JPH10146764A - 精密研削用砥石およびその製造方法 - Google Patents

精密研削用砥石およびその製造方法

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JPH10146764A
JPH10146764A JP8300690A JP30069096A JPH10146764A JP H10146764 A JPH10146764 A JP H10146764A JP 8300690 A JP8300690 A JP 8300690A JP 30069096 A JP30069096 A JP 30069096A JP H10146764 A JPH10146764 A JP H10146764A
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Japan
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abrasive
abrasive grains
metal
grinding
abrasive grain
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JP8300690A
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Tsutomu Takahashi
務 高橋
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 切れ味に局部的なばらつきが生じにくく、砥
粒が小さい場合にも製造が容易でコストも安く、チップ
ポケットの発生を促して切粉排出性の向上が図れる精密
研削用砥石およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 砥粒6を金属結合相2中に分散してなる
砥粒層1を有する精密研削用砥石であって、金属結合相
2中には、殻状をなす仮想面に沿って前記砥粒6が多数
配置されている砥粒集合部4が、互いに間隔を空けて配
置されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、比較的小さい砥粒
を用いる精密加工用のメタルボンド砥石およびその製造
方法に係り、特に、砥粒層中における砥粒分散密度の均
一化、および切粉排出性に優れたチップポケットの形成
促進を図るための改良に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的なメタルボンド砥石は、通常、金
属結合材の粉末に砥粒を均一に混合し、この混合粉末を
台金とともに型込めした後、圧粉成形および焼結して製
造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記製
造方法により得られたメタルボンド砥石では、砥粒と結
合材粉末とを混合し型込めする過程で、個々の砥粒を結
合材中に均一に分散させることが難しく、焼結後の砥粒
層の内部において砥粒の分布密度に粗密が生じることが
避けられない。このため、研削面に露出した砥粒の配置
に粗密が生じ、砥石の切れ味に局部的なむらが生じて、
研削性能が不安定になる欠点があった。
【0004】そこで、本発明者らは、個々の砥粒の外周
に予め金属結合材を厚く被覆したうえ、この被覆砥粒を
型込め、成形および焼結してメタルボンド砥石を製造す
ることを発案した。この製造方法によれば、得られた砥
粒層中に含まれる砥粒同士の間隔が、被覆砥粒時の被覆
層の厚さで正確に規定されるので、砥粒の分布密度が均
一化され、切れ味のばらつきが低減できる。
【0005】ところで、精密加工の分野では、研削面の
表面粗さを向上するため、必然的に粒径の小さい砥粒を
使用する必要があるが、このように小さい砥粒の場合、
砥粒の外周に金属結合材を均一の厚さで厚く被覆するこ
とは技術的に困難であり、上記方法の適用が難しいとい
う欠点があった。
【0006】また、上記いずれの方法についても言える
ことであるが、砥粒が小さい場合には、砥粒層の研削面
において砥粒の脱落跡などに生じるチップポケット(凹
部)が必然的に小さくなる。この種のチップポケット
は、研削により生じた切粉を研削面から排出する重要な
作用を有するものであり、これらチップポケットが小さ
くなると、切粉排出性が悪化することが避けられない。
したがって、砥粒粒径を小さくするほど切粉排出性が悪
くなり、砥石が目詰まりしやすくなるという欠点があっ
た。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、砥粒の分布密度が均一で切れ味に局部的なばらつ
きが生じにくく、砥粒が小さい場合にも製造が容易で
コストも安く、砥粒に比べて充分に大きいチップポケ
ットの発生を促して切粉排出性の向上が図れる、精密研
削用砥石およびその製造方法を提供することを課題とし
ている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係る精密研削用砥石は、砥粒を金属結合相
中に分散してなる砥粒層を有する精密研削用砥石であっ
て、前記金属結合相中には、殻状をなす仮想面に沿って
前記砥粒が多数配置されている砥粒集合部が、互いに間
隔を空けて配置されていることを特徴とする。隣接する
前記砥粒集合部同士の間に気孔が形成されることによ
り、前記砥粒層の気孔率が3〜40vol%に設定され
ていてもよい。
【0009】前記殻状をなす砥粒集合部の内側部分は金
属相であってもよいし、砥粒集合部の内側部分の中心部
には、前記金属結合相よりも脆い材質からなる脆性粒
子、固体潤滑材からなる潤滑性粒子、または前記砥粒よ
りも大径の大径砥粒が配置されていてもよい。
【0010】一方、本発明に係る精密研削用砥石の製造
方法は、以下の工程を具備することを特徴としている。 (a) 少なくともその表面が金属で形成された核粒子
の外周面に、これら核粒子よりも粒径が小さい砥粒を摩
擦圧接被覆法により多数固定する工程、(b) 前記砥
粒が固定された前記核粒子の外周面に金属被覆層を形成
して複合粒子を形成する工程、(c) 前記複合粒子を
加圧成形および焼結して砥粒層を形成する工程。
【0011】なお、前記加圧成形および焼結工程(c)
を、焼結後の複合粒子間同士の間に気孔が残存しうる条
件で行うことにより、前記砥粒層の気孔率を3〜40v
ol%に調節してもよい。また、脆性粒子、潤滑性粒
子、または大径砥粒の表面に金属被覆を形成することに
より核粒子を形成し、この核粒子を用いて前記砥粒固定
工程(a)を行ってもよい。
【0012】本発明に係る精密研削用砥石は、殻状をな
す仮想面に沿って前記砥粒が多数配置されている砥粒集
合部が、砥粒層中に互いに間隔を空けて多数配置されて
いるものであるから、研削につれて研削面にこれら砥粒
集合部が均一な分布密度で現れる。したがって、巨視的
にみて研削面における砥粒の分布密度が均一になり、砥
粒分布の不均一さに起因する切れ味のばらつきが低減で
きる。
【0013】また、研削につれて砥粒集合部同士の間、
および砥粒集合部の中央部が摩耗して研削面にはチップ
ポケットが生じる。これらチップポケットは砥粒に比し
て大きいから、良好な切粉排出性を有し、砥石の目詰ま
りによる切れ味低下を防ぐ作用が得られる。
【0014】一方、本発明に係る精密研削用砥石の製造
方法によれば、核粒子の寸法設定により砥石中の砥粒集
合部の大きさを調整できるとともに、核粒子の外周面に
形成する金属被覆層の厚さを設定することにより砥粒集
合部同士の離間量を任意に調整できる。したがって、砥
粒分布が均一で切れ味のばらつきが少なく、しかもチッ
プポケットによる切粉排出性が良好な精密研削用砥石が
製造できる。
【0015】また、核粒子の外周面に多数の砥粒を固定
するため、1つ1つの砥粒の外周にそれぞれ金属被覆層
を形成する方法に比して、砥粒が小径であっても実施が
容易であり、砥石の生産性向上および生産コスト低下を
図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)図1は本発明に係る精密研削用砥石の
第1実施形態の砥粒層1を示す断面拡大図である。本発
明はこの砥粒層1の構造に特徴を有するものであるか
ら、砥粒層1のみにより砥石が構成されていてもよい
し、適当な砥石基体に砥粒層1が固定されていてもよ
い。砥石の形状も限定されず、従来使用されているいか
なる形式および形状の砥石にも本発明は適用可能であ
る。
【0017】砥粒層1は、金属結合相2と、この金属結
合相2中に互いに離間して均一分散された多数の砥粒集
合部4とからなるメタルボンド砥粒層である。砥粒集合
部4は、ほぼ一定の大きさを有する隗状の内側金属相8
と、内側金属相8の外周面全面(仮想面)に沿って殻状
に配置された多数の砥粒6とから形成されている。
【0018】砥粒6としては、ダイヤモンド、CBN等
の超砥粒が好適であるが、必要に応じてはSiC、Al
23等の一般砥粒も使用可能である。砥粒6の粒径は限
定されないが、精密研削用としては50μm以下が好ま
しい。砥粒6の形状は、正多面体が好ましいが、極端な
鱗片状でない限り、不定形の砥粒を使用することも可能
である。
【0019】金属結合相2および内側金属相8の材質は
限定されないが、好ましい組み合わせとしては以下の材
質が例示できる。金属結合相2と内側金属相8を同一の
材質で形成することも可能である。 金属結合相2:Cu,Ni,Al,Sn,Coから選択
される1種または2種以上の合金 内側金属相8:Cu,Ni,Alから選択される1種ま
たは2種以上の合金
【0020】内側金属相8が相対的に硬質の材質、金属
結合相2が相対的に軟質の材質で形成された場合には、
3次元網目状に広がる金属結合相2によって砥粒層1の
機械強度を確保しつつ、金属結合相2が容易に摩耗して
後退するため、研削面で露出した個々の砥粒集合部4が
島状に突出して切刃部を形成し、これら切刃部の周囲に
チップポケットC2が存在するため、良好な切粉排出性
が得られる。また、内側金属層8の中央には砥粒が存在
しないため、摩耗が砥粒集中部4に比して大きく、チッ
プポケットC1を形成して、切粉排出性の向上に寄与す
る。
【0021】内側金属相8の直径は必ずしも限定されな
いが、10〜500μm程度が適しており、特に30〜
100μmがより好ましい。内側金属相8の直径が10
μm未満では、この部分に生じるチップポケットC1が
小さくなって切粉排出効果が低減するとともに、後述す
る本発明の製造方法において、核粒子(内側金属相8と
なる)の表面に砥粒6を圧着被覆する際に核粒子が中心
核となりにくく、複合砥粒の製造が困難になる。一方、
内側金属相8の大きさ500μmを越えると、核粒子表
面への砥粒6の圧着被覆が困難になり、やはり複合砥粒
の製造が困難になる。
【0022】隣接する砥粒集合部4の間に介在する金属
結合相2の厚さ、すなわち砥粒集合部4同士の離間距離
は必ずしも限定されないが、内側金属相8の直径の1.
2〜3.0倍程度が好ましい。この範囲であれば、金属
結合相2による砥石強度向上効果が良好で、砥粒6の分
散性も良い。
【0023】上記構成からなる精密研削用砥石によれ
ば、砥粒層1中に、殻状をなす仮想面に沿って砥粒6が
多数配置されている砥粒集合部4が、互いに間隔を空け
て多数配置されているから、研削につれて研削面にこれ
ら砥粒集合部4の砥粒6が均一な分布密度で順次現れ
る。したがって、巨視的にみて研削面における砥粒6の
分布密度が均一になり、砥粒分布の不均一さに起因する
切れ味のばらつきが低減できる。
【0024】また、研削につれて砥粒集合部の中央部が
摩耗してチップポケットC1が生じるとともに、砥粒集
合部4同士の間にチップポケットC2が生じる。これら
チップポケットC1,C2は砥粒6の粒径に比して大き
いから、砥石の運動につれて研削部から切粉を運び出す
能力が大きく、切粉排出性を高めることが可能である。
これにより、切刃を形成する砥粒集中部4が島状に突出
した構造となり、砥石の目詰まりに起因する切れ味低下
が防止できる。
【0025】次に、上記第1実施形態の精密研削用砥石
の製造方法を説明する。図4(a)に示すように、内側
金属相8となるCu,Ni,Al等の金属核粒子8Aを
用意し、これら核粒子8Aの表面に沿って、核粒子8A
より小径の砥粒6を摩擦圧接被覆法によって被覆する。
この摩擦圧接被覆法を実施するには、図3に示すような
装置が使用可能である。
【0026】装置の構成を簡単に説明すると、図中符号
20は軸線を水平に設置された円筒状のドラムで、その
軸線を中心として回転される。ドラム20の内部には、
ドラム軸線に沿って固定シャフト22が配置され、この
シャフト22には下向きに加圧アーム24、およびその
回転方向後方側の斜め下方に延びる掻き取りアーム26
がそれぞれ固定されている。ドラム20内に金属核粒子
8Aと砥粒6を添加した後、蓋(図示せず)で塞ぐこと
により、ドラム20内はほぼ密閉される。
【0027】加圧アーム24の下端には、ドラム20の
内面と平行な円弧状をなす加圧板28が固定され、この
加圧板28とドラム20内面との間には、一定の間隙が
形成されている。一方、掻き取りアーム26の下端は刃
先状に形成され、ドラム20内面に付着した粉体を掻き
落とす構成となっている。
【0028】圧着被覆を行うにはまず、金属核粒子8A
と砥粒6とを所定の割合でドラム20に入れた後、蓋を
固定してドラム20を回転させる。すると、混合粉体が
加圧板28とドラム20との隙間で加圧され、混合粉体
に転動運動が加わりつつ互いに擦り合わされる。機械的
に高いエネルギーを与えられた金属核粒子8Aおよび砥
粒6が衝突すると、金属核粒子8Aの方が軟質でかつ大
径であるため、金属核粒子8Aの表面全面に砥粒6が打
ち込まれた状態となる。
【0029】ドラム20の内面に付着した粉体は、掻き
取りアーム26で再び分散され、未付着の砥粒6は再び
加圧板28により金属核粒子8Aの表面上に打ち込まれ
ていく。この作業を一定時間繰り返すことにより、砥粒
6は金属核粒子8Aの表面に順次圧着被覆されていき、
図4(b)に示すように最終的にはほぼ全量圧着被覆さ
れる。
【0030】次に、ドラム20内に、Cu,Ni,A
l,SnまたはCo等の1種または2種からなる金属粉
末を追加し、上記同様にドラム20を回転させて、砥粒
6が被覆された核粒子8A上に金属被覆層2Aを形成
し、図4(c)に示すような複合粒子10を得る。金属
被覆層2Aは、最終的に金属結合相2となるものであ
る。
【0031】金属被覆層2Aの形成に用いる金属粉末の
粒径は、0.1〜20μmが望ましい。0.1μm未満
では圧着被覆時に金属粉末のみで凝集が起こったり、充
分な圧力が金属粉末に加わらなかったりして金属被覆層
2Aの形成が困難になる。20μmを越えると、金属被
覆層2Aの厚み分布が不均一になりやすく、やはり均一
な金属被覆層2Aの形成が難しくなる。
【0032】金属被覆層2Aの厚さは、製造方法上の観
点から1〜30μm程度が望ましい。1μm未満では、
後述する砥石焼結時に十分な焼結助剤の役目を果たさ
ず、30μmを越えると金属被覆層2Aそのものの形成
が困難になるためである。なお、金属被覆層2Aを核粒
子8A上に形成するには、圧着被覆法の代わりに無電解
めっき法、電気めっき法等を用いても良い。
【0033】次に、このようにして得られた複合粒子1
0を、必要に応じて台金とともに型込めし、圧粉成形お
よび焼結する。すると、複合粒子10の金属被覆層2A
同士が接合しあい、各金属被覆層2Aが互いに強固に結
合した3次元網目状の金属結合相2が形成され、この金
属結合相2中には、図1に示すように、殻状に配置され
た多数の砥粒6を有する砥粒集合部4が3次元的にほぼ
等間隔に分散配置されることになる。
【0034】なお、上述した圧粉成形および焼結には、
ホットプレス法等も含まれる。圧粉成形および焼結時の
雰囲気は大気中でも可能であるが、金属の酸化を防ぐた
めには不活性あるいは還元性雰囲気がより好ましい。
【0035】この製造方法に使用される台金および砥粒
層の形状は、従来実用化されているいかなる形状であっ
ても良い。また、台金を使用せず、砥石全体が砥粒層の
みで構成されている砥石も同様に製造可能である。成形
時のプレス条件や加熱条件は従来法と同様でよい。
【0036】上記のような砥石製造方法によれば、図1
に示すように、小さい砥粒6がほぼ同一径の殻状に集合
してなる砥粒集合部4が、金属結合相2中に一定間隔ご
とに分散した砥粒層1を形成することができる。このよ
うな砥粒層1では、研削時に砥粒6より相対的に軟質な
内側金属相8および金属結合相2が早期に摩耗するた
め、図1に示すように砥粒6に比して大きいチップポケ
ットC1,C2が形成され、切粉の排出を効率良く行う
ことができる。したがって、研削動力の低減が図れ、良
好な切れ味が長期に亙り持続する。
【0037】また、この実施形態の製造方法によれば、
砥粒集合部4同士の間隔がほぼ一定で、かつ砥粒集合部
4内での砥粒の配置がいずれの砥粒集合部4においても
ほぼ一定であるから、砥粒6が砥粒層1全体に亙って同
一パターンで分散しており、従来、型込め時に起こって
いた砥粒分布の偏りが発生しない。したがって切れ味の
局部的なばらつきがなく、さらに被削材の仕上げ面粗さ
が従来に比べて2倍程度向上する。
【0038】また、この方法では、核粒子8Aの寸法設
定により砥粒集合部4の大きさを任意に調整できるとと
もに、核粒子8Aの外周面に形成する金属被覆層2Aの
厚さを設定することにより砥粒集合部4同士の離間量を
任意に調整できる。したがって、被削材の特性に合わせ
て研削条件を高精度に制御できる利点を有する。
【0039】さらに、核粒子8Aの外周面に多数の砥粒
6を固定するため、1つ1つの砥粒の外周にそれぞれ金
属被覆層2Aを形成する方法に比して、砥粒6が小径で
あっても実施が容易であり、砥石の生産性向上および生
産コスト低下を図ることができる。
【0040】なお、上述した砥石製造方法において、金
属被覆層2Aを形成するための金属粉末に各種フィラー
を添加しても良い。その場合には、成形後の砥石に、フ
ィラー種に応じた機能を付与することが可能である。例
えば、フィラーとしてカーボン粉を金属粉末に混合すれ
ば、得られた砥石を研削に使用した際に研削面に徐々に
カーボン粉が供給され、潤滑性向上による研削抵抗の削
減、砥粒の自生発刃作用の促進による切れ味向上を図る
ことができる。
【0041】また、金属被覆層2Aの一部または全てに
SiCやAl23等の硬質粒子を添加しておけば、金属
結合相2中に硬質粒子を分散させ、個々の砥粒6の周囲
に均一に配置することができるから、砥粒6の保持力を
高めるなどの機能を効果的に付与することが可能であ
る。
【0042】(第2実施形態)図2は本発明に係る精密
研削用砥石の第2実施形態を示す断面拡大図である。図
1に示す第1実施形態との相違点は、隣接する砥粒集合
部4同士の間に気孔12が形成されていることにある。
なお、これら気孔12は、互いに連通しない独立気孔で
あっても、砥粒層1の全域に亙って3次元網目状に互い
に連通する連通気孔であってもよい。他の構成は前記第
1実施形態と同様でよい。
【0043】砥粒層1の気孔率は3〜40vol%に設
定されることが望ましい。3vol%未満では後述する
気孔12の効果が得られ難く、40vol%より大では
砥粒層1の強度が不足する。このような気孔12を形成
した砥石によれば、研削につれ砥石研削面においてチッ
プポケットC1,C2のみならず気孔が順次開口する。
開口した気孔12はチップポケットC1,C2よりも深
いため、切粉排出性をさらに高めることが可能である。
【0044】また、湿式研削時には、気孔12内に冷却
水が保持されるため、砥粒層1の冷却効果を高め、砥石
の過熱を防ぐ効果も得られる。上記切粉排出性向上効果
および冷却効果は、気孔12が互いに連通すると気孔1
2内を冷却水が流通するので一層顕著になる。
【0045】次に、上記第2実施形態の砥石の製造方法
の実施形態を説明する。この方法においても、核粒子8
Aに砥粒6を固定し、さらに金属被覆層2Aを形成して
複合粒子10を得る工程までは、前記第1実施形態の砥
石の製造方法と同じでよい。異なるのは、複合粒子10
を圧粉成形および焼結する工程である。すなわち、この
方法では、得られた複合粒子10をプレス型内に充填
し、圧粉成形および焼結(ホットプレスを含む)する際
に、成形および焼結条件を、焼結後の複合粒子間同士の
間に所望量の気孔が残存しうる条件で行う。
【0046】好適な加圧力は金属被覆層2Aの材質によ
って異なり、一概には言えないため予備実験で決定する
必要があるが、冷間プレスおよび焼結する場合には、加
圧力を0.3〜20ton/cm2、焼結条件は250
〜800℃×30分間以上とすることが望ましい。ま
た、ホットプレスする場合には、加圧力50〜500k
gf/cm2で、加熱保持は250〜800℃×3分間
以上が好ましい。もしくは、当たり止め方式のプレスを
行って気孔率を制御することが望ましい。
【0047】より具体的に、例えば金属結合相2をCu
および/またはSnで形成する場合、冷間プレスおよび
焼結により多孔質砥粒層を形成するには、加圧力を0.
5〜5ton/cm2、焼結条件を350〜600℃×
30分間以上とすることが望ましい。また、ホットプレ
スする場合には、加圧力50〜400kgf/cm
2で、加熱保持は350〜600℃×30分間以上が好
ましい。
【0048】上述のように圧力と温度で気孔率を制御す
ることも可能であるが、より簡便で精度の高い気孔率の
制御方法としては、圧力を気孔の無い砥石を作成する場
合と同程度に高めて、十分な加圧力下で、加圧シリンダ
の押し込みストロークを当たり止め方式で制御するホッ
トプレス方式の焼結が好ましい。また、冷間プレスの場
合も、当たり止め方式のプレスを適用すると気孔率の制
御が容易である。
【0049】なお、圧粉成形と焼結との間に、圧粉成形
体を酸化性雰囲気で加熱する工程を設け、圧粉成形体の
気孔内面に薄い酸化膜を形成してもよい。このような酸
化膜を形成すると、焼結工程において金属被覆層2Aの
自己焼結が進行して気孔が塞がる現象を予防できる。ま
た、前記酸化膜形成を圧粉成形後に行えば、金属被覆層
2Aの相互接触部には酸化膜が形成されず、金属被覆層
2Aの連結を阻害することがない。
【0050】具体的な酸化膜形成条件の一例としては、
金属被覆層2AがCu−Sn系の場合、0.6〜5to
n/cm2で冷間プレスを行い、さらに大気中で300
〜600℃に加熱して酸化膜を形成する方法が可能であ
る。加熱時間は、低温で長く処理すれば強固で厚い酸化
層が形成でき、高温で短く処理すれば、多孔質の酸化膜
が得られる。生産性を考慮すれば10分間〜1時間が好
適である。その後、前記と同じ条件で焼結を行えばよ
い。なお、酸化膜形成と同時に焼結してもよい。
【0051】上記のような製造方法によれば、砥粒集合
部4(核粒子8A+砥粒6)の外周を強固に包囲する金
属被覆層2Aを形成し、これら金属被覆層2A同士を連
結するとともに、これら金属被覆層2Aの間に気孔12
を形成するので、気孔率が高くても砥粒保持力は高く確
保することが可能である。したがって、切れ味のばらつ
きおよび砥粒脱落頻度の増大を防ぎつつ気孔率を高める
ことができる。
【0052】さらに、上記方法によれば、複合粒子10
はほぼ球形かつ表面が滑らかで流動性に優れるから、加
工成形時に成形品の内部全域に亙って圧力を均一化する
ことができ、これにより気孔率の局部的なばらつきを防
ぐことが可能である。したがって、砥粒と金属結合剤粉
末を単に混合する従来の製造方法に比して、研削面にお
ける砥粒6および気孔12の露出密度が均一になり、良
好な切れ味を有する多孔質メタルボンド砥石を得ること
ができる。
【0053】(実施形態3)図5は本発明に係る精密研
削用砥石の第3実施形態を示す断面拡大図である。第3
実施形態が前記第1および第2実施形態と異なる点は、
個々の砥粒集合部4内の内側金属相8の中心部に、金属
結合相2および内側金属相8よりも脆い材質からなる脆
性粒子30がそれぞれ配置されていることにある。他の
構成は、前記第1実施形態と同様でよい。
【0054】脆性粒子30としては、黒鉛粒子,MoS
2粒子,中空ガラス粒子,雲母粒子,hBN粒子などが
好ましい。脆性粒子30の粒径は5〜300μm程度、
より好ましくは10〜50μmとされる。5μm未満で
は後述する効果が十分ではなく、300μmより大で
は、核粒子の形成が困難になる。脆性粒子30と砥粒6
の間に介在する内側金属相8の厚さは、少なくとも砥粒
6の平均粒径の1.2倍以上であることが望ましい。
1.2倍未満では砥粒6の保持力が減少し、砥粒6の無
駄な脱落が多くなる。
【0055】上記構成からなる第3実施形態の精密研削
用砥石によれば、図5に示すように研削面に露出した脆
性粒子30が研削の衝撃で破壊され、順次崩れて脱落し
て行くので、その跡には脆性粒子30の形状に沿ったチ
ップポケットC3が形成される。この新たなチップポケ
ットC3は前記チップポケットC1,C2よりも深く、
しかも容易に形成されるので、第3実施形態は第1実施
形態に比して切粉排出性および冷却性をさらに高めるこ
とが可能である。
【0056】次に、上記第3実施形態の砥石の製造方法
を図7を用いて説明する。この製造方法では、始めに個
々の脆性粒子30の表面に金属被覆を形成する。具体的
には図7(a)〜(b)に示すように、脆性粒子30の
外周に無電解めっき法を用いて薄い金属めっき層32を
形成した後、この金属めっき層32上に前記圧着被覆法
を用いて内側金属相8となる被覆層34を形成する。
【0057】圧着被覆法の代わりに無電解めっき法また
は電解めっき法により被覆層34を形成することも無論
可能であるが、圧着被覆法に比べると生産効率が低くな
る。ただし、脆性粒子30が圧着被覆法に耐えないおそ
れがある場合には、無電解めっき法または電解めっき法
で被覆層34を形成する必要がある。
【0058】こうして得られた核粒子34を用いて、後
は第1実施形態の製造方法と同様に図7(c)に示すよ
うに核粒子34の外周に砥粒6を固定し、次いで図7
(d)に示すようにその外周に金属被覆層2Aを形成し
て、複合粒子を得る。その後、前述したように圧粉成形
および焼結して砥粒層1を形成すればよい。
【0059】上記製造方法によれば、前述したように優
れた性能を有する第3実施形態の砥石を効率よく生産す
ることができる。また、複合粒子10の内部には脆性粒
子30が配置されているので、複合粒子10を圧粉成形
する際にこの脆性粒子30が被覆層34の塑性変形を抑
制し、砥粒6の配置が乱れることを防ぐ。したがって、
図5に示すように個々の砥粒集合部4における砥粒6の
配置が球に近くなり、砥粒集合部4の直径が同一であっ
ても、より大きく切粉排出性等の性能が良好なチップポ
ケットC3の形成が可能になる。
【0060】(第4実施形態)図6は、本発明に係る精
密研削用砥石の第4実施形態を示す。この砥石は、前記
第3実施形態の砥粒層内部に多数の気孔12を形成した
ものである。気孔12の構成は前記第2実施形態と同様
でよく、気孔12以外の構成は第3実施形態と同様でよ
い。このような砥石を製造するには、前記第2実施形態
の製造方法と、前記第3実施形態の製造方法とを組み合
わせればよい。
【0061】この第4実施形態によれば、脆性粒子30
によるチップポケット形成効果と、気孔12によるチッ
プポケット形成効果が相乗し、著しく高い切粉排出性お
よび冷却性能が得られる。これらの性能は、気孔12が
互いに連通すると一層顕著になる。
【0062】(第5実施形態)本発明に係る第5実施形
態の砥石は、前記第3実施形態の砥石の構成において、
脆性粒子30の代わりに、固体潤滑材からなる潤滑性粒
子を配置したことを特徴とする。潤滑性粒子としては、
黒鉛粒子,MoS2 粒子,雲母粒子,hBN粒子(以上
は第3実施形態と共通),フッ素樹脂粒子などが挙げら
れる。潤滑性粒子の寸法、および他の構成は、第3実施
形態と同様でよい。第5実施形態の砥石の製造方法は、
第3実施形態の製造方法と全く同じでよい。
【0063】この第5実施形態によれば、研削につれ脱
落した潤滑性粒子が研削面に絶え間無く供給されるた
め、被削材と砥粒層の金属面との摩擦抵抗が減少し、研
削抵抗が低減できる。その分、砥石駆動力が小さくて済
み、駆動系への負担を減らすことができる。また、潤滑
性粒子が脱落した後にはチップポケットが生じるので、
第3実施形態と同様に切粉排出性および冷却性の向上も
図れる。なお、第5実施形態の砥石に、図6に示すよう
な独立または連通気孔12を形成することも無論可能で
ある。好ましい気孔率範囲は前記同様でよい。
【0064】(第6実施形態)図8は、本発明に係る砥
石の第6実施形態を示す断面拡大図である。この砥石の
特徴は、各砥粒集合部4の中心部に、砥粒6よりも大き
い新たな大径砥粒40が配置されていることにある。
【0065】大径砥粒40としては、ダイヤモンド,C
BN等の超砥粒が好適であるが、必要に応じてはSi
C、Al23等の一般砥粒も使用可能である。大径砥粒
40の粒径は10〜500μm、特に20〜100μm
が好ましい。10μm未満または500μmより大では
圧着被覆法を用いた砥石製造が困難である。大径砥粒4
0の形状は、球状またはそれに近い多面体が好ましい
が、極端な鱗片状でない限り、不定形の砥粒を使用する
ことも可能である。
【0066】この実施形態の場合、砥粒6の平均粒径は
大径砥粒40の平均粒径の1/5〜1/100倍である
ことが望ましい。この範囲を外れると、後述する研削加
工時のチッピング性を改善する作用等が得られ難いう
え、核粒子への圧着被覆が困難になる。砥粒6として
は、ダイヤモンド,CBN等の超砥粒、およびSiC、
Al23等の一般砥粒のいずれも使用可能である。大径
砥粒40と砥粒6の間に介在する内側金属相8の材質と
しては、Cu,Sn,Ni,Co,Fe,Zn,Pb等
が例示できるがこれらに限定されることはない。金属結
合相2の材質は前記各実施形態と同様でよい。
【0067】大径砥粒40と砥粒6の間の内側金属相8
の厚さは、少なくとも砥粒6の平均粒径の1.2〜3.
0倍であることが望ましい。1.2倍未満では砥粒6の
保持力が減少し、砥粒6の無駄な脱落が多くなる。ま
た、3.0倍より厚いと砥粒の体積含有率が低下し、切
刃数が不足して研削能力が低下するため好ましくない。
【0068】上記構成からなる第6実施形態の砥石によ
れば、相対的に大きい大径砥粒40で主研削を行いつ
つ、大径砥粒40を囲む相対的に小さい砥粒6で補助的
に研削することができるので、大径砥粒40のみを用い
た従来の砥石に比して、被削材の仕上げ面粗さが良好に
なり、精密研削が可能である。
【0069】また、砥粒6が存在する分、研削面におけ
る大径砥粒40の分散密度が小さいうえ、大径砥粒40
同士の間隔がほぼ一定で均一に分散されているから、個
々の大径砥粒40にかかる研削力が大きいにも拘らず一
定で、研削性能のばらつきを生じること無く、切れ味が
向上できる。さらに、大径砥粒40の摩耗速度が大きい
ので、従来の砥石の場合よりも早期に摩耗して新たな大
径砥粒40が露出する作用、すなわち自生発刃作用が良
好で、切れ味が長期に亙って持続する。
【0070】さらに、大径砥粒40にかかる力を周辺の
砥粒6によって支えているため、上記のように大径砥粒
40にかかる研削力が大きいにも拘らず大径砥粒40の
無駄な脱落を防ぐ効果も得られる。なお、第6実施形態
の砥石においても、図6に示すように砥粒集合部4の間
に独立または連通気孔12を形成してもよい。好ましい
気孔率および製造方法は、図6の実施形態と同様でよ
い。
【0071】
【実施例】
(第3実施形態の実施例)第3実施形態の砥石(実施例
1と称する)を実際に作成して、従来の構成からなる比
較例1と研削性能を比較した。実施例1および比較例1
に共通な条件は以下の通りである。
【0072】砥石形状:1A1型ストレート砥石、7
6.2mm径×0.5mm厚さ 砥粒層の半径方向厚さ:3mm 使用機械:スライシングマシン 被削材:ソーダガラス 砥石周速:2400mm/分 切り込み:2mm テーブル送り:1m/分 研削液:JE220
【0073】実施例1の砥石の構成 脆性粒子30:平均粒径が10μm程度のアルミナ、ガ
ラスフリット等を焼結固化させた気孔率35%のビトリ
ファイド焼結体を粉砕して分級し、平均粒径60μmの
脆い粒子とした。 脆性粒子30の含有量:15vol% 砥粒6の平均粒径:14μm 砥粒6の含有量:10vol% 金属結合相2の材質:Cu−8wt%Sn (軟質結合
相) 内側金属相8の材質:Cu−30wt%Co−20wt
%Sn (硬質結合相) 脆性粒子30と砥粒6の間の
内側金属相8の厚さ:20μm
【0074】比較例1の砥石の構成 砥粒の平均粒径:14μm 砥粒の含有量:10vol% 金属結合相の材質:Cu−30wt%Co−20wt%
Sn 上記のような実施例および比較例の砥石を用いて上記条
件で切断試験を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】以上のように、本発明に係る実施例1で
は、比較例1の砥石に比してチッピングおよび切断抵抗
が低減でき、切れ味が良好であることが確認できた。こ
れは、脆性粒子30の粒径が比較例1の砥石の砥粒より
も大径であるにも拘らず、脆性粒子30が研削につれて
破壊され脱落し、かつ、軟質結合相の摩耗が速やかであ
ることによってチップポケット形成作用が良好であり、
さらに、砥粒6がリング状に配置されていることによっ
て切れ味、耐摩耗性が向上したためであると考えられ
る。
【0077】(第6実施形態の実施例)第6実施形態の
砥石(実施例2と称する)を実際に作成して、従来の構
成からなる比較例2と研削性能を比較した。実施例2お
よび比較例2に共通な条件は以下の通りである。
【0078】砥石形状:1A1型ストレート砥石、7
6.2mm径×0.5mm厚さ 砥粒層の半径方向厚さ:3mm 使用機械:スライシングマシン 被削材:ソーダガラス 砥石周速:2400mm/分 切り込み:2mm テーブル送り:1m/分 研削液:JE220
【0079】実施例2の砥石の構成 大径砥粒40の平均粒径:50μm 大径砥粒40の含有量:10vol% 砥粒6の平均粒径:10μm 砥粒6の含有量:8vol% 金属結合相2の材質:Cu−10wt%Sn (軟質結
合相) 内側金属相8の材質:Cu−40wt%Co−15wt
%Sn (硬質結合相) 大径砥粒40と砥粒6の間の
内側金属相8の厚さ:15μm
【0080】比較例2の砥石の構成 砥粒の平均粒径:50μm 砥粒の含有量:10vol% 金属結合相の材質:Cu−40wt%Co−15wt%
Sn 上記のような実施例2および比較例2の砥石を用いて、
上記条件で切断試験を行った。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】以上のように、実施例2では、大径砥粒4
0の粒径が比較例の砥石の砥粒よりも大径であるにも拘
らず、大径砥粒40を取りまく砥粒6の作用により、比
較例2の砥石に比して仕上げ面粗さおよびチッピングが
小さく、切れ味が良好であることが確認できた。また、
実施例2では、比較例2に比して研削抵抗が小さく、摩
耗速度は約30%小さく良好であった。これは、実施例
2では砥粒ピッチが一定であり、大径砥粒40の周囲を
硬い結合相及び小径砥粒6で補強して、さらにその周辺
を軟質の結合相で包囲した構造となっているため、研削
切断の進行に伴い、軟質部の摩耗が促進され、適度にチ
ップポケットが形成されたためであると考えられる。
【0083】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明に係る精密研
削用砥石によれば、殻状をなす仮想面に沿って前記砥粒
が多数配置されている砥粒集合部が、砥粒層中に互いに
間隔を空けて多数配置されているものであるから、研削
につれて研削面にこれら砥粒集合部が均一な分布密度で
現れる。したがって、巨視的にみて研削面における砥粒
の分布密度が均一になり、砥粒分布の不均一さに起因す
る切れ味のばらつきが低減できる。
【0084】また、研削につれて砥粒集合部同士の間、
および砥粒集合部の中央部が摩耗して研削面にはチップ
ポケットが生じる。これらチップポケットは砥粒に比し
て大きいから、良好な切粉排出性を有し、砥石の目詰ま
りによる切れ味低下を防ぐ作用が得られる。
【0085】一方、隣接する前記砥粒集合部同士の間に
気孔が形成され、砥粒層の気孔率が3〜40vol%に
設定されている場合には、研削につれ砥石研削面におい
て金属層の摩耗で生じるチップポケットのみならず、気
孔が順次開口する。開口した気孔は金属層の摩耗による
チップポケットよりも深いため、切粉排出性をさらに高
めることが可能である。また、湿式研削時には、気孔内
に冷却水が保持されるため、砥粒層の冷却効果を高め、
砥石の過熱を防ぐ効果も得られる。
【0086】また、砥粒集合部の内側部分の中心部に、
金属結合相よりも脆い材質からなる脆性粒子が配置され
た場合には、研削面に露出した脆性粒子が研削の衝撃で
破壊され、順次崩れて脱落して行くので、その跡に脆性
粒子の形状に沿ったチップポケットが形成される。この
新たなチップポケットは深く形成されるので、切粉排出
性および冷却性をさらに高めることが可能である。
【0087】また、砥粒集合部の内側部分の中心部に、
固体潤滑材からなる潤滑性粒子を配置した場合には、研
削につれ脱落した潤滑性粒子が研削面に絶え間無く供給
されるため、被削材と砥粒層の金属面との摩擦抵抗が減
少し、研削抵抗が低減できる。その分、砥石駆動力が小
さくて済み、駆動系への負担を減らすことができる。ま
た、潤滑性粒子が脱落した後にはチップポケットが生じ
るので、切粉排出性および冷却性の向上も図れる。
【0088】さらに、砥粒集合部の内側部分の中心部
に、前記砥粒よりも大径の大径砥粒を配置した場合に
は、相対的に大きい大径砥粒で主研削を行いつつ、大径
砥粒を囲む相対的に小さい砥粒で補助的に研削すること
ができるので、大径砥粒のみを用いた従来の砥石に比し
て、被削材の仕上げ面粗さが良好になり、精密研削が可
能である。
【0089】また、相対的に小径の砥粒が存在する分、
研削面における大径砥粒の分散密度が小さいうえ、大径
砥粒同士の間隔がほぼ一定で均一に分散されているか
ら、個々の大径砥粒にかかる研削力が大きいにも拘らず
一定で、研削性能のばらつきを生じること無く、切れ味
が向上できる。さらに、大径砥粒の摩耗速度が大きいの
で、従来の砥石の場合よりも早期に摩耗して新たな大径
砥粒が露出する作用、すなわち自生発刃作用が良好で、
切れ味が長期に亙って持続する。さらに、大径砥粒にか
かる力を周辺の砥粒によって支えているため、上記のよ
うに大径砥粒にかかる研削力が大きいにも拘らず大径砥
粒の無駄な脱落を防ぐ効果も得られる。
【0090】一方、本発明に係る精密研削用砥石の製造
方法によれば、核粒子の寸法設定により砥石中の砥粒集
合部の大きさを調整できるとともに、核粒子の外周面に
形成する金属被覆層の厚さを設定することにより砥粒集
合部同士の離間量を任意に調整できる。したがって、砥
粒分布が均一で切れ味のばらつきが少なく、しかもチッ
プポケットによる切粉排出性が良好な精密研削用砥石が
製造できる。
【0091】また、核粒子の外周面に多数の砥粒を固定
するため、1つ1つの砥粒の外周にそれぞれ金属被覆層
を形成する方法に比して、砥粒が小径であっても実施が
容易であり、砥石の生産性向上および生産コスト低下を
図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る精密研削用砥石の第1実施形態
を示す断面拡大図である。
【図2】 本発明の第2実施形態を示す断面拡大図であ
る。
【図3】 本発明に係る精密研削用砥石の製造方法に使
用される圧着被覆装置を示す断面図である。
【図4】 上記方法での複合粒子の形成方法を示す断面
拡大図である。
【図5】 本発明の第3実施形態を示す断面拡大図であ
る。
【図6】 本発明の第4実施形態を示す断面拡大図であ
る。
【図7】 第3実施形態の製造方法における複合粒子の
形成方法を示す断面拡大図である。
【図8】 本発明の第6実施形態を示す断面拡大図であ
る。
【符号の説明】
1 砥粒層 2 金属結合相 2A 金属被覆層 4 砥粒集合部 6 砥粒 8 内側金属相 8A 内側金属相 10 複合粒子 12 気孔 30 脆性粒子 32 金属めっき層 34 被覆層 40 大径砥粒

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 砥粒を金属結合相中に分散してなる砥粒
    層を有する精密研削用砥石であって、前記金属結合相中
    には、殻状をなす仮想面に沿って前記砥粒が多数配置さ
    れている砥粒集合部が、互いに間隔を空けて配置されて
    いることを特徴とする精密研削用砥石。
  2. 【請求項2】 隣接する前記砥粒集合部同士の間に気孔
    が形成されることにより、前記砥粒層の気孔率が3〜4
    0vol%に設定されていることを特徴とする請求項1
    記載の精密研削用砥石。
  3. 【請求項3】 前記殻状をなす砥粒集合部の内側部分は
    金属相であることを特徴とする請求項1または2記載の
    精密研削用砥石。
  4. 【請求項4】 前記砥粒集合部の内側部分の中心部に
    は、前記金属結合相よりも脆い材質からなる脆性粒子が
    配置されるとともに、この脆性粒子とそれを取り巻く砥
    粒との間には金属相が介在していることを特徴とする請
    求項1または2記載の精密研削用砥石。
  5. 【請求項5】 前記砥粒集合部の内側部分の中心部に
    は、固体潤滑材からなる潤滑性粒子が配置されるととも
    に、この潤滑性粒子とそれを取り巻く砥粒との間には金
    属相が介在していることを特徴とする請求項1または2
    記載の精密研削用砥石。
  6. 【請求項6】 前記砥粒集合部の内側部分の中心部に
    は、前記砥粒よりも大径の大径砥粒が配置されるととも
    に、この大径砥粒とそれを取り巻く砥粒との間には金属
    相が介在していることを特徴とする請求項1または2記
    載の精密研削用砥石。
  7. 【請求項7】 以下の工程を具備することを特徴とする
    精密研削用砥石の製造方法。 (a) 少なくともその表面が金属で形成された核粒子
    の外周面に、これら核粒子よりも粒径が小さい砥粒を摩
    擦圧接被覆法により多数固定する工程、 (b) 前記砥粒が固定された前記核粒子の外周面に金
    属被覆層を形成して複合粒子を形成する工程、 (c) 前記複合粒子を加圧成形および焼結して砥粒層
    を形成する工程。
  8. 【請求項8】 前記加圧成形および焼結工程(c)を、
    焼結後の複合粒子間同士の間に気孔が残存しうる条件で
    行うことにより、前記砥粒層の気孔率を3〜40vol
    %に調節することを特徴とする請求項7記載の精密研削
    用砥石の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記金属被覆層よりも脆い材質からなる
    脆性粒子の表面に金属被覆を形成することにより核粒子
    を形成し、この核粒子を用いて前記砥粒固定工程(a)
    を行うことを特徴とする請求項7または8記載の精密研
    削用砥石の製造方法。
  10. 【請求項10】 固体潤滑材からなる潤滑性粒子の表面
    に金属被覆を形成することにより核粒子を形成し、この
    核粒子を用いて前記砥粒固定工程(a)を行うことを特
    徴とする請求項7または8記載の精密研削用砥石の製造
    方法。
  11. 【請求項11】 前記砥粒よりも大径の大径砥粒の表面
    に金属被覆を形成することにより核粒子を形成し、この
    核粒子を用いて前記砥粒固定工程(a)を行うことを特
    徴とする請求項7または8記載の精密研削用砥石の製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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