JPH10280061A - 鉄系形状記憶合金製鋳造部材の製造方法及び鋳造部材 - Google Patents

鉄系形状記憶合金製鋳造部材の製造方法及び鋳造部材

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JPH10280061A
JPH10280061A JP8365597A JP8365597A JPH10280061A JP H10280061 A JPH10280061 A JP H10280061A JP 8365597 A JP8365597 A JP 8365597A JP 8365597 A JP8365597 A JP 8365597A JP H10280061 A JPH10280061 A JP H10280061A
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memory alloy
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cooling
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Tadakatsu Maruyama
忠克 丸山
Mitsunori Tomaru
光紀 都丸
Masaru Ikebe
優 池邊
Kazuo Aoki
和雄 青木
Tai Tamaki
耐 田巻
Hiroaki Otsuka
広明 大塚
Shigeki Oba
滋喜 大歯
Hajime Fukuda
一 福田
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Awaji Sangyo KK
Nippon Steel Corp
Showa Tekko KK
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Awaji Sangyo KK
Nippon Steel Corp
Showa Tekko KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱間加工工程を経ることなく、今までにない
簡略化された製造工程によって、通常の形状の締結部材
や、従来では簡単には得られなかった装飾的なもしくは
複雑な形状の締結部材をも、容易に得ることができる鋳
造部材の製造方法を提供すること。 【解決手段】 鉄系形状記憶合金を溶解してから、目的
とする製品部材に近い形状の素部材に鋳造した後、凝固
から600℃までの温度領域の平均冷却速度が10℃/
min 以上でかつ1500℃/min 以下となるように冷却
し、次いで600℃以上への加熱処理を施した後に冷間
で変形を付与する。これによって簡単に種々の形状・構
造の鉄系形状記憶合金製鋳造部材を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パイプ継手などの
締結部材やその他の部材として利用できる鋳造部材の製
造方法及び鋳造部材、特に、鋳造ままで製品として使用
できる鉄系形状記憶合金製鋳造部材の製造方法とこの方
法によって得られる鋳造部材に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄系形状記憶合金は、各種パイプ用継手
を始めとする締結部材に応用されているが、これらの部
材は、鋳造した素材に、圧延や鍛造、押し出し、引き抜
き等の熱間加工工程を経由させることによって、偏析や
巨大析出物を伴う粗大結晶からなる鋳造組織を破壊し
て、均一で結晶の細かい状態とした上で製品に加工され
ているのが現状である。
【0003】しかして、例えば、パイプ継手のような締
結部材を例にした場合の従来の製造工程は、主として次
の二通りに分けられる。 (1)溶解→鋼塊→熱間圧延(板)→プレス成形→溶接
→熱処理→冷間拡径 (2)溶解→鋼塊→熱間圧延(棒)→穴ぐり加工→熱処
理→冷間拡径 いずれにしろ従来の鉄系形状記憶合金製締結部材の製造
工程においては、熱間加工工程が必須であり、それ無し
では製造不可能と考えられていた。しかし一般に、熱間
加工工程を経由させるためには、清浄度の高い素材が要
求される場合のあることは良く知られている。
【0004】すなわち、熱間加工性は合金元素や不純物
元素の種類と量によって著しく左右される。鉄系形状記
憶合金の場合、不純物としてPが多くなると、熱間での
延性が極めて劣化することが確認されている。そのため
溶製に際してPの低い高価な原料を使うか、溶解過程で
Pを除去することが必要となり(実際にはこれは難しい
が)、いずれにしてもコストが高くなる。しかし、Pは
形状記憶性能に特別悪影響を及ぼすものではなく、ただ
熱間加工で割れを生じさせないで形を作るための目的で
低減せしめるものであった。
【0005】また、従来の製造工程では、意匠性の高
い、複雑な形状の締結部材、断面が多角形のバーやパイ
プ類を締結するための継手、さらにはソケット、エルボ
やチーズ、レデューサなどの特殊継手の如きものを得る
のは不可能ではないがかなり困難であった。
【0006】即ち、鉄系形状記憶合金は、本来特性とし
ての冷間加工性にさほど難があるわけではないが、形状
記憶性能を付与するための冷間での加工(拡径など)を
行った後の状態では、細密な加工は必ずしも容易ではな
い。意匠性の高い締結部材、例えば円筒状の継手の外面
に立体的な装飾を施した部材などを作る場合には、冷間
での拡径などの加工が行われた後で切削などの仕上げを
行うことが必要であったから、工具の摩耗も激しく難し
い作業が要求されていた。また、円筒状の継手の内面に
突起をつけた部材を作る場合には、同様に厚肉の円筒の
内側の突起以外の部分を削り捨てて製作する、という多
大な手間をかけることと著しい歩留まりの低下は避けら
れなかった。
【0007】さらに、多角形断面のバーやパイプ類を締
結する継手は、圧延板を巻いたり棒材を穴ぐり加工して
作る断面円形の継手に比し、製作により一層の手間がか
かり、実用性に問題があった。また、ソケット、エルボ
やチーズ、レデューサなどの特殊継手は、鉄系形状記憶
合金で直接製作することは困難なため、ソケット、エル
ボやチーズ、レデューサなどの継手本体を、締結するバ
ーやパイプと同じ素材で別途作っておき、鉄系形状記憶
合金製の単純な円筒状の継手を2個もしくは3個使用し
て、継手本体とパイプやバーとを締結するという、非常
に面倒な作業を余儀無くされていた。
【0008】このように従来では鉄系形状記憶合金製の
継手類は必ず熱間加工工程を経ており、直接鋳造によっ
て製作することはなかったが、鉄系形状記憶合金を溶解
してこれを直接凝固させて薄板または線に形成する製造
方法については、特開昭62−112751号公報に開
示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来の鉄系形状記憶合金製の各種部材の製造方法に必然的
に内在していた問題点を解決したもので、熱間加工工程
を経ることなく、今までにない簡略化された製造工程に
よって、通常の形状の締結部材や、従来では簡単には得
られなかった装飾的なもしくは複雑な形状の部材をも、
容易に得ることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明に係る請求項1の鉄系形状記憶合金製鋳造部材
の製造方法は、溶解した鉄系形状記憶合金を仕上がり形
状に近い素部材に鋳造した後、凝固から600℃までの
温度領域の平均冷却速度が10℃/min 以上でかつ15
00℃/min 以下となるように冷却し、次いで600℃
以上への加熱処理を施した後に冷間で変形を付与するこ
とを特徴とする。そして、本発明では請求項2として、
上記の請求項1記載の方法において、鋳造後の冷却過程
を経た素部材に、予備加工を施すことを特徴とする。ま
た、請求項3として、上記請求項1又は2記載の方法に
おいて、冷間で変形を付与した後に、さらに仕上げ加工
を行うことを特徴とする。さらに、本発明においては、
上記した本発明に係る各製造方法によって製作した鋳造
部材そのものを対象とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を説明す
る。本発明に係る鉄系形状記憶合金製鋳造部材の製造方
法の実施形態としては、次の四つの形態が挙げられる。 溶解→鋳造→急冷→熱処理→冷間変形(冷間拡径) 溶解→鋳造→急冷→予備加工→熱処理→冷間変形(冷
間拡径) 溶解→鋳造→急冷→熱処理→冷間変形(冷間拡径)→
仕上げ加工 溶解→鋳造→急冷→予備加工→熱処理→冷間変形(冷
間拡径)→仕上げ加工 次に、本発明の必須の各工程についてそれぞれ説明す
る。
【0012】(1)鋳造 所望の成分系からなる鉄系形状記憶合金を溶製した後、
これを鋳造して所定の締結部材に近い形状の素部材にす
るが、鋳造方式としては、砂型鋳造、ロストワックス、
シェルモールド、遠心鋳造などの方法が挙げられる。本
発明では、鋳造後の冷却速度が後述する条件を満たす限
り、これらの鋳造方法については特に規定しない。しか
し、一般的には、精密な意匠性が必要な部材は、ロスト
ワックスやシェルモールド法が、大型部材は砂型鋳造法
が、更に、単純形状の部材で量産の必要なものは遠心鋳
造法によることが好ましい。
【0013】(2)冷却(特に冷却速度) 鋳造後の冷却過程においては、偏析や析出物の形成、結
晶粒の粗大化などの現象が進行する。徐冷されると、こ
れらの現象は特に顕著に進んで延靭性の低下や不均一を
招き、一旦、これらの状況が生じると、高温度に再加熱
して熱間で加工を加えないと、良好な性質を回復するこ
とは困難となる。鉄系形状記憶合金のこれまでの製造
が、常に熱間加工工程を経ることを前提としていたの
は、鋳造ままでは多少の違いはあれ、冷却中の偏析、析
出物の生成、結晶粒粗大化は避けられない現象であっ
て、これを次の熱間加工工程を通して改善することが当
然と考えられていたためである。
【0014】これに対して本発明方法は熱間加工工程を
省き、鋳造後の溶体化熱処理だけで利用可能にしようと
するものであるから、鋳造後の冷却中に進行する偏析、
析出、結晶粒粗大化などの不都合を極力抑制しておくこ
とが必要である。これらの反応は徐冷されるほど著しく
促進することから、ある程度以上の早い冷却速度で冷却
しておくことで、反応を抑制することが可能であること
を知見した。即ち、本発明者らはこのような観点から冷
却速度について種々検討した結果、適正な冷却速度範囲
を見いだした。すなわち、「凝固から600℃までの温
度領域の平均冷却速度が、10℃/min 以上となるよう
に冷却する」ことで、偏析、析出、結晶粒の粗大化を避
けることが必要であることを見いだした。一方、過度の
急速冷却は、部材に歪みを与えて形状不良や割れ発生の
原因となるため、冷却速度は早くても1500℃/min
以下にとどめる必要のあることも判明した。冷却速度を
規制する温度範囲を「凝固から600℃まで」としたの
は、偏析、析出、結晶粒粗大化などの冶金的反応、並び
に冷却過程での不均一な歪み発生は、この温度範囲にお
いて主に生じるからである。
【0015】鋳造後の冷却速度をコントロールする具体
的な方法については次のようにすることが一般的であ
る。砂型鋳造や遠心鋳造の場合には、鋳型の熱容量が大
きいため高温度側は急冷される傾向がある。しかし、低
温度側になると徐々に冷却速度が低下してくるので、本
発明の冷却速度範囲を確保するためには、鋳造法に応じ
た適切な処置が必要となる場合がある。砂型の場合では
ある程度(例えば、800℃程度)に温度が低下した時
点で脱型して低温度側の冷却を促進することが効果的で
ある。また、遠心鋳造の場合は、鋳型の外側を冷却する
ことが必要となる場合がある。また、ロストワックスや
シェルモールド法の場合は、鋳型が予熱されているため
に高温度側が徐冷される傾向があるので、必要に応じて
鋳込み後に鋳型の外側から水冷することが有効である。
【0016】(3)熱処理 熱処理は鋳造ままの部材の歪みの除去と、偏析や析出の
改善を行なうためのものであり、その処理温度は少なく
とも600℃以上とすることが必要とされる。この熱処
理温度の上限は、操業上の理由や融点等の理由で、大体
1300℃程度に抑えることが望ましい。熱処理温度の
好適な範囲としては、900℃〜1000℃である。
【0017】(4)冷間変形 一般に、鉄系形状記憶合金は、事前に冷間で変形を与え
ておくことによって、次に加熱されたときにその変形と
逆の方向への動作を形状回復動作として取り出すことが
できる。このために冷間での変形は必須である。変形の
方法としては、鉄系形状記憶合金製締結部材を締結に使
うときに収縮させるか拡径させるかによって、冷間変形
工程はその逆方向(拡径もしくは縮径)にする必要があ
る。
【0018】具体的には、拡径はマンドレルを通す方法
によって行なうことができる。しかし、鉄系形状記憶合
金製継手内面に突起を形成した場合には、突起が邪魔に
なってこの方式では拡径は難しい。そのような場合に
は、マンドレルを使わずに、液圧によるか、または金型
を6個以上の割り型式にして、継手内部に差し込んでか
ら割り型を押し広げる方法などによって拡径を行なえば
よい。
【0019】縮径はダイス状の型の中に継手部材を押し
込むか、または、一旦継手を偏平に変形させた後、対応
する凹型の間で圧縮する方法によっても行なうことがで
きる。特殊な場合には、鉄系形状記憶合金の部材に曲げ
動作などを起こさせて利用する場合もある。このような
場合にも、基本的には利用しようとする動作と逆方向の
冷間変形を予め与えておくという原則が適用される。
【0020】上述の過程は、一度冷間変形を行なった後
に適当な温度に加熱し、その後に再度冷間変形を行なう
形で行なうこともできる。このように冷間変形後に適当
な温度への加熱と再度の冷間変形を繰り返して行なうの
は、トレーニング処理と呼ばれ、鉄系形状記憶合金の形
状記憶効果を向上させるのに有効な手段として公知の技
術である(特開平2−112720号公報に「20%以
下の変形(加工)と400℃以上の加熱を1回以上与え
る」特性向上方法として開示されている)。
【0021】(5)予備加工 本発明方法では、鋳造状態でほぼ製品に近い形状となる
ため、鋳造上がりの状態で多少の切削などの加工を加え
ておくことが有効な場合がある。少なくともバリの除
去、表面に出た小さな鋳造欠陥部分のグラインダー加
工、精密なデザイン部分の手直し加工などは必要に応じ
て実施することが望ましい。
【0022】(6)仕上げ加工 また、冷間変形によって鋳造部材の形状に多少の変化が
生じるので、デザイン部分の手直しや成形などの簡単な
加工は、この仕上げ段階で行なうことができる。
【0023】(7)形状記憶合金 本発明は鉄を主要成分とする鉄系形状記憶合金に対して
適応できるが、特に、特開昭61−7664号公報記載
の鉄系形状記憶合金、特開昭61−201761号公報
記載の形状記憶合金など、Fe、Mn、Siを主要成分
としてこれに各種の合金元素が添加された一連の鉄系形
状記憶合金を用いることが望ましい。このような合金は
前掲した特開昭62−112751号公報にも開示され
ているが、この公報記載の技術は、溶融合金を直接ロー
ル方式などの急冷凝固装置に導いて急冷凝固させること
によって焼鈍工程を経ずに厚みの小さい板や細い線など
の中間製品を製造することを目的としているため、急冷
による歪みは余り問題にする必要がない。これに対し本
発明は最終製品の仕上がり形状に近い素部材を鋳造によ
って作るため、冷却中に歪みを極力発生させないこと、
およびそれでも冷却中に発生した多少の歪みは熱処理
(焼鈍)によって除去することを必須としたものであ
る。
【0024】
【実施例】
(実施例1)28%Mn−6%Si−5%Cr−Fe系
の形状記憶合金を70kgf の大気炉で溶製したのち、ロ
ストワックス法、シェルモールド法、遠心鋳造法、砂型
法、によって種々の寸法の円筒を作製した。表1に、作
製した円筒の寸法と鋳造方法、鋳造後の冷却過程におけ
る凝固から600℃までの間の冷却速度、冷間変形(こ
こではマンドレルを通して拡径を行なった)における変
形率(内径の拡径率)、冷間変形での割れの発生の有
無、変形後の300℃への加熱による内径の収縮率を示
した。
【0025】この形状記憶合金素材の場合には、熱間加
工工程を経て円筒形に成形された部材(熱間圧延版をプ
レス成形した後溶接して円筒にしたものや、鍛造した丸
棒材から穴ぐり加工して円筒にしたもの)を本実施例と
同じ拡径処理したものの300℃への加熱時の収縮率が
1.2%から3.0%であるから、本発明の実施例で得
られている縮径率は、これらと比べて何等見劣りするも
のではないことが判る。
【0026】(実施例2)実施例1における「A」シリ
ーズのサイズの円筒2個(記号A5及びA6)は、ロス
トワックス法で鋳造後600℃までの平均冷却速度が約
40℃/min で冷却された後、950℃への加熱処理を
行った。ここまでの製造条件は実施例1の番号A1と同
じである。この円筒の肉厚の内径側を約0.5mm切削加
工して、内径が19.97mmとなるような予備加工を行
った後に、マンドレル拡径法によって内径を6.77%
だけ拡径した。さらにこれを600℃に加熱した後の内
径は3.27%の収縮を示した。
【0027】次に、この同じ部材に対し、前より大きな
マンドレルを使って内径を4.97%だけ拡径する第2
回目の拡径処理を行った。このような最初の拡径後に一
定温度への加熱と再度の拡径処理を繰り返すことは、ト
レーニング処理と呼ばれて、形状記憶効果を高めるため
の手法として公知のものである。
【0028】本実施例の内の1個「A5」部材は、しか
る後に300℃への加熱を行ったところ、内径が3.7
8%の収縮率を示した。このことは、熱処理前の予備加
工が何等の弊害もなく実施可能なことと共に、トレーニ
ング処理という公知の特性改善手法が、鋳造法による本
発明の素材に対しても適応可能であることを明確に示す
ものである。残りの部材「A6」は、部材の両端にそれ
ぞれ1本ずつパイプを差し込んでから誘導加熱法によっ
て300℃に加熱したところ、2本のパイプは本発明締
結部材によって一体に締結されたことが確認できた。
【0029】(実施例3)実施例1において砂型鋳造し
た部材と外径、内径、長さの同じ部材の内側に、図1に
示すような突起Aを形成したものを別途鋳造した。これ
は円筒の両端面の内側にリング状の突起となるもので、
パイプ状の相手材を締結する際に、相手材に形成したリ
ング状溝と噛み合って締結力を強化する機能を持たせる
ためのものである。本実施例では、この形状を砂型で鋳
造した後、液圧拡径法によって冷間変形を行った。実施
例1のマンドレル法に代えて液圧拡径法を採用したの
は、円筒の内側にある突起が拡径時に損傷を受けないよ
うにするためである。鋳造後600℃までの平均冷却速
度は38℃/min であった。冷却後には800℃への加
熱処理を行った。
【0030】冷却変形としては、液圧拡径で内径を約7
%拡径したが、拡径時の割れ発生は全く認められなかっ
た。ただし、内径が広がったことによって突起部分の形
状にかなりの変形が生じたので、特に突起の角が鋭角的
になるように、突起部分についての仕上げ加工を実施し
た。しかる後に400℃に加熱したところ、円筒中央部
分の内径収縮率で2.8%が得られ、締結部材として十
分な機能を有することが確認された。
【0031】(実施例4)32%Mn−6%Si−Fe
系の形状記憶合金を砂型鋳造法で内径26mm、長さ15
0mmの円筒形状部材を製作した。外表面には立体的な模
様を鋳造によって形成したために肉厚は均一ではない
が、最も厚い部分の肉厚は17mm、最も薄い部分で7.
5mmである。この部材の鋳造後600℃までの平均冷却
速度は30℃/min であった。
【0032】この部材の内径を27mmに予備加工した後
950℃に加熱処理し、内径を6.75%だけ冷間でマ
ンドレル法によって拡径を行った。部材表面の模様が熱
処理と拡径によって多少の変形を生じたので、この段階
で模様部分に修正のための切削並びにグラインダー加工
を施して、しかる後に300℃への加熱を行ったとこ
ろ、内径で3.2%の収縮が得られた。
【0033】(実施例5)32%Mn−6%Si−Fe
系の形状記憶合金をロストワックス法によって実施例1
のBシリーズと同じサイズ(外径62.7mm)に鋳造し
た。鋳造後600℃までの平均冷却速度は35℃/min
、冷却後には1000℃への加熱処理を行った。この
円筒部材を一旦断面が楕円形になるように側面からプレ
スした後、1組の凹面金型(凹面は半円形でその直径は
57.7mm)の間に挟んで長径側を圧縮するようにプレ
スすることによって、外径を7%だけ収縮させた。これ
を600℃に加熱すると、外径は前記縮径加工後の状態
に比べて3.2%だけ広がった。冷間変形を縮径加工と
することによって、加熱に際して外径が拡径するような
部材を製作することも可能であることが確認された。
【0034】拡径や縮径にとどまらず、利用しようとす
るのと反対方向への冷間変形を予め付与してやることに
より、曲げ、引張、圧縮、捻りなどの様々な動作を引き
出すことができるのは、これまでに開示されている各種
の鉄系形状記憶合金と何等変わるものではない。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る鋳造部
材の製造方法によれば、次の効果を期待できる。 鋳造ままで製品とすることができるので、従来必須と
された熱間加工工程を不要とすることから、製造工程が
極めて単純となり、その工業上の効果は非常に大きい。 しかも、熱間加工工程を経ないため、従来必要とされ
た清浄度の高い高価な素材を使わずにすむ。このためP
を≦0.05%程度の通常レベルまで含有されても問題
はなく、それだけ低コストの素材を使用できる。 本発明は鋳造ままであるので、直接製品に近い形で製
造可能であることから、通常の締結部材に限らず、意匠
性の高い、複雑な締結部材や締結部材以外の部材を容易
に作ることができる。例えば、従来では製作が困難とさ
れていた、形状記憶合金製のソケット、エルボ、チー
ズ、レジューサ等の特殊な継手を容易に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例3に基づき鋳造した突起付き円
筒の断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丸山 忠克 東京都千代田区神田小川町2−3−13 M &Cビル4F 淡路産業株式会社東京支社 内 (72)発明者 都丸 光紀 東京都千代田区神田小川町2−3−13 M &Cビル4F 淡路産業株式会社東京支社 内 (72)発明者 池邊 優 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 (72)発明者 青木 和雄 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 (72)発明者 田巻 耐 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 (72)発明者 大塚 広明 神奈川県川崎市中原区井田3丁目35番1号 新日本製鐵株式会社技術開発本部内 (72)発明者 大歯 滋喜 福岡県福岡市東区箱崎ふ頭3丁目1番35号 昭和鉄工株式会社内 (72)発明者 福田 一 福岡県糟屋郡古賀町糸ヶ浦52 昭和鉄工株 式会社古賀工場内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶解した鉄系形状記憶合金を仕上がり形
    状に近い素部材に鋳造した後、凝固から600℃までの
    温度領域の平均冷却速度が10℃/min 以上でかつ15
    00℃/min 以下となるように冷却し、次いで600℃
    以上への加熱処理を施した後に冷間で変形を付与するこ
    とを特徴とする鉄系形状記憶合金製鋳造部材の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 鋳造後の冷却過程を経た素部材に、予備
    加工を施すことを特徴とする請求項1記載の鉄系形状記
    憶合金製鋳造部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 冷間で変形を付与した後に、さらに仕上
    げ加工を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の鉄
    系形状記憶合金製鋳造部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載され
    た製造方法によって製作された鉄系形状記憶合金製鋳造
    部材。
JP8365597A 1997-04-02 1997-04-02 鉄系形状記憶合金製鋳造部材の製造方法及び鋳造部材 Withdrawn JPH10280061A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7112302B2 (en) 2003-05-23 2006-09-26 Yoshimi Inc. Methods for making shape memory alloy products
WO2018186321A1 (ja) 2017-04-04 2018-10-11 国立研究開発法人物質・材料研究機構 低サイクル疲労特性に優れるFe-Mn-Si系合金鋳造材

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