JPH118066A - 有機el素子の製造装置および有機el素子 - Google Patents

有機el素子の製造装置および有機el素子

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JPH118066A
JPH118066A JP9172886A JP17288697A JPH118066A JP H118066 A JPH118066 A JP H118066A JP 9172886 A JP9172886 A JP 9172886A JP 17288697 A JP17288697 A JP 17288697A JP H118066 A JPH118066 A JP H118066A
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organic
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sputtering
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JP9172886A
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Masami Mori
匡見 森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スパッタ法を用いて有機EL素子の陰電極を
成膜する際に、スパッタされた粒子の持つ高い運動エネ
ルギーを抑制し、有機層への物理的ダメージの少ない有
機EL素子の製造装置および有機EL素子を実現する。 【解決手段】 DCスパッタ装置であって、有機EL素
子の構成膜を成膜する基板と、陰電極材料であるターゲ
ットとを有し、前記基板をターゲットに対して、ターゲ
ットから飛散するスパッタされた粒子の平均的な運動方
向を示すベクトルの成分が、基板面に対して垂直な成分
より平行な成分が多くなる位置に配置した有機EL素子
の製造装置を用いて陰電極を成膜する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL発光素子(以下、有機EL素子という)に関
し、さらに詳細には、発光層に電子を供給する陰電極に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子が盛んに研究されて
いる。これは、錫ドープ酸化インジウム(ITO)など
の透明電極(陽電極)上にテトラフェニルジアミン(T
PD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜とし、さ
らにアルミキノリノール錯体(Alq3)などの蛍光物
質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕事関数の
小さな金属電極(陰電極)を形成した基本構成を有する
素子で、10V前後の電圧で数100から数1000cd
/m2ときわめて高い輝度が得られることで注目されてい
る。
【0003】このような有機EL素子の陰電極として用
いられる材料は、発光層へ電子を多く注入するものが有
効であると考えられている。換言すれば、仕事関数の小
さい材料ほど陰電極として適していると言える。仕事関
数の小さい材料としては種々のものがあるが、EL発光
素子の陰極として用いられるものとしては、例えば特開
平4−233194号公報に記載されているMgAg、
AlLiが一般的である。この理由として、有機EL発
光素子の製造プロセスが、抵抗加熱を用いた蒸着を主と
しているため、蒸着源は低温で蒸気圧の高いものに自ず
と制限されてしまうという事情がある。また、このよう
な抵抗加熱を用いた蒸着プロセスを用いているため、膜
界面での密着性が悪い。この結果、画素上にダークスポ
ットと呼ばれる非画像部が製造直後から生じたり、これ
が駆動に従い拡大し、これが素子寿命を律する要因とも
なっていた。
【0004】また、有機EL素子の陰電極は、例えば特
開平8−250284号公報に記載されているように、
スパッタ法を用いることも考えられる。しかし、このよ
うな従来の一般的なスパッタ成膜法は、平行平板型のタ
ーゲット−基板配置で、Ar等の不活性ガスを使用し、
スパッタガス圧0.1〜1.0Paの条件により行われ
る。しかしながら、蒸着プロセスと比較して、スパッタ
される原子や原子団は数10〜数100倍程度の高い運
動エネルギーを有する。このため、有機物から形成され
た発光層等に直接スパッタ成膜すると、高い運動エネル
ギーを持つスパッタされた粒子が、有機層にダメージを
与えることになる。より具体的には、高いエネルギーを
持つスパッタされた粒子が多数有機EL素子構造体に衝
突し、有機物からなる発光層等を物理的に破壊したり、
リークを誘発したりして、有機EL素子の初期発光特性
を大きく低下させてしまうという問題を生じていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、スパ
ッタ法を用いて有機EL素子の陰電極を成膜する際に、
スパッタされた粒子の持つ高い運動エネルギーを抑制
し、有機層への物理的ダメージの少ない有機EL素子の
製造装置、および有機EL素子を実現することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上のような目的は、以
下の(1)〜(7)の構成により達成される。 (1) DCスパッタ装置であって、有機EL素子の構
成膜を成膜する基板と、陰電極材料であるターゲットと
を有し、前記基板とターゲットそれぞれの中心を結ぶ線
が、前記ターゲットの中心位置から垂直方向に延ばした
直線に対して傾斜した位置に配置した有機EL素子の製
造装置。 (2) 前記基板とターゲットそれぞれの中心を結ぶ線
が、前記ターゲットの中心位置から垂直方向に延ばした
直線に対して30度以上の角度となる位置に配置した上
記(1)の有機EL素子の製造装置。 (3) 前記スパッタ装置のスパッタ時におけるバイア
ス電圧が、100〜300 Vである上記(1)または
(2)の有機EL素子の製造装置。 (4) 前記DCスパッタ装置はマグネトロンDCスパ
ッタ装置であって、ターゲット中心付近で表面から5mm
離れた位置での磁束密度が500〜2000Gauss であ
る上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL素子の製造
装置。 (5) 上記(1)〜(4)のいずれかの装置で成膜さ
れた陰電極を有する有機EL素子。 (6) 前記陰電極は仕事関数が4eV以下の金属または
合金である上記(5)の有機EL素子。 (7) 前記陰電極上に、さらに金属薄膜が積層された
上記(5)または(6)の有機EL素子。 (8) 前記金属薄膜は、Cu,Ag,Au,Ru,F
e,Ni,Pd,Pt,Ti,Ta,Cr,Mo,W,
Co,Rh,Ir,Zn,Al,GaおよびInのいず
れか1種または2種以上を含有する上記(6)の有機E
L素子。
【0007】
【作用】本発明の有機EL素子の製造装置により陰電極
が成膜された有機EL素子は、初期発光輝度が高く、輝
度の半減期も長い。また、電極間で電流リークが全く生
じず、初期のダークスポットも極めて少なく、かつ駆動
後の発生も少ない。前述のとおりダークスポットの発生
は蒸着法の最大の問題であったが、本発明によればこれ
が解消し、発光特性が格段に向上する。これは本発明に
従い、有機層へ物理的ダメージを与えることなく、平滑
かつ密着性のよい膜が成膜されたからであると考えられ
る。
【0008】スパッタ法を用いることにより、成膜され
た陰電極薄膜は、蒸着法の場合と比較してスパッタされ
た粒子が比較的高い運動エネルギーを有するため、表面
マイグレーション効果が働き、有機層界面での密着性が
向上する。またプレスパッタを行うことで、真空中でタ
ーゲット上の表面酸化物を除去したり、逆スパッタによ
り有機層界面に吸着した水分、酸素および炭化水素等の
不純物を除去できるので、クリーンな電極・有機層界面
や、電極を形成でき、その結果安定した有機EL素子が
できる。
【0009】一般的なスパッタ法は、基板がターゲット
のほぼ真上に平行配置され、それぞれ電極として400
V 前後の電圧が印加される。この時、両電極間でプラズ
マが発生し、DCスパッタの場合、陰極(スパッタター
ゲット側)にかけられるマイナスのバイアス電圧によ
り、ターゲットがスパッタリングされる。プラズマの放
電開始電圧は、ガス圧pと電極間隔dの積でであるp・
dの関数として与えられ、電極材料・ガスの種類によっ
てもいくらか異なることが知られている。
【0010】スパッタされ、ターゲットから飛び出した
粒子は、基板に到達し薄膜が形成される。基板をターゲ
ットに対して真上に配置すれば、最も効率よく薄膜を成
膜することができる。そのため、通常はこのような基板
・ターゲット配置をとっている。しかし、この時、スパ
ッタされた粒子の大部分は、抵抗加熱を用いた蒸着粒子
の数十〜数百倍程度の高いエネルギーを持って基板に対
し垂直に衝突し、そこにすでに成膜されている有機層等
を破壊してしまうことがある。
【0011】スパッタされた粒子のもつエネルギーを積
極的に利用すれば、密着性のよい膜が成膜できる利点が
あるが、高エネルギー粒子に弱く、ダメージを受けやす
い有機膜等が成膜された基板上に成膜する場合、逆に問
題を引き起こすことになる。特に有機EL素子では、ダ
ークスポットの発生や、電流リーク等素子の基本的特性
に与える影響が大きく、この現象を無視することはでき
ない。
【0012】上記のようなスパッタされた粒子のもつ高
い運動エネルギーによる物理的ダメージを防止するため
の方法として、例えば、薄膜作製応用ハンドブック
((株)エヌ・ティー・エス、1995年出版)に記載
されている超伝導薄膜の製造方法が知られている。この
方法では、スパッタされた粒子の高い運動エネルギーを
サーマリゼーション(thermalization)と呼ばれる効果
で、粒子が基板に到達する途中で散乱させ、運動エネル
ギーを十分小さくした上で、基板上に穏やかに堆積させ
(soft landing)、特性劣化を防いでいる。
【0013】しかし、上記方法は、22K以上の高Tc
の薄膜を作成する方法であって、スパッタされたNbと
Ge粒子、および反射したAr粒子がArガスと十分に
衝突を繰り返し、熱平衡に到達することが条件であり、
これをそのまま有機EL素子の成膜に応用するには条件
が異なり困難である。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。
【0015】本発明の有機EL素子の製造装置は、DC
スパッタ装置であって、有機EL素子の構成膜を成膜す
る基板と、陰電極材料であるターゲットとを有し、前記
基板をターゲットに対して、ターゲットから飛散するス
パッタされた粒子の平均的な運動方向を示すベクトルの
成分が、基板面に対して垂直な成分より平行な成分が多
くなる位置に配置したものである。スパッタされた粒子
の平均的な運動方向を示すベクトルの成分の内、基板面
に対して直角方向の成分より、基板面に対し平衡方向成
分が多いようにすることで、スパッタされた粒子が有機
層に物理的ダメージを与えにくくなる。
【0016】スパッタされた粒子の平均的な運動方向の
ベクトル成分を、直接求めることは困難であるが、基板
とターゲットの位置関係調整することにより、上記平行
方向ベクトル成分の多い粒子を極めて高い確率で存在さ
せることができ、垂直方向ベクトル成分の多い粒子は無
視することができる。すなわち、基板とターゲットそれ
ぞれの中心を結ぶ線が、前記ターゲットの中心位置から
垂直方向に延ばした直線に対して傾斜した位置に配置す
る。より好ましくは基板とターゲットそれぞれの中心
を結ぶ線が、前記ターゲットの中心位置から垂直方向に
延ばした直線に対して30度以上の角度となる位置に配
置する。ターゲットの中心位置から垂直方向に延ばし
た直線上に基板が存在しない位置に配置する。ターゲ
ットの面に対して基板面を30度以上、特に45度以上
であって85度以下傾斜させる等の方法が挙げられ。特
に好ましくは、上記の基板とターゲットの中心を結ぶ
線が、前記ターゲットの中心位置から垂直方向に延ばし
た直線に対して30度以上の角度となる位置に配置する
方法が好ましい。また、より好ましくはターゲットの中
心位置から垂直方向に延ばした直線に対して45度以上
となることが好ましく、その上限は特に規制されるもの
ではないが、成膜効率等を考慮すると60度以下の角度
となる位置に配置することが好ましい。
【0017】さらに上記の方法によれば、ターゲット
の真上には基板が存在しなくなるため、成膜時に発生す
るプラズマが、有機層表面を劣化させることも防止でき
る。すなわち、基板がターゲットの真上に存在する場合
にはプラズマに曝され、有機層がダメージを受ける確率
が極めて大きいが、基板の位置がターゲットの真上から
外れた位置にあれば、ある程度プラズマによるダメージ
も低減される。また、基板は、必ずしも電極を兼ねる必
要はなく、独立にバイアス電圧を印加する電極を設けて
もよい。
【0018】また、本発明では成膜時のプラズマの状態
を制御することにより、さらに有機層へのダメージを少
なくさせることができ好ましい。ここで、プラズマの状
態とは、具体的にはプラズマの密度と広がりをいう。
【0019】プラズマ状態は、通常、成膜条件を変える
他に、スパッタ陰極(ターゲット)の磁場強度、電極間
バイアス電圧、電極間電流等を変えることによってコン
トロールすることができるが、特に磁場強度および/ま
たはバイアス電圧を変えることによりコントロールする
ことが好ましい。
【0020】本発明のDCスパッタ装置は、好ましくは
マグネトロンDCスパッタ装置であることが好ましく、
磁場強度としては、ターゲット上の磁束密度Bが、好ま
しくはB=500〜2000Gauss 、特に800〜15
00Gauss 程度が好ましい。ターゲット上の磁束密度は
大きいほど好ましく、磁束密度を大きくして磁場強度を
強くすると、ターゲット付近に電子を閉じこめるような
電極構造をとることによって、プラズマ中のスパッタガ
スの陰極ターゲットに衝突するイオン数が増加し、プラ
ズマ密度が大きくなる。プラズマ密度が大きくなると、
プラズマ中で粒子同士の衝突頻度が増し、運動エネルギ
ーの一部が失われ、スパッタされた粒子が基板上に穏や
かに堆積することになる。ターゲット上に磁場を得る方
法としては、特に限定されるものではないが、ターゲッ
トの裏面側、特に冷却部内に磁石を配置することが好ま
しい。このような磁場を与える磁石として、例えば、F
e−Nd−B、Sm−Co、フェライト、アルニコ等が
挙げられ、中でもFe−Nd−B、Sm−Coが大きな
磁束密度が得られ好ましい。ターゲット上の磁界の方向
は、通常、ターゲットの外周側から上方に出た磁界が曲
げられ、中心部に収束するよう磁石が配置されることが
好ましい。
【0021】バイアス電圧としては、ターゲット−基板
(バイアス電極)間の電圧が、好ましくは100〜30
0V 、特に150〜250V の範囲が好ましい。バイア
ス電圧が高すぎると粒子の加速度が大きくなり、有機層
にダメージを与えやすくなる。また、バイアス電圧が低
すぎるとプラズマ放電を維持できなくなったり、プラズ
マ密度が低くなり、上記効果が得難くなる。
【0022】なお、磁場強度、バイアス電圧とも上記範
囲の中で、使用環境、装置の規模等に合わせて最適な値
に調整することが好ましい。
【0023】本発明では、陰電極の成膜を上記のような
条件で行う際、スパッタガスにAr、Kr、Xeのいず
れか、あるいはこれらの少なくとも1種以上のガスを含
む混合ガスを用いて電極を成膜することが好ましい。タ
ーゲット−基板間の距離(Ts)は特に限定されるもの
ではないが、スパッタ法で得られる薄膜の膜質は、Ts
・Pの積に依存するため、求める膜質となるよう上記条
件を定めればよい。
【0024】好ましくは、スパッタ時における基板ター
ゲット間距離Tsと成膜ガス圧力Pとの積Ts・Pが2
0〜65Pa・cmの範囲が好ましい。このような条件で
成膜を行うことにより、結晶が安定した状態で成膜を行
うことができ、結晶の異常粒成長が抑制され、陰電極界
面が上記表面粗さ内に保たれる。スパッタされた原子は
基板に到達する途中に運動エネルギーを失うが、その割
合は成膜ガス圧力と基板ターゲット間距離の両方に依存
する。従って、スパッタされた原子の運動エネルギーが
スパッタガスによる散乱で失われ、ちょうどゼロ付近に
なる上記成膜条件が良い。成膜ガス圧力と基板ターゲッ
ト間距離の積が20Pa・cm未満の場合、スパッタされ
た分子の運動エネルギーが大きく、膜内に圧縮応力が生
じやすくなって結晶粒子の異常成長が生じやすくなり、
また有機層に物理的ダメージを与えやすくなる。成膜ガ
スと基板ターゲット間距離の積が65Pa・cmを超える
と、成膜ガス自身が散乱し、基板上への逆スパッタが始
まり、成膜条件が安定せず、結晶の異常粒成長を起こし
やすくなり、有機EL発光素子の初期発光特性が減少す
る方向に向かう。
【0025】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用される不活性ガスや、反応性スパッタではこれに加え
てN2、H2、O2、C24、NH3等の反応性ガスが使用
可能であるが、好ましくはAr、Kr、Xeのいずれ
か、あるいはこれらの少なくとも1種以上のガスを含む
混合ガスを用いることが好ましい。これらは不活性ガス
であり、かつ、比較的原子量が大きいため好ましく、特
にAr、Kr、Xe単体が好ましい。Ar、Kr、Xe
ガスを用いることにより、スパッタされた原子が基板ま
で到達する途中、上記ガスと衝突を繰り返し、運動エネ
ルギーを減少させて、基板に到着する。この事からスパ
ッタされた原子の持つ運動エネルギーが有機EL構造体
に与える物理的ダメージが少なくなる。また、Ar、K
r、Xeの少なくとも1種以上のガスを含む混合ガスを
用いても良く、この様な混合ガスを用いる場合、Ar、
Kr、Xeの分圧の合計は50%以上として主スパッタ
ガスとして用いる。このようにAr、Kr、Xeの少な
くとも1種と任意のガスを組み合わせた混合ガスを用い
ることにより、本発明の効果を維持したまま、反応性ス
パッタを行うこともできる。
【0026】スパッタガスにAr、Kr、Xeのいずれ
かを主スパッタガスとして用いる場合、好ましくは上記
基板ターゲット間距離の積は、それぞれ、Arを用いた
場合:25〜55Pa・cm、特に30〜50Pa・cm、
Krを用いた場合:20〜50Pa・cm、特に25〜4
5Pa・cm、Xeを用いた場合:20〜50Pa・cm、
特に20〜40Pa・cmの範囲が好ましく、これらの条
件であればいずれかのスパッタガスを用いても好ましい
結果を得ることができるが、特にArを用いることが好
ましい。
【0027】スパッタ法としては有機EL素子構造体へ
のダメージを少なくするためにDCスパッタ法を用い
る。DCスパッタ装置の電力としては、好ましくは0.
1〜4W/cm2、特に0.5〜1W/cm2の範囲である。
また、成膜レートは5〜100nm/分、特に10〜50
nm/分の範囲が好ましい。
【0028】このようなスパッタ法にて成膜される電極
の構成材料としては、陰電極の場合、電子注入を効果的
に行う低仕事関数の物質が好ましく、例えば、K、L
i、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、A
l、Ag、In、Sn、Zn、Zr、Cs、Er、E
u、Ga、Hf、Nd、Rb、Sc、Sm、Ta、Y、
Yb等の金属元素単体、あるいは、BaO、BaS、C
aO、HfC、LaB6、MgO、MoC、NbC、P
bS、SrO、TaC、ThC、ThO2、ThS、T
iC、TiN、UC、UN、UO2、W2C、Y23、Z
rC、ZrN、ZrO2等の化合物を用いると良い。ま
たは安定性を向上させるためには、金属元素を含む2成
分、3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系と
しては、例えばAl・Ca(Ca:5〜20at%)、A
l・In(In:1〜10at%)、Al・Li(Li:
0.1〜20at%未満)、Al・R〔RはY,Scを含
む希土類元素を表す〕等のアルミニウム系合金やIn・
Mg(Mg:50〜80at%)等が好ましい。これらの
中でも、特にAl単体やAl・Li(Li:0.4〜
6.5(ただし6.5を含まず)at%)または(Li:
6.5〜14at%)、Al・R(R:0.1〜25、特
に0.5〜20at%)等のアルミニウム系合金が圧縮応
力が発生しにくく好ましい。したがって、スパッタター
ゲットとしては、通常このような陰電極構成金属、合金
を用いる。これらの仕事関数は4.0eV以下であり、特
に仕事関数が小さい金属、合金ほど電子を多く発光層に
注入できるので好ましい。
【0029】また、上記陰電極を製膜した後に、さらに
電気伝導度の良好な金属薄膜を積層してもよい。特に本
発明により成膜される陰電極薄膜は、材料により形成さ
れた後の膜密度が粗になる場合がある。その場合、外部
から水などが進入し易くなり、素子寿命に影響を与える
こととなる。そこで電気伝導度の良好な金属薄膜を積層
すると、素子の電極で電圧を低下させることなく、さら
に安定な素子を形成することができる。成膜される金属
としては、Cu,Ag,Au,Ru,Fe,Ni,P
d,Pt,Ti,Ta,Cr,Mo,W,Co,Rh,
Ir,Zn,Al,GaおよびIn等が挙げられ、これ
らの金属を任意の組成で混合して用いてもよい。また、
電気伝導度が金属と同等であれば、安定な化合物を用い
てもよい。安定な化合物としては、例えば、IrO2
MoO2 ,NbO,OsO2 ,ReO2 ,ReO3 ,R
uO2 等が挙げられる。
【0030】また、陰電極薄膜の厚さは、電子注入を十
分行える一定以上の厚さとすれば良く、20nm以上、好
ましくは50nm以上とすればよい。さらに陰電極上に積
層される金属薄膜の厚さは、電気抵抗を小さくすること
の可能な厚さとすればよく、50nm以上、好ましくは1
00nm以上とすればよい。また、陰電極と積層される金
属薄膜層を合わせた膜厚の上限値には特に制限はない
が、通常膜厚は100〜500nm程度とすればよい。
【0031】本発明の有機EL素子は、前述のような反
応性スパッタを利用して、保護膜として陰電極の構成材
料の酸化物、窒化物あるいは炭化物の1種以上を設けて
もよい。この場合、保護膜の原材料は、通常は陰電極材
料と同一組成とするが、それと組成比の異なるものであ
っても、あるいはその材料成分中の1種以上を欠くもの
であっても良い。このように、陰電極と同一材料等を用
いることにより、陰電極との連続成膜が可能となる。
【0032】このような酸化物のO量、窒化物のN量あ
るいは炭化物のC量は、この化学量論組成から偏倚して
いても良く、それらの組成の0.5〜2倍の範囲であれ
ばよい。
【0033】ターゲットとしては好ましくは陰電極と同
一材料の焼結体を用い、反応性ガスとしては、酸化物を
形成する場合、O2 、CO等が挙げられ、窒化物を形成
する場合、N2 、NH3 、NO、NO2 、N2 O等が挙
げられ、炭化物を形成する場合、CH4 、C2 2 、C
2 4 等が挙げられる。これらの反応性ガスは単独で用
いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0034】保護膜の厚さは、水分や酸素あるいは有機
溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さとすればよ
く、好ましくは50nm以上、さらに100nm以上、特に
100〜1000nmの範囲が好ましい。
【0035】陰電極と保護膜とを併せた全体の厚さとし
ては、特に制限はないが、通常100〜1000nm程度
とすればよい。
【0036】このような保護膜を設けることにより、陰
電極の酸化等がさらに防止され、有機EL素子を長期間
安定に駆動することができる。
【0037】本発明で製造される有機EL発光素子は、
基板上に陽電極と、その上に陰電極を有し、これらの電
極に挟まれて、それぞれ少なくとも1層の電荷輸送層お
よび発光層を有し、さらに最上層として金属薄膜ないし
保護膜を有する。なお、電荷輸送層は省略可能である。
そして、陰電極は、前述のとおり、スパッタ法で成膜さ
れる仕事関数の小さい金属、化合物または合金で構成さ
れ、陽電極は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜
鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、ZnO、Sn
2、In23等をスパッタ法で成膜した構成からな
る。
【0038】本発明により製造される有機EL発光素子
の構成例を図1に示す。図1に示されるEL素子は、基
板21上に、陽電極22、正孔注入・輸送層23、発光
および電子注入輸送層24、陰電極25、金属薄膜ない
し保護膜26を順次有する。
【0039】本発明の有機EL素子は、図示例に限ら
ず、種々の構成とすることができ、例えば発光層を単独
で設け、この発光層と陰電極との間に電子注入輸送層を
介在させた構造とすることもできる。また、必要に応
じ、正孔注入・輸送層23と発光層とを混合しても良
い。
【0040】陰電極は前述のように成膜し、発光層等の
有機物層は真空蒸着等により、陽電極は蒸着やスパッタ
等により成膜することができるが、これらの膜のそれぞ
れは、必要に応じてマスク蒸着または膜形成後にエッチ
ングなどの方法によってパターニングでき、これによっ
て、所望の発光パターンを得ることができる。さらに
は、基板が薄膜トランジスタ(TFT)であって、その
パターンに応じて各膜を形成することでそのまま表示お
よび駆動パターンとすることもできる。
【0041】電極成膜後に、前記保護膜あるいは/およ
びAl等の金属材料、SiOX 等の無機材料、テフロン
等の有機材料等を用いた他の保護層を形成すればよい。
この保護膜は、基板側から発光した光を取り出す構成で
は透明でも不透明であってもよい。
【0042】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために素子上に封止層を形成することが好ましい。封止
層は、湿気の侵入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化
性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架
橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着
性樹脂層を用いて、ガラス板等の封止板を接着し密封す
る。ガラス板以外にも金属板、プラスチック板等を用い
ることもできる。
【0043】次に、本発明のEL素子に設けられる有機
物質層について述べる。
【0044】発光層は、正孔(ホール)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により
励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的電
子的にニュートラルな化合物を用いることが好ましい。
【0045】電荷輸送層は、陽電極からの正孔の注入を
容易にする機能、正孔を輸送する機能および電子を妨げ
る機能を有し、正孔注入輸送層とも称される。
【0046】このほか、必要に応じ、例えば発光層に用
いる化合物の電子注入輸送機能がさほど高くないときな
ど、前述のように、発光層と陰電極との間に、陰電極か
らの電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能
および正孔を妨げる機能を有する電子注入輸送層を設け
てもよい。
【0047】正孔注入輸送層および電子注入輸送層は、
発光層へ注入される正孔や電子を増大・閉じ込めさせ、
再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0048】なお、正孔注入輸送層および電子注入輸送
層は、それぞれにおいて、注入機能を持つ層と輸送機能
を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0049】発光層の厚さ、正孔注入輸送層の厚さおよ
び電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法に
よっても異なるが、通常、5〜500nm程度、特に10
〜300nmとすることが好ましい。
【0050】正孔注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送
層の厚さは、再結合・発光領域の設定にもよるが、発光
層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすれ
ばよい。電子もしくは正孔の、各々の注入層と輸送層を
分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は20nm以上
とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さ
の上限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で50
0nm程度である。このような膜厚については注入輸送層
を2層設けるときも同じである。
【0051】また、組み合せる発光層や電子注入輸送層
や正孔注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度(イ
オン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮
しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域
・発光領域を自由に設計することが可能であり、発光色
の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペ
クトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にでき
る。
【0052】本発明のEL素子の発光層には発光機能を
有する化合物である蛍光性物質を含有させる。この蛍光
性物質としては、例えば、特開昭63−264692号
公報等に開示されているようなトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム〔Alq3〕等の金属錯体色素が挙げ
られる。この他、これに加え、あるいは単体で、キナク
リドン、クマリン、ルブレン、スチリル系色素、その他
テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ベリレン、
コロネン、12−フタロベリノン誘導体等を用いること
もできる。発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであっ
てもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これら
の蛍光性物質を蒸着すればよい。
【0053】また、必要に応じて設けられる電子注入輸
送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等
の有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ベリレン誘
導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘
導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、
ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。
上述のように、電子注入輸送層は発光層を兼ね備えたも
のであってもよく、このような場合はトリス(8−キノ
リノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。
電子注入輸送層の形成も発光層と同様に蒸着等によれば
よい。
【0054】なお、電子注入輸送層を電子注入層と電子
輸送層とに分けて積層する場合は、電子注入輸送層用の
化合物の中から好ましい組合せを選択して用いることが
できる。このとき、陰電極側から電子親和力の値の大き
い化合物の層の順に積層することが好ましい。このよう
な積層順については電子注入輸送層を2層以上設けると
きも同様である。
【0055】また、正孔注入輸送層には、例えば、特開
昭63−295695号公報、特開平2−191694
号公報、特開平3−792号公報、特開平5−2346
81号公報、特開平5−239455号公報、特開平5
−299174号公報、特開平7−126225号公
報、特開平7−126226号公報、特開平8−100
172号公報、EP0650955A1等に記載されて
いる各種有機化合物を用いることができる。例えば、テ
トラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミン
ないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級ア
ミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有する
オキサジアジール誘導体、ポリチオフェン等である。こ
れらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用すると
きは別層にして積層したり、混合したりすればよい。
【0056】正孔注入輸送層を正孔注入層と正孔輸送層
とに分けて積層する場合は、正孔注入輸送層用の化合物
のなかから好ましい組合せを選択して用いることができ
る。このとき、陽電極(ITO等)側からイオン化ポテ
ンシャルの小さい化合物の層の順に積層することが好ま
しい。また陽電極表面には薄膜性の良好な化合物を用い
ることが好ましい。このような積層順については、正孔
注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。このよ
うな積層順にすることによって、駆動電圧が低下し、電
流リークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐこ
とができる。また、素子化する場合、蒸着を用いている
ので1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフ
リーとすることができるため、正孔注入層にイオン化ポ
テンシャルが小さく、可視部に吸収をもつような化合物
を用いても、発光色の色調変化や再吸収による効率の低
下を防ぐことができる。
【0057】正孔注入輸送層は、発光層等と同様に上記
の化合物を蒸着すればよい。
【0058】本発明において、陽電極として用いられる
透明電極は、好ましくは発光した光の透過率が80%以
上となるように陽電極の材料および厚さを決定すること
が好ましい。具体的には、例えば、錫ドープ酸化インジ
ウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZ
O)、ZnO、SnO2、In23などを陽電極に用い
ることが好ましい。また、陽電極の厚さは10〜500
nm程度とすることが好ましい。素子の信頼性を向上させ
るために駆動電圧が低いことが必要であるが、好ましい
ものとして、10〜30Ω/□(膜厚50〜300nm)
のITOが挙げられる。実際に使用する場合には、IT
O等の陽電極界面での反射による干渉効果が、光取り出
し効率や色純度を十分に満足するように、電極の膜厚や
光学定数を設定すればよい。
【0059】ディスプレイのような大きなデバイスにお
いては、ITO等の陽電極の抵抗が大きく、電圧降下が
起きるので、Alなどのメタル配線をしてもよい。
【0060】基板材料としては、上記のようなものが用
いられるが、基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む
色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコン
トロールしてもよい。また、前記逆積層の場合には、基
板は透明でも不透明であってもよく、不透明である場合
にはセラミックス等を使用してもよい。
【0061】カラーフィルター膜には、液晶ディスプレ
イ等で用いられているカラーフィルターを用いれば良い
が、有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルター
の特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すれば
よい。
【0062】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0063】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0064】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0065】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含
む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物
・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系
化合物等を用いればよい。
【0066】バインダーは基本的に蛍光を消光しないよ
うな材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等
で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。
また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料
が好ましい。
【0067】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0068】正孔注入輸送層、発光層および電子注入輸
送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空
蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場
合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下
の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超え
ていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高く
しなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下
する。
【0069】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりするこ
とができる。
【0070】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0071】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパル
ス駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜2
0V程度とされる。
【0072】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】〈実施例1〉ガラス基板上に透明電極とし
て厚さ200nmのITOをスパッタ法にて形成した後パ
ターニングし、中性洗剤、アセトン、エタノールを用い
て超音波洗浄し、次いで煮沸エタノール中から引き上げ
乾燥した。この透明電極表面をUV/O3洗浄した後、
真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×1
-4Pa以下まで減圧した。
【0074】次いで減圧状態を保ったまま、N,N’−
ジフェニル−m−トリル−4,4’−ジアミン−1,
1’−ビフェニル(TPD)を蒸着速度0.2nm/secで
55nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0075】さらに、減圧を保ったまま、Alq3:ト
リス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.
2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発
光層とした。
【0076】次いで、真空蒸着装置からスパッタ装置に
移し、基板とターゲットそれぞれの中心を結ぶ線が、前
記ターゲットの中心位置から垂直方向に延ばした直線に
対して45度の角度となるようにセットした。
【0077】次いで、DCスパッタ法にてAl・Sm
(Sm:10at%)をターゲットとして陰電極を100
nmの厚さに成膜した。このときのスパッタガスにはAr
を用い、ガス圧1.0Pa、ターゲットと基板間距離
(Ts)9.0cm、投入電力は100Wとした。このと
きのターゲット上の磁束密度は、200Gaussであっ
た。
【0078】最後にSiO2を200nmの厚さにスパッ
タして保護層として、有機EL素子を得た。この有機E
L素子は、それぞれ2本ずつの平行ストライプ状陰電極
と、8本の平行ストライプ状陽電極を互いに直交させ、
2×2mm縦横の素子単体(画素)を互いに2mmの間隔で
配置し、8×2の16画素の素子としたものである。
【0079】この有機薄膜素子にN2雰囲気で直流電圧
を印加し、10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させ
た。初期には、9V、350cd/m2の緑色(発光極大波
長λmax=520nm)の発光が確認できた。輝度の半減
時間は800時間で、その間の駆動電圧の上昇は2Vで
あった。
【0080】得られた有機EL素子について、160画
素(10素子分)の初期発光輝度を調べ、その平均輝
度、ダークスポットの発生の有無(発光開始から200
時間経過後)について表1に示した。ダークスポットの
発生の有無については、以下の基準により評価した。 ◎:ダークスポット全くなし ○:発光面の10mm角領域に2個以下確認できる。 ×:発光面の10mm角領域に3個以上確認できる。
【0081】〈実施例2〉実施例1の有機EL素子の形
成において、基板の位置を、基板とターゲットそれぞれ
の中心を結ぶ線が、前記ターゲットの中心位置から垂直
方向に延ばした直線に対して60度の角度となるように
した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し
た。得られた有機EL素子について実施例1と同様にし
て評価した。その結果を表1に示す。
【0082】実施例1と比較して発光輝度が僅かに低下
しているものの、実用上十分な値が得られた。発光輝度
の低下は、基板の位置を変えたことで、成膜レートが2
/3程度に低下し、同一膜厚を得るのに時間がかかり、
成膜中に発生する熱などにより、有機層が影響を受けた
ものと考えられる。
【0083】〈実施例3〉実施例1の有機EL素子の形
成において、スパッタターゲットの下に配置されている
マグネットをフェライト系からSm・Co系にマグネッ
トを代えた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作
製した。ターゲット上での磁束密度を測定したところ1
000Gauss であり、フェライト系の200Gauss の5
倍になっていた。得られた有機EL素子について実施例
1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0084】実施例1と比較して、200時間経過後の
ダークスポットの発生結果は同様の結果だったが、発光
輝度、輝度半減期共に僅かに改善されていた。これはタ
ーゲット上の磁場強度が増大し、成膜中のプラズマ密度
が高くなったためと考えられる。つまり、同一の成膜ガ
ス圧力でも、プラズマ密度が高いとスパッタされた粒子
が基板に到達するまでに散乱され、運動エネルギーを失
い、有機層への物理的ダメージが減少したためと考えら
れる。
【0085】〈実施例4〉実施例1の有機EL素子の形
成において、バイアス電圧を430V から220V に変
化させた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製
した。得られた有機EL素子について実施例1と同様に
して評価した。その結果を表1に示す。
【0086】実施例1と比較して、200時間経過後の
ダークスポットの発生結果、発光輝度、輝度半減期共に
僅かに改善されていた。これはバイアス電圧が減少し、
スパッタされた粒子の基板面へ垂直方向の運動エネルギ
ーが減少し、有機層への物理的ダメージが減少したため
と考えられる。
【0087】〈実施例5〉実施例1〜4の有機EL素子
の形成において、ターゲットとしてAl・Smの代わり
に、Al・In(In:5at%)、Al・Ca(Ca:
10at%)、Al・Li(Li:5at%)を用いて有
機EL素子を作製した。
【0088】得られた有機EL素子について実施例1と
同様にして評価したところ、それぞれの有機EL素子に
ついて、実施例1〜4とほぼ同様の傾向を示し、最適な
成膜条件を得ることができた。
【0089】〈実施例6〉実施例1の有機EL素子の形
成において、陰電極成膜後、ターゲットをCu,Ag,
Au,Ru,Fe,Ni,Pd,Pt,Ti,Ta,C
r,Mo,W,Co,Rh,Ir,Al,GaおよびI
nに代えて、それぞれ金属薄膜を製膜した他は実施例1
と同様にして有機EL素子をそれぞれ作製した。得られ
た各有機EL素子について実施例1と同様にして評価し
たところほぼ同様の結果が得られた。
【0090】〈比較例1〉実施例1の有機EL発光素子
の形成において、基板の位置を、基板とターゲットそれ
ぞれの中心を結ぶ線が、前記ターゲットの中心位置から
垂直方向に延ばした直線に対して0度の角度、つまり、
基板がターゲットの真上となるようセットした他は同様
にして有機EL素子を成膜した。得られた有機EL素子
について実施例1と同様にして評価した。結果を表1に
示す。
【0091】初期発光輝度の平均値、発光半減期ともに
減少していた。また、ダークスポットの発生が顕著で、
電極間の電流リーク個数も非常に多く、発光特性を評価
できない画素が多数存在した。これは、スパッタされた
エネルギーの高い粒子で有機層表面が物理的にダメージ
を受けているためと考えられる。また、エネルギーの高
い粒子により異常粒成長して突起を発生させ、電極間の
電流リークを引き起こしているものと考えられる。
【0092】
【表1】
【0093】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、スパッタ
法を用いて有機EL素子の陰電極を成膜する際に、スパ
ッタされた粒子の持つ高い運動エネルギーを抑制し、有
機層への物理的ダメージの少ない有機EL素子の製造装
置、およびダークスポットの発生がなく、長寿命で発光
特性の良好な有機EL素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
21 基板 22 陽電極 23 正孔注入・輸送層 24 発光層 25 陰電極 26 保護層

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 DCスパッタ装置であって、有機EL素
    子の構成膜を成膜する基板と、陰電極材料であるターゲ
    ットとを有し、 前記基板とターゲットそれぞれの中心を結ぶ線が、前記
    ターゲットの中心位置から垂直方向に延ばした直線に対
    して傾斜した位置に配置した有機EL素子の製造装置。
  2. 【請求項2】 前記基板とターゲットそれぞれの中心を
    結ぶ線が、前記ターゲットの中心位置から垂直方向に延
    ばした直線に対して30度以上の角度となる位置に配置
    した請求項1の有機EL素子の製造装置。
  3. 【請求項3】 前記スパッタ装置のスパッタ時における
    バイアス電圧が、100〜300 Vである請求項1また
    は2の有機EL素子の製造装置。
  4. 【請求項4】 前記DCスパッタ装置はマグネトロンD
    Cスパッタ装置であって、 ターゲット中心付近で表面から5mm離れた位置での磁束
    密度が500〜2000Gauss である請求項1〜3のい
    ずれかの有機EL素子の製造装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの装置で成膜さ
    れた陰電極を有する有機EL素子。
  6. 【請求項6】 前記陰電極は仕事関数が4eV以下の金属
    または合金である請求項5の有機EL素子。
  7. 【請求項7】 前記陰電極上に、さらに金属薄膜が積層
    された請求項5または6の有機EL素子。
  8. 【請求項8】 前記金属薄膜は、Cu,Ag,Au,R
    u,Fe,Ni,Pd,Pt,Ti,Ta,Cr,M
    o,W,Co,Rh,Ir,Zn,Al,GaおよびI
    nのいずれか1種または2種以上を含有する請求項6の
    有機EL素子。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002289360A (ja) * 2001-03-27 2002-10-04 Univ Toyama 有機電界発光素子
JP2006206424A (ja) * 2004-12-27 2006-08-10 Central Glass Co Ltd Ag膜の成膜方法および低放射ガラス
JP2010533087A (ja) * 2007-07-12 2010-10-21 ヴィテックス・システムズ・インコーポレーテッド 多層バリアスタック及び多層バリアスタックの製造法

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