JPH10265876A - Ti−Fe−O−N系チタン合金からなる熱延ストリップ、熱延板または熱延条およびこれらの製造方法 - Google Patents

Ti−Fe−O−N系チタン合金からなる熱延ストリップ、熱延板または熱延条およびこれらの製造方法

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JPH10265876A
JPH10265876A JP7124997A JP7124997A JPH10265876A JP H10265876 A JPH10265876 A JP H10265876A JP 7124997 A JP7124997 A JP 7124997A JP 7124997 A JP7124997 A JP 7124997A JP H10265876 A JPH10265876 A JP H10265876A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】板幅方向にも高い延性を有する、実用的な熱延
ストリップ、熱延板または熱延条およびそれらの製造方
法を提供する。 【解決手段】0.8〜2.3wt%のFe、0.05w
t%以下の窒素を含有し、酸素等量値Q=(O)+2.7
7(N)+0.1(Fe)を0.35〜1.00の範囲と
し、体積比で5〜30%の等軸α相と残部が微細な針状
のα相とβ相の混合組織として、長さ方向の引張強さが
700MPa以上、板幅方向の引張伸びが10%以上の
熱延ストリップ、熱延板または熱延条を得る。これらの
製品は、β変態点以下の温度域に加熱し、熱間圧延し、
コイル状に巻き取り、β変態点以下で当該合金のα相と
β相の体積比が平衡状態にて3:7となる温度以上に加
熱保持した後、空冷以上の冷却速度で冷却する第1の熱
処理を行い、次いで500℃以上で当該合金のα相とβ
相の体積比が平衡状態で7:3となる温度以下で第2の
熱処理を行うことによって製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は使用合金元素とし
て、Fe、酸素、窒素を主要合金元素として含有するT
i−Fe−O−N系高強度チタン合金からなる熱延スト
リップ、熱延板または熱延条およびそれらの製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】Ti−6Al−4Vに代表される高強度
α+β型チタン合金は軽量、高強度、高耐食性に加え、
溶接性、超塑性、拡散接合性などの利用加工諸特性を有
することから、宇宙・航空機産業を中心に広く使用され
てきた。
【0003】近年では、これらの特性をさらに活用すべ
く、ゴルフ用品をはじめとしたスポーツ用品にも多用さ
れるようになってきており、さらに、自動車エンジン部
品、土木建築用素材、各種工具類、深海やエネルギー開
発用途などいわゆる民生品分野への適用拡大も検討され
ている。
【0004】しかし、α+β型チタン合金の著しく高い
製造コストが、その適用拡大を妨げており、これら民生
品分野への適用拡大のためには、安価なチタン合金の開
発が求められていた。
【0005】これら高強度α+β型チタン合金の製造コ
ストが高い理由としては、(1)Vなどの高価なβ相安定
化元素を使用していること、(2)α相安定化元素およ
び固溶強化元素として使用しているAlが、熱間での変
形抵抗を著しく高めるため、加工しにくくなるとともに
熱間加工性を損ねるため、割れなどの欠陥を生じ易くな
ること、の2点を挙げることができる。
【0006】特に(2)は、主要製品である薄板を、生産
性の高いストリップミルを用いて生産することを困難に
しており、高製造コストの大きな原因となっていた。す
なわち、高歪み速度、高圧下率のストリップ圧延を行う
と、板幅端部に深い割れを生じ、材料歩留まりが低下す
る上に、巻き取ったストリップコイルを、連続酸洗ライ
ンを通板したり、切断し切り板にする際に行う巻き戻し
工程で、曲げ変形を受け、割れが進展しさらに歩留まり
が低下し、極端な場合には、製造工程途中で破断してし
まうことさえあった。
【0007】したがって、これら合金のストリップ圧延
は、試験的には行われているものの、工業的には確立さ
れていない技術であった。そこで、これらチタン合金の
薄板製品を製造するには、厚板圧延機を用いて数mmの
厚さの板を製造し、これらを数枚〜十数枚重ね合わせ、
さらに全体をパッキングして厚板圧延機にて再度圧延
し、最後に解体して薄板を取り出す、いわゆるパック圧
延法が主として行われている。
【0008】この方法では、生産性が低い厚板圧延ミル
を用いているだけでなく、2度の圧延を必要とするこ
と、パッキングや解体に著しいコストがかかるなど、全
体の製造コストは著しく高いものとなってしまうという
問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年、低コスト
チタン合金が種々提案されているが、中でも、Ti−F
e−O−N系高強度チタン合金は、安価なFeをβ相安
定化元素として採用し、さらに、熱間加工性を低下させ
るAlに替わって安価でかつ熱間での加工性を損なわな
い酸素や窒素をα相安定化元素として採用していること
から、鍛造材や厚板などでは、従来のα+β型チタン合
金に比べて相当な低コスト化が達成されている。
【0010】このTi−Fe−O−N系高強度チタン合
金は、高歪み速度で強加工を行っても、既存合金のよう
に板幅端部に深い割れを生じ材料歩留まりを低下させた
り、巻き取ったストリップコイルを巻き戻す際に、割れ
が進展するようなことはなく、製造工程上からは効率的
なストリップ圧延が可能である。
【0011】ところが、このTi−Fe−O−N系チタ
ン合金は、ストリップ圧延のような一方向圧延を行う
と、強烈な集合組織を生じ、その結果、極端な材質異方
性が生じ、板の長さ方向の特性は優れるものの、板幅方
向の延性が極端に乏しくなり、素材として使用できなく
なってしまうという問題点があった。
【0012】本発明はこのような問題点に鑑み、低コス
トというTi−Fe−O−N系高強度合金の特徴を最大
限に発揮させ、板幅方向にも高い延性を有する実用的な
熱延ストリップ、熱延板または熱延条などの熱延製品を
提供するものであり、またこれら製品の製造方法を提供
するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は下記のとおりである。
【0014】(1)0.8〜2.3wt%のFe、0.
05wt%以下の窒素を含有し、酸素等量値Q=(O)+
2.77(N)+0.1(Fe)が0.35〜1.00の範
囲にあり、残部が実質的にTiであって、かつ体積比で
5〜30%の等軸α相と残部が微細な針状のα相とβ相
の混合組織からなり、長さ方向の引張強さが700MP
a以上、板幅方向の引張伸びが10%以上であることを
特徴とするTi−Fe−O−N系チタン合金からなる熱
延ストリップ、熱延板または熱延条。
【0015】(2)Ti−Fe−O−N系チタン合金の
酸素等量値が0.68〜1.00であり、長さ方向の引
張強さが900MPa以上であることを特徴とする前記
(1)記載のTi−Fe−O−N系チタン合金からなる熱
延ストリップ、熱延板または熱延条。
【0016】(3)0.8〜2.3%wtのFe、0.
05wt%以下の窒素を含有し、酸素等量値Q=(O)+
2.77(N)+0.1(Fe)が0.35〜1.00の範
囲にあり、残部が実質的にTiであるチタン合金のスラ
ブを、当該合金のβ変態点以下の温度域に加熱し、熱間
圧延し、コイル状に巻き取り、さらに、β変態点以下で
当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態にて3:7と
なる温度以上に3分以上の時間加熱保持した後、空冷以
上の冷却速度で冷却する第1の熱処理を行い、次いで5
00℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態
で7:3となる温度以下に20分以上保持する第2の熱
処理を行うことを特徴とするTi−Fe−O−N系チタ
ン合金からなる熱延ストリップ、熱延板または熱延条の
製造方法。
【0017】(4)前記(3)記載の製造方法において、
第1の熱処理を連続焼鈍により行うことを特徴とするT
i−Fe−O−N系チタン合金からなる熱延ストリッ
プ、熱延板または熱延条の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】一般に、α型やα+β型チタン合
金を熱間加工すると、集合組織が形成することがよく知
られている。なかでもトランスバース集合組織と呼ばれ
る集合組織が形成すると、板の長さ方向に対して、板幅
方向の強度が高くなり、相反的に延性が低下する。
【0019】このトランスバース集合組織は、α型やα
+β型チタン合金の主相であるα相の結晶構造であるh
cpのc軸が、板幅方向に倒れた集合組織であり、β変
態点直上の温度から連続的にα+β域にかけて圧延を行
ったり、高温のα+β域で圧延を行った場合に発達する
集合組織である。
【0020】本発明者は、上記のTi−Fe−O−N系
高強度チタン合金を、ストリップ圧延のような一方向圧
延に供した場合に生成する集合組織について鋭意研究を
重ねた結果、この合金のように酸素、窒素を添加した合
金系は、Ti−6Al−4Vなど既存のAl含有チタン
合金に比べて、上記トランスバース集合組織が著しく発
達しやすく、そのためTi−Fe−O−N系チタン合金
のストリップ圧延材は、既存のAl含有チタン合金に比
べて、さらに強い材質異方性を有し、板幅方向への変形
に際しては、ほとんど塑性変形能を持たず、そのため実
用上支障を来すほどの低い延性となることを明らかにし
た。
【0021】本発明は、このような異方性を助長する集
合組織を、Ti−Fe−O−N系高強度合金の冶金的特
徴を活用した手法で軽減し、実用的な熱延製品ならびに
その製造方法を提供するものである。
【0022】さて、異方性が軽減され、実用的なTi−
Fe−O−N系高強度チタン合金熱延ストリップ、熱延
板または熱延条は、0.8〜2.3wt%のFe、0.
05wt%以下の窒素を含有し、酸素等量値Q=(O)+
2.77(N)+0.1(Fe)が0.35〜1.00の範
囲にあり、残部が実質的にTiであるTi−Fe−O−
N系高強度チタン合金に、体積比で5〜30%の等軸α
相と残部が微細な針状のα相とβ相の混合組織からなる
金属組織を付与することにより達成される。もちろん、
この組織は、残留歪み等の不安定要因のない安定な組織
であることは言うまでもない。
【0023】その理由は下記の通りである。まず、スト
リップ圧延後に圧延方向に延伸しているα相を、等軸化
することにより、α相は、長さ方向と板幅方向に等しい
形状となり、幾何学的観点から異方性が軽減される。さ
らに、このα相は、異方性の最大の元凶であるトランス
バース集合組織を有していることから、このトランスバ
ース集合組織の割合を減じ、かわりに、等方的な材質特
性を有する針状のα相とβ相の混合組織の割合を増大さ
せる。
【0024】この針状のα相とβ相の混合組織は、粗大
化すると延性が乏しくなるので微細であることが必要で
ある。そして微細な組織を得るためには、体積比で5%
以上の等軸組織を同時に配してやる必要がある。また、
等軸組織の体積比が30%を超えると、この組織の有す
るトランスバース集合組織の影響が強く残存し、板幅方
向の延性は実用的な程度にまで向上せず、依然として低
いままとなってしまう。このように、等軸α相の割合は
5〜30%の間とすることが重要である。
【0025】次に、Ti−Fe−O−N系高強度チタン
合金のFeの含有量を0.8〜2.3%に限定したの
は、下記の理由による。Feは凝固偏析しやすい元素で
あり、2.3%を超えるFeを含有する合金では、凝固
偏析が存在し、その部分では延性が低下するため、本発
明の効果が十分達成できないからであり、0.8%未満
のFeしか含まない合金では、後述するように、本発明
の重要なポイントである等軸α相と、針状α相とβ相の
混合組織の体積比を確実に制御することが極めて困難と
なり、実際的でなくなるからである。
【0026】そして、Q値=(O)+2.77(N)+0.
1(Fe)を、0.35〜1.00%としたのは次の理由
による。Q値は合金の強度を示す指標であり、合金元素
である、酸素、窒素、Feの強度に寄与する程度が、
1:2.77:0.1であることを示している。
【0027】そして、Q値が0.35〜1.00となる
ような合金は、700〜1200MPa程度の引張強さ
を有する高強度合金である。Q値が0.35に満たない
ような合金では、強度が低いため、熱延ストリップの材
質異方性は小さく、板幅方向の延性も実用に十分な値が
元来確保されており、これを改善する必要はない。ま
た、Q値が1.00を超えるような超高強度合金では、
元来延性が低く、本発明をもってしても、板幅方向の延
性は実用レベルには到達しない。
【0028】酸素等量値Qが0.68〜1.00である
Ti−Fe−O−N系高強度チタン合金は、Ti−Fe
−O−N系チタン合金の中でも特に高強度であり、材質
異方性が特に強く現れやすいため、本発明を適用した場
合の効果が特に著しい。
【0029】また、窒素の含有量を0.05%以下とし
たのは、これを超えて窒素を添加すると、Tiと窒素の
化合物が析出し、延性が低下するため、本発明をもって
しても、板幅方向の延性が実用レベルに達しないからで
ある。
【0030】さて、本発明(1)記載の熱延ストリップ、
熱延板または熱延条は、以下の方法によって製造するこ
とができる。
【0031】本発明の熱延ストリップ、熱延板または熱
延条を製造する方法は、まず、前記したような、0.8
〜2.3wt%のFe、0.05wt%以下の窒素を含
有し、酸素等量値Q=(O)+2.77(N)+0.1(F
e)が0.35〜1.00の範囲にあり、残部が実質的
にTiであるチタン合金のスラブを、当該合金のβ変態
点以下の温度域に加熱し、熱間圧延し、コイル状に巻き
取る。この工程では、β変態点以下のα+β二相温度域
にて高歪み速度で高圧下率の熱間圧延を行うことによ
り、α相およびβ相の両方に高い歪みが蓄積される。
【0032】次に、β変態点以下で当該合金のα相とβ
相の体積比が平衡状態にて3:7となる温度以上に3分
以上の時間加熱保持した後、空冷以上の冷却速度で冷却
する第1の熱処理を行う。この工程では、α相が、先に
付与された歪みを介して再結晶するとともに体積比30
%以下となり、相対的に増えたβ相によって分断され、
等軸化する。
【0033】一方、β相は70%以上の体積比となり、
さらに、先に付与された歪みを介して再結晶する。そし
て空冷以上の冷却速度で冷却すると、この再結晶したβ
相中には、強い異方性の元凶であるトランスバース集合
組織を持たない、微細な針状のα相が析出し、微細な針
状α相とβ相の混合組織となる。
【0034】ここで、この第1の熱処理の温度を、β変
態点以下で当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態に
て3:7となる温度以上としたのは、次の理由による。
β変態点とは、平衡状態にてα相の体積分率がゼロで、
100%β相となる温度であるが、実際に合金をこの温
度にまで加熱すると、平衡状態となるには途方もなく長
い時間を有するため、事実上は、5%程度のα相が残存
する。
【0035】したがって、β変態点以下で当該合金のα
相とβ相の体積比が平衡状態にて3:7となる温度以上
で熱処理を行うと、等軸α相の割合を、所望の5〜30
%にすることができる。
【0036】また第1の熱処理の加熱保持時間を3分以
上としたのは、これ未満の時間では、まだ変態が不十分
で、所望の体積比のα相とβ相の比率に達していないか
らである。加熱保持時間の上限については特に規定しな
いが、これは、板厚や板幅、コイル状で熱処理する場合
コイルの径などの寸法によって適宜調節し、所望の体積
比に十分達した時点で終了すれば良く、本発明はこれを
制限するものではない。
【0037】また、冷却を空冷以上の冷却速度で行うこ
ととしたのは、これより遅い冷却速度では、冷却中に所
望の微細針状α相が析出せず、トランスバース集合組織
を有する等軸α相が冷却中に再び成長し体積を増すこと
により、せっかく5〜30%に調節した等軸α相の割合
が、最適範囲から逸脱してしまうからである。
【0038】さて、上記の第1熱処理の後は、次に、5
00℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態
で7:3となる温度以下に20分以上保持する第2の熱
処理を行う。この第2の熱処理の目的は、第1の熱処理
で空冷以上の比較的速い冷却速度で冷却したため冷却中
に歪みが生じており、これを消失させ、延性を向上させ
ることである。
【0039】ここで、第2の熱処理の加熱温度を500
℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態で
7:3となる温度以下としたのは、500℃以下の温度
では、歪みの放出が不十分で安定な組織が得られず延性
が低下するからであり、α相とβ相の体積比が平衡状態
で7:3となる温度以下としたのは、これを超える温度
域では、トランスバース集合組織を有する等軸α相が成
長し、体積比を増し、再び異方性が強くなるからであ
る。
【0040】また、加熱時間を20分以上としたのは、
20分未満の時間では、歪みの放出が不十分で安定な組
織が得られず延性が低下するからである。なお、熱処理
時間の上限を特に規定しないが、これは、板厚や板幅な
どの寸法によって適宜調節し、歪みが十分開放された時
点で終了すれば良く、本発明はこれを制限するものでは
ない。
【0041】なお、上記の工程を適用するに際し、Ti
−Fe−O−N系チタン合金のFe含有量が、0.8%
以上であることが必要である。それは、0.8%未満の
Feしか含有しない合金では、第1の熱処理の温度であ
るβ変態点以下で、当該合金のα相とβ相の体積比が平
衡状態にて3:7となる温度以上の範囲がきわめて狭
く、温度測定誤差やバラツキ等を勘案すると、この温度
範囲での熱処理は工業的に困難な技術となるからであ
る。
【0042】すなわち、本発明の方法は、0.8%以上
のFeを含有し、第1の熱処理温度範囲が十分に広い、
Ti−Fe−O−N系チタン合金でのみ効力を発揮する
ものであり、また、このような観点から、本発明は、合
金の冶金的特徴をも十分に活かした発明と言うことがで
きる。
【0043】さて、上記の製造方法において、第1の熱
処理は連続焼鈍により行うことが好ましい。これは、低
コストというTi−Fe−O−N系高強度合金の特徴を
最大限に活用するため、より効率的な連続焼鈍設備を用
いて第1の熱処理を行うものである。
【0044】もちろん、連続焼鈍後、連続酸洗ラインの
ような脱スケールラインを連続的に通板することによ
り、さらに生産性が向上し低製造コストが達成できる。
ただし、連続焼鈍を用いる場合、加熱保持時間には特に
注意を払う必要がある。すなわち、本発明の効果を十分
に得るためには、短時間の連続焼鈍と言えども、3分以
上の時間加熱保持を確保する必要がある。
【0045】本発明の熱延ストリップは、上述した方法
によって製造するが、その熱延ストリップから切り出し
た熱延板または熱延条は、上記第2の熱処理終了後に切
断を行い製造することができるが、途中の工程、すなわ
ち、熱延終了後あるいは、第1の熱処理終了後に切断を
行い、切り板(熱延板)、条の形で、第1および第2の熱
処理、あるいは第2の熱処理のみを行うことも可能であ
る。
【0046】特に、熱延板の製造方法では、第2の熱処
理の前、すなわち熱延終了後あるいは、第1の熱処理終
了後に切り板とし、最終の第2の熱処理を、板形状矯正
処理と兼ねて実施することにより、効率的に、板幅方向
にも高い延性を有し、平坦度の高い、実用的な熱延板を
製造することができる。ここで、板形状矯正処理とは、
板の上に重石を載せたり、真空吸引力を利用した方法に
より、クリープ矯正する方法をさしている。
【0047】また、熱延条を製造する際にも、熱間圧延
終了後あるいは第1の熱処理終了後に、熱延ストリップ
コイルを板長さ方向にスリット切断し条とし、その後、
残りの工程を実施することにより、第2の熱処理終了ま
でに、切断時の加工歪みを除去することができ、板幅方
向にも高い延性を有し、残留歪みの少ない、実用的な熱
延条を効率的に製造することができる。
【0048】なお、本発明のチタン合金には、規定した
量のFe、酸素、窒素を含む以外に、耐食性向上の目的
のために、最高0.3%の白金族元素や、0.3%以下
のNi、Crなどの不純物元素などを含有していてもか
まわない。
【0049】
【実施例】以下に、実施例で本発明をさらに詳しく説明
する。 (試験1)真空アーク2回溶解により、表1に示した組
成のチタン合金を溶解し、鍛造によって1000mm幅
×200mm厚のスラブとし、熱間ストリップ圧延機に
より板厚4mmに圧延し、コイル状に巻き取った。この
ストリップコイルを、通常チタン合金で行われる750
℃×1時間(あとは空冷)の焼鈍を行い、長さ方向および
板幅方向に引張試験片を切り出し、引張試験を行った。
試験結果も同時に表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】試験番号1、2、3は酸素等量値(Q)が
0.68以上の合金で、Ti−Fe−O−N系高強度チ
タン合金の中でも高強度の合金である。いずれの場合
も、長さ方向には900MPa以上の高強度と15%以
上の引張伸びが得られており、優れた引張特性を示して
いるが、板幅方向の引張伸びが5%にも満たない著しく
低い値で、引張試験中に最高強度に達する前に早期破断
してしまった。
【0052】試験番号5および6は、Qが0.35〜
0.68未満の合金で、Ti−Fe−O−N系高強度チ
タン合金の中では、比較的強度の低い部類の合金であ
る。これらの合金も、長さ方向には、各々のQに相当す
る700〜900MPaの比較的高い引張強度と、20
%以上の高い引張伸びが得られているが、板幅方向の引
張伸びは、Qが0.68以上の合金程ではないが、やは
り低く、10%以下であった。
【0053】しかし、Qが0.35未満の試験番号4
は、長さ方向と板幅方向の材質特性差はあまり大きくな
く、板幅方向の引張伸びも20%以上と高い値であっ
た。しかし、長さ方向の引張強さは700MPa未満で
あり、高強度合金といえるような合金ではなかった。
【0054】(試験2)試験1と全く同様の組成、工程
で製造したストリップコイルを、焼鈍の代わりに、表2
に示す第1の熱処理、第2の熱処理を行い、長さ方向お
よび板幅方向の引張特性および等軸α相の体積率を調べ
た。その結果を表3に示す。ここで、熱処理は全て箱型
の加熱炉を使用して行った。試験番号7〜12の合金組
成は、全て先に説明した試験番号1〜6に対応するもの
である。
【0055】さて、表2および3において、本発明の実
施例である試験番号7、9、11、12は、いずれも、
等軸α相の比率が本発明で規定した5〜30%の範囲に
あり、残部は微細針状α相とβ相の混合組織であった。
そして、これらは、いずれも長さ方向の引張強さが70
0MPa以上、板幅方向の引張伸びが10%以上の優れ
た特性のTi−Fe−O−N系高強度チタン合金熱延ス
トリップであった。
【0056】特に、Qが0.68以上の高強度の試験番
号7、9は、試験番号1、3と比較すれば明らかなよう
に、単純焼鈍では異方性が非常に強く板幅方向の引張伸
びが3%にも満たなかったものが、これが10%以上に
まで向上しており、特に本発明の効果が著しい。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】これに対し、試験番号8は、Fe含有量
が、本発明で規定した0.8%を下回る値であったた
め、表2に示したように、第1の熱処理の温度であるβ
変態点以下で当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態
にて3:7となる温度以上の適正な温度範囲がわずか2
5℃しかなく、温度測定誤差やバラツキ等のため、第1
の熱処理温度が狙いからはずれてしまい、適正温度範囲
を逸脱し、等軸α相の割合が5%未満となってしまっ
た。そのため、針状α相の割合が増え、しかもこれらが
粗大化し、板幅方向の伸びが改善しないばかりか、長さ
方向の伸びまで低下してしまった。
【0060】また、試験番号10の合金は、表1の試験
番号4に示したように、元来、強度が低いため、熱延ス
トリップの材質異方性は小さく、板幅方向の延性も実用
に十分な値が単純焼鈍ですでに確保されており、これを
改善するための本発明の適用はほとんど無意味であっ
た。
【0061】(試験3)真空アーク2回溶解により、表
4に示した組成のチタン合金を溶解し、試験2と同様
に、鍛造スラブ製造、熱間ストリップ圧延による4mm
厚のストリップコイル製造を行い、第1および第2の熱
処理を実施、長さ方向および板幅方向の引張特性および
等軸α相の体積率を調べた。その結果を表5に示す。こ
こで、熱処理は全て箱型の加熱炉を使用して行った。ま
た、等軸α相以外の組織は、全て微細針状α相とβ相の
混合組織であった。
【0062】さて、表4および5において、本発明の実
施例である試験番号14および16は、等軸α相の比率
が本発明で規定した5〜30%の範囲にあり、残部は微
細針状α相とβ相の混合組織であった。そして、これら
は、いずれも長さ方向の引張強さが900MPa以上、
板幅方向の引張伸びが10%以上の優れた特性のTi−
Fe−O−N系高強度チタン合金熱延ストリップであっ
た。
【0063】これに対し、試験番号13、15、17
は、いずれも板幅方向の引張伸びが10%未満の低い値
であった。この理由は下記の通りである。試験番号13
は、窒素の含有量が0.05%を超えて添加されたた
め、Tiと窒素の化合物が析出し延性が低下し、本発明
をもってしても、板幅方向の延性が実用レベルに達しな
かった。
【0064】試験番号15は、2.3%を超えてFeが
添加されたため、凝固偏析が生じ、その部分で延性が低
下した。試験番号17は、Qが1.00を超えており、
このような超高強度合金では、元来延性が低く、本発明
をもってしても、板幅方向の延性は実用レベルには到達
しなかった。
【0065】
【表5】
【0066】
【表4】
【0067】(試験4)試験番号1および試験番号7と
同じ合金であるTi−1.5%Fe−0.50%O−
0.04%Nを真空アーク溶解し、分塊圧延により90
0mm幅×200mm厚のスラブを製造し、熱間ストリ
ップ圧延機により板厚4mmに圧延し、コイル状に巻き
取った。β変態点は955℃、平衡状態でα相とβ相の
体積比が3:7になる温度は875℃、同じく7:3に
なる温度は755℃である。
【0068】さらにこのストリップコイルに対し、第1
および第2の熱処理を行い、長さ方向および板幅方向の
引張特性および等軸α相の体積率を調べた。表6に、ス
ラブ加熱温度、第1および第2の熱処理条件、引張特
性、等軸α相の比率を示す。
【0069】なお、熱処理は、試験番号23および24
以外は箱型の加熱炉を使用して行い、試験番号23およ
び24は連続焼鈍設備を用いて実施した。また、等軸α
相以外の組織は、試験番号18および21以外は全て微
細針状α相とβ相の混合組織であった。試験番号18お
よび21では、等軸α相以外の組織は、粗大なα相とβ
相の混合組織であった。
【0070】さて、表6において、本発明例の試験番号
19、20、23、25、28、29は、等軸α相の比
率が本発明で規定した5〜30%の範囲にあり、残部は
微細針状α相とβ相の混合組織であった。そして、これ
らは、いずれも長さ方向の引張強さが900MPa以
上、板幅方向の引張伸びが10%以上の優れた特性のT
i−Fe−O−N系高強度チタン合金熱延ストリップで
あった。
【0071】特に、試験番号23は、第1の熱処理を連
続焼鈍設備を用いて実施したもので、板幅方向にも高い
延性を有する、実用的なTi−Fe−O−N系高強度チ
タン合金熱延ストリップが効率的に生産できた。
【0072】これに対し、試験番号18、21、22、
24、26、31は、等軸α相の割合が5〜30%を逸
脱しており、板幅方向の引張伸びが10%に満たない低
い値であった。この理由は下記の通りである。
【0073】試験番号18では、スラブの加熱温度がβ
変態点を超えたため、α相およびβ相の両方に高い歪み
が蓄積されず、次の第1の熱処理中に所望の体積比の等
軸α相が生成しなかった。
【0074】試験番号21では、この第1の熱処理の温
度がβ変態点を超えたため、ほとんど全てのα相がβ相
に変換され、等軸α相の割合がわずか1%になってしま
い、その後冷却中に粗大な針状α相が生成し、延性が低
下した。
【0075】試験番号22では、第1の熱処理の温度
が、α相とβ相の体積比が平衡状態にて3:7となる温
度である875℃未満であったため、等軸α相の割合が
30%を超え、トランスバース集合組織の影響が強く残
存し、板幅方向の延性が低くなった。
【0076】試験番号24は、連続焼鈍設備を用いて第
1の熱処理を行った例であるが、第1の熱処理の加熱保
持時間が3分に満たなかったため、まだ変態が不十分
で、所望の体積比のα相とβ相の比率に達せず、等軸α
相の比率が高くなり、トランスバース集合組織の影響で
板幅方向の延性が低くなった。
【0077】試験番号26は、第1の熱処理の冷却速度
が、空冷よりも遅い炉冷であったため、冷却中に所望の
微細針状α相が析出せず、等軸α相が冷却中に再び成長
し体積を増し、その割合が30%を超え、トランスバー
ス集合組織の影響で板幅方向の延性が低くなった。
【0078】試験番号31は、第2の熱処理の温度が、
α相とβ相の体積比が平衡状態で7:3となる温度であ
る755℃を超えたため、トランスバース集合組織を有
する等軸α相が成長し、体積比を30%以上にまで増
し、再び異方性が強くなり、板幅方向の延性が低下し
た。
【0079】また、試験番号27および30は、等軸α
相の割合が5〜30%の範囲内であったが、板幅方向の
伸びが10%未満の低い値であった。この理由は下記の
通りである。試験番号27では、第2の熱処理の温度が
500℃未満であったため、先の第1の熱処理の冷却中
に導入された歪みの放出が不十分で、安定な組織が得ら
れず延性が低下した。
【0080】また、試験番号30では、第2の熱処理の
加熱保持時間が20分未満であったため、先の第1の熱
処理の冷却中に導入された歪みの放出が不十分で,安定
な組織が得られず延性が低下した。
【0081】(試験5)試験4と同じく、真空アーク溶
解、分塊圧延により製造したTi−1.5%Fe−0.
5%O−0.04%Nの900mm幅×200mm厚の
スラブを、900℃に加熱し、熱間ストリップ圧延機に
より板厚4mmに圧延し、コイル状に巻き取った。その
後、表7に記した種々の工程にて、熱延板、熱延条を製
造し、長さ方向および板幅方向の引張特性および等軸α
相の体積率を調べた。その結果も併せて表7に示す。
【0082】表7において、試験番号32および34
は、熱延終了後のストリップコイルを、各々、切り板、
条に切断し、その後、第1および第2の熱処理に供し、
各々、熱延板,熱延条を製造した例である。ここで、試
験番号32では、第2の熱処理はクリープ矯正による平
坦化処理を兼ねて実施した。
【0083】試験番号33および35は、熱延終了後、
第1の熱処理を実施したストリップコイルを、各々、切
り板、条に切断し、その後、第2の熱処理に供し、各
々、熱延板、熱延条を製造した例である。ここで、試験
番号34では、第2の熱処理はクリープ矯正による平坦
化処理を兼ねて実施した。
【0084】表7の引張特性、等軸α相の体積比率の値
に見られるように、このような方法で製造した熱延板、
熱延条は、ストリップコイルのまま最終の第2の熱処理
まで実施した、表6の試験番号20あるいは23とほと
んど同等の結果を示しており、最終熱処理終了後、切り
板、条に切断しても、途中の工程で切断し、後の工程
を、切り板、条の形で実施しても、板幅方向にも高い延
性を有する実用的なTi−Fe−O−N系高強度チタン
合金熱延板、熱延条を製造することができる。
【0085】むしろ、試験番号32〜35の方法は、平
坦度の高い熱延板あるいは切断時の加工歪みの除去され
た熱延条を効率的に製造できるという利点が発揮されて
いる。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により、板
幅方向にも高い延性を有する、実用的な熱延ストリッ
プ、熱延板または熱延条などの熱延製品を提供でき、低
コストというTi−Fe−O−N系高強度合金の特徴を
最大限に発揮させることができる。
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【手続補正書】
【提出日】平成9年7月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正内容】
【0066】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 683 C22F 1/00 683 684 684Z 692 692A 693 693B 693A

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】0.8〜2.3wt%のFe、0.05w
    t%以下の窒素を含有し、酸素等量値Q=(O)+2.7
    7(N)+0.1(Fe)が0.35〜1.00の範囲にあ
    り、残部が実質的にTiであって、かつ体積比で5〜3
    0%の等軸α相と残部が微細な針状のα相とβ相の混合
    組織からなり、長さ方向の引張強さが700MPa以
    上、板幅方向の引張伸びが10%以上であることを特徴
    とするTi−Fe−O−N系チタン合金からなる熱延ス
    トリップ、熱延板または熱延条。
  2. 【請求項2】Ti−Fe−O−N系チタン合金の酸素等
    量値Qが0.68〜1.00であり、長さ方向の引張強
    さが900MPa以上であることを特徴とする請求項1
    記載のTi−Fe−O−N系チタン合金からなる熱延ス
    トリップ、熱延板または熱延条。
  3. 【請求項3】0.8〜2.3wt%のFe、0.05w
    t%以下の窒素を含有し、酸素等量値Q=(O)+2.7
    7(N)+0.1(Fe)が0.35〜1.00の範囲にあ
    り、残部が実質的にTiであるチタン合金のスラブを、
    当該合金のβ変態点以下の温度域に加熱し、熱間圧延
    し、コイル状に巻き取り、さらに、β変態点以下で当該
    合金のα相とβ相の体積比が平衡状態にて3:7となる
    温度以上に3分以上の時間加熱保持した後、空冷以上の
    冷却速度で冷却する第1の熱処理を行い、次いで500
    ℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平衡状態で
    7:3となる温度以下に20分以上保持する第2の熱処
    理を行うことを特徴とするTi−Fe−O−N系チタン
    合金からなる熱延ストリップ、熱延板または熱延条の製
    造方法。
  4. 【請求項4】請求項3記載の製造方法において、第1の
    熱処理を連続焼鈍により行うことを特徴とするTi−F
    e−O−N系チタン合金からなる熱延ストリップ、熱延
    板または熱延条の製造方法。
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