JP5255474B2 - 鉄基形状記憶合金形材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、無遊間接続用のレール継目板を始めとする機械構造用部材として適用する上で好適な鉄基形状記憶合金の製造方法に関する。
形状記憶合金は、室温(変態点以下)で変形させても、その変態点以上に加熱すると変形前の形状に戻るという特異な性質を有し、機能性金属材料として様々な分野に応用されている。中でもTi−Ni系合金は、数%にも及ぶ大きな変形歪みを加えても負荷応力を除けば加熱しなくても形状が元に戻る、いわゆる超弾性材料としての特性を発揮でき、形状記憶効果が高く、メガネフレームやブラジャーのワイヤー等の民生用にも使用されている。また、このTi−Ni系合金は、熱弾性型マルテンサイト変態合金に属しているため熱履歴が小さく、温度センサーを兼ねたアクチュエータへの使用も可能である。しかし、Ti−Ni系合金は一般に高価であることから、比較的規模の大きい機械構造用部材には殆ど適用されていない。
一方、安価な鉄をベースにしている鉄基形状記憶合金は、Feを基にしたMn,Si等の成分からなり、機械構造用部材への適用が可能であり、鉄鋼材料と同等以上の強度を有する鉄基形状記憶合金が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、鉄基形状記憶合金は、熱弾性型マルテンサイト変態特性を示さない合金であり、更にはTi−Ni系合金に比べて形状記憶効果(形状回復歪み)が小さいという欠点を有している。その欠点を補うために、熱処理と冷間歪みの付与を適正に組み合わせ、形状記憶特性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
また、鉄基形状記憶合金は、形状回復歪みは小さいものの、形状回復力が大きいため、レールの接合のための継目板として利用する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。これは、予め長さ方向に引張変形を与えて形状記憶効果を付与した形状記憶合金からなる継目板を、レールの両側面に当てて、ボルトとナットにより緩めに接続した後、継目板部分に熱を加えて継目板を長さ方向に収縮させて、直列に隣り合うレール相互を引き寄せて、レール間を隙間無く接合するものである。
さらに、本発明者らの一部は、レール継目板用の鉄基形状記憶合金をより安価で製造する技術を提案している(例えば、特許文献5参照。)。これは、従来の圧延による製造ではなく、熱間押出製法を適用し、長尺の鉄基形状記憶合金の形材を製造するものである。特に、熱間押出後の曲がりの修正のために行われる矯正工程を、形状記憶効果を付与するための引張変形と兼用させることにより、製造コストを削減することができる。
特開平10−226849号公報 特開昭62−112720号公報 特開2001−262226号公報 特公昭59−642号公報 特願2008−136200号
しかしながら、特に特許文献5に開示されている熱間押出製法を適用した形状記憶合金
の製造には、以下のような問題点があるという知見を得た。
1)熱間押出後、曲がりの矯正及び形状記憶効果の付与のために、室温で、鉄基形状記憶合金形材の両端を把持して引張歪みを付与する。この工程では、鉄基形状記憶合金形材の両端をチャッキングする際に滑りを生じやすく、うまく矯正できないことがある。
2)鉄基形状記憶合金は溶融脆化開始温度が低いが、熱間変形抵抗が高い。そのため、熱間押出を行う際に、高温側では表面に疵が入りやすく、低温側では押し詰まりを生じやすい。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱間押出製法に基づいて製造される鉄基形状記憶合金形材を、従来よりも安定して効率良く製造することが可能な鉄基形状記憶合金形材の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、質量%でSi:3〜7%、Mn:25〜30%、Cr:3〜7%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるビレットを1050〜1200℃に加熱して熱間押出を行い、得られた形材を室温まで冷却した後、形材における少なくとも長手方向両端に位置する把持部を600〜1000℃で10分以上加熱してその後室温まで冷却し、室温下で把持部を把持して引張応力を負荷することにより形材に対して5〜15%の引張塑性歪みを付与し、さらに形材の全体を600〜800℃で10分以上加熱して室温まで冷却し、室温下で前記把持部を把持して引張応力を負荷することにより前記形材に対して5〜15%の引張塑性歪みを付与することにより、従来よりも安定して効率良く製造することが可能な鉄基形状記憶合金形材の製造方法を発明した。
即ち、第1の発明は、質量%で、Si:3〜7%、Mn:25〜30%、Cr:3〜7%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるビレットを1050〜1200℃に加熱して熱間押出によって成形し、前記成形された形材を室温まで冷却し、前記冷却された形材における少なくとも長手方向両端に位置する把持部を600〜1000℃で10分以上加熱してその後室温まで冷却し、室温下で前記把持部を把持して前記形材に引張応力を負荷することにより5〜15%の引張塑性歪みを付与し、さらに前記形材の全体を600〜800℃で10分以上加熱して室温まで冷却し、室温下で前記把持部を把持して前記形材に引張応力を負荷することにより5〜15%の引張塑性歪みを付与することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記ビレットの加熱温度を1070〜1130℃とすることを特徴とする。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記熱間押出後、1000℃から600℃までを1℃/秒以下の冷却速度で冷却することを特徴とする。
本発明の鉄基形状記憶合金形材の製造方法によれば、室温まで冷却した鉄基形状記憶合金形材の少なくとも長手方向両端に位置する把持部を600℃〜1000℃で10分以上加熱することにより、矯正と形状記憶効果の付与とを兼ねた室温での引張工程において、両端の把持部でのチャック滑りが防止される。また、ビレットを適正な温度範囲内に加熱して押出成形を行うことにより、表面の疵の発生が抑制され、押し詰まりを防止することができる。さらに、熱間押出後、1000℃から600℃までの冷却速度が1℃/秒以下になるように室温まで冷却すると、溶体化熱処理を省略することができる。
本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材の製造方法のフローチャートである。 単軸の引張による、Fe−Mn−Si系形状記憶合金の温度の絞り値の関係を示す図である。 単軸の引張による、Fe−Mn−Si系形状記憶合金の温度と変形抵抗の関係を示す図である。 実施例で製造した形状記憶合金形材の断面形状を示す図である。
以下、本発明の実施の形態として、鉄基形状記憶合金形材の製造方法について、詳細に説明する。
先ず、本発明の技術的特徴並びに完成に至った経緯について説明をする。
鉄基形状記憶合金の形状記憶効果を高めるためには、第1の引張変形付与工程を行い、加熱した後、更に、第2の引張変形付与工程を行うことが必要である。また、熱間押出後の形材は必ずしも真っ直ぐではなく、通常撓みが生じているため、形状を矯正する必要がある。本発明の鉄基形状記憶合金形材の製造方法の大きなメリットは、形材の形状を矯正する引張矯正工程と、形状記憶効果付与のための第1の引張変形付与工程とを兼用させる点にある。
押出後の形材の形状を矯正するためには、形材の両端部を把持し、引張矯正機によって、室温で形材の長手方向に向けて引っ張ることが必要である。また、引張変形による矯正は形状記憶効果付与も兼ねている。しかし、この引張工程においては、例えばチャックにより形材の両端に位置する把持部を把持するところ、これに引張変形を加えた場合に当該チャックが形材の把持部から滑る、いわゆるチャック滑りが生じてしまい、引張応力を効果的に負荷することができない場合が多い。その理由としては、形状記憶合金に対して応力誘起マルテンサイト変態が生じ、チャックにより把持すべき把持部(上記形材の長手方向両端部)が著しく加工硬化するためであると推察される。
このような問題に対して、本発明者らは、チャックにより把持する前に予め前記把持部を600℃〜1000℃で10分以上加熱することにより、滑りが生じなくなることを明らかにした。熱間押出直後の鉄基形状記憶合金形材の両端部がチャック滑りしやすく、それを再度600℃〜1000℃で加熱することによってチャック滑りしにくくなる原因は現時点では明らかでないが、かかる温度範囲による再加熱に応じて何らかの組織変化や合金元素の固溶、析出に起因して、加工硬化し難くなるのではないかと考えられる。
さらに、本発明では、熱押後の鉄基形状記憶合金形材における長手方向両端に位置する把持部を、600℃〜1000℃に加熱して冷却し、室温で両端部をチャッキングし、形状記憶効果付与と矯正とを兼ねた第1の引張変形付与工程を行う。その後、形材の全体を600℃〜800℃に加熱して冷却し、第2の引張変形付与工程を行い、形状記憶効果を付与する。
本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材の製造方法では、形材の長手方向両端に位置する把持部を加熱した後に引張歪みを付与する直前の形状が記憶されるのであるが、これは熱間押出後の撓みを含む状態のものである。従って、本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材の製造方法に基づいて製造された鉄基形状記憶合金の長尺形材は、長尺のまま用いるのではなく、例えばレール継ぎ目板のように短く切断して用いることによって、形状回復後の曲がりの影響を回避することができる。
次に、本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材において規定した化学成分について説明する。以下、組成における質量%は、単に%と記載する。
Fe−Mn−Si系の鉄基形状記憶合金は、面心立方構造を有するγ相に引張変形を付与することにより、六方最密充填構造を有するε相に応力誘起マルテンサイト変態し、これを逆変態温度に加熱することにより元のγ相に逆変態して、元の形状を回復する。γ相からε相への変態をγ→ε変態という。
Si:3〜7%
Siは、γ→ε変態を促進させる元素であるが、その十分な効果は3%以上の添加によって得られる。しかし、Siを7%を越えて添加すると、合金の加工性および成形性が損なわれてしまう。したがって、Si含有量は、3〜7%とする。
Mn:25〜30%
Mnは25%未満では応力誘起によってε相の生成とともにマルテンサイト相(α’相)も導入され形状記憶効果が低下する。一方。Mnが30%を越えるとγが安定化され、γ→ε変態よりもγのすべり変形が優先的に生じるようになる。したがって、Mn含有量は、25〜30%とする。
Cr:3〜7%
Crは耐食性の向上に寄与するが、その効果は3%以上の添加によって得られる。また、7%を越えて添加すると、Siと低融点の金属間化合物を形成し、合金の溶製が困難となる。またCrはγ→ε変態を容易にし、形状記憶特性を向上させる上でも効果的である。したがって、Cr含有量は、3〜7%とする。
次に、本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材の製造方法の詳細について図1のフローチャートに沿って説明する。
先ず、上述した化学組成を有する鋼を溶製し、溶鋼を鋳造したままでビレットとするか、又は一旦鋼塊とした後に熱間鍛造してビレットとする。次にステップS11において、ビレットを加熱し、ステップS12において熱間押出によって形材に成形する。このステップS12における熱間押出は、ステップS11において加熱されたビレットをコンテナに挿入し、ビッレットの前方に、目的とする断面形状の孔を有するダイスを配置し、ビレットを後方から押し出す方法である。形材の断面形状は、ダイスの孔の形状で制御する。
本発明を適用した鉄基形状記憶合金は、合金元素Si、Mn、Crの含有量が多いため、ステップ11におけるビレットの加熱温度が1200℃よりも高い場合には、脆化して熱間押出後の形材に割れを生じることがある。一方、ビレットの温度が1050℃よりも低い場合には、変形抵抗が大きいため、熱間押出後の形材の形状や、表面性状が劣化することがある。したがって、ビレットの加熱温度を1050〜1200℃とすることが必要である。
図2は、ビレットの加熱温度(℃)に対する絞り値(%)の関係を示している。ここでいう絞り値とは、熱間における引張試験によって評価される絞りの値である。この絞り値は、棒の引張試験片を用いて試験を行った際、試験による破断位置での断面積の減少率で(試験前の断面積−試験後の最小の断面積)/試験前の断面積×100(%)で求められる。
この図2からは、ステップS11におけるビレットの加熱温度が上昇するにつれて絞り
が低下していく傾向が示されている。本発明を適用した鉄基形状記憶合金の絞り値は、1180℃を超えると、絞りが60%を下回る。また、熱間押出の工程では加工発熱により50℃程度の温度上昇が生じる。そのため、本発明を適用した鉄基形状記憶合金の絞りを、確実に、60%以上にするためには、加熱温度を1180℃以下にすることが好ましい。また、熱間押出を行う際に、加工発熱が生じても形材の温度が1180℃を超えないようにすることで、ビレット加熱温度の上限を1130℃以下とすることが更に好ましい。
また図3は、ビレットの加熱温度(℃)に対する熱間変形抵抗(N/mm)の関係を示している。この図3からは、ビレットの加熱温度が上昇するにつれて熱間変形抵抗が低下していく傾向が示されている。本発明の鉄基形状記憶合金の温度が1070℃を下回ると、熱間変形抵抗が100N/mmを超え、押し詰まりを生じやすくなる。したがって、ビレットの加熱温度を1070℃以上とすることが、より好ましい。
このため、本発明において、ステップS11におけるビレットの加熱温度のより最適な範囲は、1070℃以上、1130℃以下である。本発明の鉄基形状記憶合金の温度が1070℃を下回ると、熱間変形抵抗が急激に上昇し、押し詰まりを生じやすくなる。したがって、ビレットの加熱温度を1070℃以上とすることが好ましい。
次にステップS13へ移行し、熱間押出された直後の形材を室温まで冷却する。このとき、既に1000℃以上に加熱された形材を室温まで冷却するため、1000℃〜600℃までの温度帯域を通過するわけであるが、かかるステップS13における1000℃〜600℃までの冷却速度を1℃/秒以下にすることが好ましい。その理由として、かかる冷却速度で冷却することにより、形材が再結晶によって軟化し、溶体化熱処理を省略することができるためである。ステップS13における1000℃から600℃までの冷却速度は、形材の断面積と表面積に応じて、空冷するか、又は保温カバーを使用するかを選択することによって制御できる。
次に、室温まで冷却された熱押後の鉄基形状記憶合金形材を、ステップS14において少なくとも長手方向両端に位置する把持部を600〜1000℃で10分以上加熱し、ステップS15において冷却した後、ステップS16において室温下で矯正と形状記憶効果を付与する第1の引張変形付与工程に入る。従来は、熱間押出後、そのまま第1の引張変形付与工程を行っていたが、本発明では、先に、かかる第1の引張変形付与工程(ステップS16)において付与すべき引張歪みを導入する際に、チャックにより把持するための、形材の長手方向両端に位置する把持部を600℃以上に加熱する(ステップS14)。これにより、ステップS16における第1の引張変形付与工程でのチャック滑りを防止することができる。一方、加熱温度を必要以上に高めても効果が飽和し、生産性やコストに悪影響するため、上限を1000℃とする。また、効果を高めるためには、加熱時間を10分以上とすることが必要である。加熱時間の上限は特に規定しないが、生産性を考慮すると、60分以下であることが好ましい。
本発明では、第1の引張変形付与工程(ステップS16)の前に、ステップS14において少なくともチャックにより把持すべき把持部が加熱されていれば十分であり、バーナー等で片端ずつ加熱しても良い。少なくとも把持部が加熱されていればよく、把持部のみならず形材全体を加熱炉内で加熱してもよい。ステップS14において形材の把持部の加熱を終了させた後、ステップ15においてこれを室温まで冷却する。
ステップS16の第1の引張変形付与工程では、この室温まで冷却させた形材の把持部をチャックにより把持し、引張矯正機により形材に引張応力を負荷することにより5〜15%の引張塑性歪みを付与する。
第1の引張変形付与工程(ステップS16)の後、ステップS17において形材の全体を加熱し、ステップS18において室温まで冷却させた後、ステップS19へ移行して第2の引張変形付与工程を行う。これは、第1の引張変形付与工程のみを行う場合に比べて、さらに加熱及び第2の引張変形付与工程を経ることにより、形状記憶回復効果を顕著に向上させることが可能となるためである。
第2の引張変形付与工程(ステップS19)の前のステップS17における加熱温度は、600〜800℃とする。このステップS17の加熱温度が600℃未満であると、形状記憶回復効果が不十分であり、一方、800℃を超えると第1の引張変形付与工程(ステップS16)の効果が失われ、形状記憶回復効果が得られなくなるためである。また、効果を高めるためには、このステップS17における加熱時間を10分以上とすることが必要である。加熱時間の上限は特に規定しないが、生産性を考慮すると、60分以下であることが好ましい。
第2の引張変形付与工程(ステップS19)は、ステップS18において形材を室温まで冷却させた後、引張矯正機にて把持部を把持して、5〜15%の引張塑性歪みを長手方向に付与するものである。これは、引張塑性歪みが5%未満であると、形状記憶回復効果が不十分であり、一方、加工硬化によって15%を超える引張塑性歪みを与えるのは、難しいためである。
第1の引張変形付与工程(ステップS16)後の、ステップS17の加熱、ステップS18の冷却並びにステップS19の第2の引張変形付与工程の工程をトレーニング処理という。このような、トレーニング処理(ステップS17〜S19)を複数回繰り返すことにより、形状記憶効果はさらに向上するため、本発明ではトレーニング処理を複数回繰り返しても一向に差し支えない。しかし、工程が増えることにより製造コストが増大するために、トレーニング処理の回数を制限することが望ましい。このトレーニング処理の回数が4回以上では効果が飽和してしまうため、トレーニング処理の回数は1〜3回が望ましい。
以下、本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材の製造方法のより詳細な実施例について説明する。
表1は、本実施例において使用する鉄基形状記憶合金の成分を示している。鋼番1〜5のうち、上述した本発明において規定した成分の範囲にある本発明例は、鋼番1〜3であり、鋼番4、5はともにMnの含有率が本発明において規定した範囲から逸脱した比較例である。
Figure 0005255474
このような表1に示す組成を有する本発明鋼、比較鋼の鉄基形状記憶合金を溶解し、鋳造後に外径180mmの円筒状に鍛造し、機械加工によって外径170mm長さ460mmの円筒状ビレットを切り出した。これらのビレットに対して、表2に示す製造条件でステップS12の熱間押出、ステップS13の冷却、ステップS14における熱処理、第1の引張変形付与工程(ステップS16)、トレーニング処理(ステップS17〜19)を施し、図4に示す断面形状の長尺形材を製造した。
Figure 0005255474
なお、第1の引張変形付与工程(ステップS16)前のステップS14の熱処理およびトレーニング処理におけるステップS17の加熱処理は、いずれも形材の全体を加熱炉に挿入することにより実施した。これらの形材から長さ600mmのレール継ぎ目板を切り出し、400℃で30分間加熱して加熱前後の長さの変化率(表2中の形状回復歪み)を測定した。
表2における、本発明例a〜dは、鋼番1〜3の何れかの本発明鋼について、上述した本発明で規定した範囲内の加熱温度条件で熱間押出したため、疵が発生する等の問題を生ずることなく押し出すことができ、その後に650℃で10分間加熱したことにより、把持部におけるチャック滑りを生ずることなく矯正、形状記憶効果付与のための引張荷重の負荷を実現できた。また、ステップS12における熱間押出後のステップS13の冷却速度が何れも0.8℃/秒であったことと、表2に示す条件の下でステップS17〜S19
のトレーニング処理を実施したことにより、第1の引張変形付与工程(S16)における7%の歪み付与に対して、3.0%以上の形状回復歪みを得ることができた。
これに対して、比較例E〜Kは、本発明鋼である鋼番1を利用しつつも、何れも本発明において規定した製造条件から逸脱させたものである。比較例Eは、熱間押出(S12)における加熱温度を本発明において規定した範囲よりも低く設定した上で、その後のステップS13以降を特段行わない例であるが、熱間押出時の加熱温度が低すぎて熱間変形抵抗が高まり、押し詰まりが生じている。また、比較例Fは、熱間押出(S12)における加熱温度を本発明において規定した範囲よりも高く設定した上で、その後のステップS13以降を特段行わない例であるが、逆に熱間押出時の加熱温度が高すぎ、溶融脆化により割れが発生した例である。
比較例Gは、熱間圧延(S12)後のステップS13における冷却速度を速くしたものであるが、溶体化効果が十分に得られなかったために、形状回復歪みが3.0%に届かなかった例である。
比較例HおよびIは、ステップS14における把持部の加熱を600℃以上としなかったために、その後の矯正、形状記憶効果付与のための第1の引張変形付与工程(ステップS16)においてチャック滑りを生じてしまい、うまく引張応力を負荷することができなかった例ある。
比較例Jは、ステップS16、ステップS19における矯正、形状記憶効果付与のための引張工程で付与する引張塑性歪み量が小さすぎたため、また比較例Kは、トレーニング処理(S17〜S19)がなされていなかったために、いずれも十分な形状回復歪みが得られなかった例である。
比較例LおよびMは、化学成分が本発明鋼から逸脱した比較鋼を用いたため、いずれも十分な形状回復歪みが得られなかった例である。
このように、上述した比較例は、何れも所期の形状回復歪みが得られず、またチャック滑りや押し詰まり等の不具合を生じることが分かる。このため、本発明を適用した鉄基形状記憶合金形材の製造方法において上述した条件範囲で製造を行うことで、従来よりも安定して効率良く製造することが可能となることが分かる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    Si:3〜7%、
    Mn:25〜30%、
    Cr:3〜7%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるビレットを1050〜1200℃に加熱して熱間押出によって成形し、
    前記成形された形材を室温まで冷却し、
    前記冷却された形材における少なくとも長手方向両端に位置する把持部を600〜1000℃で10分以上加熱してその後室温まで冷却し、
    室温下で前記把持部を把持して前記形材に引張応力を負荷することにより5〜15%の引張塑性歪みを付与し、
    さらに前記形材の全体を600〜800℃で10分以上加熱して室温まで冷却し、
    室温下で前記把持部を把持して前記形材に引張応力を負荷することにより5〜15%の引張塑性歪みを付与すること
    を特徴とする鉄基形状記憶合金形材の製造方法。
  2. 前記ビレットの加熱温度を1070〜1130℃とすること
    を特徴とする請求項1に記載の鉄基形状記憶合金形材の製造方法。
  3. 前記熱間押出後、1000℃から600℃までを1℃/秒以下の冷却速度で冷却すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の鉄基形状記憶合金形材の製造方法。
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