JPH10270646A - 強誘電体薄膜素子の製造方法及び半導体装置 - Google Patents

強誘電体薄膜素子の製造方法及び半導体装置

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JPH10270646A
JPH10270646A JP9074765A JP7476597A JPH10270646A JP H10270646 A JPH10270646 A JP H10270646A JP 9074765 A JP9074765 A JP 9074765A JP 7476597 A JP7476597 A JP 7476597A JP H10270646 A JPH10270646 A JP H10270646A
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JP
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thin film
ferroelectric thin
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temperature
treatment step
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JP9074765A
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Seiichi Yokoyama
誠一 横山
Hironori Matsunaga
宏典 松永
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Original Assignee
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、強誘電体特性、リーク電流特性を
有する強誘電体薄膜素子の製造方法及び半導体装置を提
供することを目的としている。 【解決手段】 前駆体原料溶液を塗布乾燥して前記強誘
電体薄膜となる薄膜を成膜する成膜工程S10と、その成
膜工程により成膜した薄膜を加熱温度400℃以上600℃以
下の温度で加熱する第一の熱処理工程S13と、その第一
の熱処理工程の後に昇温速度20℃/秒以上で昇温してか
ら一定温度で3分以内の時間保持する第二の熱処理工程
S14と、成膜工程S13、第一の熱処理工程S13、及び第二
の熱処理工程S14を所望の強誘電体薄膜の膜厚が得られ
るように繰り返してからその強誘電体薄膜上に上部電極
層を形成した後(S15)、さらに昇温速度20℃/秒以上で
昇温してから一定加熱温度で3分以内の時間保持する第
三の熱処理工程S16とを含む強誘電体薄膜素子の製造方
法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メモリ素子、焦電
センサ素子、圧電素子等に用いられる強誘電体薄膜素子
の製造方法及び半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】強誘電体薄膜は、自発分極、高誘電率、
電気光学効果、圧電効果、及び焦電効果等の多くの機能
をもつことから、広範なデバイス開発に応用されてい
る。例えば、その焦電性を利用して赤外線リニアアレイ
センサに、また、その圧電性を利用して超音波センサ
に、その電気光学効果を利用して導波路型光変調器に、
その高誘電性を利用してDRAMやMMIC用キャパシ
タにと、様々な方面で用いられている。
【0003】それらの広範な応用デバイス開発の中で
も、近年の薄膜形成技術の進展に伴って、半導体メモリ
技術との組み合わせにより、高密度でかつ高速に動作す
る強誘電体不揮発性メモリ(FRAM)の開発が盛んで
ある。強誘電体薄膜を用いた不揮発性メモリは、その高
速書き込み/読み出し、低電圧動作、及び書き込み/読
み出し耐性の高さ等の特性から、従来の不揮発性メモリ
の置き換えだけでなく、SRAMやDRAMに対する置
き換えも可能なメモリとして、実用化に向けの研究開発
が盛んに行われている。
【0004】このようなデバイス開発には、残留分極
(Pr)が大きくかつ抗電場(Ec)が小さく、低リー
ク電流であり、分極反転の繰り返し耐性の大きな材料が
必要である。さらには、動作電圧の低減と半導体微細加
工プロセスに適合するために膜厚200nm以下の薄膜
で膜構造が緻密で、上記の特性を実現することが望まし
い。また、薄膜作製にあたっては、スループット向上の
ために、成膜時間が短いことが好ましい。
【0005】従来、これらの用途に用いられる強誘電体
材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、Pb
(Tix,Zr1-x)O3)に代表されるペロブスカイト
構造の酸化物材料が主流であった。ところが、PZTの
ように鉛をその構成元素として含む材料は、鉛やその酸
化物の蒸気圧が高いため、成膜時に鉛が蒸発してしまい
膜中に欠陥を発生させたり、ひどい場合にはピンホール
を形成してしまった。この結果、リーク電流が増大した
り、更に分極反転を繰り返すと、自発分極の大きさが減
少する疲労現象が起こるなどの欠点があった。特に、疲
労現象に関しては、強誘電体不揮発性メモリによるFR
AMに対する置き換えを考えると、1015回の分極反転
後も特性の変化がないことを保証しなければならないた
め、疲労のない強誘電体薄膜の開発が望まれていた。
【0006】一方、近年、FRAM用強誘電体材料とし
て、ビスマス層状構造化合物材料の研究開発が行われて
いる。ビスマス層状構造化合物材料は、1959年に、
Smolenskiiらによって発見され(G.A.Smolenskii,V.A.I
supov and A.I.Agranovskaya,Soviet Phys.Solid Stat
e,1,149(1959))、その後、Subbaraoにより詳細な検討
がなされた(E.C.Subbarao,J.Phys.Chem.Solids,23,665
(1962))。最近、CarlosA.Paz de Araujoらは、このビ
スマス層状構造化合物薄膜が強誘電体及び高誘電体集積
回路への応用に適していることを発見し、特に1012
以上の分極反転後も特性に変化が見られないという優れ
た疲労特性を報告している(国際出願番号PCT/US
92/10542(国際公開番号WO93/1054
2、特表平7−502149号公報)。
【0007】このビスマス層状構造化合物は、化学式B
2m-1m3m+3(AはNa,K,Pb,Ca,S
r,Ba,Biから選択され、BはFe,Ti,Nb,
Ta,W,Moから選択されるものであり、mは自然数
である)で示される。そして、ビスマス層状構造化合物
の結晶構造は、(Bi222+層と(Am-1m3m+1
2-層とが交互に積み重なったような構造である。すなわ
ち、その結晶構造の基本は、(m−1)個のABO3
ら成るペロブスカイト格子が連なった層状ペロブスカイ
ト層の上下を(Bi222+層が挟み込んだ構造を成す
ものである。なお、ここで、A及びBとして、選択され
るものは単一とは限らない。
【0008】このようなビスマス層状構造化合物材料と
しては、代表的なものとしてSrBi2Ta29があ
る。そして。これ以外には、SrBi2Nb29、Ba
Bi2Nb29、BaBi2Ta29、PbBi2Nb2
9、PbBi2Ta29、SrBi4Ti415、PbBi
4Ti415、Na0.5Bi4.5Ti415、K0.5Bi4.5
Ti415、Sr2Bi4Ti518、Ba2Bi4Ta5
18、Pb2Bi4Ti518等がある。
【0009】また、強誘電体薄膜の製造方法には、真空
蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法
等の物理的方法や、有機金属化合物を出発原料とし、こ
れらを熱分解酸化して酸化物強誘電体を得るゾルゲル法
又はMOD(Metal OrganicDecomposition)法、MOC
VD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法
等の化学的方法が用いられている。
【0010】上記成膜法の中で、MOCVD法は、段差
被覆性に優れ、また低温成膜の可能性もあるので、特に
FRAMの高集積化を図る場合には有望であり、最近研
究開発が盛んになってきている。
【0011】一方、ゾルゲル法又はMOD法は、原子レ
ベルの均質な混合が可能な原材料溶液を用いれるので、
組成制御が容易で再現性に優れること、特別な真空装置
が必要なく常圧で大面積の成膜が可能であること、工業
的に低コストである等の利点から広く利用されている。
【0012】特に、上記ビスマス層状構造化合物薄膜の
成膜方法として、MOD法が用いられており、従来のM
OD法の成膜プロセスでは、下記のような工程で強誘電
体薄膜又は誘電体薄膜が製造される(国際出願番号PC
T/US92/10542(国際公開番号WO93/1
0542、特表平7−502149号公報)、PCT/
US93/10021)。
【0013】(1)複合アルキシド等からなる前駆体溶
液をスピンコート法等で基板上に塗布成膜する工程。 (2)溶媒や(1)の工程において反応生成したアルコ
ールや残留水分を膜中より離脱させるために、250℃
で3分間から5分間、大気中で加熱・乾燥するする工
程。 (3)膜中の有機物成分を熱分解除去するためにRTA
(Rapid Thermal Annealing)法を用いて酸素雰囲気中
で700℃で30秒間(昇温速度125℃/秒)、加熱
処理する工程(第一焼成工程)。 (4)膜を結晶化させるために、拡散炉を用いて、酸素
気流中で750℃で2時間、加熱処理する工程(第二焼
成工程)。 (5)上部電極を形成した後、拡散炉を用いて、酸素気
流中で750℃で30分間、加熱処理する工程(第三焼
成工程)。
【0014】なお、所望の膜厚を得るためには、(1)
から(3)の工程を繰り返し、最後に(4)、(5)の
工程を行う。ただし、(3)の第一焼成工程を省略する
場合もある。以上のようにして、強誘電体薄膜を作製す
ることができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来のMOD法による強誘電体薄膜の製造方法に
おいて、結晶化のための(2)第二焼成工程を焼成温度
が750℃程度の高温で2時間もの長時間の焼成時間を
必要とした。このように高温の長時間の焼成工程が必要
であると、例えば、スタック構造の集積回路上に形成す
る場合には、ヴィアホール材料(コンタクトプラグ)と
電極間との相互拡散、酸化によるコンタクト不良や特性
劣化などのダメージを受けるという問題があり、特に強
誘電体薄膜素子を高集積化する場合の障害となってい
た。
【0016】また、強誘電体薄膜の面内の結晶性を均一
にするために、一層ごとに結晶化を行うプロセスも行わ
れている(特開平8−23073号公報)。この場合の
工程は、塗布成膜後に250℃で10分間乾燥し、
酸素雰囲気中にて800℃で10分間の結晶化のための
加熱処理を行うというものである。そして、ととの
工程を所望の膜厚となるまで繰り返し、最終的に強誘電
体薄膜を得る。特開平8−23073号公報の実施例の
記載によれば、200nmの膜厚を得るのに、これらの
工程を6回繰り返しており、すなわち800℃の熱処理
工程を合計60分間必要としている。したがって、上記
と同様の問題を有していた。
【0017】さらに、高密度の素子を作製するには強誘
電体薄膜の厚さを更に薄くし微細加工精度を上げなけれ
ばならないが、焼成時間が長時間であると、薄膜中の結
晶粒径が100nm〜200nmと大きくなり、薄膜表
面の凹凸も同様に大きくなる。このため、これら従来の
強誘電体薄膜素子の製造方法は、FRAM等の高集積デ
バイスの作製に必要なサブミクロンオーダーの微細加工
に適応できないという問題もあった。このことから、緻
密な強誘電体薄膜を実現するため、熱処理時間の短時間
化が望まれていた。
【0018】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたものであって、短い熱処理時間により緻密で高集積
デバイスに適用可能な強誘電体特性、リーク電流特性、
膜疲労特性等を有する強誘電体薄膜から成る強誘電体薄
膜素子の製造方法及び半導体装置を提供することを目的
としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1に記載の発明では、基板上に配置された下
部電極層上に、層状ペロブスカイト構造を有する強誘電
体薄膜と上部電極層とを順次形成する強誘電体薄膜素子
の製造方法において、前駆体原料溶液を塗布乾燥して強
誘電体薄膜となる薄膜を成膜する成膜工程と、その成膜
工程により成膜した薄膜を加熱温度400℃以上600
℃以下の温度で加熱する第一の熱処理工程と、その第一
の熱処理工程の後に昇温速度20℃/秒以上で昇温して
から一定温度で3分以内の時間保持する第二の熱処理工
程と、成膜工程、第一の熱処理工程、及び第二の熱処理
工程を所望の強誘電体薄膜の膜厚が得られるように繰り
返してからその強誘電体薄膜上に上部電極層を形成した
後、さらに昇温速度20℃/秒以上で昇温してから一定
加熱温度で3分以内の時間保持する第三の熱処理工程と
を含むこととしている。
【0020】さらに、請求項2に記載の発明では、上記
の記載の強誘電体薄膜素子の製造方法において、強誘電
体薄膜が、化学式BiAm-1m3m+3(AはNa,K,
Pb,Ca,Sr,Ba,Biから選択され、BはF
e,Ti,Nb,Ta,W,Moから選択されるもので
あり、mは1以上の自然数である)で示される強誘電体
材料から成ることとしている。
【0021】さらに、請求項3に記載の発明では、上記
の強誘電体薄膜素子の製造方法において、強誘電体薄膜
がSrBi2Ta29から成ることとしている。
【0022】また、請求項4に記載の発明では、上記の
強誘電体薄膜素子の製造方法において、第二の熱処理工
程の加熱温度が600℃以上850℃以下であり、第三
の熱処理工程の加熱温度が500℃以上850℃以下で
あることとしている。
【0023】さらに、請求項5に記載の発明では、上記
の強誘電体薄膜素子の製造方法において、第二の熱処理
工程の加熱温度が750℃以上850℃以下であり、第
三の熱処理工程の加熱温度が500℃以上で前記第二の
熱処理工程の加熱温度以下であることとしている。
【0024】また、請求項6に記載の強誘電体薄膜素子
の製造方法において、第二の熱処理工程の加熱温度が6
00℃以上750℃以下であり、第三の熱処理工程の加
熱温度が750℃以上850℃以下であることとしてい
る。
【0025】また、請求項7に記載の発明では、上記の
強誘電体薄膜素子の製造方法において、第二の熱処理工
程及び第三の熱処理工程を酸素ガスを含む雰囲気中で行
うこととしている。
【0026】また、請求項8に記載の発明では、上記の
強誘電体薄膜素子の製造方法において、第二の熱処理を
酸素ガスを含む雰囲気中で行い、第三の熱処理工程を不
活性ガス雰囲気中で行うこととしている。
【0027】また、請求項9に記載の発明では、上記の
強誘電体薄膜素子の製造方法により製造された強誘電体
薄膜素子から構成される半導体装置であって、基板上に
形成された集積回路素子の一部として強誘電体薄膜素子
を形成して構成している。
【0028】上記のように、本発明の強誘電体薄膜素子
の製造方法では、ゾルゲル法やMOD法等の前駆体原料
溶液を用いた成膜工程を含む強誘電体薄膜素子の製造方
法において、強誘電体材料の成分元素から成る前駆体原
料溶液を塗布乾燥した強誘電体薄膜となる薄膜を成膜し
た後、その薄膜中の有機成分除去のために第一の熱処理
工程である第一焼成を行い、その後薄膜の結晶化のため
に第二の熱処理工程である第二焼成を、RTA法等によ
り急速に短時間で行う。そして、所望の強誘電体薄膜の
膜厚となるようにこれらの工程を繰り返し、その強誘電
体薄膜上に上部電極層を形成した後、強誘電体薄膜と上
部電極との界面を安定化させて強誘電体薄膜素子の電気
特性を安定して引き出すために、第三の熱処理工程であ
る第三焼成をRTA法等により急速に短時間で行う。
【0029】本発明によれば、上記のようにして強誘電
体薄膜を製造することにより、従来の製造方法と比べ
て、強誘電体薄膜の成膜プロセスの大幅な時間短縮が可
能となる。さらに、本発明の製造方法により形成された
強誘電体薄膜は、粒子径の小さな緻密な構造を有し、非
常に優れた強誘電体得性を得ることができるので、微細
加工に適用できるなど、素子作製上極めて有利である。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明の強誘電体薄膜素子の製造
方法に用いる基板は、通常、半導体装置や集積回路等の
基板として使用できるものであれば特に限定されるもの
ではない。例えば、シリコン等の半導体基板、GaAs
等の化合物半導体基板、MgO等の酸化物結晶基板、硝
子基板など、形成しようとする素子の種類、用途等によ
り選択することができるが、中でもシリコン基板が好ま
しい。
【0031】この基板上には、下部電極層が備えられて
いる。この下部電極層は、本発明において形成される強
誘電体薄膜素子の一部、つまりキャパシタの容量材料と
して使用する場合に利用される電極層を意味する。そし
て、この下部電極層は、基板上に形成されるものであ
り、基板上に直接形成されても良いし、絶縁層、下層配
線、所望の素子、層間絶縁層等、またはこれらの複数を
備えた基板上に形成されても良い。電極材料としては、
通常電極として用いられるものであれば特に限定される
ものではなく、例えば、Ta,Ti,Pt,Pt/T
i,Pt/Ta等を用いることができ、その膜厚も特に
限定されものではない。ただし、後工程の強誘電体薄膜
を形成する場合に、その成膜プロセスに耐えることがで
きる材料であることが好ましい。これらの電極材料は、
例えばスパッタリング、蒸着等により形成することがで
きる。
【0032】また、本発明の強誘電体薄膜素子の製造方
法に用いる強誘電体薄膜は、層状ペロブスカイト構造を
有する強誘電体材料から成るものであれば、特に限定さ
れるものではない。この強誘電体材料の中でも、Bi系
強誘電体材料が好ましく、 Bi2m-1m3m+3 (AはNa,K,Pb,Ca,Sr,Ba又はBi、B
はFe,Ti,Nb,Ta,W又はMo、mは自然数)
で示される強誘電体材料がより好ましい。具体的には、
Bi4Ti312,SrBi2Ta29,SrBi2Nb2
9,BaBi2Nb29,BaBi2Ta29,PbB
2Nb29,PbBi2Ta29,SrBi4Ti
415,PbBi4Ti415,BaBi4Ti415,N
0.5Bi4.5Ti415,K0.5Bi4.5Ti415,Sr
2Bi4Ti518,Ba2Bi4Ta518,Pb2Bi4
518等が挙げられるが、中でもSrBi2Ta29
好ましい。
【0033】上記強誘電体薄膜の形成には、強誘電体材
料の前駆体原料溶液を用いた成膜工程を含むゾルゲル法
やMOD法等を用いる。ゾルゲル法やMOD法等は、一
般的に、形成する強誘電体薄膜を構成する一部の元素の
塩又は金属アルコキシド等を含む有機溶媒と、他の元素
の塩又は金属アルコキシド等を含む有機溶媒を混合する
ことによって原料溶液を調製し、この原料溶液を前駆体
溶液としてスピンコート等により一回の塗布で20〜5
0nm程度の膜厚で塗布乾燥した後、続いてランプアニ
ール、炉アニール、高速アニール(RTA)等により熱
処理工程である焼成を行うものである。この際の強誘電
体薄膜の全体の膜厚は50〜500nm程度なので、一
回の上記成膜工程で所望の膜厚に成膜することができる
が、一回の上記成膜工程での膜厚を20〜50nmとし
て、複数回繰り返して最終的に所望の膜厚に成膜するこ
とが一般的である。これは、一回の成膜工程で成膜する
膜厚が厚いと、後の熱処理工程の際にクラック等が生じ
るので、それを防止するためである。
【0034】本発明の強誘電体薄膜素子の製造方法で
は、強誘電体薄膜上に上部電極層が形成される。この上
部電極層は、下部電極層と同様の材料で同様の方法によ
り形成することができる。また、この上部電極層の上部
には、所望の配線工程、絶縁膜形成工程などを行うこと
により、強誘電体キャパシタを形成することができるも
のである。
【0035】本発明では、上記のように構成される強誘
電体薄膜素子の製造方法において、前駆体原料溶液を塗
布乾燥して強誘電体薄膜となる薄膜を成膜する成膜工程
と、その成膜工程により成膜した薄膜を加熱温度400
℃以上600℃以下の温度で加熱する第一の熱処理工程
と、その第一の熱処理工程の後に昇温速度20℃/秒以
上で昇温してから一定温度で3分以内の時間保持する第
二の熱処理工程と、成膜工程、第一の熱処理工程、及び
第二の熱処理工程を所望の強誘電体薄膜の膜厚が得られ
るように繰り返してからその強誘電体薄膜上に上部電極
層を形成した後、さらに昇温速度20℃/秒以上で昇温
してから一定加熱温度で3分以内の時間保持する第三の
熱処理工程とを含むこととしている。上記第一の熱処理
工程は薄膜中の有機成分除去のためのものであり、第二
の熱処理工程は薄膜の結晶化のためのものであり、上記
第三の熱処理工程は強誘電体薄膜と上部電極との界面を
安定化させて強誘電体薄膜素子の電気特性を安定して引
き出すためのものである。
【0036】上記の熱処理工程において、第二の熱処理
工程の加熱温度が600℃以上850℃以下であり、第
三の熱処理工程の加熱温度が500℃以上850℃以下
であることが好ましい。そして、第二の熱処理工程の加
熱温度が750℃以上850℃以下の場合には第三の熱
処理工程の加熱温度が500℃以上で前記第二の熱処理
工程の加熱温度以下であり、第二の熱処理工程の加熱温
度が600℃以上750℃以下の場合には第三の熱処理
工程の加熱温度が750℃以上850℃以下であること
がより好ましい。
【0037】本発明の実施形態としては、成膜法にゾル
ゲル法を用い、成膜工程での乾燥以外の熱処理工程、即
ち第一の熱処理工程、第二の熱処理工程、及び第三の熱
処理工程には高速アニール(RTA)を用いる。このよ
うな熱処理工程により、従来のものでは、1時間以上必
要であった長時間の熱処理工程を大幅に短縮できる。具
体的には、従来技術として前述した特開平8−2307
3号公報に記載されたものでは炉アニールを用いて結晶
化のために800℃で10分間の熱処理工程(前述の発
明が解決しようとする課題の欄の工程)を6回繰り返
し、200nmの膜厚を成膜するのに合計60分間もの
時間を必要としている。これに対して、後述の実施例で
は、これと同様の熱処理工程に相当する第二の熱処理工
程(第二焼成)は、加熱温度を同様の800℃としたも
ので、200nmの強誘電体薄膜の膜厚を得るのに30
秒の熱処理工程を5回繰り返しすれば良く、即ち合計で
150秒と大幅に処理時間を短縮して、同程度の強誘電
体特性を得ることができる。
【0038】また、従来技術として前述した国際出願番
号PCT/US92/10542(国際公開番号WO9
3/10542、特表平7−502149号公報)、P
CT/US93/10021の製造方法では、上部電極
層形成後の第三焼成(前述の従来の技術の欄の工程
(5))が750℃で30分間の熱処理が必要であっ
た。これに対して、本発明の第三の熱処理工程(後述の
実施例では第三焼成)では、その処理時間を3分以内と
大幅に短縮して、同程度の強誘電体特性を得ることがで
きる。
【0039】さらに、本発明の強誘電体薄膜素子の製造
方法では、上記の第二の熱処理工程及び第三の熱処理工
程を酸素ガスを含む雰囲気中で行っても良いし、第二の
熱処理を酸素ガスを含む雰囲気中で行い、第三の熱処理
工程を窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行っても良
い。
【0040】また、本発明の半導体装置では、上記のよ
うにして製造される強誘電体薄膜素子自体を強誘電体キ
ャパシタするか、又は強誘電体薄膜素子を強誘電体デバ
イス等の半導体装置の一部として、集積回路用ウエハに
搭載して、集積回路を構成するものである。具体的に
は、例えば、上記のようにして製造される強誘電体薄膜
素子を不揮発性メモリの容量部とするか、又は強誘電体
薄膜素子をFETのゲート部に適用し、ゲート絶縁膜、
ソース/ドレイン領域等を組み合わせて形成することに
より、MFMIS−FET、MFS−FET等として使
用することができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明による実施の形態について、図
面を参照して説明する。 〔第1の実施例〕第1の実施例では、第二の熱処理工程
の加熱温度を750℃とし、強誘電体薄膜として膜厚2
00nmのSrBi2Ta29薄膜を成膜したものにつ
いて説明する。
【0042】図1は、本実施例の強誘電体薄膜素子の製
造方法により製造する強誘電体薄膜素子の構造を示す要
部断面図である。図1に示すように、この強誘電体薄膜
素子は、シリコン単結晶(100)面基板1の表面に膜
厚200nmのシリコン熱酸化膜2を形成され、その上
に、膜厚20nm程度のTa膜3(接着層)及び膜厚2
00nm程度のPt膜4(下部電極層)をスパッタ法に
より形成され、後述のようにしてSrBi2Ta29
誘電体薄膜5及び上部電極層6が形成されるものであ
る。
【0043】次に、本実施例でのゾルゲル法によるSr
Bi2Ta29強誘電体薄膜5の成膜について、前駆体
原料溶液の合成方法を図2の工程図を参照し、そして、
その前駆体原料溶液を用いて基板上に強誘電体薄膜を形
成する工程を図3の工程図を参照しながら説明する。
【0044】前駆体原料溶液合成の出発原料として、タ
ンタルエトキシド(Ta(OC255)、ビスマス2
エチルヘキサネート(Bi(C715COO)2)、及び
ストロンチウム2エチルヘキサネート(Sr(C715
COO)2)を使用した。
【0045】まず、SrBi2Ta29強誘電体薄膜5
の形成に用いる前駆体原料溶液の合成について、図2を
用いて説明する。図2に示すように、タンタルエトキシ
ドを秤量し(ステップS1)、2−エチルヘキサネート
中に溶解させ(ステップS2)、反応を促進させるた
め、100℃から最高温度120℃まで加熱しながら撹
拌し、30分間反応させた(ステップS3)。その後、
120℃で反応によって生成したエタノールと水分を除
去した。その溶液に20ml〜30mlのキシレンに溶
解させたストロンチウム2−エチルヘキサネートを加え
(ステップS4)、125℃から最高温度140℃で3
0分間加熱撹拌した(ステップS5)。その後、この溶
液に10mlのキシレンに溶解させたビスマス2−エチ
ルヘキサネートを加え(ステップS6)、130℃から
最高温度150℃で10時間加熱撹拌した(ステップS
7)。
【0046】次に、この溶液から低分子量のアルコール
と水と溶媒として使用したキシレンとを除去するため
に、130℃〜150℃の温度で5時間蒸留した。この
溶液からダストを除去するために、0.45μm径のフ
ィルタで瀘過した(ステップS8)。その後、溶液のS
rBi2Ta29の濃度を0.1mol/lに調整し、
これを前駆体溶液とする(ステップS9)。なお、これ
らの原料は上記のものに限定されるものではなく、溶媒
は上記出発原料が十分溶解するものであればよい。
【0047】次いで、上記の前駆体溶液を使用し、Sr
Bi2Ta29強誘電体薄膜5を成膜する工程を図3の
工程図により説明する。
【0048】前述した下部電極層4を備えた基板上に、
上記前駆体溶液を滴下し、20秒間3000rpmでス
ピン塗布した(ステップS10)。その後、基板を12
0℃に加熱したホットプレートに載せ、5分間大気中で
ベークし乾燥させた(ステップS11)。その際、乾燥
を均一に進ませるために温度範囲を100℃〜130℃
とすることが好ましく、最適な乾燥温度は120℃程度
である。これは、この温度範囲より高い温度、例えば1
50℃で乾燥を行った場合、後述の積層する段階で膜応
力によりクラックが発生するので、それを防止するため
である。
【0049】その後、完全に溶媒を揮発させるため、上
記の基板を250℃に加熱したホットプレートに載せ、
第二の乾燥工程として5分間大気中でベークし乾燥させ
た(ステップS12)。この温度は溶媒の沸点以上であ
って、工程時間の短縮のため230℃〜260℃程度の
温度で行うことが好ましい。
【0050】ここで、上記の成膜工程での膜厚について
説明する。上記のような塗布乾燥による成膜工程での膜
厚について検討を行った結果、一回の成膜工程による一
層あたりの膜厚が10nm未満ではしま状になってしま
い成膜でず、また、一回の成膜工程による一層あたりの
膜厚が100nmを越えるとクラックが入ってしまっ
た。このことから、上記のような成膜工程一回による一
層あたりの膜厚としては、10nm以上100nm以下
にしなければならないことがわかった。さらに、好まし
いその膜厚は20nm以上50nm以下である。
【0051】次に、上記のような成膜工程を行った基板
に、第一の熱処理工程である第一焼成として、酸素雰囲
気中にて500℃で5分間の焼成を行った(ステップS
13)。この焼成は、薄膜中の有機成分を除去すること
を目的としており、FT−IRによる薄膜中の残留誘起
分析の結果、400℃以上で焼成を行うことで除去可能
であるが、十分に除去するために本実施例ではその温度
を500℃に設定した。また、この焼成は、薄膜中の有
機成分を十分に除去するための工程であるので、薄膜で
結晶化が始まる600℃以下での温度で行うことが好ま
しいものである。また、焼成時間に関して、本実施例で
は5分間としたが、これに限定されるものではなく、薄
膜中の有機成分が除去可能な時間で任意に設定して良い
ものである。
【0052】次に、上記ステップS13の工程の後、第
二の熱処理工程である第二焼成として、RTA(Rapid
Thermal Annealing)法を用い、薄膜の結晶化を目的と
して、酸素雰囲気中でアニールを行った(ステップS1
4)。このときの昇温速度は、本実施例では30℃/s
ecとしたが、これに限定されるものではなく、20℃
/sec以上であれば本発明の効果が十分に得られるも
のである。
【0053】なお、第二焼成は、薄膜の結晶化のための
ものであので600℃以上が好ましい。また、900℃
以上であると、電極荒れが起こり、リーク電流が増大し
て測定不能となってしまう。これらのことから、第二焼
成は600℃以上850℃以下で行うことが好ましいも
のである。
【0054】本実施例では、第二焼成の焼成温度が80
0℃と850℃との2種類としてそれぞれ30秒の処理
を行った。ここで、後述の第三焼成の焼成温度を変化さ
せるので、第二焼成の焼成温度が異なるそれぞれについ
て、複数のサンプルを作製した。なお、本実施例では、
第二焼成の処理時間を30秒としたが、これに限定され
るものではない。例えば、本実施例のように第二焼成の
処理温度が800℃以上では30秒程度で十分な強誘電
特性が得られるが、それより第二焼成の処理温度が低い
場合に十分な強誘電特性を得るには、700℃で90秒
程度であり、更に低温化して600℃になると3分程度
であった。以上のことから、本発明の第二焼成の処理温
度は、3分以下で十分な効果が得られるものである。
【0055】次に、本実施例では、上記のステップS1
0からステップS14の工程で一層当たり40nmの膜
厚となるのでこれらの工程を5回繰り返して、200n
mのSrBi2Ta29強誘電体薄膜5を形成した。そ
して、その後、EB(electron beam)蒸着法により、
Pt上部電極層6をマスク蒸着した(ステップS1
5)。なお、本実施例では、強誘電体特性評価用の電極
サイズとして、Pt上部電極層6を100μmφの電極
としたが、本発明がこれらの電極形状や電極サイズに限
定されるものではない。
【0056】次に、上部電極層6の形成後(ステップS
15の後)、第三の熱処理工程である第三焼成として、
強誘電体薄膜5と上部電極層6との界面を安定化させる
ために、RTA法を用いて30秒間酸素雰囲気中で焼成
を行った(ステップS16)。この第三焼成温度に関し
て、これは上記第二焼成の温度と関係するものでるが、
900℃以上であると上述したように電極荒れが生じる
ので、本実施例では、第二焼成温度が800℃と850
℃との2種類のそれぞれについて、第三焼成の焼成温度
を400℃〜850℃の範囲で一定にして焼成を行った
複数のサンプルを作製した。また、このときの昇温速度
は、本実施例ではいずれのサンプルでも30℃/sec
としたが、これに限定されるものではなく、20℃/s
ec以上であれば本発明の効果が十分に得られるもので
ある。以上の工程により、図1に示すような強誘電体薄
膜素子の作製を完了した。
【0057】次いで、上記のようにして作製した強誘電
体薄膜素子の強誘電特性を測定した結果について説明す
る。強誘電特性はソーヤタワー法により測定したもので
あり、図4に示すソーヤタワー回路を用いて、図1に示
すタイプの強誘電体キャパシタに対して、印加電圧3V
で行ったものである。本実施例では、図4に示すソーヤ
タワーブリッジを用いて、オシロスコープによりヒステ
リシス曲線を表示させた。図4を更に詳細に説明する
と、強誘電体キャパシタと直列に接続された基準コンデ
ンサのキャパシタCRは基準となるキャパシタであり、
オシロスコープの横軸端子には、強誘電体薄膜素子であ
る強誘電体キャパシタに印加された電圧Vを分割した電
圧VXが入力される。ここで、強誘電体薄膜の分極表面
電荷密度をP、真電荷面密度をDとすると、(P+ε0
E)×A、即ちD×A(Aは電極面積)と基準コンデン
サに蓄えられた電荷CRXとは共にQに等しいので、縦
軸端子にはDに比例した電圧VY(DA/CR)が入力さ
れる。
【0058】強誘電体においては、PがεEに比べて十
分に大きいので、D=Pとみなせる。このVY−VX曲線
を既知の量である膜厚、分圧比、電極面積(A)、基準
コンデンサの静電容量(CR)を用いて目盛り直せば、
P−E(残留自発分極−電界)ヒステリシス曲線、又は
D−E(蓄積電荷量−電界)ヒステリシス曲線が得ら
れ、これから、残留自発分極(Pr)、抗電界(E
c)、蓄積電荷量(ΔQ)のそれぞれの値を読み取るこ
とができる。
【0059】このソーヤタワー法を用いて、上記の複数
の強誘電体薄膜素子サンプルの3Vの残留分極Prの第
三焼成温度(400℃〜850℃)に対する依存性につ
いて、第二焼成温度が850℃のサンプルのものを図5
(a)に、第二焼成温度が800℃のものを図5(b)
にそれぞれ示す。図5から、第二焼成温度が800℃及
び850℃のいずれも第三焼成温度が500℃〜850
℃の範囲で残留分極Prが8μC/cm2以上で、特に
第二焼成温度が850℃で第三焼成が550℃〜850
℃の範囲では残留分極Prが9μC/cm2と良好な値
が得られていることがわかる。すなわち、前述のよう
に、第二焼成の処理時間が合計150秒、第三焼成の処
理時間が30秒と、従来のものより非常に短い処理時間
でも、十分な高い残留分極Pr値が得られた。
【0060】次に、本実施例の強誘電体薄膜素子のリー
ク電流特性について説明する。強誘電体薄膜素子から構
成される強誘電体メモリには、電源OFFのときに特有
の不揮発性がある。これを、通常動作時にDRAM動作
をするNVDRAMなどに応用した場合、リーク電流が
多いと、リフレッシュ時間が短くなってしまうなどの問
題がある。そこで、蓄積電荷量又は残留分極を良好な値
に保持したまま、リーク電流を何桁も小さくできれば、
DRAM動作時のリフレッシュ時間を長くとることがで
き、素子特性を大幅に改善できる。また、リーク電流が
多くなると、強誘電体薄膜にかかる電界が小さくなって
しまい、分極反転が十分に起こらないとなどの問題も生
じる。
【0061】上記の複数の強誘電体薄膜素子サンプルに
おいて、3V印加時のリーク電流密度(IL)の第三焼
成温度(400℃〜850℃)に対する依存性を、図6
に示す。図6(a)は第二焼成温度が850℃のサンプ
ルのリーク電流密度(IL)を示しものであり、図6
(b)は第二焼成温度が800℃のサンプルのリーク電
流密度(IL)を示すものである。図6(a)から、第
二焼成温度が850℃のサンプルでは、第三焼成温度が
500℃〜850℃において、10-8A/cm2台の小
さく良好なリーク電流密度ILとなっている。図6
(b)から、第二焼成温度が800℃のサンプルでは、
第三焼成温度が500℃〜850℃において、10-7
10-8A/cm2台の小さく良好なリーク電流密度IL
なっている。
【0062】これらのリーク電流密度ILの値は上記の
従来技術の欄で説明したMOD法や特開平8−2307
3号公報に記載されたもののいずれともほぼ同等なもの
であるが、これらの従来技術において第三焼成の処理時
間を30秒と短くすると強誘電体薄膜素子の上下電極間
で短絡したままであった。さらに、上記従来技術のうち
MOD法によるものでは、第二焼成の一層成膜工程当た
りの処理時間を30秒とすると、強誘電特性をえること
ができなかった。
【0063】また、詳細は示さないが、本実施例の第三
焼成温度が500℃〜850℃のいずれのサンプルにつ
いても強誘電体薄膜の断面SEM写真を観察した結果、
従来技術によるものと比較して、非常に緻密な膜となっ
ていた。こらは、本実施例では、第二焼成及び第三焼成
において、高速に加熱して短時間で熱処理を行ったの
で、高密度の結晶核生成及びその後の結晶化を短時間で
連続的に行うことにより、結晶粒を大きく成長させるこ
となく、小さい結晶粒子から成る結晶膜を形成できたも
のである。
【0064】なお、前述のように、本実施例において第
三焼成温度が500℃〜850℃のものが、非常に短い
時間の焼成(第二焼成及び第三焼成)でも、リーク電流
を低い値に抑えることができた。これは、膜の構造が、
従来のものより緻密になったことと密接に関係してお
り、従来のものではリークパスとなっていたグレインバ
ウンダリー等が減少したためである。
【0065】さらに、第二焼成の処理温度について検討
するため、第二焼成を750℃で30秒間行った場合
に、第三焼成温度を400℃〜850℃(処理時間はい
ずれも一層成膜工程当たり30秒)と変化させ、その他
の条件は上記のものと同様にして、強誘電体薄膜素子を
作製した。そして、それらのサンプルについて、残留分
極Pr(3V印加時)の第三焼成温度(400℃〜85
0℃)に対する依存性を測定した結果を図7(a)に、
リーク電流密度IL(3V印加時)の第三焼成温度(4
00℃〜850℃)に対する依存性を測定した結果を図
7(b)に示す。
【0066】図7(a)から、第三焼成温度が500℃
〜850℃のサンプルでは、残留分極Prが8μC/c
2程度と良好な値が得られていることがわかる。ま
た、図7(b)から、第三焼成温度が500℃〜750
℃のサンプルでは、10-7〜10-8A/cm2台の小さ
く良好なリーク電流密度ILとなっている。したがっ
て、第二焼成が750℃のとき、第三焼成温度が500
℃〜750℃で、残留分極及びリーク電流の特性におい
て良好な結果が得られた。
【0067】以上の結果から、強誘電体薄膜の膜厚が2
00nm程度のものでは、第二焼成の加熱温度が750
℃〜850℃で、第三焼成の加熱温度が500℃以上で
第二焼成の加熱温度以下が好ましい結果となった。
【0068】以上のように、本実施例によれば、従来技
術に比較して、非常に短時間で、特性の良好な強誘電体
薄膜素子を作製することができた。これにより、下部電
極やトランジスタなどに悪影響を及ぼすことなく、ま
た、膜構造が緻密なので微細加工に非常に有利なデバイ
スの製造が可能となる。したがって、本実施例の強誘電
体薄膜素子の製造方法を用いれば、集積回路中に強誘電
体薄膜素子を形成することが容易となり、デバイスの製
造上非常に有利となる。
【0069】〔第2の実施例〕第2の実施例では、上記
第1の実施例よりも、さらにSrBi2Ta29強誘電
体薄膜の薄膜化と焼成温度の低温化を検討した。すなわ
ち、第2の実施例では、SrBi2Ta29強誘電体薄
膜の膜厚を80nm〜200nmとし、第二焼成温度を
600℃〜850℃の強誘電体薄膜素子の作製を行い、
それらの特性について評価した。
【0070】本実施例の構造は図1に示した上記第1の
実施例のものと同様であり、製造方法において、上記第
1の実施例と異なる点だけを以下に説明する。
【0071】本実施例では、上記第1の実施例と同様の
前駆体原料溶液を用いて、上記第1の実施例と同様の下
部電極層4を備えた基板に、図3のステップ10〜ステ
ップ14の処理を繰り返した。このとき、SrBi2
29強誘電体薄膜の膜厚を、80nm、120nm、
160nm、200nmと変化させるため、ステップ1
0〜ステップ14の1回の処理で一層当たり40nmと
し、2回繰り返したもの、3回繰り返したもの、4回繰
り返したもの、及び5回繰り返したものの4種類とし
た。また、第二焼成温度は550℃〜850℃で変化さ
せて複数とした。これ以降は、ステップ15及びステッ
プ16の処理を行ったが、第三焼成温度はすべてのサン
プルで850℃とした。
【0072】次いで、上記のようにして作製した強誘電
体薄膜素子の強誘電特性を測定した結果について説明す
る。本実施例の複数の強誘電体薄膜素子サンプルの残留
分極Prの、強誘電体薄膜の膜厚に対する依存性(印加
電圧3V)について、第二焼成温度が850℃のサンプ
ルのものを図8(a)に、第二焼成温度が800℃のも
のを図8(b)に、第二焼成温度が750℃のものを図
8(c)に、第二焼成温度が600℃のサンプルのもの
を図8(d)に、第二焼成温度が550℃のものを図8
(e)にそれぞれ示す。
【0073】図8(a)によると、第二焼成温度が85
0℃のものでは、強誘電体薄膜の膜厚が薄くなるほど、
残留分極Prが小さくなっている。そして、図8(b)
によると、第二焼成温度が800℃のものでは、それが
850℃のものと同様に、強誘電体薄膜の膜厚が薄くな
るほど、残留分極Prが小さくなっているが、図8
(a)よりも特性劣化は少ない。
【0074】これらに対して、図8(c)によれば、第
二焼成温度が750℃のものでは、強誘電体薄膜の膜厚
が薄くなっても、残留分極Prが8〜10μC/cm2
の良好なほぼ一定の値となっていることがわかる。そし
て、図8(d)によると、第二焼成温度が600℃のも
のでは、強誘電体薄膜の膜厚が薄くなるほど、残留分極
Prが増大している。さらに、図8(e)によると、第
二焼成温度が550℃のものでは、図8(d)と同様に
強誘電体薄膜の膜厚が薄くなるほど残留分極Prが大き
くなっているが、図8(d)と比較して全体にPrが劣
化しており特に膜厚160nm以上の劣化が著しい。
【0075】このことから、本実施例の場合、強誘電体
薄膜の膜厚が薄いときには、第二焼成温度が600℃〜
750℃が好ましく、具体的には膜厚160nm以下の
場合に残留分極Prが8μC/cm2程度以上と良好な
値が得られてた。
【0076】このことは、強誘電体薄膜の結晶核生成密
度や結晶のグレインの大きさに関係している。つまり、
第二焼成温度が高い図8(a)のものでは、焼成温度が
高いのでSrBi2Ta29結晶ができ易く、しかも、
急速な結晶化のために薄膜内に不均一に結晶化が進むの
でグレインサイズのむらが顕著に出てしまい、膜厚が厚
くなるほど残留分極値が小さくなるという現象を引き起
こす。これに対して、第二焼成温度が低い図8(c)〜
(e)のものでは、薄膜中に微結晶が生成し易い温度で
あるので、薄膜中に均一にSrBi2Ta29の微結晶
体が生成される。この際には、焼成温度が高いときとは
異なり、強誘電体薄膜の膜厚を薄くしても、SrBi2
Ta29結晶が均一に形成されているので、残留分極の
劣化はほとんどない。
【0077】上記のことから、第二焼成温度が低い場合
に、強誘電体薄膜の膜厚を薄くすると、残留分極Prが
改善されるという結果が得られた。この結果より、強誘
電体薄膜の膜厚が薄い時の第二焼成温度に関する検討を
行った。ここで、強誘電体薄膜の膜厚は、薄すぎるとリ
ーク電流が増大するので、強誘電体薄膜の耐圧を考慮し
て、120nmのサンプルについて検討した。
【0078】図9に、強誘電体薄膜の膜厚が120nm
で第三焼成温度が850℃のサンプルについて、第二焼
成温度(550℃〜850℃)に対する各特性の依存性
を示す。図9(a)は残留分極Prを示し、図9(b)
は抗電界Ecを示し、図9(c)はリーク電流密度を示
す。図9(a)によれば、第二焼成温度が低くなると次
第に残留分極が良好な値となり、即ち第二焼成温度が6
00℃〜750℃で8〜11μC/cm2程度の良好な
値となり、特に660℃〜720℃では9〜11μC/
cm2程度の良好な値でほぼ一定となっている。また、
図9(b)によれば、いずれの第二焼成温度の温度で
も、抗電界Ecはほぼ一定である。そして、図9(c)
によれば、第二焼成温度が600℃以上で、リーク電流
密度ILは10-8A/cm2台の良好な値でほぼ一定であ
る。
【0079】これらの結果についても、上記のように、
強誘電体薄膜の結晶核生成密度や結晶のグレインの大き
さの観点から説明できるものである。つまり、第二焼成
温度が低い場合、特に750℃以下で、結晶核生成密度
が高いので、特性が向上するものである。
【0080】次に、本実施例の強誘電体薄膜素子サンプ
ルのうち、SrBi2Ta29強誘電体薄膜の膜厚が1
20nmで、第二焼成温度720℃のサンプルの、±3
V印加時の疲労特性を図10に示す。図10において、
横軸は繰り返し回数、縦軸は残留分極Prの初期値(P
0)に対する繰り返し後の残留分極値(Pr)の変化
の割合(Pr/Pr0)を示す。図10から、繰り返し
回数1×1012回までは、残留分極値の劣化が0.05
%と、非常に優れていることがわかる。
【0081】以上のように、強誘電体薄膜の膜厚が薄い
160nm以下、特に80nm以上120nm以下にお
いては、第二焼成温度が600℃以上でリーク電流が小
さく良好な値となり、第二焼成温度が750℃以下で残
留分極値が良好な値となった。これらのことから、強誘
電体薄膜の膜厚が薄い場合には、第二焼成の加熱温度が
600℃以上750℃以下が好ましいことがわかる。ま
た、第三焼成温度に関しては、700℃以下では強誘電
特性が確認されず、900℃以上では電極の膜荒れを生
じるので、750℃以上850℃以下が好ましい。すな
わち、本実施例から、強誘電体薄膜の膜厚が薄い場合に
は、第二焼成の加熱温度が600℃以上750℃以下で
あり、かつ、第三焼成温度が750℃以上850℃以下
であることが好ましい。
【0082】以上のような、焼成温度の条件により、本
実施例によれば、強誘電体特性に優れた強誘電体薄膜
を、上記の従来技術に比べ、第二焼成及び第三焼成の工
程において、10分の1から30分の1程の時間で、強
誘電体薄膜を形成することが可能となり、また、上記の
ような急速の熱処理を行うことにより、非常に緻密な強
誘電体薄膜を作製することができ、素子作製上大変に有
利である。
【0083】〔第3の実施例〕第3の実施例では、上記
第2の実施例において第三焼成時の焼成雰囲気を酸素雰
囲気としたのを、窒素雰囲気と代えた以外は、上記第2
の実施例と同様にして強誘電体薄膜素子を作製した。
【0084】まず、本実施例では、上記第1及び第2の
実施例と同様の前駆体原料溶液を用いて、上記第1及び
第2の実施例と同様の下部電極層4を備えた基板に、図
3のステップ10〜ステップ14の処理を繰り返した。
このとき、SrBi2Ta29強誘電体薄膜の膜厚は、
ステップ10〜ステップ14の1回の処理で一層当たり
40nmとしてこれらのステップを3回繰り返し、最終
的に120nmとした。また、第二焼成温度は500℃
〜850℃の範囲で変化させて、いずれも酸素雰囲気中
でその処理時間を30秒として複数のサンプルを作製し
た。これ以降は、ステップ15及びステップ16の処理
を行ったが、第三焼成温度はすべてのサンプルで窒素雰
囲気中で850℃とした。
【0085】次いで、上記のようにして作製した強誘電
体薄膜素子の強誘電特性を測定した結果について説明す
る。本実施例の複数の強誘電体薄膜素子サンプルについ
て、残留分極Prの第二焼成温度に対する依存性(印加
電圧3V)を図11(a)に、抗電界Ecの第二焼成温
度に対する依存性(印加電圧3V)を図11(b)に、
リーク電流密度ILの第二焼成温度に対する依存性(印
加電圧3V)を図11(c)にそれぞれ示す。
【0086】図11(a)〜(c)によると、上記第2
の実施例の酸素雰囲気中で第三焼成を行ったもの(図
9)と比較して、残留分極Prの値は1程度小さくなっ
ているものの、抗電界Ec及びリーク電流密度ILにつ
いてはほぼ同等の値となっている。
【0087】本実施例によれば、比較的高温な第三焼成
において酸化することがないので、ウエハを高温で酸素
に曝すことになく成膜が可能となり、例えば高密度FR
AMの実現のためのスタック構造等の素子作製上非常に
有利である。
【0088】〔第4の実施例〕第4の実施例では、上記
第1の実施例で示した短時間の第二焼成及び第三焼成に
より作製する強誘電体薄膜素子を、半導体装置であるキ
ャパシタ型不揮発メモリに応用したものについて説明す
る。
【0089】本実施例の不揮発メモリの構造や動作等に
ついて、その概略構造を示す要部断面図である図12、
及びその等価回路である図13を用いて説明する。
【0090】図12に示すように、本実施例のキャパシ
タ型の不揮発メモリは強誘電体薄膜38を備え、この強
誘電体薄膜38は上記第1の実施例のうち十分に良好な
強誘電特性が得られる成膜条件と同様にして形成された
ものである。そして、この不揮発メモリは、一つのメモ
リセルが、一つのキャパシタと一つのトランジスタ36
から構成される。ここで、キャパシタ30は強誘電体薄
膜38とこれを挟み導体からなる一対の電極32,33
とからなり、トランジスタ36はソース領域35とゲー
ト34とドレイン領域とからなる。そして、ソース領域
35はビット線35aに接続され、ゲート34はワード
線34aに接続され、ドレイン領域37は信号ラインで
あるAl電極31に接続されている。ここで、信号ライ
ンであるAl電極31は、キャパシタ30の電極33に
も接続されている。
【0091】次に、本実施例のキャパシタ構造を有する
不揮発メモリの製造方法について説明する。まず、n型
Si基板1上にSiO2膜及びSi34膜を順次形成し
て、フォトエッチングによって後にトランジスタ30を
形成する部分にSi34膜を残して、フィールド酸化を
行うことによりフィールド酸化膜(SiO2)39を形
成する。次に、先に形成したSi34膜及び直下のSi
2膜を除去し、ゲート酸化膜(SiO2)を形成した
後、ポリシリコンゲート34を形成する。
【0092】その後、ゲート34をマスクにしてイオン
打ち込みを行いソース領域35及びドレイン領域37を
形成した後、PSG(珪リン酸ガラス)40で覆いリフ
ローして平坦化する。その上に、電極32を形成した
後、強誘電体薄膜38を上記のようにして形成し、更に
その上に電極33を形成する。その後、またPSG41
で覆いリフローした後、電極33上部及びドレイン領域
37上部にコンタクトホールをエッチングにより形成し
て最後に配線用Al電極31を設ける。
【0093】次に、上記のような構成の本実施例のキャ
パシタ型の不揮発メモリの動作について、図13を用い
て説明する。“1”を書き込むには、ビット線35aを
介してソース領域35よりトランジスタ36を経由し
て、強誘電体薄膜38に抗電界以上の負のパルスを印加
すると、強誘電体薄膜38が誘電分極を起こし、負の残
留分極電荷がキャパシタ30の電極32側に蓄積される
ことにより行われる。また、“0”を書き込む場合に
は、ビット線35aを介してソース領域35よりトラン
ジスタ36を経由して、強誘電体薄膜38に抗電界以上
の正のパルスを印加すると、正の残留分極電荷がキャパ
シタ30の電極32側に蓄積されることにより行われ
る。
【0094】そして、“1”を読み出す場合には、正の
パルスを印加すると、強誘電体薄膜38において負の残
留分極が分極反転を起こし、正の残留分極がキャパシタ
30の電極33側に蓄積されることになるので、従っ
て、パルスの印加前後で正の残留分極電荷と負の残留分
極電荷との差の電荷量の変化が生じるので、これを読み
出せばよい。一方、“0”を読み出す場合には、正のパ
ルスを印加しても分極反転が起こらないので、従って、
パルスの印加前後で正の残留分極電荷と負の残留分極電
荷との差の電荷量の変化がほとんど生じないので、これ
を読み出せばよい。この電荷量の差は、ビット線35a
接続された図示しないセンスアンプを用いることによ
り、ビット情報を同定することができる。ここで、強誘
電体薄膜38は残留分極をもつので、電源をOFFにし
ても「1」又は「0」の状態が保持され、不揮発記憶動
作を実現することが可能である。
【0095】なお、同様の構造で、普段は強誘電体薄膜
38の高い誘電率特性のみを利用してDRAM動作させ
て、電源OFF時のみ不揮発メモリとして動作させるこ
とも可能である。
【0096】このような本実施例の不揮発メモリは、上
記第1〜3の実施例に示すような、短時間での第二焼成
及び第三焼成により形成した緻密な強誘電体薄膜を採用
することにより、下部のトランジスタにダメージを与え
ることなく作製することができた。
【0097】〔第5の実施例〕第4の実施例では、上記
第1の実施例で示した短時間の第二焼成及び第三焼成に
より作製する強誘電体薄膜素子を、半導体装置であるM
FMIS−FET(メタル・フェロエロクトリック・メ
タル・インシュレータ・セミコンダクタ−FET)に応
用したものについて、その概略構造を示す要部断面図で
ある図14を用いて説明する。
【0098】本実施例の製造方法については、まず、上
記第4の実施例と同様にして、n型Si基板上に、ゲー
ト絶縁膜(SiO2)45を形成し、その上にフローテ
ィングゲート46をPtで形成する。その後、イオン打
ち込みによりドレイン領域43とソース領域44とを形
成し、PSG(珪リン酸ガラス)48aで覆いリフロー
して平坦化する。
【0099】次に、Ptゲート46上のPSGをエッチ
ングで除去し、その上に上記第1の実施例と同様にして
強誘電体薄膜38をに成膜し、更にその上にコントロー
ルゲート47をPtで形成する。その後、また、PSG
48bで覆いリフローした後、コントロールゲート4
7、ドレイン領域43、ソース領域44上にコンタクト
ホールをエッチングにより形成して、最後に配線用Al
電極34を設ける。
【0100】次いで、本実施例のMFMIS−FETの
動作について説明する。このMFMIS−FETでは、
コントロールゲート47に電圧を印加し、強誘電体薄膜
38の分極方向を変えることにより、その静電誘導のた
めにフローティングゲート46を介して、ゲート絶縁膜
(SiO2膜)45も誘電分極し、分極方向が変化す
る。この分極の向きによって、ゲート直下の半導体表面
のチャンネルの形成が制御できるので、ドレイン電流の
ON−OFFにより「0」及び「1」を定義できる。
【0101】例えば、ゲート電極(フローティングゲー
ト46)がゼロバイアス状態においては、半導体基板
(シリコン基板1)方向に強誘電体薄膜38がフローテ
ィングゲート46側が負極性となるように分極している
とすると、ゲート絶縁膜(SiO2膜)45が誘電分極
しSi基板1に接する面が負極性となり、Si基板1の
SiO2膜45に接する表面は正極性となりドレイン領
域43とソース領域44が接続されない(OFF状
態)。
【0102】次に、ゲート電極(フローティングゲート
46)に強誘電体薄膜38の抗電界よりも大きな正電圧
を印加すと、強誘電体薄膜38の分極方向が反転しフロ
ーティングゲート46側が正極性となるように分極す
る。この場合には、SiO2膜45が誘電分極しSi基
板1に接する面が正極性となり、Si基板1のSiO2
膜45に接する表面は負極性となりドレイン領域43と
ソース領域44が接続された状態になる(ON状態)。
この状態(ON状態)でゲート電圧をゼロバイアスにし
ても、強誘電体薄膜38の残留分極により、この状態は
保持される。このとき、強誘電体薄膜32の分極が保持
される限り、SiO2膜45の誘電分極が保たれるの
で、非破壊読み出し可能な不揮発性メモリとして動作さ
せることが可能となる。
【0103】このような本実施例のMFMIS−FET
は、上記第1〜3の実施例に示すような、短時間での第
二焼成及び第三焼成により形成した緻密な強誘電体薄膜
を採用することにより、他の膜にダメージを与えること
なく作製することができ、特性の良いものを作製するこ
とが可能となる。
【0104】
【発明の効果】請求項1〜4、7に記載の発明によれ
ば、ゾルゲル法又はMOD法による強誘電体薄膜素子の
製造方法において、第二の熱処理である第二焼成及び第
三の熱処理である第三焼成を急速に昇温し短時間で処理
することにより、従来技術に比較して10分の1から3
0分の1程度に同様の工程を短縮でき、更に緻密な強誘
電体薄膜を得ることができる。このことにより、製造時
間の短縮化が可能となると共に、高密度メモリに不可欠
な緻密な薄膜の形成が可能となり、素子作製上非常に有
利である。
【0105】さらに、請求項5に記載の発明によれば、
第二の熱処理工程である第二焼成の加熱温度を比較的高
い750℃以上850℃以下とし、第三の熱処理工程で
ある第三焼成の加熱温度を比較的低い500℃以上第二
焼成の加熱温度以下とすることにより、比較的厚めの2
00nm程度の膜厚の強誘電体薄膜を形成するのに採用
したときに、良好な特性の強誘電体薄膜の得ることがで
きる。
【0106】また、請求項6に記載の発明によれば、第
二熱処理工程である第二焼成の加熱温度を比較的低い6
00℃以上750℃以下とし、第三の熱処理工程である
第三焼成の加熱温度を750℃以上850℃以下とする
ことにより、膜厚が200nm程度以下の比較的薄い強
誘電体薄膜を形成するのに採用したときに、良好な特性
の強誘電体薄膜の得ることができる。さらに、通常数回
繰り返される第二焼成において、加熱温度の低温化が達
成できるので、作製時の素子へのダメージが低減でき、
比較的薄い膜厚の強誘電体薄膜でも十分な残留分極を得
ることができる。これらの効果は、高集積化したメモリ
を作製する上で非常に有利となる。
【0107】また、請求項8に記載の発明によれば、第
三の熱処理工程である第三焼成において、窒素等の不活
性ガス雰囲気中で処理できるので、比較的高温の熱処理
での下地電極等の酸素によるダメージを防止することが
でき、スタック構造などの高密度メモリを作製するのに
非常に有利となる。
【0108】また、請求項9に記載の発明によれば、上
記のような強誘電体薄膜素子の製造方法を採用している
ので、様々な集積回路等の半導体装置に応用することが
でき、より高機能、高動作性、高信頼性を有する半導体
装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施例の強誘電体薄膜素子
の要部概略断面図である。
【図2】第1の実施例の製造に用いる前駆体溶液aを合
成する工程を示す工程図である。
【図3】第1の実施例の製造工程を説明する工程図であ
る。
【図4】第1の実施例の強誘電特性の測定に用いたソー
ヤタワーブリッジを示す図である。
【図5】第1の実施例において残留自発分極Pr値の第
三焼成温度に対する依存性を示す図である。
【図6】第1の実施例においてリーク電流密度IL値の
第三焼成温度に対する依存性を示す図である。
【図7】第1の実施例において残留自発分極Pr値及び
リーク電流密度IL値の第二焼成温度に対する依存性を
示す図である。
【図8】第2の実施例において残留自発分極Pr値の膜
厚に対する依存性を示す図である。
【図9】第2の実施例において強誘電体薄膜の膜厚が1
20nmのものの残留自発分極Pr値、抗電界Ec、及
びリーク電流密度IL値の第二焼成温度に対する依存性
を示す図である。
【図10】第2の実施例において強誘電体薄膜の膜厚が
120nmのものの±3V印加時の疲労特性を示す図で
ある。
【図11】第3の実施例において強誘電体薄膜の膜厚が
120nmのものの残留自発分極Pr値、抗電界Ec、
及びリーク電流密度IL値の第二焼成温度に対する依存
性を示す図である。
【図12】第4の実施例の半導体装置(キャパシタ型の
不揮発メモリ)の概略構造を示す要部断面図である。
【図13】第4の実施例の等価回路を示す図である。
【図14】第5の実施例の半導体装置(MFMIS−F
ET)の概略構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】 1 Si基板 2 熱酸化膜 3 Ta膜 4 下部電極層 5,38 強誘電体薄膜 6 上部電極層 30 強誘電体キャパシタ
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 21/8242

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に配置された下部電極層上に、層
    状ペロブスカイト構造を有する強誘電体薄膜と上部電極
    層とを順次形成する強誘電体薄膜素子の製造方法におい
    て、 前駆体原料溶液を塗布乾燥して前記強誘電体薄膜となる
    薄膜を成膜する成膜工程と、 該成膜工程により成膜した薄膜を加熱温度400℃以上
    600℃以下の温度で加熱する第一の熱処理工程と、 該第一の熱処理工程の後に昇温速度20℃/秒以上で昇
    温してから一定温度で3分以内の時間保持する第二の熱
    処理工程と、 前記成膜工程、前記第一の熱処理工程、及び前記第二の
    熱処理工程を所望の前記強誘電体薄膜の膜厚が得られる
    ように繰り返してから該強誘電体薄膜上に上部電極層を
    形成した後、さらに昇温速度20℃/秒以上で昇温して
    から一定加熱温度で3分以内の時間保持する第三の熱処
    理工程とを含むことを特徴とする強誘電体薄膜素子の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の強誘電体薄膜素子の製
    造方法において、 前記強誘電体薄膜が、化学式BiAm-1m3m+3(Aは
    Na,K,Pb,Ca,Sr,Ba,Biから選択さ
    れ、BはFe,Ti,Nb,Ta,W,Moから選択さ
    れるものであり、mは1以上の自然数である)で示され
    る強誘電体材料から成ることを特徴とする強誘電体薄膜
    素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の強誘電体薄膜素子の製
    造方法において、 前記強誘電体薄膜がSrBi2Ta29から成ることを
    特徴とする強誘電体薄膜素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載の
    強誘電体薄膜素子の製造方法において、 前記第二の熱処理工程の加熱温度が600℃以上850
    ℃以下であり、前記第三の熱処理工程の加熱温度が50
    0℃以上850℃以下であることを特徴とする強誘電体
    薄膜素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の強誘電体薄膜素子の製
    造方法において、 前記第二の熱処理工程の加熱温度が750℃以上850
    ℃以下であり、前記第三の熱処理工程の加熱温度が50
    0℃以上で前記第二の熱処理工程の加熱温度以下である
    ことを特徴とする強誘電体薄膜素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載の強誘電体薄膜素子の製
    造方法において、 前記第二の熱処理工程の加熱温度が600℃以上750
    ℃以下であり、前記第三の熱処理工程の加熱温度が75
    0℃以上850℃以下であることを特徴とする強誘電体
    薄膜素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1から6のいずれか1項に記載の
    強誘電体薄膜素子の製造方法において、 前記第二の熱処理工程及び前記第三の熱処理工程を酸素
    ガスを含む雰囲気中で行うことを特徴とする強誘電体薄
    膜素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から7のいずれか1項に記載の
    強誘電体薄膜素子の製造方法において、 前記第二の熱処理を酸素ガスを含む雰囲気中で行い、前
    記第三の熱処理工程を不活性ガス雰囲気中で行うことを
    特徴とする強誘電体薄膜素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1から8のいずれか1項に記載の
    強誘電体薄膜素子の製造方法により製造された強誘電体
    薄膜素子から構成される半導体装置であって、 基板上に形成された集積回路素子の一部として前記強誘
    電体薄膜素子が形成されたことを特徴とする半導体装
    置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100324601B1 (ko) * 1998-12-30 2002-04-17 박종섭 계면의 특성 향상을 위한 강유전체 캐패시터 제조 방법
US6857172B2 (en) 2001-09-18 2005-02-22 Oki Electric Industry Co., Ltd. Method of manufacturing ferroelectric capacitor
WO2006118236A1 (ja) * 2005-04-28 2006-11-09 Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd 酸化物誘電層の形成方法及びその形成方法で得られた酸化物誘電層を備えたキャパシタ層形成材
KR100717917B1 (ko) 2003-12-11 2007-05-11 세이코 엡슨 가부시키가이샤 유전체막의 제조 방법 및 액체 분사 헤드의 제조 방법

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