JPH09218016A - 光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定方法及びそのための装置 - Google Patents
光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定方法及びそのための装置Info
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- JPH09218016A JPH09218016A JP8233863A JP23386396A JPH09218016A JP H09218016 A JPH09218016 A JP H09218016A JP 8233863 A JP8233863 A JP 8233863A JP 23386396 A JP23386396 A JP 23386396A JP H09218016 A JPH09218016 A JP H09218016A
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Abstract
可能にし、低コヒーレント光干渉法による測定対象物の
屈折率と厚さの同時測定を可能にする。 【解決手段】 透明板5の屈折率nと厚さtの同時測定
を行うには、その透明板5の前面と後面の光路差n×t
以外に、これと独立なもう一つの測定量を用意する。つ
まり、実際には、SLD1光を集光レンズ3で透明板5
に集光して、その前面及び後面に焦点を合わせ、これら
二つの集光状態の光路差と二つの集光状態を得るために
必要な測定対象物(又は集光レンズ)の移動距離とを測
定する。二つの面の焦点合せには、集光レンズ3を固定
して透明板5を移動する「測定サンプル走査法」と、透
明板5を固定して集光レンズ3を移動する「レンズ走査
法」がある。また、群屈折率差による複屈折測定も可能
にする。
Description
干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定方法
及びそのための装置に関するものである。
の非接触(光学)測定は、光学分野において最も基本的
な技術の一つである。その代表的なものとしては、エリ
プソメータ(自動偏光解析装置)〔(1):久保田広他
編「光学技術ハンドブック」2,4 偏光解析(pp.
256〜264)、朝倉書店発行参照〕がある。
状態を観測することによって、媒質(基板)の屈折率及
びその表面に堆積した薄膜の屈折率nと厚さtを測定す
る方法である。本方法を実施する装置は高精度であるの
で、表面や薄膜の研究に頻繁に利用されているが、装置
自体がかなり高価であり、また平行ビーム照射部分(約
10mm径)における平均的な屈折率n及び厚さtが測
定できるにすぎない。
測定、光導波モード励起による薄膜の屈折率n、厚さt
の測定などがあるが、これらは測定面が平滑であること
が条件である。このような薄膜を中心とした測定法に対
して、光学分野では、無機、有機材料を含めて、媒質の
屈折率n、厚さt及びそれらの空間分布を精度良く測定
したいという要求は多い。特に、媒質の表面状態(平滑
度)に左右されることなく、媒質の屈折率n、厚さtの
空間分布を測定するには、集光ビームを用いた測定法が
優れている。
ーパルミネッセントダイオード(SLD)を光源とする
低コヒーレント干渉光学系を基本として、集光ビーム照
射による媒質の屈折率nと厚さtとを同時に精密に測定
する方法を新たに提案する。SLDを光源とするマイケ
ルソン干渉計は光の伝搬軸に沿って、光源のコヒーレン
ト長Δlc で決まる分解能(〜10μm)で反射面を識
別することができ、微小領域における有力な診断法とし
て利用されている。(例えば、光導波路の診断)
〔(2):K.Takada,I.Yokohama,
K.Chida and J.Noda,“New m
easurement system for fau
lt location in optical wa
veguide devices based on
an interferometric techni
que,”Applied Optics,Vol.2
6,No.9,pp.1603〜1606(198
7).(3):R.C.Youngquist,S.C
arr and D.E.N.Davies,“Opt
ical coherence−domain ref
lectometry:anew optical e
valuation technique,”Opti
cs Letters,Vol.12,No.3,p
p.158〜160(1987).(4):H.H.G
ilgen,R.P.Novak,R.P.Salat
he,W.Hodel and P.Beaud,“S
ubmillimeter optical refl
ectometry,”J.Lightwave Te
chnology,Vol.7,No.8,pp.12
25−1233(1989)参照〕。
ーレント光干渉法が注目されており、網膜下組織の検出
・可視化〔(5):D.Huang,E.A.Swan
son,C.P.Lin,J.S.Schuman,
W.G.Stinson,W.Chang,M.R.H
ee,T.Flotte,K.Gregory,C.
A.Puliafito,J.G.Fujimoto,
“Optical coherency tomogr
aphy,“Science,Vol.254,pp.
1178〜1181,22 Nov.,1991.
(6):J.A.Izatt,M.R.Hee,G.
M.Owen,E.A.Swanson andJ.
G.Fujimoto,“Optical coher
ence microscopy in scatte
ring media,”Optics Letter
s,Vol.19,No.8,pp.590〜592
(1994).〕や眼径(eye length)の測
定〔(7):A.F.Fercher,K.Menge
doht and W.Werner,“Eye−le
ngthmeasurement by interf
erometry withpartially co
herent Light,”Optics Lett
ers,Vol.13,No.3,pp.186〜18
8(1988).(8):W.Drexier,C.
K.Hitzenberger,H.Sattman
n,A.F.Fercher,“Measuremen
t of thethickness of fund
us layers by partial cohe
rence tomography,”Optical
Enginccring,Vol.34,No.3,
pp.701〜710(1995).〕を初め、皮下組
織の高精度な検出の基礎実験〔(9):白石、近江、春
名、西原、“低コヒーレント光干渉による生体内構造検
出の基礎実験I,”平成7年秋季第56回応用物理学会
学術講演会 26a−SN−11(1995)。〕が進
められている。
たSLDを用いた通常の低コヒーレント干渉法では、測
定対象物(透明板)に平行あるいは集光ビームを照射
し、その前面及び裏面からの反射信号光と参照光との光
路差が0となるような参考光ミラーの二つの位置を特定
し、これらの間隔から透明板の前面と後面の光路差(屈
折率n×厚さt)が測定される。すなわち、この場合に
測定量は屈折率n×厚さtのみであるので、屈折率nと
厚さtの分離測定はできない。
率」は光に対する媒質特有の物理量であるので、光をプ
ローブとして測定せざるを得ない。さて、屈折率n、厚
さtなる媒質を光が通過するのに要する時間τは、真空
中の光速をc(=3×108 m/秒)として、 τ=n×t/c である。屈折率nの測定においては、基本的にはこの時
間τを測定することになる。光速cは既知であるので、
一般にはn×t(これを媒質の光路長という)が実測で
きる。したがって、屈折率nを分離測定するには、何ら
かの工夫が必要である。例えば、媒質の厚さtを前もっ
て機械的に(接触法で)測定しておき、光学的に測定し
た光路長n×tの実測値をもとに、屈折率nを求めるこ
とができる。
を測定する上で、二つの異なる測定を行なうことは、測
定精度の劣化につながり、また、煩雑である。さらに、
生体組織のような機械的にその厚さを測定できない媒質
も多く、また、接触法による機械的な厚さ測定の限界は
約1μmであり、本質的に〜1nm(=0.001μ
m)の測定精度をもつ光学的測定法には遠く及ばない。
折率n、厚さtを分離測定する手法の確立が不可欠であ
る。媒質の屈折率n、厚さtの光学的同時測定は、レン
ズを始め光学部品・材料を開発するメーカーにおいて
は、必須の技術である。特に、レンズは屈折率と同時に
精密な厚さ分布の測定を必要とする。最近は、種々の多
成分系ガラス以外にポリマー(高分子)や液晶を用いた
光学部品も多く、これらの部品開発には屈折率n、厚さ
tの同時精密測定は不可欠な技術・装置である。また、
短波長光源や波長可変レーザ実現に向けて、様々な非線
形光学材料の研究開発も盛んであるが、これらの新光学
材料の屈折率を測定する上で、簡易な屈折率n、厚さt
の同時精密測定装置が要求されている。
分野においても、屈折率n、厚さtの同時測定の必要性
が高まりつつある。一例を上げると、眼科治療・診断で
は、眼径や角膜の厚さ等の精密な測定(精度は約10μ
m)が要求されている。この場合には、非接触測定が条
件であり、光プローブを用いることになる。しかしなが
ら、現状では、屈折率nと厚さtの分離測定ができない
ため、正確に眼径や角膜の厚さを測定できない状態にあ
る。さらに、現在活発に検討が進められている光CT
(光による生体断層像)の構築においても、生体内組織
構造の微細なサイズを決定する上で、屈折率nと厚さt
の同時測定は必要である。
の屈折率nと厚さtの分離測定を可能にし、低コヒーレ
ント光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測
定を可能にする光干渉法による測定対象物の屈折率と厚
さの同時測定方法及びそのための装置を提供することを
目的とする。
成するために、 〔1〕光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時
測定方法であって、低コヒーレント干渉光学系と測定対
象物又は、集光レンズを搭載する微動ステージを備え、
前記低コヒーレント干渉光学系の光を集光レンズで前記
測定対象物に集光して、この測定対象物の前面及び後面
に焦点を合わせ、これら二つの集光状態の光路差と二つ
の集光状態を得るために必要な測定対象物(又は集光レ
ンズ)の移動距離とを求め、測定対象物の屈折率と厚さ
とを同時に測定するようにしたものである。
定対象物の屈折率と厚さの同時測定方法であって、前記
測定対象物を搭載する微動ステージを移動させ測定対象
物を走査するようにしたものである。 〔3〕上記〔1〕記載の光干渉法による測定対象物の屈
折率と厚さの同時測定方法であって、前記集光レンズを
搭載する微動ステージを移動させ集光レンズを走査する
ようにしたものである。
定対象物の屈折率と厚さの同時測定方法であって、更
に、前記測定対象物の群屈折率差による複屈折測定を行
うようにしたものである。 〔5〕光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時
測定装置であって、低コヒーレント光を出射する光源
と、この光源からの低コヒーレント光を分けるビームス
プリッタと、このビームスプリッタにより分けられる一
方の光を受ける参照光ミラーと、参照光を位相変調する
ために、前記参照光ミラーを振動させる振動子と、前記
参照光ミラーを微小移動させる第1のステージと、前記
ビームスプリッタにより分けられる他方の光をレンズに
より集光して、測定対象物に照射する手段と、前記測定
対象物を微小移動させる第2のステージと、前記測定対
象物からの反射光と前記参照光ミラーからの参照光を合
波・干渉させて検波する受光素子とを設けるようにした
ものである。
定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置であって、前記
レンズを微小移動させる第3のステージを設けるように
したものである。 〔7〕上記〔5〕又は〔6〕記載の光干渉法による測定
対象物の屈折率と厚さの同時測定装置であって、前記光
源はスーパルミネッセントダイオードである。
法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置であ
って、前記受光素子はヘテロダイン検波するフォトダイ
オードである。
対象物の屈折率と厚さの同時測定装置であって、前記測
定対象物は厚さ数100μm以上の媒質である。
渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置で
あって、前記測定対象物は生体組織である。 〔11〕上記〔5〕又は〔6〕記載の光干渉法による測
定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置であって、前記
測定対象物の群屈折率差による複屈折測定手段を付加す
るようにしたものである。
て、透明板を例にとると、透明板の屈折率nと厚さtの
同時測定を行うには、その透明板の前面と後面の光路差
n×t以外に、これと独立なもう一つの測定量を用意す
る。つまり、実際には、SLD光をレンズで透明板に集
光して、その前面及び後面に焦点を合わせ、これら二つ
の集光状態の光路差と二つの集光状態を得るために必要
な測定対象物(又は集光レンズ)の移動距離とを測定す
る。二つの面の焦点合せには、集光レンズを固定して透
明板を移動する「測定サンプル走査法」と、透明板を固
定して集光レンズを移動する「レンズ走査法」がある。
(必ずしも屈折率n×厚さtではない)」以外に、透明
板の前面と後面との焦点合せに必要な「透明板あるいは
レンズの移動距離」が生ずる。これら二つの測定量から
透明板の屈折率nと厚さtを算出することができる。ま
た、0.1μm精度のステージを用いれば、10-3オー
ダーの複屈折Δngを数%の精度で測定できる。
した、比較的簡単な光学測定系と検出信号処理により、
精度の高い測定対象物の屈折率と厚さとを同時に測定す
ることができる。 (2)厚さ数100μm以上の媒質の屈折率n及び厚さ
tを0.1%の高精度で測定できる。
屈折率n及び厚さtの空間分布を測定することができ
る。 (4)また、媒質の測定面は必ずしも鏡面である必要は
なく、粗面であっても測定可能であり、生体組織のよう
に極めて散乱が大きい媒質にも適用することができる。
(なお、散乱媒質においては、反射直進光を抽出して測
定する)。
の透明板を用いれば、本測定法に基づき、レンズの開口
数NAの実測が可能である。 (6)なお、低コヒーレント光源は、必ずしもSLDに
限るものではなく、閾値以下の注入電流で駆動されるレ
ーザーダイオード(LD)等、可干渉距離が数10μm
程度、あるいはそれ以下の光源は全て使用することがで
きる。従って、本測定法において、発振中心波長が相異
なる数個のLDを併用することによって、測定対象物の
屈折率の波長分散をも測定することができる。
に、群屈折率差による複屈折測定を行うことができる。
参照しながら説明する。本発明は、SLD低コヒーレン
ト干渉法による測定対象物(媒質)の屈折率nと厚さt
の同時測定法について述べる。まず、測定光学系につい
て述べる。
用いた光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時
測定の基本的なシステム構成図である。この図におい
て、SLD1の発振中心波長λc =834nmで、発振
スペクトラムの半値全幅(FWHM)はΔλ=16nm
であり、これによって決まる干渉計の可干渉距離はΔl
c 〜25μmである。この干渉計において、SLD1か
ら出射された光はビームスプリッタ2(BS)で二等分
され、その光の一方は集光レンズ(対物レンズ)3で第
2のステージ4上に置かれた測定対象物5に集光され
る。
7上のPZT(ピエゾトランスデューサ)9に固定され
た参照光ミラー10に照射される。PZT9には周波数
f(=500Hz)の振動が加えられ、参照光ミラー1
0からの反射光(参照光)を位相変調する。測定対象物
5からの反射光(信号光)と参照光ミラー10から参照
光を合波・干渉してフォトダイオード(PD)13でヘ
テロダイン検波する。
15、アンプ16を通してサンプリングホールド回路1
7に導き、周波数fなる交流信号振幅の最大値を抽出
し、A/Dコンバータ18により、10ビットのディジ
タル信号に変換してパーソナルコンピュータ(PC)1
9に記憶する。なお、11はステージコントローラであ
り、第1のステージ7、第2のステージ4、第3のステ
ージ6をそれぞれ制御する。8はPZT9に接続される
交流電圧源、12a,12bはリレーレンズである。
ド(LD)は、発振波長スペクトラム幅Δλ(<0.1
nm)は狭く、良質の単色光源である。これに対してS
LDは、発光ダイオード(LED)とLDの中間的なも
ので、市販のSLDの発振波長スペクトラムは広くΔλ
〜15nm程度である。このSLDを光源とする干渉光
学系を低コヒーレント光干渉系と呼び、その可干渉距離
ΔlC はわずか20μmである。すなわち、SLD干渉
光学系では、ビームスプリッタで分けられた二つの光
(参照光と信号光)は、これらの伝搬距離(光路長)の
差がΔlC /2(〜10μm)以下でなければ、干渉で
きない。言い換えれば、SLD干渉光学系は〜10μm
の分解能で光の伝搬距離(光路長)の差を識別できる。
このことから、SLD干渉光学系は、分解能10μmオ
ーダーの光路長測定や微小領域の故障診断に利用でき
る。
明媒質、つまり透明板)5の屈折率n、厚さtの測定を
行なう。まず、「測定サンプル走査法」では、図2(a
−1)に示すように、光を透明板5の前面に集光し、参
照光と信号光アームの光路差が0となるように、図3
(a−1)に示すように、参照光ミラー10の位置を調
整する。
のステージ4を移動して、透明板5を集光レンズ3に近
づけ、その透明板5の後面に焦点合わせする。このとき
の透明板5の移動距離をz1 とする。この状態で干渉計
の二つのアームの光路差が再び0となるように、図3
(a−2)に示すように、参照光ミラー10をΔL1 だ
け移動する。
1)に示すように、光を透明板5の前面に集光し、参照
光と信号光アームの光路差が0となるように、図3(b
−1)に示すように、参照光ミラー10の位置を調整す
る。これは、図2(a−1)及び図3(b−1)と同様
である。次いで、第3のステージ6(図1参照)を用い
て、図2(b−2)に示すように、集光レンズ3を距離
z2 移動して透明板5の後面に焦点合せし、かつ、図3
(b−2)に示すように、参照光ミラー10をΔL2 移
動する。
と参照光ミラー10の移動距離z1(z2 )及びΔL1
(ΔL2 )が得られれば、次節で示すような簡単な計算
から、透明板5の屈折率n及び厚さtを求めることがで
きる。(B)以下、測定原理について説明する。 〔1〕測定サンプル走査法 (1)屈折率n及び厚さtの算出 図4に示すように、まず、光を透明板5の前面に焦点合
せした状態(図中の点線)を基準として、透明板5を距
離z1 だけレンズに近づけ、その後面に光が集光された
場合(図中の実線)を考える。透明板5に対する光の入
射角をθ、入射位置をr、屈折角をφとすると、
の移動距離ΔL1 を求める。ΔL1 は、光を透明板5の
前面(z=0面)に焦点合わせした場合(図中の点線)
と透明板5を距離z1 だけ移動して後面に焦点合わせし
た場合(図中の実線)との光路差であり、図4ではz=
z1 面を基準として、二つの焦点FとF′との光路差に
等しい。集光レンズ3通過後の収束光(または発散光)
の位相は、集光レンズ3中心軸を通る光線で代表して考
えることができるので、
移動するので、光路差ΔL1 は、移動距離z1 によって
変化することに注意する。式(2)、(3)よりtを消
去して、
(=sinθ)が既知であれば、測定値ΔL1 と移動距
離z1 の比から、透明板5の屈折率nが求められること
を示している。また、その厚さtは式(3)より得ら
れ、
ンプルとしての透明板5を前面に集光し(第2のステー
ジ4の位置z=0;焦点F′)、この状態で最大干渉信
号強度が得られる参照光ミラー10の位置(第1のステ
ージ7の位置x=xF1)を特定する。次に、第2のステ
ージ4を用いて透明板5を距離z1 だけ集光レンズ3に
近づけ(透明板5後面に集光するz=z1 ;焦点F)、
この状態で、干渉信号強度が再び最大になるように第1
のステージ7(参照光ミラー10)を調整し、その位置
x=xR1を特定する。前面と後面に焦点合わせした二つ
の状態の光路差はΔL 1 =xR1−xF1であり、このΔL
1 とz1 となる二つの独立な測定値から透明板5の屈折
率nと厚さtが求められる。
に焦点合せし、かつ、このとき干渉計の参照光と信号光
アームの光路差が0となるような状態を実現し、この状
態における参照光ミラー10(第1のステージ7:x
軸)と透明板5(第2のステージ4:z軸)の位置を高
精度で測定することである。このためには、まず、集光
レンズ3焦点近傍に反射面があるときの干渉信号強度が
どのように変化するかを把握しておく必要がある。
うなコヒーレンスの高いレーザを用いたときの干渉信号
強度パターンを示す。レンズ焦点では、集光ビームは平
面波を形成するので反射光強度は最大となる。一方、反
射面が焦点の外(あるいは内)に位置する場合には、集
光ビームは発散球面波(または収束球面波)となり、反
射光強度は著しく減少する。信号強度パターンの半値全
幅Δzは、レンズのNAによって決まり、実測値では、
NA=0.27でΔz〜17μm、NA=0.20でΔ
z〜30μmである。
るいはそれ以下の精度で特定できることが分かる。上記
の結果を踏まえて、光源にコヒーレント長Δlc なるS
LDを用いて、集光ビームが透明板5の前面あるいは後
面に焦点合せされる第2のステージ4の位置(z=0及
びz=z1 )、そして、これに対応して参照光と信号光
アームの光路差を0とする参照光ミラー用第1のステー
ジ7の位置(x=xF1及びx=xR1)を測定する。
ず、前面近傍に集光レンズ3の焦点合せを行い、検出可
能な干渉信号強度が得られる状態で、透明板5を搭載し
た第2のステージ4を走査すると、図6に示すような信
号強度パターンが得られる。さらに、第1のステージ7
を前後にδx1 (実験ではδx1 =5μm)ずつ移動
し、同様に第2のステージ4を走査して信号強度パター
ンを記録する。これらSLDを光源とする信号強度パタ
ーンの包絡線は、図5に示したコヒーレント光の信号強
度パターンに一致する。この結果から、SLD信号強度
パターンのピークが最大となる第2のステージ4の位置
によってz=0が特定でき、これに対応する第1のステ
ージ7の位置がx=xF1である。
ΔL1 =0とする。なお、各々のSLD信号強度パター
ンの半値全幅Δzc1は、一般にSLD自身のコヒーレン
ト長Δlc /2(=12.5μm)に等しい。透明板5
の後面においても、全く同様にしてz=z1 及びx=x
R1を求めることができる。しかし、透明板5の後面では
レンズのNAは1/n(nは透明板の屈折率)に減少す
るので、SLD信号強度パターン及び包絡線の半値全幅
Δzc1、ΔzR1は透明板5の前面に比べてn倍に拡が
る。
R1−xF1)及びz1 が得られ、式(4)及び(5)をも
とに、透明板5の屈折率n及び厚さtが算出できる。現
状の測定系に組み入れたステージは、1μm/ステップ
であるので、測定サンプルの厚さが1mm程度であれ
ば、式(4)から算出される屈折率nの測定精度は、〜
0.1%である。
板5の後面と前面の焦点FとF′との光路差であるの
で、z2 に無関係に一定となり、
(BS)2に対して透明板5の位置が固定されている場
合には、その間にある集光レンズ3を移動しても、光路
差ΔL2は変化しないことに注意する必要がある。式
(6)、(7)より、屈折率nは、
測定サンプルとしての透明板5の前面に集光し(第3の
ステージ6の位置z=0;焦点F′)、この状態で最大
干渉信号強度が得られる参照光ミラー10の位置(第1
のステージ7の位置x=xF2)を特定する。次に、第3
のステージ6を用いて集光レンズ3をz2 だけ透明板5
に近づけ、透明板5の後面に集光する(z=z2 ;焦点
F)。この状態で干渉信号強度が再び最大となるように
第1のステージ7(参照光ミラー10)を調整し、その
位置x=xR2を特定する。前面と後面に焦点合わせした
二つの状態の光路差は、ΔL2 =xR2−xF1であり、こ
のΔL2 とz2 なる二つの独立な測定値から透明板5の
屈折率nと厚さtが求められる。
法における測定上のポイントも、透明板5の前面と後面
に焦点合せされるレンズの位置z0 、z2 、及びこれら
に応じて干渉計の信号光と参照光アームの光路差を0と
するような参照光ミラー10の位置xF2、xR2を精度良
く測定することである。まず、集光レンズ3が透明板5
の前面に焦点合せされていると考える(レンズ位置はz
=0)。この状態で参照光ミラー10を移動すると、図
8に示すように、SLD自身の可干渉性を示す干渉信号
強度パターンが得られる。このパターンの半値全幅はΔ
x=Δlc /2(=12.5μm)であり、強度のピー
ク位置はx=xF2である。そこで参照光ミラー10の位
置をx=xF2として集光レンズ3を走査すると、図9に
示すような信号強度パターンが得られる。
源とする集光レンズ3の反射・干渉信号強度パターンに
一致する。何故なら、反射面(透明板5の前面)を固定
した場合には、集光レンズ3の位置によって干渉計その
ものの参照光と信号光アームとの光路差が変化しないか
らである。また、このとき信号強度が最大となる集光レ
ンズ3の位置がz=0である。
+δx2 (δx2 〜Δlc /10=2.5μm)にし
て、集光レンズ3を走査すると、ピーク強度がわずかに
低くなるが、x=xF2の場合と同様な信号強度パターン
を得る。このとき、パターンのピーク位置はやはりz=
0で変化しないことに注意する必要がある。以上のこと
を踏まえて、集光レンズ3の位置z=0及びこれに対応
する参照光ミラー10の位置x=xF2を特定するには、
参照光ミラー10をx=xF2付近に調整し、この近傍で
参照光ミラー10をδx2 づつ変化させ、集光レンズ3
を反復走査して信号強度パターンを記録すれば良いこと
が分かる。ピーク強度を与える集光レンズ3の位置から
z=0が、そしてピーク強度が最大となる参照光ミラー
10の位置からx=xF2が特定できる。
全く同様にして、z=z2 及びx=xR2が測定でき、光
路差ΔL2 =xR2−xF2(=n×t)である。 〔3〕両走査法の比較 z=0及びz=z1 、z2 、そして、これらに対応する
x=xF1、xF2及びx=xR1、xR2なる量を測定する上
において、ステージに要求される精度は、両走査法共に
同程度である。すなわち、厚さt〜1mmの透明板で、
nの測定誤差がΔn (=δn/n)=10-3であれば、
少なくとも1μm/ステップのステージが必要である
(次章参照、但し、紙面の関係上、測定精度に関する詳
細な論議は割愛し、測定精度の計算結果の一例を図10
に示す)。
05μm/ステップであることを考えれば、むしろ極め
て緩やかな制限である。問題は、図6あるいは図9に示
すように、z=0及びz=z1 、z2 の位置を特定する
上で、いずれの走査法が良いかという点にある。集光レ
ンズのNA>0.15であれば、参照光ミラー位置をパ
ラメータとして得られる各信号強度パターンの半値全幅
は、測定サンプル走査法の方が狭いので、この走査法の
方が有利であると考えられる。しかし、レンズ走査法で
は、各信号強度パターンのピーク位置が一致しているの
で、z=0及びz=z1 、z2 の位置を特定し易いとい
う利点があり、低NA(<0.1)の場合に有利と考え
られる。
る。測定対象物を微動ステージ上に固定できる場合に
は、測定サンプル及びレンズ走査法共に有効である。し
かし、対象物を固定して測定する場合(例えば、in
vivo生体計測の場合)には、レンズ走査法を適用せ
ざるを得ない。次に、レンズの実効NAの評価について
説明する。
法ではレンズのNAが既知であることが条件である。し
かしながら、SLDは時間コヒーレンスばかりでなく、
その空間コヒーレンスも不完全であり、かつ入射ビーム
の径や拡がりの具合によって実効的なレンズのNAは変
化する。したがって、屈折率n、厚さtの測定に先立っ
て、測定系に用いるレンズの実効NA(NA eff)を評
価する必要がある。
て、式(4)を変形すると、
て、光路長ΔL1 とサンプル移動距離z 1 を測定すれ
ば、(10)式より、集光レンズの実効NAが求められ
る。 (2)実験結果 実験では、屈折率の波長分散が良く知られている厚さ約
1mmの溶融石英板(SLDの発振中心波長λc =83
4nmでn=1.4527)を用い、測定サンプル走査
法でレンズの実効NAを評価した。測定系に組み入れた
レンズは顕微鏡用×20対物レンズ(口径8mmでNA
=0.40)である。また、照射ビーム径を変えるため
に、SLDをコリメートした直後に可変アパーチャを挿
入した。
号強度パターンを図11〜図13に示す。図11は参照
光ミラーの位置を5μmづつ変えて得られた石英板の前
面からの反射・干渉信号強度パターン群であり、図12
はその石英板の後面からの信号強度パターン群である。
信号強度パターン群の包絡線の半値全幅は、前面で16
μm、後面では屈折率の分だけ拡がり23μmである。
これらの前面及び後面の信号強度パターン群(図13参
照)の中から、各々最大ピーク値を持つものを選び、そ
の間隔からz1 が、そして、これら二つの信号強度パタ
ーンが得られる参照光ミラーの位置からΔL1 が測定で
きる。
に評価したレンズの実効NAを表1にまとめてある。
得られ、
さの測定値とマイクロメータによる実測値(1026μ
m)は良く一致している。このときの実効NAの測定値
はNA eff=0.273であり、ビーム径6mmφに対
するレンズの所定の値0.30より低い。これはLDや
ガスレーザに比べてSLD自身の空間コヒーレンスが劣
るためと考えてよい。
等しいNA eff=0.199を得た。ビーム径(NA)
が小さくなれば、SLDの低空間コヒーレンスの影響は
緩和されるので、この結果は必ずしも誤差が大きすぎる
とはいえない。しかし、上述のように、4mmφでは光
学系のアライメントが不十分でz1 、ΔL1 の測定誤差
が大きく、6mmφの場合と比べて、4mmφでNA
eff=0.199なる結果は測定精度の点で劣る。
6mmφとしてNA eff=0.273とし、各種材料の
屈折率n、厚さt同時測定を行った。次に、透明板の屈
折率n、厚さtの同時測定例について説明する。生体組
織においては、屈折率nが1.3から2.5付近まで分
布すると考え、測定サンプルとして、スライドガラス、
サファイア(Al2 O3 )、タンタル酸リチウム(Li
TaO3 )を用いた。一般に高屈折率材料は複屈折性を
持つものが多く、Al2 O3 とLiTaO3 も一軸性光
学結晶であり、波長λ=834nmで各々Δn=0.0
08、−0.004なる複屈折率差(常光線と異常光線
との屈折率差でΔn=no −ne )を示す。
Δnはnの測定誤差よりわずかに大きい程度であり、光
学的に等方な媒質と見なして差し支えない(注:現状の
測定システムでは特に信号処理系におけるノイズが大き
く、これが測定誤差の要因になっている)。実際に、測
定には×20対物レンズを用い、ビーム径6mmφで、
その実効NAを0.273とした。図14〜図16に〜
1mm厚のzカットサファイアの測定結果を示す。ま
た、zカットLiTaO3 、スライドガラスを含めて、
各サンプルに対するΔL1 とz1 の測定値、及び式
(4)、(5)から得られる屈折率及び厚さの測定値n
m 、tm を表2にまとめてある。
方程式をもとに計算した屈折率ns、及びマイクロメー
タで測定した厚さの実測値ts と比較して、それぞれ測
定誤差Δn 、Δt を求めた。〜1mm厚のサファイアで
はΔn =−0.3%、Δt =±0%を得た。そして、厚
さ1mmのサンプルでn=1.7〜1.8においては、
Δn =0.1%を得るためのz1 の測定許容誤差はδz
1 <1μmであるが、サファイアで得られたΔn (=−
0.3%)はこれより大きい。
ノイズによって、位置z=0、z1を特定する精度が劣
化するためである。したがって、主としてフィルター、
サンプルホールド回路から成る信号処理系の雑音を低減
することにより、1μm/ステップのステージを用いて
所定の測定誤差Δn =0.1%を実現できると考えてい
る。
5mm厚のLiTaO3 ではΔL1及びz1 の測定許容
誤差は約1/2となるので、実験で得られた測定誤差は
サファイアの2倍となり、Δn =+0.6%、Δt =−
0.6%である。また、スライドガラス(ソーダガラ
ス)では、もともと屈折率ns が推定値にすぎないの
で、Δt で測定精度を判断せざるを得ない。この場合、
Δt =+0.1%であり、所望の精度が得られている。
プルを対象として、≧0.1%の誤差でサンプルの屈折
率n、厚さtの同時測定ができることを実証した。次
に、本発明の第2実施例について説明する。この実施例
では、第1実施例に示した屈折率nと厚さt同時精密測
定法を用いて、さらに、媒質の群屈折率の差で与えられ
る複屈折が精度良く測定できることを提案・実証する。
具体的には、光源のスーパルミネッセントダイオード
(SLD)が、低コヒーレント、かつ非偏光(ランダム
偏光)であるために、媒質のSLD光入射面内におい
て、主軸方向が任意の方向であっても、いかなる偏光制
御・回転を必要とせずに、群屈折率差による複屈折を数
%あるいはそれ以下の精度で測定できる。
走査法、レンズ走査法のいずれも有効である。また、こ
のような簡便、かつ高精度な複屈折測定は既存の機器/
装置では未だ達成されていない。このように、低コヒー
レント光干渉に基づく本測定システムでは、屈折率と厚
さの同時測定の他に、群屈折率差による複屈折測定の可
能性が実証されたことになり、本測定システムの活用範
囲は光エレクトロニクス分野でさらに拡大することが期
待できる。
する。 ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )、ニオブ酸タンタル
(LiTaO3 )、サファイア(Al2 O3 )に代表さ
れるような光学結晶材料は、一般にΔn=4×10-3〜
10-1の複屈折を示す。これ以外にも、ガラスのような
アモルファス材料であっても、一方向から応力が加えら
れた場合には、光学的異方性が発生し、10-3オーダー
の複屈折を呈する。特に、スパッタや蒸着等で堆積した
膜材料(例えば、光ディスク材料等)はΔn≧10-3の
複屈折が生じる。このように、光学分野で使用される材
料の大半は複屈折を示すので、精密かつ簡便な複屈折測
定機器の開発は不可欠である。
ータでも原理的に可能であるが、極めて精密な光学系と
繁雑な計算を要するため、汎用の機器には複屈折測定の
機能は整備されていないのが現状である。また、既に指
摘したとおり、エリプソメータは膜厚数100μm以上
の材料に適用できないという欠点がある。これに対し
て、この第2実施例の群屈折率差による複屈折測定法で
は、上記第1実施例で示した屈折率nと厚さtの同時精
密測定の簡便なシステムをそのまま用いて、数%あるい
はそれ以下の精度で複屈折測定が可能である。
明する。 一般に、光学材料においては、直交するX、Y、Z軸
(これらを主軸という)が定められ、これらの軸方向
に、直線偏光する光が感じる屈折率をnX 、nY 、nZ
とする。これら三つの屈折率の中で少なくとも一つが異
なる値であれば、その材料は光学的異方性をもち、複屈
折を示す。しかしながら、光学材料を使用する場合に
は、一般に、三つの主軸のいずれかの軸に沿って光を入
射する。例えば、X軸方向に沿って光を入射する場合に
は、複屈折ΔnはnY とnZ の差で与えられ、
は、必ずしも、nY とnZ を個々に測定する必要はな
く、その差のみをできるだけ精密に測定すればよい。も
ちろん、この測定システムではnY 、nZ 、tを個々に
測定できるので、これからΔnを算出することもでき
る。しかし、屈折率に比べて、複屈折の絶対値ははるか
に小さく、より精密な測定が要求される。
測定法を用いて、複屈折測定が可能である。以下に測定
原理を説明する。図17に示すように、光源はスーパル
ミネッセントダイオード(SLD)であり、この出射光
は低コヒーレンスで可干渉距離が約12μmと短い上
に、さらに非偏光(ランダム偏光)である。複屈折測定
においては、このSLD光21の非偏光な点が有利であ
る。
で測定サンプル23の前面または後面に集光する。この
とき、光の入射方向はサンプル23の主軸Xに沿うもの
とし、また、光の入射面内におけるYおよびZ軸の方向
は任意でよい。光がサンプル23内に入ると、非偏光な
SLD光はサンプル23の主軸YとZの方向に偏光する
二つの直線偏光波成分に分離して伝搬する。何故なら、
複屈折を示すサンプル内では(屈折率はnY ≠nZ )、
Y軸とZ軸に偏光する二つの直線偏光波のみが伝搬可能
なためである。
光は、屈折率nY とnZ を経験した2種類の光の和とな
り、これ以外の光は反射光には含まれない。また、複屈
折測定における光学系は、基本的にはn、t同時測定の
もの(図1参照)と全く同じで良い。この光学系におい
て、前述のサンプル23後面からの反射光を参照光と干
渉して、フォトダイオードでヘテロダイン検波し、信号
処理する。このとき、反射光に含まれる2種類の光は、
サンプル23内でそれぞれ異なる光路長nY ×tおよび
nZ ×tを経験しているので(ここで、tはサンプルの
厚さ)、測定サンプル走査法、レンズ走査法のいずれに
おいても、ステージの異なる二つの位置にサンプル23
後面からの反射信号が現れる。
号強度パターンを示す。後面からの二つの信号強度パタ
ーン群の中で各々最大ピークをもつパターンを抽出す
る。これらの信号強度パターンに対応する参照光ミラー
の位置が測定できそれぞれxR1Y (=xR1o )、xR1Z
(=xR1e )である。さらに、二つのピークの間隔Δz
が測定でき、これらの実測量から、複屈折の光路長差Δ
n・tは、
例で既に述べた方法で測定できるので、このtの測定値
を用いて所望の複屈折Δnを得ることができる。このよ
うに、SLDが非偏光であるために、偏光子/検光子、
波長板あるいは偏光回転器を用いることなく、かつサン
プル面内の主軸方向は任意の位置で、複屈折が測定でき
る。これは実用的な測定装置を構成する上で大きな利点
となる。
10-1〜10-3である。したがって、屈折率の小数点以
下2〜4桁目の数値に影響を与える要因について検討し
ておく必要がある。さて、光は波動であり、この速度に
は、波面が伝搬する速度、すなわち「位相速度vp 」
と、光のエネルギーが伝搬する速度、すなわち「群速度
vg 」がある。通常のレーザ光のようなほぼ完全な単色
光においては、両者は等しいと考えて差し支えない。
では、その発振波長スペクトルは〜25nmも拡がって
おり、厳密には、とても単色光として取り扱えない。こ
の場合には、種々の波長の光が寄り集まった光の束(波
束)として取り扱う必要がある。この波束は、伝搬速度
は群速度vg であり、SLDの中心波長λC で定義され
る位相速度vp とは異なる。
は、n=c/v(ここでc=3×108 m/秒)で与え
られる。したがって、vの大きさによってnの値も異な
る。今、位相速度vp に対する「位相屈折率np 」、群
速度vg に対する「群屈折率をng 」とする。ここで、
np とng は屈折率の波長分散〔dn(λ)/dλ〕で
関係付けることができ、
る変化量であり、λc はSLDの中心波長である。種々
の光学結晶の中でも特に波長分散の大きいLiNbO3
では、λc =850nmの時、異常光屈折率ne でng
−np =0.0918である。厳密には、特に、上記
(3.1)で述べたようなSLDを用いた複屈折測定で
は、サンプルの主軸方向の「群屈折率の差」を測定する
ことになる。すなわち、所望の測定量には群速度に関与
する添字gを加えて、
に入射するSLD光の波面が平面波であれば全く問題は
ない。しかしながら、入射光をレンズで集光するため
に、サンプルへの光の入射波面は球面波となる(図17
参照)。この場合には、nY およびnZ の測定におい
て、光の入射軸方向(X軸)の屈折率nX の影響を受
け、これが(Δng ×t)の測定誤差の要因となる。
誤差について検討した。レンズの開口数をNA=sin
θとして、球面波が感ずる異常光屈折率neg(θ)は良
く知られた「屈折率楕円体」を用いて計算できる。neg
(θ)と平面波照射の場合のneg(0)(=neg=
nZg)との差が測定誤差となる。レンズの開口数NA=
sinθに対するnegの測定誤差δneの変化を図19に
示す。複屈折率測定に使用するレンズは×20対物レン
ズでsinθ=0.3である。図19より、sinθ=
0.3では誤差は、たかだかδne<0.1%であり、こ
れによる複屈折Δng の測定における誤差は<1%が十
分に期待できる。
て、複屈折(Δng 〜0.09)、波長分散(〜0.0
9)共に大きなXカットLiNbO3 を用いた。測定サ
ンプル走査法で得られたサンプル後面からの反射信号強
度パターンを図20に示す。
μmステップで変えて、サンプルを搭載したステージを
繰り返し走査すると、常光線及び異常光線の屈折率(n
ogおよびneg)を経験した反射信号が、次々に分離して
得られる〔図20(a)参照〕。常光線と異常光線に関
与する二つの信号強度パターン群の中から、最大ピーク
を示すものを抽出した〔図20(b)参照〕。
ラーの位置xR1o (=1940μm)、xR1e (183
0μm)、および最大ピークの間隔Δz(=15μm)
から、上記式(13)を用いて、複屈折によるサンプル
の光路長差Δng ×t(=95μm)を得た。測定値と
理論値を対比して表3にまとめた。
であり、これは実験で精度1μmのステージを使用した
ためである。また、表3の括弧内の数値は位相屈折率に
関する値である。実測値95μmは明らかに光の位相速
度による光路長差Δnp ×tとは異なっている。この事
実は、複屈折測定においては、光の群速度を考慮した上
記式(15)の妥当性を実証するものである。
実施例の屈折率nと厚さtの同時精密測定法をもとに、
さらに、媒質の群屈折率の差で与えられる複屈折が精度
良く測定できることを提案・実証した。この複屈折測定
においては、測定サンプル走査法、レンズ走査法のいず
れも有効である。現状では、LiNbO3 で測定精度は
〜1%であるが、0.1μm精度のステージを用いれ
ば、10-3オーダーの複屈折Δng を数%の精度で測定
できると考えている。
測定システムでは、屈折率と厚さの同時測定の他に、群
屈折率差による複屈折測定の可能性が実証されたことに
なり、本測定システムの活用範囲は光エレクトロニクス
分野でさらに拡大することが期待できる。なお、本発明
は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨
に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の
範囲から排除するものではない。
本発明によれば、次のような効果を奏することができ
る。 (1)低コヒーレント干渉光学系と微動ステージを融合
した比較的簡単な光学測定系と検出信号処理により、精
度の高い測定対象物の屈折率と厚さとを同時に測定する
ことができる。
率n及び厚さtを0.1%の高精度で測定できる。 (3)集光ビーム照射であるので、媒質の屈折率n及び
厚さtの空間分布を測定することができる。 (4)また、媒質の測定面は必ずしも鏡面である必要は
なく、粗面であっても測定が可能であり、生体組織のよ
うに極めて散乱が大きい媒質にも適用することができる
(なお、散乱媒質においては、反射直進光を抽出して測
定する)。
の透明板を用いれば、本測定法に基づき、レンズの開口
数NAの実測が可能である。 (6)なお、低コヒーレント光源は、必ずしもSLDに
限るものではなく、閾値以下の注入電流で駆動されるレ
ーザーダイオード(LD)等、可干渉距離が数10μm
程度、あるいはそれ以下の光源は全て使用することがで
きる。従って、本測定法において、発振中心波長が相異
なる数個のLDを併用することによって、測定対象物の
屈折率の波長分散をも測定することができる。
ステムでは、屈折率と厚さ同時測定の他に、群屈折率差
による複屈折測定を行うことができる。
渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定の基本
的なシステム構成図である。
とレンズ走査法の説明図である。
とレンズ走査法の参照光ミラーの動作を示す図である。
の原理図である。
けるコヒーレント反射光強度を示す図である。
で検出される信号光強度パターン群を示す図である。
図である。
して得られる干渉信号強度パターン(SLDの可干渉性
そのもの)を示す図である。
される信号光強度パターン群を示す図である。
折率の測定誤差Δn =10-3を得るための測定条件を示
す図である。
6mmφのサンプル前面からの反射信号強度パターン群
を示す図である。
6mmφのサンプル後面からの反射信号強度パターン群
を示す図である。
6mmφのサンプル前面及び後面からの反射信号強度パ
ターン群を示す図である。
径6mmφのサンプル前面からの反射信号強度パターン
群を示す図である。
径6mmφのサンプル後面からの反射信号強度パターン
群を示す図である。
径6mmφのサンプル前面及び後面からの反射信号強度
パターン群を示す図である。
ンプルの複屈折の主軸を示す図である。
法で得られる信号強度パターンを示す図である。
A=sinθに対するncgの測定誤差δneの変化を示す
図である。
法で得られたサンプル後面からの反射信号強度パターン
を示す図である。
Claims (11)
- 【請求項1】 低コヒーレント干渉光学系と測定対象物
又は集光レンズを搭載する微動ステージを備え、前記低
コヒーレント干渉光学系の光を集光レンズで前記測定対
象物に集光して、該測定対象物の前面及び後面に焦点を
合わせ、これら二つの集光状態の光路差と二つの集光状
態を得るために必要な測定対象物又は集光レンズの移動
距離とを求め、測定対象物の屈折率と厚さとを同時に測
定する光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時
測定方法。 - 【請求項2】 請求項1記載の光干渉法による測定対象
物の屈折率と厚さの同時測定方法において、前記測定対
象物を搭載する微動ステージを移動させ測定対象物を走
査することを特徴とする光干渉法による測定対象物の屈
折率と厚さの同時測定方法。 - 【請求項3】 請求項1記載の光干渉法による測定対象
物の屈折率と厚さの同時測定方法において、前記集光レ
ンズを搭載する微動ステージを移動させ集光レンズを走
査することを特徴とする光干渉法による測定対象物の屈
折率と厚さの同時測定方法。 - 【請求項4】 請求項1記載の光干渉法による測定対象
物の屈折率と厚さの同時測定方法において、更に、前記
測定対象物の群屈折率差による複屈折測定を行うことを
特徴とする光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの
同時測定方法。 - 【請求項5】(a)低コヒーレント光を出射する光源
と、(b)該光源からの低コヒーレント光を分けるビー
ムスプリッタと、(c)該ビームスプリッタにより分け
られる一方の光を受ける参照光ミラーと、(d)参照光
を位相変調するために前記参照光ミラーを振動させる振
動子と、(e)前記参照光ミラーを微小移動させる第1
のステージと、(f)前記ビームスプリッタにより分け
られる他方の光をレンズにより集光して測定対象物に照
射する手段と、(g)前記測定対象物を微小移動させる
第2のステージと、(h)前記測定対象物からの反射光
と前記参照光ミラーからの参照光を合波・干渉させて検
波する受光素子とを具備する光干渉法による測定対象物
の屈折率と厚さの同時測定装置。 - 【請求項6】 請求項5記載の光干渉法による測定対象
物の屈折率と厚さの同時測定装置において、前記レンズ
を微小移動させる第3のステージを具備することを特徴
とする光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同時
測定装置。 - 【請求項7】 請求項5又は6記載の光干渉法による測
定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置において、前記
光源はスーパルミネッセントダイオードであることを特
徴とする光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの同
時測定装置。 - 【請求項8】 請求項5又は6記載の光干渉法による測
定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置において、前記
受光素子はヘテロダイン検波するフォトダイオードであ
ることを特徴とする光干渉法による測定対象物の屈折率
と厚さの同時測定装置。 - 【請求項9】 請求項5又は6記載の光干渉法による測
定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置において、前記
測定対象物は厚さ数100μm以上の媒質であることを
特徴とする光干渉法による測定対象物の屈折率と厚さの
同時測定装置。 - 【請求項10】 請求項5又は6記載の光干渉法による
測定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置において、前
記測定対象物は生体組織であることを特徴とする光干渉
法による測定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置。 - 【請求項11】 請求項5又は6記載の光干渉法による
測定対象物の屈折率と厚さの同時測定装置において、前
記測定対象物の群屈折率差による複屈折測定手段を付加
することを特徴とする光干渉法による測定対象物の屈折
率と厚さの同時測定装置。
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