JPH10329159A - アクリル系樹脂成形体の製法 - Google Patents

アクリル系樹脂成形体の製法

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JPH10329159A
JPH10329159A JP14058097A JP14058097A JPH10329159A JP H10329159 A JPH10329159 A JP H10329159A JP 14058097 A JP14058097 A JP 14058097A JP 14058097 A JP14058097 A JP 14058097A JP H10329159 A JPH10329159 A JP H10329159A
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heating
temperature
mold
pressure
molding
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JP14058097A
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Shigeru Oka
茂 岡
Shinichi Goto
伸一 後藤
Ryuichi Tanaka
竜一 田中
Yuichi Kawada
雄一 川田
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 重合反応性アクリル系単量体を含む成形材料
を使用し、硬化収縮による反りや歪み、クラックの発生
等を生じることなく、また成形型の型汚れなども生じる
ことなく、優れた表面性状の成形体を短い成形サイクル
で生産性よく製造することのできる方法を確立するこ
と。 【解決手段】 重合反応性アクリル系単量体を含む成形
材料を、蒸気加熱機構を備えた成形型内に充填して加熱
・加圧成形するに当たり、上記成形型は、高温側加熱型
と低温側加熱型の2分割型によって構成し、該低温側加
熱型を加熱するための蒸気圧を絶対圧力で1.5kg/
cm2 以下、好ましくは1.0kg/cm 2 未満に制御
し、且つ高温側加熱型と低温側加熱型との温度差を15
℃以下、好ましくは10℃以下に抑えて加熱・加圧成形
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重合反応性アクリ
ル系単量体を含む成形材料、例えばメチルメタクリレー
ト等の単量体を重合性成分として含むバルクモールディ
ングコンパウンド(BMC)、シートモールディングコ
ンパウンド(SMC)、プレミックス材料などの成形材
料を使用し、これを成形型内に充填し加熱・加圧して成
形体を製造する際に、成形型の汚れを生じることなく、
表面性状に優れ且つクラック等の欠陥のない成形体を、
生産性よく製造することのできる方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】上記BMC,SMC等の如く、重合反応
性単量体を含む成形材料を用いて成形を行なう代表的な
方法として、上・下2分割された成形型内に成形材料を
充填し、加熱することにより重合性単量体の重合を進め
て硬化させながら加圧し成形を行なう方法が知られてお
り、この方法は、例えば無機質充填材や強化繊維などで
強化された複合樹脂製の浴槽、キッチンカウンター、洗
面台等の製造に広く活用されている。
【0003】この場合、2分割された成形型における成
形体表面の成形面側(通常は上型)の加熱温度は高めに
設定する一方、成形体裏面側の成形面側(通常は下型)
の加熱温度は低めに設定し、成形体の表面側を相対的に
速く硬化させることによって、硬化収縮に伴う変形や歪
みを裏面側で吸収し、成形体表面側の表面性状を高める
方法が採用される。
【0004】また例えば特開平8−323763号公報
には、成形型の加熱に蒸気を使用すれば、温度制御が容
易になると共に均一加熱も促進されることを明らかにし
ている。更にこの公報では、加熱用の蒸気をエゼクター
によって吸引すれば、成形型内にドレン水が溜るのも抑
えられ、温度制御が一層容易になると共に均一加熱が促
進され、製品の品質が高められることも明らかにしてい
る。
【0005】ところで、上記の様な複合樹脂成形品の製
造に用いられる原料樹脂としては、重合性単量体として
スチレン系モノマーを含む不飽和ポリエステル系樹脂が
主に用いられており、この種の不飽和ポリエステル系樹
脂は重合硬化時の収縮率が比較的小さく、またスチレン
モノマーの沸点も145℃と高温であるため、加熱・加
圧成形時の硬化収縮に伴う歪みやクラックあるいはモノ
マー成分の揮発による表面性状の悪化といった問題はそ
れ程問題にならなかった。
【0006】一方、上記の様な重合性成分としてスチレ
ンを含む不飽和ポリエステル系樹脂を用いた成形体は、
耐水性や耐汚染性が悪く、例えば浴槽やキッチンカウン
ター、洗面台の如き水と接触する部位に用いる製品とし
ては問題があるところから、この様な用途に適用する際
は、耐水性や耐汚染性に優れたアクリル系樹脂主体の樹
脂を表皮層とし、上記の様な不飽和ポリエステル系樹脂
主体の成形材料を裏打ち材として表皮層の裏面強化に利
用する方法が採用されている。また、アクリル系樹脂の
優れた耐水性や耐汚染性などを活かし、BMCやSMC
等の一成分として含有させる重合性単量体成分としてア
クリル系モノマーを用い、表皮層構成素材としてもその
まま実用化できる様な成形材料も開発されている。
【0007】ところが、アクリル系の重合性単量体を含
む成形材料を用いて前述の様な加熱・加圧成形を行なっ
た場合、成形時の硬化収縮がスチレンを含む前記不飽和
ポリエステル系樹脂に比べて格段に大きいため、硬化収
縮による成形体の反りや歪み、更にはそれらに伴うクラ
ック等が発生し易く、欠陥のない優れた性状の成形体は
得られ難い。
【0008】しかもアクリル系単量体の沸点はスチレン
系単量体に比べて概して低く、中でも最も広く用いられ
るメチルメタクリレートの沸点は約100℃と低いた
め、成形温度が高くなり過ぎると成形材料中の該単量体
の揮発が起こり、得られる成形体の表面性状を劣化させ
たり型汚れを生じるという問題も生じてくる。従って、
アクリル系の重合性単量体を含む成形材料を用いて加熱
・加圧成形を行なうには、これらの点も十分に加味して
上記の様な問題を生じることのない様な成形条件を確率
する必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、重合
反応性アクリル系単量体を含む成形材料を用いた場合で
も、硬化収縮による反りや歪み、クラックの発生等を生
じることなく、また成形型の型汚れなども生じることな
く、優れた表面性状の成形体を短い成形サイクルで生産
性よく製造することのできる方法を提供しようとするも
のである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明にかかるアクリル系樹脂成形体の製法と
は、重合反応性アクリル系単量体を含む成形材料を、蒸
気加熱機構を備えた成形型内に充填して加熱・加圧成形
するに当たり、上記成形型は、高温側加熱型と低温側加
熱型の2分割型によって構成し、該低温側加熱型を加熱
するための蒸気圧を絶対圧力で1.5kg/cm2
下、より好ましくは1.0kg/cm2 未満に制御し、
且つ高温側加熱型と低温側加熱型との温度差を15℃以
下、より好ましくは10℃以下に抑えて加熱・加圧成形
するところに要旨が存在する。
【0011】このとき、上記成形型の加熱に用いる加熱
機構にスチームトラップ部を設け、該スチームトラップ
部以降を吸引しつつ、前記高温側加熱型と低温側加熱型
の各加熱温度を調節する様にすれば、各加熱型の蒸気加
熱ライン内での蒸気の凝縮をより確実に阻止することが
でき、各加熱型の加熱効率を一層高めると共により均一
な加熱が可能になるので好ましい。
【0012】また上記と同様に、重合反応性アクリル系
単量体を含む成形材料を、蒸気加熱機構を備えた成形型
内に充填して加熱・加圧成形する際に、上記成形型は、
高温側加熱型と低温側加熱型の2分割型によって構成
し、該低温側加熱型の加熱温度を、成形材料中に含まれ
る最も沸点の低い重合反応性アクリル系単量体の沸点未
満の温度に制御し、あるいは高温側加熱型の加熱温度
を、成形硬化物のガラス転移点未満の温度に制御し、且
つ高温側加熱型と低温側加熱型との温度差を15℃以
下、より好ましくは10℃以下に抑えて加熱・加圧成形
を行なえば、得られる成形体の光沢等の表面性状を一層
良好なものとすることができるので好ましい。
【0013】また本発明では、上記の様に重合反応性ア
クリル系単量体を重合性成分として含む成形材料の材料
特性、即ち重合性単量体成分の揮発が起こり易く且つ硬
化収縮が大きいという特性、を考慮した上で上記要件を
規定しているが、本発明の上記特徴は、アクリル系単量
体の中でも最も汎用性の高いメチルメタクリレートを重
合性単量体成分として含む成形材料を用いて加熱・加圧
成形を行なう際に、その特徴がとりわけ効果的に発揮さ
れる。
【0014】
【発明の実施の形態】上記の様に本発明では、加熱・加
圧成形時における硬化収縮が大きく且つ重合性単量体成
分の揮発温度の低いアクリル系単量体を含む成形材料を
使用し、これを成形型内へ充填して加熱・加圧成形する
際に、上記成形型は、高温側加熱型と低温側加熱型の2
分割型によって構成すると共に、夫々の型は、加熱効率
が高く且つ均一加熱に有効なスチーム加熱機構によって
加熱する構成とし、それら加熱型には加熱温度に差を与
えて、一方側を高温側加熱型、他方側を低温側加熱型と
する。
【0015】この様に2分割型に加熱温度の差を与える
のは、成形体の製品裏面側となる成形面の硬化時期を製
品表面側よりも相対的に遅らせ(即ち、製品表面側とな
る成形面の硬化時期を製品裏面側よりも相対的に早
め)、硬化収縮の大きい素材を用いた場合に見られる製
品表面側の外観不良を抑える上で有効となる。即ち、成
形型における製品表面側の加熱温度を相対的に高める
と、加熱・加圧成形時には該表面側が裏面側よりも早く
硬化し、その後で裏面側の硬化が進むことになる。そし
て表面側が硬化する時には裏面側はまだ硬化しておら
ず、表面側の硬化時の硬化収縮による変形が未硬化状態
の裏面側樹脂材料の塑性変形によって吸収されるため、
該表面側は、成形型(高温側加熱型)の成形面に密着し
た状態で硬化することになり、従って製品表面は成形型
の成形面(鏡面肌や梨地肌などの表面性状を含めて)に
応じた性状に精度良く整形される。
【0016】ただし、上記温度差が過度に大きくなると
成形体に反りが起こり易くなるので、該温度差は15℃
以下、より好ましくは10℃以下に抑えなければならな
い。
【0017】一方、製品の裏面側を規制する成形型(低
温側加熱型)の加熱温度は相対的に低温に制御されるの
で、該成形面では硬化収縮による影響が顕著に現われて
くるが、この成形面は製品の裏面側であって表面性状な
どは特に重要でないので、多少の歪み等は許容される。
この様なところから本発明では、製品としての品質を支
配する表面側の表面性状を高めるため、成形型の一方は
製品の表面側を規制する高温側加熱型、他方は製品の裏
面側を規制する低温側加熱型よりなる2分割型として構
成する。
【0018】尚この2分割型は、通常は上・下2分割と
し、上型を高温側加熱型、下型を低温加熱型として構成
するのが一般的であるが、場合によっては左右2分割構
造とし、一方側を高温側加熱型、他方側を低温加熱型と
することも可能である。
【0019】これら成形型の加熱手段としては、従来よ
り電熱加熱、温水加熱、オイル加熱蒸気加熱などが知ら
れており、電熱加熱法は、成形型内に抵抗発熱体を埋め
込み通電による抵抗熱を利用して加熱を行なう方法であ
るが、加熱温度の微妙な制御が困難であり、本発明で意
図する様な温度制御を正確に遂行することが難しい。ま
た温水加熱法を採用する場合、常圧状態では100℃ま
での加熱しか行なえず、またオイル加熱では、オイルの
種類によっては100℃以上の加熱が可能ではあるが、
いずれの方法でも、熱媒体としての熱容量に限界がある
他、その流速を過度に高めることができないので、成形
型の速やかな均一加熱という点で不十分である。この様
なところから本発明では、熱媒体としての熱容量(潜熱
あるいは凝縮熱)が大きくて加熱効率が高く、しかも流
速を高めることによって急速加熱および均一加熱の容易
な蒸気(スチーム)加熱法を採用する。
【0020】尚このスチーム加熱法を採用する際に、成
形型内でスチームの凝縮が起こってドレンが生じると、
その部分で伝熱効率が急変することになり、成形型の均
一加熱が損なわれる。従ってこうしたドレンの滞留を阻
止するには、成形型を加熱する為のスチーム加熱機構内
にスチームトラップ部を設け、該トラップ部以降を吸引
するのが良く、この様な構成を付加すれば、成形型内で
スチームが凝縮しドレンが発生しても速やかに排出さ
れ、成形型内でドレンの滞留が起こらなくなり、高温側
加熱型および低温側加熱型のスチーム加熱による急速加
熱と均一加熱を更に増進すると共に、安定して高い加熱
効率を確保することが可能となる。
【0021】図3,4は、加熱・加圧成形法によって製
造した成形体を例示する見取り図であり、図3はキッチ
ンカウンター、図4はバスタブを示している。この様に
比較的薄肉で且つ広面積の成形体を上記の様な加熱・加
圧成形法によって成形する場合、成形体が広面積である
が故に成形型の加熱領域も広くなり、該成形型を全体に
わたって均一に加熱することは難しい。特に成形材料と
してBMC材等を使用する場合は、図3,4の符号Aで
示す如く成形体の略中央位置に相当する成形型内の中央
部に成形材料を充填し、前述の如く高温側加熱型と低温
側加熱型を加熱しながら加圧することによって成形が行
なわれるが、成形型の上記成形材料が装入される部位
は、該成形材料により熱が奪われて降温する。従って加
熱・加圧成形を行なう際には、他の部位は適正な温度に
維持しつつ、冷やされた材料投入部位は、設定された温
度まで速やかに昇温させて温度回復させなければならな
い。
【0022】ところが、従来の電熱加熱や温水加熱、オ
イル加熱では、加熱効率が十分でないため、他の部位に
比べて該成形材料投入部位の温度が低くなり(適正な温
度に到達するまでにかなりの時間がかかり)、この部分
が硬化不良となったり型汚れを起こす原因になり、ある
いは加圧成形に伴う成形材料の流れ方向に温度勾配がで
き、硬化歪みを起こしたり光沢ムラやスカミング(筋状
に現われる白化やカスレ)を起こし、更には成形品にク
ラックが生じる原因になる。中でも大きな製品欠陥とな
るクラックは、前述の如く高温側加熱型と低温側加熱型
の温度差によって生じる硬化速度の差とも相まって、硬
化収縮の集中が起こり易い成形品の折曲がり部で最も起
こり易い。また、成形材料の到達が最も遅れる成形品の
先端位置では成形圧力が最もかかり難くなり、その部分
で成形型への密着性が低下して光沢不良やスカミングを
起こし易くなる。
【0023】図3,4には、それら欠陥の生じ易い位置
を代表的に示しており、符号Bは、成形品裏面側にクラ
ックが発生し易い部位、符号Cは、光沢不良やスカミン
グを生じ易い部位を示している。これらの欠陥は、例示
したバスタブやキッチンカウンターの如く広幅の成形品
である程生じ易く、また、アクリル系単量体を含む成形
材料の如く単量体の揮発温度が低く且つ硬化収縮の大き
いものほど顕著に現われてくる。
【0024】この様なところから本発明では、製品欠陥
を生じる最大の欠点と思われる加熱温度の不均一と温度
回復の遅延を抑えるため、潜熱(あるいは凝縮熱)が大
きくて熱容量が高く高速の均一加熱を行なうことのでき
る蒸気加熱法を採用し、且つ、製品の表面側となる部位
は早期に硬化反応を進めることによって、成形面の光沢
を高めると共に硬化不足による欠陥の発生を抑えること
としている。更に、好ましくは上記加熱ラインにスチー
ムトラップ部を設け、それ以降を吸引することによって
各加熱型内でのドレンの滞留を防止し、加熱効率の一層
の向上と均一加熱の増進を図る。
【0025】しかしながら、成形材料としてアクリル系
単量体を含む素材を用いて、良品質の成形体、とりわけ
上記バスタブやキッチンカウンターの如く広幅の成形体
を確実に得ようとすると、上記の技術をそのまま適用し
たのでは尚不十分であり、蒸気加熱条件を含めて、高温
側加熱型と低温側加熱型の加熱条件などを、以下に詳述
する如く厳密に制御することが必要となる。
【0026】まず低温側加熱型を加熱するための蒸気圧
力は、絶対圧力で1.5kg/cm 2 以下、より好まし
くは1.0kg/cm2 未満に制御し、且つ高温側加熱
型と低温側加熱型との温度差を15℃以下、より好まし
くは10℃以下に抑えることが極めて重要となる。
【0027】しかして、本発明者らがアクリル系単量体
を含有する成形材料を素材として用いて加熱・加圧成形
を行なう際に、高温側加熱型や低温側加熱型の温度が成
形体の品質に及ぼす影響を調べたところ、次の様な事実
が確認された。
【0028】まず低温側加熱型による成形面は、前述の
如く高温側加熱型側の成形面が硬化した後で硬化するの
で、この硬化過程では、硬化収縮による変形歪みが該硬
化面側に集中することになり、特に該低温側加熱型に接
した成形材料のうち最後に硬化反応が完了する部分や成
形体の折れ曲がり部に集中する。そしてこの部分で大き
な内部歪みが生じ、成形品に反りが生じたり裏面側にク
ラックが生じて製品欠陥の原因になり、あるいは最後に
硬化する部位で重合性単量体の飛散が起こり成形型内壁
に付着して型汚れを起こし、繰返し連続成形性が損なわ
れるといった問題が生じてくる。
【0029】ところがアクリル系単量体を含む成形材料
を使用して加熱・加圧成形を行なう際に、低温側加熱型
を加熱する為の蒸気圧を低めに設定して加熱温度を低め
に抑えると共に、高温側加熱型と低温側加熱型との温度
差を小さめに設定してやれば、上記の様な製品の反りや
裏面側に発生するクラックが可及的に抑えられるばかり
でなく、型汚れの問題も抑えられること、具体的には、
低温側加熱型を加熱するための蒸気圧を1.5kg/c
2 以下、より好ましくは1.0kg/cm2未満に抑
え、且つ高温側加熱型と低温側加熱型との温度差を15
℃以下、より好ましくは10℃以下に抑えてやれば、上
記反りやクラック、型汚れが最終製品として実害のない
程度に抑えられると共に、製品表面側に光沢不良やスカ
ミング等の性状欠陥も生じ難くなることが確認された。
【0030】こうした結果が得られた理由は必ずしも明
確にされた訳ではないが、次の様に考えている。即ち、
まず蒸気圧と温度の間には図2に示す様な関係があり、
絶対圧力が1.5kg/cm2 の蒸気の温度は約110
℃、1.0kg/cm2 の蒸気の温度は約100℃とな
る。従って、蒸気圧を1.5kg/cm2 以下に抑える
ということは、蒸気温度を110℃以下に抑えることを
意味し、蒸気圧を1.0kg/cm2 未満に抑えるとい
うことは、蒸気温度を100℃未満に抑えることを意味
するが、実操業においては温度で制御するよりも蒸気圧
力で制御する方が容易で且つ制御精度を高めることがで
き、加熱温度をより精密にコントロールすることができ
る。
【0031】そして高温側加熱型に接して成形材料が早
期に硬化する製品表面側では、成形型の内面と成形体の
間に空隙ができ難く、従って重合性単量体の揮発に伴う
問題は起こり難いが、低温加熱型側の成形材料は前述の
如く遅れて硬化するため、成形型内面との間で空隙が生
じ易い。そして、低温加熱型の加熱温度が高くなり過ぎ
ると、該隙間で重合性単量体の揮発が起こり、結果的に
当該部分における成形材料中の単量体濃度が低下して硬
化不良を生じたり、単量体成分の飛散によって型汚れを
起こし易くなる。従って、こうした単量体の揮発を防止
するには、低温加熱型を加熱するための蒸気圧を1.5
kg/cm2 以下に抑え、加熱温度を110℃以下に抑
えることが有効になるものと考えられる。
【0032】特に、アクリル系単量体として最も汎用性
の高いメチルメタクリレートの沸点は約100℃である
から、低温加熱型の加熱蒸気圧を1.0kg/cm2
満に抑えて加熱温度を100℃未満に制御してやれば、
該低温側加熱型の内面側で最後に硬化する成形材料から
の単量体の揮発を阻止することができ、当該部分の硬化
不良とそれに伴うクラックの発生や型汚れが可及的に抑
えられる。
【0033】この様に、低温側加熱型を加熱する為の蒸
気圧を抑える理由は、重合性反応性アクリル系単量体の
揮発に伴う障害を阻止するためであり、上記の様に加熱
のための蒸気圧の値そのもので規定することもできる
が、より確実には、成形材料中に含まれる最も沸点の低
い重合性単量体成分の沸点を基準とし、その沸点未満の
温度となる様に蒸気温度を制御すれば、単量体の種類の
如何を問わず、先に述べた問題をより確実に阻止するこ
とが可能となる。
【0034】尚、低温側加熱型を加熱する為の蒸気圧の
下限は特に制限されないが、この蒸気圧があまりに低く
なると加熱温度が低くなり過ぎて硬化に長時間を要し、
生産性に悪影響が現われてくるので、好ましくは蒸気圧
を0.25kg/cm2 程度以上(温度で65℃程度以
上)、より好ましくは0.5kg/cm2 程度以上(温
度で80℃程度以上に設定することが望ましい。
【0035】また、高温側加熱型と低温側加熱型の間で
温度差を設ける理由は、先に述べた様に高温側加熱型側
で成形材料の硬化を早めに進めることによって、製品表
面側の表面性状を高めるためであるが、本発明者らが検
討を重ねたところによれば、この温度差が大きくなり過
ぎると、製品裏面側、即ち低温側加熱型側に生じる歪み
が大きくなってクラックを生じたり、製品に反りが生じ
易くなることが確認された。そして該温度差を多くとも
15℃以下、より好ましくは10℃以下に抑えてやれ
ば、裏面側に生じることのあるクラックを可及的に減少
できると共に、製品に反りが生じることも可及的に防止
されることが確認された。
【0036】該温度差の下限は特に制限されず、僅かで
も温度差を有しておればよいが、高温側加熱型と低温側
加熱型の温度が近接し過ぎると、両加熱型に温度差を設
けることによる作用(即ち、高温側加熱型側で成形材料
を密着状態で早期に硬化を進め、製品表面側の表面性状
を高める作用)の確実性が低下する恐れがあるので、好
ましくは3℃程度以上、より好ましくは5℃程度以上の
温度差を設けることが望まれる。
【0037】また、該低温側加熱型の温度が成形硬化物
のガラス転移点以上になると、該加熱型内壁面への硬化
物の付着が起こり易くなり、型汚れを生じ易くなるばか
りでなく成形体の製品形状にも悪影響が現われてくるの
で、該低温加熱型の加熱温度は、使用する成形材料に応
じてその硬化物のガラス転移点未満に抑えることが望ま
しい。
【0038】なお高温側加熱型の加熱温度の好ましい下
限も、前記低温側加熱型の場合と同様に硬化速度を目安
にして決めれば良く、実用規模で満足のいく生産性を確
保するには75℃程度以上(蒸気圧で0.4kg/cm
2 程度以上)、より好ましくは90℃程度以上(蒸気圧
で0.7kg/cm2 程度以上)に設定するのが良い。
【0039】図1は、本発明で採用される加熱・加圧成
形法を例示する概略説明図であり、図中Xは高温側加熱
型、Yは低温側加熱型、1はボイラー、P1 〜P5 は圧
力計、2a,2bは圧力調整弁、3a,3bはスチーム
トラップ付き圧力調整弁、4a,4b,4cはバイパス
弁、5は真空ポンプ(またはエゼクター)をそれぞれ示
している。
【0040】ボイラー1で発生した蒸気は、その下流側
で分岐され、圧力調整弁2aで圧力調整された後、圧力
計P1 を経て高温側加熱型Xへ送り込まれ、一方圧力調
整弁2bで同様に圧力調整された蒸気は、圧力計P2
経て低温側加熱型Yへ送り込まれる。また、各加熱型
X,Yの下流側には夫々スチームトラップ付きの圧力調
整弁3a,3bが設けられており、上記圧力調整弁2
a,2bと該圧力調整弁3a,3bの絞り量を調整する
ことによって、各加熱型X,Yの加熱温度を適正に制御
できる様に構成されている。即ち水蒸気の温度は、前記
図2のグラフに示す如く蒸気圧によってほぼ一義的に決
まってくるので、上記圧力調整弁2a,3aおよび2
b,3bの絞り量を調節し、加熱型A,B内を通過する
蒸気圧をコントロールすることによって、各加熱型X,
Yの加熱温度を任意に制御することができる。
【0041】このとき、図示する如くスチームトラップ
付き圧力調整弁3a,3bの下流側に真空ポンプ(また
はエゼクター)5を設けておき、蒸気を強制的に吸引す
る様にしておけば、各加熱型X,Yの蒸気加熱ラインに
は所定の圧力・温度に制御された蒸気が連続的に送り込
まれつつ逐次吸引排出されていくので、各加熱型X,Y
内でドレンの滞留が起こらず、加熱温度を各加熱型X,
Yの全体にわたって均一且つ速やかに加熱することが可
能となる。特に、図示する如く各加熱型X,Yよりも下
流側に配置する圧力調整弁3a,3bにスチームトラッ
プを設けておけば、該圧力調整弁3a,3bの部分で適
量の蒸気が常にトラップされ、この部分で所定の蒸気圧
が確保されるので、各加熱型X,Yの蒸気加熱ライン内
でのドレンの滞留が一層確実に阻止され、蒸気圧、即ち
加熱温度の制御を一層正確に行なうことができる。
【0042】尚、各加熱型X,Yの蒸気加熱ラインを通
過する蒸気の流量が多い場合は、若干量のドレンの滞留
が起こりかけたとしてもそれらば蒸気流に乗って直ちに
下流側へ送り出されて行くので、図示する様なスチーム
トラップ付きの圧力調整弁3a,3bを設ける必要はな
く、バイパス弁4a,4bを設けたバイパス流路を通し
て吸引排出すればよく、また場合によっては吸引ポンプ
5を省略することも可能である。
【0043】いずれにしてもこの様な蒸気加熱法を採用
すれば、各加熱型X,Yを大きな潜熱(または凝縮熱)
をもった熱容量の大きい蒸気により任意の温度に加熱で
き、且つ加熱面積の大きい前記バスタブやカウンター成
形用の成形型を加熱する場合でも、成形型全体を均一に
加熱することができ、また成形材料充填部で局部的に温
度降下が起こったとしても、加熱流路内を高速で流れる
熱容量の大きい蒸気によって速やかに温度回復が行なわ
れるので、低温側加熱型の内壁側、すなわち製品裏面側
で生じる硬化収縮による歪みもほぼ全面に分散され、局
部的な歪みの集中によるクラックの発生を可及的に防止
できると共に、単量体の揮発と硬化不足に由来する型汚
れも防止できる。また、製品表面側の性状を支配する高
温側加熱型では、成形材料が型内壁に確実に密着した状
態で硬化が進行するので、該型内壁面の加工性状(鏡面
加工あるいは梨地加工など)に応じた性状に確実に整形
される。
【0044】本発明の上記製法を実施する際に用いられ
る成形材料は、前述の如く重合反応性単量体成分として
アクリル系単量体を含むものであれば特に制限されない
が、好ましいものとしては、アクリル系単量体を主成分
とする重合性モノマーを重合することによって得られる
アクリル系重合体を、アクリル系単量体に溶解したシラ
ップを加熱重合性成分として含むものが挙げられる。
【0045】上記アクリル系重合体の製造に用いられる
重合性モノマーとしては、アクリル酸エステルを主体と
し、必要により他の重合性モノマーが用いられる。アク
リル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレー
ト、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)ア
クリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル
ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アク
リレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリ
シジル(メタ)アクリレート等が例示されるが、特に限
定されるものではなく、目的とする成形体の要求特性に
応じて適宜選択して使用することができ、これらは単独
で使用できる他、必要により2種以上を併用することが
できる。これらアクリル酸エステルの中でも特に好まし
いのは、メチルメタクリレートおよびメチルメタクリレ
ートを主成分として含むアクリル酸エステルであり、メ
チルメタクリレートを主成分とすることにより、耐候
性、透明性、表面光沢など各種物性や外観、安全性に優
れた成形体を得ることができる。
【0046】また上記アクリル酸エステルと共に併用す
ることのできる他の重合性モノマーとしては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチ
レン、酢酸ビニル、アリルアルコール、エチレングリコ
ールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノア
リルエーテルなど、あるいは分子中に重合性二重結合と
カルボキシル基を有する化合物、例えば、(メタ)アク
リル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸、マレ
イン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不
飽和ジカルボン酸、あるいはそれらのモノもしくはジエ
ステル等が例示される。これら他の重合性モノマーの種
類も特に限定されるものではなく、またこれらも必要に
より2種以上を併用することが可能であるが、本発明に
かかる前記製法上の特性をより効果的に発揮せる上で
は、上記アクリル酸エステルに対する使用比率を50重
量%程度以下に抑えることが望ましい。
【0047】また、上記アクリル系重合体と共に用いら
れる重合反応性アクリル系単量体としては、上記アクリ
ル系重合体の製造に用いるものとして例示したアクリル
系単量体が再び好ましいものとして挙げられる。
【0048】即ち本発明では、前述の如く、特に重合反
応性アクリル系単量体を含む成形材料を加熱・加圧重合
させる際の硬化収縮に伴う問題に対処する技術として位
置付けられるものであり、従って本発明で用いる成形材
料中には、重合反応性成分としてアクリル系単量体を含
むことが必須となる。該アクリル系単量体として特に好
ましいのは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブ
チル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シ
クロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メ
タ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを主
成分とするものであり、これらは単独で使用できる他、
必要により2種以上を併用することができるが、これら
の中でも特に好ましいのは、メチルメタクリレートおよ
びメチルメタクリレートを主成分として含む(メタ)ア
クリル酸エステルであり、メチルメタクリレートを主成
分とすることにより、耐候性、透明性、表面光沢など各
種物性や外観、安全性に優れた成形体を得ることができ
る。
【0049】またこれらアクリル系単量体と共に、必要
により他の重合性単量体、例えばスチレン、α−メチル
スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、酢酸ビニ
ル、アクリルアミド、アクリロニトリル、アリルアルコ
ール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピ
レングリコールモノアリルエーテルなど、あるいは分子
中に重合性二重結合とカルボキシル基を有する化合物、
例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和
モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、
シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸、あるいはそれ
らのモノもしくはジエステル等と併用することができ
る。
【0050】これら他の重合性単量体の種類も特に限定
されるものではなく、またこれらも必要により2種以上
を併用することが可能であるが、本発明の前記製法上の
特性をより効果的に発揮せる上では、上記アクリル系重
合体を得る場合と同様、上記アクリル酸エステルに対す
る使用比率を50重量%程度以下に抑えることが望まし
い。
【0051】更に得られる成形体の要求特性によって
は、架橋反応性単量体、例えばエチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレー
ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
等の多官能(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、
ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリア
リルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなど
を、単独もしくは2種以上を適宜組合せて少量併用する
ことも可能である。
【0052】本発明で用いられる成形材料は、上記重合
反応性アクリル系単量体を必須的に含み、好ましくはこ
れに前述した様なアクリル系重合体を溶解したアクリル
シラップを含むものであり、通常はこれに重合開始剤と
して、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサ
イド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチル
パーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイ
ド、シクロヘキサノンパーオキサイド等の過酸化物や、
アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物などを加
え、更には、必要により増粘剤や充填材、補強材などを
配合し、得られる成形体の機械強度や耐熱性、耐溶剤性
などを高めることができる。
【0053】増粘剤としては、例えば酸化マグネシウ
ム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物、水酸
化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金
属水酸化物等が、また充填材としては、例えば水酸化ア
ルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミ
ナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、シリカ、川
砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水石、アスベスト粉、
ガラス粉、ガラス球、ポリマービーズ等の無機質もしく
は有機質充填材等が例示される。また補強材としては、
例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊
維等の無機質繊維、アラミドやポリエステル、ポリアミ
ド等の合成繊維や再生繊維、天然繊維を含めた有機繊維
を挙げることができ、これらは単独で使用してもよく、
或は2種以上を組合せて使用することも勿論可能であ
る。繊維形態も、例えばロービング、チョップドストラ
ンド、マット、クロス(織物、編物)等が制限なく使用
できる。
【0054】また、成形体に高度の寸法精度が求められ
る場合は、低収縮化剤としてポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコール、セルロースブチレート、アセテー
ト、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラク
タム、飽和ポリエステル、あるいはこれらの共重合体等
の熱可塑性ポリマーを適量配合することも有効である。
更に、成形型からの型離れをよくするため、ステアリン
酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ス
テアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステア
リン酸アミド、アルキルホスフェート、シリコンオイル
等の離型剤を配合することもでき、また着色材として無
機顔料や有機顔料等を添加することも可能である。
【0055】上記の様な成形材料を用い、前記本発明の
方法を採用することによって製造される成形品の種類に
も格別の制限はなく、ベンチ、広告板、テーブル、タン
ク、採光板の様な各種屋外使用物品、自動車等の車輛や
船舶などの内装材、構造物の屋根材や壁材などの外装材
などとして有効に活用できる。特に本発明で成形材料と
して使用するアクリル系樹脂は、耐水性や耐候性に優れ
ており、またそれ自身は実質的に無色であり、充填材や
着色材等によって任意の色の色・柄に着色できる他、強
化繊維等との複合によって機械強度も著しく高めること
ができる。しかも、本発明で規定される加熱・加圧成形
条件を採用すれば、重合性単量体の沸点が概して低く且
つ硬化収縮の大きいアクリル系成形材料を使用し、広面
積の成形体を製造する場合でも、クラックや光沢不良、
スカミング等の製品欠陥を生じることもないので、例え
ばバスタブやキッチンカウンター、洗面台等の成形品の
製造に極めて有効に活用できる。
【0056】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説
明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を
受けるものではない。なお、下記において「部」および
「%」とあるのは、特記しない限り「重量部」および
「重量%」を意味する。
【0057】実施例 表1に示す成分組成と物性を有するアクリル系成形材料
(実施例材料)またはポリエステル系成形材料(比較材
料)を使用し、図1に示した様なスチームトラップ付き
の蒸気加熱機構を備え、図5に示す様な蒸気加熱ライン
Sを有するキッチンカウンター成形型、またはバスタブ
形成型を用いて、高温側加熱型と低温側加熱型の蒸気加
熱条件を種々変更して加熱・加圧成形を行ない、得られ
た成形体の反りやクラック発生の有無および表面性状を
調べた。なお成形材料は、成形型の略中央部(図5のA
の位置)に充填した。結果を表2〜6に示す。
【0058】
【表1】
【0059】表1において、アクリルシラップとして
は、アクリル系重合体(平均分子量:約70,000)
55%をメチルメタクリレート(重合性単量体)45%
に溶解したものを使用した。また水酸化アルミニウムと
しては、昭和電工社製商品名「H−320」、硬化剤A
としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)
3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、硬化剤Bとし
ては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエー
ト、ガラス繊維としては、長さ6mmのチョップドスト
ランドをそれぞれ用いた。また、比較材料として用いた
ポリエステル系樹脂は、ビス系ポリエステル樹脂:85
部とポリスチレンビーズ:15部の混合物である。
【0060】各成形材料をニーダーで十分に混練した
後、40℃で20時間熟成してから加熱・加圧成形に用
いた。また、各成形材料の物性測定法は下記の通りであ
る。熟成粘度(at40℃) :ガラス繊維の配合のみを省略
して調製したコンパウンドを、ヘリパス粘度計 T型F
スピンドルを用いて測定した。ゲルタイム(at120℃) :オリエンテック社製の
「キュラストメータ−V型」を使用し、試料を加熱して
トルクが立ち上がるまでの時間を測定した。ガラス転移点 :JIS K 7122に従って測定し
た。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】表2〜4は、幅1400×奥行き650m
m×厚さ9mmのキッチンカウンター(図3に示した様
な形状のもの)の成形例であり、成形圧力は350トン
(約40kg/cm2 )、成形材料のチャージ量は18
kg、加熱保持時間は10分とした。
【0067】また表5,6は、幅1400mm×奥行き
750mm×深さ550mm×厚さ9mmのバスタブ
(図4に示した様な形状のもの)の成形例であり、成形
圧力は800トン(約65kg/cm2 )、成形材料の
チャージ量は43.5kg、加熱保持時間は15分とし
た。
【0068】表1〜6より、次の様に考察することがで
きる。即ち、従来のポリエステル系樹脂を成形材料とし
て用いた比較例(比較No.4,5,9,13)の場
合、成形材料の硬化収縮が比較的小さく、且つ成形材料
としての揮発温度も高いので、高温加熱型と低温加熱型
の温度やそれらの温度差には殆んど影響を受けることな
く、欠陥のない良好な成形体を得ることができる。
【0069】ところが、加熱・加圧成形時における硬化
収縮率が高く且つ揮発温度の低い単量体成分を含むアク
リル系の成形材料を用いた場合、得られる成形体の品質
は、高温加熱型と低温加熱型の加熱蒸気圧やそれらの温
度差によって著しく変わり、それらの加熱条件が本発明
の規定範囲を満たす実施例では、型汚れを生じることな
く、割れやクラック、表面汚れ、反り等のない優れた品
質の成形体を得ることができるのに対し、本発明で定め
る前記条件のいずれかを欠く比較例では、成形型の型汚
れを生じたり、成形品に割れやクラック、表面汚れ、反
り等が生じることが分かる。
【0070】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、加
熱・加圧成形条件を規定することによって、単量体成分
の沸点が低く且つ硬化収縮の大きいアクリル系成形材料
を用いた場合でも、クラックや光沢不良、スカミング等
の製品欠陥を生じることなく、安定して高品質の成形体
を優れた生産性の下で製造することができ、アクリル系
成形体の有している優れた耐水性、耐汚染性、耐候性等
の特徴を様々な製品に有効に活かすことができる。特に
本発明の方法を採用すれば、比較的薄肉で且つ広面積の
成形体の製造に適用した場合でも、硬化収縮や単量体の
揮発に伴う上記の様な問題を可及的に回避することがで
きるので、これまで実用規模では殆んど提供されたこと
のないアクリル系樹脂製のバスタブ、カウンター、洗面
台などの製造も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で好ましく採用される蒸気加熱機構を例
示する概略フロー図である。
【図2】加熱蒸気の圧力と温度の関係を示すグラフであ
る。
【図3】本発明法が好ましく適用されるキッチンカウン
ターにおける製品欠陥を起こし易い部位を示す説明図で
ある。
【図4】本発明法が好ましく適用されるバスタブにおけ
る製品欠陥を起こし易い部位を示す説明図である。
【図5】実施例で用いた成形型の形状を示す断面説明図
である。
【符号の説明】
X 高温側加熱型 Y 低温側加熱型 1 ボイラー 2a,2b 圧力調整弁 3a,3b スチームトラップ付き圧力調整弁 5 真空ポンプ(またはエゼクター)
フロントページの続き (72)発明者 川田 雄一 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合反応性アクリル系単量体を含む成形
    材料を、蒸気加熱機構を備えた成形型内に充填して加熱
    ・加圧成形するに当たり、上記成形型は、高温側加熱型
    と低温側加熱型の2分割型によって構成し、該低温側加
    熱型を加熱するための蒸気圧を絶対圧力で1.5kg/
    cm2 以下に制御し、且つ高温側加熱型と低温側加熱型
    との温度差を15℃以下に抑えて加熱・加圧成形するこ
    とを特徴とするアクリル系樹脂成形体の製法。
  2. 【請求項2】 高温側加熱型と低温側加熱型との温度差
    を10℃以下に抑えて加熱・加圧成形する請求項1に記
    載の製法。
  3. 【請求項3】 前記蒸気加熱機構にスチームトラップ部
    を設け、該スチームトラップ部以降を吸引しつつ、前記
    高温側加熱型と低温側加熱型の各加熱温度を調節する請
    求項1または2に記載の製法。
  4. 【請求項4】 重合反応性アクリル系単量体を含む成形
    材料を、蒸気加熱機構を備えた成形型内に充填して加熱
    ・加圧成形するに当たり、上記成形型は、高温側加熱型
    と低温側加熱型の2分割型によって構成し、該低温側加
    熱型の加熱温度を、成形材料中に含まれる最も沸点の低
    い重合反応性アクリル系単量体の沸点未満の温度に制御
    し、且つ高温側加熱型と低温側加熱型との温度差を15
    ℃以下に抑えて加熱・加圧成形することを特徴とするア
    クリル系樹脂成形体の製法。
  5. 【請求項5】 重合反応性アクリル系単量体を含む成形
    材料を、蒸気加熱機構を備えた成形型内に充填して加熱
    ・加圧成形するに当たり、上記成形型は、高温側加熱型
    と低温側加熱型の2分割型によって構成し、該低温側加
    熱型の加熱温度を、成形硬化物のガラス転移点未満の温
    度に制御し、且つ高温側加熱型と低温側加熱型との温度
    差を15℃以下に抑えて加熱・加圧成形することを特徴
    とするアクリル系樹脂成形体の製法。
  6. 【請求項6】 低温側加熱型を加熱するための蒸気圧を
    1.0kg/cm2未満に制御する請求項1〜5のいず
    れかに記載の製法。
  7. 【請求項7】 重合反応性アクリル系単量体が、メチル
    メタクリレートを含むものである請求項1〜6のいずれ
    かに記載の製法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20040032613A (ko) * 2002-10-10 2004-04-17 남승완 2색 겹층 구조의 식기 및 그 제조방법
JP2006175448A (ja) * 2004-12-20 2006-07-06 Komatsu Sanki Kk 熱転写プレス機械および熱転写プレス方法
JP2012111909A (ja) * 2010-11-26 2012-06-14 Panasonic Corp 繊維強化プラスチック平板およびその製造方法

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