JP7261246B2 - 高硬質脆性材用メタルボンド砥石 - Google Patents

高硬質脆性材用メタルボンド砥石 Download PDF

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Description

本発明は、高硬質脆性材を高能率で研削することができる高寿命の砥石に関するものである。
近年、エネルギの有効利用への取り組みが広がる中で、小型で大電力を制御することができるSiCパワーデバイス等が注目されており、その需要の増加に伴って、SiCウエハのような高硬度材、たとえばビッカース硬さHV1が20GPa以上、ヤング率が400GPa以上、破壊靱性値が10MPa・m1/2以下の高硬度材を高能率で研削することが望まれるようになった。従来の加工プロセスは、インゴットをスライス加工し、うねり取りのラップ加工を行った後に、ラップ加工、又は、研削加工による平面加工を行い、最後に平坦化するための研磨加工を行っている。また、デバイスを載せたウエハの裏面にもラップ加工又は研削加工が用いられている。しかしながら、従来は上記SiCウエハのような高硬度材の研削需要が少なかったので、時間をかけて研削加工を行うことで足りたが、パワーデバイスの市場の拡大につれて、その材料となるSiC基板等の高硬質脆性材の研削について、生産性向上や加工コストの低減という見地から、高能率、高寿命の砥石が必要とされるようになった。
SiCのような高硬質脆性材を研削する研削砥石としては、特許文献1に示されるように有気孔のビトリファイド砥石を用いるのが一般的であった。しかし、このようなビトリファイド砥石は、集中度が100以上であるので切れ味の持続性は確保されるが、砥粒保持力が弱いことから砥粒の脱落により砥石寿命が得られなかった。一方、特許文献2に示されるような、銅、錫、コバルト、ニッケル等の金属粉末を混合した高強度且つ高硬度のメタルボンド砥石は、一般的には、集中度が50から100であり、ビトリファイド砥石よりもボンド量が多く、機械的特性からも組織が密となっていて砥粒保持力は強いので、砥石寿命が得られるが、高硬質脆性材の研削には砥粒が脱落せず、目つぶれ傾向となり、ビトリファイド砥石と比較して切れ味が鈍いという欠点がある。
これに対して、特許文献3に示すように、砥粒数と砥粒を保持するボンド強度とを制御した高脆性材用メタルボンド砥石が提案されている。これによれば、メタルボンドであっても砥粒を保持するボンド強度が抑制されるので、高硬度材の研削には砥粒が脱落して目つぶれ傾向が抑制され、切れ味が得られる。
特開2017-080847号公報 特開2002-001668号公報 特開2014-205225号公報
しかしながら、特許文献3に記載の高脆性材用メタルボンド砥石は、砥粒突出しが大きいたとえば#230から#600の粒度を有する粗粒、又は、細粒については有効であるが、近年、後工程の加工時間短縮を目的としてウエハのダメージ軽減が必要とされるため、例えば#2000(中位径が5μmから10μm程度)の微粒の砥粒が標準サイズとなってきつつある。この場合、集中度が50から100で砥粒を保持するメタルボンドは、溶融金属の凝固体であるため、無気孔の密な構造となっている。このため、磨滅した砥粒が脱落せずに切れ味が鈍化する場合と、被削材の研削時に発生する切屑を除去するための気孔が存在しないので、ボンド擦れを生じやすく切れ味が鈍化する場合とがあり、いずれも高能率研削と寿命とを両立できておらず、市場要求を満たすものでなかった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、高硬質脆性材を高能率で研削することができる高寿命の砥石を提供することにある。
従来の高強度且つ高硬度なメタルボンド砥石は、砥粒の集中度が50から100であって、砥粒を保持する金属結合剤は溶融金属のような凝固体であるため、無気孔の密な構造となっている。本発明者等は、上記事情を背景として種々検討を重ねた結果、このようなメタルボンド砥石が高能率研削と長寿命との両立が困難な理由は、磨滅した砥粒が脱落せずに被削材とメタルボンド面とが擦れてしまい、研削抵抗の増大によって切れ味が鈍化する点であるということを見出した。そこで、本発明者は、それらの点が解消されるように被削材とメタルボンド面の擦れを低減すると、SiCのような高硬質脆性材を、安定した研磨性能で、高能率且つ高寿命に研削することができるメタルボンド砥石が得られるという事実を見出した。本発明はこの知見に基づいて為されたものである。
すなわち、本発明の要旨とするところは、高硬質脆性材を研削する高硬質脆性材用メタルボンド砥石であって、直径が50から200μmの気孔径と、50から65体積%の気孔率とを、備えることを特徴とする。但し、前記気孔径は、砥石試料の研削面の500倍の拡大画像10枚において、気孔の長径および短径の平均径をそれぞれ測定して全50個の気孔の平均値を算出した値であり、前記気孔率は、砥石試料の体積および重量から密度を算出し、予め求められた密度と気孔率(体積%)との関係を示す検量線から前記密度に基づいて算出した値である。
本発明の高硬質脆性材用メタルボンド砥石によれば、直径が50から200μmの気孔径と、前記高硬質脆性材用メタルボンド砥石全体に対し50から65体積%の気孔率とを、備えている。このように、直径が50から200μmの気孔径と50から65体積%の気孔率とを備えているため、脱落した砥粒および切り屑が気孔内に捕捉されて目詰まりが抑制される。
また、前記気孔の気孔径が50から200μmとされ、高硬質脆性材用メタルボンド砥石の気孔率が50から65体積%とされることにより、加工抵抗の増大およびメタルボンドの脆性が抑制されるとともに、被削材に対する接触面圧を高めることができて適切な研削加工が得られる。また、メタルボンドが上記のような有気孔構造であることから、気孔がチップポケットとして寄与して研削時の切り屑の排出性能や冷却性能が高められるとともに、研削面におけるメタルボンドの後退性が高められる。
前記気孔径が50μm未満の場合は、加工中に発生するメタルボンドの塑性変形により、気孔が潰れてしまい気孔の効果が得られなくなる。逆に、気孔径が200μmを超える場合は、気孔数が低下して部分的にボンドマトリックスが大きくなる箇所が発生し、その部分でボンド擦れが発生するという問題が発生する。
前記気孔率が50体積%未満の場合は、砥粒を結合するメタルボンドの被削材への接触面積が大きくなり、ボンド擦れによる加工抵抗が増大して連続加工ができなくなる。反対に、気孔率が65体積%を超えると、高硬質脆性材を削るのに十分な砥粒面、いわゆる素地面を確保できないという問題が発生する。
ここで、好適には、前記高硬質高脆性材料用メタルボンド砥石は、気孔を除いた研削面上において700から6500個/cmの砥粒数を備えている。但し、前記砥粒数は、砥石試料の500倍の拡大画像において、気孔を除く研削面の2値化処理を行なった後に、単位面積(cm )当たりの砥粒数を計数した値である。このように、気孔を除いた研削面上の砥粒数が700から6500個/cmとされることにより、砥粒の被削材に対する切り込み深さが確保され、高速送りでも低負荷で研削が可能となる。高硬質脆性材用メタルボンド砥石が上記のような有気孔構造であるとき、気孔を除く研削面の砥粒数が6500個/cmを超える場合は、砥粒一粒当たりの荷重が小さくなって、被削材すなわちSiCのような高硬質脆性材に対する砥粒の切り込みすなわち食い込みが浅くなり、被削材に食いつかなくなる。反対に、気孔を除く研削面の砥粒数が700個/cmを下回る場合は、砥粒一粒当たりのメタルボンド量が多く、磨滅した砥粒の目替わりが阻害されるという問題が生じる。本発明では、研削面上の砥粒数が700から6500個/cmとされることにより、砥粒の被削材に対する切り込み深さが確保され、高速送りでも低負荷で研削が可能となる。
発明の一実施例の高硬質脆性材用メタルボンド砥石を示す斜視図である。 高硬質脆性材用メタルボンド砥石の一例を示すSEM写真である。 の高硬質脆性材用メタルボンド砥石を構成するセグメント型メタルボンド砥石の製造方法の要部を説明する工程図である。 図3の高硬質脆性材用メタルボンド砥石の構造および研削作用を説明する図であって、(a)は高硬質脆性材用メタルボンド砥石の構造を示す模式図、(b)は高硬質脆性材用メタルボンド砥石の研削状態であって面当たり抑制作用を説明する模式図、(c)は高硬質脆性材用メタルボンド砥石の研削状態であって気孔のチップポケット作用を説明する模式図である。 従来のビトリファイド砥石の構造および研削作用を説明する図であって、(a)はビトリファイド砥石の研削状態であって砥粒の破砕を説明する模式図、(b)はビトリファイド砥石の研削状態であって砥粒の脱落を説明する模式図である。 従来のメタルボンド砥石の構造および研削作用を説明する図であって、(a)はメタルボンド砥石の砥粒が磨滅して脱落せず、砥粒が切れ込まない状態を示す模式図、(b)はメタルボンド砥石の研削状態であって砥粒の磨滅の進行およびメタルボンドの面当たり状態を説明する模式図である。 メタルボンドの気孔径差による研削性能を示すために、メタルボンドの気孔径が異なる複数種類のメタルボンド砥石試料についての評価結果を示す図である。 メタルボンドの気孔率差による研削性能を示すために、メタルボンドの気孔率が異なる複数種類のメタルボンド砥石試料についての評価結果を示す図である。 研削面上の砥粒数差による研削性能を示すために、研削面上の砥粒数が異なる複数種類のメタルボンド砥石試料についての評価結果を示す図である。 砥石強度差による研削性能を示すために、砥石強度が異なる複数種類のメタルボンド砥石試料についての評価結果を示す図である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の高硬質脆性材用カップ砥石10を示す斜視図である。カップ砥石10は、金属製たとえばアルミニウム製の円盤状の台金12と、台金12の下面の外周縁に沿って円環状に連ねて固着された複数個のセグメント砥石14とを備えている。セグメント砥石14は、台金12の下面の外周部において円環状に連なる研削面16をそれぞれ備えている。
台金12は、金属製厚肉円板状を成し、図示しない研削装置の主軸に取り付けられることにより、カップ砥石10が回転駆動される。カップ砥石10は、250mm程度の外径を有し、セグメント砥石14は3mm程度の厚みを有している。セグメント砥石14は、台金12の回転に伴って研削面16を、SiCウエハ、サファイヤウエハなどの高硬質脆性材と摺接させ、その高硬質脆性材を平面状に研削する。
セグメント砥石14は、図2のSEM(走査型電子顕微鏡)写真に示すように、本発明の高硬質脆性材用メタルボンド砥石に対応し、ダイヤモンド砥粒18と、そのダイヤモンド砥粒18を結合するメタルボンド20と、メタルボンド20に形成された気孔22とを含み、直径が50μmφ以上200μmφ以下の気孔径と、50体積%以上65体積%以下の気孔率と、700個/cm以上6500個/cm以下の研削面16上の砥粒数と、40MPa以上95MPa以下の砥石強度とを、備えるメタルボンド砥石である。なお、セグメント砥石14は、その表層の研削層だけが上記メタルボンド砥石であってもよい。このセグメント砥石14は、図3に例示する製造工程によって製造される。上記砥石強度は、砥粒と共に砥石を構成するメタルボンドの強度に実質的に対応している。
図3において、混合工程P1では、たとえば中位径が4から20μm、好適には中位径が5から10μm程度の粒度を有するダイヤモンド砥粒18と、焼結によりメタルボンド(金属結合剤)20を構成するための焼結金属粉体材料と、メタルボンド20中に気孔22を形成するための気孔形成剤とが、上記の50μmφ以上200μmφ以下の気孔径と、50体積%以上65体積%以下の気孔率と、700個/cm以上6500個/cm以下の研削面16上の砥粒数と、40MPa以上95MPa以下の砥石強度を有するための所定の割合で調合された後、均一に混合される。ダイヤモンド砥粒は、セグメント砥石14の研削面16上の砥粒数を700から6500個/cmとする集中度となる割合で混合される。上記焼結金属粉体材料は、焼結後においてダイヤモンド砥粒を結合するためのものであり、主要となる金属材料と添加材料との混合材である。主要となる金属がコバルトであればコバルトボンド、スチールであればスチールボンド、タングステンであればタングステンボンド、ニッケルであればニッケルボンド、銅であれば銅ボンドと称される。ニッケルボンドには、たとえばP(燐)が添加され、銅ボンドには、たとえばSn(錫)が添加される。そして、気孔形成剤は、ナフタリン、ポリスチレンや架橋アクリルなどの平均径が50から200μmφの粒径を有するメタルボンド20内から焼失や溶失によって消失可能な粒子であり、50から65体積%の気孔率が得られる割合で、混合される。ここで、ダイヤモンド砥粒18の粒度を示す上記の中位径(メジアン径)は、日本工業規格(JIS Z 8825:2013)に規定された粒径であり、(株)堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960V2)を用いて測定された体積基準のD50の値である。
成形工程P2では、混合工程P1で混合された材料を所定の成形金型内に充填し、プレスによりセグメント砥石14と同様の所定厚みの円弧状に成形する。続く焼結工程P3では、焼結金属粉体材料を焼結させるためにたとえば400から900℃に予め設定された焼結温度の焼成炉中で熱処理が施され、メタルボンド砥石であるセグメント砥石14が製造される。続いて、接着工程P4において、複数個のセグメント砥石14が図1に示すように台金12に接着される。そして、仕上げ工程P5において、台金12に接着されたセグメント砥石14の仕上げがドレッサを用いて行なわれる。
図4は、セグメント砥石14の構造および研削作用を説明する模式図であって、(a)はセグメント砥石14の構造を示す模式図、(b)はセグメント砥石14の研削状態であってメタルボンド20の面当たり抑制作用を説明する模式図、(c)はセグメント砥石14の研削状態であって気孔22のチップポケット作用を説明する模式図である。(a)に示されるように、セグメント砥石14のメタルボンド20には、ダイヤモンド砥粒18と気孔22とが含まれており、気孔22は直径が50から200μmφの気孔径と、50から65体積%の気孔率とを備えている。そして、セグメント砥石14の気孔22を除く研削面16には、気孔22の一部が開口してチップポケットとして寄与しているとともに、700から6500個/cmの面密度でダイヤモンド砥粒18が突き出している。これにより、(b)および(c)に示されるように、SiCウエハ、サファイヤウエハなどの高硬質脆性材である被削材30に対するメタルボンド20の接触面積が低減されるとともに、被削材30に対する砥粒18の接触面圧が高められる。研削面16に開口した気孔22はチップポケットとして機能し、研削時の切り屑32が一時的に収容されて研削面16から排出されるとともに、研削面16への研削液の供給を容易とされ、研削面16の冷却が促進される。
図5は、特許文献1に示されるような従来のビトリファイド砥石80の構造および研削作用を説明する図であって、(a)はビトリファイド砥石80の研削状態であって砥粒の破砕を説明する模式図、(b)はビトリファイド砥石80の研削状態であって砥粒の脱落を説明する模式図である。ビトリファイド砥石80は、砥粒82がビトリファイドボンド84によって結合された有気孔の砥石である。このようなビトリファイド砥石80は、高硬質脆性材である被削材30を研削する場合には、集中度が100以上で砥粒保持力が弱いことから、図5(a)に示すように砥粒82に負荷がかかると、図5(b)に示すように砥粒82の脱落が多く、砥石寿命が得られなかった。
図6は、特許文献2に示されるような、従来のメタルボンド砥石90の構造および研削作用を説明する図であって、(a)はメタルボンド砥石90の銅、錫、コバルト、ニッケル等の金属粉末を混合した高強度且つ高硬度のメタルボンド94により結合された砥粒92が磨滅しても脱落せず、砥粒92が切れ込まない状態を示す模式図、(b)はメタルボンド砥石90の研削状態であって砥粒92の磨滅の進行およびメタルボンド94の面当たりが進行した状態を説明する模式図である。このようなメタルボンド砥石90は、高硬質脆性材である被削材30を研削する場合には、集中度が50から100であり、組織が密となっていて砥粒保持力は強いので、砥石寿命が得られる。しかし、図6(a)に示すように高硬度材の研削時に砥粒92に負荷がかかって破砕しても脱落せず、図6(b)に示すように目つぶれ傾向となり、メタルボンド94が被削材30に面擦れ状態となるので、ビトリファイド砥石80と比較して切れ味が鈍いという欠点があった。なお、図6(a)および(b)において、フィラー96が示されているが、必ずしも設けられなくてもよい。
以下に、本発明者が行なった研削加工試験を説明する。図7から図10は、図3に示す工程で製造された、中位径が5から10μmのダイヤモンド砥粒を含む複数種類の砥石試料を用いて表1に示す研削加工試験条件で研削したときの研削試験の評価結果(研削抵抗および砥石摩耗率)をそれぞれ示している。図7は、メタルボンドの気孔径差による研削性能を評価した「研削試験1」の結果と、それに用いた複数種類の砥石試料の特性値を示している。図8は、メタルボンドの気孔率差による研削性能を評価した「研削試験2」の結果と、それに用いた複数種類の砥石試料の特性値を示している。図9は、研削面上の砥粒数差による研削性能を評価した「研削試験3」の結果と、それに用いた複数種類の砥石試料の特性値を示している。図10は、砥石強度差による研削性能を評価した「研削試験4」の結果と、それに用いた複数種類の砥石試料の特性値を示している。
(表1)
研削加工試験条件
研削機械 平面研削盤(インフィード方式)
研削方法 湿式平面研削
加工物 4インチ単結晶SiCウエハ
加工条件 砥石回転数 2400rpm
ウエハ回転数 400rpm
切込み速度 0.5μm/sec.
加工取り代 200μm
試験砥石 カップ砥石 直径250mm
セグメント砥石 幅3mm
研削液 市水
次に、上記の試験に用いられた砥石試料の気孔径(μmφ)、気孔率(%)、研削面上の砥粒数(個/cm)、砥石強度(MPa)、研削抵抗(A)、および砥石摩耗率(%)の測定方法を、以下に説明する。上記気孔径は、砥石試料の研削面の500倍の拡大画像10枚において、気孔について長径および短径の平均径をそれぞれ測定して全50個の気孔の平均値を算出した値である。上記気孔率は、砥石試料の体積および重量から密度を算出し、予め求められた密度と気孔率(体積%)との関係を示す検量線から、チップ状試験片の気孔率を算出した値である。砥粒数は、砥石試料の気孔を除く研削面の500倍の拡大画像において2値化処理を行なった後に、単位面積(cm)当たりの砥粒数を計数した値である。上記砥石強度は、長さ40mm×幅7mm×厚み4mmの砥石試験片を複数個用いて3点曲げ試験をおこなったときの破壊に至る平均強度値である。上記研削抵抗は、表1の研削加工試験条件を用いた研削において、カップ砥石を回転駆動する電動機の駆動電流値である。砥石摩耗率は、前記表1の研削加工試験条件を用いた1回の研削における砥石試料の摩耗量を割合で示したものである。
(研削試験1)
図7に示すように、気孔率が50(体積%)、気孔を除く研削面上の砥粒数が2300(個/cm)を共に有しているが、30(μmφ)、50(μmφ)、80(μmφ)、100(μmφ)、150(μmφ)、200(μmφ)、250(μmφ)という気孔径を有する7種類の砥石試料No.1-7をそれぞれ複数個(各5個)作成した。このようにして得られた砥石試料No.1-7の砥石強度を測定すると、砥石強度は37-68(MPa)であった。なお、図7の気孔径、気孔率、砥粒数は、設計上のねらい値であって、調合によって決まる平均値である。次いで、砥石試料No.1-7を用いて表1に示す研削加工試験条件でそれぞれ研削することにより、各砥石試料No.1-7の評価を行なった。図7に示すように、気孔径が30(μmφ)である砥石試料No.1は、気孔22が小さすぎて気孔22によるチップポケット作用が充分に得られず、単結晶SiCウエハに対する研削加工の評価が不可であった。また、気孔径が250(μmφ)である砥石試料No.7は、気孔22が大きすぎて砥石のエッジ部が欠けやすくなるので、図7では製造不可と示している。この砥石試料No.7は、エッジ部以外の箇所で測定は可能であったが、研削加工は不可であった。これに対して、気孔径が50(μmφ)、80(μmφ)、100(μmφ)、150(μmφ)、および200(μmφ)である砥石試料No.2、3、4、5、6は、研削抵抗が12.1Aから13.3Aであり、砥石摩耗率が4.2%から8.7%であって、単結晶SiCウエハに対する良好な研削が得られた。
(研削試験2)
図8に示すように、気孔径が80(μmφ)、研削面上の気孔を除く砥粒数が2300(個/cm)を共に有しているが、30(体積%)、40(体積%)、50(体積%)、60(体積%)、65(体積%)、70(体積%)という気孔率を有する6種類の砥石試料No.11-16をそれぞれ複数個(各5個)作成した。このようにして得られた砥石試料No.11-16の砥石強度を測定すると、砥石強度は28-73(MPa)であった。なお、研削試験1と同様に、図8の気孔径、気孔率、砥粒数は、設計上のねらい値であって、調合によって決まる平均値である。次いで、砥石試料No.11-16を用いて表1に示す研削加工試験条件でそれぞれ研削することにより、各砥石試料No.11-16の評価を行なった。図8に示すように、気孔率が30(体積%)および40(体積%)である砥石試料No.11および12は、気孔22が少なすぎて気孔22によるチップポケット作用が充分に得られず、単結晶SiCウエハに対する研削加工の評価が不可であった。また、気孔率が70(体積%)である砥石試料No.16は、気孔22の体積が大きすぎて安定に製造することができず、研削加工の評価が不可であった。これに対して、気孔率が50(体積%)、60(体積%)、および65(体積%)である砥石試料No.13、14、および15は、研削抵抗が12.0Aから12.7Aであり、砥石摩耗率が6.2%から8.5%であって、単結晶SiCウエハに対する良好な研削が得られた。
(研削試験3)
図9に示すように、気孔径が80(μmφ)、気孔率が60(体積%)を共に有しているが、500(個/cm)、700(個/cm)、1650(個/cm)、2300(個/cm)、3650(個/cm)、5800(個/cm)、6500(個/cm)、7600(個/cm)という単位面積当たりの砥粒数を研削面に有する8種類の砥石試料No.21-28をそれぞれ複数個(各5個)作成した。このようにして得られた砥石試料No.21-28の砥石強度を測定すると、砥石強度は44-115(MPa)であった。なお、研削試験1と同様に、図9の気孔径、気孔率、砥粒数は、設計上のねらい値であって、調合によって決まる平均値である。次いで、砥石試料No.21-28を用いて表1に示す研削加工試験条件でそれぞれ研削することにより、各砥石試料No.21-28の評価を行なった。図9に示すように、単位面積当たりの砥粒数が500(個/cm)である砥石試料No.21は、砥粒数が少なく研削能力が充分に得られず、単結晶SiCウエハに対する研削加工の評価が不可であった。また、砥粒数が7600である砥石試料No.28は、単位面積当たりの砥粒数が多すぎて、単結晶SiCウエハに対する研削加工の評価が不可であった。これに対して、砥粒数が700(個/cm)、1650(個/cm)、2300(個/cm)、3650(個/cm)、5800(個/cm)、および6500(個/cm)である砥石試料No.22、23、24、25、26、および27は、研削抵抗が10.9Aから14.9Aであり、砥石摩耗率が3.8%から10.7%であって、単結晶SiCウエハに対する良好な研削が得られた。
(研削試験4)
図10に示すように、気孔径が80(μmφ)、気孔率が60(体積%)、研削面上の砥粒数が2300(個/cm)を共に有しているが、砥石強度の狙い値が30(MPa)、40(MPa)、70(MPa)、95(MPa)、105(MPa)である5種類の砥石試料No.31-35をそれぞれ複数個(各5個)作成した。このようにして得られた砥石試料No.31-35の砥石強度を測定すると、砥石強度は図10に示すように20-37(MPa)、40-49(MPa)、65-77(MPa)、80-95(MPa)、97-106(MPa)であった。なお、研削試験1と同様に、図10の気孔径、気孔率、砥粒数は、設計上のねらい値であって、調合によって決まる平均値である。次いで、砥石試料No.31-35を用いて表1に示す研削加工試験条件でそれぞれ研削することにより、各砥石試料No.31-35の評価を行なった。図10に示すように、砥石強度が30(MPa)である砥石試料No.31は、砥石強度が低いので、メタルボンドの強度が低く砥粒の脱落が多いので、単結晶SiCウエハに対する研削加工の評価が不可であった。また、砥石強度が105(MPa)である砥石試料No.35は、砥石強度が高いので、メタルボンドの強度が高く砥粒の脱落が少なすぎるので、単結晶SiCウエハに対する研削加工の評価が不可であった。これに対して、砥石強度が40(MPa)、70(MPa)、および95(MPa)である砥石試料No.32、33、および34は、研削抵抗が11.0Aから12.8Aであり、砥石摩耗率が6.7%から9.7%であって、単結晶SiCウエハに対する良好な研削が得られた。
研削試験1-4から明らかなように、単結晶SiCウエハに対する良好な研削が得られると評価される研削抵抗が15A以下且つ砥石摩耗率が11%以下という評価は、直径が50μm以上200μm以下の気孔径と、50体積%以上65体積%以下の気孔率と、700個/cm以上6500個/cm以下の研削面16上の砥粒数と、40MPa以上95MPa以下の砥石強度とを、備えることで、実現される。
上述のように、本実施例のカップ砥石10のセグメント砥石(高硬質脆性材用メタルボンド砥石)14は、直径が50から200μmの気孔径と、セグメント砥石14全体に対し50から65体積%の気孔率と、700から6500個/cmの研削面16上の砥粒数と、40から95MPaの砥石強度とを、備えている。このように、直径が50から200μmの気孔径と50から65体積%の気孔率とを備えているため、脱落した砥粒18および切り屑32が気孔22内に捕捉されて目詰まりが抑制される。
ここで、本実施例のセグメント砥石(高硬質脆性材用メタルボンド砥石)14によれば、気孔22を除いた研削面上において700から6500個/cmの砥粒数を備えている。このように、気孔22を除いた研削面上の砥粒数が700から6500個/cmとされることにより、砥粒18の被削材30に対する切り込み深さが確保され、高速送りでも低負荷で研削が可能となる。高硬質脆性材用メタルボンド砥石が上記のような有気孔構造であるとき、気孔22を除く研削面16の砥粒数が6500個/cmを超える場合は、砥粒一粒当たりの荷重が小さくなって、被削材30すなわちSiCのような高硬質脆性材に対する砥粒18の切り込みすなわち食い込みが浅くなり、被削材30に食いつかなくなる。反対に、気孔22を除く研削面16の砥粒数が700個/cmを下回る場合は、砥粒一粒当たりのメタルボンド量が多く、磨滅した砥粒18の目替わりが阻害されるという問題が生じる。本実施例では、研削面上の砥粒数が700から6500個/cmとされることにより、砥粒18の被削材30に対する切り込み深さが確保され、高速送りでも低負荷で研削が可能となる。
また、本実施例では、砥粒18は、ダイヤモンド砥粒であって、粒度は、中位径で4から20μm、好適には、中位径で5から16μmである。このようにすれば、SiCのような高硬質脆性材である被削材30を、安定した研磨性能で、高能率且つ高寿命に研磨することができるセグメント砥石(高硬質脆性材用メタルボンド砥石)14が得られる。砥粒18がたとえば中位径で20μmを上まわる粗さとなると、砥粒18が深く食い込んで加工後の被削材30へのダメージが大きくなり、次工程での負荷(加工時間)の増大を招く。砥粒18がたとえば中位径で4μmを下まわる細かさとなると、メタルボンドからの突出し量が小さくなって被削材30へ食い込めず、粗加工に求められる研削能率と寿命の達成が困難となる。
また、本実施例のセグメント砥石(高硬質脆性材用メタルボンド砥石)14によれば、40から95MPaの砥石強度を備えている。このように、前記高硬質脆性材用メタルボンド砥石と同様の用途のビトリファイド砥石よりも約2倍から4倍の砥石強度が確保できるため、不必要な砥粒の脱落を防止でき、安定した負荷および切れ味で連続研削することが可能となる。砥石強度が95MPaを超えるとセグメント砥石の砥粒18の保持力が大きくなり過ぎ磨滅した砥粒が目替わりできず、結果としてボンド擦れを発生させる。反対に、砥石強度が40Mpaを下回ると、セグメント砥石14の砥粒18の保持力が低下し過ぎ砥粒18の脱落を誘発し、ボンド擦れを発生させる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
たとえば、前述の実施例では、台金12に固定された円弧状のセグメント砥石14が高硬質脆性材用メタルボンド砥石であったが、円盤状に形成された高硬質脆性材用メタルボンド砥石であってもよい。
また、セグメント砥石14において、砥石のうちの研削に関与する一部たとえば研削面16側の一部に形成された砥石層が、高硬質脆性材用メタルボンド砥石であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:カップ砥石
12:台金
14:セグメント砥石(高硬質脆性材用メタルボンド砥石)
16:研削面
18:ダイヤモンド砥粒
20:メタルボンド
22:気孔
30:被削材(高硬質脆性材)
32:切り屑

Claims (2)

  1. 砥粒がメタルボンドにより結合された、高硬質脆性材を研削するための高硬質脆性材用メタルボンド砥石であって、
    前記高硬質脆性材用メタルボンド砥石全体に対し気孔径が50から200μmの気孔が、50から65体積%の気孔率で備えられている
    ことを特徴とする高硬質脆性材用メタルボンド砥石。
    但し、前記気孔径は、砥石試料の研削面の500倍の拡大画像10枚において、気孔の長径および短径の平均径をそれぞれ測定して全50個の気孔の平均値を算出した値であり、前記気孔率は、砥石試料の体積および重量から密度を算出し、予め求められた密度と気孔率(体積%)との関係を示す検量線から前記密度に基づいて算出した値である。
  2. 前記気孔を除いた研削面上において700から6500個/cmの砥粒数を備えている
    ことを特徴とする請求項1の高硬質脆性材用メタルボンド砥石。
    但し、前記砥粒数は、砥石試料の500倍の拡大画像において、気孔を除く研削面の2値化処理を行なった後に、単位面積(cm)当たりの砥粒数を計数した値である。
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