JPH10265225A - 電池構成用金属水酸化物製造装置 - Google Patents

電池構成用金属水酸化物製造装置

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JPH10265225A
JPH10265225A JP9090335A JP9033597A JPH10265225A JP H10265225 A JPH10265225 A JP H10265225A JP 9090335 A JP9090335 A JP 9090335A JP 9033597 A JP9033597 A JP 9033597A JP H10265225 A JPH10265225 A JP H10265225A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な構成で未成長粒子を除去し、コスト削
減、収率の向上及び材料の改質を防止できる電池構成用
金属水酸化物の製造装置を提供する。 【解決手段】 反応晶析装置において、主に金属酸化物
の結晶成長を促進する部分と分級機能を有する部分から
構成され、金属酸化物の結晶成長を促進する部分の一部
には清澄域が設けられ、清澄域から分級機能を有する部
分へ清澄液を供給するための循環路が設けられたもので
ある。これにより未成長粒子の混在を防くことができ十
分に成長した粒子のみを得ることができ、高密度充填が
可能となると共に収率の向上を図れ、また分級の工程を
必要としないため、製造工程の簡易化によるコスト削減
と共に、粒子表面の酸化、溶解などの改質を防止できる
製造装置を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電池構成用金属水
酸化物の製造装置、特にマグマ循環型に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、ポータブル機器は小型化傾向を強
めており、必然的にその電源である小型二次電池の高エ
ネルギー密度化が望まれている。
【0003】従来より、アルカリ蓄電池用正極の主活物
質はニッケルを主とする水酸化物が用いられている。該
水酸化物粉末の製造方法としては、ニッケル塩水溶液に
水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を作用させて沈
澱させ、次いで熟成して結晶成長させたのち機械的な方
法で粉砕する方法が採用されていたが、製法が煩雑であ
るとともに粉末形状が不定形であることから高い充填密
度が得られにくい問題があった。
【0004】しかし、特公平4−80513号公報には
ニッケル塩水溶液にアンモニアを作用させてニッケルの
アンモニウム錯体を形成させ、アルカリ水溶液中で水酸
化ニッケルを成長させる方法が提案されている。この方
法によれば連続製法が可能となり低廉化が図れるととも
に、粒子形状が球状に近いことにより高密度充填が可能
となった。
【0005】また、前記アルカリ蓄電池用正極には充電
効率を向上させるために導電剤としてコバルト水酸化物
を採用している。これもまた高密度充填のために球状に
近い粒子が望ましい。
【0006】また、リチウムイオン二次電池用正極の主
活物質はコバルト酸リチウムが採用されており、最近で
はニッケル酸リチウムを用いる提案がなされている。こ
れらの製造方法としては、コバルトまたはニッケルを主
とする水酸化物とリチウム酸化物を熱処理によって反応
させる方法が採用されている。また、これらの粒子も高
密度充填のために球状に近い形状が望ましく、出発材料
であるコバルトまたはニッケルを主とする水酸化物には
前記球状金属水酸化物粉末が適している。
【0007】前記球状のニッケルまたはコバルトを主と
する水酸化物粒子を成長させる反応槽は、特公昭63−
16555、特公昭63−16556などに記載の攪拌
槽型が知られている。図2に前記攪拌槽型の反応槽の構
造を示しており、反応槽本体15、攪拌装置16、攪拌
翼17、試薬供給ライン18、オーバーフローライン1
9から構成されている。この反応槽の特徴は構造が比較
的簡易であること、また、オーバーフロータイプである
ため連続性に優れていることなどが挙げられる。
【0008】この攪拌槽型の反応槽を用いて該水酸化物
を成長させる製造法においては、オーバーフローによっ
て得られたスラリー中に、十分に成長した粒子以外にも
未成長な嵩高い粒子や微粒子を同時に含むことでタップ
密度が低くなり充填性が低下することが課題として挙げ
られていた。これに対しては、得られたスラリーを洗浄
・乾燥させた後に、機械的にふるい分けする、あるい
は、流体分級を施すなどによって未成長粒子を除去する
方法が提案されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前記未成長粒子を除去
する方法においては、分級の工程が別に必要であるため
製造工程が複雑になることでコストの高騰が課題として
挙げられる。また、未成長な粒子を除去することから原
料に対する収率が著しく低下することも課題として挙げ
られる。これに対して、未成長な粒子を再利用する工程
を新たに設けたとしても工程が複雑になることでコスト
の高騰が課題として挙げられる。また、分級の工程は、
乾式と湿式の2種に分けられるが、乾式においては粒子
同士またはふるいとの衝突などによって粒子の粉砕を引
き起こし低密度化することが課題として挙げられる。ま
た、大気中にて不安定な金属水酸化物を製造する際にお
いては、表面酸化等の改質が進行する。特に、Co,M
nを含む金属水酸化物は、大気中で極めて不安定であ
り、速やかに酸化反応が進行するため厳密な雰囲気制御
が必要となる。また、湿式においては、用いる流体の種
類によっては金属水酸化物の酸化あるいは金属イオンの
溶出などによる表面改質が引き起こされる。特に、pH
が低い水溶液中ではほとんどの金属水酸化物の溶解反応
が進行する。前記の粒子表面の酸化、溶解などの改質
は、充放電電気量を低下させるばかりでなく電極特性を
著しく低下させる要因であり重要課題として挙げられ
る。
【0010】本発明は、前記工程の複雑化によるコスト
の高騰、収率の低下および材料の改質を防ぐとともに高
密度充填が可能な高密度で粒径の揃った金属水酸化物を
得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】これらの課題を解決する
ために本発明は、ニッケルまたはコバルトを主とする金
属塩水溶液とアルカリ水溶液を反応させてニッケルまた
はコバルトを主とする金属水酸化物粒末を連続的に成長
させ、かつ、連続的に分級させた粒子を取り出すことが
可能な反応晶析装置であって、主に該金属水酸化物の結
晶成長を促進する部分と分級機能を有す部分から構成さ
れており、該金属水酸化物の結晶成長を促進する部分の
一部には清澄域が設けられており、該清澄域から分級機
能を有す部分へ清澄液を供給するための循環路が設けら
れていることを特徴とした製造装置を用いることを提案
するものである。
【0012】これにより未成長粒子の混在を防ぐことが
でき十分に成長した粒子のみを得ることができる。この
ため高密度充填が可能となる。また、分級の工程を必要
としないことから製造工程の簡易化を図ることができ、
さらに、収率の低下を防ぐことができる。また、分級工
程の際の粒子表面の酸化、溶解などの改質を防ぐことが
できる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明
は、ニッケルまたはコバルトを主とする金属塩水溶液と
アルカリ水溶液を反応させてニッケルまたはコバルトを
主とする金属水酸化物粒末を連続的に成長させ、かつ、
分級された粒子を連続的に取り出すことが可能な反応晶
析装置であって、主に該金属水酸化物の結晶成長を促進
する部分と分級機能を有す部分から構成されており、該
金属水酸化物の結晶成長を促進する部分の一部には清澄
域が設けられており、該清澄域から分級機能を有す部分
へ清澄液を供給するための循環路が設けられていること
を特徴としたものであり、該清澄液を循環することで成
長した金属水酸化物を連続的に分級することが可能であ
るため、未成長粒子の混在を防ぐことができ十分に成長
した粒子のみを得ることができる。このため、高密度充
填が可能となる。また、分級の工程を必要としないこと
から工程の単純化を図ることができコストの低減が可能
となり、さらに、収率の低下を防ぐことができる。ま
た、分級工程の際の粒子表面の酸化、溶解などの改質を
防ぐことができるという作用を有する。
【0014】請求項2に記載の発明は、製造装置の基本
型式はマグマ循環型装置に属することを特徴としたもの
であり、流動特性によって分類すると金属水酸化物の結
晶成長を促進する部分において結晶は均一混合状態であ
り、溶液の循環はピストン流であることを特徴としたも
のであり、微細結晶も含めた粒度分布をもつ粒子が均一
に過飽和溶液と接触するため、粒度分布の幅を狭くする
ことができる。また、この作用によって、比較的小さな
粒子においても粒状に成長することが可能となる。ま
た、結晶スラリーを強制的に攪拌することができること
から、粒子同士の衝突頻度を高くすることができ理想的
な球状に成長させることができるという作用を有する。
装置基本型式により分類すると、本発明のマグマ型装置
以外に攪拌槽型装置、Krystal型装置(通常
型)、Krystal型装置(濃度分布のないタイプ)
が挙げられ、従来、電池構成用の金属水酸化物は攪拌槽
型装置に属するものが採用されていた。この装置は結晶
および溶液の状態が完全混合状態であるため、滞留時間
(結晶成長時間)が長い大粒子においては本発明のマグ
マ型と同様に球状に成長させることが可能であるが、粒
度分布が広くなることが課題である。また、結晶を強制
的に攪拌する作用をもたないことからマグマ型より高密
度成長は困難である。また、後者のKrystal型装
置は機械攪拌がないため、結晶は静止しているので球状
に成長させることはできない。
【0015】請求項3に記載の発明は、金属水酸化物の
結晶成長を促進する部分には攪拌翼と原料供給ラインが
設置されており、原料供給ラインの出口は攪拌翼下端よ
り下部に設置されていることを特徴とするものであっ
て、原料が攪拌翼より上部より系内に注がれた場合、反
応、核生成、結晶成長の過程を分離することができず、
高密度に結晶が成長しない。
【0016】請求項4に記載の発明は、分級機能を有す
部分の清澄液循環速度は垂直(下方から上方)方向に1
cm/min以上であることを特徴としたものであり、
1cm/minより低い流量の場合には分級性能が極め
て低くなり、粒子が充分に成長することができず、粒径
が小さく非常に嵩高くなる。
【0017】請求項5に記載の発明は、分級機能を有す
部分の最大水平断面積S1と金属水酸化物の結晶成長を
促進する部分の清澄域の最大水平断面積S2の比は S2/S1≧10 で表されることを特徴としたものであり、S2/S1<
10の場合には多量の未成長の微粒子が分級機能を有す
部分に供給され、分級性能を低下させ、嵩高い微粒子を
含む粒度分布の広い結晶が得られる。
【0018】請求項6に記載の発明は、分級機能を有す
部分の高さhと結晶成長を促進する部分の攪拌翼下端と
分級機能を有す部分の上端との距離lの比は l/h≦10 で表されることを特徴としたものであり、l/h>10
の場合には分級機能を有す部分が攪拌による乱流の影響
を受けるため、分級性能を低下させ、嵩高い微粒子を含
む粒度分布の広い結晶が得られる。
【0019】請求項7に記載の発明は、前記製造装置に
よって製造するニッケルを主とする金属水酸化物はNi
のほかに、Mn,Al,Co,Cr,Fe,V,Zr,
Mo,Bi,Ca,Mg,Y,V,Cu,Ge,Nb,
Mo,Ag,Zn,Cd,Sn,Sb,W,La族金属
から選ばれた一種以上の元素が存在していることを特徴
とするものであって、これらの元素は充放電効率を向上
させる効果があり、多様な使用条件で高利用率を得るた
めにはこれらの元素を固溶させることが望ましい。ま
た、従来型の製造装置を用いた場合、該異種金属を固溶
したニッケル水酸化物は純粋なニッケル水酸化物と比較
して高密度合成が極めて困難であることから、高密度な
粒子を得るためには請求項1記載の反応装置を用いるこ
とが効果的である。
【0020】請求項8に記載の発明は、金属水酸化物の
結晶成長を促進する部分は、少なくとも溶存ガス制御装
置と恒温装置とドラフトチューブを装備することを特徴
としており、溶存ガス制御装置により金属水酸化物の酸
化状態の制御が可能となり、高密度成長を促すことがで
きる。また、恒温装置を設けることによって合成温度を
制御することができ、高密度成長のための最適温度で一
定に保つことができる。また、ドラフトチューブを本体
内部に設置することで、核生成と結晶成長の過程を分離
することができ、より高密度に金属水酸化物を成長させ
ることができる。
【0021】請求項9に記載の発明は、前記溶存ガス制
御装置はガスバブリングによることを特徴としており、
これにより不活性ガスや酸素ガスを槽内に注入し雰囲気
を制御することができる。また、この方法によれば比較
的簡単に金属酸化物の酸化状態の制御が可能となる。
【0022】以下、本発明の実施の形態について、図1
を用いて説明する。図1は本発明を実施する分級装置を
装備した反応槽の一例を示しており、反応槽1は、本体
部2と分級装置部3からなり、本体部2はドラフトチュ
ーブ4、清澄域である微小結晶除去部5を設けており、
試薬供給ライン6が導入されている。なお、試薬供給ラ
イン6の供給口はドラフトチューブ4内の攪拌翼12の
下方に設置されている。
【0023】本体部2における結晶を含む溶液の循環は
ドラフトチューブ4内は上昇流で、その外側は下降流で
ある。
【0024】また、微小結晶除去部5の上部にはオーバ
ーフローライン7が備えられており、清澄液(上澄液)
を連続的に取り出せるようになっている。オーバーフロ
ーライン7へ流出した上澄液の一部は分級装置循環用給
液ライン8を通り、循環ポンプ9により分級装置部3の
下部へ導入され、分級装置部3内に上昇流をつくる。こ
の上昇流により連続的に分級された粒子のみ、分級装置
部3の下部に設置されたスラリー出口ライン10より取
り出される。
【0025】また、本体部2のドラフトチューブ4内に
は攪拌装置11に接続されている攪拌翼12が備えられ
ており、本体部2内の諸条件を一定に保っている。ま
た、反応槽1の外周部には恒温槽13が備えられてお
り、本体部2および分級装置部3内の温度を一定に保っ
ている。
【0026】また、本体部2にはガスバブリングライン
14を設け、製造装置内雰囲気を一定に保っている。
【0027】なお、以上の説明では分級装置を本体部下
部に設置した例で説明したが、本体内部に設置した場
合、本体外部に設置した場合においても同様に実施可能
である。
【0028】
【実施例】次に、本発明の具体例を説明する。
【0029】(実施例1)まず、本発明をニッケル水酸
化物の製造を例として具体的に示す。製造装置の構造は
図1に示す分級装置を装備した反応槽1と同様の構成で
あり、清澄域である微小結晶除去部5の最大水平断面積
S2が65cm2、分級装置部3の最大水平断面積S1
が3cm2、攪拌翼12と分級装置部3の距離lが10
cm、分級装置部の高さhが50cmである総容積が3
lのものを用いた。まず、原料として2mol/lの硫
酸ニッケル水溶液、4mol/lのアンモニア水溶液、
4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を準備した。ガ
スバブリングライン14よりArガスを注入し溶存酸素
を連続的に除去し槽内温度を50℃で一定に保った状態
で、これらの溶液を平均0.5ml/minの速度でそ
れぞれ独立に反応槽本体部2内に素早く均一になるよう
に攪拌しながら同時に供給した。また、このときの攪拌
速度は1000rpmとし、ドラフトチューブ4内に上
昇流、その外側に下降流となるように循環させた。ま
た、分級装置循環用給液ラインの流量は分級装置内の上
昇流の速度が約10cm/minとなるように調整し
た。合成開始から100時間経過後に、分級装置3下部
のスラリー出口ライン10より評価用サンプルを取り出
した。
【0030】これに対して、従来型の製造装置を用いた
ときのニッケル水酸化物の製造例を示す。反応槽の構造
は図2に示す分級機能をもたない反応槽と同様の構成で
あり、総容積が3lのものを用いた。また、結晶は均一
混合状態であり、結晶を含む溶液の循環は中心部におい
て下降流、その外側は上昇流となるようにした。また、
原料の供給ライン4の出口は攪拌翼3の上側に設置して
いる。まず、原料として2mol/lの硫酸ニッケル水
溶液、4mol/lのアンモニア水溶液、4mol/l
の水酸化ナトリウム水溶液を準備した。槽内温度を50
℃で一定に保った状態で、これらの溶液を平均0.5m
l/minの速度でそれぞれ独立に反応槽本体部2内に
素早く均一になるように攪拌しながら同時に供給した。
また、このときの攪拌速度は1000rpmとした。合
成開始から100h経過後に、オーバーフローライン5
より評価用サンプルを取り出した。
【0031】前記本発明と従来型の製造装置にて得られ
たニッケル水酸化物の評価結果を比較する。まず、粉末
X線回折測定の結果から、両者ともX線回折パターンに
不純物を示すピークが認められなかったことから、均一
組成の結晶であることが示唆された。また、定量分析の
結果から両者は同一組成であることを確認することがで
きた。しかし、図3、図4に示したようにSEM像に違
いが認められ、本発明が高密度で約10μmの粒径の極
めて揃った球状粒子であったのに対し、従来型の製造装
置では粒度分布が広く、粒径が10μm以下の小さい粒
子においては球状ではなく非常に嵩高い形状であった。
そのため、本発明のタップ密度が2.3g/ccであっ
たのに対し、従来型においては2.1g/ccと低い値
を示した。
【0032】そこで、従来型の製造装置で得られたニッ
ケル水酸化物を開き目10μmのふるいを用いて乾式の
分級を施し、約10μm以上の高密度な粒子のみを得
た。これによりタップ密度は2.2g/ccと同等レベ
ルにまで引き上げることができたが、得られた粒子の質
量から求めた収率は約60%と極めて低くなった。な
お、タップ密度が若干低いのは、ふるいまたは粒子同士
の激しい接触によって粒子形状が変化したことに起因し
ているものと推定した。また、以上の結果は湿式の分級
においても同様であった。
【0033】さらに、本発明との従来型の製造装置にて
得られたニッケル水酸化物の電極特性を比較する。以下
に評価方法を示す。
【0034】正極は、それぞれの製造装置にて得られた
ニッケル水酸化物100gに対して、金属コバルト8g
混合し、水を加えてペースト状にし、発泡メタルからな
る基板(厚さ1.3mm、多孔度約95%)に充填し、
乾燥後一定条件で加圧プレスを行い、0.6mmの厚さ
の発泡メタル式正極を得た。これらの正極を用い、負極
には正極より大過剰の容量を持つ水素吸蔵合金電極を用
い、電解液には濃度30wt%の水酸化カリウム水溶液
を用いて、開放系のモデルセルを組み立てた。これらの
モデルセルを0.1C相当の電流で15時間充電した
後、0.2C相当の電流で0.9Vまで放電して、放電
容量を測定し、その放電容量と活物質中のニッケル相当
量より求めた理論電気量からそれぞれの利用率を求め
た。
【0035】理論電気量と充填量から求めた電極充填容
量密度と20℃での利用率を表1にまとめて示す。
【0036】以上の結果から、本発明製造装置を用いて
製造したニッケル水酸化物は、従来型装置合成品と比較
して高密度であることから電極充填容量密度を高くする
ことができた。また、従来型装置合成品を分級しても電
極充填容量密度は向上するが利用率を低下させる傾向が
観察された。
【0037】なお、今回は結晶成長を促進する部分と分
級機能を有す部分からなる製造装置として分級装置3を
本体部2の下部に設置したタイプを例として説明した
が、分級機能を有す部分が本体部の一部に組み込まれて
いる装置、分級機能を有す部分が外部に設置されている
装置においても同様の効果が得られた。
【0038】(実施例2)続いて、本発明の製造装置の
構造上の特徴を具体的にて示す。
【0039】実施例1に用いた本発明の製造装置にて清
澄域を設けず、縣濁液を分級機能を有す部分へ供給する
構成とし、それ以外は実施例1と同様にしてニッケル水
酸化物を製造した。その結果、得られたニッケル水酸化
物は嵩高い微粒子が存在し広い粒度分布を有していた。
そのため、タップ密度は2.0g/ccと低下した。
【0040】次に、実施例1に用いた本発明の製造装置
にて原料供給ライン出口を攪拌翼の上方に設置した構成
とし、それ以外は実施例1と同様にしてニッケル水酸化
物を製造した。その結果、得られたニッケル水酸化物は
粒径の大きな粒子においても高密度結晶成長が起こら
ず、タップ密度は1.9g/ccと低下した。
【0041】次に、実施例1に用いた本発明の製造装置
にて分級装置循環用給液ラインの流量を変えて、それ以
外は実施例1と同様にして得られたニッケル水酸化物の
タップ密度を測定した。その結果を図5に示したが、タ
ップ密度2.1g/cc以上の高密度な粉末を得るため
には、液体上昇速度は1cm/min以上が必要である
ことを確認することができた。
【0042】次に、実施例1に用いた本発明の製造装置
にて分級装置部3の水平断面積S1と微小結晶除去部の
水平断面積S2の比S2/S1を変えて、それ以外は実
施例1と同様にして得られたニッケル水酸化物のタップ
密度を測定した。その結果を図6に示したが、タップ密
度2.1g/cc以上の高密度な粉末を得るためには、
S2/S1は10以上が適していることを確認すること
ができた。
【0043】次に、実施例1に用いた本発明の製造装置
にて分級装置部3の高さhと本体部2内の攪拌翼12と
分級装置部3との距離lの比l/hを変えて、それ以外
は実施例1と同様にして得られたニッケル水酸化物のタ
ップ密度を測定した。その結果を図7に示したが、タッ
プ密度2.1g/cc以上の高密度な粉末を得るために
は、l/hは10以下が適していることを確認すること
ができた。
【0044】次に、実施例1に用いた本発明の製造装置
にてガスバブリングによる溶存ガス制御および恒温装置
による温度制御を実施せずそれ以外は実施例1と同様に
してニッケル水酸化物を製造した。その結果、槽内の安
定性が低くタップ密度も1.5g/cc以下と極めて低
くなった。また、ドラフトチューブを設置しなかった場
合もタップ密度は1.5g/cc以下と低い値を示し
た。
【0045】(実施例3)続いて、本発明の製造装置を
用いて種々の金属水酸化物を製造したときの具体例を示
す。
【0046】原料として1.8mol/lの硫酸ニッケ
ル水溶液、0.2mol/lの硫酸マンガン水溶液、4
mol/lのアンモニア水溶液、4mol/lの水酸化
ナトリウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にし
てマンガンを固溶したニッケル水酸化物を製造した。そ
の結果、得られたマンガン固溶ニッケル酸化物は粉末X
線回折パターンに不純物を示すピークが認められなかっ
たことから、均一組成の結晶であることが示唆された。
また、タップ密度は従来型装置合成品が1.8g/cc
であったのに対し本発明装置合成品は2.1g/ccと
高い値を示した。なお、Mn以外にAl,Co,Cr,
Fe,V,Zr,Mo,Bi,Ca,Mg,Y,V,C
u,Ge,Nb,Mo,Ag,Zn,Cd,Sn,S
b,W,La族金属を固溶させたニッケル水酸化物にお
いても同様な結果が得られた。また、純粋なニッケル水
酸化物と比べ製造装置の違いによるタップ密度の差が大
きいことから、該異種金属固溶ニッケル水酸化物の製造
において本発明の効果がより顕著であることが確かめら
れた。
【0047】また、原料として2mol/lの硫酸コバ
ルト水溶液、4mol/lのアンモニア水溶液、4mo
l/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた以外は、実施
例1と同様にしてコバルト酸化物を製造した。その結
果、得られたコバルト酸化物は粉末X線回折パターンに
不純物を示すピークが認められなかったことから、均一
組成の結晶であることが示唆された。また、従来型装置
合成品では球状ではなく六角平板状に近い形状であった
のに対し、本発明装置合成品は比較的球状で高密度な粒
子であった。また、Ca,Ti,Y,Al,Cr,Fe
などを固溶させたコバルト酸化物においても同様な結果
が得られた。
【0048】また、実施例1と同様にして製造したニッ
ケルを主とする金属元素の水酸化物と炭酸リチウムをモ
ル比で1:1となるように混合し、酸素雰囲気下700
℃で12時間焼成し、機械的に粉砕することでニッケル
とリチウムを主とする酸化物(ニッケル酸リチウム)を
製造した。得られたニッケル酸リチウムは粉末X線回折
パターンに不純物を示すピークが認められなかったこと
から、均一組成の結晶であることが示唆された。また、
従来型装置合成品から同様にして製造したニッケル酸リ
チウムが嵩高い微小粒子を含んでいたのに対して、本発
明装置合成品から製造したニッケル酸リチウムは粒径の
揃った高密度な粒子であった。なお、本発明装置合成品
のコバルトを主とする金属水酸化物も炭酸リチウムとモ
ル比1:1となるように混合し、大気雰囲気下900℃
で12時間焼成し、機械的に粉砕することでコバルトと
リチウムを主とする酸化物(コバルト酸リチウム)を製
造することができた。得られたコバルト酸リチウムは粉
末X線回折パターンに不純物を示すピークが認められな
かったことから、均一組成の結晶であることが示唆され
た。また、従来型合成品から同様にして製造したコバル
ト酸リチウムが非常に嵩高い粒子であったのに対し、本
発明装置合成品から製造したコバルト酸リチウムは比較
的粒径の揃った高密度粒子であった。これらの材料はリ
チウムイオン二次電池の正極活物質として採用されてお
り、この分野においても本発明の効果が期待できる。
【0049】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、電池構成
用金属水酸化物を製造する装置において、分級機能を有
す部分を設け、清澄液を循環することによって結晶成長
した金属水酸化物粒子を連続的に分級させ取り出すこと
が可能であるため、未成長粒子の混在を防ぐことができ
十分に成長した粒子のみを得ることができる。このた
め、高密度充填が可能となる。また、分級の工程を必要
としないことから工程の単純化を図ることができコスト
の低減が可能となり、さらに、収率の低下を防ぐことが
できる。また、分級工程の際の粒子表面の酸化、溶解な
どの改質を防ぐことができるという有利な効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による電池構成用金属水
酸化物製造装置を示すモデル図
【図2】従来より採用されている電池構成用金属水酸化
物製造装置を示すモデル図
【図3】本発明の製造装置によって得られたニッケル水
酸化物の結晶構造を示す電子顕微鏡写真
【図4】従来型の製造装置によって得られたニッケル水
酸化物の結晶構造を示す電子顕微鏡写真
【図5】本発明の製造装置の分級装置部の上昇流の流速
に対するニッケル水酸化物のタップ密度変化を示す図
【図6】本発明の製造装置の分級装置部の最大水平断面
積S1と微小結晶除去部の最大水平断面積S2の比S2
/S1に対するニッケル水酸化物のタップ密度変化を示
す図
【図7】本発明の製造装置の分級装置部の高さhと本体
部内の攪拌機と分級装置部との距離lの比l/hに対す
るニッケル水酸化物のタップ密度変化を示す図
【符号の説明】
1 反応槽 2 本体部 3 分級装置部 4 ドラフトチューブ 5 微小結晶除去部 6 試薬供給ライン 7 オーバーフローライン 8 分級装置循環用給液ライン 9 循環ポンプ 10 スラリー出口ライン 11 攪拌装置 12 攪拌翼 13 恒温槽 14 ガスバブリングライン 15 反応槽本体 16 攪拌装置 17 攪拌翼 18 試薬供給ライン 19 オーバーフローライン
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C01G 51/04 C01G 51/04 53/00 53/00 A // H01M 4/32 H01M 4/32 4/58 4/58 (72)発明者 泉 秀勝 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 松本 功 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ニッケルまたはコバルトを主とする金属塩
    水溶液とアルカリ水溶液を反応させてニッケルまたはコ
    バルトを主とする金属水酸化物粒子を溶媒中において連
    続的に成長させ、かつ、分級された粒子を連続的に取り
    出す反応晶析装置であって、主に該金属水酸化物の結晶
    成長を促進する部分と分級機能を有す部分から構成され
    ており、該金属水酸化物の結晶成長を促進する部分には
    清澄域が設けられており、該清澄域から分級機能を有す
    部分へ清澄液を供給するための循環路が設けられている
    ことを特徴とする電池構成用金属水酸化物の構造装置。
  2. 【請求項2】金属水酸化物の結晶成長を促進する部分に
    は攪拌翼と原料の供給ラインが設置されており、該原料
    の供給ラインの出口は該攪拌翼下端より下部に設置され
    ていることを特徴とする請求項1記載の電池構成用金属
    水酸化物製造装置。
  3. 【請求項3】分級機能を有す部分の清澄域循環速度は下
    方から上方へ垂直方向に1cm/min以上であること
    を特徴とする請求項1記載の電池構成用金属水酸化物の
    製造装置。
  4. 【請求項4】分級機能を有す部分の最大水平断面積S1
    と金属水酸化物の結晶成長を促進する部分の清澄域の最
    大水平断面積S2の比は S2/S1≧10 で表されることを特徴とする請求項1記載の電池構成用
    金属酸化物の製造装置。
  5. 【請求項5】分級機能を有す部分の高さhと結晶成長を
    促進する部分の攪拌翼下端と分級機能を有す部分の上端
    との距離lの比は l/h≦10 で表されることを特徴とする請求項1記載の電池構成用
    金属水酸化物の製造装置。
  6. 【請求項6】ニッケルを主とする金属水酸化物はニッケ
    ルのほかに、Mn,Al,Co,Cr,Fe,V,Z
    r,Mo,Bi,Ca,Mg,Y,V,Cu,Ge,N
    b,Mo,Ag,Zn,Cd,Sn,Sb,W,La族
    金属から選ばれた一種以上の元素が存在していることを
    特徴とする請求項1記載の電池構成用金属水酸化物の製
    造装置。
  7. 【請求項7】金属水酸化物の結晶成長を促進する部分
    は、少なくとも溶存ガス制御装置と恒温装置とドラフト
    チューブを装備することを特徴とする請求項1記載の電
    池構成用金属水酸化物の製造装置。
  8. 【請求項8】溶存ガス制御装置はガスバブリングによる
    ことを特徴とする請求項8記載の電池構成用金属水酸化
    物の製造装置。
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