質濃度は、許容される沈殿量や付与したい乳風味の特徴に応じて任意に設定してよく、例えば、乳原料全体に対して、乳原料由来のタンパク質濃度が1〜20%であってよく、2〜18%が好ましく、3〜15%がより好ましい。
(工程1の前処理)
工程1の前に、乳原料を殺菌する工程を行ってもよい。殺菌方法は任意であるが、通常は加熱殺菌を行う。加熱殺菌の条件は、温度60〜120℃、好ましくは80〜90℃で、時間1分〜1時間、好ましくは10分〜30分で処理すればよい。加熱殺菌を行った場合、次のタンパク質分解処理に適した温度範囲になるように冷却工程を更に設けてもよい。冷却温度はタンパク質分解に使用する酵素などに応じて適宜調整すればよく、一般的には20〜60℃の範囲に冷却すればよい。
また、乳原料の乳糖含量が多い場合や、乳糖を含む乳原料を多く使用する場合には、乳糖が水系溶媒中で結晶化することがあるため、乳糖を分解可能な手段、例えば乳糖分解酵素を添加し、乳糖を少なくとも一部分解しておいてもよい。一般的には、乳原料の乳糖含有量が5%以下であれば、乳糖分解処理は行わなくてもよい。この乳糖分解処理は、工程1(タンパク質分解工程)の前に行ってもよいし、同時に行ってもよい。通常、40〜60℃(好ましくは55℃程度)、1分〜48時間、pH3.0〜7.0(好ましくはpH4.5程度)の条件で、ラクターゼを用いて乳糖分解処理を行う。なお、本発明において、同時とは同時進行の状態が少なくとも一部あることを意味するものとする。
(工程1:タンパク質分解工程)
タンパク質分解酵素処理の際の反応時間、pH、温度などの各種条件は特に限定されず、選択する乳原料や酵素の特性に応じて任意に設定してよい。例えば、反応時間は30分〜70時間の範囲内でよく、好ましくは1〜40時間の範囲内である。pHは2〜10の範囲内でよく、好ましくはpH4〜6の範囲内である。反応温度は、20〜70℃の範囲内でよく、好ましくは30〜60℃の範囲内である。タンパク質分解酵素量は、例えば乳原料1gに対して1〜10000Uの範囲内であってよく、好ましくは3000〜6000Uの範囲内である。
なお、タンパク質分解反応の進行度合いの指標として、当該分解処理中に1回以上任意のタイミングで、当該分解度合を確認または推定可能な物理化学的データを取得して分解度合いをモニタリングしてもよく、一定値に到達した時点でタンパク質分解工程を終了するようにしてもよい。そのようなデータの例として、遊離アミノ酸量、紫外吸収法による吸光度(測定波長:280nm)が挙げられるが、中和滴定値など、他の公知の指標によって確認することも可能である。例えば、遊離アミノ酸量の場合、総タンパク質量に対する遊離アミノ酸量が30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上であり、上限は、70%、好ましくは65%、より好ましくは60%であり、この下限および上限のいずれかの範囲内であることが好ましい。許容範囲の沈殿量、微生物発酵の進行度合い、付与したい風味の特徴などに応じて適宜設定でき、好ましくは、40%〜60%の範囲内である。紫外吸収法による吸光度の場合であれば、例えば、後述の実施例4に記載の測定方法において、タンパク質分解酵素反応後の乳タンパク質分解物の吸光度とタンパク質分解酵素反応前の基質の吸光度との差が0.1〜1.0の範囲でよく、好ましくは0.2〜0.7の範囲であってよい。また、中和滴定値の場合であれば、例えば、実施例4に記載の測定方法において、2.0〜13.0の範囲内、好ましくは9.5〜11.5であってよい。
本発明に使用される酵素としては、動物由来プロテアーゼ、微生物由来プロテアーゼのいずれのものも使用することができる。また、プロテアーゼ活性はエンド型、エキソ型、その混合型のいずれのものも使用することができる。沈殿抑制効果をより高める観点から、エンド型とエキソ型の混合型(以下、エンド・エキソ型とも称する)の酵素製剤であることがより好ましく、2種またはそれ以上併用する場合には、エンド・エキソ型を2種以上併用することが好ましい。なお、タンパク質分解酵素によるタンパク質分解において、特にエキソ型酵素による分解を中心に行った場合には、旨味成分であるアミノ酸が増え、アミノ酸量によっては調味料風の風味が付与され嗜好性が下がる場合があるので、付与したい風味の特性に応じて、エンド型、エキソ型、エンド・エキソ型の量比は適宜調整することが好ましい。
本発明で用いられるプロテアーゼとしては、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾープス属、ペニシリウム属など微生物由来の酸性プロテアーゼ、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属、バシラス属など微生物由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス属、バシラス属など微生物由来のアルカリ性プロテアーゼ、パパインなどの植物由来プロテアーゼ、豚膵臓など動物由来のプロテアーゼを使用することができ、また、これらを任意に組み合わせて使用することもできる。また、分解機構も特に制限はなく、アスパラギン酸プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼのいずれでもよい。
市販品としては、プロテアーゼA、プロテアーゼM、プロテアーゼP、プロテアーゼM「アマノ」SD、プロテアーゼN、プロテアーゼNL、プロテアーゼS、ウマミザイム、ペプチダーゼR、ニューラーゼ(登録商標)A、ニューラーゼ(登録商標)F、サモアーゼ(登録商標)PC10F、サモアーゼ(登録商標)GL30、パパインW40、プロチンSD−NY10、プロチンSD−AY10(以上、天野エンザイム(株)製)、スミチーム(登録商標)AP、スミチーム(登録商標)LP、スミチーム(登録商標)MP、スミチーム(登録商標)FP、スミチーム(登録商標)LPL(以上、新日本化学工業(株)製)、デナプシン2P、デナチーム(登録商標)AP、XP−415、ビオプラーゼ(登録商標)XL−416F、ビオプラーゼ(登録商標)SP−4FG、ビオプラーゼ(登録商標)SP−15FG(以上、ナガセケムテックス(株)製)、モルシン(登録商標)F、PD酵素、IP酵素、AO−プロテアーゼ(以上、キッコーマン(株)製)、パンチダーゼ(登録商標)YP−SS、パンチダーゼ(登録商標)NP−2、パンチダーゼ(登録商標)P(以上、ヤクルト薬品工業(株)製)、フレーバザイム(登録商標)、アロアーゼ(登録商標)、プロタメックス(登録商標)、ニュートラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)(ノボザイムズ(株)製)、コクラーゼ(登録商標)SS、コクラーゼ(登録商標)P顆粒(以上、三菱ケミカルフーズ社製)等を例示することができる。これらのプロテアーゼは単独又は数種組み合わせて利用することもできる。好ましい態様として、プロテアーゼM「アマノ」SDとコクラーゼ(登録商標)P顆粒の併用が挙げられるが、これらに限定されない。
プロテアーゼ処理に続いて、酵素の失活や殺菌を行ってもよい。失活については、温度60〜120℃程度で時間30秒〜2時間程度加熱する熱失活が例示できる。殺菌については、温度60〜120℃で時間30秒〜30分程度で、プレート式熱交換機による殺菌またはバッチ式殺菌を例示することができる。また、失活および殺菌を同時に行ってもよい。殺菌後は適宜室温程度まで冷却することが好ましい。
(工程1の後処理)
また、工程1と2との間に、適宜、得られた乳タンパク質分解物に水を添加する工程、殺菌する工程、冷却する工程のいずれか1工程以上を行ってもよい。水を添加する場合、工程2の反応が進行しやすいように適宜添加量を決めればよい。殺菌方法は任意であるが、加熱殺菌が好ましく、加熱殺菌の条件は、温度60〜120℃、好ましくは80〜90℃で、時間1分〜1時間、好ましくは10分〜30分で処理すればよい。冷却工程では、続く微生物発酵処理に適した温度、例えば20〜50℃程度の範囲に冷却すればよい。
工程1の後に適宜殺菌や冷却を行った後、工程2に供するまで−20℃〜5℃程度で冷凍または冷蔵保存してもよいが、好ましくは、工程1の終了後、または殺菌および冷却後ただちに、例えば1分〜3時間以内、好ましくは1分〜30分に工程2に供する。
(工程2:微生物による発酵工程)
本発明の乳原料発酵品の製造に使用可能な微生物の種類は特に限定されず、飲食品素材の加工製造に使用可能な微生物であれば任意である。例えば、酵母による発酵、乳酸菌による発酵が好ましく採用できる。
本発明の一態様によると、乳酸発酵可能な微生物を選択することが好ましい。そのような菌として乳酸菌が挙げられる。乳酸菌の例として、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する乳酸菌であってよい。
より具体的には、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ガッセリイ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・デルブリュキー・サブスピーシス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシス・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシス・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)、ペディオコッカス・アシディラクチス(Pediococcus acidilactici)、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・クレモリス(Lactococcus lactis cremoris)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)などを例示することができ、更に具体的には、例えば、公的保存機関にタイプ・カルチャーとして寄託されているラクトバチルス・ヘルベチカスJCM1003、ラクトバチルス・ガッセリイJCM1017、ラクトバチルス・デルブリュキー・サブスピーシス・ブルガリカスJCM1001、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシス・カゼイJCM1134、ラクトバチルス・アシドフィラスJCM1021、ラクトコッカス・ラクチスJCM7638、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシス・サーモフィラスIFO13957、ペディオコッカス・アシディラクチスJCM2032、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリスIAM1087、ビフィドバクテリウム・ブレベJCM1192などを挙げることができる。また、上記の菌またはその他の乳酸菌を含む、市販の乳酸菌スターターを用いてもよい。
好ましい態様として、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス・クレモリス(Lactococcus lactis cremoris)のいずれかまたは2種以上を併用する態様が挙げられる。
微生物による発酵処理時の条件は特に限定されず、微生物発酵が進行可能な条件、例えば乳酸発酵が進行可能な一般的な条件を採用してよく、使用する微生物に応じて適宜調整すればよい。例えば、工程1で得られた乳タンパク質分解物またはその水との混合物を、25℃〜90℃で30秒〜30分間殺菌した後冷却し、例えば、前記の乳酸菌の前培養液を乳又は乳製品に対して0.5〜5.0重量%、または接種菌体量が、発酵工程終了時点で1.0×10〜1.0×1012cfu/mlの範囲内、好ましくは5.0×10〜1.0×10cfu/mlの範囲内となるようにし、例えば、pH4.0〜8.0で、15℃〜55℃、好ましくは20〜50℃にて30分〜70時間、好ましくは1時間〜30時間の範囲内で発酵を行うことができる。発酵方法は、攪拌、通気、静置など乳酸菌や培養条件に応じて適宜設定してよい。発酵工程終了のタイミングは任意であるが、例えば、発酵を行っている液のpHをモニタリングし、当該液のpHが3.0〜4.5の範囲内になった際に発酵工程を終了してよい。
(工程2の後処理)
工程2の後に、微生物の増殖を抑制するためにpH調整を行ってもよい。配合対象の飲食品のpHに近いpHに調整し、保存することが好ましい。例えば、低pH飲食品のpHに近い値、具体例としてはpH2.5〜4.5の間、好ましくはpH3.0〜4.0の間への調整が挙げられる。
また、調整後のpHは、乳タンパク質に含まれるタンパク質、例えば乳タンパク質の主要成分であるカゼインの等電点(pH4.6)から0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上異なってもよい。このように乳タンパク質の等電点との差を一定以上にすることで、沈殿抑制や沈殿固結防止に資する可能性が考えられる。pH調整は任意の方法で調整してよいが、pHを低くする場合は飲食品に使用可能な酸を、pHを高くする場合は飲食品に使用可能なアルカリ化合物を、工程2で得られた乳原料発酵品に添加すればよい。酸の例としてアジピン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸などが挙げられ、アルカリの例として水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは乳酸であるが、これらに限定されない。
さらに、工程2の後に、殺菌する工程を行ってもよい。加熱殺菌が好ましい。加熱殺菌の条件は、前述と同様、温度60〜120℃、好ましくは80〜90℃で、時間1分〜1時間、好ましくは10分〜30分で処理すればよい。また、そのあとに、任意の目開きの篩など濾過を行ってもよい。
工程2の後に適宜pH調整、殺菌、および/または濾過を行った後は、使用時まで、−20℃〜4℃程度で冷凍または冷蔵保存しておくことが好ましい。
[本発明の乳原料発酵品の好ましい性質]
上記本発明の方法によって製造された本発明の乳原料発酵品の好ましい性質としては、以下の点が挙げられるが、これらに限定されない。乳原料発酵品のタンパク質分解率(アミノ酸量/総タンパク質量)の下限は、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上であり、上限は、70%、好ましくは65%、より好ましくは60%であり、この下限および上限のいずれかの範囲内であることが好ましい。なお、70%を超えると乳のコク感や濃厚感が弱まりアミノ酸に由来する旨味が強調されて嗜好性が下がる場合があり、30%未満であると低pHにおいて沈殿しやすくなったり、その沈殿が固結しやすくなったりする場合がある。また、好ましくは、本発明の乳原料発酵品をpH2.9の水溶液に最終濃度1質量%で配合した際、120℃で1分間の加熱後にも沈殿を生じないものである。または、好ましくは、pH2.9の水溶液に5質量%配合した際、常温(20〜25℃)で24時間放置後、8gを目盛付きの10ml試験管に移し、スイング型遠心機で3000rpmにて5分間遠心処理を行った結果、沈殿量(上記試験管底からの沈殿上端までの厚さ平均)が7.0mm以下である。
また、本発明の乳原料発酵品において、固形分が一定値以下の粒子であることが、配合対象の飲食品の外観や食感を損なわない観点から好ましく、例えば、50メッシュによる濾過を通過可能なものであってよい。なめらかな食感を重視する場合には、80メッシュ、より好ましくは120メッシュ、更に好ましくは150メッシュを通過可能なものであってよい。
なお、本発明の乳原料発酵品は、乳原料中の成分、タンパク質分解によって生成する各種分解物、微生物発酵によって生成する各種発酵産物などが複雑に影響しあい、多数の成分の相互作用によって沈殿抑制および乳風味付与の両効果を奏するものであると考えられ、成分を特定することは困難である。よって、本発明の乳原料発酵品を成分で特定することは不可能かつ非実際的である。
[本発明の乳原料発酵品を適用可能な飲食品]
本発明の乳原料発酵品を適用可能な飲食品は特に限定されない。乳の風味またはそれに類似する風味(例えば、乳を使用して製造されるチーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品の風味)を付与したい飲食品や、栄養価向上目的で乳タンパク質などを配合したい飲食品など、任意の目的によって本発明の乳原料発酵品を配合可能な飲食品であればよい。
そのような飲食品の例として、コーラ飲料、果汁入炭酸飲料、乳類入炭酸飲料等の炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料、ヨーグルト飲料等の食系飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、コーヒー飲料、ココア等の嗜好飲料類;チュ−ハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒等のアルコール飲料類;バター、チーズ、ホイップクリーム、ミルク、ヨ−グルト等の乳原料;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザ−ト等のデザ−ト類およびそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナック等の菓子類およびそれらを製造するためのケ−キミックス等のミックス類;パン、スープ、ホワイトソース、各種インスタント食品等の一般食品類;が挙げられるが、これらに限定されない。
特に、ある程度透明度の高い飲食品や食感が滑らかな飲食品が、本発明の沈殿抑制効果および/または沈殿固結防止効果を十分に享受でき好ましい。透明度の高い飲食品としては、例えば、そのOD660nmが1.0以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下または0.2以下のものであってよい。食感が滑らかな飲食品としては、固形分の粒度が300μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、または10μm以下のものであってよい。
本発明の乳原料発酵品の飲食品中濃度は、任意に決定できるが、0.01〜10質量%、0.05〜1質量%、または0.1〜0.5質量%の範囲内であってよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]タンパク質分解工程および微生物発酵工程の実施順と沈殿量
水810gを40〜45℃に加温した後、脱脂粉乳(雪印社製)100g(タンパク質含量約35質量%)を添加し、温度を維持しつつ攪拌溶解させた(乳タンパク質濃度約3.8質量%)。次いで85℃、15分で加熱殺菌を行った後、50℃程度まで冷却し、工程1に供する乳原料(乳原料液)を得た。なお、乳原料液のpHについては、pH5.5〜7.0の範囲内であったため、タンパク質分解酵素による分解反応進行が可能と判断し、pHを調整せずそのまま工程1のタンパク質分解処理に供した。
工程1として、前記乳原料液にタンパク質分解酵素であるプロテアーゼM「アマノ」SD(天野エンザイム社製、エンド・エキソ型)6.8gを水68.0gに溶かしたものを加え、タンパク質分解処理を50℃で4時間、300prmの攪拌状態で行い、乳タンパク質分解物を得た。次いで、この乳タンパク質分解物を85℃で15分加熱殺菌後、43℃程度まで冷却した。
工程2として、冷却後の乳タンパク質分解物に、乳酸菌Streptococcus thermophilusおよびLactobacillus helveticusの混合物である乳酸菌スターター(DSM社製)0.2gを水15.0gに混合したものを添加し、5分の攪拌混合後、43℃で24時間、静置で発酵を行った。pHは、発酵開始時はpH6.31、発酵終了後はpH3.88であった。乳酸菌数は、発酵終了時点で2.4×10cfu/mlであった。
次いで、85℃で15分間加熱殺菌を行った。
以上のようにして、本発明品の乳原料発酵品(本発明品1)を得た。このタンパク質分解率(タンパク質含量に対する遊離アミノ酸含量の比率)は48.0%であった。遊離アミノ酸の量は、本発明品1約1.0gを0.02mol/L塩酸で希釈し20mlにメスアップした後、遠心分離(7,000rpm、10分)して得られた上清を孔径0.45μmのフィルターでろ過し、ろ過物のアミノ酸量をアミノ酸分析器(L−8900、日立ハイテクノロジーズ社製)にかけて測定し、本発明品1のアミノ酸量に換算して得た。
また、本発明品1を製造した方法において工程1(タンパク質分解工程)および工程2(微生物発酵工程)を入れ替えた以外は本発明品1と同様にして、比較品の乳原料発酵品(比較品1)を得た。
また、本発明品1を製造した方法において工程2(微生物発酵工程)を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較品の乳原料発酵品(比較品2)を得た。
また、本発明品1を製造した方法において工程1(タンパク質分解工程)を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較品3の乳原料発酵品を得た。
次いで、ぶどう糖果糖液糖を3.2質量%含み、酸味料として酢酸およびクエン酸を配合した低pHの糖液(20℃におけるpH2.9)を調製し、そこに各乳原料発酵品を5質量%の最終濃度となるように添加し、よく攪拌した。
そして、常温(20〜25℃)で24時間放置後、8gを取って目盛付きの10ml試験管に移し、スイング型遠心機で3000rpmにて5分間遠心処理を行い、沈殿について確認した。具体的には、沈殿量について、試験管の底から沈殿上端までの厚さ平均を計測し、沈殿の状態について、遠心処理後の試験管を振って沈殿の分散の度合いを目視で確認した。また、各乳原料発酵品を含む低pH糖液について、何も添加していない上記低pH糖液を対照品とし、対照品と比べた風味についてよく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)15名による評価を行った。具体的には、対照品と比べた風味について、0点:対照品との違いが感じられない、1点:発酵乳様の風味が若干付与されたと感じられる、2点:発酵乳様の風味が付与されたと感じられる、3点:発酵乳様の風味が強く付与されたと感じられる、のいずれかの点数を選択させ、かつ、対照品と比べた酸臭について、0点:対照品との違いが感じられない、1点:対照品の酸臭が若干軽減されたと感じられる、2点:対照品の酸臭が軽減されたと感じられる、3点:対照品の酸臭が大きく抑制されてまろやかになったと感じられる、のいずれかの点数を選択させた。さらには、対照品と比べた風味に関するコメントを回答用紙に記入させた。以上の平均的な結果を下記表1に示す。
Figure 2020188724
表1に示すように、本発明品1の乳原料発酵品を用いた場合は、比較品1〜3の乳原料発酵品を用いた場合と比べて沈殿量が抑制され、かつ、優れた乳様風味を付与可能であり、酸臭も抑制可能なものであった。
[実施例2]微生物種類および反応条件の検討
本発明の方法において様々な微生物を用いて、本発明の乳原料発酵品を製造した。具体的には、下記表2に示すように、実施例1で用いた乳酸菌Streptococcus thermophilusおよびLactobacillus helveticusの混合物である乳酸菌スターター(DSM社製)のほか、乳酸菌Lactobacillus bulgaricusの乳酸菌スターター(DSM社製)、または乳酸菌Lactococcus lactis cremorisの乳酸菌スターター(DSM社製)を用いた。タンパク質分解酵素は、実施例1と同様にプロテアーゼM「アマノ」SD(天野エンザイム社製、エンド・エキソ型)を使用した。工程1の温度および時間、ならびに工程2の温度を下記表2のようにした以外は実施例1と同様にして、本発明の乳原料発酵品(本発明品2〜8)を得た。ただし、本発明品5は実施例1と同様の条件で再度行ったものである。
そして、実施例1と同様にして本発明品2〜8の沈殿量を確認した。結果を下記表2に示す。
Figure 2020188724
表2に示すように、いずれの乳酸菌および条件を用いた本発明品においても、実施例1の表1に記載の比較品1の沈殿量7.5mmよりも顕著に沈殿量が抑えられていたことが確認された。
また、本発明品の風味をよく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)15名に評価させたところ、いずれの本発明品も発酵乳様の風味を有しコクがあり、風味が持続する(余韻がある)と評価した。
[実施例3]乳原料種類、酵素種類、および反応条件の検討
本発明の方法において、様々な乳原料を用いて、本発明の乳原料発酵品を製造した。具体的には、下記表3に示すように、実施例1で用いた脱脂粉乳(乳タンパク質含量約35%)に代えて、乳タンパク濃縮物(MPC−85、ラクトジャパン社製、乳タンパク質含量約85%)、またはトータルミルクプロテイン(TMP1180、フォンテラ社、乳タンパク質含量約92%以上100%以下)を用い、また、実施例1で用いたプロテアーゼM「アマノ」SDに代えて一部パパイン(エンド型)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の乳原料発酵品(本発明品9〜22)を得た。なお、工程1のタンパク質分解処理に供する乳原料としては、乳タンパク濃縮物については、水810gを40〜45℃に加温した後、乳タンパク濃縮物100gを添加し、温度を維持しつつ攪拌溶解させて、乳タンパク質濃度約9.3質量%の乳原料液を用いた。同様に、トータルミルクプロテインについては、乳タンパク質濃度約10.1〜11.0質量%の乳原料液を用いた。また、沈殿量について実施例1と同様に確認を行った。その結果を下記表3に示す。
Figure 2020188724
表3に示すように、乳原料が、脱脂粉乳より乳タンパク質を多く含む乳タンパク濃縮物やトータルミルクプロテインの場合であっても、実施例1の比較例1の沈殿量7.5mmより沈殿量が少なく、本発明の方法は、低pHにおける沈殿を顕著に抑制するものであることが確認された。
また、本発明品そのものの風味をよく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)15名に評価させたところ、本発明品9〜22はいずれも、発酵乳様のコクと乳脂感に富んだボリュームある風味であり、その風味も持続すると評価した。すなわち、本発明によって、乳原料によらず、低pHにおいて沈殿が抑制され良好な乳様風味を呈する乳原料発酵品を製造できることが確認された。
[実施例4]タンパク質分解酵素の種類の検討
(実施例4−1)タンパク質分解酵素の2種併用
40〜45℃に加温した水810gに、乳原料として脱脂粉乳(雪印社製)100g(タンパク質含量約35質量%)を添加し、温度を維持しつつ攪拌溶解させて、(乳タンパク質濃度約3.8質量%)。次いで85℃、15分で加熱殺菌を行った後、50℃程度まで冷却し、乳原料液を得た。工程1として、その乳原料液に、ラクターゼY−AO(ヤクルト薬品工業株式会社製)0.01gを水8.2gに溶解させたものを加えたのち、タンパク質分解酵素としてプロテアーゼM「アマノ」SD(エンド・エキソ型)6.8gおよびコクラーゼ(登録商標)P顆粒(エンド・エキソ型)3.4gの2種を水56.6gに溶かしたものを加え、タンパク質分解処理を50℃で3時間、300prmの攪拌状態で行い、乳タンパク質分解物を得た。
なお、得られた乳タンパク質分解物の中和滴定値を確認したところ、11.2であった。この中和滴定値は、この分解物1.0gを精秤し、イオン交換水20mlを添加後、アセトン:エタノール=1:1(v/v)の溶液を20ml添加し、ここにフェノールフタレイン液を数滴加え、0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール液でpH9.80を終点として滴定し、5.611×水酸化カリウム−エタノール液(0.1mol/L)の使用量(ml)×水酸化カリウム−エタノール液(0.1mol/L)のファクター/乳タンパク質分解物量の計算を行って得た。また、前記乳原料液と乳タンパク質分解物との吸光度(280nm)の差は、0.52(前記乳原料液が0.26、当該工程終了時(開始から3時間)が0.78)であった。この吸光度は、前記乳原料液または乳タンパク質分解物0.5gにイオン交換水20mlと10質量%のトリクロロ酢酸10mlを添加し、撹拌後30分静置し、孔径0.45μmのフィルターでろ過後、分光光度計を用い波長280nmにて測定して得た。
次いで、得られた乳タンパク質分解物を85℃で15分加熱殺菌後、43℃程度まで冷却した。
工程2として、冷却後の乳タンパク質分解物に、乳酸菌Streptococcus thermophilusおよびLactobacillus helveticusの混合物である乳酸菌スターター(DSM社製)0.2gを水15.0gに混合したものを添加し、5分の攪拌混合後、43℃で18時間、静置で発酵を行った。発酵開始時はpH6.18、発酵終了後はpH3.72であった。乳酸菌数は、発酵終了時点で3.5×10cfu/mlであった。
そして、pH調整剤として乳酸を加え、pHを3.5±0.2に調整した後、85℃で15分間加熱殺菌し、70℃程度まで冷却し、150メッシュで濾過した。以上のようにして、本発明品の乳原料発酵品(本発明品23)を得た。
また、比較品として、本発明品23を製造した方法において工程1と工程2を入れ替えた以外は同様にして乳原料発酵品(比較品4)を得た。
(沈殿量および風味の確認)
次いで、10ml試験管に、実施例1と同様にして調製した低pHの糖液を注ぎ入れ、そこに本発明品23または比較品4の乳原料発酵品を最終濃度が3.0質量%となるように添加した後、14日間常温放置した。そして、実施例1と同様にして沈殿量を確認した。その結果を図1に示す。
図1に示す通り、本発明品23の乳原料発酵品を添加した場合の沈殿量は0.7mmであり、比較品4の乳原料発酵品を添加した場合の沈殿量は3.5mmであった。また、比較品4の乳原料発酵品の場合は沈殿が一部固結しており、試験管を振っても固まったままの部分があったが、本発明品23の乳原料発酵品は試験管を振ると容易に分散した。
また、本発明品23の乳原料発酵品の風味について、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)15名に評価させたところ、本発明品は、発酵乳様のコクと乳脂感に富んだボリュームある風味であり、その余韻も持続すると評価した。
(実施例4−2)様々なタンパク質分解酵素の2種併用
脱脂粉乳(乳タンパク質濃度約35質量%)180gを40〜45℃に加温した水730gに攪拌溶解して乳原料(乳タンパク質濃度約6.9質量%)とし、タンパク質分解酵素として、プロテアーゼM「アマノ」SD(エンド・エキソ型)、プロチンNY−10(エンド型、天野エンザイム社製)、パパインW40(エンド型、天野エンザイム社製)、コクラーゼ(登録商標)P顆粒(エンド・エキソ型)を用意し、下記のように2種組合せた以外は実施例4−1と同様にして、本発明品24〜26の乳原料発酵品を製造した。
タンパク質分解酵素の組合せ
タイプA:プロテアーゼM「アマノ」SD(エンド・エキソ型)+プロチンNY−10(エンド型)
タイプB:プロテアーゼM「アマノ」SD(エンド・エキソ型)+パパインW40(エンド型)
タイプC:プロテアーゼM「アマノ」SD(エンド・エキソ型)+コクラーゼ(登録商標)P顆粒(エンド・エキソ型)
そして、実施例1と同様にして低pH糖液を調製し、実施例1と同様にして、本発明品24〜26の乳原料発酵品を低pH糖液に添加し、沈殿量と、乳原料発酵品を添加した低pH糖液の風味について評価した。その結果、沈殿量については、タイプA〜Cのいずれのタンパク質分解酵素の組み合わせにおいても沈殿量が同等であり、約0.8mmであった。また、タイプCのエンド・エキソ型の2種併用(本発明品26)について、pHを2.9に調整した3%糖液に添加し、120℃で1分間加熱したところ、この条件においても凝集粒子は確認できず、沈殿も発生していなかった。
また、本発明品24〜26の乳原料発酵品を、市販のグレープフルーツジュース(20℃におけるpH3.3)に5質量%の濃度となるように配合して、乳原料発酵品含有グレープフルーツジュースを得た。これらのジュースについて、本発明の乳原料発酵品を配合していない前記市販グレープフルーツジュース(対照品)と比べた風味について、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)15名に評価させた。具体的には、対照品と比べた風味について、0点:対照品との違いが感じられない、1点:発酵乳様の風味が若干付与されたと感じられる、2点:発酵乳様の風味が付与されたと感じられる、3点:発酵乳様の風味が強く付与されたと感じられる、のいずれかの点数を選択させ、かつ、対照品と比べた酸臭について、0点:対照品との違いが感じられない、1点:対照品の酸臭が若干軽減されたと感じられる、2点:対照品の酸臭が軽減されたと感じられる、3点:対照品の酸臭が大きく抑制されてまろやかになったと感じられる、のいずれかの点数を選択させた。その結果を下記表4に示す。
Figure 2020188724
表4に示すように、いずれの組合せタイプの場合も、対照品に乳風味が付与され、酸臭も抑制されてまろやかになっていたと評価された。中でも、タイプCのエンド・エキソ型の2種併用の場合が、乳風味、酸臭抑制のいずれについても最も優れていたと評価された。
以上に示したように、本発明の乳原料発酵品は、各種飲食品に配合した際、低pHの飲食品であっても沈殿が生じにくく沈殿が固結せず、外観や食感を損なうことがない。さらには、各種飲食品に良好な乳風味を付与でき、飲食品に酸臭があった場合にはその酸臭を抑制することが出来る。

Claims (8)

  1. 工程1:乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させる工程
    工程2:工程1で得られた乳タンパク質分解物に微生物を添加し発酵を行う工程
    を含む、乳原料発酵品の製造方法。
  2. 前記微生物が乳酸菌である、請求項1に記載の乳原料発酵品の製造方法。
  3. 前記工程1において、タンパク質分解酵素としてエンド型とエキソ型の混合物を1種または2種以上使用する、請求項1または2に記載の乳原料発酵品の製造方法。
  4. 前記工程1においてタンパク質分解酵素の作用時間が30分〜30時間である、および/または前記工程2において微生物発酵の時間が30分〜30時間である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳原料発酵品の製造方法。
  5. 前記乳タンパク質を含有する乳原料が、脱脂粉乳、トータルミルクプロテイン、および乳タンパク濃縮物から選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳原料発酵品の製造方法。
  6. 前記乳原料中の乳タンパク質の濃度が0.5〜25質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳原料発酵品の製造方法。
  7. 乳タンパク質を含有する乳原料にタンパク質分解酵素を作用させたのち、微生物発酵を行ってなる乳原料発酵品。
  8. 請求項1〜6に記載の方法によって製造された乳原料発酵品、または請求項7に記載の乳原料発酵品を有効成分として含有する、乳風味付与剤。
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