JPH10258721A - 車両の姿勢制御装置 - Google Patents

車両の姿勢制御装置

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JPH10258721A
JPH10258721A JP6786097A JP6786097A JPH10258721A JP H10258721 A JPH10258721 A JP H10258721A JP 6786097 A JP6786097 A JP 6786097A JP 6786097 A JP6786097 A JP 6786097A JP H10258721 A JPH10258721 A JP H10258721A
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JP
Japan
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friction coefficient
vehicle
estimated
road surface
control
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Withdrawn
Application number
JP6786097A
Other languages
English (en)
Inventor
Tomomi Izumi
知示 和泉
Haruki Okazaki
晴樹 岡崎
Toshiaki Tsuyama
俊明 津山
Tetsuya Tatehata
哲也 立畑
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Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
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  • Hydraulic Control Valves For Brake Systems (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】路面の摩擦係数の推定値が実際の値に対し小さ
すぎる値になることを防止する。併せて、路面の摩擦係
数の推定精度の向上を図る。 【解決手段】SCSコントローラに、車両の旋回姿勢を
制御するSCSコントロールユニットと、ABS制御を
行うABSコントロールユニットと、TCS制御を行う
TCSコントロールユニットとを備える。各輪の車輪速
と、横加速度と、ヨーレイトと、ステアリング舵角とに
基づいて第1推定摩擦係数μ1 を演算し、(SC12)
この第1推定摩擦係数を、車両の加速度又は減速度に基
づいて演算された第2推定摩擦係数μ2 以上になるよう
に補正する(SC14)。ABS制御領域で最大限速度
に基づいて演算された第3推定摩擦係数μ3 を補正目標
値として採用する(SC6)一方、TCS制御領域で最
大加速度に基づいて演算された第4推定摩擦係数μ4 を
補正目標値として採用する(SC10)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の旋回姿勢を
目標走行方向に向かって収束するように制御する車両の
姿勢制御装置に関し、詳しくは、制御量の演算の際に必
要な路面の摩擦係数の推定精度の向上に係る。
【0002】
【従来の技術】従来より、車両の姿勢制御装置として、
走行方向に対する車両の旋回姿勢を表す車両状態量を検
出し、この検出された車両状態量に応じて車両の前後左
右の各車輪に独立して制動力を付与することにより、車
体にヨーモーメントを作用させて車両の旋回姿勢を制御
するようにしたものが知られている(例えば、特開平7
−232629号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような車両の姿勢
制御装置においては、制動力の付与による各車輪のブレ
ーキロックを防止するために、車両が走行している路面
の摩擦係数に対応づけて上記制動力量の上限値を変更設
定することが考えられ、このために、上記路面の摩擦係
数を推定演算する必要がある。ところで、上記路面の摩
擦係数の演算方法としては、一般に、車両の旋回姿勢を
表す所定の車両状態量として、例えば、各車輪の回転速
度と、車両のヨーレイトと、その車両の左右方向の横加
速度と、ステアリングの舵角とを検出し、これらの検出
値に基づいて上記各車輪の垂直加重や車輪負荷率を推定
し、さらに、時間経過とともに変化する上記各検出値の
変化量と上記各推定値の変化量とを順次積算することに
より、上記路面の摩擦係数を推定演算するようにしてい
る。
【0004】ところが、上記従来の路面の摩擦係数の推
定演算では、例えば、路面の摩擦係数が低い悪路を走行
してきた車両が路面の摩擦係数が極めて高い良路に進入
した時、瞬間的に、上記推定演算値が上記悪路における
推定演算値の影響を多分に受けた値になり、上記良路に
おける路面の実際の摩擦係数に対して低すぎる値になっ
てしまう結果、この瞬間に各車輪に付与し得る制動力量
の上限値が実際の路面状況に対し低すぎる値になってし
まうことになる。このため、姿勢制御の制御量を十分に
大きくすることができず車両の旋回姿勢の制御を十分に
行ない得ないという不都合が生じる。また、上記路面の
摩擦係数の推定演算値は、上述のように、各車輪の回転
速度、車両のヨーレイト、その車両の横加速度、ステア
リングの舵角といった多種の検出値に加え、これらの検
出値に基づいて推定された各車輪の垂直加重や車輪負荷
率をも含んだ推定演算による積算値であるため、上記検
出値を出力するセンサの僅かな出力誤差等が累積されて
演算結果の誤差が大きくなってしまい、この結果、路面
の摩擦係数の推定精度が低下してしまうという不都合が
ある。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであり、その目的とするところは、路面の摩擦係
数の推定演算値が路面の実際の摩擦係数に対し低すぎる
値になってしまうことを防止することにあり、併せて、
上記路面の摩擦係数の推定精度の向上を図ることにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、車両の前後左右の各車輪に
対し個別に制動力を付与可能に構成された制動手段と、
上記車両の走行方向に対する旋回姿勢を表す所定の車両
状態量を検出する車両状態検出手段と、この車両状態検
出手段により検出された車両状態量に応じて上記制動手
段の作動制御を行うことにより上記車両の旋回姿勢を制
御する姿勢制御手段とを備えた車両の姿勢制御装置を前
提とする。このものにおいて、上記車両の速度の変化率
を検出する速度変化率検出手段を備え、上記姿勢制御手
段として、上記車両状態検出手段により検出された車両
状態量に基づいて路面の摩擦係数を推定演算する第1摩
擦係数演算部と、上記速度変化率検出手段により検出さ
れた速度変化率に基づいて上記路面の摩擦係数を演算す
る第2摩擦係数演算部と、上記第1摩擦係数演算部によ
り演算された第1推定摩擦係数を上記第2摩擦係数演算
部により演算された第2推定摩擦係数の側の値に変更補
正する第1摩擦係数補正部とを備え、上記制動手段の作
動制御を上記第1摩擦係数補正部による補正後の摩擦係
数値を加味して行う構成とするものである。
【0007】上記の構成の場合、車両状態検出手段によ
り検出された車両状態量に基づいて、第1摩擦係数演算
部により第1推定摩擦係数が演算されるとともに、速度
変化率検出手段により検出された速度の変化率に基づい
て第2摩擦係数演算部により第2推定摩擦係数が演算さ
れ、この第2推定摩擦係数の側の値に上記第1推定摩擦
係数が補正される。ここで、上記第2推定摩擦係数は、
車両の速度の変化率に基づいて単純な演算により求めら
れるものであるから、誤差の累積によって精度が低下が
解消される。また、上記車両には少なくともその速度の
変化率すなわち車両の加速度又は減速度に対応する駆動
力又は制動力が作用しているから、路面の実際の摩擦係
数は、少なくとも、車両に上記の駆動力又は制動力を作
用させ得る上記第2推定摩擦係数以上の値であると考え
られる。従って、上記第1推定摩擦係数を、例えば、こ
の第1推定摩擦係数が第2推定摩擦係数よりも小値側に
ある場合に増大補正する等、上記第2推定摩擦係数の側
の値に変更補正することにより、上記第1推定摩擦係数
が路面の実際の摩擦係数に対して低すぎる値になってし
まうことを防止することが可能になり、これにより、姿
勢制御の制御量を十分に大きくして車両の旋回姿勢の制
御を十分に行い得るようにすることが可能になる。
【0008】請求項2記載の発明は、車両の前後左右の
各車輪に対する制動力の付与をこの各車輪のブレーキロ
ックを防止するよう制御するアンチスキッドブレーキ装
置と、上記各車輪の内の駆動輪に対する駆動力の付与を
その駆動輪の空転を防止するよう制御するトラクション
制御装置とを備えた車両に配設され、上記各車輪に対し
個別に制動力を付与可能に構成された制動手段と、上記
車両の走行方向に対する旋回姿勢を表す所定の車両状態
量を検出する車両状態検出手段と、この車両状態検出手
段により検出された車両状態量に応じて上記制動手段の
作動制御を行うことにより上記車両の旋回姿勢を制御す
る姿勢制御手段とを備えた車両の姿勢制御装置を前提と
する。このものにおいて、上記車両の速度の変化率を検
出する速度変化率検出手段を備え、上記アンチスキッド
ブレーキ装置を、上記速度変化率検出手段により検出さ
れた上記車両の速度の減少率に基づいて路面の摩擦係数
を推定演算する第3摩擦係数演算部を備える構成とし、
かつ、上記トラクション制御装置を、上記速度変化率検
出手段により検出された上記車両の速度の増加率に基づ
いて路面の摩擦係数を推定演算する第4摩擦係数演算部
を備える構成とする。そして、上記姿勢制御手段とし
て、上記車両状態検出手段により検出された車両状態量
に基づいて路面の摩擦係数を推定演算する第1摩擦係数
演算部と、上記車両が減速状態にある場合に上記第1摩
擦係数演算部により演算された第1推定摩擦係数を上記
第3摩擦係数演算部により演算された第3推定摩擦係数
の側の値に変更補正する一方、上記車両が加速状態にあ
る場合に上記第1摩擦係数演算部により演算された第1
推定摩擦係数を上記第4摩擦係数演算部により演算され
た第4推定摩擦係数の側の値に変更補正する第2摩擦係
数補正部とを備え、上記制動手段の作動制御を上記第2
摩擦係数補正部による補正後の摩擦係数値を加味して行
う構成とするものである。
【0009】上記の構成の場合、車両状態検出手段によ
り検出された車両状態量に基づいて第1摩擦係数演算部
により第1推定摩擦係数が演算される。そして、上記車
両が減速状態にある場合には、速度変化率検出手段によ
り検出された速度の減少率すなわち減速度に基づいて第
3摩擦係数演算部により第3推定摩擦係数が演算され、
上記第1推定摩擦係数が上記第3推定摩擦係数の側の値
に変更補正される。一方、上記車両が加速状態にある場
合には、速度変化率検出手段により検出された速度の増
大率すなわち加速度に基づいて第4摩擦係数演算手段に
より第4推定摩擦係数が演算され、上記第1推定摩擦係
数が上記第4推定摩擦係数の側の値に変更補正される。
ここで、上記第3推定摩擦係数は車両の減速度に基づい
て単純な演算により求められるものであり、また、上記
第4推定摩擦係数は車両の加速度に基づいて単純な演算
により求められるものであるから、これらの第3推定摩
擦係数及び第4推定摩擦係数は共に誤差の累積によって
精度が低下するおそれがない。しかも、車両には少なく
ともその加速度又は減速度に対応する駆動力又は制動力
が作用しているから、路面の実際の摩擦係数は、少なく
とも、車両に上記の駆動力又は制動力を作用させ得る上
記第4推定摩擦係数又は第3推定摩擦係数以上の値であ
ると考えられる。従って、上記第1推定摩擦係数を、例
えば、この第1推定摩擦係数が上記第3推定摩擦係数又
は第4推定摩擦係数よりも小値側にある場合に増大補正
する等、上記第3推定摩擦係数又は第4推定摩擦係数の
側の値に変更補正することにより、上記第1推定摩擦係
数が路面の実際の摩擦係数に対して低すぎる値になって
しまうことを防止することが可能になり、これにより、
姿勢制御の制御量を十分に大きくして車両の旋回姿勢の
制御を十分に行い得るようにすることが可能になる。
【0010】請求項3記載の発明は、請求項1又は請求
項2記載の発明における車両状態検出手段として、各車
輪の回転速度を検出する車輪速検出手段と、車両のヨー
レイトを検出するヨーレイト検出手段と、上記車両の左
右方向に作用する横加速度を検出する横加速度検出手段
と、ステアリングの操舵量を検出する操舵量検出手段と
を備える構成とし、かつ、摩擦係数演算部として、上記
車輪速検出手段により検出された各車輪の回転速度と、
上記ヨーレイト検出手段により検出されたヨーレイト
と、上記横加速度検出手段により検出された横加速度
と、上記操舵量検出手段により検出されたステアリング
の操舵量とに基づき、路面の摩擦係数を推定演算する構
成とするものである。
【0011】上記の構成の場合、請求項1又は請求項2
記載の発明における車両状態検出手段と摩擦係数演算部
の構成が特定される。
【0012】請求項4記載の発明は、請求項2記載の発
明における第2摩擦係数補正部として、アンチスキッド
ブレーキ装置による制動力の付与制御が実行されている
とき第1推定摩擦係数を第3推定摩擦係数の側の値に変
更補正する一方、トラクション制御装置による駆動力の
付与制御が実行されているとき第1推定摩擦係数を第4
推定摩擦係数の側の値に変更補正する構成とするもので
ある。
【0013】上記の構成の場合、請求項2記載の発明に
おける、第2摩擦係数補正部による第1推定摩擦係数の
補正のタイミングが具体的に特定され、これにより、上
記請求項2記載の発明による作用に加えて、第1推定摩
擦係数を極めて精度良く補正することが可能になる。す
なわち、アンチスキッドブレーキ装置が制動力の付与制
御を実行しているときには、各車輪に対しロック状態に
ならない最大の制動力が付与されてタイヤが最大摩擦力
を発揮する状態にされているため、このときの車両の減
速度は路面の摩擦係数により一義的に定まる最大減速度
になっており、このため、この最大減速度に基づいて演
算される第3推定摩擦係数は上記路面の実際の摩擦係数
に略等しい値になると考えられる。従って、上記アンチ
スキッドブレーキ装置が作動しているときには、上記第
1推定摩擦係数を第3推定摩擦係数の側の値に変更補正
することにより、この第1推定摩擦係数の推定精度を極
めて高いものにすることが可能になる。また、トラクシ
ョン制御装置が駆動力の付与制御を実行しているときに
は、駆動輪が最大の駆動力を発揮する状態にされて車両
の加速度が路面の摩擦係数により一義的に定まる最大加
速度になっているため、上記のアンチスキッドブレーキ
装置が作動しているときと同様、第1推定摩擦係数を第
4推定摩擦係数の側の値に変更補正することにより、こ
の第1推定摩擦係数の推定精度を極めて高いものにする
ことが可能になる。
【0014】請求項5記載の発明は、請求項4記載の発
明における第2摩擦係数補正部を、第1推定摩擦係数と
第3推定摩擦係数又は第4推定摩擦係数とに基づいて補
正目標値を設定するとともに、この補正目標値まで上記
第1推定摩擦係数を緩やかに変更補正する構成とするも
のである。
【0015】上記の構成の場合、請求項4記載の発明に
よる作用に加えて、第1推定摩擦係数が、この第1推定
摩擦係数と第3推定摩擦係数又は第4推定摩擦係数とに
基づいて演算された補正目標値まで緩やかに変更補正さ
れるようになっているため、その第1推定摩擦係数の値
と補正目標値との偏差量が過大であるときでも、上記変
更補正による上記第1推定摩擦係数の値の行き過ぎた急
変が防止される。このため、上記第1推定摩擦係数の値
の行き過ぎた急変に伴う姿勢制御の制御量の行き過ぎた
急変を防止することが可能になり、これにより、上記姿
勢制御に起因するショックの発生を抑制することが可能
になる。
【0016】なお、上記第1推定摩擦係数を補正目標値
まで緩やかに変更補正するためには、例えば、上記第1
推定摩擦係数をまずこの第1推定摩擦係数と補正目標値
との平均値に変更補正し、その後、上記補正目標値に変
更補正するようにすればよく、この外に、所定のディレ
イタイムを予め設定しておき、上記第1推定摩擦係数
を、そのディレイタイムの後に補正目標値になるよう漸
増又は漸減させるようにしてもよい。
【0017】請求項6記載の発明は、請求項4記載の発
明における第2摩擦係数補正部を、第1推定摩擦係数を
第3推定摩擦係数又は第4推定摩擦係数と略等値に変更
補正する構成とするものである。
【0018】上記の構成の場合、請求項4記載の発明に
おける、第2摩擦係数補正部による補正の内容が特定さ
れる。すなわち、アンチスキッドブレーキ装置が制動力
の付与制御を実行しているときには、第1推定摩擦係数
が第3推定摩擦係数と略等しい値に変更補正される一
方、トラクション制御装置が駆動力の付与制御を実行し
ているときには、第1推定摩擦係数が第4推定摩擦係数
と略等しい値に変更補正される。ここで、上記アンチス
キッドブレーキ装置が制動力の付与制御を実行している
ときには、上記第3推定摩擦係数が路面の実際の摩擦係
数に略等しい値になっており、また、トラクション制御
装置が駆動力の付与制御を実行しているときには、上記
第4推定摩擦係数が路面の実際の摩擦係数に略等しい値
になっている。従って、上記第1推定摩擦係数を上記第
3推定摩擦係数又は第4推定摩擦係数と略等しい値に変
更補正することにより、上記第1推定摩擦係数の推定精
度が確実に向上する。
【0019】請求項7記載の発明は、請求項2記載の発
明において、車両の走行している路面が、左右の車輪の
内の一方が転動する片側の摩擦係数が高くかつ他方の車
輪が転動する反対側の摩擦係数が低いスプリット路面で
あることを、上記左右の車輪の回転速度の偏差量に基づ
いて検出するスプリット路面検出手段と、上記スプリッ
ト路面検出手段により車両の走行している路面がスプリ
ット路面であることが検出されたとき、姿勢制御手段に
よる制御を抑制する制限制御手段とを備える構成とする
ものである。
【0020】一般に、車両の姿勢はスプリット路面にお
いては必然的に崩れてしまうものであり、この姿勢の崩
れを姿勢制御装置によって修正しようとすると、アンチ
スキッドブレーキ装置やトラクション制御装置の作動に
悪影響を及ぼすことがある。例えば、左側の摩擦係数が
右側に較べて低いスプリット路面において、左側の車輪
のブレーキロックを防止するようアンチスキッドブレー
キ装置が作動している状態では、車両の左側に作用する
制動力が制限されるため相対的に右側に作用する制動力
が大きくなり、上記車両には右回りのヨーモーメントが
発生してその姿勢が右側寄りにずれることになる。そし
て、その車両の姿勢を修正するために上記左側の車輪に
制動力を付与すると、この左側の車輪がロック状態にな
ってしまい上記アンチスキッドブレーキ装置の作動が妨
げられることになる。これに対し、上記の構成の場合、
請求項2記載の発明による作用に加えて、スプリット路
面検出手段によりスプリット路面であることが検出され
たとき、姿勢制御手段による制御を抑制するようにする
ことによって、上記アンチスキッドブレーキ装置やトラ
クション制御装置の作動に悪影響が及ぶことを抑制する
ことが可能になる。
【0021】なお、上記姿勢制御手段による制御を抑制
する方法としては、例えば、上記姿勢制御手段による制
御の開始を遅延させるようにすればよく、また、上記姿
勢制御手段による姿勢制御の制御量を減少させるように
してもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基いて説明する。
【0023】−全体構成− 図1は、本発明の実施形態に係る車両の姿勢制御装置
(Stability Control System:以下、単にSCSとい
う)を適用した車両1を示し、2,2,…は前後4輪の
車輪21FR,21FL,21RR,21RLに個別に配設され
た4組の液圧式のブレーキ、3はこれらの各ブレーキ2
に圧液を供給するための加圧ユニット、4はこの加圧ユ
ニット3から供給される圧液を上記ブレーキ2,2,…
に分配供給するハイドロリック・ユニット(以下、単に
HUという)であり、これらのブレーキ2,2,…、加
圧ユニット3及びHU4により制動手段が構成されてい
る。また、5は上記加圧ユニット3及びHU4を介して
上記各ブレーキ2の作動制御を行うSCSコントロー
ラ、6,6,…は上記各車輪21の車輪速を検出する車
輪速検出手段としての車輪速センサ、7は上記車両1に
作用している左右方向の加速度y″を検出する横加速度
検出手段としての横Gセンサ、8は上記車両1に作用し
ているヨーレイトψ′を検出するヨーレイト検出手段と
してのヨーレイトセンサ、9はステアリングの操舵角θ
H を検出する操舵量検出手段としての舵角センサであ
る。なお、10はマスタシリンダ、11はエンジン、1
2はオートマチックトランスミッション(AT)、13
は上記エンジン11の回転数や吸入空気量等に応じて燃
料の噴射量を調整するEGIコントローラである。
【0024】上記ブレーキ2,2,…は、図2に示すよ
うに、右側前輪21FRのブレーキ2と左側後輪21RLの
ブレーキ2とが第1液圧管路22aによりマスタシリン
ダ10に接続される一方、左側前輪21FLのブレーキ2
と右側後輪21RRのブレーキ2とが上記第1液圧管路2
2aとは異なる第2液圧管路22bにより上記マスタシ
リンダ10に接続されており、これにより、いわゆるX
配管タイプの互いに独立した2つのブレーキ系統が構成
されている。そして、ドライバによるブレーキペダル1
4の踏み操作に応じて上記車輪21FR,21FL,…に制
動力が付与されるようになっている。
【0025】上記加圧ユニット3は、上記第1及び第2
液圧管路22a,22bにそれぞれ接続された液圧ポン
プ31a,31bと、これらの液圧ポンプ31a,31
bと上記マスタシリンダ10とを断接可能なよう上記第
1及び第2液圧管路22a,22bにそれぞれ配設され
たカットバルブ32a,32bと、これらのカットバル
ブ32a,32bと上記マスタシリンダ10との間の液
圧を検出する液圧センサ33とを備えている。そして、
SCSコントローラ5からの指令に応じて上記カットバ
ルブ32a,32bが閉状態にされ、これにより、ドラ
イバによるブレーキ操作とは無関係に、上記液圧ポンプ
31a,31bから吐出される圧液がHU4を介してブ
レーキ2,2,…に供給されるように構成されている。
また、上記HU4は、図2に示すように、第1液圧管路
22a又は第2液圧管路22bを介して供給される圧液
により各ブレーキ2を加圧する加圧バルブ41,41…
と、上記各ブレーキ2をリザーバタンク42に接続して
減圧する減圧バルブ43,43…とを備えている。そし
て、SCSコントローラ5からの指令に応じて上記各加
圧バルブ41及び各減圧バルブ43の開度が増減変更調
整されることにより、上記各ブレーキ2に供給される液
圧が増減されて制動力が増減変更されるように構成され
ている。
【0026】上記SCSコントローラ5は、図3に示す
ように、SCSの制御を行う姿勢制御手段としてのSC
Sコントロールユニット5aと、従来周知のABS(An
ti-Skid Brake System)制御を行うABSコントロール
ユニット5bと、従来周知のTCS(Traction Control
System )制御を行うTCSコントロールユニット5c
とを備えており、上記ABSコントロールユニット5b
と、ブレーキ2,2,…と、加圧ユニット3と、HU4
と、車輪速センサ6,6,…とによりアンチスキッドブ
レーキ装置が構成され、また、上記TCSコントロール
ユニット5cと、ブレーキ2,2,…と、加圧ユニット
3と、HU4と、車輪速センサ6,6,…とによりトラ
クション制御装置が構成されている。
【0027】上記SCSコントロールユニット5aは、
車輪速センサ6,6,…、横Gセンサ7、ヨーレイトセ
ンサ8及び舵角センサ9からの入力信号に基づいて車両
1の旋回姿勢を判定し、この判定結果に応じて加圧ユニ
ット3及びHU4の作動制御を行うように構成され、こ
の加圧ユニット3及びHU4の作動によって前後左右の
車輪21FR,21FL,…のそれぞれに対し独立して制動
力を付与することにより、車両1の旋回姿勢を目標走行
方向に向かって収束させるSCS制御を行うようになっ
ている。具体的には、上記SCSコントロールユニット
5aは、車両状態量演算部51と、路面摩擦係数演算部
52と、目標状態量演算部53と、制御介入判定部54
と、基本制御部55と、制限制御手段としての制限制御
部56とを備えており、上記車両状態量演算部51と車
輪速センサ6,6,…、横Gセンサ7、ヨーレイトセン
サ8、舵角センサ9とにより車両状態量検出手段が構成
されている。なお、上記SCSコントローラ5は、液圧
センサ33からの入力信号に基づいてドライバのブレー
キ操作を検出し、このブレーキ操作に対応して上記加圧
ユニット3及びHU4の作動制御を行うようになってい
る。
【0028】上記車両状態量演算部51は、上記車輪速
センサ6,6,…、横Gセンサ7、ヨーレイトセンサ8
及び舵角センサ9からの入力信号に基づき、車両の走行
方向に対する旋回姿勢を表す車両状態量を演算するよう
に構成されている。また、上記路面摩擦係数演算部52
は、図4に示すように、上記車両状態量演算部51で演
算された車両状態量に基づいて路面の摩擦係数(第1推
定摩擦係数μ1 )を推定演算する第1摩擦係数演算部5
2aと、上記車両1の加速度又は減速度を検出する速度
変化率検出手段としての加減速度演算部52bと、この
加減速度演算部52bにより検出された加速度又は減速
度に基づいて路面の摩擦係数の下限値(第2推定摩擦係
数μ2 )を推定演算する第2摩擦係数演算部52cと、
この第2推定摩擦係数μ2 、後述の第3推定摩擦係数μ
3 又は後述の第4推定摩擦係数μ4 に基づいて上記第1
推定摩擦係数μ1 を補正して路面摩擦係数μscs の演算
を行う第1摩擦係数補正部及び第2摩擦係数補正部とし
ての摩擦係数補正部52dとを備えている。なお、上記
路面摩擦係数演算部52における演算の詳細については
後述する。
【0029】さらに、上記目標状態量演算部53は、上
記車輪速センサ6,6,…、横Gセンサ7、ヨーレイト
センサ8及び舵角センサ9からの入力信号に基づき、目
標走行方向に対応する車両1の目標状態量をを演算する
ように構成されており、また、上記制御介入判定部54
は、上記車両状態量と目標状態量との間の状態量偏差に
基づいてSCS制御の制御介入判定を行うように構成さ
れている。そして、上記基本制御部55は、車両1に対
し上記状態量偏差に対応する所要のヨーモーメントを作
用させるために車輪21FR,21FL,…のそれぞれに付
与する制動力量を演算するようになっており、上記車両
1に対し比較的小さなヨーモーメントを作用させること
により車両1の旋回姿勢をドライバの運転操作(主にス
テアリングの操舵)に追従するように滑らかに変更させ
るヨーレイト制御を行うヨーレイト制御部55aと、上
記車両1に対し比較的大きなヨーモーメントを作用させ
ることにより、その車両1の旋回姿勢を迅速に修正する
横滑り角制御を行う横滑り角制御部55bとを備えてい
る。
【0030】加えて、上記制限制御部56は、後述のス
プリット信号の入力を受けたとき、SCS制御の制御介
入が遅延されるように、上記制御介入判定における後述
の介入判定しきい値K1 ,K2 の値を増大補正するよう
に構成されている。
【0031】上記ABSコントロールユニット5bは、
周知のように、上記車輪速センサ6,6,…からの入力
信号に基づいて車輪21FR,21FL,…ののロック傾向
を判定し、この判定結果に基づいて上記車輪21FR,2
1FL,…のブレーキロックを防止するように上記HU4
の作動を制御するABS制御を行うものである。すなわ
ち、上記ABSコントロールユニット5bは、上記車輪
21FR,21FL,…のロック傾向が強まったとき、それ
らの車輪21FR,21FL,…がロック状態になる寸前に
減圧バルブ43,43,…を開作動させてブレーキ2,
2,…に供給される液圧を低下させることにより、上記
車輪21FR,21FL,…に付与される制動力を制限する
ようにしており、このABS制御により、上記車輪21
FR,21FL,…がそれぞれ最大の制動力を発生する状態
にされるようになっている。
【0032】また、上記ABSコントロールユニット5
bは、車体速を微分演算して車両1の減速度を検出する
速度変化率検出手段としての減速度演算部57a(図4
参照)と、この減速度演算部57aにより演算された減
速度に基づいて路面の摩擦係数(第3推定摩擦係数μ3
)を推定演算する第3摩擦係数演算部57bとを備え
ている。さらに、上記ABSコントロールユニット5b
は、車両1の走行している路面が、左側の摩擦係数と右
側の摩擦係数との間の偏差の大きなスプリット路面であ
ることを、左右の前輪21FR,21FLの相互の車輪速v1
,v2 の偏差量に基づいて検出して制限制御部56に
対しスプリット信号を出力する、スプリット路面検出手
段としてのスプリット検出部58を備えている。
【0033】上記TCSコントロールユニット5cは、
周知のように、上記車輪速センサ6,6,…からの入力
信号に基づいて車輪21FR,21FL,…の空転傾向を判
定し、この判定結果に基づいて駆動輪である左右の前輪
21FR,21FLの空転を防止するよう上記HU4の作動
を制御するTCS制御を行うものである。すなわち、上
記TCSコントロールユニット5cは、上記左右の前輪
21FR,21FLの空転傾向が強まったとき、それら左右
の前輪21FR,21FLが空転状態になる寸前に加圧バル
ブ43,43を開作動させてブレーキ2,2,…に供給
される液圧を増加させることにより、上記前輪21FR,
21FLのそれぞれに所要の制動力を付与して駆動力を制
限するようにしており、これにより、上記TCS制御が
行われているときには上記前輪21FR,21FLがそれぞ
れ最大の駆動力を発生する状態にされるようになってい
る。また、上記TCSコントロールユニット5cは、車
体速を微分演算して車両1の加速度を検出する速度変化
率検出手段としての加速度演算部59aと、この加速度
演算部59aにより演算された加速度に基づいて路面の
摩擦係数(第4推定摩擦係数μ4 )を推定演算する第4
摩擦係数演算部59bとを備えている。
【0034】−制御系の概要− 図5はSCSコントローラ5による基本制御の概要を示
し、この基本制御においては、まず、ドライバが車両に
乗り込んでイグニッションキーをオン状態にすると、ス
テップSA1でSCSコントローラ5やEGIコントロ
ーラ13の初期設定を行って前回の処理で記憶している
演算値等をクリアする。ステップSA2では、車輪速セ
ンサ6,6,…等の原点補正を行った後に、これらの各
センサから上記SCSコントローラ5に対する信号入力
を受け、これらの入力信号に基づき、ステップSA3に
おいて上記車両の車体速、車体減速度、各輪位置での車
体速等の共通車両状態量を演算する。
【0035】続いて、ステップSA4でSCSコントロ
ールユニット5aによるSCS制御の演算を行う。すな
わち、ステップSA41で、車両状態量として、SCS
用車体速Vscs 、車体横滑り角β、各輪の車輪スリップ
率及びスリップ角、各輪の垂直加重FN1、FN2,…、角
輪の車輪負荷率P1 、P2 ,…を演算するとともに、路
面摩擦係数μscs を演算し、ステップSA42では、目
標状態量として、目標ヨーレイトψ′TR、目標横滑り角
βTRを演算する。そして、ステップSA43で上記演算
結果に基づきヨーレイト制御又は横滑り角制御への介入
判定を行い、制御介入が必要と判定した場合にはステッ
プSA44に進む。このステップSA44では、制動力
を付与する車輪21FR,21FL,…を選択するととも
に、選択した各車輪21に付与する制動力を演算する。
そして、この演算された制動力に基づいてステップSA
45で加圧ユニット3及びHU4への制御出力量、すな
わち、各ブレーキ2の加圧バルブ41,41,…及び減
圧バルブ43,43,…のそれぞれのバルブ開度等を演
算する。
【0036】さらに、ステップSA5でABSコントロ
ールユニット5bによるABS制御の演算を行い、ステ
ップSA6でTCSコントロールユニット5cによりT
CS制御の演算を行い、その後、ステップSA7で、こ
のABS制御、TCS制御及び上記SCS制御の各演算
結果を所定の方法により調停して上記加圧ユニット3及
びHU4への制御出力量を決定する。そして、ステップ
SA8で上記加圧ユニット3及びHU4を作動させて各
加圧バルブ41及び減圧バルブ43の開度を制御するこ
とにより、車輪21FR,21FL…のそれぞれのブレーキ
2,2,…に供給する液圧を制御してそれらの車輪21
FR,21FL…に所要の制動力を付与する。最後に、ステ
ップSA9で車輪速センサ6,6,…や加圧ユニット3
等が正常に作動しているか否かのフェイルセイフ判定を
行い、その後、ステップSA1にリターンする。
【0037】なお、上記フローチャートにおいてステッ
プSA41が車両状態量演算部51及び路面摩擦係数演
算部52に、SA42が目標状態量演算部53に、ま
た、ステップSA43が制御介入判定部54に、それぞ
れ対応しており、ステップSA44が基本制御部55に
対応している。
【0038】−SCS制御− 以下に、SCS制御の詳細について図6及び図7に基づ
いて説明する。なお、ステップSA5におけるABS制
御の演算及びステップSA6におけるTCS制御の演算
については周知であるので、その詳細な説明は省略す
る。
【0039】図6は、図5のステップSA41におけ
る、車体速Vscs 、車体横滑り角β、各輪の垂直荷重F
N1,FN2,…、各輪のスリップ率及びスリップ角、各輪
の車輪負荷率P1 ,P2 ,…及び路面摩擦係数μscs の
演算、及び、同図のステップSA42における、目標横
滑り角βTR及び目標ヨーレイトψ′TRの演算を示す。す
なわち、ステップSB2では、車輪21FRの車輪速v1
,車輪21FLの車輪速v2 ,車輪21RRの車輪速v3
,車輪21RLの車輪速v4 と、車両1の横加速度y″
と、車両1のヨーレイトψ′と、ステアリングの操舵角
θH との入力を受ける。ステップSB4では、上記車輪
速v1 ,v2 ,…に基づいて車体速Vscs を演算し、ス
テップSB6では、上記車輪速v1 ,v2 ,…と上記横
加速度y″とに基づいて、車輪21FRの垂直加重FN1
と、車輪21FLの垂直加重FN2と、車輪21RRの垂直加
重FN3と、車輪21RLの垂直加重FN4とを演算する。ま
た、ステップSB8では、上記車体速Vscs と、上記車
輪速v1 ,v2 ,…と、上記横加速度y″と、上記ヨー
レイトψ′と、上記操舵角θH とに基づき車体横滑り角
βを演算する。
【0040】続いて、ステップSB10では、上記車輪
速v1 ,v2 ,…と、上記車体速Vscs と、車体横滑り
角βと、ヨーレイトψ′と、操舵角θH とに基づいて車
輪21FR,21FL,…のそれぞれについてスリップ率及
びスリップ角を演算し、ステップSB12では、上記垂
直加重FN1,FN2,…と、スリップ率及びスリップ角と
に基づき、右側前輪21FRにおけるタイヤ23の発揮し
得る全グリップ力に対する現在のグリップ力の割合であ
る車輪負荷率P1 と、左側前輪21FLの車輪負荷率P2
と、右側後輪21RRの車輪負荷率P3 と、左側後輪21
RLの車輪負荷率P4 とを演算する。そして、ステップS
B14において、上記ステップSB12で演算された車
輪負荷率P1 ,P2 ,…と、上記垂直加重FN1,FN2,
…と、上記横加速度y″と、上記車体速Vscs を微分演
算して得られる前後方向の加減速度x″とに基づいて第
1推定摩擦係数μ1 を演算し、この第1推定摩擦係数μ
1を第2推定摩擦係数μ2 、第3推定摩擦係数μ3 又は
第4推定摩擦係数μ4 に応じて補正することにより、路
面摩擦係数μscs を演算する。この路面摩擦係数μscs
の演算の詳細な内容については後述する。
【0041】そして、ステップSB16では、その路面
摩擦係数μscs と、上記車体速Vscs と、上記操舵角θ
H とに基づいて目標ヨーレイトψ′TRと目標横滑り角β
TRとを演算し、図7のステップSB18に進む。
【0042】なお、図6に示す上記のフローチャートに
おいて、ステップSB2からステップSB12までが、
車両状態量演算部51に対応し、また、ステップSB1
4が路面摩擦係数演算部52に、ステップSB16が目
標状態量演算部53に、それぞれ対応している。
【0043】図7は、図4のステップSA43における
SCS制御介入判定以降のSCS制御を示し、ステップ
SB18で、ヨーレイトψ′と目標ヨーレイトψ′TRと
の間のヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)、及び、
車体横滑り角βと目標横滑り角βTRとの間の横滑り角偏
差量(|βTR−β|)を、それぞれ、SCSのヨーレイ
ト制御の介入判定のために予め設定された介入判定しき
い値K1 及びK2 と比較する。そして、上記ヨーレイト
偏差量が介入判定しきい値K1 以上であるか、又は、上
記横滑り角偏差量が介入判定しきい値K2 以上である場
合に、目標走行方向に対する車両1の旋回姿勢のずれが
大きくなりつつあり制御介入が必要であると判定してス
テップSB20に進む一方、上記ヨーレイト偏差量が介
入判定しきい値K1 よりも小さい値であり、かつ、上記
横滑り角偏差量が介入判定しきい値K2 よりも小さい値
である場合には、制御介入の必要なしと判定してリター
ンする。ここで、上記ステップSB18の介入判定しき
い値K1 及びK2 の値は、制限制御部56がスプリット
検出部58からのスプリット信号の入力を受けたとき、
その制限制御部56により増大補正されるようになって
おり、これにより、車両1がスプリット路面を走行して
いるときにはSCS制御の制御介入が遅延されるように
なっている。
【0044】そして、ステップSB20では、横滑り角
偏差量(|βTR−β|)を、SCSの横滑り角制御への
切換えの判定のために予め設定された切換判定しきい値
K3(K3 >K2 )と比較する。そして、上記横滑り角
偏差量(|βTR−β|)が切換判定しきい値K3 よりも
小さい場合には、ステップSB22に進んで目標ヨーレ
イトψ′TRをSCS制御の制御目標値として設定し、そ
の後ステップSB24に進み、ヨーレイト制御における
制御量としてのSCS制御量ψ′amt をヨーレイト偏差
量(|ψ′TR−ψ′|)に基づいて演算する。すなわ
ち、車両1の旋回姿勢のずれが比較的小さく安定した状
態にあると判定される間(SB20)は、車両1のヨー
レイトψ′がドライバの運転操作に対応する目標ヨーレ
イトψ′TRに収束するよう、車両1に比較的小さなヨー
モーメントを作用させるようにし(SB22,24)、
これにより、車両1の旋回姿勢をドライバの運転操作に
追従するように滑らかに変更させるヨーレイト制御を行
うようにしている。
【0045】一方、上記ステップSB20で、横滑り角
偏差量(|βTR−β|)が切換判定しきい値K3 以上で
ある場合には、ステップSB26に進んで目標横滑り角
βTRをSCS制御の制御目標値として設定し、その後ス
テップSB28に進んで、SCS制御に実際に用いられ
るSCS制御量βamt を横滑り角偏差量(|βTR−β
|)に基づいて演算する。すなわち、車両1の旋回姿勢
が大きく崩れていると判定された(SB20)ときに
は、車体横滑り角βが目標横滑り角βTRに収束するよ
う、車体に比較的大きなヨーモーメントを作用させるよ
うにし(SB26,28)、これにより、車両1の旋回
姿勢を迅速に修正する横滑り角制御を行うようにしてい
る。
【0046】そして、上記ステップSB24又はステッ
プSB28に続くステップSB30において、加圧ユニ
ット3やHU4に故障が発生しているか否かの判定を行
い、故障と判定された場合にはステップSB32に進
み、SCS制御を中止してリターンする。一方、上記ス
テップSB30で故障と判定されなければ、ステップS
B34に進んで、上記SCS制御、ABS制御及びTC
S制御の各演算結果を所定の方式により調停する。この
調停の概要について説明すると、SCS制御を行おうと
する際にABS制御が行われている場合には、そのAB
S制御量をSCS制御量ψ′amt 又はβamt に基づいて
補正することにより、ABS制御を優先しつつSCS制
御を行うようにしており、また、SCS制御を行おうと
する際にTCS制御が行われている場合には、SCS制
御を優先するようにしている。
【0047】続いて、ステップSB36において、SC
S制御量ψ′amt 又はβamt に基づき、SCS制御のた
めに制動力を付与する車輪21FR,21FL,…を選択す
るとともに、これらの車輪21FR,21FL,…にそれぞ
れ付与する制動力量を演算する。この車輪の選択及び制
動力の演算について概説すれば、ヨーレイト制御におい
て車両1のヨーレイトψ′を右回りに加増する場合、及
び、横滑り角制御において車両の旋回姿勢を右側寄りに
修正しようとする場合には、右側前輪21FRもしくは右
側前後輪21FR,21RRに対し、上記SCS制御量ψ′
amt 又はβamtに対応する制動力を付与することにより
車両に右回りのヨーモーメントを作用させるようにする
ものである。反対に、車両1のヨーレイトψ′を左回り
に加増する場合、及び、車両の旋回姿勢を左側寄りに修
正しようとする場合には、左側前輪21FLもしくは左側
前後輪21FL,21RLに対し、上記SCS制御量ψ′am
t又はβamt に対応する制動力を付与することにより車
両に左回りのヨーモーメントを作用させるようにするも
のである。
【0048】また、上記車輪21FR,21FL,…にそれ
ぞれ付与する制動力量の演算においては、この制動力の
付与による車輪21FR,21FL,…のブレーキロックを
防止するために、摩擦係数演算部52で演算された路面
摩擦係数μscs に基づいて上記制動力量に上限値を設定
するようにしている。
【0049】そして、上記ステップSB36に続くステ
ップSB38において、上記ステップSB36で選択さ
れた車輪21FR,21FL,…に対しそれぞれ所要の制動
力を付与するための加圧ユニット3及びHU4への制御
出力量、すなわち、ブレーキ2,2,…の加圧バルブ4
1,41,…及び減圧バルブ43,43,…のそれぞれ
のバルブ開度等を演算し、ステップSB40でこれらの
演算された制御出力を上記加圧ユニット3及びHU4に
対し出力してSCS制御を実行し、その後リターンす
る。
【0050】なお、図7に示す上記のフローチャートに
おいて、ステップSB18及びステップSB20が制御
介入判定部54に対応しており、ステップSB22及び
SB24がヨーレイト制御部55aに、ステップSB2
6及びSB28が横滑り角制御部55bに、それぞれ対
応している。
【0051】−路面摩擦係数の演算− 以下に、図6のステップSB14における路面摩擦係数
μscs の演算について図8〜図11に基づいて詳細に説
明する。
【0052】図8に示すフローチャートにおいて、ステ
ップSC2ではSCS制御が行われているか否かを判定
してSCS制御中でなければリターンする一方、SCS
制御中であればステップSC4に進む。このステップS
C4では、ABS制御が行われるABS制御領域である
か否かを判定し、ABS制御領域であれば、ステップS
C6に進んでABSコントロールユニット5bの第3摩
擦係数演算部57bにより演算された第3推定摩擦係数
μ3 を補正目標値として採用する。一方上記ステップS
C4においてABS制御領域でなければステップSC8
に進み、このステップSC8においてTCS制御が行わ
れるTCS制御領域であるか否かを判定する。そして、
TCS制御領域であれば、ステップSC10に進んでT
CSコントロールユニット5cの第4摩擦係数演算部5
9bにより演算された第4推定摩擦係数μ4 を補正目標
値として採用する一方、上記ステップSC8においてT
CS制御領域でなければステップSC12に進む。
【0053】ここで、上記ABS制御領域における第3
推定摩擦係数μ3 の演算、及び、上記TCS制御領域に
おける第4推定摩擦係数μ4 の演算について説明する
と、上記ABS制御領域においては、車輪21FR,21
FL,…がそれぞれ最大摩擦力を発揮する状態にされてい
るため、車両1に作用している減速度は、図9の減速特
性M1 に表すように、路面の摩擦係数に対応して定まる
最大減速度になっている。この減速特性M1 は、上記A
BS制御領域において減速開始からの経過時間と車速の
変化との相関を示すものであり、同図におけるグラフA
1 が路面の摩擦係数が極めて高い良路に対応する一方、
同図におけるグラフB1 が路面の摩擦係数が極めて低い
悪路に対応しており、上記グラフA1 及びB1 の傾きが
それぞれ良路及び悪路における車両の最大減速度を表し
ている。そして、車両1に作用している最大減速度は上
記減速特性M1 に示すように、路面の摩擦係数に対応し
て一義的に定まるものと考えられるため、上記ABS制
御領域においては車両1に作用している最大減速度から
直ちに第3推定摩擦係数μ3 を求めるようにしている。
同様に、上記TCS制御領域においては、駆動輪である
前輪21FR,21FLがそれぞれ最大摩擦力を発揮する状
態にされており、車両1に作用している加速度が図10
の加速特性M2 に示す最大加速度になると考えられるた
め、この最大加速度から直ちに第4推定摩擦係数μ4 を
求めるようにしている。なお、上記加速特性M2 は、上
記減速特性M1 と同様、上記TCS制御領域において加
速開始からの経過時間と車速の変化とを表したものであ
り、同図におけるグラフA2 が路面の摩擦係数が極めて
高い良路に対応する一方、同図におけるグラフB2 が路
面の摩擦係数が極めて低い悪路に対応している。
【0054】すなわち、上記ABS制御領域における上
記第3推定摩擦係数μ3 の演算、及び、上記TCS制御
領域における上記第4推定摩擦係数μ4 の演算において
は、従来と同様に後述の式(1)により行う第1推定摩
擦係数μ1 の演算のように、車輪21FR,21FL,…の
それぞれの垂直加重FN1,FN2,…及び車輪負荷率P1
,P2 ,…の推定値を含む複雑な演算を行わず、単純
に、車両1に作用する最大減速度又は最大加速度に基づ
いて上記第3推定摩擦係数μ3 又は上記第4推定摩擦係
数μ4 を演算するようにしているため、上記垂直加重F
N1,FN2,…及び車輪負荷率P1 ,P2 ,…の推定演算
における誤差の累積によって推定精度が低下するおそれ
がなく、従って、上記第3推定摩擦係数μ3 又は上記第
4推定摩擦係数μ4 は上記第1推定摩擦係数μ1 に比べ
て誤差の少ない正確な値になる。
【0055】上記ステップSC10に続くステップSC
12においては、従来までと同様に、車両状態量に基づ
いて以下の(1)式の演算により第1推定摩擦係数μ1
を演算する。すなわち、
【数1】
【0056】続いて、ステップSC14において、上記
ステップSC12で演算された第1推定摩擦係数μ1 を
第2推定摩擦係数μ2 以上になるように補正する。すな
わち、図11に示すステップSD2において車両1が加
速又は減速中であるか否かを判定し、加速中でも減速中
でもない場合にはリターンする一方、上記ステップSD
2において加速又は減速中であると判定された場合には
ステップSD4に進む。そして、このステップSD4
で、上記車両1の加速度又は減速度に基づき第2推定摩
擦係数μ2 を演算する。ここで、車両1にはABS制御
及びTCS制御が行われていないから、車輪21FR2
1,21FL,…は最大摩擦力を発揮しておらず、従っ
て、上記第2推定摩擦係数μ2 は路面の実際の摩擦係数
を直ちに与えるものではない。しかし、上記車両1に
は、少なくともその加速度又は減速度に対応する駆動力
又は制動力が確実に作用しているから、上記路面の実際
の摩擦係数は、少なくとも上記車両1に上記の駆動力又
は制動力を作用させ得る上記第2推定摩擦係数μ2 以上
の値であると考えられる。そこで、上記ステップSD4
に続くステップSD6において、第1推定摩擦係数μ1
と第2推定摩擦係数μ2 とを比較し、この第1推定摩擦
係数μ1 が第2推定摩擦係数μ2 以上であれば、ステッ
プSD8に進んでその第1推定摩擦係数μ1 を採用する
一方、上記第1推定摩擦係数μ1 が第2推定摩擦係数μ
2 よりも小さければ、ステップSD10に進んでその第
2推定摩擦係数μ2 を採用する。つまり、上記第1推定
摩擦係数μ1 を第2推定摩擦係数μ2 以上の値になるよ
うに補正するようにしており、これにより、その第1推
定摩擦係数μ1 が路面の実際の摩擦係数に対して小さす
ぎる値になることを防止するようにしている。
【0057】なお、上記第1推定摩擦係数μ1 の補正に
おいて、ステップSD4が第2摩擦係数演算部52c
に、ステップSD6,ステップSD8及びステップSD
10が摩擦係数補正部52dに、それぞれ対応してい
る。
【0058】そして、図8のステップSC14に続くス
テップSC16では、路面摩擦係数μscs の前回値μsc
s0と、今回採用した採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 と
が一致しているか否かを判定し、一致していればステッ
プSC18に進んで上記前回値μscs0を路面摩擦係数の
今回値μscs とした後、後述のステップSC28に進
む。一方、上記ステップSC16において上記前回値μ
scs0と上記採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 とが一致し
ていなければステップSC20に進み、このステップS
C20において上記前回値μscs0と上記採用値μ1 ,μ
2 ,μ3 又はμ4とを比較する。そして、これらの採用
値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 が前回値μscs0よりも小さ
ければ後述のステップSC26に進む一方、その採用値
μ1 ,μ2,μ3 又はμ4 が前回値μscs0よりも大きけ
ればステップSC22に進む。このステップSC22で
は、SCS制御において横滑り角制御が行われているか
否かを判定し、横滑り角制御が行われておらずヨーレイ
ト制御が行われていれば後述のステップSC26に進む
一方、横滑り角制御が行われていればステップSC24
に進んで、上記採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 を今回
値μscs とし、この今回値μscs をステップSC28で
出力した後リターンする。
【0059】一方、上記ステップSC20において、採
用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 が推定摩擦係数の前回値
μscs0よりも小さい場合、又は、上記ステップSC22
においてヨーレイト制御が行われていると判定された場
合には、ステップSC26において、上記採用値μ1 ,
μ2 ,μ3 又はμ4 と上記前回値μscs0との相乗平均値
を今回値μscs として演算し、この今回値μscs を上記
ステップSC28において出力した後リターンする。つ
まり、上記採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 が路面摩擦
係数の前回値μscs0よりも大きく(SC20)、かつ、
横滑り角制御が行われている場合(SC22)には、上
記採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 をそのまま路面摩擦
係数の今回値μscs としてすぐに変更する一方、それ以
外の場合には、上記採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 と
路面摩擦係数の前回値μscs0との平均値を今回値μscs
とするようにすることにより、路面摩擦係数の演算結果
を前回値μscs0から今回値μscs まで緩やかに変更する
ようにしている。
【0060】なお、図8に示す上記のフローチャートに
おいて、ステップSC6が第3摩擦係数演算部57b
に、ステップSC10が第4摩擦係数演算部59bに、
それぞれ対応しており、また、ステップSC12が第1
摩擦係数演算部52aに、ステップSC14が第2摩擦
係数演算部52cに、それぞれ対応しており、さらに、
上記ステップSC14からステップSC24までが摩擦
係数補正部52dに対応している。
【0061】次に、上記実施形態に係る車両の姿勢制御
装置の作用・効果を説明する。
【0062】上記車両の姿勢御装置においては、ABS
制御領域(SC4)では車両1の最大限速度に基づいて
演算された第3推定摩擦係数μ3 を路面摩擦係数μscs
として採用する(SC6)一方、TCS制御領域(SC
8)では車両1の最大加速度に基づいて演算された第4
推定摩擦係数μ4 を路面摩擦係数μscs として採用する
(SC10)ようにしており、このため、上記ABS制
御領域又はTCS制御領域において路面の摩擦係数を極
めて精度良く推定することができ、これにより、SCS
制御の制御量の適正化を図ることができる。また、上記
ABS制御領域又はTCS制御領域の何れでもない場合
には、従来と同様に車両状態量に基づいて演算された
(SC12)第1推定摩擦係数μ1 を、車両1の加速度
又は減速度に基づいて演算された第2推定摩擦係数μ2
よりも大きくなるように補正する(SC14)ことによ
り、上記第1推定摩擦係数μ1 が路面の実際の摩擦係数
に対して低すぎる値になってしまうことを防止すること
ができ、これにより、SCS制御を十分に行い得るよう
にすることができる。
【0063】さらに、路面摩擦係数の採用値μ1 ,μ2
,μ3 又はμ4 が前回値μscs0よりも小さい場合(S
C20)、又は、ヨーレイト制御が行われている場合
(SC22)に、上記今回値μscs として、まず、上記
前回値μscs0と上記採用値μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 と
の相乗平均値を出力する(AC24,SC26)ように
することにより、上記前回値μscs0を緩やかに今回値μ
scs へ変更することができ、これにより、上記路面摩擦
係数μscs の急変に伴うSCS制御量ψ′amt の急変を
防止してヨーレイト制御中に上記SCS制御に起因する
ショックが発生することを防止することができる。
【0064】加えて、スプリット検出部58により車両
1の走行する路面がスプリット路面であることが検出さ
れたとき、制限制御部56により介入判定しきい値K1
及びK2 を増大補正するようにしているため、上記車両
1が上記スプリット路面を走行しているときにはSCS
制御の制御介入を遅延させることができ、これにより、
SCS制御の結果としてABS制御やTCS制御に悪影
響が及ぶことを抑制することができる。
【0065】<他の実施形態>なお、本発明は上記実施
形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態
を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、
ABS制御領域において第1推定摩擦係数μ1 を第3推
定摩擦係数μ3 に変更補正する一方、TCS制御領域に
おいて第1推定摩擦係数μ1 を第4推定摩擦係数μ4 に
変更補正するようにしているが、これに限らず、上記A
BS制御領域において第1推定摩擦係数μ1 を上記第3
推定摩擦係数μ3 に近い値になるように補正するように
してもよく、また、上記TCS制御領域において第1推
定摩擦係数μ1 を上記第4推定摩擦係数μ4 に近い値に
なるように補正するようにしてもよい。
【0066】上記実施形態では、路面摩擦係数の採用値
μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 が前回値μscs0よりも小さい
場合(SC20)、又は、ヨーレイト制御が行われてい
ると判定された場合(SC22)に、まず、上記採用値
μ1 ,μ2 ,μ3 又はμ4 と上記前回値μscs0との相乗
平均値を演算し(SC26)、この演算値を、路面摩擦
係数の今回値μscs として出力する(SC24)ように
して、上記前回値μscs0から今回値μscs まで緩やかに
変更するようにしているが、これに限らず、例えば、上
記前回値μscs0を、所定のディレイタイムの後に上記今
回値μscs になるよう緩やかに変更するようにしてもよ
い。また、上記路面摩擦係数の今回値μscs が前回値μ
scs0よりも大きい場合や横滑り角制御が行われている場
合にも、上記と同様、前回値μscs0を緩やかに今回値μ
scs に変更するようにしてもよい。
【0067】上記実施形態では、車両1の走行する路面
がスプリット路面であることが検出された場合に、SC
S制御の介入判定しきい値K1 ,K2 を増大補正するこ
とにより、上記SCS制御の制御介入を遅延させるよう
にしているが、これに限らず、例えば、SCS制御の制
御量ψ′amt 又はβamt を減少させるようにしてもよ
い。
【0068】上記実施形態では、車両の姿勢制御装置を
左右の前輪21FR,21FLが駆動輪とされた前輪駆動車
に適用しているが、これに限らず、後輪駆動車や4輪駆
動車にも適用可能である。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の発
明における車両の姿勢制御装置によれば、車両状態量に
基づいて演算された第1推定摩擦係数を、速度の変化率
に基づいて演算された第2推定摩擦係数の側の値に変更
補正することにより、上記第1推定摩擦係数が路面の実
際の摩擦係数に対し低すぎる値になることを防止するこ
とができ、これにより、車両の旋回姿勢の制御を十分に
行い得るようにすることができる。
【0070】請求項2記載の発明における車両の姿勢制
御装置によれば、請求項1記載の発明と同様に、第1推
定摩擦係数が路面の実際の摩擦係数に対し低すぎる値に
なることを防止することができ、これにより、車両の旋
回姿勢の制御を十分に行い得るようにすることができ
る。
【0071】請求項3記載の発明によれば、上記請求項
1又は請求項2記載の発明における車両状態検出手段及
び摩擦係数演算部の構成が特定される。
【0072】請求項4記載の発明によれば、上記請求項
2記載の発明による効果に加えて、アンチスキッドブレ
ーキ装置が制動力の付与制御を実行しているときに第1
推定摩擦係数を第3推定摩擦係数に基づいて補正ように
し、また、トラクション制御装置が駆動力の付与制御を
実行しているときに上記第1推定摩擦係数を第4推定摩
擦係数の側の値に変更補正するようにすることにより、
この第1推定摩擦係数の推定精度を極めて高いものにす
ることができ、これにより、姿勢制御の制御量の適正化
を図ることができる。
【0073】請求項5記載の発明によれば、上記請求項
4記載の発明による効果に加えて、第1推定摩擦係数を
補正目標値まで緩やかに変更補正することにより、その
第1推定摩擦係数の値の行き過ぎた急変に伴う姿勢制御
の制御量の行き過ぎた急変を防止することができ、これ
により、上記姿勢制御に起因するショックの発生を抑制
することができる。
【0074】請求項6記載の発明によれば、上記請求項
4記載の発明おける第1摩擦係数補正部による補正の内
容が特定され、第1推定摩擦係数を第3推定摩擦係数又
は第4推定摩擦係数と略等値に変更補正することによ
り、上記第1推定摩擦係数の推定精度を確実に向上させ
ることができる。
【0075】請求項7記載の発明によれば、上記請求項
2記載の発明による効果に加えて、スプリット路面であ
ることが検出されたときに姿勢制御手段による制御を抑
制するようにすることにより、この姿勢制御手段による
姿勢制御の結果として上記アンチスキッドブレーキ装置
やトラクション制御装置の作動に悪影響が及ぶことを抑
制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の姿勢制御装置を
適用した車両を示す概略構成図である。
【図2】ブレーキの液圧系統を示す図である。
【図3】SCSコントローラの構成を示すブロック図で
ある。
【図4】摩擦係数演算部の構成を示すブロック図であ
る。
【図5】基本制御の概要を示すフローチャートである。
【図6】状態量演算部、路面摩擦係数演算部及び目標状
態量演算部における処理を示すフローチャートである。
【図7】制御介入判定以降のSCSの制御の内容を示す
フローチャートである。
【図8】路面摩擦係数の演算を示すフローチャートであ
る。
【図9】ABS制御領域における車両の最大減速度と路
面の摩擦係数との関係を示した減速特性図である。
【図10】TCS制御領域における車両の最大加速度と
路面の摩擦係数との関係を示した加速特性図である。
【図11】第1推定摩擦係数の第2推定摩擦係数に基づ
く補正の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両 2,2,2,2 ブレーキ(制動手段) 3 加圧ユニット(制動手段) 4 ハイドロリックユニット(制動手
段) 5a SCSコントロールユニット(姿勢
制御手段) 5b ABSコントロールユニット(アン
チスキッドブレーキ装置)5c TCSコ
ントロールユニット(トラクション制御装置) 6,6,6,6 車輪速センサ(車輪速検出手段) 7 横Gセンサ(横加速度検出手段) 8 ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出
手段) 9 舵角センサ(操舵量検出手段) 21FR,21FL,21RR,21RL 車輪 21FR,21FL 駆動輪 51 車両状態量演算部(車両状態量検出
手段) 52a 第1摩擦係数演算部 52b 加減速度演算部(速度変化率検出手
段) 52c 第2摩擦係数演算部 52d 摩擦係数補正部(第1及び第2摩擦
係数補正部) 56 制限制御部(制限制御手段) 57a 減速度演算部(速度変化率検出手
段) 57b 第3摩擦係数演算部 58 スプリット検出部(スプリット路面
検出手段) 59a 加速度演算部(速度変化率検出手
段) 59b 第4摩擦係数演算部 v1 v2 ,v3 ,v4 車輪速(車輪の回転速
度) y″ 車両の左右方向の横加速度 ψ′ 車両のヨーレイト θH ステアリングの操舵角(ステアリン
グの操舵量) μ1 ,μ2 ,μ3 ,μ4 推定摩擦係数の採用
値(補正目標値)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 立畑 哲也 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の前後左右の各車輪に対し個別に制
    動力を付与可能に構成された制動手段と、上記車両の走
    行方向に対する旋回姿勢を表す所定の車両状態量を検出
    する車両状態検出手段と、この車両状態検出手段により
    検出された車両状態量に応じて上記制動手段の作動制御
    を行うことにより上記車両の旋回姿勢を制御する姿勢制
    御手段とを備えた車両の姿勢制御装置において、 上記車両の速度の変化率を検出する速度変化率検出手段
    を備え、 上記姿勢制御手段は、上記車両状態検出手段により検出
    された車両状態量に基づいて路面の摩擦係数を推定演算
    する第1摩擦係数演算部と、上記速度変化率検出手段に
    より検出された速度変化率に基づいて上記路面の摩擦係
    数を演算する第2摩擦係数演算部と、上記第1摩擦係数
    演算部により演算された第1推定摩擦係数を、上記第2
    摩擦係数演算部により演算された第2推定摩擦係数の側
    の値に変更補正する第1摩擦係数補正部とを備え、上記
    制動手段の制御を、上記第1摩擦係数補正部による補正
    後の摩擦係数値を加味して行うように構成されているこ
    とを特徴とする車両の姿勢制御装置。
  2. 【請求項2】 車両の前後左右の各車輪に対する制動力
    の付与をこの各車輪のブレーキロックを防止するよう制
    御するアンチスキッドブレーキ装置と、上記各車輪の内
    の駆動輪に対する駆動力の付与をその駆動輪の空転を防
    止するよう制御するトラクション制御装置とを備えた車
    両に配設され、上記各車輪に対し個別に制動力を付与可
    能に構成された制動手段と、上記車両の走行方向に対す
    る旋回姿勢を表す所定の車両状態量を検出する車両状態
    検出手段と、この車両状態検出手段により検出された車
    両状態量に応じて上記制動手段の作動制御を行うことに
    より上記車両の旋回姿勢を制御する姿勢制御手段とを備
    えた車両の姿勢制御装置において、 上記車両の速度の変化率を検出する速度変化率検出手段
    を備え、 上記アンチスキッドブレーキ装置は、上記速度変化率検
    出手段により検出された上記車両の速度の減少率に基づ
    いて路面の摩擦係数を推定演算する第3摩擦係数演算部
    を備えており、 上記トラクション制御装置は、上記速度変化率検出手段
    により検出された上記車両の速度の増加率に基づいて路
    面の摩擦係数を推定演算する第4摩擦係数演算部を備え
    ており、 上記姿勢制御手段は、上記車両状態検出手段により検出
    された車両状態量に基づいて路面の摩擦係数を推定演算
    する第1摩擦係数演算部と、上記車両が減速状態にある
    場合に、上記第1摩擦係数演算部により演算された第1
    推定摩擦係数を、上記第3摩擦係数演算部により演算さ
    れた第3推定摩擦係数の側の値に変更補正する一方、上
    記車両が加速状態にある場合に、上記第1摩擦係数演算
    部により演算された第1推定摩擦係数を、上記第4摩擦
    係数演算部により演算された第4推定摩擦係数の側の値
    に変更補正する第2摩擦係数補正部とを備え、上記制動
    手段の作動制御を、上記第2摩擦係数補正部による補正
    後の摩擦係数値を加味して行うように構成されているこ
    とを特徴とする車両の姿勢制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2において、 車両状態検出手段は、各車輪の回転速度を検出する車輪
    速検出手段と、車両のヨーレイトを検出するヨーレイト
    検出手段と、上記車両の左右方向に作用する横加速度を
    検出する横加速度検出手段と、ステアリングの操舵量を
    検出する操舵量検出手段とを備えており、 第1摩擦係数演算部は、上記車輪速検出手段により検出
    された各車輪の回転速度と、上記ヨーレイト検出手段に
    より検出されたヨーレイトと、上記横加速度検出手段に
    より検出された横加速度と、上記操舵量検出手段により
    検出されたステアリングの操舵量とに基づき、路面の摩
    擦係数を推定演算するように構成されていることを特徴
    とする車両の姿勢制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項2において、 第2摩擦係数補正部は、アンチスキッドブレーキ装置に
    よる制動力の付与制御が実行されているとき第1推定摩
    擦係数を第3推定摩擦係数の側の値に変更補正する一
    方、トラクション制御装置による駆動力の付与制御が実
    行されているとき第1推定摩擦係数を第4推定摩擦係数
    の側の値に変更補正するように構成されていることを特
    徴とする車両の姿勢制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4において、 第2摩擦係数補正部は、第1推定摩擦係数と第3推定摩
    擦係数又は第4推定摩擦係数とに基づいて補正目標値を
    設定するとともに、この補正目標値まで上記第1推定摩
    擦係数を緩やかに変更補正するように構成されているこ
    とを特徴とする車両の姿勢制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4において、 第2摩擦係数補正部は、第1推定摩擦係数を第3推定摩
    擦係数又は第4推定摩擦係数と略等値に変更補正するよ
    うに構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装
    置。
  7. 【請求項7】 請求項2において、 車両の走行している路面が、左右の車輪の内の一方が転
    動する片側の摩擦係数が高くかつ他方の車輪が転動する
    反対側の摩擦係数が低いスプリット路面であることを、
    上記左右の車輪の回転速度の偏差量に基づいて検出する
    スプリット路面検出手段と、 上記スプリット路面検出手段により車両の走行している
    路面がスプリット路面であることが検出されたとき、姿
    勢制御手段による制御を抑制する制限制御手段とを備え
    ることを特徴とする車両の姿勢制御装置。
JP6786097A 1997-03-21 1997-03-21 車両の姿勢制御装置 Withdrawn JPH10258721A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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