JPH10194788A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法

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JPH10194788A
JPH10194788A JP8359152A JP35915296A JPH10194788A JP H10194788 A JPH10194788 A JP H10194788A JP 8359152 A JP8359152 A JP 8359152A JP 35915296 A JP35915296 A JP 35915296A JP H10194788 A JPH10194788 A JP H10194788A
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magnetic disk
acid
heated
glass
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガラス基板に損傷を与えることなく、析出溶
融塩を効果的に除去でき、しかもそれと同時にガラス表
面の変質を高いレべルで防止できる磁気ディスク用ガラ
ス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法を提供す
る。 【解決手段】 化学強化処理液から引き上げたガラス基
板の表面を、加熱された酸(例えば、100℃を超える
熱濃硫酸など)で処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハードディスクな
どに用いられる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及
び磁気ディスクの製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク用ガラス基板としては、ア
ルミニウム基板が多く用いられていたが、磁気ディスク
の小型化、薄板化や磁気ヘッドの低浮上化の要請に伴
い、アルミニウム基板に比べ小型化、薄板化が容易で平
坦度が高く磁気ヘッドの低浮上化等が容易であるため、
ガラス基板を用いる割合も増えてきている。
【0003】このように、ガラス基板を磁気ディスク用
基板として用いる場合には、耐衝撃性や耐振動性を向上
させ衝撃や振動によって基板が破損するのを防止する目
的で、ガラス基板の表面に低温イオン交換法による化学
強化処理を施すのが一般的である。
【0004】また、化学強化処理後のガラス基板には溶
融塩が付着しているため、洗浄処理される。従来、化学
強化処理後の磁気ディスク用ガラス基板の洗浄は、例え
ば、特開平2−285508号公報に記載されているよ
うに、アルカリ性洗浄剤、純水、有機溶剤等を用いて行
われている。
【0005】ところで、磁気ディスクの高記録密度化に
伴って、磁気ディスクと磁気ヘッドとの距離(スペーシ
ング)は、益々狭い値が要求されてきている。したがっ
て、磁気ディスク表面の突起の原因となるガラス基板上
の異物の完全なる除去が急務の課題となっている。
【0006】また、ガラス基板上に磁性膜等を形成する
前あるいは形成後に生ずるガラス表面の変質(やけ等)
は、洗浄による表面清浄性や外部雰囲気にもよるが、ガ
ラス基板表層のイオン種及びその濃度とも密接に関連
し、磁気ディスクの使用環境下における耐候性や寿命ひ
いては磁気ディスクの信頼性に影響を及ぼす。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の洗浄処理だけでは、一定の洗浄効果が得られる
ものの、特に、化学強化処理液からガラス基板を引き上
げた後に洗浄したとしても、ガラス基板上に残存する析
出溶融塩の完全なる除去が困難であった。
【0008】また、上述した従来の洗浄処理だけでは、
ガラス表面のやけ等の変質を高いレべルで防止するには
十分でなかった。
【0009】本発明は上記問題点にかんがみてなされた
ものであり、ガラス基板に損傷を与えることなく、析出
溶融塩を効果的に除去でき、しかもそれと同時にガラス
表面の変質を高いレべルで防止できる磁気ディスク用ガ
ラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法の提供
を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明らは研究を重ねた結果、化学強化処理液から引
き上げられたガラス基板の表面を酸を含む洗浄剤で洗浄
することによって、ガラス基板に損傷を与えることなく
析出溶融塩を効果的に除去する技術を開発し、すでに出
願を行っている(特願平7−191529号公報)。
【0011】そして、さらに研究を進めた結果、ガラス
表面の変質を高いレべルで防止するためには、酸の温度
及び濃度が重要であり、加熱された酸(特に100℃超
の熱濃硫酸)でガラス表面を処理すると効果的であるこ
とを見出し本発明を完成するに至った。熱濃硫酸等でガ
ラス表面を処理するとガラス表面の変質を高いレべルで
防止できる理由は、ガラス表面が、Si−O−Naの非
架橋状態から、Si−O−NaのNa+がヒドロニウム
イオンとイオン交換されて水和状態になり、その後、加
熱脱水によってシラノール基が形成され、そのシラノー
ル基が脱水されてガラス表面でSi−O−Siの架橋化
がなされるためであると考えられる。
【0012】本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造
方法は、加熱した化学強化処理液にガラス基板を浸漬
し、ガラス基板表層のイオンを化学強化処理液中のイオ
ンでイオン交換してガラス基板を化学強化する工程と、
化学強化処理液から引き上げたガラス基板の表面を、加
熱された酸で処理する工程とを含む構成としてある。
【0013】また、本発明の磁気ディスク用ガラス基板
の製造方法は、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方
法において、加熱された酸の加熱温度が、ガラス基板表
面近傍のアルカリイオンの溶出を抑制しうる温度である
構成、加熱された酸の加熱温度が、40℃以上であって
ガラス転移点以下である構成、加熱された酸の加熱温度
が、80℃〜300℃である構成、加熱された酸の加熱
温度が、100℃超〜300℃である構成、加熱された
酸による処理時間が、1分〜2時間である構成、加熱さ
れた酸が、熱濃硫酸、100℃超で濃度96%以上の熱
濃硫酸、あるいは、硫酸及び/又はリン酸を含む酸であ
る構成、硫酸及び/又はリン酸が、過酸化水素を含む構
成、化学強化処理液を塩の融点以上の温度に加熱して化
学強化し、ガラス基板を引き上げ300℃〜150℃の
温度まで徐冷し、これを冷媒に接触させてガラス基板を
急冷し、その後加熱された酸による処理を行う構成、あ
るいは、磁気ディスク用ガラス基板が、磁気抵抗型ヘッ
ドで再生される磁気ディスクに使用されるガラス基板で
ある構成としてある。
【0014】さらに、本発明の磁気ディスクの製造方法
は、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を用いて
得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁
性層を形成する構成としてある。
【0015】
【作用】本発明では、化学強化処理液から引き上げられ
たガラス基板を加熱された酸で処理しているので、ガラ
ス基板に損傷を与えることなく、析出溶融塩を効果的に
除去できる。それと同時に、加熱された酸の温度及び濃
度を制御することによって、ガラス表面の変質を高いレ
べルで防止できる。
【0016】さらに、本発明の磁気ディスクの製造方法
によれば、析出溶融塩が完全に除去されているとともに
表面にガラス基板の損傷による微細なキズのない磁気デ
ィスク用ガラス基板を使用しているので、欠陥の少ない
高品質の磁気ディスクを高歩留まりで製造できると同時
に、ガラス表面の変質を高いレべルで防止できる磁気デ
ィスク用ガラス基板を使用しているので、耐候性及び寿
命に優れ高い信頼性を有する磁気ディスクを製造でき
る。また、析出溶融塩の除去とガラス表面の変質防止を
一つの酸処理工程で行えるので、プロセスの効率が非常
に良い。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造
方法においては、まず、加熱した化学強化処理液にガラ
ス基板を浸漬し、ガラス基板表層のイオンを化学強化処
理液中のイオンでイオン交換してガラス基板を化学強化
する。
【0019】ここで、イオン交換法としては、低温型イ
オン交換法、高温型イオン交換法、表面結晶化法、ガラ
ス表面の脱アルカリ法などが知られているが、ガラス転
移点(ガラスの軟化)の観点から、低温型イオン交換法
を用いることが好ましい。
【0020】低温型イオン交換法は、ガラスの転移温度
(Tg)以下の温度域で、ガラス中のアルカリイオン
を、それよりもイオン半径の大きいアルカリイオンと置
換し、イオン交換部の容積増加によってガラス表層に強
い圧縮応力を発生させてガラス表面を強化する方法であ
る。
【0021】化学強化処理液としては、硝酸カリウム
(KNO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、炭酸カリ
ウム(K2CO3)などの溶融塩や、これらの塩を混合し
たもの(例えば、KNO3+NaNO3、KNO3+K2
3など)の溶融塩、あるいは、これらの塩にCu、A
g、Rb、Csなどのイオンの塩を混合したものの溶融
塩等が挙げられる。
【0022】加熱温度は、ガラス転移点の観点から、3
50℃〜650℃、特に350℃〜500℃、さらには
350℃〜450℃であることが好ましい。
【0023】浸漬時間は、抗折強度と圧縮応力層の観点
から、1時間〜20時間程度とすることが好ましい。
【0024】ガラス基板表層に形成する圧縮応力層の厚
さは、耐衝撃性や耐振動性を高めるという観点から、6
0〜300μm程度とすることが好ましい。
【0025】なお、ガラス基板を溶融塩に浸漬する前
に、ガラス基板の割れやひびを防止するため、ガラス基
板を200〜350℃に予熱しておくことが好ましい。
【0026】化学強化工程においては、ガラス基板を端
面で保持して化学強化を行うことが好ましい。これは、
ガラス基板の表面全体を化学強化するためである。
【0027】本発明では、上記化学強化の後、化学強化
処理液からガラス基板を引き上げ、熱歪みの発生を抑え
ることができるように所定温度まで徐冷することが好ま
しい。このように徐冷することにより、熱歪みによるダ
メージを回避できる。
【0028】ガラス基板を徐冷する速度は、2℃/分〜
100℃/分、特に5℃/分〜60℃/分、さらには1
0℃/分〜50℃/分であることが好ましい。
【0029】本発明では、上記徐冷の後、例えば、ガラ
ス基板表面に析出する溶融塩の結晶化を阻止する速度で
ガラス基板を急冷することが好ましい。このように、ガ
ラス基板を急冷すると、析出する溶融塩が脆弱となり、
後述する加熱された酸による処理工程やその後の洗浄工
程において溶融塩の除去が容易となる。
【0030】ガラス基板を急冷する速度は、1600℃
/分〜200℃/分、特に1200℃/分〜300℃/
分、さらには800℃/分〜400℃/分であることが
好ましい。
【0031】ガラス基板の急冷は、ヒートショック(不
良品識別)の観点から、好ましくは100℃〜0℃、さ
らに好ましくは40℃〜10℃の冷媒に接触させて行う
ことが好ましい。
【0032】ガラス基板を冷媒に接触させる時間は、析
出溶融塩の洗浄性の観点から、10分〜60分程度であ
ることが好ましい。
【0033】冷媒としては、水、温水、溶液などの液体
冷媒、窒素ガス、水蒸気、冷却空気などの気体冷媒のほ
か、エアの吹き付けなどが挙げられる。
【0034】本発明では、化学強化処理後のガラス基板
の表面を、加熱された酸で処理することを特徴とする。
【0035】その際、加熱された酸の種類や温度及び濃
度等を制御することによって、ガラス基板に付着した析
出溶融塩を除去すると同時に、ガラス表面の変質を高い
レべルで防止しうる表面状態とする。
【0036】加熱された酸による処理によって、ガラス
表面の変質(やけ等)を高いレべルで防止できる理由は
完全には明らかではないが、ガラス表面が、Si−O−
Naの非架橋状態から、Si−O−NaのNa+がヒド
ロニウムイオンとイオン交換されて水和状態になり、そ
の後、加熱脱水によってシラノール基が形成され、その
シラノール基が脱水されてガラス表面でSi−O−Si
の架橋化がなされるためであると考えられる。
【0037】加熱された酸の加熱温度は、ガラス基板表
面近傍のアルカリイオンの溶出を抑制しうる温度であれ
ばよい。加熱された酸の加熱温度は、40℃〜ガラス転
移点程度の温度が好ましく、80℃〜300℃程度がさ
らに好ましく、100℃超〜300℃程度がより以上に
好ましい。
【0038】加熱された酸の加熱温度が低いとガラス表
面でSi−O−Siの架橋化がなされないためガラス表
面が変質しやすくなる。また、300℃を超えるとガラ
ス基板中のKイオンが基板内部に移動するため、ガラス
基板の強度が低下する。
【0039】なお、加熱された酸の加熱温度が100℃
超えると、ガラス基板表面の変質防止能力が飛躍的に向
上する。
【0040】加熱された酸による処理時間は、1分〜2
時間程度が好ましい。熱濃硫酸を用いる場合は1分〜1
時間程度が好ましい。
【0041】加熱された酸による処理は、例えば、熱濃
硫酸(例えば、濃度96%以上の濃硫酸)、加熱した硫
酸、リン酸、硝酸、フッ酸、塩酸などの酸や、これらの
酸の混酸、あるいはこれらの酸にこれらの酸の塩(フッ
化アンモニウム、硝酸カリウムなど)を加えた処理液に
ガラス基板を浸漬して行う。この場合、超音波を印加し
つつ処理を行ってもよい。
【0042】なお、これらの酸のうちでも、析出溶融塩
の除去及びガラス表面の変質防止の面で、熱濃硫酸(例
えば、100℃超の濃度96%以上の熱濃硫酸)、ある
いは、硫酸及び/又はリン酸を含む酸が好ましい。この
場合、硫酸及び/又はリン酸を含む酸に、過酸化水素を
加え反応により発熱させて処理を行うと、処理効果が向
上するので好ましい。
【0043】加熱された酸による処理は、同一又は異な
る酸の処理層を複数設け、ガラス基板を順次浸漬して行
なってもよい。この場合、酸の温度や濃度を異ならしめ
ても良い。
【0044】酸の濃度は、析出溶融塩の除去及びガラス
表面の変質防止を考慮して決定される。使用する酸によ
って最適濃度が異なるが、例えば、硫酸を用いる場合
は、50wt%以上が好ましく、95wt%以上がさら
に好ましい。
【0045】上述した加熱された酸による処理の後に、
市販の洗浄剤(中性洗剤、界面活性剤、アルカリ性洗浄
剤など)による洗浄、スクラブ洗浄、純水洗浄、溶剤洗
浄、溶剤蒸気乾燥、遠心分離乾燥等の公知の洗浄処理を
行っても良い。また、各洗浄では、加熱や超音波印加を
行ってもよい。
【0046】超音波は、ある周波数範囲で発振する多周
波数型のもの、あるいは、一定の周波数で発振する固定
周波数型のもののいずれであってもよい。周波数は低い
ほど洗浄効果は高いが、ガラス基板に与えるダメージも
大きくなるので、これらのことを考慮して決定する。
【0047】蒸気乾燥は、乾燥速度が速いので乾燥によ
るシミが発生しにくい。蒸気乾燥に用いる溶剤として
は、イソプロピルアルコール、フロン、アセトン、メタ
ノール、エタノールなどが挙げられる。
【0048】ガラス基板としては、イオン交換可能なガ
ラス基板であれば特に制限されない。また、ガラス基板
のサイズ、厚さ等は特に制限されない。
【0049】ガラス基板の材質としては、例えば、アル
ミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダア
ルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、
ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケー
トガラスなどが挙げられる。なお、アルミノシリケート
ガラスは、酸処理による影響が少なく、耐衝撃性や耐振
動性に優れるため特に好ましい。
【0050】アルミノシリケートガラスとしては、Si
2:62〜75重量%、Al23:5〜15重量%、
Li2O:4〜10重量%、Na2O:4〜12重量%、
ZrO2:5.5〜15重量%を主成分として含有する
とともに、Na2O/ZrO2の重量比が0.5〜2.
0、Al23/ZrO2の重量比が0.4〜2.5であ
る化学強化用ガラス、あるいは、SiO2:62〜75
重量%、Al23:5〜15重量%、B23:0.5〜
5重量%、Li2O:4〜10重量%、Na2O:4〜1
2重量%、MgO:0.5〜5重量%、CaO:0.5
〜5重量%、Sb23:0.01〜1.0重量%を主成
分として含有する化学強化用ガラス等が好ましい。
【0051】また、ZrO2の未溶解物が原因で生じる
ガラス基板表面の突起をなくすためには、モル%表示
で、SiO2を57〜74%、ZnO2を0〜2.8%、
Al23を3〜15%、LiO2を7〜16%、Na2
を4〜14%含有する化学強化用ガラス等を使用するこ
とが好ましい。
【0052】このような組成のアルミノシリケートガラ
スは、化学強化することによって、圧縮応力、引張応
力、圧縮応力層の深さの三者をバランス良く制御できる
とともに、抗折強度や、耐熱性に優れ、高温環境下であ
ってもNa等の析出がほとんどないとともに平坦性を維
持し、ヌープ硬度にも優れる。
【0053】上記本発明の磁気ディスク用ガラス基板の
製造方法は、光磁気ディスク用のガラス基板や、異常突
起物や微細なキズ及びガラス基板の変質を嫌う光メモリ
ディスクなどの電子光学用ディスク基板の処理及び表面
改質処理方法としても利用できる。
【0054】次に、本発明の磁気ディスクの製造方法に
ついて説明する。
【0055】本発明の磁気ディスクの製造方法は、上述
した磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を用いて得ら
れた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層
を形成することを特徴とする。
【0056】本発明では、表面にヤケ等のないガラス基
板を使用しているので、磁気ディスクとしても高品質で
ある。すなわち、従来に比べはるかに表面状態の良いガ
ラス基板を使用することによって、磁気ディスクとした
場合にヤケ等による異物に起因するベッドクラッシュを
起こすことがなく、磁性層等の膜にヤケ等に起因する欠
陥が発生しエラーの原因となるということもない。同様
に、析出溶融塩に起因するベッドクラッシュを起こすこ
とがない。
【0057】また、ガラス表面の変質を高いレべルで防
止できる磁気ディスク用ガラス基板を使用しているの
で、耐候性及び寿命に優れ高い信頼性を有する磁気ディ
スクを製造できる。
【0058】磁気記録媒体は、通常、磁気ディスク用ガ
ラス基板上に、下地層、磁性層、凹凸形成層、保護層、
潤滑層等を必要に応じ順次積層して製造する。
【0059】磁気記録媒体における下地層は、磁性層に
応じて適宜選択される。下地層としては、例えば、C
r、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Alなどの非磁性
金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料からなる下
地層等が挙げられる。Coを主成分とする磁性層の場合
には、磁気特性向上等の観点から、Cr単体やCr合金
であることが好ましい。また、下地層は単層とは限ら
ず、同一又は異種の層を積層した複数層構造とすること
もできる。例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr
/CrV、CrV/CrV、Al/Cr/CrMo、A
l/Cr/Cr等の多層下地層等が挙げられる。
【0060】磁性層の材料は特に制限されない。
【0061】磁性層としては、具体的には、例えば、C
oを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、Co
NiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiP
t、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrP
tTa、CoCrPtSiOなどの磁性薄膜が挙げられ
る。また、磁性層を非磁性膜(例えば、Cr、CrM
o、CrVなど)で分割してノイズの低減を図った多層
構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtC
r、CoCrTaPt/CrMo/CoCrTaPtな
ど)としもよい。
【0062】また、磁性層としては、上述したCo系の
ほか、例えば、フェライト系、鉄−希土類系や、SiO
2、BNなどからなる非磁性膜中にFe、Co、CoF
e、CoNiPt等の磁性粒子が分散された構造のグラ
ニュラーなどが挙げられる。磁性層は、内面型、垂直型
のいずれであってもよい。
【0063】凹凸形成層は、媒体表面の凹凸を制御する
目的で設けられる。凹凸形成層の形成方法や材料等は特
に制限されない。また、凹凸形成層の形成位置も特に制
限されない。
【0064】この凹凸形成層は、非接触型記録方式磁気
ディスク装置用の磁気記録媒体の場合、媒体表面に凹凸
形成層の凹凸に起因した凹凸を形成し、この媒体表面の
凹凸によって、磁気ヘッドと磁気記録媒体との吸着を防
止し、CSS耐久性を向上させる目的で形成される。
【0065】なお、接触型記録方式磁気ディスク装置用
の磁気記録媒体の場合には、磁気ヘッドや磁気記録媒体
の損傷を避けるため媒体表面はできるだけ平坦であるこ
とが好ましいので、凹凸形成層を設ける必要はない。
【0066】凹凸形成層の表面粗さは、Ra=10〜5
0オングストロームであることが好ましい。より好まし
い範囲は、Ra=10〜30オングストロームである。
【0067】Raが10オングストローム未満の場合、
磁気記録媒体表面が平坦に近いため、磁気ヘッドと磁気
記録媒体とが吸着し、磁気ヘッドや磁気記録媒体が傷つ
いてしまったり、吸着によるヘッドクラッシュを起こし
致命的な損傷を受けるので好ましくない。また、Raが
50オングストロームを越える場合、グライドハイトが
大きくなり記録密度の低下を招くので好ましくない。
【0068】凹凸形成層の材質及び形成方法は多種知ら
れており、特に制限されない。凹凸形成層の材質として
は、Al、Ti、Cr、Ag、Nb、Ta、Bi、S
i、Zr、Cu、Ce、Au、Sn、Pd、Sb、G
e、Mg、In、W、Pb等の金属やそれらの合金、又
はそれら金属や合金の酸化物、窒化物、炭化物を使用す
ることができる。形成が容易である等の観点からは、A
l単体やAl合金、酸化Al(Al23など)、窒化A
l(AlNなど)といったAlを主成分とする金属であ
ることが望ましい。
【0069】凹凸形成層は、連続したテクスチャー膜と
してもよく、離散的に分布した島状突起で構成してもよ
い。この島状突起の高さは、100〜500オングスト
ロームであることが好ましく、100〜300オングス
トロームであることがより好ましい。
【0070】上述した凹凸形成層の表面粗さ及び凹凸
(突起)の高さは、凹凸形成層の材質及びその組成、熱
処理条件等によって制御できる。
【0071】他の凹凸形成方法としては、機械的研磨に
よるテクスチャー加工、化学的エッチングによるテクス
チャー加工、エネルギービーム照射によるテクスチャー
加工などが挙げられ、それらの方法を組み合わせること
もできる。
【0072】保護層としては、例えば、Cr膜、Cr合
金膜、カーボン膜、ジルコニア膜、シリカ膜等が挙げら
れる。これらの保護膜は、下地層、磁性層等とともにイ
ンライン型又は静置対向型スパッタリング装置で連続し
て形成できる。また、これらの保護膜は、単層であって
もよく、あるいは、同一又は異種の膜からなる多層構成
としてもよい。
【0073】上記保護層上に、あるいは上記保護層に替
えて、他の保護層を形成してもよい。例えば、上記保護
層の代わりに、テトラアルコキシランをアルコール系の
溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散し
て塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO2)膜を
形成してもよい。この場合、保護層と凹凸形成層の両方
の機能を果たす。
【0074】潤滑層としては多種多様な提案がなされて
いるが、一般的には、パーフルオロポリエーテル(PF
PE)等からなる液体潤滑剤を、媒体表面にディッピン
グ法(浸漬法)、スピンコート法、スプレイ法等によっ
て塗布し、必要に応じ加熱処理を行って形成する。
【0075】
【実施例】以下、実施例にもとづき本発明をさらに具体
的に説明する。
【0076】実施例1
【0077】本実施例における磁気ディスク用ガラス基
板の製造方法は、大別すると(1)研削、研磨工程、
(2)化学強化工程、(3)冷却工程、(4)加熱した
酸による処理工程に分けられる。
【0078】(1)研削、研磨工程 まず、溶解成形法によってアルミノシリケイトガラスか
らなるシートガラスを形成する。アルミノシリケイトガ
ラスとしては、モル%表示で、SiO2を57〜74
%、ZnO2を0〜2.8%、Al23を3〜15%、
LiO2を7〜16%、Na2Oを4〜14%主成分とし
て含有する化学強化用ガラスを使用した。
【0079】次いで、研削砥石を使ってシートガラスか
ら円盤状にガラスを切り出す。次に、砂かけによって表
面と裏面を研削する。そして円盤状にガラス基板の中央
部を穿孔し、砥石で穿孔された内周面と外周面を研磨し
て外径寸法及び内径寸法を定めるとともに、内周面と外
周面の面取りを行う。そして、研磨工程の最後として表
面及び裏面に精密研磨を施して仕上げる。このようにし
て円盤状ガラス基板を得た。
【0080】(2)化学強化工程 次に、上記研削、研磨工程を終えたガラス基板を洗浄
後、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(6
0%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化
処理液を用意し、この化学強化処理液を400℃に加熱
し、300℃に予熱された洗浄済みのガラス基板を約3
時間浸漬して行った。この浸漬の際に、ガラス基板の表
面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス
基板が端面で保持されるようにホルダーに収納した状態
で行った。
【0081】このように、化学強化処理液に浸漬処理す
ることによって、ガラス基板表層のリチウムイオン、ナ
トリウムイオンは、化学強化処理液中のナトリウムイオ
ン、カリウムイオンにそれぞれ置換されガラス基板は強
化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の
厚さは、約100〜200μmであった。
【0082】(3)冷却工程 上記化学強化を終えたガラス基板を、第一、第二徐冷室
で順次徐冷する。まず、化学強化処理液からガラス基板
を引き上げ、300℃に加熱されている第一徐冷室に移
送し、この中で約10分間保持して300℃にガラス基
板を徐冷する。ついで、第一徐冷室から200℃に加熱
されている第二徐冷室にガラス基板を移送し、300℃
から200℃までガラス基板を徐冷する。このように二
段階に分けて徐冷することにより、熱歪みによるダメー
ジからガラス基板を開放できる。次に、上記徐冷を終え
たガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し約20
分間維持した。
【0083】(4)加熱した酸による処理工程 上記冷却工程を終えたガラス基板を、約200℃に加熱
した濃度96wt%の熱濃硫酸に5分間浸漬して加熱し
た酸による処理を行い、析出溶融塩の除去及びガラス表
面の変質防止処理を同時に行った。
【0084】次いで、ガラス基板を、中性洗剤、中性洗
剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、
IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄し
た。なお、各洗浄槽には超音波(周波数40kHz)を
印加した。
【0085】以上の工程を経て製造された磁気ディスク
用ガラス基板の表面を、顕微鏡で検査したところ、5μ
m以上のアルカリ溶出によるヤケは発見されなかった。
これに対して、加熱された酸による処理を行わないもの
は5μm以上ヤケが数十〜数百個認められた。
【0086】また、温度85℃、湿度85%の高温多湿
環境試験を120時間実施したところ、やけ等のガラス
基板表面の変質は認められなかった。
【0087】(5)磁気ディスク製造工程 上述した工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板
の両面に、インライン式のスパッタリング装置を用い
て、Cr下地層、CrMo下地層、CoPtCr磁性
層、C保護層を順次成膜して磁気ディスクを得た。
【0088】得られた磁気ディスクについて、耐候性及
び寿命を調べるたたところ、ガラス基板表面の変質に起
因する磁性膜等の劣化や欠陥は認められなかった。
【0089】また、得られた磁気ディスクについてグラ
イドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気デ
ィスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッド
が磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められ
なかった。また、磁性層等の膜に欠陥が発生していない
ことも確認できた。
【0090】実施例2 約120℃に加熱した濃度8wt%の硫酸に20分間浸
漬し、超音波(周波数40kHz)をかけながら酸処理
を行ったこと以外は実施例1と同様にして、磁気ディス
ク用ガラス基板及び磁気ディスクを得た。
【0091】その結果、実施例1とほぼ同様の効果が得
られた。
【0092】実施例3 硫酸洗浄の代わりに、約40℃に加熱した濃度10wt
%のリン酸に2分浸漬し、超音波(周波数32kHz)
をかけながら酸処理を行ったこと以外は実施例1と同様
にして、磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを
得た。
【0093】その結果、硫酸洗浄に比べやや効果が少な
かった。
【0094】実施例4〜5 濃度35wt%の過酸化水素を酸に加えたたこと以外は
実施例2〜3と同様にして、磁気ディスク用ガラス基板
及び磁気ディスクを得た。
【0095】その結果、実施例2〜3と同様の効果が得
られた。
【0096】実施例6〜7 アルミノシリケートガラスの代わりにソーダライムガラ
ス(実施例6)、ソーダアルミノケイ酸ガラス(実施例
7)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、磁気デ
ィスク用ガラス基板及び磁気ディスクを得た。
【0097】その結果、アルミノシリケートガラスに比
べ圧縮応力層は浅くなるが、実用上問題はなかった。
【0098】実施例8 実施例1で得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面
に、Al(膜厚50オングストローム)/Cr(100
0オングストローム)/CrMo(100オングストロ
ーム)からなる下地層、CoPtCr(120オングス
トローム)/CrMo(50オングストローム)/Co
PtCr(120オングストローム)からなる磁性層、
Cr(50オングストローム)保護層をインライン型ス
パッタ装置で形成した。
【0099】上記基板を、シリカ微粒子(粒経100オ
ングストローム)を分散した有機ケイ素化合物溶液(水
とIPAとテトラエトキシシランとの混合液)に浸し、
焼成することによってSiO2からなる保護層を形成
し、さらに、この保護層上をパーフロロポリエーテルか
らなる潤滑剤でディップ処理して潤滑層を形成して、M
Rヘッド用磁気ディスクを得た。
【0100】また、耐候性及び寿命を調べたところ、ガ
ラス基板表面の変質に起因する磁性膜等の劣化や欠陥は
認められなかった。
【0101】さらに、得られた磁気ディスクについてグ
ライドテストを実施したところ、ヒットやクラッシュは
認められなかった。また、磁性層等の膜に欠陥が発生し
ていないことも確認できた。
【0102】実施例9 下地層をAl/Cr/Crとし、磁性層をCoNiCr
Taとしたこと以外は実施例7と同様にして薄膜ヘッド
用磁気ディスクを得た。
【0103】上記磁気ディスクについて実施例8と同様
のことが確認された。
【0104】比較例1 冷却工程を終えたガラス基板を加熱された酸の代わりに
97℃の温水中に5時間浸漬したこと以外は実施例1と
同様にして、磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディス
クを得た。
【0105】磁気ディスク用ガラス基板の表面を、実施
例1と同様に顕微鏡検査したところ、5μm以上ヤケが
数十〜数百個認められた。また、得られた磁気ディスク
についてその耐候性及び寿命を調べたところ、ガラス基
板表面の変質に起因する磁性膜等の劣化や欠陥が認めら
れた。さらに、得られた磁気ディスクについてグライド
テストを実施したところ、ヒットやクラッシュが認めら
れた。
【0106】以上好ましい実施例をあげて本発明を説明
したが、本発明は必ずしも上記実施例に限定されるもの
ではない。
【0107】例えば、加熱された酸の濃度、加熱温度、
種類、浸漬時間等は実施例のものに限定されず要求品質
レベル等に応じ適宜変更して実施できる。
【0108】
【発明の効果】以上説明したように本発明の磁気ディス
ク用ガラス基板の製造方法によれば、化学強化処理後
に、ガラス基板を加熱された酸で処理しているので、ガ
ラス基板に損傷を与えることなく、析出溶融塩を効果的
に除去できると同時に、ガラス表面の変質を防止でき
る。
【0109】また、加熱された酸の種類、温度及び濃度
を制御することによって、ガラス表面の変質を高いレべ
ルで防止できる。
【0110】さらに、本発明の磁気ディスクの製造方法
によれば、析出溶融塩が完全に除去されているとともに
表面にガラス基板の損傷による微細なキズのない磁気デ
ィスク用ガラス基板を使用しているので、欠陥の少ない
高品質の磁気ディスクを高歩留まりで製造できると同時
に、ガラス表面の変質を高いレべルで防止できる磁気デ
ィスク用ガラス基板を使用しているので、耐候性及び寿
命に優れ高い信頼性を有する磁気ディスクを製造でき
る。
【0111】また、析出溶融塩の除去とガラス表面の変
質防止を一つの酸処理工程で行えるので、プロセスの効
率が非常に良い。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱した化学強化処理液にガラス基板を
    浸漬し、ガラス基板表層のイオンを化学強化処理液中の
    イオンでイオン交換してガラス基板を化学強化する工程
    と、 化学強化処理液から引き上げたガラス基板の表面を、加
    熱された酸で処理する工程とを含むことを特徴とする磁
    気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  2. 【請求項2】 加熱された酸の加熱温度が、ガラス基板
    表面近傍のアルカリイオンの溶出を抑制しうる温度であ
    ることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラ
    ス基板の製造方法。
  3. 【請求項3】 加熱された酸の加熱温度が、40℃以上
    であってガラス転移点以下であることを特徴とする請求
    項1又は2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 加熱された酸の加熱温度が、80℃〜3
    00℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 加熱された酸の加熱温度が、100℃超
    〜300℃であることを特徴とする請求項1〜4のいず
    れか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 加熱された酸による処理時間が、1分〜
    2時間であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか
    一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  7. 【請求項7】 加熱された酸が、熱濃硫酸、100℃超
    で濃度96%以上の熱濃硫酸、あるいは、硫酸及び/又
    はリン酸を含む酸であることを特徴とする請求項1〜6
    のいずれか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 硫酸及び/又はリン酸が、過酸化水素を
    含むことを特徴とする請求項7記載の磁気ディスク用ガ
    ラス基板の製造方法。
  9. 【請求項9】 化学強化処理液を塩の融点以上の温度に
    加熱して化学強化し、ガラス基板を引き上げ300℃〜
    150℃の温度まで徐冷し、これを冷媒に接触させてガ
    ラス基板を急冷し、その後加熱された酸による処理を行
    うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載
    の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  10. 【請求項10】 磁気ディスク用ガラス基板が、磁気抵
    抗型ヘッドで再生される磁気ディスクに使用されるガラ
    ス基板であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか
    一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか一項に記載
    の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を用いて得られ
    た磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を
    形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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