JPH10237659A - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents

成膜方法及び成膜装置

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JPH10237659A
JPH10237659A JP4562397A JP4562397A JPH10237659A JP H10237659 A JPH10237659 A JP H10237659A JP 4562397 A JP4562397 A JP 4562397A JP 4562397 A JP4562397 A JP 4562397A JP H10237659 A JPH10237659 A JP H10237659A
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JP
Japan
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gas
reaction chamber
film
film forming
substrate
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Application number
JP4562397A
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English (en)
Inventor
Takahiro Kawana
隆宏 川名
Ryoichi Hiratsuka
亮一 平塚
Seiichi Onodera
誠一 小野寺
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 反応室の周辺部(例えば、反応管の周壁部
分)に堆積物が析出するのを防止して、長時間にわたっ
て成膜を実施することができる薄膜(例えばカーボン
膜)の成膜方法、及びその実施に使用できる成膜装置を
提供すること。 【解決手段】 反応室3内で成膜物質を分解し(プラズ
マ化など)、この反応室の開口部14に対向して配置さ
れた基体(例えば磁気記録媒体10)上にカーボン膜な
どの薄膜を形成するに際し、開口部14に近接して設け
られたガス導入口6から酸素ガス1を7A及び7Bとし
て導入することによって、反応室3の周壁端面への堆積
物(例えばポリエチレン)の析出を防止しながら、基体
(例えば磁気記録媒体)上に薄膜(例えばDLC膜)を
形成する成膜方法。成膜物質を分解する反応室3と、こ
の反応室3の開口部14に近接して設けられたガス導入
口6とを有し、反応室3の周壁端面に対しガス導入口6
から酸素ガス7A及び7Bが導入されるように構成され
た成膜装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成膜方法、及びそ
の実施の際に使用できる成膜装置、例えばCVD法(化
学的気相成長法)による炭素保護膜の成膜方法及びその
CVD装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録
媒体は、例えばオ−ディオ機器、ビデオ機器、コンピュ
−タ等に用いられ、その需要は著しく伸びてきている。
【0003】従来より、磁気記録媒体としては、非磁性
支持体上に酸化物磁性粉末又は合金磁性粉末等の粉末磁
性材料を、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリエ
ステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等の有機
バインダー中に分散せしめた磁性塗料を塗布、乾燥する
ことにより作成された、いわゆる塗布型の磁気記録媒体
が広く使用されている。
【0004】これに対して、高密度磁気記録への要求の
高まりと共に、Co−Ni合金、Co−Cr合金、Co
−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段
(真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティン
グ法等のいわゆるPVD技術(物理的蒸着法:Physical
Vapor Deposition )によってポリエステルフィルムや
ポリアミド、ポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に
直接被着した、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体
が提案され、注目を集めている。
【0005】この金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は、保
磁力や角型比に優れ、磁性層の厚みを極めて薄くできる
ため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さく、ま
た、短波長での電磁変換特性に優れるばかりでなく、磁
性層中に非磁性材料であるバインダーを混入する必要が
ないために磁性材料の充填密度を高めることができるな
ど、数々の利点を有している。
【0006】即ち、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は、
電磁変換特性及び磁気特性的な優位性のゆえに、高密度
磁気記録の主流になると考えられている。
【0007】さらに、この種の磁気記録媒体の電磁変換
特性を向上させ、より大きな出力を得ることができるよ
うにするために、磁気記録媒体の磁性層を形成するに際
し、磁性層を斜めに蒸着する、いわゆる斜方蒸着が提案
され、実用化されている。
【0008】ところで、この種の磁気記録媒体では、一
層の高密度記録化を目的として、スペーシング損失を少
なくするために媒体が平滑化される傾向にある。しか
し、磁性層表面が平滑であると、磁気ヘッドやガイドロ
ーラー等の摺動部材に対する実質的な接触面積が大きく
なり、従って、例えば媒体と磁気ヘッドとの間の摩擦力
が大きくなって、凝着現象(いわゆる張り付き)が起き
易く、走行性や耐久性に欠けるなど、媒体に生ずる剪断
応力は大きくなり、問題点が多い。
【0009】例えば、8ミリビデオデッキに挿入された
8ミリテープは、10個以上のガイドピンを通って、ド
ラムに巻き付けられる。その際、ピンチローラーとキャ
プスタンによってテープテンションとテープ走行速度は
一定に保たれていて、テンションは約20g、走行速度
は約0.5cm/sである。
【0010】この走行系において、テープの磁性層はス
テンレス製の固定されたガイドピンと接触する構造にな
っている。そのために、テープ表面の摩擦が大きくなる
と、テープがスティックスリップを起こして、いわゆる
テープ鳴きという現象が起き、再生画面のひきつれを起
こす。
【0011】また、テープとヘッドとの相対速度は非常
に大きく、特にポーズ状態では同じ場所での高速接触と
なるので、磁性層の摩耗の問題が生じ、再生出力の低下
につながっている。特に、磁性層を金属磁性粉末等の蒸
着で形成した蒸着テープの場合、このような磁性層は非
常に薄いので、この問題は更に助長される。
【0012】また、ハードディスク装置は、CSS(コ
ンタクト・スタート・ストップ)といって、回転前には
磁気ヘッドは磁気ディスクに接触しており、ディスクが
高速で回転を始めると、発生する空気流によって浮上す
るタイプの装置である。従って、起動停止又は起動時に
は媒体が擦って走行するので、そのときの摩擦の増加が
大きな問題となっている。
【0013】商品レベルの信頼性を保つには、CSS操
作を2万回行った後の摩擦係数が特に0.5以下である
ことが望まれる。また、高速で回転しているので、ヘッ
ドと媒体によるヘッドクラッシュ等の発生も課題の一つ
である。
【0014】このように、摺動耐久性が厳しくなる状況
の中で、特に、耐久性を向上させる目的で、磁性層の表
面に保護膜を形成する技術の検討がなされてきた。
【0015】このような保護膜としては、カーボン膜
(炭素膜:以下、同様)、石英(SiO2 )膜、ジルコ
ニア(ZrO2 )膜等が検討され、ハードディスクにお
いては実用化されているものもある。
【0016】特に、最近は、カーボン膜よりも硬度が大
きいダイヤモンドライクカーボン(DLC:ダイヤモン
ド構造を主とするカーボン)膜等の膜形成の検討も行わ
れており、このDLC膜は今後主流になるものと思われ
る保護膜である。
【0017】現在、このような保護膜の形成手段とし
て、スパッタリング法、CVD法等が用いられている。
【0018】スパッタリング法とは、電場や磁場を利用
してアルゴンガス等の不活性ガスの電離(プラズマ化)
を行い、更に、電離したイオンを加速することにより得
られる運動エネルギーによって、ターゲットの原子を叩
き出す。そして、その叩き出された原子が対向する基板
上に堆積し、目的とする膜を形成する物理的プロセスで
ある。
【0019】一方、CVD法(化学的気相成長法:Chem
ical Vapor Deposition )とは、気相の成長を利用した
薄膜形成技術の一つであり、成膜物質を含有するガスの
高温空間等における化学反応を利用して、原料ガスを分
解し、成膜物質を生成させ、この成膜物質を基体上に堆
積させる方法である。CVD法を用いた装置の代表的な
ものとして、プラズマCVD装置が挙げられる。
【0020】プラズマCVD装置を用いたプラズマCV
D法は、電場や磁場を用いて発生させたプラズマのエネ
ルギーを利用して、原料となる気体の分解、合成等の化
学反応を起こさせて、薄膜を形成する化学的プロセスで
あり、このプラズマCVD法による成膜は、上記のスパ
ッタリング法に比べて膜の形成速度が大きく、また、様
々な原料ガスを選択することができ、今後、保護膜(特
にDLC膜)の形成に期待されているものである。
【0021】また、例えば、磁気記録媒体の保護膜の形
成には、原料となる気体を分解して磁気記録媒体上に誘
導する反応管を使用して、キャンロール上で案内されな
がら連続走行する長尺状の磁気記録媒体原反(実際には
上記の金属磁性薄膜付きのもの)上に連続的に成膜する
方法が提案されている。このような反応管を用いると、
原料となる物質(例えば、エチレン等の炭化水素系のガ
ス)を十分に分解し、媒体上に効率よく誘導することが
できる。
【0022】上述したような方法で形成された保護膜
(例えばカーボン膜)によって、磁気記録媒体の摺動耐
久性を著しく改善することができる。
【0023】しかしながら、反応管を用いて薄膜(例え
ば保護膜)を形成する場合、反応管と媒体との間のギャ
ップ部において、特に成膜領域側の反応管の開口部周壁
端面に、反応に供されなかった堆積物(例えば、エチレ
ンガスが重合したポリエチレン等の炭素重合物)が析出
し、この堆積物(析出物)が静電気力によって媒体の金
属磁性薄膜の表面に付着して媒体の表面性と磁気記録特
性を劣化させることがあり、これによってドロップアウ
トが多発するなど、電磁変換特性に影響を与えることが
あった。
【0024】特に、連続的に成膜を実施する場合、成膜
を進行させていくにつれて前記堆積物の量が増加するの
で、例えば連続的な成膜を必要とする長尺状の原反(特
に磁気記録媒体原反)の処理が困難であった。
【0025】この様子を図5を参照しながら説明する。
図5は、反応室としての反応管3を用いて、対向配置し
た基体(金属磁性薄膜を形成した磁気記録媒体原反1
0)上にカーボン膜を形成するための装置の要部概略図
である。
【0026】この装置においては、反応管3内で分解さ
れた原料ガス8は、反応管3の開口部14から、キャン
ロール9上で案内される磁気記録媒体10との間の間隙
13を通して媒体10に達し、そこに堆積してカーボン
膜を形成する。この際、成膜に供されなかった成膜物質
が反応管3の周壁12の端面15上にポリエチレン等か
らなる堆積物として、堆積物31a、更には堆積物31
bのように析出する。この図では、反応管の周壁の一部
分に堆積物が析出することを示したが、通常は、反応管
の周壁全周の端面に堆積物が析出する。
【0027】この堆積物31a及び31bは、チャージ
アップ(Charge Up )し、静電気力によって図中矢印B
方向に飛翔して磁気記録媒体10の表面に付着する。こ
の付着物は、磁気記録媒体の磁性層の磁気特性に悪影響
を及ぼすと共に、表面性が劣化して、これによってドロ
ップアウトが多発するなど、電磁変換特性を劣化させる
ことがある。
【0028】また、この装置では、磁気記録媒体(原
反)10を図中矢印D方向に順次走行させながら連続的
に成膜を実施するために、前記堆積物31a及び31b
の量は次第に多くなる。この堆積物の量が多くなると、
上述したように磁気記録媒体表面への付着して表面性が
劣化すると同時に、反応管内の脱気が円滑に進行せずに
反応管内で異常放電が生じたり、また、この堆積物が直
接に媒体表面に接触して媒体表面を傷つけることもある
と考えられる。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反
応室の周辺部(例えば、反応管の開口部側の周壁端面)
に堆積物が析出するのを防止すること又はこの堆積物を
除去することができ、また、長時間にわたって成膜を実
施することができる薄膜(例えばカーボン膜)の成膜方
法、及びその実施に使用できる成膜装置を提供すること
にある。
【0030】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、反応室
内で成膜物質を分解し、この反応室の開口部に対向して
配置された基体上に薄膜を形成するに際し、前記開口部
に近接して設けられたガス導入口からガスを導入するこ
とによって、前記反応室の周壁への堆積物の析出を防止
しながら、前記基体上に薄膜を形成する成膜方法(以
下、本発明の成膜方法と称する。)に係るものである。
【0031】本発明の成膜方法によれば、反応室内で成
膜物質(例えばエチレンガス)を分解(例えば、電界に
よる励起、プラズマ化)し、この反応室の開口部に対向
配置された基体(例えば磁気記録媒体)上に薄膜(例え
ば、カーボン膜等の保護膜)を形成する際に、前記開口
部に近接して設けられたガス導入口からガス(例えば酸
素ガス)を導入することによって、前記反応室の周壁
(特に周壁の基体に対向する縁の部分、即ち端面)への
堆積物(例えばポリエチレン)の析出を防止しながら、
前記基体上に薄膜を形成するので、前記反応室の前記周
壁に堆積物が析出するのを防止しながら、長時間にわた
って成膜を実施することができる。従って、堆積物が基
体上へ付着したり、基体が堆積物で損傷されるといった
望ましくない事態を阻止し、量産性の良好な成膜を行う
ことができる。
【0032】また、本発明は、本発明の成膜方法を再現
性良く実施できる装置として、成膜物質を分解する反応
室と、この反応室の開口部に近接して設けられたガス導
入口とを有し、前記反応室の周壁に対し前記ガス導入口
からガスが導入されるように構成された成膜装置(以
下、本発明の成膜装置と称する。)も提供するものであ
る。
【0033】但し、本発明の成膜方法において、「堆積
物の析出を防止しながら」とは、堆積物が析出しても結
果としてこの堆積物を上記したガスの作用によって除去
することと、堆積物の析出又は生成自体を上記したガス
の作用によって防ぐこととのいずれか、或いは双方を意
味する。
【0034】また、本発明の成膜方法及び本発明の成膜
装置においては、成膜物質を含有するガスやキャリアガ
ス等の種類によって、析出する堆積物(又は堆積物とな
り得る物質)の成分が種々異なるが、堆積物の析出を防
止するために導入するガスの種類を適宜選択することに
よって、様々な成分の堆積物を除去し或いはその析出を
防止することができる。
【0035】例えば、炭化水素系のガス(例えば、エチ
レンやトルエン)を導入して、炭素系の薄膜(例えば、
DLC膜等のカーボン膜)を形成する場合、炭化水素系
の堆積物(例えばポリエチレンやススなど)が析出する
ことが多いが、このような堆積物の析出を防止するガス
として酸素ガスや酸素含有ガスを堆積物が析出可能な場
所(特に、反応室の周壁)に導入すれば、この炭化水素
系の堆積物を酸化すると共にガス化(即ち、CO2 化又
はCO化)して、前記堆積物を容易に除去することがで
きると考えられる。
【0036】また、本発明の成膜方法及び本発明の成膜
装置においては、導入するガスを連続的に導入しながら
成膜を実施してもよいし、ガスの導入を間欠的に行って
も構わない。即ち、堆積物の析出量や析出状態によっ
て、前記ガスを随時導入してもよいし、また、前記ガス
を断続的に導入してもよい。従って、基体上に連続的に
成膜を行う連続方式や、反応室内に順次基体を送り込む
バッチ方式にも適用できる。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の成膜方法においては、前
記ガスを、前記基体と前記反応室の前記周壁との間の間
隙内に導入することによって、前記間隙における前記周
壁の前記基体との対向位置への堆積物の析出を防止する
ことができる。
【0038】即ち、本発明の成膜装置において、前記ガ
スが前記基体と前記反応室の前記周壁との間隙内に導入
されるように構成することができる。
【0039】一般に、前記反応室においては、前記成膜
物質(以下、原料ガスと称することがある。)を円滑に
導入して効率良く成膜することができるように、前記反
応室内とこの反応室の外側とに比較的大きな圧力差が設
けられる。この圧力差によって、分解された原料ガスが
前記基体上に導かれると共に、成膜に供されなかったガ
ス(及びキャリアガス)が前記基体と前記反応室の周壁
との間の前記間隙(間隙部)から排気されるようになさ
れている。
【0040】この間隙部(ギャップ部)は反応室内の圧
力を保持するために非常に狭く、かつ一定の間隔に設計
されており、この間隙部において、反応室の周壁やこの
周壁の端面などに前記堆積物が析出することが多い。こ
の部分に堆積物が析出すると、静電気力によって基体
(例えば磁気記録媒体)の表面に前記堆積物が付着した
り、また、排気が円滑に行われなくなって反応室内の圧
力が変化し、反応室内での成膜物質の分解状態が変化す
ることがある。
【0041】従って、堆積物が析出し易い前記間隙部
(特に反応室の周壁やその端面)に、ガス(例えば酸素
ガス)を導入することによって、前記堆積物の酸化、分
解等によってその析出を防止することが十分に可能であ
る。
【0042】また、本発明の成膜方法及び成膜装置にお
いて、前記反応室の前記周壁の前記開口部側の端面と連
続した面を前記基体に沿って有する外向きの延設部を前
記反応室に形成し、前記延設部に設けられたスリット状
の前記ガス導入口から前記ガスを導入することができ
る。
【0043】このような成膜方法の実施の際に使用可能
な成膜装置を図1に例示する。
【0044】図1は、非磁性支持体上に磁性層(特に金
属磁性薄膜からなる磁性層)が形成されている磁気記録
媒体10を図中矢印D方向にキャン(ロール)9で搬送
しながら、磁気記録媒体10上にカーボン膜を形成する
装置の要部概略図である。
【0045】この装置は、周壁12と開口部14とを有
する反応室(反応管)3に原料ガス(例えばエチレンガ
ス)を導入し、図示しない直流放電部の直流電界によっ
て分解(励起、プラズマ化)されたガス8を対向する磁
気記録媒体10上に誘導してカーボン膜(DLC膜)を
形成するプラズマCVD装置である。この装置において
反応管3の開口部14側には、周壁部12の開口部14
側の端面15と連続した面35を磁気記録媒体10に沿
って有する外向きの延設部4が形成されていて、磁気記
録媒体10と延設部4との間のギャップ33が等間隔に
なるように構成されている。ここで、上述した「間隙
(又はギャップ)」とは、媒体10と反応管3及びその
延設部4との間隙13と33の双方を意味する。
【0046】この延設部4にはスリット状のガス導入口
6が設けられており、ガス1(特に酸素ガス又は酸素含
有ガス)が導入管2から延設部4に形成されている流路
5(ガス導入口6より大径となされている)に導入さ
れ、この流路5を流通するガス1が前記スリット状のガ
ス導入口6から前記ギャップ33に(更には間隙13へ
も)導入されるようになされている。流路5は、反応管
周壁の全周に亘って設けられ、所定箇所からの導入ガス
1を反応管の周囲に分配し、スリット状導入口6から均
一に供給する作用を有している。
【0047】即ち、ガス1はスリット状のガス導入口6
から磁気記録媒体10に向けて導入され、このガスは前
記反応室の開口部方向へのガス7Aと反対方向へのガス
7Bとに分かれてギャップ33及び13内全域に行き渡
る。また、成膜に供されなかった原料ガスをはじめ、堆
積物の分解ガス、更には未反応のガス7A、7Bなど
は、反応管3の内側と外側との圧力差によって、間隙3
3及び13を通じて図中矢印A方向(即ち、反応管3の
外部)へと順次排出される。
【0048】この排出部は、反応管3の全周(実際には
延設部4の全外周囲)に存在しているために、反応管3
の内圧に悪影響を与えることなく、ガスの排出を容易に
行うことができる。
【0049】このためには、延設部4には、反応管3内
の圧力を保持することを目的に、かつ、導入口6から導
入されるガス7Aと7Bのコンダクタンス(流動性)を
取ることを目的につば4’を設けることができる。この
つば4’のサイズ、形状などは、前述の目的を満足する
ものであれば、任意のものとすることができる。
【0050】本発明においては、ギャップ13及び33
の全域(即ち、開口部14側の端面15、又はこの端面
から外側の部分35)に、均等にガス7A及び7Bを導
入することが好ましく、スリット状のガス導入口の大き
さ、形状、長さなどは適宜変更可能である。また、流路
5の断面形状も円形、角状など任意の形状に構成するこ
とができる。
【0051】ここで、この装置においてはギャップ13
及び33のギャップ長(媒体10との距離)は例えば約
1mmであるが、本発明においては、ギャップ長によら
ず、堆積物が析出するのを防止することが十分に可能で
ある。特に、ギャップ長が短いほど堆積物の析出による
影響が大きくなるが、本発明では、ギャップ長が短い場
合でもその機能を十分に発揮することができ、更に、こ
のようにギャップ長が短い場合に特に有効である。
【0052】また、本発明の成膜方法及び本発明の成膜
装置においては、前記開口部の周囲に設けられた前記ガ
ス導入口から、前記ガスを均一に導入することができる
ので、堆積物の析出を媒体の全域において防止できるこ
とになる。
【0053】勿論、前記開口部の周囲の一部分(例え
ば、開口部が長方形又は長円形の場合、媒体走行方向D
の上流側の一辺、又はその下流側対向辺を含む二辺又は
三辺)から前記ガスを導入することも可能であるが、前
記開口部の周囲(即ち、全周囲)から前記ガスを導入す
ることが、前記開口部の全周壁に堆積物が析出するのを
防止する上で望ましい。
【0054】また、前記ガスを均一に導入するために
は、例えば図1において、流路5の内径をスリット状の
導入口6よりも大きく形成すればよい。このような構成
では、流路5とスリット6との流体圧力差を利用して、
開口部14の周囲に設けられた導入口6からガス7A及
び7Bを上記ギャップ部に均一に導入することができ
る。また、前記流路5には、ガス導入管を複数本接続し
て、複数のガス導入管から堆積物の析出を防止するガス
を導入するように形成してもよい。
【0055】また、本発明においては、図4に示すよう
に、堆積物の析出を防止するガス1を間隙13に導入す
るための導入口6’を導入管2’の付いた流路5’と共
に、反応管3の周壁12’に設けることも可能である。
ここでは、ガスを導入する上述の間隙は、媒体10と反
応管3との間隙13を意味する。
【0056】このような構成にする場合も、ガス導入口
6’の形状、大きさ、長さ、更には流路5’のサイズ、
形状などは適宜変更可能であり、また、図示しないが、
周壁12’の端面に連続するようにつばを設けることも
可能である。
【0057】更に、図示しないが、反応室内での原料ガ
スの分解、誘導に差し支えなければ、反応室の周壁の内
側から堆積物の析出を防止するガスを導入することもで
きる。
【0058】また、本発明の成膜方法及び成膜装置にお
いては、前記延設部を予め作製して、前記反応室の前記
周壁に固定することができる。
【0059】ここで、例えば磁気記録媒体の保護膜を成
膜するのに使用できる反応管(反応室)の一例の概略図
を図3(A)、(B)及び(C)に示す。
【0060】図3(A)は、図1に示した反応管(反応
室)3を上面から見た時の概略平面図である。図3
(A)によれば、平面的に長方形、立体的には直方体を
なす反応管3の上面には、長方形の開口部14が設けら
れており、この開口部14の全周にはスリット状のガス
導入口6が設けられている。また、図中、点線は周壁1
2の位置を示し、二点鎖線はキャン9に搬送される磁気
記録媒体10の位置、一点鎖線はキャン9の位置をそれ
ぞれ示す。
【0061】また、図3(B)は、図3(A)における
b−b線断面図である。反応管3の短辺側の周壁12上
には、延設部4が設けられており、この延設部4は、上
述したように、堆積物の析出を防止するガスの流路5
と、このガスの導入口6と、このガスのコンダクタンス
の制御及び反応管内の圧力保持のためのつば4’とから
なるものであって、延設部4は磁気記録媒体10が搬送
されるキャン9と全面で均等なギャップ長を取るよう
に、その上面35が曲面状に形成されている。図示しな
いが、流路5には適宜ガス1を送り込むガス導入管(上
述の導入管2)が接続されている。
【0062】次に、図3(C)は、図3(A)における
c−c線断面図であり、反応管3の長辺側の周壁12上
にも、上記短辺側のものと連設した延設部4が設けられ
ている。上述したように、図3(B)及び(C)に明示
した延設部4は堆積物の析出を防止するガスの流路5
と、このガスの導入口6と、このガスのコンダクタンス
の制御及び反応管内の圧力保持のためのつば4’とから
なるものである。
【0063】ここで、上述の「コンダクタンス」とは、
導入するガス(特に酸素ガス又は酸素含有ガス)の流れ
に関するものであり、例えば、前記延設部に前記つばが
設けられていると、このガスは圧力が低い反応管外(即
ち、排気系が設けられている方向)に流動し易く、つば
部(即ち、端面15及び35)での堆積物の析出も効果
的に防止することができる。従って、本発明において
は、延設部4にはつば4’を設けて、反応管内の圧力を
保持すると共に、導入する前記ガス1のコンダクタンス
を制御することが望ましい。
【0064】本発明においては、図3(A)、(B)及
び(C)に示した反応管において、つば4’、流路5、
ガス導入口6からなる延設部4と反応管本体12(周
壁)とが一体成形されていてもよいが、図3(D)に示
すように、延設部4を予め別に作製し、反応管本体12
に接着やビス止め等で固定して反応管を構成してもよ
い。
【0065】即ち、延設部4を予め作製しておくと、キ
ャン9に対応した形状、サイズ(特に、端面15や35
の形状やキャン9との間隔)に作製でき、これを反応管
本体12に固定すれば、従来の反応管とは異なって緩や
かな加工精度の反応管を用い(或いは従来の反応管をそ
のまま用いて)延設部を固定するだけで、最終的に要求
される形状、サイズに反応管を組み上げることができ
る。この結果、成膜装置のアセンブリを高精度かつ容易
に行えると同時に、反応室の周辺部(例えば、反応管の
周壁部分)に堆積物が析出するのを防止する構造を確実
に形成することができ、長時間にわたって成膜を実施で
きる量産向きの装置が得られるなど、本発明の効果を十
分に得ることが可能である。
【0066】また、通常、反応管と基体との間のギャッ
プは、非常に狭く、また、極めて厳密にコントロールさ
れなければならない。反応管の熱膨張などによるギャッ
プ長の変動が問題となることがあるが、この延設部を熱
等による変形の少ない材質のものとすれば、ギャップ長
の変動は最小限に抑えることが可能である。
【0067】なお、延設部4は反応管本体12に対し着
脱可能に固定してもよいが、その場合は、上記に加え
て、反応管本体から取り外してクリーニングすることが
容易となり、また部品交換が可能となるなど、メンテナ
ンスに有利である。
【0068】また、本発明の成膜方法及び本発明の成膜
装置においては、前記反応室をプラズマCVD装置の反
応管として構成し、この反応管内で炭化水素系のガスを
分解し、前記基体上に炭素を主体とする薄膜を形成する
ことが十分に可能である。
【0069】プラズマCVD装置において、公知のプラ
ズマ発生方法が使用可能である。例えば、熱陰極から放
出された電子が陽極に流入するまでに気体分子と衝突
し、これをイオン化或いは励起してプラズマを作る熱電
子放電形、冷陰極にイオンが流入する時に引きだれた電
子が、陽極に向かって直進して流入するまでに気体分子
と衝突してプラズマを作る2極放電形、マグネトロン放
電形に代表されるような磁場収束形、高周波コイルを設
けることで高周波電磁誘導によりプラズマを作る無電極
形、マイクロ波を利用するECR形(Electron Cyclotr
on Resonance)などが挙げられる。勿論、本発明におい
ては、熱CVDや減圧若しくは加圧CVDなども使用可
能である。
【0070】また、上記炭化水素系の反応ガスには、例
えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、トルエ
ンなどを使用することができ、これらの原料を用いる
と、カーボン膜(アモルファス構造を主とするカーボン
膜)、DLC膜(ダイヤモンド構造を主とするカーボン
膜)、ダイヤモンド膜などの炭素を主体とする薄膜を得
ることが十分に可能である。反応ガス圧は10〜100
Paとするのがよい。
【0071】また、本発明の成膜方法及び本発明の成膜
装置においては、長尺状の前記基体を支持部材上で導き
ながら、前記基体上に連続的に前記薄膜を形成すること
ができる。
【0072】更に、前記基体として、非磁性支持体上に
磁性層(特に金属磁性薄膜からなる磁性層)を有する磁
気記録媒体とし、この磁気記録媒体上に炭素保護膜を形
成することが十分に可能である。
【0073】上述したように、例えば、通常の磁気記録
媒体(保護膜を成膜する前の原反)の長尺長は5,00
0m〜15,000m程度であり、このような長尺状の
原反上にDLC膜等の保護膜を連続的かつ表面性良く成
膜することは非常に困難であった。
【0074】これに対して、本発明に基づいて磁気記録
媒体にDLC膜等の表面保護膜を形成する場合、長尺状
の磁気記録媒体(原反)を支持部材(例えば、回転可能
なキャンロールなど)で導きながら、長時間にわたって
連続的に前記表面保護膜を形成することができると共
に、析出する堆積物の付着によって媒体の表面性が劣化
することがないので、表面性、更には電磁変換特性の良
好な磁気記録媒体を効率良く得ることができる。
【0075】また、本発明の成膜方法及び本発明の成膜
装置においては、前記ガス(即ち、堆積物の析出を防止
することができるガス)を酸素ガス又は酸素含有ガスと
することが望ましい。
【0076】特に、原料ガスが炭化水素系のガスである
場合、析出する堆積物はポリエチレン等の炭素重合体や
煤(スス)が主なものである。従って、このような堆積
物の析出を防止するガスとして、酸素ガス、酸素含有ガ
スなどを堆積物が析出する場所に導入すれば、この炭化
水素系の堆積物を酸化すると共にガス化(即ち、CO2
化又はCO化)して、容易に除去することができると考
えられる。また、酸素ガス(O2 )、酸素含有ガス(空
気など)などの他に、酸素プラズマも使用することが可
能である。
【0077】これらのガスによる堆積物の分解及びガス
化には温度条件が大きく左右することがある。例えば、
上述したように、炭化水素系のガスを原料として炭素を
主とする薄膜(例えばカーボン膜)を形成する場合、ポ
リエチレン等の炭素重合体や煤(スス)の堆積物が生じ
ると考えられるが、これらの堆積物の分解及びガス化に
は、原料ガスの分解(励起、プラズマ化)の際に生じる
温度で十分である。
【0078】また、他の成分の堆積物が析出する場合
や、上記堆積物の除去が不十分である場合、これらの堆
積物を抵抗加熱等の手段を用いて適宜加熱しながら、堆
積物の析出を防止する前記ガスを導入することも、本発
明においては十分に可能である。即ち、本発明の成膜装
置においては、例えば抵抗加熱手段などの加熱装置を前
記延設部に設置することができる。このように、前記堆
積物の析出を防止するためには、前記ガスの導入と共
に、熱を加えることも可能である。
【0079】また、この酸素ガス又は酸素含有ガス(プ
ラズマ化された酸素ガスを含む)の導入量は、反応管の
サイズ、原料ガスの種類、成膜速度などによって変動す
るが、10ccm〜100ccm程度が好ましい。導入
量が10ccm未満であると、堆積物の析出の防止が不
十分になることがあり、また、100ccmを超える
と、これらのガスが、反応管内に進入して原料ガスの分
解や成膜に悪影響を及ぼすと考えられる。
【0080】本発明においては、磁気記録媒体上に表面
保護膜を形成することができ、磁気記録媒体としては、
非磁性支持体上に磁性層が設けられている磁気記録媒体
(磁気テープ、磁気ディスク等)の全てが対象となる
が、特に、ケースに内蔵されている媒体に比べて、外部
に露出する機会の多いテープ媒体等は、耐環境特性が厳
しく要求されるので、前記表面保護膜による効果が大き
い。
【0081】特に、この保護膜はDLC膜であることが
好ましく、CVD法等でカーボン膜を形成したのち、高
エネルギーのイオン(例えば窒素イオン)を前記カーボ
ン膜に照射することにより、DLC(ダイヤモンドライ
クカーボン:ダイヤモンド構造を有するカーボン)化を
促進させることが可能である。
【0082】また、一般に使用されている他の原料を使
用して保護膜を形成することも十分に可能である。例示
すれば、CrO2 、Al2 3 、BN、Co酸化物、M
gO、SiO2 、Si3 4 、SiNX 、SiC、Si
X −SiO2 、ZrO2 、TiO2 、TiC等が挙げ
られる。これらは単層膜であってもよいし、多層膜又は
複合膜であってもよい。
【0083】上述の磁気記録媒体としては、特に、非磁
性支持体の表面上に蒸着等の手法により磁性膜が磁性層
として形成され、更にその磁性層の上にカーボン膜を形
成した、いわゆる金属薄膜型の磁気記録媒体に適用する
ことが好ましい。また、この金属薄膜型の磁気記録媒体
においては、非磁性支持体と磁性層との間に下地層を設
けた構成とすることもできる。
【0084】上記非磁性支持体上には、強磁性金属材料
を直接被着することにより、金属磁性薄膜が磁性層とし
て形成されているが、この金属磁性材料としては、通常
の蒸着テープ等に使用されるものであれば如何なるもの
であってもよい。
【0085】例示すれば、Fe、Co、Ni等の強磁性
金属やFe−Co、Co−Ni、Fe−Co−Ni、F
e−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Pt、Mn
−Bi、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−
Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−C
o−Ni−Cr、等の強磁性合金が例示される。これら
は、単層膜であっても、多層膜であってもよい。
【0086】さらには、非磁性支持体と金属磁性薄膜
間、あるいは多層膜の場合には、各層間の付着力向上及
び保磁力の制御のため、下地層又は中間層を設けてもよ
い。
【0087】金属磁性薄膜の形成手段としては、真空下
で強磁性材料を加熱蒸発させ、非磁性支持体上に沈着さ
せる真空蒸着法や、強磁性材料の蒸発を放電中で行うイ
オンプレーティング法、アルゴンを主成分とする雰囲気
中でグロー放電を起こし、生じたアルゴンイオンでター
ゲット表面の原子を叩き出すスパッタリング法等、いわ
ゆるPVD(Physical Vapor Deposition )技術を使用
してよい。
【0088】また、非磁性支持体としても公知の材料を
使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル類
の他、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ポリ塩化
ビニル等のビニル系樹脂等が挙げられる。その形態も何
ら限定されるものではなく、テープ状、シート状、ドラ
ム状等いかなる形態であってもよい。
【0089】また、上述の金属磁性薄膜型の磁気記録媒
体において、バックコート層等が必要に応じて形成され
ていてもよい。即ち、公知の方法と同様に、カーボン等
の非磁性顔料を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の結
合剤及び有機溶剤と共に混練することによってバックコ
ート層用塗料を調製し、これを非磁性支持体の磁性層と
は反対側の面に塗布することによって形成されるが、こ
のとき使用される結合剤や有機溶剤はいずれも、従来公
知のものが使用可能であり、何ら限定されるものではな
い。
【0090】また、本発明は上記した金属薄膜型の磁気
記録媒体だけでなく、非常に微細な磁性粒子と樹脂結合
剤とを含む磁性塗料を非磁性支持体上に塗布し、これを
磁性層とした、いわゆる塗布型の磁気記録媒体に適用し
てもよい。
【0091】次に、本発明に基づいて磁気記録媒体上に
表面保護膜を形成することができる成膜装置について説
明する。
【0092】図2は、本発明の成膜方法を実施するに際
し使用可能なプラズマCVD連続膜形成装置の要部構成
図である。
【0093】この装置は、非磁性支持体(例えばポリエ
チレンテレフタレート)上にコバルト−ニッケル合金等
からなる金属磁性薄膜が設けられた磁気記録媒体(原
反)の前記金属磁性薄膜上にカーボン膜を形成すること
ができる装置である。
【0094】この装置内で、磁気記録媒体(原反)10
は巻き出しロール21から、回転支持体(ガイドローラ
ー)23、反応管3に対向配置される対向電極(キャ
ン)9、回転支持体(ガイドローラー)23、巻き取り
ロール22の順に搬送される。
【0095】反応管3の内部にはメッシュ電極24が組
み込まれており、この電極24には直流電源25により
+500〜2000Vの電圧が加えられる。また、炭化
水素を主成分とするガス(例えばエチレンガス)は、ガ
ス導入口26から導入される。この反応管3に対向して
円筒状の回転可能な対向電極(キャン)9が微小な隙間
(例えば1mm程度)を置いて設置されている。
【0096】上記磁気記録媒体10はキャン9の表面に
巻き付けられて搬送されており、反応管3の内側にて分
解(励起、プラズマ化)したガスを引き寄せ、その表面
に、所定の膜厚でカーボン膜を形成する。但し、この装
置の内部は、真空排気系28により真空状態になされて
いる。また、原料ガス導入口26には、このガスの導入
量を適宜調節できる圧力ゲージ27が設けられている。
【0097】また、本装置において、図1にその詳細を
示すように、反応管3の開口部14上には延設部4が設
けられており、この延設部4には、反応管内の圧力の保
持や導入するガス(酸素ガス又は酸素含有ガス)のコン
ダクタンスを取るためのつば4’と、前記ガスをギャッ
プ13に導入するためのスリット状のガス導入口6と、
前記ガスが反応管3の開口部14の周囲から均一に導入
されるように形成されている流路5とが配されている。
【0098】また、この延設部4には、前記ガスを導く
ガス導入管2が配されており、酸素ガス又は酸素含有ガ
ス1が図示しないボンベから適当な圧力で導入されるよ
うになされている。
【0099】なお、本発明は、磁気記録媒体や光学的装
置及び素子、半導体装置等に薄膜、例えば表面保護膜を
成膜する場合にも十分に適用可能である。
【0100】また、本発明においては、前記堆積物の析
出などを検知する検出器(例えば赤外線センサ)を設け
ることも可能である。この検出器から得られる成膜情報
や堆積物の析出情報をもとに前記ガスの導入量を調節す
れば、より精度の高い成膜を実施することが十分に可能
である。即ち、本発明においては、いわゆるフィードバ
ックシステムを構成して成膜を実施することもできる。
【0101】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例について説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0102】まず、比較例として、従来の成膜装置(図
5参照)を用い、蒸着テープ上にDLC膜を形成した。
このときの条件は下記の通りである。 原料ガス : エチレンガス 反応圧力(反応管内) : 20Pa(100ccm) 装置内圧力(反応管外): 0.1Pa 導入電力 : DC1.0kV 成膜速度 : 100nm/min DLC膜厚 : 10nm 媒体原反の搬送速度 : 1m/min ギャップ間隔 : 1mm
【0103】次に、実施例として、上記比較例の成膜条
件と同様の条件でDLC膜を成膜する際に、成膜時に酸
素ガスを流量30ccmとなるようにつば内に設置した
ガス導入口から導入した。また、実施例のDLC膜の成
膜に使用した装置は上述した図2に示す装置であり、そ
の反応管は図1及び図3に示した構成である。
【0104】このDLC膜の成膜においては、DLC膜
の形成時間を変動させて、各時間毎の堆積物の析出を確
認した。この堆積物はやや透明度を有していたことか
ら、ポリエチレン等の炭素重合膜やススなどからなるも
のであると考えられた。
【0105】但し、比較例及び実施例に用いた蒸着テー
プの磁性層は以下に示す構成のものである。 ベースフィルム : 10μmPET 磁性層 : 厚さ200nm、組成Co80−Ni20の単層 入射角 : 45〜90° 導入ガス : 酸素ガス 蒸着時真空度 : 2×10-2Pa
【0106】また、これら実施例及び比較例のサンプル
テープを作製した後、さらにトップコート層として含フ
ッ素カルボン酸のアミン塩(C5 11(CH2 10CO
OH:N(C8 173 )からなる潤滑剤を、湿式塗布
法によって3nm程度の厚さに形成した。次いで、8m
m幅にスリットして8mmVTR用金属磁性薄膜型蒸着
テープを作成した。
【0107】そして、実施例及び比較例の各サンプルテ
ープについて、DLC膜の形成時間毎にドロップアウト
(D.O.)の個数を測定した。DLC膜の形成工程で
の堆積物の析出状況、及びドロップアウト(D.O.)
の発生個数(個/min)を下記の表1に示す。
【0108】但し、堆積物の析出状況については、堆積
物が全く確認できなかったものを「無し」とし、反応管
の一部端面上に堆積物が確認できたものを「一部」、反
応管の全端面上に堆積物が確認できたものを「全面」と
した。また、ドロップアウト(D.O.)は、波長1μ
mにて、100%ホワイト信号を記録し、その再生時の
出力減衰量が6dB以上、継続時間が10μsec以上
のドロップアウトを10分間ドロップアウトカウンタで
測定し、1分間あたりの平均値(個/min)として求
めた。但し、テープの速度(相対速度)は10m/mi
nとした。
【0109】 表1 ─────────────────────────────────── 時間(分) 30 60 90 120 150 180 ─────────────────────────────────── 比 堆積物 無し 一部 一部 全面 全面 全面 較 D.O. <20 100〜 500〜 >2000
>2000 >2000 例 (個/min) 300 1000
─────────────────────────────────── 実 堆積物 無し 無し 無し 無し 無し 無し 施 D.O. <20 <20 <20 <20 <20 <20 例 (個/min) ───────────────────────────────────
【0110】また、表1には記載しないが、本実施例の
サンプルテープにおいて、DLC膜の成膜時間を144
0分(24時間)としたものも、表1に記載した本実施
例のサンプルテープと同様の結果であった。
【0111】次に、実施例及び比較例の各サンプルテー
プについて、耐久性、電磁変換特性の評価を行った。こ
の結果を下記の表2に示す。
【0112】但し、各評価は、次の要領で行った。
【0113】スティルライフ:改造したソニー社製の8
mmVTR(ビデオテープレコーダ:以下、同様)を用
い、温度30℃、湿度10%の環境下にてスティルライ
フ(スティル寿命)の測定を行った。測定時間は、再生
出力が3dB落ちるまでの時間とし、3時間(180
分)で打切りとした。
【0114】レベルダウン:改造したソニー社製の8m
mVTRを用い、温度30℃、湿度10%の環境下に
て、60分長の各蒸着テープに映像信号を記録し、再生
を100回繰り返した。再生1回目の出力を基準とし
(0dB)、100回目の再生出力値(dB)を示し
た。
【0115】摩擦係数:直径3mm、表面粗さ0.2S
(但し、Sは最大粗さ)のステンレス(SUS420J
製)円柱に各蒸着テープの磁性面が90度接触するよう
にして30gの重りを用い、テープ走行速度0.5mm
/sec、温度30℃、湿度80%の環境下に設定して
摩擦係数μkを次式より求めた。 μk=(2/π)・ln(x/30) (但し、xは引っ張り荷重摩擦力である。)
【0116】 表2 ──────────────────────────────────── DLC膜厚 スティルライフ(分) レベルダウン(dB) 摩擦係数 ──────────────────────────────────── 比較例(10nm) >180 −0.5 0.23 実施例(10nm) >180 −0.5 0.23 ────────────────────────────────────
【0117】表1から分かる通り、本実施例の成膜方法
では、成膜時間の長時間化が計られ、かつドロップアウ
トの低減が計られた。
【0118】即ち、比較例の成膜方法では、時間が経過
するにつれて堆積物の量が増加し、ドロップアウトも増
えているのに対して、本実施例の成膜方法では、時間が
経過しても堆積物の量に変化はなく、また、ドロップア
ウトの発生個数も非常に少なく抑えられた。
【0119】また、表2から、DLC膜の形成時に反応
管の周囲から酸素ガスを導入しても、得られた蒸着テー
プは、従来と同等の耐久性及び電磁変換特性が得られ
た。即ち、酸素ガスの導入による各特性の劣化は見られ
なかった。
【0120】
【発明の作用効果】本発明の成膜方法及びその装置によ
れば、反応室内で成膜物質を分解し、この反応室の開口
部に対向配置された基体上に薄膜を形成する際に、前記
開口部に近接して設けられたガス導入口からガスを導入
することによって、前記反応室の周壁(特に周壁の基体
に対向する縁の部分、即ち端面)への堆積物の析出を防
止しながら、前記基体上に薄膜を形成するので、前記反
応室の前記周壁に堆積物が析出するのを防止しながら、
長時間にわたって成膜を実施することができる。従っ
て、堆積物が基体上へ付着したり、基体が堆積物で損傷
されることはなく、量産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づいて磁気記録媒体上にカーボン膜
を形成することができる成膜装置の要部概略図である。
【図2】同、プラズマCVD連続薄膜形成装置の要部概
略図である。
【図3】同、反応室(反応管)の平面図(A)、図3
(A)のb−b線断面図(B)、図3(A)のc−c線
断面図(C)、延設部と反応管本体との分離状態の断面
図(D)である。
【図4】同、磁気記録媒体上にカーボン膜を形成するこ
とができる他の成膜装置の要部概略図である。
【図5】従来の成膜装置により成膜を実施する際の要部
概略図である。
【符号の説明】
1、7A、7B、7A’、7B’…酸素ガス又は酸素含
有ガス、2、2’…ガス導入管、3…反応室(反応
管)、4…延設部、4’…つば、5、5’…流路、6、
6’…ガス導入口、8…原料ガス、9…キャン、10…
磁気記録媒体、12、12’…周壁、13、33…ギャ
ップ、14…開口部、15、35…端面、21…巻き出
しロール、22…巻き取りロール、23…回転支持体、
24…電極、25…直流電源、26…原料ガス導入口、
27…圧力ゲージ、28…真空排気系、31a、31b
…堆積物

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応室内で成膜物質を分解し、この反応
    室の開口部に対向して配置された基体上に薄膜を形成す
    るに際し、前記開口部に近接して設けられたガス導入口
    からガスを導入することによって、前記反応室の周壁へ
    の堆積物の析出を防止しながら、前記基体上に薄膜を形
    成する成膜方法。
  2. 【請求項2】 前記ガスを、前記基体と前記反応室の前
    記周壁との間の間隙内に導入することによって、前記間
    隙における前記周壁の前記基体との対向位置への堆積物
    の析出を防止する、請求項1に記載した成膜方法。
  3. 【請求項3】 前記反応室の前記周壁の前記開口部側の
    端面と連続した面を前記基体に沿って有する外向きの延
    設部を前記反応室に形成し、前記延設部に設けられたス
    リット状の前記ガス導入口から前記ガスを導入する、請
    求項1に記載した成膜方法。
  4. 【請求項4】 前記開口部の周囲に設けられた前記ガス
    導入口から、前記ガスを均一に導入する、請求項3に記
    載した成膜方法。
  5. 【請求項5】 前記延設部を予め作製し、前記反応室の
    前記周壁に固定する、請求項3に記載した成膜方法。
  6. 【請求項6】 前記反応室をプラズマCVD装置の反応
    管として構成し、この反応管内で炭化水素系のガスを分
    解し、前記基体上に炭素を主体とする薄膜を形成する、
    請求項1に記載した成膜方法。
  7. 【請求項7】 長尺状の前記基体を支持部材上で導いて
    搬送しながら、前記基体上に連続的に前記薄膜を形成す
    る、請求項6に記載した成膜方法。
  8. 【請求項8】 前記基体が磁気記録媒体であって、この
    磁気記録媒体上に炭素保護膜を形成する、請求項6に記
    載した成膜方法。
  9. 【請求項9】 前記ガスを酸素ガス又は酸素含有ガスと
    する、請求項1に記載した成膜方法。
  10. 【請求項10】 成膜物質を分解する反応室と、この反
    応室の開口部に近接して設けられたガス導入口とを有
    し、前記反応室の周壁に対し前記ガス導入口からガスが
    導入されるように構成された成膜装置。
  11. 【請求項11】 前記ガスが前記基体と前記反応室の前
    記周壁との間隙内に導入されるように構成された、請求
    項10に記載した成膜装置。
  12. 【請求項12】 前記反応室の前記周壁の前記開口部側
    の端面と連続した面を前記基体に沿って有する外向きの
    延設部が前記反応室に形成され、前記延設部に設けられ
    たスリット状の前記ガス導入口から前記ガスが導入され
    るように構成された、請求項10に記載した成膜装置。
  13. 【請求項13】 前記開口部の周囲に設けられた前記ガ
    ス導入口から、前記ガスが均一に導入されるように構成
    された、請求項12に記載した成膜装置。
  14. 【請求項14】 前記延設部が予め作製され、前記反応
    室の前記周壁に固定される、請求項12に記載した成膜
    装置。
  15. 【請求項15】 前記反応室がプラズマCVD装置の反
    応管であり、この反応管内で炭化水素系のガスが分解さ
    れ、前記基体上に炭素を主体とする薄膜が形成される、
    請求項10に記載した成膜装置。
  16. 【請求項16】 長尺状の前記基体を支持部材上で導い
    て搬送しながら、前記基体上に連続的に薄膜が形成され
    る、請求項15に記載した成膜装置。
  17. 【請求項17】 前記基体が磁気記録媒体であって、こ
    の磁気記録媒体上に炭素保護膜が形成される、請求項1
    5に記載した成膜装置。
  18. 【請求項18】 前記ガスが酸素ガス又は酸素含有ガス
    とされる、請求項10に記載した成膜装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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GB2273292A (en) * 1991-05-23 1994-06-15 Asahi Chemical Ind Ceramic board having glaze,manufacture method therefor,and electronic device using the ceramic board
JP2011006788A (ja) * 2009-05-29 2011-01-13 Fujifilm Corp 成膜方法、成膜装置、およびガスバリアフィルムの製造方法

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