JPH10294176A - 有機el素子の製造方法および有機el素子 - Google Patents

有機el素子の製造方法および有機el素子

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JPH10294176A
JPH10294176A JP9244766A JP24476697A JPH10294176A JP H10294176 A JPH10294176 A JP H10294176A JP 9244766 A JP9244766 A JP 9244766A JP 24476697 A JP24476697 A JP 24476697A JP H10294176 A JPH10294176 A JP H10294176A
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organic
film
electrode
sputtering
layer
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JP9244766A
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Masami Mori
匡見 森
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スパッタされた原子により素子構成膜へ物理
的ダメージを与えることなく、膜物性の良好な電極を有
し、薄膜表面の突起によるリーク電流の恐れもなく、陽
電極とした場合にはアモルファス性が良好で、膜物性の
良好な電極を有する有機EL素子およびその製造方法を
提供する。 【解決手段】 成膜ガス圧力と基板ターゲット間距離の
積が20〜65Pa・cmであるスパッタ法にて電極を成膜
する有機EL素子の製造方法にて有機EL素子を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL素子に関し、さらに詳細には、発光層に電子
あるいは正孔を供給する電極の製造方法および電極に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子が盛んに研究されて
いる。これは、錫ドープ酸化インジウム(ITO)など
の透明電極(陽電極)上にテトラフェニルジアミン(T
PD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜とし、さ
らにアルミキノリノール錯体(Alq3)などの蛍光物
質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕事関数の
小さな金属電極(陰電極)を形成した基本構成を有する
素子で、10V前後の電圧で数100から数10000
cd/m2 ときわめて高い輝度が得られることで注目され
ている。
【0003】このような有機EL素子の陰電極として用
いられる材料は、発光層へ電子を多く注入するものが有
効であると考えられている。換言すれば、仕事関数の小
さい材料ほど陰電極として適していると言える。仕事関
数の小さい材料としては種々のものがあるが、EL素子
の陰極として用いられるものとしては、例えば特開平4
−233194号公報に記載されているMgAg、Al
Li等が一般的である。この理由として、有機EL発光
素子の製造プロセスが、抵抗加熱を用いた蒸着を主とし
ているため、蒸着源は低温で蒸気圧の高いものに自ずと
制限されてしまうという事情がある。また、このような
抵抗加熱を用いた蒸着プロセスを用いているため、膜界
面での良好な密着性を得ることが困難である。この結
果、画素上にダークスポットと呼ばれる非画像部が製造
直後から生じたり、駆動に従い拡大したりして、これが
素子寿命を律する要因ともなっていた。
【0004】真空成膜の1つとして、スパッタ法を用い
ることも考えられる。従来のスパッタ法では、Ar等の
不活性ガスを使用し、ガス圧0.1〜1.0Paの条件
により行われていた。しかしながら、例えば特開平8−
250284号公報に記載されているように、蒸着の場
合と比較してスパッタされる原子や原子団は数10〜数
100倍程度の高い運動エネルギーを有する。このた
め、有機物から形成された発光層等に直接スパッタ成膜
すると、高い運動エネルギーを持つスパッタされた原子
が有機層にダメージを与えることになる。より具体的に
は、高いエネルギーを持つスパッタされた原子が、多数
有機EL構造体に衝突して有機物からなる発光層等を物
理的に破壊する。このため、有機EL素子の初期発光特
性を大きく低下させてしまうという問題を生じていた。
【0005】また、陽電極を成膜する場合においても、
通常の積層順では有機層を破壊する恐れはないものの、
スパッタ粒子のエネルギーが高い場合、薄膜内部に圧縮
応力を有するようになり、これが薄膜表面で異常粒成長
を誘発して成長した突起によりリーク電流を生じたり、
所望のアモルファス性が得られずにホール注入特性や膜
界面での物性が悪化したりしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、電極
の成膜時に、スパッタされた原子により素子構成膜へ物
理的ダメージを与えることなく、膜物性の良好な電極を
有する有機EL素子の製造方法および有機EL素子を提
供することである。
【0007】また、薄膜表面の突起によるリーク電流の
恐れもなく、陽電極とした場合にはアモルファス性が良
好で、膜物性の良好な電極を有する有機EL素子を提供
することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(9)の本発明により達成される。 (1) 成膜ガス圧力と基板ターゲット間距離の積が2
0〜65Pa・cmであるスパッタ法にて電極を成膜する有
機EL素子の製造方法。 (2) 前記成膜ガスにAr、KrおよびXeの少なく
とも1つを用いた上記(1)の有機EL素子の製造方
法。 (3) スパッタ法がDCスパッタ法である上記(1)
または(2)の有機EL素子の製造方法。 (4) 前記電極は、基板上に形成された有機EL構造
体上に成膜される上記(1)〜(3)のいずれかの有機
EL素子の製造方法。 (5) 前記電極を成膜した後、有機EL構造体を形成
する上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子の製
造方法。 (6) 前記電極は、成膜される面をプラズマ処理した
後に成膜される上記(5)の有機EL素子。 (7) 上記(1)〜(6)の製造方法により成膜され
た電極を有する有機EL素子。 (8) 前記電極は、スパッタガス成分の元素を0.0
05at%以下含有する上記(7)の有機EL素子。 (9) 前記電極は、内部応力がゼロまたは引張応力で
ある上記(7)または(8)の有機EL素子。
【0009】
【作用】本発明のスパッタ法によれば、初期発光輝度が
高く、輝度の半減時間も長い。また、初期のダークスポ
ットは極めて少なく、駆動後のダークスポットの発生も
少ない。前述のとおりダークスポットの発生は蒸着法の
最大の問題であったが、本発明によればこれが解消し、
発光特性が格段に向上する。後述の実施例からわかるよ
うに、上記範囲外ではこのような効果は全く生じない。
これは本発明により、平滑かつ密着性のよい膜が成膜さ
れるからであると考えられる。
【0010】また、本発明のスパッタ法によれば、電極
内に圧縮応力をほとんど存在させることなく成膜が可能
で、陽電極を成膜した場合にはアモルファス性が良好と
なり、異常粒成長が抑制され、良好な膜物性が得られ
る。そして、膜界面の物性が改善された結果発光特性が
向上し、リーク電流の発生も防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。本発明の有機EL素子の製造方法
は、基板上に形成された有機EL構造体上に、成膜ガス
圧力と基板ターゲット間距離の積が20〜65Pa・cmを
満たす成膜条件にて成膜する。ここで、有機EL構造体
とは、少なくとも一方の電極とこの電極上に成膜された
1種以上の有機層とを有する未完成状態の素子をいう。
【0012】スパッタ時における成膜条件としては、成
膜ガス圧力と基板ターゲット間距離の積が20〜65Pa
・cm、好ましくは20〜60Pa・cmの範囲である。スパ
ッタされた原子は基板に到達する途中に運動エネルギー
を失うが、その割合は成膜ガス圧力と基板ターゲット間
距離の両方に依存する。スパッタされた原子の運動エネ
ルギーがスパッタガスによる散乱で失われ、ちょうどゼ
ロ付近になる上記成膜条件が良い。成膜ガス圧力と基板
ターゲット間距離の積が20Pa・cm未満の場合、スパッ
タされた分子の運動エネルギーが大きく、有機層に物理
的ダメージを与えてしまう。また、成膜ガス圧力と基板
ターゲット間距離の積が65Pa・cmを超えると、成膜ガ
ス自身が散乱し、基板上への逆スパッタが始まり、有機
EL素子の初期発光特性を悪化させてしまう。
【0013】上記した基板ターゲット間距離とは、スパ
ッタされた原子が、基板に到達するまでに通過する距離
であり、スパッタガスに散乱される行程である。そのた
め、基板がターゲットの真上に配置されている場合は、
基板ターゲット間距離は、スパッタ装置の電極間距離と
ほぼ等しいが、基板がターゲットに対してオフセット配
置されている場合は、スパッタされた原子が散乱される
距離は、電極間距離よりも長くなるため、これを考慮す
る必要がある。つまり、本発明で示した基板ターゲット
間距離とは、スパッタされた原子が基板に到達するまで
に実際に進む距離のことである。
【0014】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用される不活性ガスや、反応性スパッタではこれに加え
てN2,H2,O2,C24,NH3等の反応性ガスが使用
可能であるが、好ましくはAr、Kr、Xeのいずれ
か、あるいはこれらの少なくとも1種以上のガスを含む
混合ガスを用いることが好ましい。これらのガスは不活
性ガスであり、かつ、比較的原子量が大きいため好まし
く、特にAr、Kr、Xe単体が好ましい。Ar、K
r、Xeガスを用いることにより、スパッタされた原子
が基板まで到達する途中、上記ガスと衝突を繰り返し、
運動エネルギーを減少させて、基板に到着する。この事
からスパッタされた原子の持つ運動エネルギーが有機E
L構造体に与える物理的ダメージが少なくなる。また、
Ar、Kr、Xeの少なくとも1種以上のガスを含む混
合ガスを用いても良く、この様な混合ガスを用いる場
合、Ar、Kr、Xeの分圧の合計は50%以上として
主スパッタガスとして用いる。このようにAr、Kr、
Xeの少なくとも1種と任意のガスを組み合わせた混合
ガスを用いることにより、本発明の効果を維持したま
ま、反応性スパッタを行うこともできる。
【0015】スパッタガスにAr、Kr、Xeのいずれ
かを主スパッタガスとして用いる場合、好ましくは上記
基板ターゲット間距離の積は、それぞれ、 Arを用いた場合:25〜55Pa・cm、特に30〜50
Pa・cm、 Krを用いた場合:20〜50Pa・cm、特に25〜45
Pa・cm、 Xeを用いた場合:20〜50Pa・cm、特に20〜40
Pa・cm の範囲が好ましく、これらの条件であればいずれのスパ
ッタガスを用いても好ましい結果を得ることができる
が、特にArを用いることが好ましい。
【0016】スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法等も可能であるが、有機EL構造体へのダ
メージを少なくするためにはDCスパッタ法を用いるこ
とが好ましい。
【0017】本発明に使用されるDCスパッタ装置とし
ては、好ましくはマグネトロンDCスパッタ装置である
ことが好ましく、磁場強度としては、ターゲット上の磁
束密度Bが、好ましくはB=500〜2000Gauss 、
特に800〜1500Gauss程度が好ましい。ターゲッ
ト上の磁束密度は大きいほど好ましく、磁束密度を大き
くして磁場強度を強くすると、ターゲット付近に電子を
閉じこめるような電極構造をとることによって、プラズ
マ中のスパッタガスの陰極ターゲットに衝突するイオン
数が増加し、プラズマ密度が大きくなる。プラズマ密度
が大きくなると、プラズマ中で粒子同士の衝突頻度が増
し、運動エネルギーの一部が失われ、スパッタされた粒
子が基板上に穏やかに堆積することになる。ターゲット
上に磁場を得る方法としては、特に限定されるものでは
ないが、ターゲットの裏面側、特に冷却部内に磁石を配
置することが好ましい。このような磁場を与える磁石と
して、例えば、Fe−Nd−B、Sm−Co、フェライ
ト、アルニコ等が挙げられ、中でもFe−Nd−B、S
m−Coが大きな磁束密度が得られ好ましい。
【0018】バイアス電圧としては、ターゲット−基板
(バイアス電極)間の電圧が、好ましくは100〜30
0V 、特に150〜250V の範囲が好ましい。バイア
ス電圧が高すぎると粒子の加速度が大きくなり、有機層
にダメージを与えやすくなる。また、バイアス電圧が低
すぎるとプラズマ放電を維持できなくなったり、プラズ
マ密度が低くなり、上記効果が得難くなる。
【0019】なお、磁場強度、バイアス電圧とも上記範
囲の中で、使用環境、装置の規模等に合わせて最適な値
に調整することが好ましい。
【0020】DCスパッタ装置の電力としては、好まし
くは0.1〜4W/cm2、特に0.5〜1W/cm2の範囲
である。また、成膜レートは5〜100nm/分、特に1
0〜50nm/分の範囲が好ましい。
【0021】このようなスパッタ法にて成膜される電極
の構成材料としては、陰電極の場合、電子注入を効果的
に行う低仕事関数の物質が好ましく、例えば、K、L
i、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、A
l、Ag、In、Sn、Zn、Zr、Cs、Er、E
u、Ga、Hf、Nd、Rb、Sc、Sm、Ta、Y、
Yb等の金属元素単体、あるいは、BaO、BaS、C
aO、HfC、LaB6、MgO、MoC、NbC、P
bS、SrO、TaC、ThC、ThO2、ThS、T
iC、TiN、UC、UN、UO2、W2C、Y23、Z
rC、ZrN、ZrO2等の化合物を用いると良い。ま
たは安定性を向上させるためには、金属元素を含む2成
分、3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系と
しては、例えばAl・Ca(Ca:5〜20at%)、A
l・In(In:1〜10at%)、Al・Li(Li:
0.1〜20at%未満)、Al・R〔RはY,Scを含
む希土類元素を表す〕等のアルミニウム系合金やIn・
Mg(Mg:50〜80at%)等が好ましい。これらの
中でも、特にAl単体やAl・Li(Li:0.4〜
6.5(ただし6.5を含まず)at%)または(Li:
6.5〜14at%)、Al・R(R:0.1〜25、特
に0.5〜20at%)等のアルミニウム系合金が圧縮応
力が発生しにくく好ましい。したがって、スパッタター
ゲットとしては、通常このような陰電極構成金属、合金
を用いる。これらの仕事関数は4.0eV以下であり、特
に仕事関数が小さい金属、合金ほど電子を多く発光層に
注入できるので好ましい。
【0022】また、上記陰電極を製膜した後に、さらに
電気伝導度の良好な金属薄膜を積層してもよい。特に本
発明により成膜される陰電極薄膜は、材料により形成さ
れた後の膜密度が粗になる場合がある。その場合、外部
から水などが進入し易くなり、素子寿命に影響を与える
こととなる。そこで電気伝導度の良好な金属薄膜を積層
すると、素子の電極で電圧を低下させることなく、さら
に安定な素子を形成することができる。成膜される金属
としては、Cu,Ag,Au,Ru,Fe,Ni,P
d,Pt,Ti,Ta,Cr,Mo,W,Co,Rh,
Ir,Zn,Al,GaおよびIn等が挙げられ、これ
らの金属を任意の組成で混合して用いてもよい。また、
電気伝導度が金属と同等であれば、安定な化合物を用い
てもよい。安定な化合物としては、例えば、IrO2
MoO2 ,NbO,OsO2 ,ReO2 ,ReO3 ,R
uO2 等が挙げられる。
【0023】また、陰電極薄膜の厚さは、電子注入を十
分行える一定以上の厚さとすれば良く、20nm以上、好
ましくは50nm以上とすればよい。さらに陰電極上に積
層される金属薄膜の厚さは、電気抵抗を小さくすること
の可能な厚さとすればよく、50nm以上、好ましくは1
00nm以上とすればよい。また、陰電極と積層される金
属薄膜層を合わせた膜厚の上限値には特に制限はない
が、通常膜厚は100〜500nm程度とすればよい。
【0024】電極材料の異常粒成長を引き起こす要因と
して、電極材料粒子自身のもつ運動エネルギーや熱エネ
ルギーが高いことが考えられるが、それ以外に電極形成
過程で薄膜中に導入される歪みエネルギー等も可能性が
ある。歪みエネルギーには引張応力と圧縮応力とがあ
り、引張応力を有する電極にはダークスポットやリーク
電流等の問題が生じ難く、異常粒成長が主に圧縮応力と
関係があることがわかっている。この場合、X線回折法
(XRD)で電極表面を評価すると、回折ピークがバル
クで観察される回折角度に対して、僅かに高角或いは低
角にシフトするので歪みエネルギー(残留応力)の有無
とその種類(引張応力、圧縮応力)を調べることができ
る。そして、上記条件により圧縮応力がほとんど存在し
ない状態で成膜を行うことができれば、有機層へのダメ
ージや、リークを防止することができる。
【0025】例えばアルミニウムやアルミニウム合金系
の場合、バルク(111)面の面間隔dに対し、これと
ほぼ等しいかあるいは0.0002nm程度まで大きい方
向にシフトしていることが好ましい。従って、アルミニ
ウムの場合バルク面の面間隔d=0.23380nmとほ
ぼ等しいか、これより0.0002nm程度まで大きい方
向にシフトしていることが好ましい。また、透明電極の
場合、例えばITOでは、Sn組成比により若干ピーク
が異なるが、母相であるIn23 のバルク(222)
面の面間隔d=0.29210nmに対し、これと等しい
かあるいは0.0002nm程度まで大きい方向にシフト
していることが好ましい。
【0026】また、スパッタ法においては、ターゲット
に入射する高エネルギーイオンが、ターゲット表面で弾
性的に反射する現象がある。反射される粒子は大半が原
子状態であるが、高い運動エネルギーを有することから
成膜の過程で膜中に混入することが知られている。この
ようなスパッタガスの膜中への混入は膜のミクロ的な構
造変化をもたらし、上記のような、圧縮応力を発生させ
る要因となるものと考えられる。また、その成膜条件に
より膜中でのスパッタガス元素濃度は変化し、上記のよ
うな成膜条件では少なくなることが確認されている。
【0027】このような、電極膜中におけるスパッタガ
スの元素濃度は、スパッタガス成分元素の種類により異
なるが、好ましくは0.005at%以下、より好ましく
は0.001〜0.0045at%、特に0.002〜
0.004at%程度が好ましい。このような元素の含有
量は、2次イオン質量分析(SIMS)等で確認するこ
とができる。
【0028】本発明のスパッタ法を陽電極に用いる場
合、好ましくは発光した光の透過率が80%以上となる
ように陽電極の材料および厚さを決定することが好まし
い。具体的には、例えば、錫ドープ酸化インジウム(I
TO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化イ
ンジウム(In23 )、酸化スズ(SnO2 )および
酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好
ましい。これらの酸化物はその化学量論組成から多少偏
倚していてもよい。ITOでは、通常In2 3とSn
2 とを化学量論組成で含有するが、酸素量は多少これ
から偏倚していてもよい。In2 3 に対しSnO2
混合比は、1〜20wt%が好ましく、さらには5〜12
wt%が好ましい。In2 3 に対しZnO2 の混合比
は、1〜20wt%が好ましく、さらには5〜12wt%が
好ましい。
【0029】陽電極を上記条件にて成膜することによ
り、スパッタされた原子が基板まで到達する途中、上記
ガスと衝突を繰り返し、運動エネルギーを減少させて、
基板に到着することで、よりアモルファス性の強い陽電
極を成膜することが可能となり、粒成長が抑制され、膜
表面がよりスムースになる。
【0030】このようにして得られた陽電極は、シート
抵抗が増大する傾向にある。このため、その膜厚は下地
となる透明電極と共に積層する場合には、10〜20nm
の比較的薄いものとすることが好ましい。通常、陽電極
のシート抵抗は膜厚200nmで、20〜50Ω/□程度
である。陽電極表面の最大表面粗さ(Rmax )は、好ま
しくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、特に
5〜30nmが好ましい。またその平均表面粗さ(Ra )
は、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以
下、特に0.5〜10nmが好ましい。陽電極の表面をス
ムースにすると、ダークスポットの発生等をより抑制す
ることができ好ましい。陽電極全体の厚さは10〜50
0nm程度とすることが好ましい。また、素子の信頼性を
向上させるために駆動電圧が低いことが必要である。
【0031】本発明の有機EL素子は、下地となる透明
導電膜上に陽電極を成膜してもよい。下地透明導電膜
は、その電気抵抗を低く抑えるため、好ましくはスパッ
タ時の圧力を0.10〜0.3Pa、特に0.15〜0.
25Pa の範囲で成膜されたものを用いる。このような
透明導電膜、特にITO等は市販されており、これを購
入して用いることもできる。下地透明導電膜と陽電極の
2層構造とすることにより、電極抵抗を低く抑えること
ができ好ましい。下地透明導電膜の膜厚としては、通常
100〜200nm程度が好ましい。下地透明導電膜上に
成膜される場合の陽電極の膜厚は、好ましくは10nm以
上、より好ましくは20nm以上が好ましく、その上限は
特に規制されるものではないが、光の透過性を重視する
場合、透過率を80%以上とすることが好ましく、その
場合の膜厚は100nm以下が好ましい。
【0032】また、下地透明導電膜と陽電極とを積層構
造として成膜する場合、非連続的(段階的)に下地透明
導電膜上に陽電極を成膜する以外、スパッタ中のガス圧
力を連続的に変化させ、膜質の異なる膜を連続的に形成
してもよい。この場合の効果は、上記場合とほぼ同等で
あるが、成膜プロセスを簡単にすることができる。
【0033】また、下地透明導電膜上に陽電極を成膜す
る場合(逆積層の場合、陰電極となる)、あらかじめ下
地透明導電膜表面をプラズマ処理、より具体的には逆ス
パッタ等をすることが好ましい。下地透明導電膜表面を
プラズマ処理することにより、下地透明導電膜表面が平
坦化され、その後に成膜される陽電極も平坦化される。
逆スパッタの条件としては、好ましくは上記のスパッタ
ガスを用い、ガス圧0.5〜1.0Pa、投入電力0.5
〜3W/cm2 程度にて1〜10分程度行うことが好まし
い。
【0034】なお、ディスプレイのような大きなデバイ
スにおいては、ITO等の陽電極の抵抗が大きく、電圧
降下が起きるので、Alなどのメタル配線をしてもよ
い。
【0035】本発明の方法により製造される有機EL素
子は、基板上に陽電極と、その上に陰電極を有するか、
あるいは基板上に陰電極と、その上に陽電極を有する、
いわゆる逆積層のいずれかの構成からなり、これらの電
極に挟まれて、それぞれ少なくとも1層の電荷輸送層お
よび発光層を有し、さらに最上層として保護層を有す
る。なお、電荷輸送層は省略可能である。
【0036】本発明により製造される有機発光素子の構
成例を図1及び図2に示す。図1に示されるEL素子
は、基板21上に、陽電極22、正孔注入・輸送層2
3、発光および電子注入輸送層24、陰電極25、保護
層26を順次有する。また、図2に示されるEL素子
は、図1を逆に積層した構造で、基板21上に、陰電極
25、発光および電子注入輸送層24、正孔注入・輸送
層23、陽電極22、保護層26を順次有する。
【0037】本発明の有機EL素子は、図示例に限ら
ず、種々の構成とすることができ、例えば発光層を単独
で設け、この発光層と金属電極との間に電子注入輸送層
を介在させた構造とすることもできる。また、必要に応
じ、正孔注入・輸送層と発光層とを混合しても良い。
【0038】陰電極や陽電極は前述のように成膜し、発
光層等の有機物層は真空蒸着等により成膜することがで
きるが、これらの膜のそれぞれは、必要に応じてマスク
蒸着または膜形成後にエッチングなどの方法によってパ
ターニングでき、これによって、所望の発光パターンを
得ることができる。さらには、基板が薄膜トランジスタ
(TFT)であって、そのパターンに応じて各膜を形成
することでそのまま表示および駆動パターンとすること
もできる。
【0039】なお、有機EL素子を上記の逆積層とする
場合において、陰電極成膜後にメタルマスクを装着しよ
うとすると、一旦層内を大気圧に戻すこととなり、陰電
極表面が酸化してしまう。このような酸化層は電子注入
効率の低下やダークスポット発生の原因となるため、再
度減圧した後、逆スパッタ(陰電極表面をスパッタす
る)して酸化層を除去することが好ましい。酸化層は、
陰電極表面を逆スパッタで通常2〜3分程度スパッタす
ることにより除去できる。
【0040】電極成膜後に、前記保護膜あるいは/およ
びAl等の金属材料、SiOX 等の無機材料、テフロン
等の有機材料等を用いた他の保護層を形成すればよい。
この保護膜は、透明でも不透明であってもよい。一般
に、保護層の厚さは50〜1200nm程度とする。保護
層は、前記した反応性スパッタ法の他に、一般的なスパ
ッタ法、蒸着法等により成膜すればよい。
【0041】本発明の有機EL素子は、前述のような反
応性スパッタを利用して、保護膜として陰電極の構成材
料の酸化物、窒化物あるいは炭化物の1種以上を設けて
もよい。この場合、保護膜の原材料は、通常は陰電極材
料と同一組成とするが、それと組成比の異なるものであ
っても、あるいはその材料成分中の1種以上を欠くもの
であっても良い。このように、陰電極と同一材料等を用
いることにより、陰電極との連続成膜が可能となる。
【0042】このような酸化物のO量、窒化物のN量あ
るいは炭化物のC量は、この化学量論組成から偏倚して
いても良く、それらの組成の0.5〜2倍の範囲であれ
ばよい。
【0043】ターゲットとしては好ましくは陰電極と同
一材料の焼結体を用い、反応性ガスとしては、酸化物を
形成する場合、O2 、CO等が挙げられ、窒化物を形成
する場合、N2 、NH3 、NO、NO2 、N2 O等が挙
げられ、炭化物を形成する場合、CH4 、C2 2 、C
2 4 等が挙げられる。これらの反応性ガスは単独で用
いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0044】保護膜の厚さは、水分や酸素あるいは有機
溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さとすればよ
く、好ましくは50nm以上、さらに100nm以上、特に
100〜1000nmの範囲が好ましい。
【0045】陰電極と保護膜とを併せた全体の厚さとし
ては、特に制限はないが、通常100〜1000nm程度
とすればよい。
【0046】このような保護膜を設けることにより、陰
電極の酸化等がさらに防止され、有機EL素子を長期間
安定に駆動することができる。
【0047】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために素子上に封止層を形成することが好ましい。封止
層は、湿気の侵入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化
性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架
橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着
性樹脂層を用いて、ガラス板等の封止板を接着し密封す
る。ガラス板以外にも金属板、プラスチック板等を用い
ることもできる。
【0048】次に、本発明のEL素子に設けられる有機
物層について述べる。
【0049】発光層は、正孔(ホール)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により
励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的電
子的にニュートラルな化合物を用いることが好ましい。
【0050】電荷輸送層は、陽電極からの正孔の注入を
容易にする機能、正孔を輸送する機能および電子を妨げ
る機能を有し、正孔注入輸送層とも称される。
【0051】このほか、必要に応じ、例えば発光層に用
いる化合物の電子注入輸送機能がさほど高くないときな
ど、前述のように、発光層と陰電極との間に、陰電極か
らの電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能
および正孔を妨げる機能を有する電子注入輸送層を設け
てもよい。
【0052】正孔注入輸送層および電子注入輸送層は、
発光層へ注入される正孔や電子を増大・閉じ込めさせ、
再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0053】なお、正孔注入輸送層および電子注入輸送
層は、それぞれにおいて、注入機能を持つ層と輸送機能
を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0054】発光層の厚さ、正孔注入輸送層の厚さおよ
び電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法に
よっても異なるが、通常、5〜1000nm程度、特に1
0〜200nmとすることが好ましい。
【0055】正孔注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送
層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層
の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすれば
よい。電子もしくは正孔の、各々の注入層と輸送層を分
ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上とす
るのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上
限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で500nm
程度である。このような膜厚については注入輸送層を2
層設けるときも同じである。
【0056】また、組み合わせる発光層や電子注入輸送
層や正孔注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度
(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を
考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合
領域・発光領域を自由に設計することが可能であり、発
光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光
スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にで
きる。
【0057】本発明の有機EL素子の発光層には発光機
能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。この
蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26469
2号公報等に開示されているようなトリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム〔Alq3〕等の金属錯体色素が
挙げられる。この他、これに加え、あるいは単体で、キ
ナクリドン、クマリン、ルブレン、スチリル系色素、そ
の他テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレ
ン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等を用いる
こともできる。発光層は電子注入輸送層を兼ねたもので
あってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これ
らの蛍光性物質を蒸着すればよい。
【0058】また、必要に応じて設けられる電子注入輸
送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等
の有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘
導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘
導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、
ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。
上述のように、電子注入輸送層は発光層を兼ねたもので
あってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電子
注入輸送層の形成も発光層と同様に蒸着等によればよ
い。
【0059】なお、電子注入輸送層を電子注入層と電子
輸送層とに分けて設層する場合は、電子注入輸送層用の
化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いること
ができる。このとき、陰電極側から電子親和力の値の大
きい化合物の層の順に積層することが好ましい。このよ
うな積層順については電子注入輸送層を2層以上設ける
ときも同様である。
【0060】また、正孔注入輸送層には、例えば、特開
昭63−295695号公報、特開平2−191694
号公報、特開平3−792号公報、特開平5−2346
81号公報、特開平5−239455号公報、特開平5
−299174号公報、特開平7−126225号公
報、特開平7−126226号公報、特開平8−100
172号公報、EP0650955A1等に記載されて
いる各種有機化合物を用いることができる。例えば、テ
トラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミン
ないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級ア
ミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有する
オキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。こ
れらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用すると
きは別層にして積層したり、混合したりすればよい。
【0061】正孔注入輸送層を正孔注入層と正孔輸送層
とに分けて設層する場合は、正孔注入輸送層用の化合物
のなかから好ましい組合せを選択して用いることができ
る。このとき、陽電極(ITO等)側からイオン化ポテ
ンシャルの小さい化合物の層の順に積層することが好ま
しい。また陽電極表面には薄膜性の良好な化合物を用い
ることが好ましい。このような積層順については、正孔
注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。このよ
うな積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電
流リークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐこ
とができる。また、素子化する場合、蒸着を用いている
ので1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフ
リーとすることができるため、正孔注入層にイオン化ポ
テンシャルが小さく、可視部に吸収をもつような化合物
を用いても、発光色の色調変化や再吸収による効率の低
下を防ぐことができる。
【0062】正孔注入輸送層は、発光層等と同様に上記
の化合物を蒸着すればよい。
【0063】本発明において、陽電極として用いられる
透明電極は、好ましくは発光した光の透過率が80%以
上となるように陽電極の材料および厚さを決定すること
が好ましい。具体的には、例えば、錫ドープ酸化インジ
ウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZ
O)、ZnO、SnO2、In23などを陽電極に用い
ることが好ましい。また、陽電極の厚さは10〜500
nm程度とすることが好ましい。素子の信頼性を向上させ
るために駆動電圧が低いことが必要であるが、好ましい
ものとして、10〜30Ω/□(膜厚50〜300nm)
のITOが挙げられる。実際に使用する場合には、IT
O等の陽電極界面での反射による干渉効果が、光取り出
し効率や色純度を十分に満足するように、電極の膜厚や
光学定数を設定すればよい。
【0064】基板材料としては、基板側から発光した光
を取り出す構造の場合、ガラスや石英、樹脂等の透明な
いし半透明の材料を用いる。また、基板に色フィルター
膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜
を用いて発光色をコントロールしてもよい。また、前記
逆積層の場合には、基板は透明でも不透明であってもよ
く、不透明である場合にはセラミックス等を使用しても
よい。
【0065】色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等
で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、
有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルターの特
性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよ
い。
【0066】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0067】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0068】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0069】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含
む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物
・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系
化合物等を用いればよい。
【0070】バインダーは基本的に蛍光を消光しないよ
うな材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等
で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。
また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料
が好ましい。
【0071】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0072】正孔注入輸送層、発光層および電子注入輸
送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空
蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場
合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下
の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超え
ていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高く
しなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下
する。
【0073】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりするこ
とができる。
【0074】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0075】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパル
ス駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜2
0V程度とされる。
【0076】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0077】〈実施例1〉ガラス基板上に透明電極とし
て厚さ200nmのITOをスパッタ法にて形成した。こ
のときの条件として、ターゲットにITO(Sn:10
wt%)を用い、スパッタガス圧0.15Pa、ターゲット
と基板間距離(Ts)9.0cmとした。また、投入電力
は1.2W/cm2 であった。その後パターニングし、中
性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、
次いで煮沸エタノール中から引き上げ乾燥した。この透
明電極表面をUV/O3洗浄した後、真空蒸着装置の基
板ホルダーにて固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで
減圧した。
【0078】次いで減圧状態を保ったまま、N,N’−
ジフェニル−m−トリル−4,4’−ジアミン−1,
1’−ビフェニル(TPD)を蒸着速度0.2nm/secで
55nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0079】さらに、減圧を保ったまま、Alq3:ト
リス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.
2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発
光層とした。
【0080】次いで、真空蒸着装置からスパッタ装置に
移し、DCスパッタ法にてMg・Ag合金(Ag:5at
%)をターゲットとして陰電極を200nmの厚さに成膜
した。このときのスパッタガスにはArを用い、ガス圧
4.5Pa、ターゲットと基板間距離(Ts)9.0cmと
し、投入電力は1.2W/cm2 であった。
【0081】最後にSiO2を200nmの厚さにスパッ
タして保護層として、有機EL素子を得た。この有機E
L素子は、それぞれ2本ずつの平行ストライプ状陰電極
と、8本の平行ストライプ状陽電極を互いに直交させ、
2×2mm縦横の素子単体(画素)を互いに2mmの間隔で
配置し、8×2の16画素の素子としたものである。
【0082】この有機EL素子にN2雰囲気で直流電圧
を印加し、10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させ
た。初期には、9V、250cd/m2 の緑色(発光極大
波長λmax =520nm)の発光が確認できた。輝度の半
減時間は600時間で、その間の駆動電圧の上昇は2V
であった。
【0083】また、得られた有機EL素子について、1
6画素の初期発光輝度を調べ、その平均輝度、ダークス
ポットの発生有無(発光開始から200時間経過後)、
および電極表面の平均表面粗さについて評価した。平均
表面粗さは、接触式表面粗さ計により測定した(表中R
aと略記した)。ダークスポットの発生の有無について
は、以下の基準により評価した。 ◎:ダークスポット全くなし ○:発光面の10mm角の領域に2個以下確認できる。 ×:発光面の10mm角の領域に3個以上確認できる。 結果を表1に示す。
【0084】〈実施例2〉実施例1の有機EL素子の製
造において、スパッタガスをKrにかえ、ガス圧3.5
Pa、ターゲットと基板間距離(Ts)9.0cmとした。
他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均発光輝
度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を調べ
た。結果を表1に示す。
【0085】〈実施例3〉実施例1の有機EL素子の製
造において、スパッタガスをXeにかえ、ガス圧2.5
Pa、ターゲットと基板間距離(Ts)9.0cmとした。
他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均発光輝
度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を調べ
た。結果を表1に示す。
【0086】〈実施例4〉実施例1の有機EL素子の製
造において、成膜ガス圧を2.5Pa、Ts=9.0cmに
かえた他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均
発光輝度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を
調べた。結果を表1に示す。
【0087】〈実施例5〉実施例1の有機EL素子の製
造において、成膜ガス圧を6.0Pa、Ts=9.0cmに
かえた他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均
発光輝度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を
調べた。結果を表1に示す。
【0088】〈実施例6〉実施例1の有機EL素子の製
造において、成膜ガス圧を8.0Pa、Ts=5.0cmに
かえた他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均
発光輝度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を
調べた。結果を表1に示す。
【0089】〈実施例7〉実施例1の有機EL素子の製
造において、成膜ガス圧を12Pa、Ts=5.0cmにか
えた他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均発
光輝度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を調
べた。結果を表1に示す。
【0090】〈実施例8〉実施例1の有機EL素子の製
造において、成膜ガス圧を8.0Pa、Ts=7.5cmに
かえた他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均
発光輝度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を
調べた。結果を表1に示す。
【0091】〈実施例9〉実施例1の有機EL素子の製
造において、成膜ガス圧を2.5Pa、Ts=15cmにか
えた他は同様にして有機EL素子を成膜し、初期平均発
光輝度、発光半減期及びダークスポットの発生有無を調
べた。結果を表1に示す。
【0092】〈実施例10〉ガラス基板を中性洗剤、ア
セトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、次いで煮沸
エタノール中から引き上げ乾燥した。このガラス基板を
UV/O3洗浄した後、スパッタ装置の基板ホルダーに
て固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧した。
【0093】次いで、減圧状態を保ったままDCスパッ
タ法にてMg・Ag合金(Ag:5at%)をターゲットと
して陰電極を200nmの厚さに成膜した。このときの
スパッタガスにはArを用い、ガス圧4.5Pa、ターゲ
ットと基板間距離(Ts)9.0cmとし、投入電力は
1.2W/cm2 であった。
【0094】次いで、スパッタ槽内を大気圧に戻し、メ
タルマスクを乗せ、再度減圧した後、表面を逆スパッタ
して陰電極表面の酸化膜を除去した。さらに減圧状態を
保持したまま真空蒸着装置内に移動し、真空蒸着装置の
基板ホルダーに固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで
減圧した。
【0095】次いで、減圧を保ったまま、Alq3:ト
リス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.
2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発
光層とした。
【0096】さらに減圧状態を保ったまま、N,N’−
ジフェニル−m−トリル−4,4’−ジアミン−1,
1’−ビフェニル(TPD)を蒸着速度0.2nm/secで
55nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0097】次いで、真空蒸着装置からスパッタ装置に
移し、DCスパッタ法にてITO(Sn:10wt%)をタ
ーゲットとして陰電極を200nmの厚さに成膜した。こ
のときのスパッタガスにはAr+O2(O2分圧:2%)
を用い、ガス圧4.5Pa、ターゲットと基板間距離(T
s)9.0cmとし、投入電力は1.2W/cm2 であっ
た。
【0098】最後にSiO2を200nmの厚さにスパ
ッタして保護層として、有機EL素子を得た。この有機
EL素子は、それぞれ2本ずつの平行ストライプ状陰電
極と、8本の平行ストライプ状陽電極を互いに直交さ
せ、2×2mm縦横の素子単体(画素)を互いに2mmの間
隔で配置し、8×2の16画素の素子としたものであ
る。
【0099】この有機EL素子にN2雰囲気で直流電圧
を印加し、10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させ
た。初期には、9V、240cd/m2 の緑色(発光極大
波長λmax =520nm)の発光が確認できた。輝度の半
減時間は600時間で、その間の駆動電圧の上昇は2V
であった。
【0100】得られた有機EL素子について、実施例1
と同様に評価したところ、成膜の順番を逆にした場合で
も、ダークスポットの発生等において、実施例1と同様
の結果を得ることができた。
【0101】〈実施例11〉実施例1において、ターゲ
ットとしてMg・Ag(Ag:5at%)の代わりに、I
n・Mg(Mg:60at%)、Al・Ca(Ca:10
at%)、AlIn(In:5at%)、AlSm(Sm:
10at%)、NaNi(Na:10at%)をそれぞれ用
い、その他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製
した。
【0102】得られた有機EL素子について、実施例1
と同様に評価したところ、それぞれの有機EL素子につ
いて実施例1と同様の結果を得ることができた。
【0103】〈比較例1〉実施例1の有機EL素子の製
造において、ガス圧を1.5Paにかえた他は同様にして
有機EL素子を成膜し、その発光特性を調べた。その結
果を表1に示す。初期発光輝度の平均値、発光半減期と
もに減少していた。また、ダークスポットの発生が顕著
だったため、発光面が成膜中にかなりダメージを受けて
いると思われる。
【0104】〈比較例2〉実施例1の有機EL素子の製
造において、ガス圧を8.0Paにかえた他は同様にして
有機EL素子を成膜し、その発光特性を調べた。その結
果を表1に示す。初期発光輝度の平均値、発光半減期と
もに減少していた。また、ダークスポットの発生も顕著
だった。
【0105】〈比較例3〉実施例1の有機EL素子の製
造において、ガス圧1.0Pa、Ts=5.0cmにかえた
他は同様にして有機EL素子を成膜し、その発光特性を
調べた。その結果を表1に示す。初期発光輝度の平均
値、発光半減期ともに減少していた。また、ダークスポ
ットの発生も顕著だった。
【0106】
【表1】
【0107】表1から明らかなように、本発明により形
成された有機EL素子は、ダークスポットの発生も殆ど
無く、電極表面の平均表面粗さも30nm以下であり、有
機層へのダメージが少なくなっていることがわかる。な
お、表面粗さが粗い程、有機層へ与えるダメージが大き
くなっていると考えられる。
【0108】〈実施例12〉ガラス基板上に予め200
nmの膜厚に成膜された、市販のITO基板を用い、これ
を中性洗剤で十分に洗浄・乾燥し、成膜用スパッタ装置
の基板ホルダーにセットし、槽内を1×10-4Pa以下ま
で減圧した。ITO基板をDCスパッタ法を用い、Ar
ガス:1.0Paにて、5分間逆スパッタした後、ITO
(Sn:10wt%)をターゲットとして、陽電極を50
nmの厚さに成膜した。このときのスパッタガスにはAr
を用いた。スパッタ時の圧力は4.5Pa、ターゲット−
基板間の距離(Ts )は9.0cm、投入電力は1.2W
/cm2 であった。
【0109】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=30nm、
平均表面粗さ(Ra )=10nmであり、異常粒成長によ
る表面突起は認められず、表面が非常にスムースである
ことが確認された。さらに、Arガス含有量、内部応力
について評価した。Arガス含有量は、2次イオン質量
分析(SIMS)にて測定し、内部応力は、X線回折法
により得られた回折ピークのシフトについて、バルク位
置からのシフト方向により評価した。内部応力について
は、面間隔d=0.29215nmであり引張応力であっ
た。結果を表2に示す。
【0110】このようにして得られた陽電極を用い、そ
の他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
この有機EL素子にN2雰囲気で直流電圧を印加し、1
0mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させた。初期には、
9V、250cd/m2 の緑色(発光極大波長λmax =5
20nm)の発光が確認できた。輝度の半減時間は600
時間で、その間の駆動電圧の上昇は2Vであった。
【0111】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。リーク電流の有無については、各画素の
電極間の抵抗を測定し、20MΩ以下をリーク電流あり
とした。結果を表2に示す。
【0112】〈実施例13〉実施例12の有機EL素子
の製造において、スパッタガスをKrにかえ、ガス圧
3.5Pa、ターゲットと基板間距離(Ts)9.0cmと
した他は同様にして陽電極を成膜した。
【0113】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=30nm、
平均表面粗さ(Ra )=10nmであり、異常粒成長によ
る表面突起は認められず、表面が非常にスムースである
ことが確認された。さらに、実施例12と同様にして、
Krガス含有量、内部応力について評価した。内部応力
については、面間隔d=0.29214nmであり引張応
力であった。結果を表2に示す。
【0114】次いで、実施例12と同様にして有機EL
素子を作製した。この有機EL素子を実施例12と同様
にして駆動させた。初期には、9V、250cd/m2
緑色(発光極大波長λmax =520nm)の発光が確認で
きた。輝度の半減時間は600時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2Vであった。
【0115】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。結果を表2に示す。
【0116】〈実施例14〉実施例12の有機EL素子
の製造において、スパッタガスをXeにかえ、ガス圧
2.5Pa、ターゲットと基板間距離(Ts)9.0cmと
した他は同様にして陽電極を成膜した。
【0117】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=30nm、
平均表面粗さ(Ra )=10nmであり、異常粒成長によ
る表面突起は認められず、表面が非常にスムースである
ことが確認された。さらに、実施例12と同様にして、
Xeガス含有量、内部応力について評価した。内部応力
については、面間隔d=0.29213nmであり引張応
力であった。結果を表2に示す。
【0118】次いで、実施例12と同様にして有機EL
素子を作製した。この有機EL素子を実施例12と同様
にして駆動させた。初期には、9V、250cd/m2
緑色(発光極大波長λmax =520nm)の発光が確認で
きた。輝度の半減時間は600時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2Vであった。
【0119】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。結果を表2に示す。
【0120】〈実施例15〉実施例12の有機EL素子
の製造において、成膜ガス圧を2.5Pa、Ts=9.0c
mにかえた他は同様にして陽電極を成膜した。
【0121】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=32nm、
平均表面粗さ(Ra )=15nmであり、異常粒成長によ
る表面突起は認められず、表面が非常にスムースである
ことが確認された。さらに、実施例12と同様にして、
Arガス含有量、内部応力について評価した。内部応力
については、面間隔d=0.29211nmであり引張応
力であった。結果を表2に示す。
【0122】次いで、実施例12と同様にして有機EL
素子を作製した。この有機EL素子を実施例12と同様
にして駆動させた。初期には、9V、250cd/m2
緑色(発光極大波長λmax =520nm)の発光が確認で
きた。輝度の半減時間は600時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2Vであった。
【0123】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。結果を表2に示す。
【0124】〈実施例16〉実施例1の有機EL素子の
製造法において、成膜ガス圧を6.0Pa、Ts=9.0c
mにかえた他は同様にして陽電極を成膜した。
【0125】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=30nm、
平均表面粗さ(Ra )=16nmであり、異常粒成長によ
る表面突起は認められず、表面が非常にスムースである
ことが確認された。さらに、実施例12と同様にして、
Arガス含有量、内部応力について評価した。内部応力
については、面間隔d=0.29220nmであり引張応
力であった。結果を表2に示す。
【0126】次いで、実施例12と同様にして有機EL
素子を作製した。この有機EL素子を実施例12と同様
にして駆動させた。初期には、9V、250cd/m2
緑色(発光極大波長λmax =520nm)の発光が確認で
きた。輝度の半減時間は600時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2Vであった。
【0127】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。結果を表2に示す。
【0128】〈実施例17〉実施例1の有機EL素子の
製造において、成膜ガス圧を8.0Pa、Ts=5.0cm
にかえた他は同様にして陽電極を成膜した。
【0129】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=30nm、
平均表面粗さ(Ra )=10nmであり、異常粒成長によ
る表面突起は認められず、表面が非常にスムースである
ことが確認された。さらに、実施例12と同様にして、
Arガス含有量、内部応力について評価した。内部応力
については、面間隔d=0.29215nmであり引張応
力であった。結果を表2に示す。
【0130】次いで、実施例12と同様にして有機EL
素子を作製した。この有機EL素子を実施例12と同様
にして駆動させた。初期には、9V、250cd/m2
緑色(発光極大波長λmax =520nm)の発光が確認で
きた。輝度の半減時間は600時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2Vであった。
【0131】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。結果を表2に示す。
【0132】〈比較例4〉実施例12の有機EL素子の
製造において、成膜ガス圧を1.0Pa、Ts=5.0cm
にかえた他は同様にして陽電極を成膜した。
【0133】得られた陽電極の表面粗さをAFMを用い
て測定したところ、最大表面粗さ(Rmax )=300n
m、平均表面粗さ(Ra )=210nmであり、異常粒成
長による表面突起が生じていることが確認された。さら
に、実施例12と同様にして、Arガス含有量、内部応
力について評価した。内部応力については、面間隔d=
0.29202nmであり圧縮応力であった。結果を表2
に示す。
【0134】次いで、実施例12と同様にして有機EL
素子を作製した。この有機EL素子のうち使用可能なも
のを実施例12と同様にして駆動させた。初期には、9
V、200cd/m2 の緑色(発光極大波長λmax =52
0nm)の発光が確認できた。輝度の半減時間は550時
間で、その間の駆動電圧の上昇は2.5Vであった。
【0135】また、同様にして得られた有機EL素子1
0素子×16画素についてリーク電流の有無、および実
施例1と同様の方法でダークスポットの発生の有無につ
いて評価した。結果を表2に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、電極の成
膜時に、スパッタされた原子により素子構成膜へ物理的
ダメージを与えることなく、膜物性の良好な電極を有す
る有機EL素子の製造方法および有機EL素子を提供で
きる。
【0138】また、異常粒成長した表面突起によるリー
ク電流の恐れもなく、陽電極とした場合にはアモルファ
ス性が良好で、膜物性の良好な電極を有する有機EL素
子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子の一構成例を示した概念図であ
る。
【図2】有機EL素子の他の構成例(逆積層)を示した
概念図である。
【符号の説明】
21 基板 22 陽電極 23 正孔注入・輸送層 24 発光層 25 陰電極 26 保護層

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成膜ガス圧力と基板ターゲット間距離の
    積が20〜65Pa・cmであるスパッタ法にて電極を成膜
    する有機EL素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記成膜ガスにAr、KrおよびXeの
    少なくとも1つを用いた請求項1の有機EL素子の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 スパッタ法がDCスパッタ法である請求
    項1または2の有機EL素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記電極は、基板上に形成された有機E
    L構造体上に成膜される請求項1〜3のいずれかの有機
    EL素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記電極を成膜した後、有機EL構造体
    を形成する請求項1〜4のいずれかの有機EL素子の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記電極は、成膜される面をプラズマ処
    理した後に成膜される請求項5の有機EL素子。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6の製造方法により成膜され
    た電極を有する有機EL素子。
  8. 【請求項8】 前記電極は、スパッタガス成分の元素を
    0.005at%以下含有する請求項7の有機EL素子。
  9. 【請求項9】 前記電極は、内部応力がゼロまたは引張
    応力である請求項7または8の有機EL素子。
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