JPH10256088A - 電気二重層コンデンサ - Google Patents

電気二重層コンデンサ

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JPH10256088A
JPH10256088A JP7652997A JP7652997A JPH10256088A JP H10256088 A JPH10256088 A JP H10256088A JP 7652997 A JP7652997 A JP 7652997A JP 7652997 A JP7652997 A JP 7652997A JP H10256088 A JPH10256088 A JP H10256088A
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cellulose
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泰司 溝渕
Teruyuki Shinsenji
輝幸 秦泉寺
Masaaki Yanase
正明 柳瀬
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 微細な貫通孔を有して多孔質であるととも
に、緻密性を有して気密度が高い、セルロースを原料と
する新規なセパレータを用い、ショート不良の低減、内
部抵抗の低減等の諸特性を高いレベルで改善すると共
に、小型化した電気二重層コンデンサをを提供する。 【解決手段】 セルロースを原料として湿紙を製造し、
該湿紙に存在する空隙構造を保持したまま乾燥させるこ
とにより、微細な貫通孔を有するセパレータを特徴とす
る電気二重層コンデンサを提供する。また繊維径が1μ
m以下の微細なセルロースを原料として湿紙を製造し、
セルロース繊維をJIS法CSFの値(JIS、P81
21による測定値)で200ml以下に叩解したセルロ
ースを使用する構成、及び変法CSFの値で700ml
以下に叩解したセルロースを使用する構成(但し、変法
CSFの値はJIS P8121に規定する測定法にお
いて、試料3gを試料0.3gとして測定した値とす
る)を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気二重層コンデンサに
関し、特には一対の分極性電極を隔離するセパレータと
して、微細な貫通孔を有して多孔質であるとともに、緻
密性を有して気密度が高い、セルロースを原料とする新
規なセパレータを用いることによって、ショート不良の
低減、内部抵抗の低減等の諸特性を高いレベルで改善す
ると共に、電気二重層コンデンサを小型化するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】電気二重層コンデンサは電極面積が大き
く、アルミ電解コンデンサ等と比較して大容量が得られ
るため、主として半導体のバックアップ電源用等として
使用されてきた。更に、近時はその大容量が着目されて
電気自動車等の産業用電気製品からコードレスで給湯で
きる電気ポット等の民生用電気製品に到るまで用途が拡
大してきている。
【0003】この電気二重層コンデンサは活性炭繊維
布、或いはアルミネットに活性炭やカーボンブラックを
担持させてなる一対の分極性電極の間にセパレータを介
在させ、かつ、これらに電解液を含浸させた後に封口し
て製作している。電解液としてはプロピレンカーボネー
ト等の有機溶媒に、テトラエチルアンモニウムテトラフ
ルオロボレートやテトラエチルホスホニウムテトラフル
オロボレート等を溶解したものが使用されている。この
電気二重層コンデンサには封口形態によって、コイン型
と捲回型とがある。コイン型は対向する一対の分極性電
極とこの一対の分極性電極の間に平行して介在させたセ
パレータに電解液を含浸させた後に外装材を兼ねる金属
ケースと金属蓋内に収納し、ガスケットを介してかしめ
ることによって密封している。一方捲回型は一対の分極
性電極とこの一対の分極性電極の間に介在させたセパレ
ータを円柱状に素子巻きをしたものに電解液を含浸させ
た後に有底円筒状のアルミケースに収納し、かつ、アル
ミケースの開口部をゴム封口体で密封している。
【0004】電気二重層コンデンサに求められているも
のの中に、ショート不良率が低いこと及びイオンの伝導
を妨げることがないように電解液を含浸させたときの内
部抵抗が低いことがあり、この2つはセパレータによっ
て大きく左右される。
【0005】一対の分極性電極となる活性炭がセパレー
タを貫通してショートする箇所はセパレータの弱い箇所
であり、例えばピンホールがあればそこからショートす
る。そこで、ショート不良率を低減するにはできるだけ
均一でピンホールなどの貫通孔が無い緻密性の高いセパ
レータ、換言すれば気密度の高いセパレータとすること
が要求される。
【0006】一方、内部抵抗を下げるためにはショート
不良率の改善とは逆に、イオンが通る経路としての貫通
孔を確保するために多孔質のセパレータ、換言すれば気
密度の低いセパレータとすることが要求される。これは
電気二重層コンデンサの伝導方式はイオン伝導であっ
て、電荷を持ったイオンが移動することで電荷が移動す
るためである。このようにショート不良率を低減するに
は緻密性を高めて気密度を高くすることが、一方内部抵
抗を低下させるためには多孔質なものとして気密度を低
くするという相反する特性がセパレータには求められて
いるのである。
【0007】従来、コイン型の電気二重層コンデンサの
セパレータとしてはメルトブロー方式により製造したポ
リプロピレン不織布(乾式不織布)が使用されている。
これはコイン型の場合には金属ケースと金属蓋内をガス
ケットを介してかしめる際の衝撃にセパレータが耐える
必要があり、ポリプロピレン不織布は溶融ポリマーの紡
糸液がランダムウエブとして集積され、繊維が相互に結
合することなく絡み合った状態であるため、この衝撃を
吸収して耐えられる伸び性や弾性を有するためである。
【0008】一方、捲回型の電気二重層コンデンサのセ
パレータとしては天然繊維であるマニラ麻パルプとガラ
ス繊維の混抄紙が使用されている。この混抄紙は繊維が
相互に結合しており、衝撃に対する耐性は少ないが、捲
回型の場合はかしめる際の衝撃がないため、コイン型の
ように衝撃に対する耐性を考慮する必要がなく、ショー
ト不良率の低減に寄与する緻密性に優れたマニラ麻パル
プとガラス繊維の混抄紙が使用されているのである。な
お、ガラス繊維を混抄しているのは、ガラスであるため
に乾燥時に水素結合が発生することがなく、マニラ麻パ
ルプの繊維中に介在して空隙の保持に寄与するためであ
る。しかしながら、ガラス繊維は嵩高であり、水素結合
をしないことから強度がなく、配合割合は40重量%程
度が限界である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリプ
ロピレン不織布は多孔質であって内部抵抗は低いが、緻
密性に欠けるため、一対の分極性電極としての活性炭が
貫通してしまいショートすることが多い。そのため、ポ
リプロピレン不織布の厚さを厚くすることによって活性
炭の貫通を防ぐ必要があり、従来120〜180μmの
厚さでなければ使用することができなかった。
【0010】一方、捲回型の電気二重層コンデンサにお
いて使用されている天然セルロース繊維であるマニラ麻
パルプにガラス繊維を混抄したセパレータはポリプロピ
レン不織布に比べて、緻密性、気密性に優れており、6
0〜100μm程度の厚さでセパレータとして使用でき
るが、多孔質の程度が小さく緻密性が高いことに起因し
て、内部抵抗が高くなってしまうという問題点がある。
【0011】素材としてのセルロースは230℃までの
耐熱性を有しており、セルロースを溶かす薬剤が今も探
索されていることからも分るように薬品に対して安定で
あり、耐熱性も耐薬品性を合せ持っていると言える。一
方、ポリプロピレン不織布は本質的に耐熱性に欠けてい
る。そこで、再生産可能な安価な原料であるセルロース
を原料として、ショート不良を防ぐために緻密性を有し
て気密度が高く、かつ、同時に内部抵抗を下げるために
微細な貫通孔を有して多孔質のセパレータを実現できれ
ば、電気二重層コンデンサに要求されているショート不
良の低減、内部抵抗の低減と共に、セパレータを薄膜化
して電気二重層コンデンサを小型化することができる。
【0012】しかしながら、従来の抄紙法によって製造
されたセルロースを原料とするセパレータでは多孔質と
高気密度の双方を充足することはできなかった。電気二
重層コンデンサのセパレータとして使用できる100μ
m以下の厚さで、活性炭の貫通を防止してショート不良
率を低減するために気密度を1000秒/100cc程
度まで高くしようとすると、セルロースパルプを叩解
し、密度を0.75g/cm3程度に抄紙しなければな
らないが、そうするとセパレータはフィルム状となりイ
オンの経路としての貫通孔が無くなってしまい内部抵抗
が高くなってしまうのである。
【0013】そのため、セルロースを原料として電気二
重層コンデンサのセパレータを製造しようとする場合に
セパレータの性能を決定する重要な要素としてセパレー
タの気密度のコントロールがあり、ショート不良率と内
部抵抗の双方を高いレベルで改善するには、微細な貫通
孔を有する多孔質であって、かつ、高い気密度、具体的
には1000秒/100cc以上の気密度を有するセパ
レータが望ましい。気密度が数百秒/100ccのレベ
ルのセパレータでは全体としては緻密性を有していても
ピンホールが存在するためである。
【0014】従来、セルロースを原料とする紙の気密度
のコントロールは次の二つの方法により行われている。
一つは原料となるセルロース繊維の叩解の度合い進め
て、より密度の高いセパレータを製造する方法であり、
もう一つはセパレータを厚くする方法である。
【0015】叩解の程度による気密度のコントロールで
は、叩解の浅いセルロース繊維を用いて低密度のセパレ
ータに抄紙すると気密度は低く、叩解を進めたセルロー
ス繊維を用いて密度を高く抄紙すると気密度を高くする
ことができる。セルロース繊維の叩解の程度がJIS
P8121に規定するCSF(カナダ標準形口水度、C
anadian Standard Freenes
s、以下、JIS法CSFという)の値で770mlと
ほとんど叩解していないバージンパルプを用いて、密度
を0.3g/cm3、厚さ50μm程度のセパレータを
抄紙すれば、気密度を約1秒/100ccにコントロー
ルすることができ、JIS法CSFの値で400ml程
度まで叩解を進めて抄紙すれば、同一厚さのセパレータ
であっても叩解を進めることによって、密度を0.3g
/cm3から0.55g/cm3に高めることができ、気
密度を数百秒/100ccにコントロールすることがで
きる。
【0016】そこで、叩解を高度に進めていけば気密度
を数千秒/100ccから数万秒/100ccまで、あ
るいはそれ以上までコントロールすることが可能ではな
いかと考えられる。しかしながら、ある程度以上叩解を
進めた原料を使用した場合、セパレータの表裏間の貫通
孔が存在しなくなってしまい、従来のセパレータでは1
000秒/100cc以上の気密度をコントロールしな
がら実現することはできなかった。これはJIS法CS
Fの値で約200mlより叩解を進めて抄紙をすると、
繊維間の空隙がなくなってしまい、セパレータにはもは
や貫通孔が存在しなくなり、気密度は無限大となって実
際上測定できなくなるからである。これはセパレータが
自己接着力をもつセルロースで製造されることに起因す
る避け難い性質である。貫通孔が存在しなくなることは
イオンが通る経路がなくなることであり、内部抵抗が極
端に高くなってしまう。
【0017】一般に繊維径が小さいほど水の表面張力に
よる湿紙中の繊維間に働く力は大きくなる。このことは
キャンプベル効果(Campbell効果)として知ら
れている。キャンプベルの計算によると繊維径30μm
の繊維間の引力は6.1Kg/cm2、であるのに対
し、繊維径2μmでは繊維間の引力は38Kg/cm2
となり、更に繊維径0.2μmとなると繊維間の引力は
174Kg/cm2になる。高度に叩解された植物繊維
は繊維径が元の大きさに比べ小さくなっており、その繊
維間に働く力も大きく、繊維間の距離も小さくなってい
る。そこで、湿紙の状態から乾燥工程に入ると水が蒸発
し、このとき水の表面張力が大きいため、隣同士の繊維
を強力に引き付ける。繊維間距離が小さくなるとワンデ
ルウァールス力が働き、更に繊維相互を引き付け、つい
には水素結合により密着することとなり、繊維間の空隙
が減少してしまう。そのため、JIS法CSFの値で2
00ml以下に叩解を進めると得られたセパレータの繊
維間の空隙がなくなってしまうため、気密度が測定でき
なくなるのである。よって、イオンが通る経路としての
貫通孔が無くなってしまうこととなる。一方、叩解の程
度が浅く大きな繊維の形状が保持されている場合には、
繊維の接触点で水素結合が発生しても全体としてみると
空隙が多く存在するのである。
【0018】また、JIS法CSFの値で200mlに
到る前に、JIS法CSFの値の微調整を試みることに
よっても、1000秒/100cc以上の気密度をコン
トロールすることはできない。上記したように、繊維径
が小さくなると、繊維間に働く力が急激に大きくなる。
しかもセルロース繊維を叩解するとセルロース繊維は1
/2や1/3に段階的に開裂して行くのではなく、直径
0.4μm程度のフィブリルが繊維の外部から段階的に
ひげ状に発生して行く。即ち、叩解の程度は0.4μm
のフィブリルの発生状況のことであり、叩解が進むこと
はフィブリルの比率が増加することを示している。一
方、基となるセルロース繊維、例えば針葉樹パルプの繊
維は長径40μm、短径10μm程度の楕円形であり、
マニラ麻パルプの繊維は直径20μm程度のほぼ円形で
ある。そのため、叩解の程度はマニラ麻パルプであれ
ば、直径20μmの繊維と、直径0.4μmのフィブリ
ルの比率の変化として捉えることができる。よって、J
IS法CSFの値で200mlに到る前の微妙なJIS
法CSFの値の調整で気密度をコントロールすることは
できないのである。また、試みたとしても目標値に対
し、±数千秒〜数万秒/100ccのバラツキが発生す
ることとなると考えられる。
【0019】そのため、叩解の程度を調節することによ
って、気密度として数百秒/100ccのセパレータを
製造することはできても、イオンが通る経路としての貫
通孔を維持して気密度を上げるために1000〜数万秒
/100ccの気密度をコントロールしながら製造する
ことはできなかった。即ち、セルロースを原料として微
細な貫通孔を有する多孔質であって、かつ、高い気密度
を有するセパレータを製造することはできなかったので
ある。
【0020】また、もう一つの気密度を高くする方法と
してセパレータを厚くする方法がある。理論的には空気
の通過する距離が長くなればなるほど気密度は高くな
り、セパレータを厚くすれば高気密度のセパレータを製
造することが可能である。しかし、セルロースを原料と
するセパレータとしては捲回型の電気二重層コンデンサ
において60〜100μmが主に使われており、できる
だけ薄い方が良い。特に現在ではより高容量化、小型軽
量化が望まれており、従来より更に薄くすることが期待
されている。よって、セパレータとして要求される10
0μm以下の厚さの範囲では、厚さを調整することによ
って、或は叩解の程度と厚さの調整を併用することによ
って気密度を1000秒/100cc以上でコントロー
ルすることはできなかった。
【0021】一方、内部抵抗を低減するためにセルロー
スを原料として貫通孔を有する多孔質のセパレータを得
るためには、ショート不良率の改善とは逆にセパレータ
を薄く、その密度を低くする必要がある。しかしなが
ら、セパレータを薄くしたり密度を低くすると必然的に
気密度は低下してしまう。また、気密度を高めるために
セパレータを厚くすると一次式的に内部抵抗が高くな
り、密度を高めると二次式的に内部抵抗が高くなるので
ある。
【0022】以上のように、従来はセルロースを原料と
してイオンが通る経路としての貫通孔を維持するために
多孔質であって、かつ、高い気密度を有するセパレータ
を得ることはできず、ショート不良率と内部抵抗の双方
を高いレベルで改善することはできなかった。
【0023】そこで、叩解の程度を進めたセルロース原
料で製造され、気密度が無限大となって測定不能となる
高密度紙を多孔質のものとすることができれば、従来不
可能とされていた高気密度であって低密度のセパレータ
を得ることができる。即ち、叩解を進めた原料を使用し
ても、空気が通過することのできる微細な貫通孔を有す
るセパレータを製造することができれば、高気密度であ
ってもイオンが通る経路としての貫通孔を確保したセパ
レータをセルロースを原料として得ることができるので
ある。この高気密度であって低密度のセパレータによれ
ば、気密度を高いレベルでコントロールすることがで
き、従来の気密度を上げると密度が高くなって内部抵抗
が高くなり、密度を下げて内部抵抗を低下させると気密
度が下がり緻密性に欠けてショート不良率が増加するこ
ととなって、ショート不良率と内部抵抗の双方を同時に
高いレベルで満足させることが困難であったセパレータ
の欠点を解消することができる。また、セルロースは再
生産可能な天然資源であり、産業廃棄物の問題も少ない
ため、石油資源の利用から再生産可能な天然資源への利
用へと転換を図ることができて望ましい。
【0024】更に、従来かしめる際の衝撃に対する耐性
が不足するために、セルロースを原料とするセパレータ
を使用することができなかったコイン型の電気二重層コ
ンデンサのセパレータとして、セルロースを原料とする
セパレータを使用することが可能となれば、よりセパレ
ータを薄くすることができ、薄くなった分電極を多く使
用することができて、高容量化を図ることができる。
【0025】そこで、本発明は上記従来の事情に基づ
き、耐熱性、耐薬品性に優れた再生産の可能な天然資源
であるセルロースを原料として、微細な貫通孔を有する
多孔質で低密度であるとともに、緻密性を有して気密度
が高い新規なセパレータ、即ち、イオンが通る経路とし
ての貫通孔を維持するために多孔質であって、かつ、高
い気密度を有するセパレータを用いることによって、シ
ョート不良の低減、内部抵抗の低減等の諸特性を高いレ
ベルで改善すると共に、小型化した電気二重層コンデン
サを提供することを課題とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を達成
するために、一対の分極性電極をセパレータによって隔
離してなる電気二重層コンデンサにおいて、前記セパレ
ータはセルロースを原料として湿紙を製造し、該湿紙に
存在する空隙構造を保持したまま乾燥させた電気二重層
コンデンサ及び該湿紙に存在する空隙構造を保持したま
ま乾燥させることにより、微細な貫通孔を有する電気二
重層コンデンサを基本として提供する。また、湿紙は原
料を水に分散させて抄紙し、又は原料を水より表面張力
の小さい有機溶媒に分散させて抄紙する。湿紙中の水分
は水と相溶性のある表面張力の小さい溶媒と置換し、又
は凍結乾燥させることにより乾燥させる。また、湿紙中
の有機溶媒は揮発させることにより乾燥させる。湿紙は
原料をキャスティング製膜することもできる。原料のセ
ルロースとしては繊維径が1μm以下の微細なセルロー
スを使用し、微細なセルロースとしてはセルロース繊維
をJIS法CSF(JIS P8121)の値で200
ml以下に叩解したセルロース、或は変法CSF(JI
S P8121に規定する測定法において、試料3gを
試料0.3gとして測定する)の値で700ml以下に
叩解したセルロースを使用する。また、微細なセルロー
スとしてセルロース繊維を高圧下剪断力で解繊したマイ
クロフィブリル化セルロースを使用することもできる。
更に、湿紙にホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム又
はガラス繊維などの無機フィラーを混抄することも有効
である。そして、得られたセパレータは厚さが100μ
m以下、気密度が1000秒/100cc以上が好まし
い。
【0027】上記本発明によれば、湿紙の状態において
セルロース繊維間の空隙構造に保持された水を溶媒置換
又は凍結乾燥によって乾燥させ、或はセルロース繊維を
有機溶媒に分散させて抄紙することにより湿紙を製造
し、湿紙中の有機溶媒を揮発させることにより乾燥させ
るため、従来の抄紙法のように湿紙からの乾燥工程で水
が蒸発するときに隣同士の繊維を強力に引き付けて水素
結合により密着することがない。即ち、水素結合に関与
する水を他の溶媒に置換すること等によってフィブリル
間の水素結合を阻害することができる。そのため、湿紙
に存在する空隙構造をそのまま保持することにより、微
細な貫通孔を有する多孔質で低密度であるとともに、緻
密性を有して気密度が高い新規なセパレータ、具体的に
は厚さが100μm以下、気密度が1000秒/100
cc以上の多孔質高気密度のセパレータを得ることがで
きる。即ち、ショート不良率を改善するために高い気密
度を有し、かつ、内部抵抗を改善するためにイオンが通
る経路としての貫通孔を維持した多孔質のセパレータを
得ることができる。よって、このセパレータを用いるこ
とによって、ショート不良の低減、内部抵抗の低減等の
諸特性を高いレベルで改善すると共に、セパレータを大
幅に薄膜化することができて、電気二重層コンデンサを
小型化することができる。
【0028】更に、従来かしめる際の衝撃に対する耐性
が不足するために、セルロースを原料とするセパレータ
を使用することができなかったコイン型の電気二重層コ
ンデンサにおいても、柔軟性を有する本発明にかかるセ
パレータであれば従来のポリプロピレン不織布に代えて
セパレータとして使用することができる。即ち、本発明
によるセルロースを原料とするセパレータは、高度に叩
解したセルロースが湿紙中の水分乾燥に起因しては水素
結合を形成することがなく、セルロース繊維が相互に絡
み合った状態であり柔軟性があるため、かしめる際の衝
撃等の圧力が加わると空隙が容易に減少して衝撃を吸収
することができるのである。また、押し付けられセルロ
ース同士が密着すると、そこに繊維相互の圧着力が生じ
フィルム様を呈するようになるため、充分にかしめる際
の衝撃に対する耐性を有しているのである。また、本発
明にかかるセパレータはポリプロピレン不織布に比べ、
電解液の濡れ性が良く、高気密度であることからセパレ
ータを薄くすることができ、薄くなった分、電極を多く
使用することができるため、高容量化を図ることができ
る。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる電気二重層
コンデンサの各実施形態を説明する。本発明にかかる電
気二重層コンデンサは、一対の分極性電極を隔離するセ
パレータとして、セルロースを原料として湿紙を製造
し、該湿紙に存在する空隙構造を保持したまま乾燥させ
ることにより、イオンが通る経路としての微細な貫通孔
を維持するために多孔質であって、かつ、高い気密度を
有するセパレータを使用することに特徴を有する。
【0030】従来の抄紙法においても、原料としてのセ
ルロース繊維の叩解を進めていくと得られるセパレータ
の気密度は高くなるが、前記したようにJIS法CSF
の値で約200ml以下に叩解を進めて密度0.75g
/cm3以上に抄紙をすると繊維間の空隙がなくなって
しまい、セパレータには貫通孔がもはや存在しなくな
り、気密度は無限大となって実際上測定できなくなって
しまう。しかしながら、その場合であっても湿紙の状態
においては空隙構造を有する。即ち、乾燥したセパレー
タには貫通孔が存在しなくても、乾燥前の湿紙には貫通
孔が存在する。乾燥することによって、水分が蒸発し、
セルロース繊維相互の水素結合によって空隙が癒されて
貫通孔が存在しなくなるが、湿紙の状態ではどんなに叩
解の程度を進めたとしても水分が保持されている空隙が
存在するのである。例えば、JIS法CSFの値で約2
00ml以下まで叩解を進めて抄紙したとしても、湿紙
の状態ではプレスすることにより脱水することができ
る。このことは湿紙中に連続した水の流路が存在するこ
とを示しているに他ならない。本発明は乾燥時における
湿紙の空隙構造に与える水の影響を極力小さくすること
によって、換言すれば湿紙中の水分乾燥に起因する水素
結合の発生を抑制することによって、この湿紙状態の空
隙構造、即ち水の流路を保持したまま乾燥させて、微細
な貫通孔を有する多孔質で高気密度のセパレータを使用
した電気二重層コンデンサを提供するものである。
【0031】先ず、本発明は耐熱性、耐薬品性に優れた
再生産可能な天然資源であるセルロースを原料とする。
使用するセルロースそのものには限定がなく、針葉樹木
材パルプ、広葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、マニ
ラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、コットンパルプ等の天
然セルロース繊維、或はこれら天然セルロース繊維を冷
アルカリ処理して得たマーセル化パルプ、更には普通レ
ーヨン繊維、ポリノジックレーヨン繊維、有機溶剤紡糸
レーヨン繊維等の再生セルロース繊維などのいずれでも
よい。なお、使用するセルロースは洗浄・脱水・除塵な
ど公知の方法で不純物を除去しておく。
【0032】更に、より高気密度のセパレータを得るた
めには繊維径が1μm以下の微細なセルロースを原料と
する。具体的には高度に叩解したセルロース、或はマイ
クロフィブリル化セルロース(MFC)を使用する。高
度に叩解したセルロースは、基のセルロースの繊維の形
状が破壊されて、外部フィブリル化が進み、直径0.4
μm程度のフィブリルの占有率が高くなっているもので
あり、繊維径としては1μm以下のものである。なお、
本発明でいう繊維径が1μm以下の微細なセルロース
は、フィブリルの占有率が高いもの、即ちフィブリルが
繊維の主たる要素となっていればよく、フィブリルだけ
のものと共に、一部にフィブリル化されていない繊維径
1μmを越える基の繊維が残存しているものであっても
よい。
【0033】前記したようにセルロース繊維を叩解する
とセルロース繊維は1/2や1/3に段階的に開裂して
行くのではなく、直径0.4μm程度のフィブリルが繊
維の外部から段階的にひげ状に発生して行く。従って、
天然セルロース繊維を叩解或は他の手段によって、開裂
させて繊維径を小さくすることはできないのである。叩
解の程度は0.4μmのフィブリルの発生状況のことで
あり、叩解が進むことはフィブリルの比率が増加するこ
とを示している。本発明ではこのフィブリルの占有率の
高い微細な天然セルロースを原料とするものである。因
に天然セルロース繊維で繊維径の小さいものとしてエス
パルト繊維があるが、このエスパルト繊維でも繊維径は
10μm程度である。
【0034】また、この繊維径が1μm以下の微細なセ
ルロースを原料とすることによって、得られるセパレー
タの緻密性が高まり地合が均一となって内部抵抗も低減
される。従来は繊維径が1μm以下まで高度に叩解した
原料を使用すると乾燥時の水素結合によって貫通孔が存
在しなくなり、内部抵抗が極端に高くなるのである。本
発明では従来より繊維径が小さい1μm以下の繊維径の
微細なセルロースを原料としてもイオンが通る経路とし
ての貫通孔を維持した多孔質のセパレータを製造するこ
とができるため、繊維径が小さいことと、多孔質である
との相乗効果によって内部抵抗を低減することができる
のである。
【0035】これらのセルロースを繊維径が1μm以下
の微細なセルロースとするための手段の一つとして、J
IS法CSFの値で200ml以下に、或は変法CSF
の値で700ml以下まで高度に叩解を行う。通常、叩
解の程度はJIS法CSF(JIS P8121)の値
で測定される。しかしながら、本発明ではより正確に気
密度をコントロールするための叩解の程度の基準とし
て、JIS法CSFとともに、JIS法CSFの変法と
して、変法CSFにより叩解の程度を特定する。そこ
で、JIS法CSFの内容及び本発明で基準とする変法
CSFの内容について以下に説明する。
【0036】〔JIS法CSF〕JIS P8121に
規定されている測定手段である。先ず測定するパルプ3
gを水で良く離解して正確に1000mlの試料液と
し、この試料液を図7(A)に示すカナダ標準型フリー
ネステスターのロ水筒31に入れて上蓋32を閉める。
次に下蓋33を開けて、上蓋のコック34を開けると、
ロ水筒31の下部に配置された80メッシュの網35を
通じてロ水が流れ出る。このとき80メッシュの網35
上には繊維がマット状に堆積して行く。試料液はこのマ
ット状の繊維間を通過して、ロ水としては図7(B)に
示すロ水筒31の下方に位置する漏斗36に入り下部排
出口37から流出する。このとき漏斗36へ一度に多く
のロ水が入れば、ロ水は排出口37だけでなく、漏斗3
6の横に取付けた側管38からも排水される。この側管
38からの排水をメスシリンダーに受け、この排水の量
をもってCSFの値とする。なお、図7(C)は架台3
9を示すものであり、上台40にロ水筒31を載置し、
下台41に漏斗36を載置して、ロ水筒31と漏斗36
の高さと中心を合わせて測定するものである。
【0037】CSFの値は1000mlの試料液がロ水
筒31からロ水として漏斗36に一度に流入する量によ
って決定される。漏斗36に一度に多量のロ水が流入し
た場合は、下部排出口37から全量を排出することがで
きず、溜ったロ水が側管38からあふれ出ることとな
る。一方、ロ水が少しずつ流出すると全量が下部排出口
37から排出されることとなり、側管38から流出する
ことはない。この場合CSFは0mlとなる。また、叩
解の程度が浅いとマット状の繊維間を水が通過すること
ができ、ロ水の量が多く流入速度も大きいため、CSF
の値が高くなる。一方、叩解の程度が高いとマット状の
繊維間を水が通過しにくくなり、ロ水の量が減り流入速
度も小さくなるため、CSFの値が低くなるのである。
【0038】JIS法CSFではパルプの採取量を3g
と規定している。この方法は叩解度の低いパルプを想定
しており、低気密度のセパレータを抄紙するには、JI
S法CSFは叩解の程度の変化が値として判り易くて都
合が良い。しかしながら、高気密度のセパレータを抄紙
するため叩解を進めていくと、ある時点からJIS法C
SFの値が0mlとなって、叩解の進行度を把握するこ
とができなくなる。本発明の課題とする多孔質高気密度
のセパレータを得るためにはJIS法CSFで規定する
0ml前後からそれ以降の原料叩解が重要である。そこ
で、本発明では、高度に叩解を進めた原料の叩解の程度
をより正確に測定するために、JIS法CSFを基準と
して次のような変法を用いた。
【0039】〔変法CSF〕JIS P8121に規定
する方法を基本とし、パルプ量のみを3gから0.3g
に変更して測定した。採取パルプの量以外は全てJIS
法CSFと同様とした。
【0040】この変法CSFによれば、高度に叩解を進
めた原料であっても叩解の程度の差をCSFの値として
捉えることができる。このJIS法CSFによる測定値
と変法CSFによる測定値を比較検討するため、図1に
叩解を進めたときのJIS法CSFと変法CSFの値の
変化をグラフとして示すと共に、図2に縦軸に変法CS
Fの値を、横軸にJIS法CSFの値を取って、両者の
関係をグラフとして示す。図1に示すように、変法CS
Fで700mlの値は、JIS法CSFで略200ml
の値となり、変法CSFで300mlの値はJIS法C
SFでは0mlとなって、もはや叩解の程度をCSFの
値として測定することができない。また、図2に示すよ
うに叩解の浅い初期の段階、即ちJIS法CSFの値で
200ml以上の状態(200〜800ml)ではJI
S法CSFの測定値が大きく変化するのに対し変法CS
Fの値の測定値は変化が乏しい。この段階ではJIS法
CSFの方が叩解の深浅の程度を把握しやすい。逆に、
叩解が進んだ段階、即ちJIS法CSFで200ml以
下の値となると、変法CSFでの測定値の方が変化が大
きくなって捉らえやすくなる。一方、JIS法CSFの
値では0mlになった場合においても変法CSFの値で
は300mlであり、更に叩解を進めた場合JIS法C
SFでは測定不可能であるが、変法CSFでは叩解の程
度を数値として測定することができる。
【0041】変法CSFの値は図2中の換算式を用いる
ことにより、JIS法CSFの値から換算することがで
きる。なお、換算式は図2に示すように、JIS法CS
Fの値で、200ml以下の値、200〜600mlの
範囲の値、600〜800の範囲の値の3種類のゾーン
にて係数を異にしている。なお、表3においてrは相関
係数であり、JIS法CSFの値から換算式によって求
めた変法CSFの値が実際の値と一致していることを示
している。
【0042】変法CSFではパルプ量をJIS法CSF
の1/10である0.3gとすることによって、パルプ
の絶対量の減少と共に、試料液の濃度が低下することと
なり、ロ水の流入量が増加し流入速度も大きくなる。そ
のため、JIS法CSFに比較してCSFの値が高くな
るのである。例えばJIS法CSFの値で0mlまで叩
解したパルプではJIS法CSFの測定方法である3g
で測定すると、試料液の粘度が高くなり、80メッシュ
の網35の上に小量で緻密なマット状の繊維が形成され
て、ロ水の流出が止まってしまうため、それ以上に叩解
を進めたパルプのCSFの測定を行うことができなくな
る。これに対し、変法CSFの0.3gでは試料液の粘
度が低く、80メッシュの網35の上にマット状の繊維
が形成される前に一定量のロ水がロ水筒31から漏斗3
6に流入するため、側管38からあふれ出たロ水の量を
測定することができ、JIS法CSFで0ml以下に更
に叩解を進めたパルプのCSFの値を変法CSFとして
測定できるのである。
【0043】そこで、フィブリルを発生させて本発明に
おける繊維径が1μm以下の微細なセルロースとするた
めには、JIS法CSFの値で200ml以下に、或は
変法CSFの値で700ml以下まで高度に叩解を行う
必要があり、更に求める高気密度に応じて変法CSFの
値で700ml〜0mlまでの叩解を行う。
【0044】また、叩解することなく、繊維径が1μm
以下の微細なセルロースとしてセルロース繊維を高圧下
剪断力で解繊したマイクロフィブリル化セルロース(M
FC)を使用することもできる。MFCとしては商品
名:ダイセル化学株式会社製のセリッシュKY−110
Sが市販されている。更に、現在工業的に使用はされて
いないが、バクテリアセルロースを使用することもでき
る。バクテリアセルロースとはバクテリアが生産するセ
ルロースのことで、繊維径が数nm(ナノメーター)〜
数十nmである。
【0045】これら所定の叩解を行った繊維径が1μm
以下の微細なセルロース或はマイクロフィブリル化セル
ロース等からなる原料を水に分散させて、抄紙機上で抄
紙を行うことにより、湿紙を製造する。抄紙機として
は、繊維径が1μm以下の微細なセルロースであるため
長網抄紙機を用いる。なお、製造した多孔質高気密度紙
の強度向上のため叩解の浅い原料を用い円網抄紙機で抄
紙したものを抄き合せる長網円網コンビネーションマシ
ンで抄紙することも有効であるが、少なくとも1層は高
度に叩解した原料を長網抄紙機で抄紙した湿紙が含まれ
ていることが必要である。
【0046】更に、湿紙を製造する手段として抄紙機を
使用することなく、平板上に原料としてのセルロース繊
維の水系ドープ液をドクターブレード等でキャスティン
グして湿紙としての膜を形成することもできる。本発明
における湿紙はキャスティング製膜による湿膜を含むも
のである。
【0047】このようにして製造した湿紙中には、変法
CSFの値で700ml〜0mlに叩解した繊維径が1
μm以下のフィブリル化した微細なセルロースを原料と
していても、水の存在するセルロース繊維間の空隙構造
を有している。本発明はこの湿紙中の空隙構造を保持し
たまま乾燥させるものである。そのために、湿紙中の空
隙構造に保持された水を表面張力の小さい他の溶媒で置
換して乾燥させる。この溶媒置換乾燥に用いる溶媒とし
ては水と相溶性があり、表面張力の小さいものが適して
いる。一般にはメチルアルコール、エチルアルコール、
イソプロピルアルコールなどのアルコール類やアセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが適してい
る。また、置換は浸漬・プレス脱液あるいは噴霧・脱液
等の方法で行う。目的とする気密度により、置換操作は
1回もしくは複数回行う。溶媒置換は抄紙機上で行って
もよいし、湿紙のまま巻き取り別途行ってもよい。な
お、製造された湿紙は溶媒置換の前に予め、プレスロー
ルにより余分な水分を脱水しておくとよい。
【0048】この溶媒置換に際して留意すべきことは乾
燥前の、即ち乾燥により繊維間に水素結合が形成する前
に溶媒置換により水を取り除くことである。特に叩解を
高度に進めた原料を使って抄紙し、フィルム状の外観を
呈するような密度が0.75g/cm3以上の高密度の
セパレータは一度乾紙になるとセルロース間の水素結合
は強固であり、水に浸漬しても膨潤はするが、抄紙機上
の湿紙の状態まで戻すことは困難である。乾紙を水に浸
漬し、その後溶媒置換乾燥したものは未乾燥の湿紙、即
ち抄紙機上で溶媒置換、あるいは湿紙のまま巻き取り別
の装置で溶媒置換して乾燥したものに比べ内部抵抗が高
くなってしまう。そのため、抄紙機から湿紙のまま巻き
取り別途に溶媒置換を行う場合には特に乾燥により繊維
間に水素結合が形成しない十分な水分を含んでおく必要
がある。
【0049】上記した溶媒置換乾燥に代えて、凍結乾燥
を採用することもできる。この凍結乾燥は湿紙を凍結さ
せた後に、減圧下の条件で凍結した水分を昇華させて乾
燥させる方法である。なお、本発明において凍結後、減
圧下で凍結した氷を昇華させるのは、凍結した水分が再
度融け、水の状態になった後に乾燥したのでは水の影響
によるセルロース繊維相互の水素結合を防止することが
できず湿紙の空隙構造を維持できないためである。
【0050】溶媒置換された湿紙中、或は凍結乾燥した
湿紙中に残っている溶媒及び水は乾燥することにより取
り除く。乾燥は従来のドラム式ドライヤーでもよいし、
送風や赤外線などを用いることもできる。
【0051】更に本発明では湿紙を製造するのに水を当
初から使用せずに、繊維径が1μm以下の微細なセルロ
ースを水より表面張力の小さい有機溶剤に分散させて、
抄紙又はキャスティング製膜により湿紙を製造し、該湿
紙中の有機溶剤を揮発・乾燥させることにより、湿紙に
存在する空隙構造を保持したまま乾燥させるようにして
もよい。
【0052】また、本発明にかかる多孔質高気密度のセ
パレータにはセルロース繊維にホウ酸アルミニウム、チ
タン酸カリウム又はガラス繊維等の無機フィラーを添加
することもできる。これは無機フィラーとセルロースは
もともと水が介在しても水素結合を形成せず、湿紙中の
空隙が大きいため、電気特性を改善することができるた
めである。
【0053】以上説明した原料、湿紙製造方法、乾燥方
法、セパレータの厚さ、密度等の組合わせにより気密度
をコントロールして多孔質高気密度のセパレータを製造
することができる。得られた多孔質高気密度のセパレー
タは湿紙の状態のときの空隙構造をそのまま維持してい
るため、微細な貫通孔を有しており、原料となるセルロ
ース繊維の叩解の程度等に応じて高気密度を有する。ま
た、原料としてのセルロース繊維の叩解の程度をJIS
法CSFで200ml以下、変法CSFの値で700〜
0mlとしても、叩解の程度に応じて微細な貫通孔を維
持しており、気密度が無限大となることはない。即ち、
従来製造できなかった厚さが100μm以下の紙で、1
000秒/100ccの気密度を有する多孔質高気密度
のセパレータを得ることができた。
【0054】次に本発明にかかる多孔質高気密度のセパ
レータの製造方法について説明する。先ず、原料となる
セルロース繊維をビーターあるいはダブルディスクリフ
ァイナー等の製紙用叩解機で所定のJIS法CSF又は
変法CSFの値まで叩解し、これを原料紙料2として図
4に示すように長網インレット1に収納し、長網インレ
ット1の下部で回転する長網ワイヤー3の表面に供給し
て、長網ワイヤー3の表面に連続した湿紙4を形成す
る。形成された湿紙4はウェットフェルト5に移送され
て搬送され、プレスロール6にて過剰の水分が取り除か
れる。その後所定の溶媒8を収納した第1の溶媒バット
7に湿紙4を浸漬して、湿紙4中の水分と溶媒8を置換
し、その後プレスロール9により余分な溶媒8を取り除
いて、再び溶媒8が収納された第2の溶媒バット10に
湿紙4を浸漬して、湿紙4中に残存する水分と溶媒8を
置換する。その後プレスロール11により余分な溶媒8
を取り除くと共に、ドライフェルト12に移送されて搬
送され、蒸気あるいは熱媒体によって加熱された円筒形
状のドライヤー13の外表面に接触させて乾燥させて、
巻取ロールに巻き取られて多孔質高気密度のセパレータ
14が製造される。この乾燥工程において、セルロース
繊維を水素結合させて空隙構造を癒してしまう水分が存
在せず、溶媒に置換されているため、乾燥後にも湿紙の
空隙構造がそのまま維持された多孔質で高気密度のセパ
レータを製造することができる。この図4の例は長網抄
紙機で抄紙後に抄紙機上で溶媒置換し、乾燥させて巻き
取る例である。
【0055】図5は湿紙4を溶媒に浸漬することに代え
て、湿紙4上に溶媒8を噴霧することによって、湿紙4
中の水分と溶媒を置換するものである。前記図4と同一
構成の部分については同一の符号を付して説明を省略す
る。なお、図5は図4と同様の長網抄紙機で抄紙された
湿紙4を乾燥することなく巻き取り(ウエットワインデ
ィング)、長網抄紙機とは別の装置で溶媒置換する例を
示している。即ち、ロール状に巻き取られた湿紙4はウ
ェットフェルト5に移送されて搬送され、プレスロール
6で過剰な水分が取り除かれ、その後湿紙4上に溶媒8
が第1の溶媒噴霧器16により噴霧されて、湿紙4中の
水分と溶媒8が置換される。噴霧された溶媒8は吸引脱
液装置17によって吸引脱液されると共に、湿紙4から
過剰な溶媒がプレスロール9にて取り除かれ、再び溶媒
8が第2の溶媒噴霧器液18により噴霧され、湿紙4中
に残存する水分と溶媒8が置換される。噴霧された溶媒
8は吸引脱液装置19によって吸引脱液されると共に、
その後湿紙4から過剰な溶媒がプレスロール11にて取
り除かれる。以後は図4の例と同様である。このように
溶媒置換は抄紙機上で行ってもよいし、又別途行っても
よい。なお、図4における浸漬による溶媒置換、及び図
5における噴霧による溶媒置換は2回行ったが、その回
数は溶媒の種類や、原料、製造された湿紙等に必要に応
じて選択するものである。
【0056】次に図6は溶媒置換に代えて、凍結乾燥に
よって湿紙中の空隙構造を保持したまま乾燥する例を示
すものである。先ず湿紙4を冷凍庫21内にて−70℃
の温度で凍結させて凍結湿紙4aとする。次に凍結湿紙
4aを凍結乾燥器22内に収納し、凍結乾燥器22内の
空気を脱気して減圧する。減圧によって凍結湿紙4a中
の凍結した水分が昇華して脱水されて、多孔質高気密度
のセパレータ14aが製造される。尚、昇華を促進する
ために凍結乾燥器22内に昇温棚23を設置して、該昇
温棚23に凍結湿紙4aを載置することが好ましい。な
お、この際、凍結した氷が水に戻ることなく、氷から昇
華することで乾燥することが肝要である。
【0057】従来の抄紙法では本発明に規定するほど叩
解した原料を抄紙し乾燥する場合、多筒式のドライヤー
が必要であるが、本発明のように湿紙中の水分を溶媒置
換したものを乾燥する場合は、単筒式のドライヤーで十
分である。これは従来の抄紙法では乾燥時の水分が蒸発
する際、メニスカスの後退と同時に繊維を引きつけ合
い、これがヒジワ(乾燥ジワ)となるため多筒式ドライ
ヤーにより徐々に乾燥する必要があるからである。本発
明の場合、乾燥時には、ヒジワ(乾燥ジワ)の原因とな
る水分がないため、又使用した溶媒が容易に飛散するた
め単筒式のドライヤーにより乾燥を行うことができる。
更に、ドライヤーも従来のドラム式ドライヤーに限定す
ることなく、赤外線ドライヤーや送風ドライヤーなど各
種の乾燥方法が利用できる。
【0058】このようにして得られるセパレータの厚さ
は20〜100μmの範囲が好ましい。20μm未満で
は機械的強度が低下して取扱が難しく、内部短絡の危険
があり、100μmを超えると小型化ができず、厚くな
る分電気抵抗も上昇するためである。また、コイン型の
電気二重層コンデンサではセパレータにある程度の厚さ
がないとプレス成型時にショートする確率が高くなるた
め、コイン型の電気二重層コンデンサでは100μm迄
の厚さが要求されている。一方、密度については特に制
限はないが、実用的には密度0.3〜0.6g/cm3
が好ましい。0.3g/cm3未満では引張強度が極端
に低下し、電気二重層コンデンサ用のセパレータとして
実用性に欠ける。また、本発明によるセパレータは空隙
構造が保持されるため実質的に密度0.6g/cm3
超えることがない。なお、実用上セパレータの厚さが制
限される場合にはキャレンダー加工を行うことによって
厚さを薄くし、密度を0.6〜0.8g/cm3にする
ことも好ましい。
【0059】
【実施例】そこで、本発明にかかる多孔質高気密度のセ
パレータ及び該セパレータを一対の分極性電極の間に介
在させて製作したコイン型の電気二重層コンデンサ及び
捲回型の電気二重層コンデンサの具体的な各種実施例
と、比較のために製造した従来品の比較例を示す。電気
二重層コンデンサの製作方法及び各実施例と比較例の各
測定値の測定方法は次の通りである。なお、JIS法C
SF及び変法CSFの測定法は前記した通りである。
【0060】(1)コイン型の電気二重層コンデンサの
製作方法 一対の分極性電極(比表面積約2500m2/gの活性
炭繊維からなる125g/m2の布状物質,6mmφ)
の間に平行して介在させたセパレータに電解液を含浸さ
せた後に外装材を兼ねる金属ケースと金属蓋内に収納
し、ガスケットを介してかしめることによって密封して
コイン型の電気二重層コンデンサを製作した。なお、集
電性向上のため、分極性電極の金属ケースに当る面には
アルミニウム層を形成した。
【0061】(2)捲回型の電気二重層コンデンサの製
作方法 一対の分極性電極(アルミネットに活性炭・カーボンブ
ラックを担持させたもの)の間にセパレータを介在させ
て円柱状に素子巻きしたものに電解液を含浸させた後に
有底円筒状のアルミケースに収納し、かつ、アルミケー
スの開口部をゴム封口体で密封して捲回型の電気二重層
コンデンサを製作した。
【0062】(3)セパレータの厚さ、密度、引張強度 厚さ、密度及び引張強度は旧JIS C2301(電解
コンデンサ紙)に規定された方法で測定した。
【0063】(4)セパレータの気密度 気密度に関してはJIS C2111(電気絶縁紙試験
方法)に規定する“12.1 気密度”の項に従い、B
型試験器(ガーレーデンソメータ)によって測定した。
但し穴の部分の直径が6mmであるアダプターを使用し
た。
【0064】(5) 電気二重層コンデンサの評価方法 ショート不良率は組立後ショートした個数を全体の個数
に占める割合で表した。なお、測定個数は100個とし
た。また、コンデンサの初期特性として静電容量C,内
部抵抗Z,漏れ電流LCを測定した。
【0065】[実施例1〜6]実施例1〜5はマニラ麻
パルプをダブルディスクリファイナーを用いて変法CS
Fの値で700ml〜50mlまで叩解の程度を段階的
に変化させた原料を水に分散させて、長網抄紙機により
湿紙を製造し、該湿紙に図5に示すようにアセトンを噴
霧して湿紙中の水分とアセトンとを置換する作業を2度
繰り返した後に、ドライヤーでアセトン及び残渣として
の水を乾燥させて、実施例1〜5の多孔質高気密度のセ
パレータを得た。実施例6は実施例5と同一の原料で同
様に製造した湿紙を、実施例1〜5の溶媒置換乾燥に代
えて、図6に示す凍結乾燥法によって湿紙を凍結させた
後に、減圧下の条件で凍結した水分を昇華させて乾燥さ
せ、残った水をドライヤーで乾燥させたものである。こ
の実施例1〜6の厚さ、密度、気密度等を表1に示す。
また、実施例1〜5の叩解の程度と気密度との関係をグ
ラフ化したものを図3に示す。
【0066】
【表1】
【0067】表1に示すように、実施例1〜5は厚さ5
0μm前後、密度0.500g/cm3前後であって、
叩解が進むにつれ、得られるセパレータが緻密となって
1000秒/100ccの高気密度を実現している。し
かし、叩解が高度に進んでも気密度は実際上測定できな
いほど大きくなることはない。実施例1は変法CSFの
値で700ml(JIS法CSFで200ml)まで叩
解した原料を使用したものであって、その気密度は11
00秒/100ccであり、外観は不透明感が強く表わ
れていた。これは湿紙中に存在した空隙構造がそのまま
紙層内に残存しているため、光を乱反射するためであ
る。変法CSFの値700ml(JIS法CSFで20
0ml)まで叩解を進めると基のセルロースの繊維の形
状が破壊されて、外部フィブリル化が進み、直径0.4
μm程度のフィブリルの占有率が高くなっているもので
あり、1000秒/100cc以上の気密度を実現する
ためには、基のセルロース繊維の形状が無くなるまで、
即ち変法CSFの値700ml(JIS法CSFで20
0ml)まで叩解する必要があることが判る。
【0068】また、実施例5は変法CSFの値で50m
l(JIS法CSFでは測定不可)まで叩解しており、
気密度は7000秒/100ccである。よって、従来
気密度が測定不可能な無限大となるJIS法CSFの値
で200ml以下まで叩解を進めても、イオンが通る経
路としての貫通孔が存在していることが判る。このよう
に本発明によれば、叩解の程度を進めても多孔質を維持
することができて、気密度が無限大となることがないた
め、1000秒/100cc以上の気密度をコントロー
ルすることができる。更に高気密度のセパレータが要求
されれば原料叩解を進めたり、厚さを厚くしたり、密度
を高くしたりすることでイオンが通る経路としての貫通
孔を維持して気密度を上げたセパレータを容易に製造す
ることが可能である。なお、叩解が進むにつれセパレー
タに不透明感が強く表れてくる。これは叩解が進むにつ
れ繊維間の空隙が小さくなり光の散乱が多くなり不透明
感が強くなるからと考えられる。
【0069】図3は実施例1〜5の叩解の程度と気密度
との関係をグラフ化したものであり、横軸が叩解の程度
を、左軸が変法CSFの値を、右軸が気密度を示してい
る。例えば、変法CSFの値のグラフにおいて、実施例
1は左軸に示すように変法CSFの値が700mlであ
り、気密度を示すグラフにおいて実施例1は右軸に示す
ように1100秒/100ccである。図に示すよう
に、叩解が進むにつれ変法CSFの値が下がっている。
一方、気密度は叩解が進むにつれ高くなることが判る。
【0070】また、本発明によれば叩解を進めるに連れ
て、基のセルロースの繊維の形状が破壊されて、外部フ
ィブリル化が進み、直径0.4μm程度のフィブリルの
占有率が高くなって、繊維径が小さくなって行き、得ら
れるセパレータの緻密性が高まり地合が均一となるとと
もに、イオンが通る経路としての微細な貫通孔を維持し
た多孔質のセパレータを得ることができる。
【0071】実施例6は溶媒置換乾燥に代えて凍結乾燥
を行った例であるが、この実施例6も外観は不透明感が
あって、光を乱反射しており、紙層内に多数の空隙を有
していることが判る。この実施例6は同一原料を使用し
た実施例5に対して、気密度が17600秒/100c
cと略2.5倍向上している。これは通常乾燥に比べる
と湿紙状態の空隙が保持されているものの、乾燥時に水
が存在することから繊維同志の引き付けが起ったものと
考えられる。更に高気密度のセパレータが要求されれば
原料叩解を進めたり、厚さを厚くしたり、密度を高くし
たりすることにより容易に製造することができる。
【0072】次に電気二重層コンデンサを製作した結果
について実施例及び比較例に基づいて説明する。
【0073】[実施例7→コイン型の電気二重層コンデ
ンサ]実施例7は木材パルプ(NUKP:針葉樹未晒ク
ラフトパルプ)をダブルディスクリファイナーを用いて
変法CSFの値で100mlまで叩解したものを水に分
散させて、長網抄紙機により湿紙を抄紙し、プレスロー
ルにて過剰な水分を取り除いた後にロール状に巻き取っ
た。このロール状の湿紙を繰り出して図4に示すよう
に、エチルアルコールに浸漬して湿紙中の水分とエチル
アルコールとを置換する作業を2度繰り返した後に、ド
ライヤーでエチルアルコール及び残渣としての水を乾燥
させて、厚さ40.6μm、密度0.398g/cm3
のセパレータを得た。この実施例7のセパレータを使用
して前記した内容のコイン型の電気二重層コンデンサを
製作した。
【0074】[比較例1,2,3→コイン型の電気二重
層コンデンサ]比較例1,2は実施例8と同様の木材パ
ルプ(NUKP:針葉樹未晒クラフトパルプ)を原料と
して、比較例1は実施例7と同様に変法CSFの値で1
00mlまで叩解した状態で抄紙し、又比較例2は変法
CSFの値で800mlとほとんど叩解しない状態で抄
紙し、共に湿紙中の水分をエチルアルコールで溶媒置換
することなく、通常の抄紙法におけるドライヤーで乾燥
させたものである。比較例1は厚さ21.3μm、密度
0.751g/cm3となり、比較例2は実施例7と略
同一の厚さ40.4μm、密度0.405g/cm3
なった。また、比較例3は従来のコイン型の電気二重層
コンデンサのセパレータとして使用されているポリプロ
ピレン不織布であり、厚さ170μm、密度0.302
g/cm3のものである。この比較例1,2,3のセパ
レータを使用して実施例8と同様のコイン型の電気二重
層コンデンサを製作した。これら実施例7及び比較例
1,2,3のセパレータの厚さ、密度、気密度等及び得
られた電気二重層コンデンサの初期特性として静電容量
C,内部抵抗Z,漏れ電流LCを表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】実施例7は原料セルロースとして未晒しク
ラフトパルプを使用しているため、本来ならば茶色の外
観を呈するはずであるが、実際の外観は色目も白く、不
透明感があった。このように白く不透明感があるのは溶
媒置換乾燥を行っているために、湿紙中に存在した空隙
構造がそのまま紙層内に残存しているため、光を乱反射
するためである。実施例7の気密度は2200秒/10
0ccであって、極めて緻密ではあるが、空気が通り抜
けることから貫通孔が存在していることが分る。よっ
て、高い気密度であってもイオンが通る経路が確保され
ている。このように実施例7は従来製造できなかった1
000秒/100cc以上の気密度を実現している。そ
の結果得られた電気二重層コンデンサのショート不良率
は0%である。しかも、厚さは40.6μmであり、密
度も0.398g/cm3と変法CSFの値で100m
lまで叩解しているにもかかわらず、比較例1より格段
に低密度となっている。比較例1は溶媒置換を行ってい
ないため、実施例7と同じ湿紙から製造したにもかかわ
らず、厚さが21.3μmであって、実施例7より薄く
なり、密度も0.751g/cm3と高くなって、色は
茶色でフィルム状になっている。また、貫通孔が存在せ
ず気密度も無限大となって測定することができない。そ
の結果ショート不良率は0%であるが、内部抵抗が高過
ぎて電気二重層コンデンサを製作することができなかっ
た。実施例7と比較例1は原料調成が同じ原料である
が、抄紙された紙の厚さ、密度には大きな差がある。こ
れは溶媒置換を行わなかった比較例1が乾燥の際、表面
張力の大きい水が蒸発し繊維同志をひき付け合い、繊維
間に強固な結合ができたのに対し、溶媒置換した実施例
7は水の蒸発に伴う繊維間のひき付け合いが弱く、密度
の低い紙となったためである。よって、実施例7によれ
ば、叩解の程度を進めた原料を使用しても貫通孔を有す
る多孔質で低密度であるとともに、緻密性を有して高気
密度のセパレータを得ることができている。
【0077】そこで、実施例7と略同じ厚さと密度であ
る比較例2を実施例7を比較すると、比較例2の気密度
は1.6秒/100mlであって、貫通孔は存在する
が、緻密性がないことが判る。よって、目的とする気密
度を達成することができない。これは表面張力の大きい
水が乾燥時に蒸発することにより、繊維間を引合うが、
原料叩解が浅いためフィブリル化が進んでおらず繊維径
が大きく、繊維同志の密着度が低いためである。その結
果活性炭の阻止ができず100%ショートしている。ま
た、ショート不良率が高過ぎるため電気二重層コンデン
サを製作することができなかった。
【0078】比較例3は従来のポリプロピレン不織布を
使用したセパレータであるが、厚さを170μmと厚く
したにもかかわらず、気密度が15秒/100ccであ
るため、ショート不良率が1%発生している。これに対
し、実施例7は比較例3の1/4以下の厚さにもかかわ
らず、気密度は2200秒/100ccと極めて緻密で
あるため、ショート不良率は0%であって、かつ、静電
容量も比較例3より良い2.25Fの値を示しており、
内部抵抗も6.1Ωと比較例3よりも低下している。ま
た、漏れ電流も110μAと改善が見られる。
【0079】従来、コイン型の電気二重層コンデンサの
セパレータとしてメルトブロー方式により製造したポリ
プロピレン不織布が使用されているのはかしめる際の衝
撃に対する耐性があるためである。即ち、ポリプロピレ
ン不織布は溶融ポリマーの紡糸液がランダムウエブとし
て集積され、繊維が相互に結合することなく絡み合った
状態であるため、この衝撃を吸収して耐えられる伸び性
や弾性を有するためである。このポリプロピレン不織布
と同様に、本発明によるセルロースを原料とするセパレ
ータは、高度に叩解したセルロースが湿紙中の水分乾燥
に起因しては水素結合を形成することがなく、セルロー
ス繊維が相互に絡み合った状態であり柔軟性があるた
め、圧力が加わると空隙が容易に減少して衝撃を吸収す
ることができる。また、押し付けられセルロース同志が
密着すると、そこに繊維相互の圧着力が生じフィルム様
を呈するようになるため、充分にかしめる際の衝撃に対
する耐性を有している。そのため、コイン型の電気二重
層コンデンサにおいてもセルロースを原料とするセパレ
ータを使用することができる。また、本発明にかかるセ
パレータはセルロースを原料としているため、従来のポ
リプロピレン不織布に比べ、電解液の濡れ性が良く、高
気密度であることからセパレータを薄くすることがで
き、薄くなった分、電極を多く使用することができるた
め、高容量化を図ることができる。このように本発明は
従来のポリプロピレン不織布からなるセパレータを用い
た電気二重層コンデンサの特性を落とすことなく、ショ
ート不良率を低減することができのである。
【0080】[実施例8,9→捲回型の電気二重層コン
デンサ]実施例7はマニラ麻パルプをダブルディスクリ
ファイナーを用いて変法CSFの値で50mlまで高度
に叩解したものを水に分散させて、長網抄紙機により湿
紙を抄紙し、プレスロールにて過剰な水分を取り除いた
後にロール状に巻き取った。このロール状の湿紙を繰り
出して図4に示すように、エチルアルコールに浸漬して
湿紙中の水分とエチルアルコールとを置換する作業を2
度繰り返した後に、ドライヤーでエチルアルコール及び
残渣としての水を乾燥させて、厚さ40.2μm、密度
0.445g/cm3のセパレータを得た。実施例9は
実施例8と同一の原料の調成を行った後、無機フィラー
であるホウ酸アルミニウムを10重量%添加して同一の
製造方法により得た厚さ40.8μm、密度0.440
g/cm3のセパレータである。なお、ホウ酸アルミニ
ウムは直径が1μm以下のウイスカーを使用した。この
実施例8,9のセパレータを使用して前記した内容の捲
回型の電気二重層コンデンサを製作した。
【0081】[比較例4→捲回型の電気二重層コンデン
サ]比較例4は従来より捲回型の電気二重層コンデンサ
のセパレータとして使用されているマニラ麻パルプ75
重量%とガラス繊維25重量%を混抄してなる厚さ7
0.1μm、密度0.453g/cm3の混抄紙をセパ
レータとして使用し、前記した内容の捲回型の電気二重
層コンデンサを製作したものである。これら実施例8,
9及び比較例4のセパレータの厚さ、密度、気密度等及
び得られた電気二重層コンデンサの初期特性として静電
容量C,内部抵抗Z,漏れ電流LCを表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】実施例8は厚さ40.2μmと比較例4の
厚さ70.1μmより大幅に薄いにもかかわらず、気密
度は比較例4が70秒/100ccであるのに対し、実
施例8は4000秒/100ccと極めて気密度が高
く、かつ、極めて緻密ではあるが、空気が通り抜けるこ
とから貫通孔が存在していることが分る。その結果、比
較例4が1%のショート不良率があるのに対して実施例
8は0%である。しかも内部抵抗も比較例4の0.56
Ωに対して、0.48Ωと改善されており、ショート不
良率と内部抵抗の双方を同時に改善すると共に、セパレ
ータの厚さを薄くすることができるため、捲回された素
子そのものが小さくなって電気二重層コンデンサそのも
のを小型化することができる。更に、静電容量、洩れ電
流においても比較例4よりも良い値を示している。
【0084】実施例9は気密度3200秒/100cc
と極めて緻密ではあるが、実施例8には及ばない。これ
は無機フィラーを混抄したため、湿紙状態での無機フィ
ラーとパルプ繊維の引き付けが弱かったためと考えられ
る。しかし、無機フィラーを混抄した分だけ更に内部抵
抗が0.43Ωと改善されている。
【0085】
【発明の効果】以上詳細に説明した如く、本発明によれ
ば湿紙の状態においてセルロース繊維間の空隙構造に保
持された水を溶媒置換又は凍結乾燥によって乾燥し、或
はセルロース繊維を有機溶媒に分散させて抄紙すること
により湿紙を製造し、湿紙中の有機溶媒を揮発させるこ
とにより乾燥させるため、従来の抄紙法のように湿紙か
らの乾燥工程で水が蒸発するときに隣同志の繊維を強力
に引き付けて水素結合により密着することがない。即
ち、水素結合に関与する水を他の溶媒に置換すること等
によって乾燥時のフィブリル間の水素結合を阻害するこ
とができる。そのため、繊維径が1μm以下の微細なセ
ルロース繊維を原料として、高気密度であって多孔質の
セパレータを、厚さを厚くすることなく得ることができ
る。具体的には厚さが100μm以下、気密度が100
0秒/100cc以上の多孔質高気密度のセパレータを
得ることができる。即ち、本発明にかかる多孔質高気密
度のセパレータは叩解の程度を進めた原料を使用して
も、貫通孔が存在するため、低密度であるとともに、緻
密性を有して気密度が高いものである。外観的にも白色
で不透明感があり、このことは紙中に多くの空隙を有し
ていることを示している。
【0086】そのため、ショート不良率を低減するため
に高い気密度を有し、かつ、内部抵抗を低減するために
イオンが通る経路としての貫通孔を維持してイオンの通
過に対する抵抗も小さい多孔質のセパレータを得ること
ができる。この結果、近年用途が拡大しつつある電気二
重層コンデンサの信頼性向上、普及促進を図ることがで
きる。また、従来より大幅に薄いセパレータを使用して
もショート不良率を上げることなく、更に従来の電気二
重層コンデンサの特性を改善することができて、電気二
重層コンデンサの小型化を実現することができる。
【0087】更に、従来かしめる際の衝撃に対する耐性
が不足するために、セルロースを原料とするセパレータ
を使用することができなかったコイン型の電気二重層コ
ンデンサにおいても、本発明にかかるセパレータは柔軟
性があるために従来のポリプロピレン不織布に代えてセ
パレータとして使用することができる。即ち、本発明に
よるセルロースを原料とするセパレータは、高度に叩解
したセルロースが湿紙中の水分乾燥に起因しては水素結
合を形成することがなく、セルロース繊維が相互に絡み
合った状態であり柔軟性があるため、圧力が加わると空
隙が容易に減少して衝撃を吸収することができる。ま
た、押し付けられセルロース同志が密着すると、そこに
繊維相互の圧着力が生じフィルム様を呈するようになる
ため、充分にかしめる際の衝撃に対する耐性を有してい
る。また、本発明にかかるセパレータはポリプロピレン
不織布に比べ、電解液の濡れ性が良く、高気密度である
ことからセパレータを薄くすることができ、薄くなった
分、電極を多く使用することができるため、高容量化を
図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における変法CSFとJIS法CSFと
の関係を示すグラフ。
【図2】本発明における変法CSFとJIS法CSFと
の関係を示すグラフ。
【図3】変法CSFの値と気密度との関係を示すグラ
フ。
【図4】本発明にかかるセパレータの溶媒置換による製
造方法の一例を示す説明図。
【図5】本発明にかかるセパレータの溶媒置換による製
造方法の他例を示す説明図。
【図6】本発明にかかるセパレータの凍結乾燥による製
造方法を示す説明図。
【図7】叩解度の測定装置のロ水筒を示す説明図
(A)、漏斗を示す説明図(B)、架台を示す説明図
(C)。
【符号の説明】
1…長網インレット 2…原料紙料 3…長網ワイヤー 4…湿紙 4a…凍結湿紙 5…ウェットフェルト 6,9,11…プレスロール 7…第1の溶媒バット 8…溶媒 10…第2の溶媒バット 12…ドライフェルト 13…ドライヤー 14,14a…多孔質高気密度紙 16…第1の溶媒噴霧器 17…第1の吸引脱液装置 18…第2の溶媒噴霧器 19…第2の吸引脱液装置 21…冷凍庫 22…凍結乾燥器 23…昇温棚

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の分極性電極をセパレータによって
    隔離してなる電気二重層コンデンサにおいて、前記セパ
    レータはセルロースを原料として湿紙を製造し、該湿紙
    に存在する空隙構造を保持したまま乾燥させたことを特
    徴とする電気二重層コンデンサ。
  2. 【請求項2】 一対の分極性電極をセパレータによって
    隔離してなる電気二重層コンデンサにおいて、前記セパ
    レータはセルロースを原料として湿紙を製造し、該湿紙
    に存在する空隙構造を保持したまま乾燥させることによ
    り、微細な貫通孔を有することを特徴とする電気二重層
    コンデンサ。
  3. 【請求項3】 原料を水に分散させて抄紙することによ
    り湿紙を製造する請求項1又は2記載の電気二重層コン
    デンサ。
  4. 【請求項4】 原料を水より表面張力の小さい有機溶媒
    に分散させて抄紙することにより湿紙を製造する請求項
    1又は2記載の電気二重層コンデンサ。
  5. 【請求項5】 湿紙中の水分を水と相溶性のある表面張
    力の小さい溶媒と置換することにより、湿紙の状態にお
    いて空隙構造に存在する水を空隙を癒すことなく乾燥さ
    せる請求項1,2又は3記載の電気二重層コンデンサ。
  6. 【請求項6】 湿紙中の水分を凍結乾燥させることによ
    り、湿紙に存在する空隙構造を癒すことなく乾燥させる
    請求項1,2又は3記載の電気二重層コンデンサ。
  7. 【請求項7】 湿紙中の有機溶媒を揮発させることによ
    り、湿紙の状態において空隙構造に存在する水を空隙を
    癒すことなく乾燥させる請求項4記載の電気二重層コン
    デンサ。
  8. 【請求項8】 抄紙に代えて、原料をキャスティング製
    膜することにより湿紙を製造する請求項3,4,5,6
    又は7記載の電気二重層コンデンサ。
  9. 【請求項9】 繊維径が1μm以下の微細なセルロース
    を原料として湿紙を製造する請求項1,2,3,4,
    5,6,7又は8記載の電気二重層コンデンサ。
  10. 【請求項10】 微細なセルロースとしてセルロース繊
    維をJIS法CSFの値で200ml以下に叩解したセ
    ルロースを使用する請求項9記載の電気二重層コンデン
    サ(但し、JIS法CSFの値はJIS P8121の
    規定により測定した値とする)。
  11. 【請求項11】 微細なセルロースとしてセルロース繊
    維を変法CSFの値で700ml以下に叩解したセルロ
    ースを使用する請求項9記載の電気二重層コンデンサ
    (但し、変法CSFの値はJIS P8121に規定す
    る測定法において、試料3gを試料0.3gとして測定
    した値とする)。
  12. 【請求項12】 微細なセルロースとしてセルロース繊
    維を高圧下剪断力で解繊したマイクロフィブリル化セル
    ロースを使用する請求項9記載の電気二重層コンデン
    サ。
  13. 【請求項13】 湿紙に無機フィラーを混抄する請求項
    1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11又は
    12記載の電気二重層コンデンサ。
  14. 【請求項14】 無機フィラーとしてホウ酸アルミニウ
    ム、チタン酸カリウム又はガラス繊維を使用する請求項
    13記載の電気二重層コンデンサ。
  15. 【請求項15】 得られたセパレータは厚さが100μ
    m以下、気密度が1000秒/100cc以上である請
    求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,1
    1,12,13又は14記載の電気二重層コンデンサ。
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