JPH1018018A - 高純度ガス用ステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents

高純度ガス用ステンレス鋼材の製造方法

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JPH1018018A
JPH1018018A JP16761596A JP16761596A JPH1018018A JP H1018018 A JPH1018018 A JP H1018018A JP 16761596 A JP16761596 A JP 16761596A JP 16761596 A JP16761596 A JP 16761596A JP H1018018 A JPH1018018 A JP H1018018A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐食性、非触媒性および水分放出性に優れたC
r酸化皮膜を表面に有する高純度ガス用ステンレス鋼材
を迅速に製造できる高純度ガス用ステンレス鋼材の製造
方法を提供する。 【解決手段】重量%で、Cr:20〜35%、Mo:
0.1〜5%、Ni:0〜3%、Cu:0〜0.5%、
W:0〜0.5%、Ti:0〜1%、Nb:0〜1%を
含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不可
避的不純物が、それぞれC:0.03%以下、Si:
0.5%以下、Mn:0.2%以下、Al:0.5%以
下、P:0.02%以下、S:0.003%以下、O:
0.01%以下、N:0.03%以下である化学組成を
有するフェライト系ステンレス鋼材に、表面硬化処理を
施し、次いで電解研磨処理を施した後、Cr酸化性であ
ってかつFe還元性の雰囲気中で400℃以上に加熱す
る熱処理を施してCr濃度の高い酸化皮膜を形成する高
純度ガス用ステンレス鋼材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高純度ガス用フェ
ライト系ステンレス鋼材、詳しくは、半導体製造プロセ
スなどで用いられる高純度ガス用配管等の高Crフェラ
イト系ステンレス鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体製造分野においては、近年、半導
体素子の高集積化が進み、超LSIと称されるデバイス
では、幅が1μm以下の微細パターンの加工が必要とさ
れている。このような超LSI製造プロセスでは、微少
な塵や微量の不純物ガスであっても配線パターンに付着
または吸着すると回路不良等の原因となる。そのため、
使用する反応ガスおよびキャリヤガスはともに、高純度
であること、すなわちガス中の微粒子および不純物ガス
の少ないことが必要とされる。さらに、その高純度ガス
用配管および部材に対しては、内面からの微粒子(パー
ティクル)およびガスの放出が極力少ないことが要求さ
れる。
【0003】また、半導体製造用ガスとしては窒素やア
ルゴン等の不活性ガス以外にいわゆる特殊材料ガスと呼
ばれるガスも多く使用される。そのため、高純度ガス用
配管および部材に対しては、上記の要求に加え、塩素、
塩化水素、臭化水素などの腐食性ガスに対する耐食性、
シランなど化学的に不安定なガスに対する非触媒性、お
よび水分が吸着しにくく脱離しやすいという水分放出性
などが必要とされる。この耐食性、非触媒性および水分
放出性は、ガス配管系のみならず、各種半導体製造装置
の反応容器や内部部品に用いられるステンレス鋼材にお
いても同様に必要とされる。
【0004】この耐食性、非触媒性および水分放出性
は、酸化性雰囲気中でステンレス鋼を加熱し、鋼材表面
にCr酸化物皮膜を生成させると向上することが知られ
ている。
【0005】特開昭64−31956号公報には、電解
研磨したステンレス鋼材を酸素含有量が25容量%以上
の雰囲気中で280〜580℃に加熱し、表面に酸化皮
膜を形成することにより、不純物溶出性および耐食性を
改善できたことが開示されている。
【0006】特開平1−87660号公報には、電解研
磨したステンレス鋼材を大気等の酸化性ガス雰囲気中2
20〜580℃で加熱し、膜厚が7.5nm以上の非晶
質酸化皮膜を形成することにより、ステンレス鋼材表面
からのガス放出量を低減できたことが開示されている。
【0007】また、特開平3−274254号公報に
は、表面研磨した後のステンレス鋼材を不活性ガス雰囲
気または真空中150℃〜200℃で加熱前処理した
後、オゾン含有ガス雰囲気中150℃〜200℃で加熱
し、表面に緻密な酸化皮膜を形成することにより、ステ
ンレス鋼材表面から放出される吸着ガスを低減できたこ
とが開示されている。
【0008】これらの従来技術では、いずれもオーステ
ナイト系ステンレス鋼、中でもSUS316Lを酸化性
ガス雰囲気中で加熱することによって鋼材表面に酸化皮
膜を形成している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、耐食
性、非触媒性および水分放出性は、ステンレス鋼材表面
にCr酸化物皮膜を生成させることにより向上する。
【0010】しかしながら、オーステナイト系ステンレ
ス鋼ではCrの拡散が遅いため、オーステナイト系ステ
ンレス鋼を電解研磨後に酸化性ガス雰囲気中で加熱して
も、耐食性、非触媒性および水分放出性に優れたCr酸
化皮膜を形成させることは困難である。オーステナイト
系ステンレス鋼を酸化性ガス雰囲気中で加熱した場合、
表面に形成されるCr酸化皮膜はFe酸化物を多く含む
ためである。
【0011】本発明の目的は、耐食性、非触媒性および
水分放出性に優れたCr酸化皮膜を表面に有する高純度
ガス用ステンレス鋼材を迅速に製造できる高純度ガス用
ステンレス鋼材の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の高純度ガス用ス
テンレス鋼材の製造方法は、重量%で、Cr:20〜3
5%、Mo:0.1〜5%、Ni:0〜3%、Cu:0
〜0.5%、W:0〜0.5%、Ti:0〜1%、N
b:0〜1%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物
からなり、不可避的不純物中のC、Si、Mn、Al、
P、S、OおよびNが、それぞれC:0.03%以下、
Si:0.5%以下、Mn:0.2%以下、Al:0.
5%以下、P:0.02%以下、S:0.003%以
下、O:0.01%以下、N:0.03%以下である化
学組成を有するフェライト系ステンレス鋼材に、表面硬
化処理を施し、次いで電解研磨処理を施した後、Cr酸
化性であってかつFe還元性の雰囲気中で400℃以上
に加熱する熱処理を施すことを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の各要件について
詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「重
量%」を意味する。
【0014】(A)ステンレス鋼の化学組成 Cr:Crは、ステンレス鋼自体の耐食性を持たせるの
に必要であるとともに、本発明の目的であるCr酸化皮
膜の生成を容易にする意味から特に重要である。20%
未満ではCr酸化皮膜の生成が不十分であり、35%超
では金属間化合物が析出しやすく靭性が劣化するので、
20〜35%とした。好ましくは24〜30%である。
【0015】Mo:Moは、耐食性向上に効果を有する
元素であり、腐食性ガスに対する耐食性を向上させるた
めに添加する。Mo:0.1%未満ではその効果が現れ
ず、5%超では金属間化合物を生じ靭性を劣化させるの
で0.1〜5%とした。好ましくは1〜4%である。
【0016】Ni:Niは、フェライト系ステンレス鋼
では靭性を向上させるために必要に応じて添加できる元
素である。しかし、3%超ではオーステナイト相を生じ
耐食性が低下する。また、オーステナイト相が生じる
と、表面のオーステナイト相部ではCr酸化皮膜が生成
しない。したがって、0〜3%とした。
【0017】Cu、W:これらの元素は、ステンレス鋼
の耐食性を改善するために必要に応じて添加することが
できる元素である。含有量が、それぞれ0.5%を超え
るとかえって、靭性および熱間加工性の劣化を招く。し
たがって、それぞれ0〜0.5%とした。
【0018】Ti、Nb:フェライト系ステンレス鋼に
おいては、固溶Cおよび固溶NがあるとCrと化合物を
形成し、有害なCr析出物を生成する。固溶Cおよび固
溶Nを固定するために、炭窒化物を生成するTiおよび
Nbを必要に応じて添加するのが良い。これらの含有量
が、それぞれ1%を超えると靭性を劣化させるので、そ
れぞれ0〜1%とした。好ましくはそれぞれ0.5%以
下である。
【0019】不可避不純物:以下の元素は、不可避不純
物であり、含有量は低い方が良い。すなわち、その含有
量の望ましい下限は0%である。
【0020】C:Cは、Cr炭化物として析出し、耐食
性を低下させるので、含有量は低い方がよい。したがっ
て、0.03%以下とした。好ましくは0.02%以下
である。
【0021】Si:Siは、溶製工程において溶鋼中の
Oを低減するいわゆる脱酸剤として添加される。ただ
し、鋼中に酸化物系介在物として残存するので、含有量
は低い方が良い。したがって、0.5%以下とした。好
ましくは0.2%以下である。
【0022】Mn:MnもSiと同様、溶製工程におい
て溶鋼中のOを低減するいわゆる脱酸剤として添加され
る。しかしながら、Mn含有量が多いと溶接時に多量の
発塵が起こるので、含有量は低い方が良い。0.2%超
で、発塵量が顕著に増加するため0.2%以下とした。
好ましくは0.1%以下である。
【0023】S:Sは、極微量でも硫化物系介在物を生
成し、耐食性を極めて低下させるので、含有量は低い方
がよい。したがって、0.003%以下とした。好まし
くは0.002%以下である。
【0024】P:Pは、熱間加工性に対して有害な元素
であるので、含有量は低い方がよい。しかしながら、鋼
中Pの極低化は商業的な生産では困難である。また、低
Pのステンレス鋼の製造に必要なP含有量の低い原料は
高価であるため、経済的でない。したがって、Pの含有
量は性能上悪影響のない程度とするのが好ましく、0.
02%以下とした。
【0025】Al:AlもSiやMnと同様、溶製工程
において溶鋼中のOを低減するいわゆる脱酸剤として添
加される。ただし、Siと同様、鋼中に酸化物系介在物
として残存するので、低い方が良い。また、Alは他の
合金元素と比較して極めて酸化し易いため、溶接時に溶
融部で雰囲気中の微量酸素と反応してAl酸化物を生成
し発塵の原因にもなる。したがって、0.5%以下とし
た。
【0026】O:Oは、鋼中で酸化物系介在物を形成す
る元素であり、できるだけ低い方が良い。酸化物系介在
物は、溶接時に溶融部で凝集し粗大化して発塵の原因に
もなる。したがって、0.01%以下とした。好ましく
は0.005%以下である。
【0027】N:Nは、フェライト系ステンレス鋼中で
は微量でもCr窒化物を生成し、靭性を劣化させるの
で、低い方が良い。したがって、0.03%以下とし
た。好ましくは0.01%以下である。
【0028】(B)表面硬化 前述したように、熱処理によるCr酸化皮膜の生成に
は、母材内部から酸化反応が起こる表面部へのCrの拡
散速度が重要である。またフェライト相中ではオーステ
ナイト相中に比べてCrの拡散速度が極めて速い。
【0029】しかし、フェライト系ステンレス鋼であっ
ても、低温での熱処理ではCr酸化皮膜の生成速度は小
さくなる。低温での拡散は、格子拡散より粒界拡散や転
位拡散が支配的であるためである。
【0030】そこで、鋼材に表面硬化処理を施こして鋼
材表面に所定量の歪を与える。歪が存在すると、鋼材表
面近傍のCrの拡散速度が速くなり、Cr濃度の高いC
r酸化皮膜を低温であっても短時間で形成させることが
できる。
【0031】表面硬化の方法として、例えばサンドブラ
スト法、ショットブラスト法、砥粒研磨法、冷間圧延法
などがある。小径長尺の鋼管に対しては、肉厚方向およ
び管軸方向の双方に対して均一に硬化させることができ
る冷間抽伸加工を適用するのが好ましい。
【0032】なお、表面硬さがビッカーズ硬度(Hv2
5g)で200以上となるように表面硬化処理を施すこ
とが好ましく、表面硬さがビッカーズ硬度(Hv25
g)で300以上となるように表面硬化処理を施すこと
がより好ましい。表面硬さがビッカース硬度(Hv25
g)で180未満ではCrの拡散が十分に起こらないの
で、耐食性、非触媒性および水分放出性に優れたCr酸
化皮膜を生成するには、加熱温度が550℃で6時間以
上かかるためである。表面硬さは加工歪にほぼ対応して
いる。
【0033】表面硬さは高硬度であればあるほど、ステ
ンレス鋼の表面にCr濃度の高いCr酸化皮膜を短時間
で形成させることができる。しかし、表面硬さがビッカ
ーズ硬度(Hv25g)で500を超えると、Cr酸化
皮膜の形成後のステンレス鋼に曲げ加工を施して使用す
る場合、その曲げ部のCr酸化皮膜に亀裂損傷が生じ易
くなる。そのため、500以下とするのが好ましい。
【0034】(C)電解研磨 電解研磨によりステンレス鋼の表面粗度(Rmax)を
1μm以下とする。表面粗度(Rmax)が1μmを超
える場合は、形成される酸化皮膜が緻密さに欠けたもの
となるので、耐食性が悪化する。
【0035】電解研磨は、他の内面平滑化の方法にくら
べ、平滑度に優れるという利点がある。なお、電解研磨
は通常の方法によれば良い。
【0036】(D)熱処理 熱処理を施すことにより、母材内部から表面部にCrを
拡散させ、鋼材表面にCr濃度の高いCr酸化皮膜を形
成させる。
【0037】熱処理は、Cr酸化性であってかつFe還
元性の雰囲気中で400℃以上に加熱する。
【0038】熱処理の雰囲気をCr酸化性であってかつ
Fe還元性の雰囲気とする理由は、鋼材表面に形成され
る酸化皮膜をFe含有率の低いCr主体の酸化皮膜とす
るためである。Fe含有率が増加すると、酸化皮膜の耐
食性、非触媒性および水分放出性が悪化する。
【0039】Cr酸化性であってかつFe還元性の雰囲
気としては、例えば酸素分圧10-3Pa以下の不活性ガ
ス雰囲気または酸素ガスのみの雰囲気、水素と水を所定
の分圧で有する不活性ガス雰囲気または水素と水のみの
雰囲気などがある。なお、Cr酸化性であってかつFe
還元性の雰囲気か否かは、酸化物生成の標準自由エネル
ギーと温度との関係をもとに判断すれば良い。
【0040】また、加熱温度が800℃以下であれば、
上記不活性ガスの代わりにあるいは上記不活性ガスと同
時に窒素ガスを用いても良い。Arなどの不活性ガスお
よび窒素ガスを添加した場合、酸化皮膜をむらなく一様
に形成できる利点がある。
【0041】加熱温度を400℃以上とする理由は、加
熱温度が400℃未満の場合、Crの拡散速度が小さい
ので、十分な膜厚を有する酸化皮膜を形成することが困
難であるため、耐食性、非触媒性および水分放出性を向
上させることができないためである。
【0042】しかし、加熱温度が1000℃を超える
と、母材の結晶粒が肥大化して加工性が悪化するので、
加熱温度の上限は1000℃とすることが好ましい。ま
た、加熱温度が600℃を超えると、酸化皮膜の結晶粒
が肥大化して、酸化皮膜中に極微細なひび割れが生じ耐
食性が不十分となる。したがって、加熱温度の上限は6
00℃とすることがより好ましい。
【0043】上述した組成を有するフェライト系ステン
レス鋼材の表面に、上述の表面硬化処理、電解研磨処理
および熱処理を施すことにより、耐食性、非触媒性およ
び水分放出性に優れたCr酸化皮膜を低温であっても短
時間で形成することができる。すなわち、本発明の方法
によれば、耐食性、非触媒性および水分放出性に優れた
Cr酸化皮膜を有する高純度ガス用ステンレス鋼材を迅
速に製造できる。
【0044】
【実施例】表1に示す化学組成を有するフェライト系ス
テンレス鋼管と鋼板について、表面硬化処理を施し、次
いで電解研磨処理を施した後、表2に示す種々の条件で
熱処理して酸化皮膜を形成させ、酸化皮膜の評価を行っ
た。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】先ず、鋼管に対する酸化皮膜の形成および
評価方法について説明する。
【0048】表1に示す化学組成を有する外径6.4m
m、肉厚1mm、長さ4mのフェライト系ステンレス鋼
のシームレス鋼管に冷間抽伸加工を施し、次いで電解研
磨によってRmaxが0.5μmになるように平滑化
し、高純度水によって洗浄後、99.999%Arガス
を通じながら200℃に加熱して乾燥した。これらの鋼
管の内表面硬さをビッカース硬度計により測定し、内表
面粗さを表面粗さ計により測定した。
【0049】これらの鋼管を表2に示す種々の条件で熱
処理して酸化皮膜を生成させた後、鋼管の長さ方向中央
部から切り出したサンプル(長さ1cm)を用いて酸化
皮膜厚さと皮膜中のCr濃度を測定した。
【0050】酸化皮膜の厚さと皮膜中のCr濃度は、切
り出したサンプルを縦半割りし、二次イオン質量分析法
(SIMS)により測定した。皮膜厚さはその酸素濃化
部の厚さを、またCr濃度は皮膜中の酸素を除く全金属
元素に対するCrの二次イオン強度の厚さ方向での最高
値をとることによって求めた。結晶粒径は走査型電子顕
微鏡を用いて求め、結晶構造はラマン散乱分光法により
求めた。
【0051】耐食性は、鋼管に臭化水素ガスを5気圧の
圧力で封入し、温度80℃で100時間保持した後、管
内面の発錆状況を走査型電子顕微鏡で観察する方法で評
価した。
【0052】非触媒性は、管内に100ppmモノシラ
ン(SiH4)を含むArガスを通じて、管出側でガス
クロマトグラフによりモノシランの分解によって生ずる
2濃度を測定し、モノシランの分解する最低の温度に
より評価した。
【0053】水分放出性は、熱処理後の管を温度20
℃、相対湿度50%の雰囲気中に24時間放置した後、
管内に乾燥したArガス(水分1ppb)を1リットル
/分で流し、管出側ガス中の水分量を大気圧イオン化質
量分析法で測定し、測定開始から管出側での水分量が1
ppb以下に低下するまでの所要時間(脱離時間)によ
り評価した。水分放出特性はこの所要時間が短いほど優
れている。
【0054】次いで、鋼板に対する酸化皮膜の形成およ
び評価方法について説明する。
【0055】表1に示す化学組成を有する幅80mm、
長さ100mm、厚さ4mmのフェライト系ステンレス
鋼板に冷間圧延加工を施し、次いで電解研磨によってR
maxが0.5μmになるように平滑化し、高純度水に
よって洗浄後、99.999%Arガス中で200℃に
加熱して乾燥した。表面硬さおよび表面粗さの測定は鋼
管の場合と同様である。
【0056】これらの鋼板を表2に示す種々の条件で熱
処理して酸化皮膜を生成させた後、鋼板の中央部から切
り出したサンプル(幅8mm、長さ20mm)を用いて
酸化皮膜厚さと皮膜中のCr濃度を測定した。酸化皮膜
の厚さと皮膜中のCr濃度測定方法は鋼管の場合と同様
である。結晶粒径と結晶構造の評価も鋼管の場合と同様
である。
【0057】耐食性は、サンプルを鋼管内に入れ、鋼管
に臭化水素ガスを5気圧の圧力で封入し、温度80℃で
100時間保持した後、サンプル表面の発錆状況を走査
型電子顕微鏡で観察する方法で評価した。
【0058】なお、非触媒性と水分放出性については評
価しなかった。
【0059】表3に、製品の熱処理前の表面硬さと表面
粗さ、熱処理後の酸化皮膜の厚さと皮膜中のCr濃度お
よび各種性能を示す。
【0060】
【表3】
【0061】本発明の方法で得られる鋼材では、酸化皮
膜中のCr濃度が90原子%以上と従来鋼に比べて高
く、かつ厚さ7nm以上と酸化皮膜が厚く、耐食性、非
触媒性および水分放出性が優れることが明らかとなっ
た。
【0062】また、図1は、形成される酸化皮膜厚さの
表面硬さ依存性を示すグラフである。図中の○、□およ
び△は、表3の結果であり、●は、表1に示す鋼Dのフ
ェライト系ステンレス鋼管および鋼板に加工度を変えた
冷間抽伸加工および冷間圧延をそれぞれ施し、次いで電
解研磨処理および表2に示す熱処理zを施したものの結
果である。
【0063】熱処理を施す前に表面硬化処理を施して表
面硬さを増加させる、すなわち鋼表面の歪を増加させる
ことにより、酸化皮膜の形成速度を速められることがわ
かった。特に、表面硬さをビッカース硬度(Hv25
g)で200以上とすることにより酸化皮膜の形成速度
を顕著に増大させることができた。
【0064】すなわち、本発明で定める範囲内の化学組
成のステンレス鋼に表面硬化処理、電解研磨および熱処
理を施すことにより、耐食性、非触媒性および水分放出
性に優れるCr酸化皮膜を迅速に形成できる。
【0065】また、これを利用すれば、Arなどの不活
性ガスや窒素ガスが添加された実操業に適した雰囲気に
おいても十分な厚さの酸化皮膜を形成することができ
る。
【0066】
【発明の効果】本発明の方法によれば、耐食性、非触媒
性および水分放出性のいずれにも優れたCr酸化物皮膜
を表面に有する高純度ガス用ステンレス鋼材を迅速に製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】形成される酸化皮膜厚さの表面硬さ依存性を示
すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cr:20〜35%、Mo:
    0.1〜5%、Ni:0〜3%、Cu:0〜0.5%、
    W:0〜0.5%、Ti:0〜1%、Nb:0〜1%を
    含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不可
    避的不純物中のC、Si、Mn、Al、P、S、Oおよ
    びNが、それぞれC:0.03%以下、Si:0.5%
    以下、Mn:0.2%以下、Al:0.5%以下、P:
    0.02%以下、S:0.003%以下、O:0.01
    %以下、N:0.03%以下である化学組成を有するフ
    ェライト系ステンレス鋼材に、表面硬化処理を施し、次
    いで電解研磨処理を施した後、Cr酸化性であってかつ
    Fe還元性の雰囲気中で400℃以上に加熱する熱処理
    を施すことを特徴とする高純度ガス用ステンレス鋼材の
    製造方法。
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