JPH102855A - 積層構造体の層厚および屈折率の測定方法およびその測定装置 - Google Patents

積層構造体の層厚および屈折率の測定方法およびその測定装置

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JPH102855A
JPH102855A JP8155828A JP15582896A JPH102855A JP H102855 A JPH102855 A JP H102855A JP 8155828 A JP8155828 A JP 8155828A JP 15582896 A JP15582896 A JP 15582896A JP H102855 A JPH102855 A JP H102855A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 積層構造体の任意のm層の層厚および屈折率
を容易かつ確実に測定する。 【解決手段】 点光源11からコリメータレンズ12、
ビームスプリッター13および対物レンズ14を介して
積層構造体からなる試料15に光を投光する。試料15
からの反射光がビームスプリッター13から検出器18
に入り、共焦点信号が得られる。ビームスプリッター1
3から参照鏡16を経て検出器18へ入る参照光と反射
光とにより干渉信号が得られる。共焦点信号と干渉信号
に基づいて、試料15および参照鏡16を移動させ、試
料15と参照鏡16の変位量に基づいて層厚および屈折
率を求める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層構造体からなる
試料から各層の層厚と屈折率を求める層厚および屈折率
の測定方法およびその測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から薄膜や光ガラス等の透明試料の
光学的厚さを測定するため、低コヒーレンス干渉法が用
いられている。低コヒーレンス干渉法は、干渉計におい
て白色光や発光ダイオードのような可干渉性の低い光源
を用いることにより、干渉計の両腕の光路差が0近傍の
みに干渉縞が現れることを利用して、その時の参照鏡の
位置から測定物体の絶対的な位置を知る方法である。こ
れはブロックゲージの絶対測長や基線の校正、表面形状
測定等に応用されている。さらに、近年では、これを拡
張した手法が、眼科学や生体科学の分野で盛んに研究さ
れている。
【0003】他方、レーザー光を試料にスポット照射
し、そこからの反射光または蛍光等を点検出器に再結像
させる方式の共焦点レーザー顕微鏡が知られている。
【0004】この共焦点顕微鏡は従来の光学顕微鏡と比
べて高コントラスト画像が得られるだけでなく、光軸方
向にも高い分解能をもち3次元像の構築ができるために
表面形状測定や生体試料観測の手法として定着してい
る。
【0005】またこの共焦点顕微鏡の光軸方向の分解能
を利用することにより透明な積層構造体試料の各層の光
学的厚さの測定を行なうことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、共焦点原理に
より直接に求まる量は光学的厚さであり、幾何学的厚さ
を求めるためには、各層の屈折率を別の手法により求め
なければならない。このような問題点は上述した低コヒ
ーレンス干渉法における厚さ測定でも同様に生じる。と
ころが、成形された積層構造体試料の各層の屈折率を試
料の破壊なしに測定する手法はみあたらない。
【0007】本発明はこのような点を考慮してなされた
ものであり、容易かつ確実に積層構造体の各層の層厚お
よび屈折率を求めることができる積層構造体の層厚およ
び屈折率の測定方法およびその測定装置を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
積層構造体に対して光を投光する点光源と、点光源と積
層構造体との間に順次配置されたビームスプリッターお
よび対物レンズと、点光源と積層構造体とを結ぶ直線と
交差するとともにビームスプリッターを通る直線上にお
いて、ビームスプリッターの一側に配置された参照鏡
と、ビームスプリッターの他側に配置された検出器とを
備え、積層構造体および参照鏡は各々可動となってお
り、検出器から得られる共焦点信号と干渉信号に基づい
て、積層構造体の第m層の一方の界面が対物レンズの第
1合焦点位置にきたときの干渉信号が最大となる場合
と、他方の界面が対物レンズの第2合焦点位置にきたと
きの干渉信号が最大となる場合における、積層構造体の
変位量と参照鏡の変位量により第m層の層厚および屈折
率を測定する演算手段を設けたことを特徴とする積層構
造体の層厚および屈折率の測定装置である。
【0009】請求項2記載の発明は、積層構造体に対し
て光を投光する点光源と、点光源と積層構造体との間に
順次配置されたビームスプリッターおよび対物レンズ
と、点光源と積層構造体とを結ぶ直線と交差するととも
にビームスプリッターを通る直線上において、ビームス
プリッターの一側に配置された参照鏡と、ビームスプリ
ッターの他側に配置された検出器とからなり、積層構造
体および参照鏡を可動させた測定装置を用いた積層構造
体の層厚および屈折率の測定方法において、点光源から
ビームスプリッターおよび対物レンズを介して積層構造
体に光を投入した際、積層構造体からビームスプリッタ
ーを介して検出器へ入力される反射光から得られる共焦
点信号と、この反射光とビームスプリッターから参照鏡
を経て検出器へ入力される参照光から得られる干渉信号
に基づいて、積層構造体の第m層の一方の界面を対物レ
ンズの第1合焦点位置までもってくるとともに、干渉信
号が最大となるよう参照鏡を第1参照鏡位置に配置する
工程と、検出器へ入力される共焦点信号と干渉信号とに
基づいて、積層構造体の第m層の他方の界面を対物レン
ズの第2合焦点位置までもってくるとともに、干渉信号
が最大となるよう参照鏡を第2参照鏡位置に配置する工
程と、第1合焦点位置と第2合焦点位置との間の積層構
造体の変位量と、第1参照鏡位置と第2参照鏡位置との
間の参照鏡の変位量に基づいて、第m層の層厚および屈
折率を測定する工程と、を備えたことを特徴とする積層
構造体の層厚および屈折率の測定方法である。
【0010】本発明によれば、検出器へ入力される反射
光から得られる共焦点信号と、反射光と参照光から得ら
れる干渉信号に基づいて、積層構造体および参照鏡を各
々第1合焦点位置および第1参照鏡位置から第2合焦点
位置および第2参照鏡位置まで移動させる。この際の積
層構造体および参照鏡の変位量に基づいて、第m層の層
厚および屈折率を測定する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。図1乃至図12は本発明の
実施の形態を示す図である。
【0012】まず図1乃至図3により本発明の基本的原
理について述べる。
【0013】図1(a)(b)(c)において、積層構
造体の層厚および屈折率の測定装置10は、積層構造体
からなる試料15に対してピンホール11aから光を投
光する低コヒーレンス光源(点光源)11と、点光源1
1と試料15との間に順次配置されたコリメータレンズ
12、ビームスプリッター13および対物レンズ14と
を備えている。
【0014】また、点光源11と試料15とを結ぶ直線
1 に交差するとともにビームスプリッター13を通る
直線L2 上において、ビームスプリッター13の一側に
参照鏡16が設けられ、ビームスプリッター13の他側
に集光レンズ17およびピンホール18aを有する検出
器18が順次設けられている。
【0015】図1(a)に示す光学系は、マイケルソン
干渉計に共焦点系が組み込まれたものである。すなわち
光源には点光源11を用い、試料15側に対物レンズ1
4を設け、試料15上に光をフォーカスさせている。ま
た、検出器18では集光レンズ17でピンホール18a
上に集光し、その透過光を検出することによって検出し
ている。これら点光源11、対物レンズ14、検出器1
8によって共焦点系を構成している。また、波長幅の広
い光源11を用いることによって低コヒーレンス干渉計
を成している。
【0016】図1(a)において、透明な積層構造体か
らなる試料15を測定することを考える。まず、参照鏡
16を遮断して参照光路を遮ると、この光学系は共焦点
系として機能する。このとき点光源11から光がコリメ
ータレンズ12、ビームスプリッター13および対物レ
ンズ14を経て試料15に達し、試料15からの反射光
が対物レンズ14、ビームスプリッター13および集光
レンズ17を経て検出器18に達する。反射光は検出器
18において検出され共焦点信号が得られる。
【0017】次に試料15を対物レンズ14に近づけて
いくと、試料15の界面がちょうど対物レンズ14の合
焦点位置に来たときに検出器18の出力はピーク値をと
る。さらに試料15を近づけていくと、次々に光が界面
にフォーカスしていきピーク信号(図2のZ軸上の信
号)が得られる。図2のZ軸上のピーク信号を見ること
により界面にフォーカスしていることがわかる。
【0018】ここで、例えば試料15の対物レンズ14
に最も近い表面から数えて任意のm番目の界面、すなわ
ち、(m−1)層とm層の界面に光をフォーカスさせる
(図1(b))。この場合、m番目の界面は対物レンズ
14の第1合焦点位置にある。試料15をこの位置に固
定し、参照鏡16の遮断を解除すると、試料15から対
物レンズ14、ビームスプリッター13および集光レン
ズ17を経て検出器18に達する反射光と、点光源11
からコリメータレンズ12、ビームスプリッター13お
よび参照鏡16を経て検出器18に達する参照光とから
干渉信号(図2のl方向の信号)が得られる。ここで、
干渉信号振幅が最大となる第1参照鏡位置に参照鏡16
を移動させる。このとき、干渉計の両腕の光路差はゼロ
となっている。
【0019】次に、試料15を対物レンズ14にΔZm
だけ近づけ、(m+1)番目の界面に光をフォーカスさ
せる(図1(c))。この場合、(m+1)番目の界面
は対物レンズ14の第2合焦点位置にある。また、この
とき参照鏡16は動かしていないので、等光路長条件は
崩れてしまう。そこで、光路差が再びゼロとなるように
第2参照鏡位置まで参照鏡16を動かす。このときの移
動距離をΔlm とする。
【0020】この一連の動作は、m層目の光学的な厚み
に関して異なる2つの原理、すなわち、一つは共焦点光
学系、もう一つは低コヒーレンス干渉法によって二重に
検出したことに相当する。これにより、光路長、すなわ
ち屈折率×厚さに対して2つの式が立てられるので、そ
れらを解くことによって屈折率と厚さをそれぞれ独立に
求めることができる。以下に、これらの式を導出する。
【0021】まず、共焦点光学系によってフォーカス位
置がm番目の界面から次の(m+1)番目の界面に移動
するときを考える(図3)。ただし、図3では、式の導
出を簡単にするために対物レンズ14の方を動かしたよ
うに描いてある。フォーカス位置が隣の界面に移動する
ときに、周辺光線と各界面の交点がすべて一様に光軸か
ら遠ざかる方向へ平行移動することがわかる。このシフ
ト量をpとする。レンズの周辺光線の第1層への入射角
をθ0 、第m番目の界面での屈折角をθm とすると、図
3よりそれぞれ次式が成り立つことがわかる。
【0022】 tanθ0 =p/ΔZm (1) tanθm =p/dm (2) ここで、dm は第m層の幾何学的な厚みである。これら
の式よりpを消去すると、 dm tanθm =ΔZm tanθ0 (3) となる。また、各界面での周辺光線の屈折において、ス
ネルの法則が成り立つので、 nm sinθm =n0 ・sinθ0 =N.A.(m=1,2…m,…) (4) である。ここで、N.A.は対物レンズの開口数であ
る。
【0023】次に低コヒーレンス干渉法による等光路長
条件を考える。試料の移動によりはじめの等光路長条件
が一度破れ、次の条件を満たすために必要となる参照鏡
の移動距離Δlm は、試料が対物レンズに近づくことに
よる空気部分の光路長の減少分ΔZm と、m層目を通る
ときの光路長の増加分nm xdm の和に等しい。すなわ
ち、 Δlm =nm m −ΔZm (5) である。
【0024】(3)〜(5)式を連立させて解くことに
よって、第m層の幾何学的な厚みdm および屈折率nm
が次式のように分離されて求まる。
【0025】
【数1】 さらに、これらの手続きを試料の各層に対して、順に実
行していくことにより、各層の幾何学的厚みと屈折率が
独立に求められる。
【0026】
【実施例】次に具体的実施例について述べる。
【0027】レーザーダイオードの特性 本実験では点光源11として、レーザーダイオード(T
OSHIBA、TOLD−9150、しきい値電流52
mA)をしきい値以下で駆動することにより発光ダイオ
ード(LED)として用いた。こうすることにより点光
源11より発する光のスペクトルは広がりを持つので、
低コヒーレンス光源として機能する。また、点光源11
の発光領域は微小であるので、ピンホール11aなしで
点光源とみなせる。ここでは、点光源11の特性とし
て、スペクトルおよびコヒーレンス長の測定を行った結
果について述べる。
【0028】スペクトルの測定 スペクトル・アナライザ(ADVANTEST Q83
44A OPTICAL SPECTRUM ANAL
YZER)を用いて点光源11のスペクトルの注入電流
依存性を調べた。一例として図4に注入電流が30mA
の時のスペクトルを示す。これより、中心波長およびス
ペクトル半値全幅は、それぞれ690.5nm、15.
3nmであることがわかる。また、このときの発光強度
は、50μWであった。スペクトルの測定結果より、中
心波長およびスペクトル半値全幅の注入電流依存性を求
めたものを図5に示す。これより、注入電流を上げるに
つれて中心波長は次第に短波長側にシフトしていき、し
きい値電流をこえるとレーザー発振し階段状に長波長側
へ移行(モードホップ)することがわかる。また、スペ
クトル幅は、注入電流を上げるにつれて次第に狭くな
り、しきい値近傍で急激に狭くなり、レーザー発振する
とほぼ一定値をとることがわかる。
【0029】コヒーレンス長の測定 次に、図6に示すようなマイケルソン干渉計を用い、平
面鏡16aを光軸方向に動かすことによりコヒーレンス
長の測定を行った。図6において、点光源11は駆動部
20により駆動され、また平面鏡16aはステッピング
モーター駆動の一次元直進ステージ28上に載せられて
おり、制御部21によって駆動される。検出器18は制
御部21に接続されたパーソナルコンピュータ22に接
続されている。
【0030】測定例として、注入電流が30mAの時の
インターフェログラムを図7(a)に示す。このときの
平面鏡16aの移動ピッチは0.1μmである。これよ
り半値全幅、すなわちコヒーレンス長は6.9μmであ
る。さらに、しきい値以下で注入電流を変えることによ
って同様な測定を行い、コヒーレンス長の注入電流依存
性を調べたものを図7(b)に示す。これによると駆動
電流が35mAまで、コヒーレンス長はほとんど変わら
ず、しきい値電流付近で急激にコヒーレンス長が長くな
ることがわかる。
【0031】本実験では、光源であるレーザーダイオー
ドの強度およびコヒーレンス長を考慮して、駆動電流を
30mAに設定して後の実験を行った。
【0032】厚さ・屈折率の同時測定 実験光学系 図8に実験光学系の概略を示す。レーザーダイオードか
らなる点光源11から出射した光をコリメータレンズ1
2を用いて平行光にする。ビームスプリッター13を透
過した光は、試料15側に挿入されている金属対物レン
ズ14(OLYMPUS MDPlan,x10,実効
的なN.A.=0.21,W.D.=7mm)を通して
試料15を照明する。また、ビームスプリッター13に
よって反射した光は参照光として用いる。検出側では、
集光レンズ17によってピンホール18a(直径10μ
mφ)上に光を集光し、その透過光を光電子増倍管(浜
松ホトニクス、光センサモジュールH5783−01)
からなる検出器18によって検出する。この信号は、オ
シロスコープ27でモニターするとともに、図示しない
ADボートを介してパーソナルコンピュータ22に取り
込んでいる。試料15および参照鏡16はステッピング
モーター駆動の一次元直進ステージ27,28上に夫々
載せられており、これらステージ27,28はパーソナ
ルコンピュータ22から図示しないPIOボードを介し
て制御部21にパルス信号列を送ることにより、それぞ
れ1μm、0.1μmピッチで移動可能である。また、
参照光路中にはシャッター25と可変絞り26が挿入さ
れている。この絞り26によってビーム径を制限するこ
とにより参照光強度を調節できる。
【0033】点光源11のレーザーダイオードは光学系
の調整時にはレーザー発振させて用い、測定時には注入
電流をしきい値電流以下に落とし、発光ダイオードとし
て点灯させた。
【0034】実験方法 実験は次のように行った。まず、試料15が対物レンズ
14に接触するのを避けるために、一度試料15を十分
に対物レンズ14に近づけておき、次に試料15を対物
レンズ14から遠ざかる方向へ走査する。このとき参照
光はシャッター25を閉じて遮っている。
【0035】得られた共焦点信号から平滑化微分を用い
てピーク位置を求める。このピーク位置のデータをもと
に、まず、試料15を対物レンズ14に一番近い面にフ
ォーカスするように、移動させる。次にシャッター25
を開き、検出器18の光電子増倍管のゲインを適当に調
節し、参照鏡16をビームスプリッター13から遠ざか
る方向へ走査していく。この走査が終わると、試料15
および参照鏡16とも、それぞれ、元の位置に戻してか
ら前述したピーク位置のデータをもとにフォーカス位置
が次の界面になるように試料15を移動させ、そしてま
た参照鏡16を走査する。同様な操作を試料15の界面
の数だけ繰り返していく。試料15および参照鏡16を
一度原点に戻すことにより、走査時間は余計にかかる
が、一次元ステージ27,28のバックラッシュの影響
は低減される。
【0036】信号の解析では、共焦点信号のピーク位置
の検出はオンラインで行い、インターフェログラムの解
析には、データをワークステーションに転送した後解析
を行った。
【0037】共焦点系の深度応答およびインターフェロ
グラム 光学系が共焦点系および低コヒーレンス干渉計として機
能しているかどうか確認するために、ここでは試料とし
て光学用平面鏡16a(図6参照)を用い測定を行っ
た。まず試料の平面鏡を走査したときの共焦点系の深度
応答を図9(a)に示す。次にそのピーク位置に平面鏡
16aを固定し、参照鏡16を走査したときに得られる
インターフェログラムを図9(b)に示す。これらの結
果から半値全幅を求めると、それぞれ20μm、46μ
mであった。図9(b)より、自由空間での測定結果
(図7(a))と比較してインターフェログラムの形が
非対称となり、また、半値全幅が7倍程度まで広がって
いることがわかる。この原因としては、(a)対物レン
ズ14の球面収差、(b)対物レンズ14の分散、が考
えられるが、対物レンズ14の直後にダイアフラムを入
れ、光束を細く絞ることにより同様な測定した結果は、
図9(b)とほぼ同一であったため、対物レンズ14の
分散の影響がより支配的であるものと考えられる。これ
は、参照鏡16を試料15側の対物レンズ14と同一な
ものと平面鏡とで構成したキャッツ・アイに置き換える
ことにより、分散の影響を相殺することができた。
【0038】実験結果および考察 平行平面基板、液晶評価用ガラスセル(3層、以下、液
晶セルと呼ぶ)、およびカバーガラスを重ねて作った試
料(13層)等で測定を行った。測定例として、3層構
造の液晶セルと13層の自作試料の結果を以下に示す。
【0039】まず、液晶セル((株)イーエッチシー)
の断面図を図10に示す。図10において、厚さ0.7
mm、屈折率1.51の2枚のガラス30,31の間に
50μmの空隙32がある構造から試料15が構成され
ている。本実験では、この空隙32の部分になにも入れ
ない場合(条件A)と、純水を入れた場合(条件B)の
2通りについて測定を行った。なお、図10の番号は対
物レンズ14に近い側から定められている。それぞれの
測定結果を図11に示す。ここで、図11(a),
(b)は条件Aに、図11(c),(d)は条件Bにそ
れぞれ対応する。図11(a),(c)は共焦点系の応
答であり、それぞれのピークの番号は、図10の同じ番
号の界面に光をフォーカスしたときの番号に対応する。
また、図11(b),(d)の信号は図11(a),
(c)の信号の同一番号のピーク位置に試料を固定した
ときに得られるインターフェログラムである。ここで、
図11(a),(c)の各信号は、見やすさのためにバ
イアスを適当に調節して表示してある。図11(c)の
ピーク2,3の信号の大きさが図11(a)のそれに比
べて小さくなっているのは、純水の屈折率が空気のそれ
に比べ、よりガラスの屈折率に近いので、界面での反射
率が低くなっているためである。また、条件Aでは、イ
ンターフェログラムの局在位置が変わっていないのに対
して、条件Bでは、ずれていることがわかる。このこと
は、空隙の中が空気のときには、試料を移動することに
より空隙の前の界面から後の界面にフォーカス位置を変
えても、空隙の分だけ対物レンズと試料の間隔が狭くな
るので、光路長は自体は変わらないことから説明でき
る。
【0040】次に、図12(a)に示すような自作した
試料15を用いて測定を行った。試料15はカバーガラ
ス33,34(松浪硝子工業、厚さ0.145±0.0
15、屈折率1.523(λ=588))を積み重ねて
作った。ガラス33,34と空気が交互になっており、
全体で13層構造を成している。この試料15の測定結
果を図12(b),(c)に示す。図12(b)は共焦
点信号、図12(c)はインターフェログラムである。
また、図12中の番号の付け方は、液層セルの場合と同
じである。図12(c)ではバイアスを調節して表示し
てある。図12中の信号において、番号が大きくなるに
つれてピーク値が小さくなっている。これは、試料15
の奥の層にフォーカスさせるにつれて、光が通過する途
中の層での吸収および界面での反射により、検出される
信号が弱くなっていくためである。また、奥の層に対応
するインターフェログラムが歪んでいるのは、手前の層
による色散のためである。さらに、空気の層の両界面に
対応するインターフェログラムの局在位置が変わらない
理由は液晶セルの場合と同じである。
【0041】最後に、それぞれの試料15による結果か
ら、ピーク間隔、および干渉縞の局在位置間隔から
(6),(7)式を使って、幾何学的厚さと屈折率を求
めたものを表1にまとめる。また、他の試料15の結果
とマイクロメータによる厚さの測定値、およびカタログ
の値も同時に載せる。これによると1mm以上の試料で
は、1%以下で一致している。試料15が薄くなると、
相対的な精度が悪くなっていく。これは、等光路長位置
の推定誤差が、最終的な厚さ・屈折率等の誤差にもっと
も効いてくると考えられる。
【0042】
【表1】 なお、本発明において、積層構造体からなる試料15と
して、各層の一方の界面と他方の界面が非平行でかつ全
域にわたって厚さが均一でないもの、例えば玉ねぎのよ
うなものを用いても、精度良く層厚および屈折率を測定
することができた。
【0043】また、試料15を構成する各層としては、
用いる点光源の波長域において透明であればよいので、
ガラスの他にプラスチック、ビニル等を用いてもよい。
【0044】また、点光源11として、近赤外域のレー
ザーダイオードを用いれば、試料として半導体などにも
適用可能である。
【0045】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、積層構
造体および参照鏡を、等m層の両界面に関する各々第1
合焦点位置および第1参照鏡位置から第2合焦点位置お
よび第2参照鏡位置まで移動させ、この際の積層構造体
および参照鏡の変位量に基いて第m層の層厚および屈折
率を測定する。このように、積層構造体の任意のm層の
層厚および屈折率を容易かつ確実に測定することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による積層構造体の層厚および屈折率の
測定装置の概略図。
【図2】層厚および屈折率の測定方法を示す図。
【図3】対物レンズと試料とを相対的に変位させた場合
の光路を示す図。
【図4】点光源のスペクトルを示す図。
【図5】点光源の注入電流と中心波長およびスペクトル
幅との関係を示す図。
【図6】マイケルソン干渉計を示す図。
【図7】図6に示すマイケルソン干渉計の検出器出力と
コヒーレンス長を示す図。
【図8】本発明による層厚および屈折率の測定装置の具
体例を示す図。
【図9】試料および参照鏡を変位させた場合の検出器出
力を示す図。
【図10】試料の具体例を示す図。
【図11】図10に示す試料を用いた際の検出器出力を
示す図。
【図12】他の試料の具体例と、その際の検出器出力を
示す図。
【符号の説明】 10 測定装置 11 点光源 12 コリメータレンズ 13 ビームスプリッター 14 対物レンズ 15 試料 16 参照鏡 17 集光レンズ 18 検出器

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】積層構造体に対して光を投光する点光源
    と、 点光源と積層構造体との間に順次配置されたビームスプ
    リッターおよび対物レンズと、 点光源と積層構造体とを結ぶ直線と交差するとともにビ
    ームスプリッターを通る直線上において、ビームスプリ
    ッターの一側に配置された参照鏡と、ビームスプリッタ
    ーの他側に配置された検出器とを備え、 積層構造体および参照鏡は各々可動となっており、 検出器から得られる共焦点信号と干渉信号に基づいて、
    積層構造体の第m層の一方の界面が対物レンズの第1合
    焦点位置にきたときの干渉信号が最大となる場合と、他
    方の界面が対物レンズの第2合焦点位置にきたときの干
    渉信号が最大となる場合における、積層構造体の変位量
    と参照鏡の変位量により第m層の層厚および屈折率を測
    定する演算手段を設けたことを特徴とする積層構造体の
    層厚および屈折率の測定装置。
  2. 【請求項2】積層構造体に対して光を投光する点光源
    と、点光源と積層構造体との間に順次配置されたビーム
    スプリッターおよび対物レンズと、点光源と積層構造体
    とを結ぶ直線と交差するとともにビームスプリッターを
    通る直線上において、ビームスプリッターの一側に配置
    された参照鏡と、ビームスプリッターの他側に配置され
    た検出器とからなり、積層構造体および参照鏡を可動さ
    せた測定装置を用いた積層構造体の層厚および屈折率の
    測定方法において、 点光源からビームスプリッターおよび対物レンズを介し
    て積層構造体に光を投入した際、積層構造体からビーム
    スプリッターを介して検出器へ入力される反射光から得
    られる共焦点信号と、この反射光とビームスプリッター
    から参照鏡を経て検出器へ入力される参照光から得られ
    る干渉信号に基づいて、積層構造体の第m層の一方の界
    面を対物レンズの第1合焦点位置までもってくるととも
    に、干渉信号が最大となるよう参照鏡を第1参照鏡位置
    に配置する工程と、 検出器へ入力される共焦点信号と干渉信号とに基づい
    て、積層構造体の第m層の他方の界面を対物レンズの第
    2合焦点位置までもってくるとともに、干渉信号が最大
    となるよう参照鏡を第2参照鏡位置に配置する工程と、 第1合焦点位置と第2合焦点位置との間の積層構造体の
    変位量と、第1参照鏡位置と第2参照鏡位置との間の参
    照鏡の変位量に基づいて、第m層の層厚および屈折率を
    測定する工程と、 を備えたことを特徴とする積層構造体の層厚および屈折
    率の測定方法。
  3. 【請求項3】積層構造体は、多数の層からなり、少なく
    とも一層の一方の界面と他方の界面は非平行となってお
    り、その厚さは全域にわたって変化していることを特徴
    する請求項2記載の積層構造体の層厚および屈折率の測
    定方法。
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