JP2001039283A - 自動車の制動装置 - Google Patents

自動車の制動装置

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JP2001039283A
JP2001039283A JP21154099A JP21154099A JP2001039283A JP 2001039283 A JP2001039283 A JP 2001039283A JP 21154099 A JP21154099 A JP 21154099A JP 21154099 A JP21154099 A JP 21154099A JP 2001039283 A JP2001039283 A JP 2001039283A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の各車輪のブレーキロックを防止するた
めのABS制御と前後輪のブレーキバランスを適正化す
るためのEBD制御とを行うようにした制動装置Aを前
輪駆動式車両に適用する場合に、ABS制御とEBD制
御とを協調させて、車両の制動時にABS制御の開始が
遅れることや誤制御による車両の挙動の不安定化を防止
する。 【解決手段】 EBD制御の開始後に設定時間Δtが経
過したとき、EBD制御を中断して、左右の後輪のブレ
ーキ液圧を強制的に低下させる(SD10)。少なくと
も一方の後輪についてABS制御が開始されたとき、E
BD制御を禁止する(SD12)。少なくとも一方の前
輪についてABS制御が開始されたとき、EBD制御の
開始を遅延させる(SD14)。ABS制御を正常に行
えないときには、EBD制御の遅延や禁止は行わない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の制動時に前
輪側への荷重移動に対応するように制動力を適切に分配
する電子式制動力配分装置(Electronic Brakeforce Di
stribution:以下、EBD装置という)と、各車輪がロ
ック状態にならないように制動力を制御するアンチスキ
ッドブレーキ装置(Antiskid Brake System:以下、A
BS装置という)とを備えた自動車の制動装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平4−21845
3号公報に開示されるように、車両の各車輪のブレーキ
ロックを防止するためのアンチスキッド制御と、前後輪
の制動力配分を適切なバランスにするための後輪制動制
御とを行うようにした自動車の制動装置は知られてい
る。このものでは、車両の各車輪に車輪速センサを配設
し、このセンサにより検出された各車輪の回転速度に基
づいて、車体速度を推定演算する。そして、この推定し
た車体速度と各車輪の回転速度とを個別に比較して各車
輪のスリップ状態を検出し、このスリップ状態に応じて
各車輪毎に以下のようなアンチスキッド制御を行う。
【0003】すなわち、例えば、車輪が最大の制動力を
発揮するような車輪スリップ量を目標値として設定し、
各車輪のスリップ量が制御開始しきい値を超えたときに
アンチスキッド制御を開始して、該各車輪毎のホイール
シリンダ内のブレーキ液圧を増圧状態、保持状態又は減
圧状態に切り換えて制御することにより、車輪スリップ
量を前記目標値に収束させるようにしている。
【0004】一方、前記後輪制動制御は、車両の制動時
に軽荷重になり易い後輪側のブレーキ液圧を前輪よりも
低く抑えるものであり、一般的に、前記車体速度を微分
演算して車体減速度を求め、この車体減速度が所定以上
に大きくなったときに、左右の後輪のホイールシリンダ
へのブレーキ液の給排を遮断して、該両後輪の制動力を
略一定に保持するようにしている。このように左右の後
輪の制動力を互いに同じ大きさに保持することで、制動
時の挙動安定性を確保することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来例
のような制動装置を前輪駆動式車両に適用した場合に
は、後輪制動制御が行われることによってアンチスキッ
ド制御の誤差が大きくなり、車両の制動時の挙動安定性
や制動性能が低下する虞れがある。すなわち、前輪駆動
式車両の後輪には駆動力が伝達されないので、後輪制動
制御により後輪の制動力がある程度大きな状態に保持さ
れると、当該後輪の路面に対する追従性が低下して、そ
の回転速度が実際の車体速度に対し低い方にずれる傾向
がある。この結果、各車輪の回転速度に基づく車体速度
の推定誤差が大きくなり、この推定車体速度に基づいて
行われるアンチスキッド制御が不正確なものになってし
まうのである。
【0006】例えば、前記のように車両の制動時に後輪
制動制御が行われた結果、推定車体速度が実際よりも低
い値になると、この推定車体速度を基準として演算され
る前輪のスリップ量が見かけ上、実際のスリップ量より
も小さくなるので、アンチスキッド制御の開始が遅れて
収束性が低下し、車両の挙動変化やショックが大きくな
るという不具合が生じる。
【0007】本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、アンチスキッド制御及
び後輪制動制御を行う制動装置を前輪駆動式車両に適用
する場合に、それらの2つの制御を協調させる手法に工
夫を凝らして、車両の制動時にアンチスキッド制御の開
始が遅れることや誤制御による車両の挙動の不安定化を
防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の第1の解決手段では、車両の制動時にアン
チスキッド制御手段による制動手段の制御(以下、単に
アンチスキッド制御ともいう)が開始されたとき、後輪
制動制御手段による制動手段の制御(以下、単に後輪制
動制御ともいう)を抑制する補正制御を行うようにし
た。
【0009】具体的に、請求項1記載の発明では、図1
に例示するように、車両の各車輪に制動力を付加する制
動手段6,7FR,7FL,7RR,7RLと、車両の
制動時に、各車輪に付加する制動力により該各車輪のス
リップ状態が所定の目標状態に収束するように前記制動
手段を作動制御するアンチスキッド制御手段20aと、
車両の制動時に後輪の接地荷重の減少に応じて該後輪の
制動力増大を規制するように前記制動手段を作動制御す
る後輪制動制御手段20bとを備えた自動車の制動装置
Aを前提とする。そして、車両は左右の前輪のみを駆動
する前輪駆動式車両とし、前記各車輪の回転速度をそれ
ぞれ検出する回転速度検出手段21と、少なくとも、前
記回転速度検出手段により検出された左右少なくとも一
方の後輪の回転速度に基づいて、車体速度を推定演算す
る車体速演算手段20cとを設けるものとする。また、
前記アンチスキッド制御手段20aは、前記回転速度検
出手段21により検出された各車輪の回転速度と前記車
体速演算手段20cにより演算された推定車体速度Vと
に基づいて、各車輪に付加する制動力を決定するものと
し、前記後輪制動制御手段20bは、後輪の制動力増大
を規制するときに、該後輪に付加する制動力を略保持す
るものとする。そして、前記アンチスキッド制御手段2
0aにより制動手段の制御が開始されたとき、前記後輪
制動制御手段20bによる制動手段の制御を抑制するよ
うに補正する補正制御手段20dを設ける構成とする。
【0010】前記の構成により、車両の制動時にアンチ
スキッド制御手段20aによる制動手段の制御が開始さ
れたとき、後輪制動制御手段20bによる制動手段の制
御が補正制御手段20dにより補正されて、車両の左右
の後輪に付加する制動力を略保持するという前記制動手
段の作動が抑制される。このことで、後輪制動力の保持
に起因する車体速度の推定演算の誤差が少なくなるの
で、推定車体速度Vに基づくアンチスキッド制御の精度
低下を軽減して、該アンチスキッド制御の遅れや誤制御
による車両の挙動の不安定化を抑制することができる。
【0011】請求項2の発明では、補正制御手段は、左
右の前輪の少なくとも一方についてのアンチスキッド制
御手段による制御が開始されたとき、後輪制動制御手段
による制御を抑制するものとする。このことで、左右の
前輪の少なくとも一方についてのアンチスキッド制御が
開始されたときに、補正制御手段により後輪制動制御が
抑制されることで、前記前輪についてのアンチスキッド
制御の精度低下を軽減することができる。
【0012】請求項3の発明では、請求項2における補
正制御手段を、後輪制動制御手段による制御の開始を遅
延させるものとする。このことで、左右の前輪の少なく
とも一方についてのアンチスキッド制御が開始されたと
きに、補正制御手段により後輪制動制御の開始が遅延さ
れ、その間は後輪制動制御に伴い車体速度の推定誤差が
大きくなることを回避して、前輪についてのアンチスキ
ッド制御の精度低下を防止することができる。
【0013】請求項4の発明では、請求項2における補
正制御手段を、後輪制動制御手段による制御を禁止する
ものとする。このことで、左右の前輪の少なくとも一方
についてのアンチスキッド制御が開始されたときに、補
正制御手段により後輪制動制御が禁止されるので、この
後輪制動制御に伴うアンチスキッド制御の精度低下を確
実に防止できる。尚、前輪についてのアンチスキッド制
御が開始されたときには、引き続いて後輪についてもア
ンチスキッド制御が開始されることが多いので、後輪制
動制御を禁止しても問題はない。
【0014】請求項5の発明では、補正制御手段は、左
右の後輪の少なくとも一方についてのアンチスキッド制
御手段による制御が開始されたとき、後輪制動制御手段
による制御を禁止するものとする。このことで、左右の
後輪の少なくとも一方についてのアンチスキッド制御が
開始されたときには、補正制御手段により後輪制動制御
が禁止され、アンチスキッド制御と後輪制動制御との干
渉が回避される。
【0015】次に、本発明の第2の解決手段では、車両
の制動時に後輪制動制御が開始されてから、設定時間が
経過したときには、この後輪制動制御に起因してアンチ
スキッド制御の開始が不当に抑制されていると推定し、
一時的に後輪制動制御を中断する補正制御を行うように
した。
【0016】具体的に、請求項6記載の発明では、図1
に例示するように、車両の各車輪に制動力を付加する制
動手段6,7FR,7FL,7RR,7RLと、車両の
制動時に、各車輪に付加する制動力により該各車輪のス
リップ状態が所定の目標状態に収束するように前記制動
手段を作動制御するアンチスキッド制御手段20aと、
車両の制動時に後輪の接地荷重の減少に応じて該後輪の
制動力増大を規制するように前記制動手段を作動制御す
る後輪制動制御手段20bとを備えた自動車の制動装置
Aを前提とする。そして、車両は左右の前輪のみを駆動
する前輪駆動式車両とし、前記各車輪の回転速度をそれ
ぞれ検出する回転速度検出手段21と、少なくとも、前
記回転速度検出手段21により検出された左右少なくと
も一方の後輪の回転速度に基づいて、車体速度を推定演
算する車体速演算手段20cとを設けるものとする。ま
た、前記アンチスキッド制御手段20aは、前記回転速
度検出手段21により検出された各車輪の回転速度と前
記車体速演算手段20cにより演算された推定車体速度
Vとに基づいて、各車輪に付加する制動力を決定するも
のとし、前記後輪制動制御手段20bは、後輪の制動力
増大を規制するときに、該後輪に付加する制動力を略保
持するものとする。そして、前記後輪制動制御手段20
bによる制動手段の制御が設定時間以上、継続して行わ
れたとき、該後輪制動制御手段20bによる制御を一時
的に中断させるとともに、左右の後輪に付加される制動
力が低下するように前記制動手段を補正制御する補正制
御手段20dを設ける構成とする。
【0017】すなわち、前輪駆動式車両の制動時に後輪
制動制御手段20bによる制動手段の制御が行われて、
左右の後輪に付加する制動力が略保持されると、駆動力
が伝達されない後輪の路面に対する追従性が低下して、
その回転速度が実際の車体速度に対し低い方にずれてし
まう。このため、各車輪の回転速度に基づいて演算され
る推定車体速度Vが実際よりも低い値になり、左右の前
輪のスリップ量が見かけ上、小さくなって、アンチスキ
ッド制御の開始が不当に遅れるという不具合が生じる。
【0018】これに対し、前記の構成では、車両の制動
時に後輪制動制御が設定時間以上、継続して行われたと
きには、補正制御手段20dにより後輪制動制御を一時
的に中断させ、左右の後輪に付加される制動力が低下す
るように制動手段を補正制御するようにした。こうして
左右の後輪への制動力の保持が中断されて、該制動力が
強制的に低下させられると、左右の後輪の路面への追従
性が回復して回転速度が高まり、推定車体速度が実際の
車体速度に近づくことで、アンチスキッド制御が正常に
開始されるようになる。つまり、後輪制動制御が行われ
ることに起因してアンチスキッド制御の開始が不当に抑
えられることを回避でき、これにより、アンチスキッド
制御の開始が遅れることによる車両の挙動の不安定化を
解消できる。
【0019】請求項7の発明では、アンチスキッド制御
手段の故障を検出する故障検出手段と、該故障検出手段
によるアンチスキッド制御手段の故障検出時に、補正制
御手段による補正制御を禁止する補正制御禁止手段を設
けた。
【0020】すなわち、一般的に、後輪制動制御を抑制
すれば、車両の制動時に制動力の前後バランスが崩れ
て、後輪の制動力が過度に高くなってしまい、アンチス
キッド制御が早期に開始されるようになる。従って、ア
ンチスキッド制御手段の故障時に後輪制動制御を抑制す
ると、後輪のブレーキロックを防止することができず、
車両は簡単にスピンするようになる。そこで、この発明
では、故障検出手段によりアンチスキッド制御手段の故
障が検出されたときには、補正制御手段による補正制御
を補正制御禁止手段によって禁止することで、車両の挙
動安定性を確保するようにしている。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基いて説明する。
【0022】図1は本発明の実施形態に係る自動車の制
動装置Aの全体構成を示し、この制動装置Aは、左右の
前輪のみに駆動力を伝達するいわゆる前輪駆動式車両に
搭載されている。
【0023】前記図1において、1はブレーキペダル2
の踏力圧を増大させるマスタバックである。また、3は
該マスタバック1で増大された踏力圧に応じてブレーキ
液圧(マスタシリンダ圧)を発生するマスタシリンダで
あり、このマスタシリンダ3で発生したブレーキ液圧
は、2本の液圧供給ライン4,5により従来周知のAB
S装置の液圧分配供給ユニット6(Hydraulic Unit;以
下、HUという)に伝えられ、このHU6により車両の
前後左右の4車輪(図示せず)に分配されて、右側前輪
のブレーキ装置7FR、左側前輪のブレーキ装置7F
L,右側後輪のブレーキ装置7RR及び左側後輪のブレ
ーキ装置7RLにそれぞれ供給されるようになってい
る。前記HU6及び4つのブレーキ装置7FR,7F
L,7RR,7RLにより、車両の各車輪に制動力を付
加する制動手段が構成されている。
【0024】前記2本の液圧供給ライン4,5のうちの
第1の液圧供給ライン4はHU6内で前輪側と後輪側と
に分岐し、それぞれ右側前輪のブレーキ装置7FRと左
側後輪のブレーキ装置7RLとに接続される一方、第2
の液圧供給ライン5は同様に分岐して左側前輪のブレー
キ装置7FLと右側後輪のブレーキ装置7RRとに接続
されており、ブレーキ液圧配管はいわゆるダイアゴナル
スプリット方式の2系統配管とされている。
【0025】また、前記HU6は、液圧供給ライン4,
5の分岐路4a,4b,5a,5bに対しそれぞれマス
タシリンダ3側と各ブレーキ装置7FR,7FL,…側
とを個別に連通状態又は遮断状態に切換えるように設け
られた4つのインレットバルブ8,8,8,8と、この
各インレットバルブ8の下流に設けられ、前記各ブレー
キ装置7FR,7FL,…とリザーバタンク10,10
とを個別に連通状態又は遮断状態に切換える4つのアウ
トレットバルブ9,9,9,9とを備えている。前記各
インレットバルブ8は2ポート2位置の常開型の電磁弁
であり、コントロールユニット20からの信号を受けて
開状態と閉状態との間で切換えられて、各ブレーキ装置
7FR,7FL,…のホイールシリンダ7aにマスタシ
リンダ3側から供給されるブレーキ液圧を調整する。ま
た前記各アウトレットバルブ9は2ポート2位置の常閉
型の電磁弁であり、コントロールユニット20からの信
号を受けて開状態に切換えられ、前記各ホイールシリン
ダ7aとリザーバタンク10とを連通状態にして、ホイ
ールシリンダ7aのブレーキ液圧(ホイールシリンダ
圧)を減圧する。
【0026】そして、コントロールユニット20から出
力される制御信号が入力するまでは、運転者によるブレ
ーキペダル2の踏み操作に応じて、マスタシリンダ3で
発生したブレーキ液圧が開状態のインレットバルブ8,
8,…を介して各ホイールシリンダ7aに供給され、前
記ブレーキペダル2の踏み操作に対応する制動力が各車
輪に付加される。また、コントロールユニット20から
の制御信号がHU6に入力されると、前記インレットバ
ルブ8,8,…及びアウトレットバルブ9,9,…がそ
れぞれデューティ制御されて、ブレーキ装置7FR,7
FL,…のホイールシリンダ圧が増大又は減少され、各
車輪に付加される制動力が調整される。
【0027】さらに、前記HU6には、リザーバタンク
10,10に排出されたブレーキ液を吸入して、それぞ
れ分岐路よりも上流側の液圧供給ライン4,5に送給す
る液圧供給ポンプ12,12が設けられている。この各
液圧供給ポンプ12は、図示しない電動モータにより駆
動されるもので、コントロールユニット20から出力さ
れる制御信号が入力するまでは停止状態とされる一方、
該制御信号が入力すると運転を開始して、各ホイールシ
リンダ7aへマスターシリンダ圧よりも高いブレーキ液
圧を供給するようになっている。尚、同図において、1
1,11,11,11は、各インレットバルブ8が閉状
態になっているときにホイールシリンダ7a側からマス
タシリンダ3側へのブレーキ液の流れを許容するバイパ
スチェックバルブである。また、13,13はそれぞれ
前記各液圧供給ポンプ12から液圧供給ライン4,5へ
のブレーキ液の流れを許容するチェックバルブであり、
14,14はそれぞれ液圧供給ポンプ12の脈動を緩和
するためのアキュムレータである。
【0028】前記コントロールユニット20は、図示し
ないが、CPU、ROM、RAM等を有するものであ
り、車両の4車輪にそれぞれ配設された回転速度検出手
段としての車輪速センサ21,21,…(図には1つの
み示す)、車両のブレーキペダル2の踏み操作を検出す
るフットブレーキスイッチ(以下FBSWという)2
2、車両のステアリング操舵角を検出する操舵角センサ
23、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ
24、トランスミッションのギアポジションを検出する
ギアポジションセンサ25及びマスタシリンダ3のブレ
ーキ液圧(マスタシリンダ圧)を検出する液圧センサ2
6からの出力信号が入力される。一方、前記コントロー
ルユニット20は、HU6のインレットバルブ8,8,
…及びアウトレットバルブ9,9,…に制御信号を出力
する。
【0029】すなわち、前記コントロールユニット20
は、図2のメインフローに示すように、運転者が車両に
乗り込んでイグニッションキーをオンにすると、ステッ
プSA1で、少なくとも、前記車輪速センサ21,2
1,…、フットブレーキスイッチ22、操舵角センサ2
3、エンジン回転数センサ24、ギアポジションセンサ
25及び液圧センサ26から入力される信号を読み込
み、続くステップSA2で車両の4車輪の各車輪速(車
輪の回転速度)を平均して、車体速を推定演算する。
尚、この推定車体速Vの演算の際には従動輪である左右
の後輪の重み付けを大きくしてもよく、また、該左右の
後輪のみの車体速を平均するようにしてもよい。
【0030】続いて、ステップSA3では、車両の制動
時に各車輪のスリップ状態が所定の目標状態に収束する
ように、該各車輪に付加する制動力を制御するアンチス
キッド制御(以下、ABS制御という)の制御演算を行
う。続くステップSA4では、HU6による各車輪への
ブレーキ液圧の配分によってプロポーショニングバルブ
の機能を発揮させる後輪制動制御(以下、EBD制御と
いう)を行う。すなわち、車両の制動による後輪荷重の
減少に応じて、前記HU6の後輪側のバルブ8,9の作
動制御により左右の後輪のブレーキ装置7RR,7RL
へのブレーキ液圧を制御して、該後輪の制動力の増大を
規制する。そして、ステップSA5において、前記AB
S制御及びEBD制御の協調制御を行い、しかる後にリ
ターンする。
【0031】前記図2のメインフローにおいて、ステッ
プSA2が、少なくとも、車輪速センサ21により検出
された左右少なくとも一方の後輪の車輪速に基づいて、
車体速度を推定演算する車体速演算手段20cに対応し
ている。また、ステップSA3及びステップSA4が、
後述のアンチスキッド制御手段20a及び後輪制動制御
手段20bにそれぞれ対応している。
【0032】(ABS制御)次に、前記ABS制御の詳
細について図3に示すフローチャート図に基づいて説明
する。同図のステップSB1では、FBSW22からの
出力信号に基づいて運転者によるフットブレーキ操作の
有無を判定し、ブレーキ操作がなされていないNOと判
定されれば、ステップSB2に進んで、ABS制御の実
行中か否かを表すABSフラグFslipの値をFslip=0
とし、続くステップSB3で各インレットバルブ8を開
状態にかつ各アウトレットバルブ9を閉状態にして、し
かる後にリターンする。
【0033】一方、前記ステップSB1でブレーキ操作
がなされているYESと判定されれば、ステップSB4
に進んで、各車輪毎に車輪速及び車体速Vに基づいて車
輪スリップ率を演算する。
【0034】車輪スリップ率 =(V−車輪速)/V 続いて、ステップSB5では、4車輪のそれぞれの車輪
スリップ率とマスタシリンダ圧とに基づいて従来周知の
手法により路面摩擦係数μを推定演算し、続くステップ
SB6では前記路面摩擦係数μの推定演算値に基づい
て、車輪スリップ率の制御目標値である目標スリップ率
sbと制御開始しきい値saとをそれぞれ演算する。尚、
前記車輪スリップ率は、上述の如く演算する他に車両に
搭載した前後方向加速度センサにより検出するようにし
たり、或いは路面摩擦係数μ等から間接的に求めるよう
にしてもよい。
【0035】前記ステップSB6に続いて、ステップS
C7〜SC15の各ステップの制御手順は各車輪毎に独
立に実行する。すなわち、ステップSB7ではABSフ
ラグFslipの値を判別し、Fslip=1のNOならば既に
ABS制御中なのでステップSB10に進む一方、Fsl
ip=0のYESならばABS制御中でないのでステップ
SB8に進み、車輪スリップ率を制御開始しきい値sa
と比較する。そして、車輪スリップ率が制御開始しきい
値sa以下のNOならばリターンする一方、制御開始し
きい値saよりも大きいYESならば、ステップSB9
に進んでABSフラグFslipの値をFslip=1とした
後、後述の如くステップSB11〜SB13に進んで、
HU6のインレットバルブ8,8,…及びアウトレット
バルブ9,9,…を開閉制御する。
【0036】一方、前記ステップSB7でFslip=1の
NOと判定されて進んだステップSB10では、車輪ス
リップ率を目標スリップ率sbと比較し、車輪スリップ
率が目標スリップ率sb以下のNOらばステップSB1
4に進む一方、目標スリップ率sbよりも大きいYES
ならばステップSB11に進む。このステップSB11
では、車輪速を微分演算して求められる車輪加速度を所
定の減圧しきい値sk1と比較し、車輪加速度が減圧し
きい値sk1よりも大きいYESならばステップSB1
2に進んで、インレットッバルブ8及びアウトレットバ
ルブ9を両方ともに閉状態にしてホイールシリンダ圧を
保持する保持状態とする。また、車輪加速度が減圧しき
い値sk1以下のNOならばステップSB13に進ん
で、インレットッバルブ8を閉状態に、またアウトレッ
トバルブ9を開状態にして、ホイールシリンダ圧を減圧
させる減圧状態とする。
【0037】つまり、車輪スリップ率が目標スリップ率
sbよりも大きい間は、ホイールシリンダ圧を車輪加速
度に応じて減圧状態と保持状態とに切換えながら減圧
し、車輪がロック状態になることを防止するようにして
いる。また、この減圧状態でアウトレットバルブ9から
リザーバタンク10に排出されたブレーキ液は直ちに液
圧供給ポンプ12により吸入されて、液圧供給ライン
4,5に送給される。
【0038】これに対し、前記ステップSB10で車輪
スリップ率が目標スリップ率sb以下のNOと判定され
て進んだステップSB14では、車輪加速度を所定の増
圧しきい値sk2と比較し、車輪加速度が増圧しきい値
sk2よりも大きいYESならばステップSB15に進
んで、インレットッバルブ8を開状態にかつアウトレッ
トバルブ9を閉状態にして、マスタシリンダ3及び液圧
供給ポンプ12からの液圧供給によりホイールシリンダ
圧を増圧させる増圧状態とする。また、車輪加速度が増
圧しきい値sk2以下のNOならばステップSB16に
進んで、インレットッバルブ8及びアウトレットバルブ
9を両方ともに閉状態にしてホイールシリンダ圧を保持
する保持状態とする。
【0039】つまり、車輪スリップ率が目標スリップ率
sb以下で制動力を増大させる余裕があるときには、ホ
イールシリンダ圧を車輪加速度に応じて保持状態と増圧
状態とに切換えながら増圧し、車両の各車輪に最大限の
制動力を発揮させるようにしている。 (EBD制御)次に、基本的なEBD制御について図4
のフローチャート図に基づいて説明すると、同図のステ
ップSC1では、FBSW22からの出力信号に基づい
て、運転者によるフットブレーキ操作の有無を判定し、
ブレーキ操作がなされていないNOと判定されれば、所
定時間の経過後に左右の後輪のインレットバルブ8,8
を開状態にかつアウトレットバルブ9,9を閉状態にし
て(ステップSC2,SC3)、続くステップSC4
で、EBD制御の実行中か否かを表すEBDフラグFEB
Dの値をFEBD=0とし、しかる後にリターンする。
【0040】一方、前記ステップSC1でブレーキ操作
がなされているYESと判定されれば、ステップSC5
に進んで一旦、左右の後輪のインレットバルブ8,8を
開状態に、かつアウトレットバルブ9,9を閉状態にす
る。続いて、ステップSC6において、車体速Vの前回
値から今回値を減算して車体減速度を求め、この車体減
速度を減速度設定値Bと比較して、車体減速度が減速度
設定値Bよりも大きいYESならばステップSC8に進
む一方、車体減速度が減速度設定値B以下のNOならば
ステップSC7に進む。このステップSC7では、上述
のABS制御のステップSB4と同様にして左右の後輪
の車輪スリップ率をそれぞれ演算し、いずれかの後輪の
車輪スリップ率がEBD制御の開始しきい値sc以下の
NOならばステップSC10に進む一方、しきい値sc
よりも大きいYESならば、ステップSC8に進む。
【0041】このステップSC8では、まず、左右の後
輪のインレットバルブ8,8及びアウトレットバルブ
9,9を共に閉状態にして、基本的にホイールシリンダ
圧を保持することで、後輪の制動力の増大を阻止する。
その上で、左右の後輪の接地性を高めて制動時の直進安
定性を確保しながら、制動性能をさらに高めるために、
車輪スリップ率や車輪加速度に応じてインレットバルブ
8,8及びアウトレットバルブ9,9を少しずつ開閉作
動させて、ホイールシリンダ圧を僅かに増圧又は減圧さ
せる。そして、ステップSC9に進んで、EBDフラグ
FEBDの値をFEBD=1とし、しかる後にリターンする。
【0042】また、前記ステップSC7でNOと判定さ
れて進んだステップSC10では、EBDフラグFEBD
の値を判別し、FEBD=0のYESならば、車体減速度
が未だ設定減速度B以下の状態であるか或るいは運転者
がフットブレーキ操作を中止したと判定してリターンす
る一方、FEBD=1のNOならば前記ステップSC8に
進んで、ホイールシリンダ圧の保持制御を行い、しかる
後にリターンする。
【0043】すなわち、前記EBD制御によれば、例え
ば図5に実線aとして示すように、まず、左右の後輪の
制動力を前輪と同様に直線的に増加させ、同図に一点鎖
線bで示す理想的な制動力配分曲線を超えたあたりで、
具体的には車体減速度が減速度設定値Bよりも大きくな
るか、又は車輪スリップ率がしきい値scよりも大きく
なったときに(折れ点S)、該左右の後輪のブレーキ液
圧を基本的に保持することにより、前後左右の4車輪へ
制動力を略理想的に配分するようにしている。また、こ
のものでは、前記のようにブレーキ液圧を基本的には保
持しながらも、各車輪のスリップ率に応じて僅かに増圧
又は減圧補正することで、同図に破線cで示すプロポー
ショニングバルブの特性に比べて、後輪のブレーキロッ
クを招くことなく、制動力を大幅に高めることができ
る。
【0044】尚、前記ステップSC6においては車体減
速度を車体速Vに基づいて求めるようにしているが、こ
れに限らず車輪速から求めるようにしてもよく、また、
車両に前後方向加速度センサを搭載して直接検出するよ
うにしてもよい。さらに、このようにして求めた値を路
面摩擦係数μや各車輪の接地荷重等に基づいて補正する
ようにしてもよい。 (協調制御)次に、本発明の特徴部分として、前記AB
S制御及びEBD制御の協調制御について、図6に示す
フローチャート図に基づいて説明する。
【0045】同図のステップSD1では、まず、上述の
如きABS制御を正常に行える状態かどうか判定する。
この判定はABS制御に用いる各種センサの故障やコン
トロールユニット20のABS制御ルーチン等の異常を
診断するもので、異常がないときには正常であるYES
と判定してステップSD5に進む一方、何か異常があれ
ば、正常でないNOと判定してステップSD2に進み、
ABS制御を禁止するとともに、車両のインストゥルパ
ネル内の警告灯を点灯させるABS故障処理を行う。続
いて、ステップSD3において、今度は、EBD制御を
正常に行える状態かどうか判定する。この判定は前記A
BS制御についての異常判定と同様にコントロールユニ
ット20のEBD制御ルーチン等の異常を診断するもの
で、異常がないときには正常であるYESと判定してリ
ターンする一方、何か異常があれば、正常でないNOと
判定してステップSD4に進み、例えば、EBD制御を
禁止するとともに、エンジン出力を極く小さく抑えて車
両を退避走行状態とさせるというようなEBD故障処理
を行う。
【0046】つまり、ABS制御のみが正常に行えない
のであれば、そのABS制御を禁止してEBD制御は通
常通りに行う一方、ABS制御もEBD制御も正常に行
えないのであれば、両方の制御を禁止するとともに、車
両を退避走行状態にさせるようにしている。この他、H
U6やブレーキ装置7a,7b,…そのものの故障が検
出されたときにも、前記と同様にABS制御及びEBD
制御を禁止しかつエンジン出力を絞って車両を退避走行
状態にさせる。
【0047】一方、前記ステップSD1,SD5におい
て、それぞれABS制御及びEBD制御を正常に行える
と判定して進んだステップSD6では、ABS制御の実
行中であるかどうか判定する。すなわち、ABSフラグ
Fslip=1でABS制御中であるYESと判定すれば、
ステップSD11に進む一方、Fslip=0でABS制御
中ではないNOと判定すれば、ステップSD7に進み、
今度はEBD制御の実行中であるかどうか判定する。
【0048】このステップSD7において、EBDフラ
グFEBD=1でEBD制御中であるYESと判定すれ
ば、ステップSD8に進み、EBD制御の開始から設定
時間Δt(図7参照)が経過したか否か判別して、設定
時間Δtが経過しないNOならば前記ステップSD7に
戻って再びEBD制御中かどうか判定する。そして、前
記設定時間Δtが経過する前にEBD制御が終了すれば
(ステップSD7でNO)、ステップSD9に進んで、
時間経過を計測するタイマーをリセットした後にリター
ンする。一方、EBD制御が開始されてから設定時間Δ
tが経過すれば(ステップSD8でYES)、ステップ
SD10に進んで、EBD制御による後輪のブレーキ液
圧の保持を一時的に中断させ、かつ設定圧力だけ減圧し
て、しかる後にリターンする。
【0049】つまり、車両の制動時にABS制御が行わ
れずに、EBD制御が設定時間Δt以上、継続して行わ
れているときには、一時的にEBD制御を中断して、左
右の後輪のブレーキ液圧を強制的に低下させるという補
正制御を行う。
【0050】また、前記ステップSD6でABS制御中
であるYESと判定されて進んだステップSD11で
は、このABS制御が左右のいずれかの後輪について行
われているか否か判別し、左右のいずれの後輪について
もABS制御が行われていないNOであればステップS
D13に進む一方、少なくとも一方の後輪についてAB
S制御が行われているYESであれば、ステップSD1
2に進んでEBD制御を禁止し、しかる後にリターンす
る。すなわち、例えばEBD制御の実行中に後輪につい
てのABS制御を開始するときには、EBD制御を中止
して、ABS制御を実行する。また、EBD制御が開始
される前に後輪についてのABS制御を開始するときに
は、その後のEBD制御の開始を禁止する。このこと
で、後輪についてのABS制御及びEBD制御の相互干
渉を回避し、ABS制御を優先することで、車両の制動
性能を確保するようにしている。
【0051】一方、前記ステップSD11で、左右のい
ずれの後輪についてもABS制御が行われていないNO
と判定して進んだステップSD13では、今度はABS
制御が左右のいずれかの前輪について行われているか否
か判別する。そして、左右のいずれの前輪についてもA
BS制御が行われていないNOであればリターンする一
方、少なくとも一方の前輪についてABS制御が行われ
ているYESであれば、ステップSD14に進み、EB
D制御の開始しきい値を増大補正して制御の開始を抑制
し、しかる後にリターンする。
【0052】つまり、左右の前輪の少なくとも一方につ
いてのABS制御が開始されたときには、その後にEB
D制御が開始されることを遅延させるようにしている。
尚、この他、ABS制御が開始されたときにEBD制御
を禁止するようにしてもよいが、車両の制動時に前輪に
ついてABS制御が開始されたときには、引き続いて後
輪についてもABS制御が開始されると考えられ、後輪
についてのABS制御の開始前に、EBD制御によって
後輪のブレーキ液圧を一時的に保持することにより、該
後輪についてのABS制御が開始されたときにブレーキ
液圧の変動を緩和して、運転者の違和感を軽減すること
ができる。
【0053】前記図6のフローに示すステップSD7〜
SD14の各ステップにより、補正制御手段20dが構
成されており、そのうちのステップSD7〜SD10の
各ステップが、EBD制御が設定時間Δt以上、継続し
て行われたとき、該EBD制御を一時的に中断させると
ともに、左右の後輪に付加される制動力が低下するよう
にHU6のバルブを制御するという制御手順に対応して
いる。
【0054】また、ステップSD11〜SD14の各ス
テップは、ABS制御が開始されたとき、EBD制御を
抑制するように補正するという制御手順に対応してお
り、特にステップSD11からステップSD12に進む
制御手順が、左右の後輪の少なくとも一方についてのA
BS制御が開始されたとき、EBD制御を禁止するとい
う制御内容に、また、ステップSD13からステップS
D14に進む制御手順が、左右の前輪の少なくとも一方
についてのABS制御が開始されたとき、EBD制御の
開始を遅延させるという制御内容にそれぞれ対応してい
る。
【0055】さらに、ステップSD1により、アンチス
キッド制御手段20aの故障を検出する故障検出手段2
0eが構成され、そのステップSD1からステップSD
2,SD3を経てリターンする制御手順が、前記故障検
出手段20eによるアンチスキッド制御手段20aの故
障検出時に、補正制御手段20dによる補正制御を禁止
する補正制御禁止手段20fに対応している。
【0056】次に、車両の制動時における前記協調制御
の作用効果を図7を参照しながら、説明すると、同図に
示すように、車両の走行中に運転者がブレーキペダルを
踏み込んで、制動状態になると(t=t1:FBSWが
ON)、マスタシリンダ圧の増大に応じて前輪側及び後
輪側のブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)がそれぞれ
増大し、これに応じて前輪及び後輪の車輪速がそれぞれ
徐々に低下するとともに、車体減速度が大きく立ち上が
る。そして、前輪側への荷重移動が大きくなって後輪の
接地荷重が減少すると、EBD制御が開始されて(t=
t2:EBD制御ON)、左右の後輪のブレーキ液圧が
略一定に保持されることになる。
【0057】ここで、前輪駆動式車両の後輪にはエンジ
ンからの駆動力が伝達されないので、前記のように後輪
の制動力がある程度大きな状態に保持されると、当該後
輪の路面に対する追従性が低下して、その車輪速が実際
の車体速度に対応する値よりも低くなる傾向がある。こ
の結果、各車輪速に基づいて演算される推定車体速度V
が実際よりも低くなり、この推定車体速度Vを基準とし
て求められる前輪のスリップ率が見かけ上、小さくなっ
て、ABS制御を開始すべきときであるにも拘わらず、
制御が開始されないという問題の生ずることが考えられ
る。
【0058】これに対し、前記実施形態の協調制御によ
れば、車両の制動時にABS制御が行われずに、EBD
制御が設定時間Δt以上、継続したときには(t=t
3)、一時的にEBD制御を中断し、左右の後輪のブレ
ーキ液圧を強制的に低下させるという補正制御が行わ
れ、図7に破線の円Qで囲んで示すように、後輪のブレ
ーキ液圧の低下によって該後輪の車輪速が一瞬、急増
し、このことによって、推定車体速Vが自然に実際の車
体速度に近い値に補正される。これにより、ABS制御
の開始判定が正常に行われるようになり、直ちに前後両
輪についてABS制御が開始されることで、車両を速や
かにかつ安定的に減速させることができる。
【0059】したがって、この実施形態に係る自動車の
制動装置Aによれば、上述の如く車両の減速時にEBD
制御が行われることによって、ABS制御の開始が不当
に抑え込まれるという事態を回避することができ、AB
S制御の開始が遅れることによる車両の挙動の不安定化
やショックの増大を解消して、十分な制動性能を得るこ
とができる。
【0060】また、車両の前後両輪についてABS制御
が開始されれば、EBD制御は禁止されるので、後輪で
の制御干渉による悪影響を排除することができるのみな
らず、上述の如く後輪のブレーキ液圧の保持に起因して
推定車体速度Vの推定誤差が大きくなることもなくな
り、前輪についてのABS制御が推定車体速度Vの誤差
に起因して精度の低いものになることを防止することが
できる。
【0061】さらに、この実施形態では、EBD制御の
開始される前に左右のいずれかの前輪についてABS制
御が開始されたときには、その後のEBD制御の開始を
遅延させるようにしているので、そのようにEBD制御
の実行が遅延されている間は車体速度の推定誤差が大き
くなることもなくなり、この場合にも、前輪についての
ABS制御の精度低下を防止することができる。
【0062】加えて、この実施形態では、コントロール
ユニット20等の異常によって前記ABS制御を正常に
行えないときには、上述のEBD制御の補正制御は一
切、行わないようにしているので、EBD制御が抑制さ
れることに起因して車両が制動時にスピンしやすくなる
といった不具合が発生することもない。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
に係る自動車の制動装置Aによると、車両の制動時にア
ンチスキッド制御による制動手段の制御が開始されたと
き、後輪制動制御手段による制動手段の制御を補正制御
手段により補正して、左右の後輪の制動力の保持するこ
とを抑制するようにしたので、該制動力の保持制御に起
因する車体速度の推定誤差を小さくすることができ、ア
ンチスキッド制御の精度低下を軽減して、車両の挙動の
不安定化やショックの増大を抑制できる。
【0064】請求項2の発明によると、左右の前輪の少
なくとも一方についてのアンチスキッド制御が開始され
たとき、補正制御手段により後輪制動制御を抑制するこ
とによって、アンチスキッド制御の精度の低下を軽減で
きる。
【0065】請求項3の発明によると、左右の前輪の少
なくとも一方についてのアンチスキッド制御が開始され
たとき、補正制御手段により後輪制動制御の開始を遅延
させることによって、アンチスキッド制御の精度の低下
を軽減できる。
【0066】請求項4の発明によると、左右の前輪の少
なくとも一方についてのアンチスキッド制御が開始され
たとき、補正制御手段により後輪制動制御を禁止するこ
とによって、アンチスキッド制御の精度低下を確実に防
止できる。
【0067】請求項5の発明によると、左右の後輪の少
なくとも一方についてのアンチスキッド制御手段による
制御が開始されたとき、補正制御手段により後輪制動制
御を禁止して、アンチスキッド制御との干渉による悪影
響を回避できる。
【0068】また、本発明の請求項6に係る自動車の制
動装置Aによると、車両の制動時に後輪制動制御による
制動手段の制御が設定時間以上、継続したときに、補正
制御手段により後輪制動制御を一時的に中断させ、左右
の後輪の制動力を強制的に低下させることで、該後輪の
路面への追従性を回復させ、推定車体速度を実際の車体
速度に近づけて、アンチスキッド制御を正常に開始させ
るようにすることができる。これにより、後輪制動制御
に起因するアンチスキッド制御の開始の遅れを防止し
て、車両の挙動の不安定化やショックの増大を解消でき
る。
【0069】請求項7の発明によると、アンチスキッド
制御手段の故障検出時には、補正制御手段による補正制
御を禁止して、後輪制動制御の抑制を中止することによ
り、車両の挙動安定性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の制動装置の全
体構成を示す図である。
【図2】基本制御の流れを示すフローチャート図であ
る。
【図3】ABS制御の処理手順を示すフローチャート図
である。
【図4】EBD制御の処理手順を示すフローチャート図
である。
【図5】EBD制御における後輪側制動力の前輪側制動
力に対する配分状態を、プロポーショナルバルブによる
配分状態や理想的な制動力配分曲線と対比して示した説
明図である。
【図6】協調制御の処理手順を示すフローチャート図で
ある。
【図7】車両の制動時におけるブレーキペダルの踏み操
作、EBD制御及びABS制御のオンオフ作動、前後輪
のブレーキ液圧及び車輪速の変化及び車体減速度の変化
についての対応関係の一例を示すタイムチャート図であ
る。
【符号の説明】
A 制動装置 6 液圧供給ユニット(制動手段) 7FR,7FL,7RR,7RL ブレーキ装置
(制動手段) 20a アンチスキッド制御手段 20b 後輪制動制御手段 20c 車体速演算手段 20d 補正制御手段 20e 故障検出手段と、 20f 補正制御禁止手段 21 車輪速センサ(回転速度検出手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3D045 AA02 BB37 EE21 FF42 GG01 GG05 GG26 GG28 3D046 AA02 BB01 BB28 BB31 DD04 FF09 HH02 HH07 HH08 HH16 HH17 HH23 HH26 HH36 HH39 HH46 JJ00 JJ04 JJ06 JJ07 JJ21 KK07 LL41 LL50 MM02 MM14

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の各車輪に制動力を付加する制動手
    段と、 車両の制動時に、各車輪に付加する制動力により該各車
    輪のスリップ状態が所定の目標状態に収束するように前
    記制動手段を作動制御するアンチスキッド制御手段と、 車両の制動時に後輪の接地荷重の減少に応じて該後輪の
    制動力増大を規制するように前記制動手段を作動制御す
    る後輪制動制御手段とを備えた自動車の制動装置におい
    て、 車両は、左右の前輪のみを駆動する前輪駆動式車両であ
    り、 前記各車輪の回転速度をそれぞれ検出する回転速度検出
    手段と、 少なくとも、前記回転速度検出手段により検出された左
    右少なくとも一方の後輪の回転速度に基づいて、車体速
    度を推定演算する車体速演算手段とが設けられ、 前記アンチスキッド制御手段は、前記回転速度検出手段
    により検出された各車輪の回転速度と前記車体速演算手
    段により演算された推定車体速度とに基づいて、各車輪
    に付加する制動力を決定するものであり、 前記後輪制動制御手段は、後輪の制動力増大を規制する
    ときに、該後輪に付加する制動力を略保持するものであ
    り、 前記アンチスキッド制御手段により制動手段の制御が開
    始されたとき、前記後輪制動制御手段による制動手段の
    制御を抑制するように補正する補正制御手段を設けたこ
    とを特徴とする自動車の制動装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 補正制御手段は、左右の前輪の少なくとも一方について
    のアンチスキッド制御手段による制御が開始されたと
    き、後輪制動制御手段による制御を抑制するように構成
    されていることを特徴とする自動車の制動装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、 補正制御手段は、後輪制動制御手段による制御の開始を
    遅延させるものであることを特徴とする自動車の制動装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項2において、 補正制御手段は、後輪制動制御手段による制御を禁止す
    るものであることを特徴とする自動車の制動装置。
  5. 【請求項5】 請求項1において、 補正制御手段は、左右の後輪の少なくとも一方について
    のアンチスキッド制御手段による制御が開始されたと
    き、後輪制動制御手段による制御を禁止するように構成
    されていることを特徴とする自動車の制動装置。
  6. 【請求項6】 車両の各車輪に制動力を付加する制動手
    段と、 車両の制動時に、各車輪に付加する制動力により該各車
    輪のスリップ状態が所定の目標状態に収束するように前
    記制動手段を作動制御するアンチスキッド制御手段と、 車両の制動時に後輪の接地荷重の減少に応じて該後輪の
    制動力増大を規制するように前記制動手段を作動制御す
    る後輪制動制御手段とを備えた自動車の制動装置におい
    て、 車両は、左右の前輪のみを駆動する前輪駆動式車両であ
    り、 前記各車輪の回転速度をそれぞれ検出する回転速度検出
    手段と、 少なくとも、前記回転速度検出手段により検出された左
    右少なくとも一方の後輪の回転速度に基づいて、車体速
    度を推定演算する車体速演算手段とが設けられ、 前記アンチスキッド制御手段は、前記回転速度検出手段
    により検出された各車輪の回転速度と前記車体速演算手
    段により演算された推定車体速度とに基づいて、各車輪
    に付加する制動力を決定するものであり、 前記後輪制動制御手段は、後輪の制動力増大を規制する
    ときに、該後輪に付加する制動力を略保持するものであ
    り、 前記後輪制動制御手段による制動手段の制御が設定時間
    以上、継続して行われたとき、該後輪制動制御手段によ
    る制御を一時的に中断させるとともに、左右の後輪に付
    加される制動力が低下するように前記制動手段を補正制
    御する補正制御手段を設けたことを特徴とする自動車の
    制動装置。
  7. 【請求項7】 請求項1又は6のいずれかにおいて、 アンチスキッド制御手段の故障を検出する故障検出手段
    と、 前記故障検出手段によるアンチスキッド制御手段の故障
    検出時に、補正制御手段による補正制御を禁止する補正
    制御禁止手段が設けられていることを特徴とする自動車
    の制動装置。
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