JPH10168549A - 耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板Info
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- JPH10168549A JPH10168549A JP34444196A JP34444196A JPH10168549A JP H10168549 A JPH10168549 A JP H10168549A JP 34444196 A JP34444196 A JP 34444196A JP 34444196 A JP34444196 A JP 34444196A JP H10168549 A JPH10168549 A JP H10168549A
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Abstract
が目立ちにくい表面性状,および既存設備によって建材
用シャッター部材に成形可能な加工性を兼ね備えたシャ
ッター部材用フェライト系ステンレス鋼板を提供する。 【解決手段】 建材用シャッター部材に加工される鋼板
であって、Cr含有量とMo含有量の総和が18重量%以
上(好ましくは22重量%以上、さらに好ましくは27重量
%以上)であり、Rz≧2μmの凹凸を表面に有し、か
つ、引張強さが600N/mm2以下である耐候性および耐疵付
き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス
鋼板。特にCr:16〜35重量%,Mo:0.5〜6重量%,
Nb:0〜1.0重量%を含有でき、さらにTi:0.05〜0.
5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含有
できる。
Description
などの建材として用いられる金属製シャッター部材用の
鋼板であって、特に腐食性の厳しい環境において使用さ
れるステンレス鋼製のシャッター部材用鋼板に関する。
めっき鋼板を原板とする塗装鋼板が従来から最も一般的
に用いられているが、耐食性の観点からステンレス鋼も
一部使用されている。シャッター部材用のステンレス鋼
には、これまで、SUS304に代表されるオーステナイト系
ステンレス鋼が適用されてきた。その理由としては「加
工性」の確保が挙げられる。
に、主としてスラット(1),座板(2),およびガイドレー
ル(3)からなり、これら各部材は端部に曲げ加工部を有
している。このうちスラット部材および座板部材は、シ
ャッターの巻上げ・巻下げが可能なように、部材幅方向
端部に形成された曲げ加工部によって互いに連結され
る。図2にスラット部材の断面形状の一例を示す。巻上
げ・巻下げのスムーズな動作を確保し、かつ落下などの
事故防止のために、スラット部材の曲げ加工部には高い
寸法精度を有する複雑な形状が要求される。このため一
般には軟質で比較的加工の容易な普通鋼の亜鉛めっき鋼
板が用いられるが、ステンレス鋼を使用する場合にはフ
ェライト系ステンレス鋼よりも伸びが大きく加工性に優
れているオーステナイト系ステンレス鋼が使用されてき
た。
て製造されるが、その成形時や、使用時の巻上げ・巻下
げ時における擦れによって疵が生じるやすいために、ス
テンレス鋼の表面仕上を、疵が目立ちにくいHL(ヘア
ライン)仕上にしたり、塗装を行うなどの対策が取られ
ている(例えば特開平7-26858号公報参照)。
でステンレス鋼を使用する場合には、単に腐食による穴
開きが生じないといった機能面での性能だけでなく、発
銹による見映えの低下が少ないという意匠面での性能も
重要視される。ところが、建材用シャッターは開閉動作
によって疵付きによる不動態皮膜の破壊が生じることが
あり、取り付けられる場所は軒下部のように雨によって
海塩粒子が洗い流され難い場所であることが多い。さら
にシャッターは、夜間は露出され海塩粒子の飛来ととも
に結露による湿潤環境に曝され、なおかつ昼間は巻上げ
によって収められているため乾燥するまでに長時間を要
する場合もあるなど、金属の腐食が助長されやすい状態
で使用されるのが通常である。従って、海岸近傍など特
に厳しい腐食環境で使用されるステンレス鋼製シャッタ
ー部材には、非常に高レベルの耐候性を有するステンレ
ス鋼素材の適用が要求される。
ステンレス鋼は、従来から屋根・外装などの建材用途に
おいて使用されているが、海岸地区など海塩粒子が飛散
する環境下で使用した場合には顕著な発銹が認められる
ことがある。また、ステンレス鋼の表面に塗装を行った
場合においてもシャッター開閉時の擦れによって塗膜の
破壊が生じることがあり、素地が露出した場合には塗膜
と素地の界面において隙間腐食が起こり、より顕著な腐
食に至る場合もある。
高Cr(高Mo)系の材料を使用すれば発銹そのものは
改善することができる。しかし、オーステナイト系ステ
ンレス鋼はフェライト系ステンレス鋼に比べて加工硬化
が大きいため、耐候性を十分に確保できるレベルまで合
金元素を添加したオーステナイト系ステンレス鋼ではか
なり強度が上昇し、ロール成形ができない(例えばミル
パワーが不足する)といった問題が生じる。
の疵を目立ちにくくするうえで非常に有効な手段である
が、欠点もある。すなわち、HL仕上はステンレス鋼表
面の不動態皮膜を不安定にするため、2B仕上など他の
一般的な仕上材に比べ耐食性が劣化しやすい。
解消すべく、海岸地区での使用に耐え得る非常に高い
耐候性を有し、既存設備によるロール成形が可能であ
り、シャッター使用時等に発生する疵が目立ちにく
い、という性質を同時に具備する、従来存しなかったシ
ャッター部材用ステンレス鋼板を提供することを目的と
する。
ッター部材に加工される鋼板であって、以下の構成を特
徴とする耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部
材用フェライト系ステンレス鋼板によって達成される。
Mo含有量の総和が18重量%以上27重量%未満であるフ
ェライト系ステンレス鋼からなり、冷間圧延(調質圧延
を含む)によって形成されたRz≧2μmの凹凸を表面に
有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下であることを特徴
としたものである。請求項2の発明は、請求項1のフェ
ライト系ステンレス鋼として、Cr:16〜26重量%,M
o:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%(無添加の場合
を含む)を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が22
重量%以上27重量%未満となるものを用いたものであ
る。また請求項3の発明は、請求項1のフェライト系ス
テンレス鋼として、Cr:16〜26重量%,Mo:0.5〜6
重量%,Nb:0〜1.0重量%(無添加の場合を含む)を
含有し、さらにTi:0.05〜0.5重量%またはAl:0.0
3〜0.3重量%の1種以上を含有し、Cr含有量とMo含
有量の総和が22重量%以上27重量%未満となるものを用
いたものである。
を含む)に限るものであるが、Cr含有量とMo含有量
の総和が27重量%以上の場合にはそのような規制は必ず
しも必要ではない。そこで請求項4の発明は、Cr含有
量とMo含有量の総和が27重量%以上であるフェライト
系ステンレス鋼からなり、Rz≧2μmの凹凸を表面に有
し、かつ、引張強さが600N/mm2以下であることを特徴と
したものである。請求項5の発明は、請求項4の発明に
おいて、凹凸形成手段を特に冷間圧延(調質圧延を含
む),研磨,またはショットブラストに限定したもので
ある。請求項6の発明は、請求項4または請求項5のフ
ェライト系ステンレス鋼として、Cr:24.5〜32重量
%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5重量%(無添
加の場合を含む)を含有し、Cr含有量とMo含有量の
総和が27重量%以上となるものを用いたものである。ま
た請求項7の発明は、請求項4または請求項5のフェラ
イト系ステンレス鋼として、Cr:24.5〜32重量%,M
o:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5重量%(無添加の場
合を含む)を含有し、さらにTi:0.05〜0.5重量%ま
たはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含有し、Cr
含有量とMo含有量の総和が27重量%以上となるものを
用いたものである。
材表面に付いた疵の目立ちにくさを意味する。RzはJI
S B 0601に規定される十点平均粗さを意味する。表面に
凹凸を形成させるための冷間圧延は、調質圧延機等のワ
ークロール表面の凹凸形状を板表面に転写するものであ
り、その代表的な表面仕上としてはダル仕上やエンボス
仕上が挙げられる。また研磨による代表的な表面仕上と
してはHL仕上が挙げられる。
成分組成,材料特性を有するステンレス鋼を用いて、耐
候性,ロール成形性,耐力・引張強さ,耐疵付き性を評
価した。その実験方法は次のとおりである。
ステンレス鋼(フェライト系,オーステナイト系,およ
び二相系)を使用した。材料の板厚は重量シャッターと
して用いられる1.6mm厚とした。表面仕上は、特に記述
のないものはダル仕上(表面粗さRz:約4〜6μm)と
し、一部、HL,2D,2B,BA,鏡面(バフ),お
よびエンボス仕上も用いた。
に位置する場所での大気暴露試験(2年間)によって評
価した。板素材を屋根型形状に加工したものを暴露し、
屋根面を想定した部位および軒下面を想定した部位の評
価ができるようにした。発銹の程度は、JIS Z 2371の
「附属書 レイティングナンバ法」に規定されるレイテ
ィングナンバ(以下「RN」と表示する)で表した。RN10
が元の状態から全く変化していない場合(発銹皆無)で
あり、RN値が小さくなるほど発銹が多いことを意味す
る。ステンレス鋼では通常RN2のレベルまでしか下がら
ない。一般的にRN6以上になると実用的に良好であると
言える。
実施してスラット部材を作成し、現行のSUS304部材との
成形性の違いで評価した。すなわち、現行のSUS304部材
とほぼ同一条件でそのまま成形できた場合を○、材料の
スプリングバックが大きい等で、大幅なロール調整が必
要であった場合を△、ロール調整を行っても所定の形状
が得られなかった場合を×として表した。
る13B号引張試験片(圧延方向)を切り出し、JIS Z 224
1に規定される引張試験を実施して求めた。耐力は0.2%
オフセット耐力で表した。
した後のサンプル表面を目視観察し、直近で観察しても
疵の存在が認識できない場合を○、直近では疵が認めら
れるが約5m離れると認識できない場合を△、約5m離
れた位置からでも疵の存在が認識できる場合を×として
表した。これらの実験結果は、表2および表3にまとめ
て示した。
るための事項について説明する。
系ステンレス鋼は、前述のようにオーステナイト系ステ
ンレス鋼と比べ一般に延性は劣る。しかし反面、加工硬
化は大きくないため、高Cr(高Mo)化を図った場合
においてはむしろフェライト系ステンレス鋼の方がロー
ル成形に有利であると言える。また、汎用鋼種どうしを
比較した場合、フェライト系ステンレス鋼の代表鋼種SU
S430は、オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種SUS3
04と比べ、耐食性も劣る場合が多い。しかし、高Cr
(高Mo)化を図った場合の耐候性(耐発銹性)に関し
て言えば、後述の図3からわかるように、フェライト系
ステンレス鋼の方がより少ないCr量・Mo量で顕著な
耐候性向上効果を示すことが確認された。そこで本発明
では高Cr(高Mo)化を図る場合にロール成形性と耐
候性の点で有利なフェライト系ステンレス鋼を採用する
こととした。
性を改善するためにはCr量の増加やMoの添加が有効
であることは知られており、一般には孔食指数Cr+3
Moなどで整理されている。つまり、MoはCrの約3
倍の腐食抑制作用があると言われている。しかし、耐候
性のように表面皮膜の強さに大きく依存する耐食性にお
いては、不動態皮膜を構成するCrの作用が大きく、一
般的な孔食指数Cr+3Moでは適切に評価できないこ
とが多い。そこで、本発明者らは高Crフェライト系ス
テンレス鋼の耐候性をより明確に評価するための改良型
の孔食指数を求めるべく種々の実験を行い、その結果、
Cr+MoがRN値とバラツキの少ない良い対応を示すこ
とを突き止めた。
ステナイト系ステンレス鋼について、屋根面での耐候性
に及ぼす(Cr+Mo)量の影響を示す。Cr+Moが
特に約18〜25%の範囲において、フェライト系ステンレ
ス鋼の耐候性はオーステナイト系ステンレス鋼より顕著
に向上していることがわかる。これは、フェライト系ス
テンレス鋼ではオーステナイト系ステンレス鋼に比べて
より強固な不動態皮膜が形成しているためであると考え
られる。
性に及ぼす(Cr+Mo)量の影響について、屋根面と
軒下面を比較して示す。この図から、軒下面の方が屋根
面より腐食環境が厳しいことがわかる。また、いずれの
部位においてもCr+MoでRN値を整理すると、RN値の
変化に対するCr量およびMo量の影響が非常に明瞭に
把握できることがわかる。つまり、Cr量・Mo量の増
加に伴ってRN値が急変するいわば臨界点を捕らえること
ができる点で、Cr+Moという指標は高Crフェライ
ト系ステンレス鋼の耐候性を評価するうえで非常に意義
深いと言える。具体的には、Cr+Moが約18%以上に
なると屋根面の耐候性が顕著に向上し、RN6のレベルに
達する。また、Cr+Moが22%以上で軒下面での耐候
性も急激に改善され、RN6のレベルに達する。これらの
結果から、本発明では(Cr+Mo)量が18重量%以上
のフェライト系ステンレス鋼を素材として用いることが
必要であり、軒下面での使用を考慮すると(Cr+M
o)量は22重量%以上とすることが望ましい。さらにRN
8を越える非常に良好な耐候性が要求されるシャッター
部材用としては(Cr+Mo)量は27重量%以上とする
ことが望ましい。なお、後述するとおり、冷間圧延(調
質圧延を含む)以外の手段で表面凹凸を形成させる場合
には(Cr+Mo)量は27重量%以上を必要とする。
よびF5鋼を用いて種々の表面仕上および表面粗さとした
場合おける耐疵付き性および耐候性を示した。耐疵付き
性が良好であると判断されたのはRz≧2μmのものに限
られていた。2D,2B,BA,鏡面の各表面仕上では
Rz≧2μmとすることは極めて困難であり、これらの仕
上においては良好な耐疵付き性は得られない。一方、耐
候性は2D,2B,BA,鏡面の各仕上はもとより、冷
間圧延のワークロールによって凹凸を形成させたダル仕
上およびエンボス仕上においても良好に維持できること
が確認された。ただしCr+Moが27%未満であるF4鋼
ではHL仕上において耐候性が劣化していた。これに対
し、Cr+Moが27%以上であるF5鋼ではHL仕上やシ
ョットブラスト仕上など、冷間圧延以外の手段でRz≧
2μmとした場合にも良好な耐候性を有することがわかっ
た。したがって本発明では、耐疵付き性の観点からRz
が2μm以上の凹凸を表面に形成させることとし、Cr+
Moが27%未満の場合には耐候性の観点からその凹凸を
形成させる手段として冷間圧延(調質圧延を含む)によ
る方法を用いたものに限定した。また、Rzが大きくな
りすぎると圧延ロールの加工等の設備上の困難が生じる
ため、例えばダル仕上ではRz≦10μm,エンボス仕上
ではRz≦30μm,研磨仕上ではRz≦5μm,ショット
ブラスト仕上ではRz≦30μmとすることが好ましい。
なお、特に意匠性を重要視するシャッター部材に適用す
る場合は、Rzが4μm以上の凹凸を表面に形成させるこ
とが望ましい。また、特にエンボス圧延前に板の形状修
正を行って予め板の平坦度を高めておくと、より柄に均
一性のある良好な意匠性が得られる。
つ高い寸法精度の曲げ加工部分を必要とするので、素材
鋼板の強度が高すぎると成形加工(一般的にはロール成
形)が非常に難しくなる。高Cr(高Mo)化を図る場
合、前述のようにフェライト系ステンレス鋼は加工硬化
が比較的小さい点で、オーステナイト系ステンレス鋼よ
りも成形加工に有利であると言える。例えば表2の結果
を見ると、オーステナイト系ステンレス鋼ではA3鋼(C
r+Moは約22%)が一応の形状が得られる上限に近い
成分である。これに対しフェライト系ステンレス鋼では
F5鋼・F6鋼(Cr+Moは30%以上)においてもロール
成型が可能であることがわかる。しかし、高合金化する
ことは固溶強化により素材自体の強度を増大させること
にもなるので、フェライト系ステンレス鋼といえども加
工性の面での適用限界がある。本発明者らが素材強度と
ロール成形性との関連性を調査した結果、成形加工前に
おける素材鋼板の引張強さが600N/mm2を超えると、現在
一般的に使用されているシャッター製造設備におけるロ
ール成形ラインを利用して良好な形状のシャッター部材
を製造することは困難になることがわかった(表2参
照)。現状のラインが利用できなければシャッター部材
の普及に直ちに寄与することは難しい。そこで、本発明
では鋼板の引張強さを600N/mm2以下と定めた。
いて説明する。なお、本発明で規定したCr,Mo,N
b,Ti,Al以外の元素についても望ましい範囲を説
明する。
的に含まれる元素である。C,N含有量を低減すると軟
質になり、加工性が向上するとともに炭窒化物の生成が
少なくなる。また、C,N含有量の低減に伴って溶接性
および溶接部の耐食性も向上する。したがって、C,N
含有量はそれぞれ0.05重量%以下に制限することが望ま
しい。
に対して有害な元素である。また、ステンレス鋼を硬質
にするのでSi含有量は低い方が好ましい。このため、
Si含有量は1.0重量%以下に制限するのが望ましい。
Mnは、ステンレス鋼中に微量に存在するSと結合して
可溶性硫化物MnSを形成することにより、耐候性を低
下させる有害な元素である。このため、Mn含有量は1.
0重量%以下に制限することが望ましい。
でP含有量は低い方が好ましい。しかし、ステンレス鋼
などの含Cr鋼を工業的に脱Pすることは困難であり、
P含有量を極度に低下させることは製造コストの上昇を
招く。したがって、P含有量の上限は0.04重量%とする
ことが望ましい。Sは、耐候性および溶接部の高温割れ
に悪影響をおよぼす有害な元素であるため、S含有量は
低い方が好ましい。S含有量は0.01重量%以下に制限す
ることが望ましい。
改善に有効な元素である。しかし、多量のNi添加はコ
スト高の原因になるばかりでなく、硬さ上昇の原因にも
なる。本発明においては、通常のフェライト系ステンレ
ス鋼で不可避的不純物として混入される程度の0.6%を
Ni含有量の上限とすることが望ましい。
要元素であり、耐候性,耐孔食性,耐隙間腐食性,その
他一般的耐食性を著しく向上させる。シャッター部材に
適用する場合、耐食性改善に及ぼすCrの作用は16重量
%未満では不十分であり、20重量%以上の含有が好まし
い。しかし、Cr含有量が35重量%を越えると著しい脆
化が生じ、薄板製造,製品加工などの際に困難を伴う。
品質・歩留りを安定的に製造するためには32重量%以下
とすることが好ましい。なお、先に述べたとおり本発明
では(Cr+Mo)量を一定以上とすることによって耐
候性を飛躍的に高めており、Cr+Moを27%以上とす
ると非常に高い耐候性が得られる。ただし後述するよう
にMoを2.5重量%以下に抑えることが好ましいので、
その場合にはCr含有量を24.5重量%以上にすればCr
+Moを27%以上にできる。したがって、Cr含有量は
16〜35重量%にすることが必要であるが、20〜32重量%
とすることが好ましく、さらにMo含有量2.5重量%以
下の条件でCr+Moを27%以上にするためにCr含有
量は24.5〜32重量%とすることが一層望ましい。
ために有効な元素であり、その効果はCrが増すにつれ
て大きくなる。またMoは溶液中に解けてモリブデン酸
イオンとなり、仮に腐食が発生した場合も腐食の進行を
抑制するインヒビターとして作用する。このようなMo
の作用は0.5重量%以上の含有により顕著となり、1.0重
量%以上とするのがより効果的である。ただし6重量%
を越えて含有させると鋼を硬質にし、靭性の低下を生じ
るため薄板製造,製品加工などが難しくなる。製造性の
面からはMo含有量の上限を2.5重量%とすることが好
ましい。したがって、Mo含有量は0.5〜6重量%に規定
するが、1.0〜2.5重量%とすることが望ましい。
フェライト系ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止
するのに有効な元素であるが、1重量%を超えて含有さ
せると溶接部の靭性を阻害する。またNbは、Tiに比
べて耐孔食性向上の効果は小さいが、表面疵発生の原因
となりにくいという特長がある。Nbを添加する場合は
1.0重量%以下の含有量にすることが望ましい。
する効果とともに、Sを固定してMnSの生成による耐
孔食性の低下を防ぐ効果もある。しかしTi含有量が多
すぎるとクラスター状の介在物TiNを生成し、素材の
表面疵発生の原因となったり、溶接部の靭性不良を招い
たりする。したがってTiを添加する場合は、耐食性の
面から0.05重量%以上、表面性状の面から0.5重量%以
下の範囲とすることが望ましい。
候性を改善する元素であり、高濃度の亜硫酸ガス腐食環
境下で使用される建材に適用する場合には非常に有効で
ある。ただし、多量の添加は固溶強化により材料を硬質
にし、加工性を低下させる。したがって、Cuを添加す
る場合は含有量の上限を0.5重量%以下とすることが望
ましい。
向上させる上で有効な元素である。また特にTiと複合
添加すると加熱時に優先的にAlの酸化皮膜を形成して
Crの酸化損失を防止するので再不動態化能の低下を抑
制することができる。Al量が0.03重量%未満ではAl
酸化皮膜が形成されにくく、また、0.3重量%を超える
とTiと同様、介在物の生成により表面清浄を低下させ
る。したがって、Alを添加する場合は0.03〜0.3重量
%の含有量とすることが望ましい。なお、Nb,Ti,
Alを複合添加するとロール成形性を改善する効果が生
ずる。このことは、F5鋼(Nb,Ti,Al複合添加)
とF6鋼(Nb,Al添加,Ti無添加)のロール成形性
の差によって確かめられている(表2参照)。
(SUS304)を用いて実際にスラット部材を製作し、大気
暴露試験を行った。これらの供試材は通常の操業ライン
で製造したものである。すなわち、電気炉・転炉で溶製
し、連続鋳造し、熱間圧延で3.5〜4.5mm厚の熱延鋼帯と
し、1050℃で熱処理したのち酸洗し、冷間圧延で1.6mm
厚の冷延鋼帯とし、さらに焼鈍・酸洗を行った。その
後、F4鋼およびF5鋼スキンパス圧延機により表面をダル
仕上とし、一方A1鋼はHL仕上とした。その際、F4鋼は
Rz1.8μm(比較例)、F5鋼はRz4.3μm(発明例)の
ダル目を付けた。またA1鋼はRz2.1μmのヘアライン肌
とした。その後、所定の幅にスリットし、ロール成形に
より同一条件でスラット部材に成形した。
ほぼ良好な形状が得られており、既存設備でのロール成
型は十分に可能であることが確かめられた。加工後の表
面にはいずれも若干の加工疵が付いていることが確認さ
れた。ただし、ダル仕上の表面粗さがRz4.3μmである
F5鋼では、Rz1.8μmであるF4鋼と比べ、表面疵が格段
に目立ちにくく、A1鋼のHL仕上と比較しても同等以上
に良好な外観を呈していた。
同様に連結させて、海岸から約5mの位置にある暴露試
験場(前述)に軒下面を想定してセットした。6か月経
過後の外観を観察した結果、SUS304であるA1鋼はほぼ全
面的に発銹していた。これに対し、22%Cr系のF4鋼で
は若干の「しみ」が認められる程度、30%Cr系のF5鋼
に至っては暴露試験前とほとんど同様の外観を呈してお
り、非常に優秀な耐候性を有していた。
よび疵の目立ちにくさの程度については、暴露試験場で
撮影したサンプル外観のカラー写真によっても明瞭に識
別することができた。
(高Mo)化を図るうえで耐候性向上効果およびロール
成形性確保の点で有利なフェライト系ステンレス鋼を採
用するとともに、冷間圧延によって表面に適度な凹凸を
付与することによって、高Cr(高Mo)鋼自体が本来
有している高い耐候性を維持したまま疵が目立ちにくい
表面肌を有し、かつ既存設備を用いて建材用シャッター
部材に成形加工できるシャッター部材用鋼板の提供が可
能になった。
表した要部斜視図。
図。
ステンレス鋼について、屋根面を想定した大気暴露試験
後のRN(レイティング・ナンバ)に及ぼす(Cr+M
o)量の影響を表したグラフ。
RN(レイティング・ナンバ)に及ぼす(Cr+Mo)量
の影響について、屋根面を想定した場合と軒下面を想定
した場合を比較して表したグラフ。
Claims (7)
- 【請求項1】 建材用シャッター部材に加工される鋼板
であって、Cr含有量とMo含有量の総和が18重量%以
上27重量%未満であるフェライト系ステンレス鋼からな
り、冷間圧延によって形成されたRz≧2μmの凹凸を表
面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下である耐候性
および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト
系ステンレス鋼板。 - 【請求項2】 フェライト系ステンレス鋼は、Cr:16
〜26重量%,Mo:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%
(無添加の場合を含む)を含有し、Cr含有量とMo含
有量の総和が22重量%以上27重量%未満となるものであ
る、請求項1に記載の耐候性および耐疵付き性に優れた
シャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項3】 フェライト系ステンレス鋼は、Cr:16
〜26重量%,Mo:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%
(無添加の場合を含む)を含有し、さらにTi:0.05〜
0.5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含
有し、Cr含有量とMo含有量の総和が22重量%以上27
重量%未満となるものである、請求項1に記載の耐候性
および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト
系ステンレス鋼板。 - 【請求項4】 建材用シャッター部材に加工される鋼板
であって、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以
上であるフェライト系ステンレス鋼からなり、Rz≧2
μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以
下である耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部
材用フェライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項5】 建材用シャッター部材に加工される鋼板
であって、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以
上であるフェライト系ステンレス鋼からなり、冷間圧
延,研磨,またはショットブラストによって形成された
Rz≧2μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N
/mm2以下である耐候性および耐疵付き性に優れたシャッ
ター部材用フェライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項6】 フェライト系ステンレス鋼は、Cr:2
4.5〜32重量%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5
重量%(無添加の場合を含む)を含有し、Cr含有量と
Mo含有量の総和が27重量%以上となるものである、請
求項4または請求項5に記載の耐候性および耐疵付き性
に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼
板。 - 【請求項7】 フェライト系ステンレス鋼は、Cr:2
4.5〜32重量%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5
重量%(無添加の場合を含む)を含有し、さらにTi:
0.05〜0.5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以
上を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%
以上となるものである、請求項4または請求項5に記載
の耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フ
ェライト系ステンレス鋼板。
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JP34444196A JP3567301B2 (ja) | 1996-12-10 | 1996-12-10 | 耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板 |
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JP34444196A JP3567301B2 (ja) | 1996-12-10 | 1996-12-10 | 耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板 |
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JP3567301B2 JP3567301B2 (ja) | 2004-09-22 |
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JP2003027191A (ja) * | 2001-07-23 | 2003-01-29 | Nisshin Steel Co Ltd | 耐候性および曲げ加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼製装飾管 |
JP2009097079A (ja) * | 2007-09-27 | 2009-05-07 | Nippon Steel & Sumikin Stainless Steel Corp | 耐流れさび性に優れるフェライト系ステンレス鋼 |
-
1996
- 1996-12-10 JP JP34444196A patent/JP3567301B2/ja not_active Expired - Fee Related
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