JPH10269983A - 走査プロトン顕微鏡 - Google Patents
走査プロトン顕微鏡Info
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Abstract
検出でき、プロトンの分布を二次元画像化することが可
能な走査プロトン顕微鏡を提供する。 【解決手段】 グリッド4、MCP5、スクリーン6は
飛行時間型質量分析器(TOF−MS)を構成してい
る。分析室1の内部は排気系2により10-8〜10-9P
a程度の超高真空となされる。電子銃7は、試料3の表
面からプロトンを効率よく脱離できる300〜800e
V程度の低エネルギーで、1nA程度の大電流が得ら
れ、且つ700nm程度の小さいビーム径の電子ビーム
を照射できるように構成されている。MCA9は、スク
リーン6から得られたスペクトルに基づいてプロトンの
検出を行い、表示部12は各箇所で検出されたプロトン
強度から試料3上のプロトン分布を二次元画像化して表
示する。
Description
査プロトン顕微鏡に係り、特にプロトンを高感度、高分
解能で検出できる走査プロトン顕微鏡に関する。
金属の脆性、あるいは半導体の不純物の原因となるもの
として知られている。そこで、試料表面上の水素をプロ
トンとして検出し、試料表面上のプロトンの分布を二次
元画像化できることが望まれている。
としては、二次イオン分析法を用いる方法と、電子励起
イオン脱離法を用いる方法が知られている。
イオンビームを照射し、試料から放出されるイオンを質
量分析する方法であり、電子励起イオン脱離法を用いる
方法は、試料に電子ビームを照射し、試料から放出され
るイオンを質量分析する方法である。
のプロトンを良好に検出することは非常に困難であっ
た。即ち、二次イオン分析法によりイオン分析を行う装
置は、真空度が10-4〜10-6Pa程度であり、分析室
内部の残留ガスの中に非常に多くのプロトンが存在する
ので、例えプロトンを検出できたとしても、そのプロト
ンは試料表面上のプロトンではない可能性が非常に高い
ものである。このことは、スペクトルのバックグランド
のプロトンのレベルが非常に高くなることを意味してお
り、望ましいものでないことは明らかである。
ロトンを検出できる可能性は高くなるが、試料に照射す
るイオンビームを収束して小さなビーム径とすることは
非常に難しいので、分解能は非常に悪いものである。実
際、イオンビームのビーム径は通常10〜100μm程
度と非常に大きいものである。
法では微小領域のイオン分析を行うことが非常に難しい
のである。また、イオンビームのエネルギーが高い場合
には試料の表面を破壊してしまうこともある。
いる方法では、電子ビームを用いるので、試料に照射す
るときのビーム径を小さくして面走査を行うことは可能
であるが、プロトンを試料表面から効率よく脱離させる
ために必要な300〜800eV程度の低エネルギーで
大きな電流を得ることが困難であったので、感度が非常
に悪く実用に供することはできないものであった。ビー
ム電流を大きくすれば感度を向上させることはできる
が、ビーム電流を大きくするとビーム径が大きくなって
しまうので、分解能が悪くなり、微小領域のプロトンの
分析を行うことが難しくなってしまう。
を行うためには、まず、10-8〜10-9Pa程度の超高
真空を達成する必要がある。これによってスペクトルの
バックグランドのプロトンレベルを小さくすることがで
きる。そして更に、電子ビーム照射系としては、300
〜800eV程度の低エネルギーで、数nA程度の大き
な電流がとれ、しかもビーム径は大きくても700nm
程度にできる性能が要求される。このような条件が全て
満足されると、微小領域の水素を感度よく、高い分解能
で分析することが可能となり、更に電子ビームを走査さ
せることによって、水素の分布を二次元画像化すること
も可能となる。
は水素を感度よく、高い分解能で分析することは非常に
困難なものであった。
って、微小領域の水素を感度よく、高い分解能で分析で
き、水素の分布を二次元画像化することが可能な走査プ
ロトン顕微鏡を提供することを目的とするものである。
めに、本発明の走査プロトン顕微鏡は、真空度が少なく
とも10-8Pa以上の超高真空を達成する排気手段と、
少なくとも試料表面のプロトンを効率よく脱離できる所
定の低エネルギーで所定の電流、所定のビーム径を有す
る電子ビームを間欠的に試料に照射し、且つ試料の所定
範囲を走査する電子ビーム照射手段と、試料から放出さ
れたイオンの質量を分析する質量分析手段とを備えるこ
とを特徴とする。ここで、質量分析手段としては飛行時
間型質量分析装置を用いるのがよい。
態について説明する。図1は本発明に係る走査プロトン
顕微鏡の一実施形態を示す図であり、図中、1は分析
室、2は排気系、3は試料、4はグリッド、5はマルチ
チャンネルプレート(以下、MCPと称す)、6はスク
リーン、7は電子銃、8はパルスアンプ、9はマルチチ
ャンネルアナライザ(以下、MCAと称す)、10は電
子銃電源、11は走査用電源、12は表示部、13はパ
ルス発振装置、14はパターン観察窓を示す。
P5、スクリーン6が収納されている。試料3、グリッ
ド4、MCP5、スクリーン6にはそれぞれ所定の電圧
が印加されている。
グリッドメッシュで構成されている。MCP5はイオン
を電子パルスに変換して増倍するものであり、2枚の平
板型とMCPで構成される。スクリーン6は電子のコレ
クタであり、イオンがMCP5到達するとそれに応じた
電流を出力するものである。そして、スクリーン6の電
流出力はパルスアンプ8で増幅され、MCA9に入力さ
れて分析が行われることになる。
行時間型質量分析器(以下、TOF−MSと称す)を構
成しているものである。ここで、試料3の表面とグリッ
ド4との間の距離は略100mm程度の飛行距離を持た
せるようにするのがよい。このようにすることによっ
て、試料3の電子回折、オージェ電子分光及び放出イオ
ンの角度分布がその場観察できる。
10-9Pa程度の超高真空となされている。これによっ
て、分析室1内の残留ガスの水素、水等が試料3の表面
に吸着してプロトン検出時のバックグランドへの影響を
極力減少させることができる。このような排気系2は、
イオンポンプあるいはターボ分子ポンプ等で構成するこ
とができる。
よく脱離できる300〜800eV程度の低エネルギー
で、1nA程度の大電流が得られ、且つ700nm程度
の小さいビーム径の電子ビームを照射できるように構成
されている。
めには検出立体角を大きくとることが重要であり、その
ためには検出器を試料に近づけるようにすればよい。T
OF−MSの場合には、グリッド4は試料3の表面を中
心とする円周上に位置するように配置されており、グリ
ッド4の面積によって試料3から発生したイオンの検出
立体角が決まるため、大きなメッシュを用いるのが感度
に対して有利であることが知られている。
すると、相対的に電子銃7のサイズは小さな構造でない
と組み込むことはできない。そこで、電子銃7として
は、本出願人が開発した電界放射型の超小型低加速電子
銃を用いるのが望ましい。その構造の例を図2を参照し
て説明する。
ト27を取付け、これに全長142mmに設計した電子
銃本体が保持されている。取付フランジ28には電源接
続フランジ29が接続されて電子銃本体への電力供給が
なされるようになっている。このような超小型の構成に
して分析室1に組み込まれている。
ユニットと称す)20は、図3に示すように、フィラメ
ント23、サプレサー電極24、引き出し電極25、陽
極26全てを碍子22上に組み立て、これら各電極を貫
通する孔Hを設けてFEGユニットの電子銃室を外部雰
囲気と連通させる構成となされている。なお、低加速F
EGでは、磁界による影響を除くため磁気シールドが必
要となるが、走査プロトン顕微鏡では、分析室1の内部
または外部に磁気シールドが施されているため、FEG
ユニット専用の磁気シールドは必要ないものである。ま
た、低加速電圧であるためFEGの電極構造は絶縁が容
易となり、碍子22上に4つの電極を組み立ててユニッ
ト化しても放電などの問題は生じないことが確認されて
いる。
に電子銃室を貫通する孔Hを設け、分析室を10-8Pa
程度の超高真空に排気する排気系2により、孔Hを通し
て電子銃室を真空引きする。このため、全長が短い超小
型のFEGユニットを超高真空に排気することができ
る。
2上に4つの電極を組み立ててユニット化できること、
専用の磁気シールドが不要となること、電子銃室を真空
引きするための特別の排気ポンプが不要となること等か
らFEGユニットを小型化でき、また、4つの電極を組
み込んだ状態で組み立て精度のチェックができるため、
動作時の光軸を正確に得ることができる。
ト(光軸調整用)30、コンデンサレンズ40、コンデ
ンサレンズアライメント(光軸調整用)50、アパーチ
ャ60、偏向器70、71、非点補正器80、81、対
物レンズ90が組み込まれている。
イル等は小さくても動作し、磁界レンズを小型化するこ
とができるが、分析室1は超高真空であるため、磁界レ
ンズのコイル材料からの放出ガスが問題となる。従来用
いられているポリイミド被覆の線材では放出ガスが多
く、超高真空まで排気することができない。そこで、コ
ンデンサレンズ40、対物レンズ90の磁界型レンズの
コイルとして、アルミナ(Al2O3)またはシリカ等を
被覆した線材(銅線)を用いる。このような被覆線材を
用いることにより放出ガスを減少させて10-8Pa程度
の超高真空まで排気することが可能となっている。
偏向器を用いる。静電型の偏向器とすることにより、コ
イルは不要となり、超高真空下でも問題がなく、磁界タ
イプの偏向器よりもほぼ半分のリード線で済ませること
ができるので偏向器70、71を小型化することができ
る。
ズ40を組み込むようにしているが、コンデンサレンズ
40を省略して対物レンズ90のみにしてもよいもので
ある。
速電子銃を用いたとしても、電子ビームに収差があると
ビーム径が大きくなってしまうので、分解能が悪いもの
となってしまう。そこで、必要な電流がとれ、しかも収
差係数を小さくするために、電子銃7の対物レンズを小
さくし、且つ試料3に可能な限り近づけてワーキングデ
ィスタンスを小さくする必要がある。このとき、図4に
示すように、電子銃7はグリッド4の検出立体角θの範
囲外に配置することは当然である。
図5に示すように、対物レンズ90の直径を25mm、
先端の頂角が50°で、収差係数として球面収差係数1
00mm、色収差係数14mmの特性をもつ超小型の対
物レンズを得ることができた。この収差特性は通常の走
査電子顕微鏡に用いられる電子銃と同程度である。
F−MSと組み合わせて試料3の近傍に配置することが
できる。そして、この場合、検出立体角θとして80°
程度にすることができるため、TOF−MSの感度に影
響しないで、微小ビーム径を得ることができる。
て、300eV、ビーム電流1nAにて700nm程度
のビーム径が得られることが確認されている。また、電
子銃7の使用電圧は最大3kV程度であるため、電子銃
7の内部のコイルも小型にでき、しかも発熱も少ないた
め、コイルを冷却する特別の装置も必要なく、超小型に
ても安定して動作することが確認されている。
の各部に必要な電圧あるいは電流を供給する。また、電
子銃7は、パルス発振装置13から走査用電源11を介
して与えられる制御信号によって、電子ビームを間欠的
に、即ちパルス状に放射する、いわゆるビームチョッピ
ングを行う。電子ビームを放射する時間は50〜150
nsec程度とするのがよい。走査用電源11は、偏向電
圧を生成して電子銃7の偏向器に印加するものである。
に動作について説明する。パルス発振装置13は、電子
銃7に電子ビームの1パルスの照射を指示すると同時
に、MCA9に対して、次の(1) 式に基づくスペクトル
の分析動作の開始を指示する。
オンの電荷、mはイオンの質量、Ek はイオンの運動エ
ネルギー、Vs は試料のバイアス電圧である。
照射されると、励起の瞬間からイオンが放出され、スク
リーン6までのイオンの飛行時間tは上記(1) 式で与え
られるのであるが、飛行時間tは電子銃7に電子ビーム
の1パルスの照射を指示してからスペクトルのピークま
での時間として測定でき、飛行距離LはTOF−MSの
構造で定まっており、イオンの電荷qは既知であり、イ
オンの運動エネルギーEk 及び試料のバイアス電圧Vs
も既知であるので、質量mを求めることができるのであ
る。従って、プロトンを検出する場合には、qとしてプ
ロトンの電荷をとり、Ek としてプロトンの運動エネル
ギーをとればよい。
の質量が検出できるのであるが、この走査プロトン顕微
鏡はプロトンをはじめとして質量数の小さい軽元素を観
察することが主たる目的であるので、飛行距離Lは小さ
くてよく、従って装置を小型化することができるもので
ある。
ルが測定できるために非常に高速での測定が可能であ
る。なお、得られたスペクトルの信号強度が弱い場合に
は、数百パルスによるスペクトルの積算を行えば感度を
向上させることができる。100パルスの積算を行った
としても測定時間は高々30msec 程度であり、短時間
での測定が可能であることが確認されている。
走査用電源11から電子銃7に、電子ビームの照射位置
を変更する制御信号が送られ、その後、パルス発振装置
13から走査用電源11を介して電子銃7に電子ビーム
の照射を指示する制御信号が与えられる。このことによ
って、試料3上の各位置においてプロトンをはじめとす
る各種のイオンスペクトルを測定することができる。
中のプロトンに対応する飛行時間のイオンの強度をMC
A9から取り込み、走査用電源11から与えられた電子
ビームの照射位置を変更する制御信号に基づいて、電子
ビームの走査に同期させて内部の画像メモリ(図示せ
ず)中に記憶することによって二次元画像化し、イオン
強度に応じて輝度あるいは色を変えて表示する。これに
よって、試料3の表面上のプロトンの分布を二次元画像
として観察することが可能となる。例えば、試料3上に
200×200の画素位置を設定し、それらの各画素位
置でのプロトンの強度を100回積算するとして、一つ
の二次元画像を得るための測定時間は20分程度と非常
に高速に行うことができることが確認されている。従っ
て、試料3からプロトンが脱離または拡散していく状況
を動的に観察することも可能である。
よれば、試料上のプロトンを高感度に、しかも高分解能
で検出することができ、また、試料上のプロトンの分布
を二次元画像として観察することができるので、従来で
は不可能であった水素担蔵合金における水素分布、金属
表面の水素偏析等の観察が可能となる。
たが、本発明は上記実施形態に限定されるものではな
く、種々の変形が可能である。例えば、この走査プロト
ン顕微鏡は低加速の電子ビームを試料上で走査可能であ
るため、類似のオージェ電子顕微鏡(SAM)とも複合
化できるものである。このようにすれば、軽元素以外の
元素をオージェ分析にて補完したり、あるいは結合状態
等の総合的な分析に利用することができる。
態を示す図である。
適な超小型低加速電子銃の構成例を示す図である。
図である。
の図である。
る
…マルチチャンネルプレート(MCP)、6…スクリー
ン、7…電子銃、8…パルスアンプ、9…マルチチャン
ネルアナライザ(MCA)、10…電子銃電源、11…
走査用電源、12…表示部、13…パルス発振装置、1
4…パターン観察窓。
Claims (2)
- 【請求項1】真空度が少なくとも10-8Pa以上の超高
真空を達成する排気手段と、 少なくとも試料表面のプロトンを効率よく脱離できる所
定の低エネルギーで所定の電流、所定のビーム径を有す
る電子ビームを間欠的に試料に照射し、且つ試料の所定
範囲を走査する電子ビーム照射手段と、 試料から放出されたイオンの質量を分析する質量分析手
段とを備えることを特徴とする走査プロトン顕微鏡。 - 【請求項2】前記質量分析手段は飛行時間型質量分析装
置であることを特徴とする請求項1記載の走査プロトン
顕微鏡。
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